IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サタケの特許一覧 ▶ 佐竹機械(蘇州)有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図1
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図2
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図3
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図4
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図5
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図6
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図7A
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図7B
  • 特許-穀物のタンパク質含有量の取得方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】穀物のタンパク質含有量の取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20241024BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N21/27 A
A01G7/00 603
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022553242
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036776
(87)【国際公開番号】W WO2022070232
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(73)【特許権者】
【識別番号】523238494
【氏名又は名称】佐竹機械(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SATAKE MANUFACTURING(SUZHOU)CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】229 Jin Feng Road, Suzhou New District, Suzhou City, Jiangsu Province 215129 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡橋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】崔 明達
(72)【発明者】
【氏名】河野 元信
【審査官】橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-250827(JP,A)
【文献】特開2013-231645(JP,A)
【文献】特開2020-150887(JP,A)
【文献】特開2008-161157(JP,A)
【文献】特開2020-074773(JP,A)
【文献】特開2017-125705(JP,A)
【文献】特開2008-136411(JP,A)
【文献】特開2019-033720(JP,A)
【文献】特開2016-123369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0272971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
A01G 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートセンシングによって成熟期における穀物のタンパク質含有量予測値を取得するタンパク質含有量予測工程と、
グランドトゥルースによって収穫直前期の前記穀物のサンプルから該穀物のタンパク質含有量実測値を取得するタンパク質含有量実測工程と、
前記タンパク質含有量予測値を前記タンパク質含有量実測値によって補正し、前記穀物のタンパク質含有量補正予測値を取得するタンパク質含有量補正工程と、を有し、
前記タンパク質含有量予測工程は、前記リモートセンシングによって撮像した圃場の撮像データに、複数の区画からなるマス目を被せて該複数の区画毎に前記タンパク質含有量予測値を取得するとともに、周辺区画との偏差が最も小さいタンパク質含有量予測値を有する区画を、前記穀物のサンプルを採取する基準圃場として決定する工程を含む
ことを特徴とする穀物のタンパク質含有量の取得方法。
【請求項2】
前記リモートセンシングは、自立飛行が可能な無人航空機を備え、該無人航空機には撮像手段が搭載されている
ことを特徴とする請求項1に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法。
【請求項3】
前記タンパク質含有量補正予測値に対して所定の閾値を設定する工程を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法。
【請求項4】
前記圃場における前記タンパク質含有量補正予測値の分布範囲をマッピングして表示することが可能な分布マップ表示工程を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法。
【請求項5】
前記圃場における施肥実績を記録する施肥実績記録工程を有し、
前記分布マップ表示工程では、前記圃場のマッピングデータに、前記施肥実績を合成して表示することが可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物のタンパク質含有量の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、籾のタンパク含有率を予測する方法として、実際に籾を収穫する時期よりも前に、籾のタンパク含有率を予測する方法(特許文献1を参照)がある。すなわち、収穫前の圃場の稲を地上から撮像して籾のタンパク含有率の予測値を求め、所定のタンパク含有率を閾値として、閾値に基づいて籾を仕分けて収穫するものである。
【0003】
穀物処理施設に荷受けした収穫後の籾を、タンパク含有率に応じて仕分け・乾燥する方法として、収穫されて荷受けした籾からサンプルを採取し、光学分析機によってタンパク含有率を実測して仕分け・乾燥から貯蔵する方法(特許文献2を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-101768号公報
【文献】特開2018-179436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法にあっては、リモートセンシングによって、実際に収穫する時期よりも前の圃場を撮像し、籾のタンパク含有率を予測するものであるため、その後、籾を収穫するまでの間に、生育や気象条件などの影響によって籾のタンパク含有率が変化する可能性がある。
【0006】
上記した特許文献2に開示された方法にあっては、荷受けした籾からタンパク含有率を測定し、その測定結果が出るまでの時間的なロスによって、穀物処理施設で荷受け渋滞が発生してしまうという可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、穀物のタンパク質含有量を高精度に予測可能な、穀物のタンパク質含有量の取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、リモートセンシングによって成熟期における穀物のタンパク質含有量予測値を取得するタンパク質含有量予測工程と、グランドトゥルースによって収穫直前期の前記穀物のサンプルから該穀物のタンパク質含有量実測値を取得するタンパク質含有量実測工程と、前記タンパク質含有量予測値を前記タンパク質含有量実測値によって補正し、前記穀物のタンパク質含有量補正予測値を取得するタンパク質含有量補正工程と、を有することを特徴とする穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記タンパク質含有量予測工程は、前記リモートセンシングによって撮像した圃場の撮像データに、複数の区画からなるマス目を被せて該複数の区画毎に前記タンパク質含有量予測値を取得するとともに、周辺区画との偏差が最も小さいタンパク質含有量予測値を有する区画を、前記穀物のサンプルを採取する基準圃場として決定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記リモートセンシングは、自立飛行が可能な無人航空機を備え、該無人航空機には撮像手段が搭載されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記タンパク質含有量補正予測値に対して所定の閾値を設定する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記圃場における前記タンパク質含有量補正予測値の分布範囲をマッピングして表示することが可能な分布マップ表示工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記圃場における施肥実績を記録する施肥実績記録工程を有し、前記分布マップ表示工程では、前記圃場のマッピングデータに、前記施肥実績を合成して表示することが可能であることを特徴とする請求項5に記載の穀物のタンパク質含有量の取得方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、リモートセンシングによって取得した穀物の成熟期におけるタンパク質含有量予測値を、収穫直前期に穀物のサンプルから取得した穀物のタンパク質含有量実測値で補正し、穀物のタンパク質含有量補正予測値を取得することが可能となっている。このような構成により、従来よりも、より高精度に圃場における収穫直前の穀物のタンパク質含有量を予測することが可能となる。さらに、収穫直前期において高精度なタンパク質含有量が予測可能となる。これにより、例えば、タンパク質含有量の少ない良食味米を仕分けて収穫することが可能となり、歩留りや品質の向上・安定化を促すことが可能となる。さらに、穀物をタンパク質含有量に応じて、仕分けて収穫が可能となるので、穀物処理施設における仕分けの負担が軽減され、仕分け装置に関わる設備投資を行うことなく、利益の拡大を図ることが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、タンパク質含有量予測工程では、撮像した圃場の撮像データに複数の区画からなるマス目を被せ、それぞれの区画におけるタンパク質含有量予測値を取得し、さらに、周辺区画との偏差が最も小さいタンパク質含有量予測値を有する区画を、グランドトゥルースにおいて穀物のサンプルを採取する基準圃場として決定している。このような構成により、穀物のサンプルを採取しに行く際、GPSなどによる若干の位置誤差があっても、基準圃場の正確な位置にたどり着くことが可能となる。これにより、タンパク質含有量予測値を精度よく補正することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、リモートセンシングでは、自立飛行が可能な無人航空機を使用することにより、低空飛行や計画ルート飛行を容易に行うことができる。さらに、次年度以降、再び圃場を撮影する場合に同じ飛行ルートで圃場の撮像データを取得することが可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、タンパク質含有量補正予測値に対して、所定の閾値を設定する。これにより、高品質な穀物、例えば、タンパク質含有量の少ない良食味米を仕分けて収穫することが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、圃場におけるタンパク質含有量補正予測値の分布範囲をマッピングして表示することにより、効率的に圃場における収穫計画を策定することが可能となる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、圃場における施肥実績を記録し、前述したマッピング表示に、上記施肥実績を合成して出力表示することが可能となる。これにより、例えば、前年に収穫した穀物のタンパク質含有量と、前年の施肥実績に基づいて、翌年の施肥を適切に行って、より高品質の穀物を収穫することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における、リモートセンシングの態様を示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における、圃場の撮像データに、各区画における圃場情報を算出して表示した圃場の平面図である。
図3図2のA部の拡大平面図である。
図4】本発明の一実施形態における、第1ステップのフロー図である。
図5】本発明の一実施形態における、第2ステップのフロー図である。
図6】本発明の一実施形態における、第3ステップのフロー図である。
図7A】本発明の一実施形態における、タンパク質含有率の補正前後の収穫量とタンパク質含有率との関係を示したグラフであって、補正後のタンパク質の含有率が補正前のタンパク質の含有率よりも低く予測される場合のグラフである。
図7B】本発明の一実施形態における、タンパク質含有率の補正前後の収穫量とタンパク質含有率との関係を示したグラフであって、補正後のタンパク質の含有率が補正前のタンパク質の含有率よりも高く予測される場合のグラフである。
図8】本発明の一実施形態における、圃場のマップ表示の態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の穀物のタンパク質含有量の取得方法について、その一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態を用いることにより、リモートセンシングにて圃場1の撮像データ2を取得し、収穫時における穀物のタンパク質含有量を高い精度で予測して取得することができる。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態では、撮像手段であるカメラ11を搭載した、自立飛行が可能な無人航空機10によって、水稲が栽培されている圃場1の上空から撮影を行って圃場1の撮像データ2を取得する。無人航空機10には、GPS機器や電子コンパス、加速度センサー等が搭載されており、プログラムに従って低空飛行や、計画された飛行ルートに従った飛行を容易に行うことができる構成となっている。
【0023】
上記のような無人航空機10の構成によって、例えば、次年度以降に再び圃場1を撮影する場合、飛行履歴などのデータに基づいて、前年度と同じ飛行ルートで圃場1の撮像データ2を取得することが可能となる。圃場1の撮像データ2は無人航空機10に搭載された記憶媒体に記録することも可能であるが、リモートセンシング処理装置となる不図示のコンピュータに対して、リアルタイムで圃場1の撮像データ2が無線送信されるように構成することも可能である。
【0024】
本実施形態におけるカメラ11は、所定の解像度を有するCCDを備えており、可視画像のほか、帯域フィルタを介して近赤外画像を撮像することが可能となっている。そして、リモートセンシング処理装置において撮像データ2の画像解析を行い、図2に示すような、圃場1における圃場情報4を入出力することが可能となっている。
【0025】
リモートセンシング処理装置は、図2に示されるように、撮像した圃場1の撮像データ2に対して複数の区画31からなるマス目3を被せる処理を行い、それぞれの区画31における圃場情報4を算出する。図2には、圃場1の撮像データ2に、各区画31における圃場情報4を表示した圃場1の平面図が示されており、圃場情報4として、リモートセンシングによって取得した比植生指数(RVI)を葉身窒素量に換算した値が出力表示されている。
【0026】
本実施形態では、リモートセンシングによって取得した各区画31の葉身窒素量の予測精度を向上させるため、図3に示すように、圃場1内の複数の区画(a、bはそれぞれ約3m)の中から、基準圃場32を決定している。図3には、籾のタンパク質含有量の予測値に対応する葉身窒素量の値が区画31ごとに示されている。そして、基準圃場32の決定に際しては、コンピュータ処理によって、区画31の葉身窒素量のバラツキ(偏差)が最も小さくなる9区画を探し、その中央の区画31を基準圃場32に決定している。上記した9区画が圃場1内で複数箇所確認された場合は、各9区画の中央の区画31の葉身窒素量が、最も小さい区画31を基準圃場32として決定する。
【0027】
上記のような基準圃場32の決定方法によれば、決定した基準圃場32に稲葉や籾のサンプルを採取しに行く際、GPSなどによる位置誤差が2メートル程度あったとしても、ほぼ正確な基準圃場32のある位置にたどり着いて稲葉や籾のサンプルを採取することが可能となる。
【0028】
基準圃場32で採取された稲葉や籾のサンプルは、それぞれ専用の光学分析装置によって測定され、葉身窒素量やタンパク質含有量を求めることができる。例えば、籾のタンパク質含有量を測定する際は、食味計(型式:RPTA11B、株式会社サタケ社製、登録商標)を利用することが可能である。ただし、籾の状態と処理された玄米の状態とではタンパク質含有量が異なるため、実績データに基づく換算処理をして、玄米のタンパク質含有量を求めることが可能である。稲葉の葉身窒素量は、公知の葉身窒素測定器によって測定することが可能であり、葉身窒素量と籾又は玄米のタンパク質含有量は相関関係にあるため、リモートセンシングによって取得した葉身窒素量から、籾又は玄米のタンパク質含有量を予測することが可能である。
【0029】
続いて、本実施形態における穀物のタンパク質含有量の取得方法について、各実施工程の一例を説明する。以下に説明する実施形態は、籾のタンパク質含有量の取得するものである。
【0030】
(第1ステップ)
図4には、生育段階における施肥診断のプロセスが示されている。出穂の2~3週間前にあたる幼穂形成期から減数分裂期ごろにかけて、リモートセンシングによって、圃場1における稲体の葉身窒素量情報を取得する(S100)。さらに、上記リモートセンシングの実施時期と同時期に、グランドトゥルースによって圃場1の基準圃場32において稲葉のサンプルを採取し、葉身窒素測定器によって稲葉の葉身窒素量情報を取得する(S101)。
【0031】
続いて、リモートセンシングによって取得した圃場1における稲体の葉身窒素量情報を、グランドトゥルースによって取得した基準圃場32における稲葉のサンプルの葉身窒素量情報によって補正する(S102)。すなわち、圃場1の撮像データ2を解析して得られた稲体の葉身窒素量情報を、稲葉のサンプルから実測した葉身窒素量情報によって補正することにより、リモートセンシングによって取得した稲体の葉身窒素量情報の予測精度を高めることが可能となる。
【0032】
本実施形態では、圃場1における施肥実績を記録する施肥実績記録工程を有しており、過去における肥料の散布実績を記録・蓄積している。そこで、本実施形態では、これまで蓄積された施肥実績データと収穫した籾の品質データから、目標とする品質に応じた施肥の診断を行っている(S103)。例えば、タンパク質含有率が6.5%以下の良食味米をより多く収穫するための施肥診断を行う。すなわち、第1ステップは、幼穂形成期から減数分裂期ごろの稲体の葉身窒素量を正確に把握し、散布する肥料の量をコントロールして、より多くの良食味米を得るための施肥診断工程となる。
【0033】
(第2ステップ)
図5には、成熟期における籾のタンパク質含有量予測工程のプロセスが示されている。収穫適期の2~3週間前ごろにあたる登熟期ごろにおいて、リモートセンシングによって、圃場1における稲体の葉身窒素量情報を取得する(S200)。さらに、上記リモートセンシングの実施時期と同時期に、グランドトゥルースによって圃場1の基準圃場32において稲葉のサンプルを採取し、稲葉の葉身窒素量情報を取得する(S201)。
【0034】
続いて、リモートセンシングによって取得した圃場1における稲体の葉身窒素量情報を、グランドトゥルースによって取得した基準圃場32における稲葉のサンプルの葉身窒素量情報によって補正する(S202)。そして、S202によって得られた、補正された稲体の葉身窒素量情報に基づいて、成熟期における籾のタンパク質含有量予測値を算出する(S203)。このようにして得られた圃場1における籾のタンパク質含有量予測値に基づいて、事前に良食味米となる籾を仕分けて収穫するための収穫計画の策定を、一次仕分けとして行う(S204)。例えば、良食味米となる籾のタンパク質含有量予測値を閾値として設定し、良食味米となる籾が分布する圃場1の区画31を特定して収穫計画を策定することが可能となる。これにより、精度良く仕分けて良食味米となる籾を収穫することが可能となる。
【0035】
(第3ステップ)
図6には、前述した第2ステップにおいて算出した籾のタンパク質含有量予測値を収穫直前期に補正するタンパク質含有量補正工程のプロセスが示されている。収穫直前期となる収穫予定日の2~3日前ごろに、圃場1内の基準圃場32において籾のサンプルを採取し、食味計(登録商標)を使用して籾のタンパク質含有量実測値を取得する(S300)。そして、実測した籾のタンパク質含有量実測値と、第2ステップにおいて求めた基準圃場32における籾のタンパク質含有量予測値との差分を求める。そして、当該差分を複数の区画31ごとに一律に加減調整することにより、タンパク質含有量補正予測値を算出する(S301)。
【0036】
以上のようにして得られた圃場1における籾のタンパク質含有量補正予測値に基づいて、実際の収穫計画の策定を二次仕分けとして行う(S302)。例えば、良食味米となる籾のタンパク質含有量補正予測値を閾値として設定し、良食味米となる籾が分布する圃場1の区画31を特定して収穫計画を策定することが可能となる。これにより、精度良く仕分けて良食味米となる籾を収穫することが可能となる。
【0037】
図7A及び図7Bには、収穫直前期に取得した籾のタンパク質含有量実測値による補正前後の籾の収穫量とタンパク質含有率Pの関係が示されている。図7A及び図7Bには、補正後の圃場1における籾のタンパク質含有量補正予測値の分布範囲が実線で示され、補正前の圃場1における籾のタンパク質含有量予測値の分布範囲が破線で示されている。
【0038】
図7Aの補正後の予測分布に示されるように、補正前の予測分布よりも、多くの籾が良食味米とされる範囲に分布していることがわかる。このように、収穫直前期となる収穫予定日の2~3日前ごろに、サンプルとして採取した籾のタンパク質含有量を実測して、タンパク質含有量補正予測値を取得することにより、より現実のタンパク質含有量に近い籾のタンパク質含有量の予測が可能となる。このことによって、多くの良食味米を確実に仕分けて収穫することが可能となる。
【0039】
図7Bには、良食味米とされる籾の分布範囲が、補正前よりも補正後の方が少なくなってしまった例が示されている。このような場合であっても、当初の予測に反して良食味米とされる籾の収穫量が減ることを把握することができる。さらに、良食味米とされる籾が分布する圃場1の区画31を正確に特定することができ、確実に良食味米とされる籾を仕分けて収穫することが可能となる。また、このような品質データを施肥実績とともに蓄積することにより、次年度以降の施肥計画を見直すことが可能となる。
【0040】
以上、本実施形態における籾のタンパク質含有量の取得方法について説明した。上記したような方法により、高精度に籾のタンパク質含有量を予測し、籾の品質に応じた収穫計画を策定することが可能となり、歩留りや品質の向上・安定化を促すことが可能となる。さらに、従来のような、穀物処理施設に荷受けした後に、籾のタンパク質含有率を測定して仕分ける時間的なロスを削減することができる。さらに、穀物処理施設における荷受渋滞に対応するために、荷受けした籾の貯蔵設備を増設するなど、穀物処理施設に対して付加的な設備投資を行うことなく、利益の拡大を図ることが可能となる。
【0041】
図8には、本実施形態における、籾のタンパク質含有量補正予測値の分布表示態様の一例が示されている。すなわち、取得した籾のタンパク質含有量補正予測値を圃場1のマップデータに取り込む。そして、タンパク質含有量補正予測値の分布範囲を色分けしてマッピングすることにより、その分布状況を視覚的に表現することが可能となっている。このような分布マップ表示工程を加えることにより、良食味米とされる籾を仕分けて収穫するための収穫計画を、効率的に策定することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、図8に示されるように、籾のタンパク質含有量補正予測値の分布表示に加えて、施肥実績情報5を表示することが可能となっている。すなわち、前述した分布マップ表示工程において、タンパク質含有量補正予測値の分布範囲を色分け表示した圃場1のマッピングデータに、施肥実績を合成して表示することが可能となっている。図示される例では、肥料の散布量と当該散布量で散布した日数が表示されている。このような構成によれば、施肥実績と、籾のタンパク質含有量の分布状況との関係を効率的に把握することが可能となる。さらに、このような情報を蓄積することによって、翌年以降の生育段階における施肥診断において、蓄積した情報を有効活用することができ、多くの良食味米を収穫することが可能となる。
【0043】
(その他の実施形態)
以上、本発明の穀物のタンパク質含有量の取得方法における一実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のような変形例も含まれる。
【0044】
例えば、前述した実施形態では、ステップ1~ステップ3の処理を行ったが、必ずしもステップ1の処理は必須ではない。すなわち、ステップ2の収穫適期2~3週間前(登熟期)における籾のタンパク質含有量の予測処理と、ステップ3の収穫直前期(収穫予定日の2~3日前ごろ)における籾のタンパク質含有量の補正予測処理によって、収穫する籾のタンパク質含有量を高精度に予測し、良食味米を効率的に仕分けて収穫することができる。
【0045】
前述した実施形態では、図1等に示されるように、撮像手段であるカメラ11を搭載した、自立飛行が可能な無人航空機10を使用した。しかし、必ずしも無人航空機10に限定されるものではない。例えば、撮像手段であるカメラ11を、圃場1を高所から見渡せるような支柱の頂部に設置するようにしてもよい。さらに、無人航空機10に限らず、有人の航空機や固定翼の航空機を使用することも可能である。
【0046】
前述の実施形態では、自立飛行が可能な無人航空機10を使用したが、必ずしもこのような無人航空機に限られるものではなく、操縦者が都度遠隔操作して飛行させるようにしてもよい。
【0047】
前述の実施形態では、籾のタンパク質含有量を各段階で予測したが、玄米のタンパク質含有量に換算して、良食味米を仕分けて収穫するための収穫計画を策定してもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態及びいくつかの変形例について説明したが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 圃場
2 撮像データ
3 マス目
4 圃場情報
5 施肥実績情報
10 撮像装置
11 カメラ
31 区画
32 基準圃場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8