(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】医療用具用設置具
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20241024BHJP
A61J 1/16 20230101ALI20241024BHJP
A61G 9/00 20060101ALI20241024BHJP
A61G 7/05 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61G5/10
A61J1/16 D
A61G9/00 Z
A61G7/05
(21)【出願番号】P 2021001789
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020012155
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511286274
【氏名又は名称】株式会社ニシウラ
(73)【特許権者】
【識別番号】592159999
【氏名又は名称】株式会社ケンコー・トキナー
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西浦 伸忠
(72)【発明者】
【氏名】山中 徹
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06409131(US,B1)
【文献】特開2013-111220(JP,A)
【文献】米国特許第04702448(US,A)
【文献】特開2014-166321(JP,A)
【文献】特表2008-538301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00
A61G 1/04
A61G 9/00-15/12;99/00
A61G 7/00-7/16
A61J 1/00-19/06
A47C 19/22
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用具
である医療用バッグを吊り下げるフックかならなる保持部と、
医療器具に接続される
クランプからなる接続具と、
前記保持部を前記接続具に対して自由回転させる自由回転部と、
を備える
医療用具用設置具であって、
前記自由回転部は、上下左右自由な方向に回動する球体と、前記フックが取り付けられる台座と、前記クランプに取り付けられて1軸に回転回動する1軸回転体と、前記球体の回動と前記1軸回転体の1軸回転を停止するロックツマミと、からなり、
前記接続具は、第1握手と、第2握手と、回転軸と、開閉シャフトと、開閉用アームと、からなり、
前記第1握手と前記第2握手は前記回転軸によって回動可能に軸支され、
また、前記第1握手には第1雌ネジが、前記第2握手には第2雌ネジそれぞれ設けられており、
前記開閉シャフトは、前記第1雌ネジに螺入する第1雄ネジと、前記第2雌ネジに螺入する第2雄ネジを備え、前記第1雄ネジと前記第2雄ネジは、左右逆回転のネジとなっており、
前記開閉用アームは前記開閉シャフトを回転させるためのものであり、
前記開閉用アームを一方へ回転させると前記第1握手と前記第2握手が前記回転軸を中心に閉じる方向に回動し、
前記開閉用アームを他方へ回転させると前記第1握手と前記第2握手が前記回転軸を中心に開く方向に回動することを特徴とすることを特徴とする医療用具用設置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導尿バッグやドレーンバッグ等の医療用具や携帯型超音波診断装置に用いる医療用携帯モニター等の医療用具を設置する医療用具用設置具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設では手術が行われると、尿道カテーテルからの尿をためる導尿バッグや、腹腔ドレーンや横隔膜ドレーンなどのドレーンから流出してくる血液、膿などの体液や縫合部から漏れた流出物を溜めておくドレーンバッグが、用いられる。患者がベッドに横たわっているときには、これらのバッグは、身体からの廃液が流れるよう、身体よりも下方に位置するようにベッドに吊り下げられる。また、リハビリの歩行、治療室への移動やトイレなどの移動のときには、導尿バッグやドレーンバッグは、車椅子、点滴スタンド、ストレッチャ、歩行器などに吊り下げられる。
【0003】
これらのバッグは、ベッドの手すりにS字形のSフックで吊り下げられていることが多い。しかし、痛みなどで起きるのが苦しい患者は、手すりを掴むことも多いので、その際にSフックが移動したり落下したりする危険性がある。また、車椅子や歩行器、ストレッチャにSフックでバッグを吊り下げると、患者が触れるだけでなく、坂(増設で廊下に坂がある病院が存在する。)のときにずれるので、フックは固定されることが好ましい。
【0004】
そこで、導尿バッグやドレーンバッグなどの医療用バッグを吊り下げるための吊り具が種々考えられた。たとえば、特許文献1には点滴スタンドなどの縦軸のパイプに取り付ける吊り具が記されている。特許文献2と特許文献3には横軸のパイプに取り付ける吊り具が記されている。特許文献4には垂直に近い傾斜軸のパイプに取り付ける吊り具が記されている。
【0005】
また、最近では各種の医療用診断装置も小型化が進んでおり、これらの診断装置は通常小型の計測器とその結果を表示する小型の表示器とで構成されている。このような小型の診断装置としては、例えばLumify(登録商標)と呼ばれるような携帯型超音波診断装置が知られている。
【0006】
そして、使用する際には計測器は使用者が手に持つ必要があるが、その結果を表示する表示器は、壁等に立てかけて設置したり、或いは非特許文献1のような専用のスタンドを用いて設置したりして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-137549号公報
【文献】特開昭52-45192公報
【文献】実案第3208248号公報
【文献】特開2019-30397号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】MBSメディカルバイオサイエンス|ポータブルエコー用ロールスタンド Lumify(フィリップス社製)専用スタンド、[令和3年1月5日検索]、インターネット〈https://mbs-mk.co.jp/pages/39/detail=1/b_id=200/r_id=1/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~特許文献4のいずれの吊り具も縦軸、横軸、傾斜軸のパイプに共用して使用できるものではなかった。また、パイプの軸径が異なると使用できないものであった。
【0010】
また、小型の診断装置において表示器(医療用携帯モニター)を設置する場合、壁等に立てかけておくと当然ながら安定性が悪い。一方で、非特許文献1のような専用の設置スタンドは、非常に高価なものであり、せっかく小型化により診断装置が利用しやすくなったとしても、高価な専用スタンドの購入が必要になってしまえば、その利用が広がらなくなってしまう。
【0011】
本発明は、医療用バッグや医療用携帯モニター等の医療用具の設置において、ベッド、点滴スタンド、ストレッチャや歩行器など、種々の医療器具に設置できるよう、縦軸、横軸、傾斜軸のいずれのパイプにも設置できる医療用具用設置具を提供することを目的とする。また、異なる径のパイプにも使用できる医療用具用設置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の医療用具用設置具は、医療用具を保持する保持部と、医療器具に接続される接続具と、前記保持部を前記接続具に対して自由回転させる自由回転部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
医療用バッグや医療用携帯モニター等の医療用具の設置において、本発明の医療用具用設置具は、自由回転部を備えるので、縦軸、横軸、傾斜軸のパイプに共用して使用でき、ベッド、車椅子、点滴スタンド、ストレッチャやリハビリ歩行器等、種々の医療器具に広く適用できる。種々の医療器具に広く適用できることは、それぞれの医療器具に適した設置具を準備する必要がなく、費用の削減にもつながることから、非常に好ましい。
【0014】
また、本発明の医療用具用設置具は、前記医療用具を医療用バッグとし、前記保持部は、前記医療用バッグを吊り下げるフックであることを特徴とする。医療用バッグの設置において、本発明の医療用具用設置具は、医療用バッグを設置する従来の吊り具に比べ、様々な医療器具に医療用バッグを設置でき、汎用性が高い。
【0015】
また、本発明の医療用具用設置具は、前記医療用具を医療用携帯モニターとし、前記保持部は、前記医療用携帯モニターを挟持するホルダーであることを特徴とする。医療用携帯モニターの設置において、本発明の医療用具用設置具は、従来のような高価な専用スタンドを必要とせず、また、医療器具を利用して安定して設置することができる。
【0016】
そして、医療用携帯モニターを挟持するホルダーは、スライド機構が備わっていることが好ましい。スライド機構により異なるサイズの医療用携帯モニターに対応することができる。また、ホルダーは、医療用携帯モニターを上下左右で挟持することが好ましい。
【0017】
また、本発明の医療用具用設置は、前記接続具はクランプであることを特徴とする。クランプを備えているので、クランプの仕様の範囲であれば、異なる径のパイプに使用することができるので、更に多くの種類の医療器具に適用できる。車椅子、点滴スタンド、リハビリ歩行器等は、製造メーカによってパイプの径が異なることから、広く適用できることは、それぞれに適した設置具を準備する必要がなく、費用の削減にもつながることから、非常に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Aは本発明の第1実施形態の医療用具用設置具の撮像であり、Bは第1実施形態の要部の構成および使用例1を示す正面図である。
【
図3】Aは自由回転部の回転を示す図であり、BはAと直角方向の回転を示す断面図である。
【
図4】Aは使用例2を示す平面図であり、BはAの正面図である。
【
図5】Aは使用例3を示す平面図であり、BはAの正面図である。
【
図6】Aは使用例4を示す撮像であり、BはAに医療用バッグを吊り下げた撮像である。
【
図7】Aは本発明の第2実施形態の医療用具用設置具の撮像であり、Bはその要部の構成を示す正面図である。
【
図8】Aは第2実施形態の医療用具用設置具を点滴スタンドに取り付けた状態を示す側面の撮像であり、BはAに医療用携帯モニターを取り付けた状態および使用例5を示す側面の撮像である。
【
図9】Aは
図8Bの正面の撮像であり、BはAの医療用携帯モニターを90度回転させた使用例6を示す右前方の撮像である。
【
図10】Aは本発明の第3実施形態の医療用具用設置具の正面図であり、Bはその上面図であり、Cはその左側面図である。
【
図11】Aは第3実施形態におけるホルダーの保持部がスライドした状態の図であり、Bはホルダーの分解図である。
【
図12】Aは第3実施形態の医療用具用設置具を点滴スタンドに取り付けた状態を示す正面からの撮像であり、BはAに医療用携帯モニターを取り付けた状態および使用例7を示す正面からの撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
[第1実施形態]
【0020】
図1~
図3を用いて、第1実施形態の医療用具用設置具100の要部の構成を説明する。第1実施形態の医療用具用設置具100は、医療用具である医療用バッグを吊り下げる設置具である。
図1Aは本実施形態の医療用具用設置具100の試作品の撮像であり、
図1Bは
図1Aの要部の構成を示す正面図である。
図2Aは
図1Bの平面図であり、
図2Bは
図1Bの右側面図である。
図3Aは自由回転部の回転を示す図であり、
図3Bは
図3Aと直角方向の回転を示す断面図である。
【0021】
図1~
図3に示すように、医療用具用設置具100は、医療用具である医療用バッグを吊り下げるフック1と、自由回転部2とクランプ3と、からなる。これらの構成部品の材料は主として表面加工されたアルミニウムやステンレスやゴム材からなる。そして、本実施形態の医療用具用設置具100は、ベッド、歩行器、点滴スタンド、車椅子Wなどの医療器具に、導尿バッグや種々のドレーンバッグを含む医療用バッグを吊り下げて設置するものである。
[フック部]
【0022】
フック1は、医療用具を保持する保持部であり、より具体的には
図1Aに示すように、医療用具である医療用バッグを吊り下げるためのものであり、かぎ型のステンレス製で、自由回転部2の台座22に螺着されている。
[自由回転部]
【0023】
自由回転部2は、医療器具に接続される接続具であるクランプ3に対してフック1を自由回転させるものであり、上下左右自由な方向に回動する球体21と、フック1が取り付けられる台座22と、クランプ3に取り付けられて1軸に回転回動する1軸回転体23からなる。より具体的には、
図3に示すように、自由回転部2は、球体21と、台座22と、1軸回転体23と、第1パネル24と、第2パネル25と、ロックツマミ26と、カバー27と、連結ネジ28と、からなる。
【0024】
図3A、
図3Bに示すように、第1パネル24と第2パネル25は上方に球体21を収容し、下方に1軸回転体23を収容する左右に分離した一対のパネルである。また、第1パネル24と第2パネル25が合わさった上方は開口しており、球体21の連結ボス211が、この開口から露出している。また、第1パネル24と第2パネル25が合わさった下方も開口しており、1軸回転体23の下方が、この開口から露出している。
【0025】
また、球体21の球面212の上部と下部は、それぞれ第1パネル24と第2パネル25の上当接部241、251と下当接部242、252とに当接している。このため球体21は自由方向の軸で摺動することができるため、球体21が自由回動可能となる。そして、球体21から伸びる連結ボス211の先端に台座22が取り付けられている。
【0026】
また、1軸回転体23の上部の側面には係合溝231が設けられている。そして、この係合溝231に嵌入する第1凸部243と第2凸部253が、それぞれ第1パネル24と第2パネル25に設けられている。そして、係合溝231に嵌入する第1凸部243と第2凸部253によって、1軸回転体23は、第1パネル24と第2パネル25に対して1軸回動可能となる。
【0027】
1軸回転体23の下方には連結ネジ28が螺着されている。そして、連結ネジ28の下方には雄ネジ281が形成され、この雄ネジ281によって、1軸回転体23とクランプ3との接続が行われる。
【0028】
ロックツマミ26は、球体21の自由回動と1軸回転体23の1軸回転を停止するためのものである。このロックツマミ26は、ツマミ262と、シャフト261をツマミ262に螺着する取付ネジ263と、ワッシャ264と、からなる。
【0029】
図3Aに示すように、シャフト261には雄ネジ2611が形成されている。また、第1パネル24にはシャフト261が嵌入する貫通孔244が形成され、第2パネル25にはシャフト261の雄ネジ2611が螺入する雌ねじ254が形成されている。そして、シャフト261にワッシャ264が嵌められ、第1パネル24の貫通孔244に挿通され、第2パネル25の雌ねじ254に雄ネジ2611が螺入される。これにより、第1パネル24と第2パネル25が、球体21と1軸回転体23を保持した状態で連結される。
【0030】
そして、ロックツマミ26が右回転されると、第1パネル24と第2パネル25が接近し、球体21の自由回転と1軸回転体23の1軸回転がロックされる。また、ロックツマミ26が左回転されると、第1パネル24と第2パネル25が離間して、球体21の自由回転と1軸回転体23の1軸回転のロックが解除される。このように、シャフト261は球体21と1軸回転体23の間に位置しているので、1つのロックツマミ26の回転操作によって球体21の自由回転と1軸回転体23の1軸回転のロックと解除を同時に行うことができる。なお、第2パネル25の貫通孔254にはカバー27が被されて露出しないようにされている。
【0031】
図1B、
図3Bに示すように、第1パネル24と第2パネル25が向かい合う部分の上部には、連結ボス211の当接を避ける切欠きである溝29が形成されている。このため、台座22は、左右にθ1(約90度)ずつ球体21の360度回転軸を振らすことができる。また、1軸に回転回動する1軸回転体23が第1パネル24と第2パネル25に対して横方向に回転可能となっているため、溝29の方向は自由に変更することができる。
【0032】
なお、本実施形態の自由回転部2は、所謂自由雲台(又は3D雲台など)と呼ばれたりする回転体と同様となっている。また、自由回転部2の構成は、本実施形態とは異なる自由雲台の構造を採用しても構わない。
[クランプ]
【0033】
図1~
図2に示すように、クランプ3は、医療器具に接続される接続具であり、第1握手31と、第2握手32と、回転軸33と、開閉シャフト34と、開閉用アーム35からなる。
【0034】
第1握手31と第2握手32は、回動して医療器具のパイプPを挟んで掴むものである。また、
図1Bに示すように、先端側が各々V字状に曲がっている第1握手31と第2握手32は、回転軸33によって回動可能に軸支されている。そして、第1握手31と第2握手32の挟む部分には、パイプPを傷付けないようするため、ゴム製の第1当接部311、第2当接部321が備え付けられている。
【0035】
また、第1握手31には、回転軸33と共に第1軸312が備わっている。また、第2握手32には、回転軸33と共に第2軸322が備わっている。この第1軸312と第2軸322には回転軸と直角方向に第1雌ネジと第2雌ネジ(図示せず。)が切られている。
【0036】
開閉シャフト34は、第1、第2雌ネジにそれぞれ螺入する第1雄ネジ341と第2雄ネジ342(
図1参照)を備えている。そして、開閉シャフト34の端部には孔が形成されており、開閉シャフト34を回転させるための開閉用アーム35がこの孔に摺動可能に設置されている。なお、摺動で開閉用アーム35が開閉シャフト34から抜けないように、開閉用アーム35の両端をそれぞれ圧し潰して、ストッパ351が形成されている。
【0037】
ここで、開閉シャフト34の第1雄ネジ341と第2雄ネジ342は、左右逆回転のネジとなっている。したがって、
図2Aで開閉用アーム35を右回転させると、第1握手31と第2握手32の先端が回転軸33を中心に閉じる方向(
図1A参照)に回転する。一方、
図2Aで開閉用アーム35を左回転させると、第1握手31と第2握手32の先端が開く方向(
図1A参照)に回転する。
【0038】
なお、第1握手31と第2握手32が挟む寸法は、開閉シャフト34の回転量によって変更可能であるので、掴むパイプPの直径が異なってもよい。また、第1握手31と第2握手32は、V字状の先端側で挟んで掴むので、掴むパイプPの断面が必ずしも円形でなくてもよい。また、クランプ3の形状は、当然ながら本実施形態に限定されるものではなく、パイプPに着脱自在に接続できる形状の接続具であれば、他の形状でも構わない。
【0039】
このように、本実施形態の医療用具用設置具100は、医療用具を保持する保持部であるフック1が自由回転部2を介してクランプ3に接続されている。そして、フック1が取り付けられている自由回転部2の台座22は、
図3Bに示すように第1パネル24と第2パネル25が向かい合う部分の上部に形成された溝29によって左右にθ1(約90度)ずつ動かすことができ、また、この溝29の位置はクランプ3に接続される1軸回転体23によって回転移動できる。
【0040】
したがって、本実施形態の医療用具用設置具100は、クランプ3が取り付けられるパイプPが水平でも、垂直でも、傾斜していてもフック1を所望する角度で取り付けることができる。
図1、
図2は、本実施形態の医療用具用設置具100をベッドの手すりや歩行器などの水平なパイプPへ取り付けた使用例1を示す図である。
【0041】
また
図4は、本実施形態の医療用具用設置具100を点滴スタンドや歩行器や車椅子Wなどの垂直なパイプPへ取り付けた使用例2を示す図である。また
図5は、本実施形態の医療用具用設置具100を車椅子Wや歩行器などの傾斜するパイプPへ取り付けた使用例3を示す図である。
【0042】
また、使用例1~使用例3では、医療用具用設置具100のフック1の向きが横向きになるようにして用いた使用例を示している。しかしながら、本実施形態の医療用具用設置具100の使用例は、フック1の向きを横向きに限定するものではない。
【0043】
例えば、
図6Aの車椅子Wでの使用例4に示すように、フック1の向きを上向きにして使用してもよい。
図6Bは
図6Aの医療用具用設置具100に導尿バッグからなる医療用バッグBを吊り下げたものである。このような使用例は、医療用バッグBと床との距離がより離れることから、医療用バッグBと床との接触をより一層防ぐことができる。
【0044】
ところで、導尿バッグが床と接触すると、導尿バッグから伸びる導尿カテーテルを介して患者が感染する恐れがある。医療用具用設置具100は、
図6のような使用例により、このような感染をより防ぐことができる。また、導尿バッグからの感染の恐れは、車椅子Wのタイヤと医療用バッグBとが接触することでも生じうる。しかしながら、医療用具用設置具100は、例えば、
図6の車椅子Wで示している使用例の垂直なパイプだけでなく、その前方に位置する傾斜したパイプに対しても取り付けることができる。このような使用例は、車椅子Wの後輪との距離をより離すことができるので、タイヤとの接触による感染を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態の医療用具用設置具100は、接続具としてクランプ3を用いたが、他の接続具(例えば、固定用ベルトなど)を用いることもできる。しかしながら、本実施形態の医療用具用設置具100は、接続具としてクランプ3を用いており、クランプ3を用いることで医療器具への脱着が容易である。また、医療用具用設置具100は、本実施形態のクランプ3で取り付けるので、パイプPの径が異なっても、クランプ3の仕様範囲であれば取り付けが可能である。例えば、本実施形態のクランプ3の仕様範囲は15mm~44mmであり、歩行器(歩行車)の横向きの細い連結パイプでも、歩行器の腕支持部とキャスター部を連結する太い支柱でも、取り付けることができる。
【0046】
また、本実施形態の医療用具用設置具100の保持部であるフック1は1本であったが、二股フックのようにフック2本、あるいはそれ以上であっても構わない。複数のフックを有することで医療用具用設置具は、医療用具である医療用バッグを安定させて吊り下げておくことができる。また、複数のフックを有することで医療用具用設置具は、医療用バッグだけでなく、他の物(例えば、ベッドで用いる場合には、一方にゴミ袋を吊り下げる)の吊り下げによる設置に利用することもできる。
【0047】
また、医療用具用設置具100は、導尿バッグやドレーンバッグだけでなく輸血バッグの吊り下げに用いても構わない。輸血バッグは通常であれば点滴スタンドを用いて使用されるが、災害時や災害時の屋外など、点滴スタンドが確保できない場合も想定される。このような場合であっても、本実施形態の医療用具用設置具100があれば、周辺のパイプ状のものを利用して輸血バッグの吊り下げを行うことも可能となる。
[第2実施形態]
【0048】
図7、
図8を用いて第2実施形態の医療用具用設置具100Aの構成を説明する。本実施形態の医療用具用設置具100Aは、医療用具である医療用携帯モニターMを点滴スタンドSに設置する設置具である。
図7Aは第2実施形態の医療用具用設置具100Aの撮像であり、
図7Bは第2実施形態の要部の構成を示す正面図である。
図8Aは医療用具用設置具100Aを点滴スタンドSに取り付けた状態を示す側面の撮像であり、
図8Bは
図8Aに医療用携帯モニターMを取り付けた状態の使用例5を示す側面の撮像である。
【0049】
なお、本実施形態の医療用具用設置具100Aにおいては、第1実施形態の医療用具用設置具100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
【0050】
図7、
図8に示すように、医療用具用設置具100Aは、医療用具である医療用携帯モニターMを挟持するホルダー4と、ホルダー4が連結される自由回転部2Aと、自由回転部2Aが連結されるクランプ3と、からなる。
【0051】
なお、医療用具である医療用携帯モニターMとしては、その一例として、例えば、携帯型超音波診断装置であるLumify(登録商標)に用いられている医療用携帯モニターMが想定される。しかしながら、その他の小型の診断装置に用いられる医療用携帯モニターでも構わない。例えば、小型心電図のような診断装置に用いられる医療用携帯モニター等が想定される。
【0052】
ホルダー4は、医療用具を保持する保持部であり、
図8Bに示すように、医療用具である医療用携帯モニターMを挟持するためのものである。より具体的には、ホルダー4は、医療用携帯モニターMを挟持する一対の保持部41を備える。一対のこの保持部41にはV字部411が形成され、
図8Aに示すように互いにV字状の形状となっている。また、一対の保持部41は、図示せぬ付勢手段により互いに近づく方向に付勢されている。
【0053】
そして、この保持部41を互いに引き離す方向に伸ばした後(
図8の(A)から(B)の状態)、医療用携帯モニターMを挟むことで、医療用携帯モニターMは、保持部41の付勢力によってホルダー4に保持される。保持部41にはこのように、付勢力を用いたらスライド機構が備わっている。
【0054】
なお、このようなホルダー4として、例えば、株式会社ケンコー・トキナーが販売する「SLIK スマホ&タブレットホルダー」を用いることができる。ただし、ホルダー4は、ここで例示したものに限定されるわけではなく、医療用携帯モニターMを挟持や螺着等で保持できるものであればよい。
【0055】
自由回転部2Aは、第1実施形態の自由回転部2から台座22を除去したものであり、連結ボス211がホルダー4に螺入することで、ホルダー4と自由回転部2Aが連結される。なお、自由回転部2Aとクランプ3の連結方法は第1実施形態と同一である。
【0056】
このような構成により、第2実施形態の医療用具用設置具100Aも第1実施形態と同様に、クランプ3が取り付けられるパイプPが水平でも、垂直でも、傾斜していてもホルダー4を所望する角度で取り付けることができる。
【0057】
図8B、
図9Aは本実施形態の医療用具用設置具100Aの使用例5であり、医療用具用設置具100Aが点滴スタンドSに取り付けられている。
図9Bは使用例6であり、
図9Aの状態から連結ボス211を回転させることにより、医療用携帯モニターMを90度回転させている。
【0058】
このように本実施形態の医療用具用設置具100Aは、医療用具の医療用携帯モニターMを保持する保持部であるホルダー4により、医療用携帯モニターMを医療器具である点滴スタンドSに設置することができる。従って、医療用携帯モニターMを壁等に立てかけておく場合に比べ、非常に安定して設置しておくことができる。また、医療用携帯モニターMの設置に、医療現場に多数存在する点滴スタンドS、或いはベッドやストレッチャ、リハビリ歩行器、車椅子等、医療器具のパイプPを利用することができるため、医療用具用設置具100Aを用いることで、高価な専用の設置スタンドを必要としない。また、医療用具用設置具100Aを用いて医療用携帯モニターMをこのように設置できることは、例えば、災害現場等においても非常に有効である。
[第3実施形態]
【0059】
次に
図10を用いて第3実施形態の医療用具用設置具100Bの構成を説明する。本実施形態の医療用具用設置具100Bは、第2実施形態と同様に医療用具である医療用携帯モニターMを(医療器具の一例である)点滴スタンドSに設置する設置具である。
図10Aは第3実施形態の医療用具用設置具100Bの正面図であり、
図10Bはその上面図であり、
図10Cはその左側面図である。
【0060】
なお、本実施形態の医療用具用設置具100Bにおいては、第1実施形態の医療用具用設置具100や第2実施形態の医療用具用設置具100Aと構成が同一の部分については同一の参照符号を適宜付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「B」を付す。
【0061】
医療用具用設置具100Bは、第2実施形態の医療用具用設置具100Aと同様に、医療用具である医療用携帯モニターMを挟持するホルダー4Bと、ホルダー4Bが連結される自由回転部2Bと、自由回転部2Bが連結されるクランプ3Bと、からなる。そして、この医療用具用設置具100Bは、医療用携帯モニターMを挟持するホルダー4Bの構造が第2実施形態の医療用具用設置具100Aと大きく異なっている。
【0062】
ホルダー4Bは、医療用具を保持する保持部であり、医療用モニターMを挟持するためのものである。より具体的には、
図10に示すように、ホルダー4Bは、板状のベース板44と、上保持部45、右保持部46、左保持部47、第1下保持部48、第2下保持部49を備える。
【0063】
このホルダー4Bは、
図10Aの正面視の状態から、
図11Aに図示するように、矩形状のベース板44に対して上保持部45が上方向に、左保持部47と第2下保持部49とが左方向にスライドできるようになっている。この点について、詳細に説明する。なお、
図11Bは、ホルダー4Bの分解図である。
【0064】
上保持部45は、鈎状の受部45aと、スライド用の長孔からなる開口部45bが形成されたガイド片45cとからなる。なお、
図11Bにおいて、参考のために上保持部45の側面図をその左側の一点鎖線で囲った領域に示す。
【0065】
左保持部47と第2下保持部49は、
図11Bに示すように一体で形成された一つの部品からなり、それぞれ鈎状の受部47aと受部49aを有し、また共通のスライド用の長孔からなる開口部47bが形成されたガイド片47cを有している。なお、
図11Bにおいて、参考のために左保持部47と第2下保持部49の側面図をその下側の一点鎖線で囲った領域に示す。
【0066】
右保持部46は、鈎状の受部46aと、二つの固定孔46bが形成された固定片46cとからなる。なお、
図11Bにおいて、参考のために右保持部46の側面図をその上側の一点鎖線で囲った領域に示す。また、第1下保持部48は、右保持部46と同じ構造となっているため説明を省略する。
【0067】
そして、上保持部45は、ベース板44の背面側において、ベース板44に設けられた取付孔44aを介してローレット加工されたローレットノブ51(
図10Bを参考)と、ボルト51aによってベース板44に取り付けられている。
【0068】
一体部品である左保持部47と第2下保持部49は、ベース板44の背面側において、ベース板44に設けられた取付孔44bを介してローレット加工されたローレットノブ52(
図10Bを参考)と、ボルト52aによってベース板44に取り付けられている。なお、ガイド片47cと上保持部45のガイド片45cとの干渉を防ぐため、ベース板44の背面側には段部44e(
図10Cを参考)が設けられている。
【0069】
右保持部46は、ベース板44の背面側において、ベース板44に設けられた2つの取付孔44cを介してボルト(図示せず)によってベース板44に取り付けられている。第1下保持部48も同様に、ベース板44の背面側において、ベース板44に設けられた2つの取付孔44dを介してボルト(図示せず)によってベース板44に取り付けられている。
【0070】
そして、例えば、上保持部45を
図10Aの状態から、
図11Aの状態に(或いはその逆の状態に)スライドさせる場合、まずローレットノブ51を緩める方向に回してガイド片45cをスライドさせ、つぎにローレットノブ51を締める方向に回してガイド片45cを固定させる。また、左保持部47と第2下保持部49を
図10Aの状態から、
図11Aの状態にスライドさせる場合も、ローレットノブ52を用いて同様に行う。このように、ホルダー4Bには、上保持部45と、一体部品の左保持部47と第2下保持部49とにスライド機構が備わっている。
【0071】
このような構成のホルダー4Bによって、例えば、医療用携帯モニターMが7インチ程度の大きさの場合には、
図10Aのような状態で医療用携帯モニターMを固定し、12.9インチ程度の大きさの場合には
図11Aのような状態で固定することができる。また、医療用携帯モニターMが縦長タイプや横長タイプの何れであっても、このホルダー4Bは対応することができる。
【0072】
また、医療用携帯モニターMは、高い耐久性や耐衝撃性が要求されることから、一般的なモニターよりも厚く、例えば24mm程度の厚さのものが用いられることもある。このような厚いタイプのものでもしっかり保持できるよう本発明者が様々な検証を行ったところ、各保持部の受部45a、46a、47a、48a、49aは、
図11Bで示した受部45aの大きさが適している。また、ベース板44の表面には、耐衝撃性を高めるためにクッション材53(本実施形態では4か所)を取り付けておくとよい。
【0073】
自由回転部2Bは、第1、第2実施形態の自由回転部と略同様であり、連結ボス211の先端にホルダー4Bと固定する台座22Bが設けられている。この台座22Bには、接続プレート54がボルトで固定され、この接続プレー54とベース板の(4つの)固定孔44fを介して、ホルダー4Bの背面にボルトで固定される。
【0074】
クランプ3Bは、本実施形態において所謂C型クランプといわれる構造となっている。なお、
図10Bにおいては、クランプ3Bにおける、ネジ36端のアゴ37とハンドル38について、二つ状態(口が開いた状態と閉じた状態)を図示している。そして、クランプ3Bによって、医療現場に存在するパイプ状のもの(例えば点滴スタンド)や板状のもの(例えばテーブル)等、様々なものに医療用具用設置具100Bを固定することができる。
【0075】
図12Aは医療用具用設置具100Bを点滴スタンドSに取り付けた状態の撮像であり、
図12Bは医療用携帯モニターMを取り付けた状態の使用例7の撮像である。また、
図13Aは使用例7の背面斜め左側の撮像であり、
図13Bは使用例7の背面斜め右側の撮像である。本実施形態の医療用具用設置具100Bは、実際にこのようにして使用することができる。
【0076】
そして、医療用具用設置具100Bは、第1実施形態と同様、自由回転部2Bに1軸回転体23を備えていることから、ロックツマミ26の回転させることで、1軸回転体23のロックを解除することができるので、1軸回転体23の回転により、医療用携帯モニターMを90度回転させて使用することもできる。
【0077】
このように本実施形態の医療用具用設置具100Bは、医療用具の医療用携帯モニターMを保持する保持部であるホルダー4Bにより、医療用携帯モニターMを医療器具である点滴スタンドSに設置することができる。従って、医療用携帯モニターMを壁等に立てかけておく場合に比べ、非常に安定して設置しておくことができる。また、医療用携帯モニターMの設置に、医療現場に多数存在する点滴スタンドS、或いはベッドやストレッチャ、リハビリ歩行器、車椅子等、医療器具のパイプPを利用することができるため、医療用具用設置具100Bを用いることで、高価な専用の設置スタンドを必要としない。また、医療用具用設置具100Bを用いて医療用携帯モニターMをこのように設置できることは、例えば、災害現場等においても非常に有効である。また、第2、第3実施形態におけるホルダーにはスライド機構が備わっているため、様々なサイズの医療用携帯モニターMに対応することができる。特に、急遽異なる医療用携帯モニターMを使用するようなことが生じた場合、このように様々なサイズに対応できるスライド機構は重要である。
【0078】
更には、医療用具用設置具100Bは、医療用携帯モニターMに対して上下左右で挟持できるよう、上下左右の保持部を備える構成となっているため、第2実施形態の医療用具用設置具100Aに比べ、より強固に医療用携帯モニターMを挟持することができる。また、上保持部45が上方向に、一体部品の左保持部47と第2下保持部49とが左方向にスライドできるようになっており、右保持部46と第1下保持部48は、ベース板44に固定された構造となっているため、大きさの異なるモニターを保持する場合に、4辺それぞれ調整する必要がない。したがって、医療用具用設置具100Bは、右保持部46と第1下保持部48を基準にして、他の保持部をスライドさせて調整するだけでよい。このような構造は、緊急性を要する医療現場や、できるだけ少ない操作で確実性が要求される医療現場において非常に好ましい。
【0079】
また、医療用具用設置具100Bは、第1下保持部48、第2下保持部49という二つの部品で医療用携帯モニターMの下方を挟持することから、より確実に安定して挟持しておくことができる。また、医療用具用設置具100Bを使って医療用携帯モニターMを挟持する作業の際に、まず、医療用携帯モニターMの下方を第1下保持部48の受部48aと第2下保持部49の受部49aに、医療用携帯モニターMの右側を右保持部46の受部46aにセットすると、非常に安定した状態となるため、その後の作業が非常に行いやすい。
【符号の説明】
【0080】
100、100A、100B:医療用具用設置具
1:フック
2、2B:自由回転部
21:球体
22:台座
23:1軸回転体
24:第1パネル
25:第2パネル
26:ロックツマミ
29:溝
3、3B:クランプ
31:第1握手
32:第2握手
4、4B:ホルダー
41:保持部
M:医療用携帯モニター
S:点滴スタンド
W:車椅子