(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保護部材及び工具セット
(51)【国際特許分類】
B25D 3/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B25D3/00
(21)【出願番号】P 2024121427
(22)【出願日】2024-07-26
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236311
【氏名又は名称】品川フアーネス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】524284025
【氏名又は名称】シナノ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004174
【氏名又は名称】弁理士法人エピファニー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 秀満
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 翔太
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0200666(US,A1)
【文献】実開昭55-017774(JP,U)
【文献】実開昭53-015118(JP,U)
【文献】実開昭53-028517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部及び把持部を有する打撃式の工具に取り付けられ、前記把持部を把持する手指を保護するための保護部材であって、
保護部材本体
と介在部材とを備え、
前記保護部材本体は、挿通部と、フランジ部と、係合部とを有し、
前記挿通部は、前記工具の前記把持部を挿入可能に形成され、
前記フランジ部は、前記挿通部を囲むように設けられ、
前記係合部は、前記工具の前記把持部に係合するように構成さ
れ、
前記係合部は、前記保護部材本体に形成される段差部で構成され、
前記介在部材は、前記段差部に取り付けられ、
前記係合部が、前記介在部材を介して前記把持部に係合し、
前記段差部は、台座面と、壁面とを有し、
前記台座面は、前記壁面に交差している面であり、
前記壁面は、前記介在部材が前記段差部に取り付けられている状態において、前記介在部材を囲むように形成されていて、
前記壁面は、湾曲面及び平面を有し、
前記挿通部の中心位置から前記湾曲面までの距離を第1距離とし、前記中心位置から前記平面までの距離を第2距離としたときにおいて、
前記平面は、前記第2距離の値が、前記第1距離の最小値よりも小さくなる部位を有する、保護部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の保護部材であって、
前記介在部材は、環状のゴム部材で構成されている、保護部材。
【請求項3】
請求項
1に記載の保護部材であって、
前記壁面は、環状に形成され、
前記台座面は、非環状に形成されている、保護部材。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、前記挿通部に前記把持部が挿通している状態において、前記把持部の周方向に回転させられると、前記把持部との係合が強まるように構成されている、保護部材。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、光の透過性を有する素材で構成されている、保護部材。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、ポリカーボネート
、ゴム、又はエラストマーで構成されている、保護部材。
【請求項7】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体の厚みは、2.5cm以下である、保護部材。
【請求項8】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、平面視形状がリング形状である、保護部材。
【請求項9】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、その直径が4cm以上であって、12cm以下である、保護部材。
【請求項10】
保護部材
と工具とを備えた工具セットであって、
前記工具は、刃部及び把持部を有する打撃式の工具であり、
前記保護部材は、前記工具に取り付けられ、前記把持部を把持する手指を保護し、
前記保護部材は、保護部材本体を備え、
前記保護部材本体は、挿通部と、フランジ部と、係合部とを有し、
前記挿通部は、前記工具の前記把持部を挿入可能に形成され、
前記フランジ部は、前記挿通部を囲むように設けられ、
前記係合部は、前記工具の前記把持部に係合するように構成され、
前記工具の前記把持部は、第1表面と、第2表面とを有し、
前記第1表面は、前記第2表面よりも、前記工具の前記刃部に近い位置に設けられ、
前記第2表面の面粗さは、前記第1表面の面粗さよりも小さくなっており、
前記保護部材は、前記第2表面に取り付けられる、工具セット。
【請求項11】
請求項
10に記載の工具セットであって、
前記把持部には、前記保護部材の少なくとも一部が付き当てられる取付段部が形成されている、工具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材及び工具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手持ち式の工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
打撃力を加えるタイプの工具において、工具を把持する手指を保護したいニーズがある。
【0005】
本発明は、工具を把持する手指を保護することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、刃部及び把持部を有する打撃式の工具に取り付けられ、前記把持部を把持する手指を保護するための保護部材であって、保護部材本体を備え、前記保護部材本体は、挿通部と、フランジ部と、係合部とを有し、前記挿通部は、前記工具の前記把持部を挿入可能に形成され、前記フランジ部は、前記挿通部を囲むように設けられ、前記係合部は、前記工具の前記把持部に係合するように構成される、保護部材が提供される。
【0007】
本発明によれば、工具を把持する手指を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の保護部材8及び工具セット100を示す図である。
【
図5】
図5Aは保護部材8(断面視)を工具1に取り付ける前の状態を示し、
図5Bは取付後の状態を示す。
【
図6】
図6Aは保護部材8を工具1に取り付けた状態の底面図であり、
図6Bは保護部材本体10を回転させた状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.実施形態の構成の説明
1.1.工具セットの構成
図1に示すように、実施形態の工具セット100は、工具1と、保護部材8とを備える。実施形態では、一例として、保護部材8は、保護部材本体10と介在部材20とを備える。保護部材8は、工具1に取り付けられる。保護部材8は、工具1の把持部3を把持する手指を保護するためのものである。取り付け方を含む使用方法については、
図5A~
図5C等を用いて後述する。
【0011】
1.2.工具の構成
図2A~
図2Cには、実施形態の工具1が図示される。工具1は、本技術分野で「タガネ」とも呼称される。なお、実施形態において、工具1は、「目切り」であり、例えば、煉瓦等といった被加工物の加工(例えば破断等)に用いられるものである。工具1は、刃部2及び把持部3を有する。工具1は、打撃式の工具である。把持部3を把持した状態で、工具1に対して例えばハンマーHM(
図5B参照)等で打撃力を加えることにより、刃部2の先端で被加工物(ワーク)を加工することができる。
【0012】
実施形態の工具1は、一例として、平面視において略T字型形状をなしている。刃部2は、
図2Aの紙面縦方向に直線状に延びている。把持部3は、刃部2と直交するように
図2A紙面横方向に伸びている。
【0013】
より具体的には、把持部3は、第1把持部3aと第2把持部3bとを備える。一例として、第1把持部3aは、
図2Aの平面視で徐々に幅狭くなるテーパ状をなしている。第1把持部3aの第1端部は、
図2A紙面左側に位置しており、第1把持部3a全体のうち最大幅を有し、且つ刃部2と接続している。第1把持部3aの第2端部は、
図2A紙面右側に位置しており、第1把持部3a全体のうち最小幅を有し、且つ第2把持部3bと接続している。第2把持部3bは、概ね一定の太さを持ちながら
図2A紙面横方向にのびる。なお、この構造は一例にすぎず、任意形状の刃部2及び任意形状の把持部3を採用可能である。
【0014】
なお、
図2Bに示すように、第1把持部3aが、工具1の長手方向(中心軸CLの方向)となす角度θは、具体的には例えば、0,2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50度であり、ここで列挙した値のうち任意の二つの範囲内であってもよい。なお、刃部2が、工具1の長手方向となす角度や、第2把持部3bが、工具1の長手方向となす角度についても、ここで列挙した値のいずれかと同様であってもよいし、ここで列挙した値のうち任意の二つの範囲内であってもよい。
【0015】
1.3.保護部材の構成
1.3.1.保護部材本体の構成
図3A~
図3Cを用いて、保護部材本体10を説明する。実施形態の保護部材本体10は、一例として平面視形状がリング形状である。より具体的には、保護部材本体10は、挿通部11と、フランジ部12と、係合部13とを有する。挿通部11は、工具1の把持部3における第2把持部3bを挿入可能に形成されている。実施形態の挿通部11は、一例として円形の開口とされている。フランジ部12は、挿通部11を囲むように設けられる。
【0016】
実施形態では、一例として、係合部13が、段差部で構成されている。係合部13としての段差部は、高さh(
図3B及び
図3C参照)を有し、保護部材本体10に形成されていて、一例として保護部材本体10の一方の面に設けられている。
図3Cの断面図に例示するように、一例として、係合部13としての段差部は、台座面13aと、壁面13b、13cとを有する。台座面13aは、壁面13b、13cに交差している面である。係合部13は、段差部内に介在部材20を受け入れ可能なサイズ(具体的には深さ及び直径)を有する。壁面13b、13cは、介在部材20が段差部(つまり係合部13)に取り付けられている状態において、介在部材20を囲むように形成されている。
【0017】
図3Aに示すように、一例として、壁面13b、13cは、中心位置Qの周方向にのびる環状に形成される。実施形態では、一例として、壁面13b、13cは、湾曲面13bと平面13cとで構成されている。具体的には、挿通部11の中心位置Qを挟んで、2つの湾曲面13b及び2つの平面13cが対向配置されている。
図3Aの平面視で、中心位置Qの周方向に沿って、湾曲面13bと平面13cとが交互に配置されながら一体接続されていて、全体として環状を呈している。
【0018】
図3Aに示すように、一例として、台座面13aは、非環状に形成されている。具体的には、実施形態では、一例として、二つの台座面13aが挿通部11を挟んで向かい合って配置されていて、各々の台座面13aは平面視円弧形状である。各々の台座面13aの両端部は先細りになっており、平面13cの中央位置で幅がゼロとなる。このため、平面13cの中央位置では台座面13aが設けられない。
【0019】
実施形態では、一例として、保護部材本体10は、光の透過性を有するポリカーボネートで構成されている。光透過性を持たせることで、例えば、刃部2を突き当てる被加工物の位置を視認しやすい等の利点がある。ポリカーボネートを採用することで、軽量で且つ剛性のある保護部材本体10を提供可能となる。
【0020】
一例として、保護部材本体10の厚みD1(
図3B等参照)は、0.5cm以上であってもよく、2.5cm以下であってもよい。或いは、D1=1~2cmであってもよく、D1=1.25~1.75cmであってもよい。厚みD1は、0.01,0.05,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.75,1.0,1.25,1.5,1.75,2.0,2.25,2.5cmでもよく、ここで列挙した値のうち任意の二つの範囲内でもよい。
【0021】
一例として、保護部材本体10は、その直径Φ(
図3A参照)が4cm以上であってもよく、12cm以下であってもよい。あるいは、Φ=5~11cmであってもよく、6~10cmであってもよい。直径Φは、4,5,6,7,8,9,10,11,12cmでもよく、ここで列挙した値のうち任意の二つの範囲内でもよい。
【0022】
図3Aにおける「第1距離Ra1」及び「第2距離Ra2」を参照されたい。第1距離Ra1は、挿通部11の中心位置Qから湾曲面13bまでの距離である。第2距離Ra2は、中心位置Qから平面13cまでの距離である。なお
図3Aの距離Rbは、挿通部11の半径である。この場合において、実施形態では、一例として、平面13cは、「第2距離Ra2の値が、第1距離Ra1の最小値よりも小さくなる部位」を有する。具体的には、実施形態では、一例として、湾曲面13bが平面視で円弧(半径一定の真円の弧)であり、第1距離Ra1はその円弧の半径なので、Ra1は一定値である。また
図3Aの平面視で、平面13cは、「湾曲面13bを仮想的に延長した仮想全円の弦」に対応している。このため、中心位置Qと平面13cとの間の最短距離でRa2<Ra1が成り立つだけでなく、平面13cの全域にわたって湾曲面13bよりも平面13cのほうが中心位置Qに近い。
【0023】
1.3.2.介在部材の構成
図4A及び
図4Bを用いて、介在部材20を説明する。一例として、介在部材20は、太さD2を持つ環状ゴム部材(いわゆるOリング)で構成されている。介在部材20は、保護部材本体10の係合部13(段差部)に取り付けられる。太さD2は任意に設定可能であるが、例えば係合部13の段差の高さh(
図3B及び
図3C参照)と同じでもよい。
【0024】
2.実施形態の作用・効果の説明
図5A及び
図5Bを参照されたい。これらの図では便宜上、保護部材本体10及び介在部材20を断面視で図示している。
図5Aに示すように、各構成の中心軸CLが一致するように工具1及び保護部材8を位置合わせし、係合部13の段差に介在部材20が収まるようにしつつ、把持部3に保護部材8を差し込む。このとき、先に介在部材20を把持部3に通して位置決めしてからその後に保護部材本体10を挿し通してもよいし、或いは、保護部材本体10と介在部材20とを一緒に把持部3に挿し通してもよい。
【0025】
図5Bには取付後の状態が例示されている。実施形態では、係合部13が、介在部材20を介して把持部3に係合する。環状ゴム部材である介在部材20が、工具1(把持部3)と保護部材本体10(係合部13)とに挟み込まれることで、保護部材本体10が把持部3の軸方向に動かないようにすることができる。このように、実施形態では、保護部材本体10が把持部3に対して間接的に係合する。なお、
図5Cに示すように、保護部材本体10及び介在部材20の配置位置は、
図5Bに示す状態よりも深い位置(工具1の先端側の位置)であってもよく、工具1の軸方向における配置位置は、特に限定されるものではない。
【0026】
図5Bの状態で、第1把持部3aを手指で把持してもよく、又は第2把持部3bのうち保護部材8よりも刃部2の側を手指で把持してもよい。刃部2を対象物に突き当てて、例えば把持部3の後端部等をハンマーHMで叩いてもよい。
【0027】
図6A及び
図6Bを参照されたい。
図6Aは、
図5Bの状態における工具1及び保護部材8を、把持部3の後端部側から見た図である。
図6Bは、保護部材本体10を、把持部3の周方向(
図6Bの方向W参照)に角度θだけ回転させた図である。実施形態の特徴の一つとして、挿通部11に把持部3が挿通している状態において、把持部3の周方向(方向W)に回転させられると、回転前と比べて把持部3との係合が強まるように、保護部材本体10が構成されている。
【0028】
ここで、係合を強める作用の一つを述べるために、
図6Bの破線丸P付近の構成を参照されたい。
図6Bにおいて、方向Wの周方向回転によって平面13cの位置が周方向にずれて、壁面13b、13cと把持部3との間隔が狭まる位置が生まれて、当該位置で介在部材20がより強く挟み込まれる。これにより介在部材20の摩擦力が強まり、保護部材本体10と把持部3との間の係合を強めることができる。つまり、保護部材本体10と把持部3との間の係合が強められ、保護部材本体10が把持部3の軸方向に対して移動することを防止することができる。また、逆方向に回転させることで、係合を弱めて、保護部材8を容易に取り外すことができる。このように、実施形態によれば、周方向に沿う保護部材本体10の回転角度に応じて係合力を変化可能に構成されている特徴がある。
【0029】
3.変形例等
3.1.保護部材8の変形例等
3.1.1.挿通部の変形例
保護部材本体10において、挿通部11は、円形開口に限られず、切り欠きでもよい。具体的には、
図7のように、挿通部11が、保護部材本体10の径方向にのびるスリット11aを含んでもよい。スリット11aがあることで把持部3の側方から容易に保護部材本体10をはめ込むことができる。なお、
図7の変形例においても、実施形態と同じくリング状の介在部材20を用いてもよいが、これに限られない。
図7の構成に合わせて、円の一部を切り欠いたC字状の介在部材を採用してもよい。
【0030】
3.1.2.素材のバリエーション
保護部材本体10の素材は、光透過性ポリカーボネートに限定されない。他の任意の樹脂が採用されてもよい。任意の樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、アクリル樹脂、又は、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂といった樹脂を採用することができる。これらの樹脂についても、光透過性を有するものが採用されることが好ましい。任意の弾性材料が採用されてもよく、この場合はゴム又はエラストマーでもよい。任意の金属が採用されてもよい。保護部材本体10の素材は、ハンマーHM等から衝撃が加わったときに破損しない程度の剛性を持つことが好ましい。保護部材本体10の素材は、取り扱い時の重量を増やさないように軽量の素材であってもよく、例えば工具1の素材よりも軽量でもよい。光透過性を有する場合、無色でもよく、有色でもよい。透明度を高めて作業時の視認性を向上させてもよい。光透過性を有さなくともよい。
【0031】
3.1.3.係合部のバリエーション
実施形態における「係合」とは、ある部材(保護部材本体10)と他の部材(工具1)とが間接的又は直接に係わり合うことを意味している。係合することにより、両部材が一部材として取り扱い可能となるように合体する。このような係合を実現する具体的構造に限定はなく、任意の構造の係合部を採用可能である。係合された複数の部材は、実質的に一体化され、実質的に一つの部品として取り扱うことができる。ユーザは、
図5Bの工具セット100(つまり、介在部材20を介して係合された保護部材本体10及び工具1)を、一つの部材として片手で取り扱い可能である。
【0032】
他の例として、保護部材本体10が、把持部3に対して、直接に係合するように構成されてもよい。この場合、保護部材本体10が直接に把持部3に一体化される。一例として、挿通部11と第2把持部3bとが嵌り合うように両部位の直径を規定してもよい。好ましくは挿通部11の内表面における少なくとも一部に、他の係合部として、表面加工又は凹凸面が設けられてもよく、これにより接触時の摩擦力を高めてもよい。挿通部11の表面加工は、フランジ部12等と比べて挿通部11の内周面の面粗さを増大させるものである。挿通部11の凹凸面は、挿通部11の内表面の少なくとも一部に任意形状の凸又は凹を配置したものでもよい。この変形例では、挿通部11の内周面に他の係合部が設けられることになる。したがって係合部13及び介在部材20を省略してもよいが、省略せずに係合部13と当該他の係合部との両方を採用することもできる。
【0033】
これまでに述べたものを含めて、実施形態の係合部には、様々な構成を採用可能である。少なくとも、下記に述べるバリエーションのうち任意の1つ以上を、単独で又は組み合わせて採用可能である。まず係合部の第1の例として、実施形態のように、接触する複数の部材間での押圧力及び摩擦力を利用することができる。係合部の第2の例として、クリップ又はクランプを採用してもよく、クリップで把持部3を挟んだり、クランプで把持部3を締め付けたりすることで、係合を行ってもよい。係合部の第3の例として、把持部3と保護部材本体10とに嵌め合い用の凹凸を形成しておき、これらを嵌め合わせて係合してもよい。係合部の第4の例として、紐やベルトを採用してもよく、把持部3に巻きつけたり結びつけたりすることで係合してもよい。係合部の第5の例として、磁石を採用して磁力で係合してもよく、或いは吸着部材を採用して吸着力で係合してもよい。
【0034】
3.2.工具の変形例等
3.2.1.面粗さの相違
把持部3の表面は、第1把持部3aの表面(以下、「第1表面」とも称す)と、第2把持部3bの表面(以下、「第2表面」とも称す)とに区分可能である。第1表面は第2表面よりも、工具1の刃部2に近い位置に設けられる。これら第1表面及び第2表面は、互いに、面粗さが異なっていてもよい。第2表面の面粗さは、第1表面の面粗さよりも小さくなっていてもよく、この場合には、保護部材8が第2表面に取り付けられる際に、取り付け及び取り外しが容易となる利点がある。
【0035】
3.2.2.取付段部
図8に示すように、把持部3に、取付段部4が形成されてもよい。取付段部4には、保護部材8の少なくとも一部が付き当てられる。取付段部4は、
図8のように段差であってもよいが、変形例として突起であってもよい。実施形態では第1把持部3aと第2把持部3bとの境界位置に取付段部4を設けたが、これに限られず、例えば第2把持部3bの任意位置に取付段部4を設けてもよい。
【0036】
ここで、上述した2つの変形例(面粗さの相違、及び取付段部)を同時に実現可能な例を述べる。本変形例は、旋盤等で工具1を回転させて、第2把持部3bを切削加工又は研磨加工する。十分に深く加工することで、取付段部4を形成可能である。また、第2把持部3bの表面が削られることで、副次的に面粗さを低減可能である。この製造方法で作製された工具1は、取付段部4と面粗さの相違とを同時に提供できる利点がある。
【0037】
ただし、上述した2つの変形例(面粗さの相違、及び取付段部)は、互いに独立の技術的思想として提供可能である。一例として、第2表面を薄く表面加工(研磨)するのみにして、面粗さを低減するだけでもよい。この場合、深い削り加工をしないようにして、取付段部4を形成しなくともよい。これにより、取付段部4を設けずに面粗さを相違させてもよい。また、一例として、鋳造により工具1を形成する場合に、鋳型の形状を
図8の平面視形状としてもよい。これにより、第1表面と第2表面とで面粗さを等しくしつつ、取付段部4を設けてもよい。
【0038】
4.付記
以下、種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[付記1]
刃部及び把持部を有する打撃式の工具に取り付けられ、前記把持部を把持する手指を保護するための保護部材であって、
保護部材本体を備え、
前記保護部材本体は、挿通部と、フランジ部と、係合部とを有し、
前記挿通部は、前記工具の前記把持部を挿入可能に形成され、
前記フランジ部は、前記挿通部を囲むように設けられ、
前記係合部は、前記工具の前記把持部に係合するように構成される、保護部材。
【0039】
[付記2]
付記1に記載の保護部材であって、
介在部材を更に備え、
前記係合部は、前記保護部材本体に形成される段差部で構成され、
前記介在部材は、前記段差部に取り付けられ、
前記係合部が、前記介在部材を介して前記把持部に係合する、保護部材。
【0040】
[付記3]
付記2に記載の保護部材であって、
前記介在部材は、環状のゴム部材で構成されている、保護部材。
【0041】
[付記4]
付記2又は付記3に記載の保護部材であって、
前記段差部は、台座面と、壁面とを有し、
前記台座面は、前記壁面に交差している面であり、
前記壁面は、前記介在部材が前記段差部に取り付けられている状態において、前記介在部材を囲むように形成されている、保護部材。
【0042】
[付記5]
付記4に記載の保護部材であって、
前記壁面は、湾曲面及び平面を有し、
前記挿通部の中心位置から前記湾曲面までの距離を第1距離とし、前記中心位置から前記平面までの距離を第2距離としたときにおいて、
前記平面は、前記第2距離の値が、前記第1距離の最小値よりも小さくなる部位を有する、保護部材。
【0043】
[付記6]
付記4に記載の保護部材であって、
前記壁面は、環状に形成され、
前記台座面は、非環状に形成されている、保護部材。
【0044】
[付記7]
付記1~付記6の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、前記挿通部に前記把持部が挿通している状態において、前記把持部の周方向に回転させられると、前記把持部との係合が強まるように構成されている、保護部材。
【0045】
[付記8]
付記1~付記7の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、光の透過性を有する素材で構成されている、保護部材。
【0046】
[付記9]
付記1~付記8の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、ポリカーボネートで構成されている、保護部材。
【0047】
[付記10]
付記1~付記9の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体の厚みは、2.5cm以下である、保護部材。
【0048】
[付記11]
付記1~付記10の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、平面視形状がリング形状である、保護部材。
【0049】
[付記12]
付記1~付記11の何れか1つに記載の保護部材であって、
前記保護部材本体は、その直径が4cm以上であって、12cm以下である、保護部材。
【0050】
[付記13]
付記1~12の何れか1つに記載の保護部材と、前記工具とを備えた工具セットであって、
前記工具の前記把持部は、第1表面と、第2表面とを有し、
前記第1表面は、前記第2表面よりも、前記工具の前記刃部に近い位置に設けられ、
前記第2表面の面粗さは、前記第1表面の面粗さよりも小さくなっており、
前記保護部材は、前記第2表面に取り付けられる、工具セット。
【0051】
[付記14]
付記13に記載の工具セットであって、
前記把持部には、前記保護部材の少なくとも一部が付き当てられる取付段部が形成されている、工具セット。
【符号の説明】
【0052】
1 :工具
2 :刃部
3 :把持部
3a :第1把持部
3b :第2把持部
4 :取付段部
8 :保護部材
10 :保護部材本体
11 :挿通部
11a :スリット
12 :フランジ部
13 :係合部
13a :台座面
13b :壁面(湾曲面)
13c :壁面(平面)
20 :介在部材
CL :中心軸
D1 :厚み
D2 :太さ
HM :ハンマー
P :破線丸
Q :中心位置
Ra1 :第1距離
Ra2 :第2距離
θ :角度
【要約】
【課題】工具を把持する手指を保護することを目的としている。
【解決手段】刃部及び把持部を有する打撃式の工具に取り付けられ、前記把持部を把持する手指を保護するための保護部材であって、保護部材本体を備え、前記保護部材本体は、挿通部と、フランジ部と、係合部とを有し、前記挿通部は、前記工具の前記把持部を挿入可能に形成され、前記フランジ部は、前記挿通部を囲むように設けられ、前記係合部は、前記工具の前記把持部に係合するように構成される、保護部材が提供される。
【選択図】
図1