(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ポリグリセリン系アルコキシシラン
(51)【国際特許分類】
C08G 65/48 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C08G65/48
(21)【出願番号】P 2020176721
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019209600
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】原田 志織
(72)【発明者】
【氏名】小川 洸
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】松川 公洋
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/018389(WO,A2)
【文献】特開2001-072854(JP,A)
【文献】特開2010-077432(JP,A)
【文献】特開2018-058958(JP,A)
【文献】特開2000-063510(JP,A)
【文献】特開2002-088148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に第1の反応性官能基を有するポリグリセリン又は末端に第1の反応性官能基を 有するポリグリセリン誘導体のいずれか一方と、末端に第2の反応性官能基を有するア ルコキシシランを反応させてなる反応生成物である、平均重合度が
2~20のポリグリ セリン骨格を有し、末端に複数のアルコキシシリル基を有するポリグリセリン系アルコ キシシラン
であって、
前記第1の反応性官能基が、水酸基、チオール基、(メタ)アクリロイル基、エポキ シ基、アリル基からなる群より選ばれるいずれかを末端に含む反応性官能基であり、
前記第2の反応性官能基が、ビニル基、イソシアネート基、チオール基、(メタ)ア クリロイル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる1種であること を特徴とするポリグリセリン系アルコキシシラン。
【請求項2】
末端に第1の反応性官能基を有するポリグリセリン又は末端に第1の反応性官能基を 有するポリグリセリン誘導体のいずれか一方と、末端に第2の反応性官能基を有するア ルコキシシランを反応させてなる反応生成物である、平均重合度が2~20のポリグリ セリン骨格を有し、末端に複数のアルコキシシリル基を有するポリグリセリン系アルコ キシシランであって、
前記第1の反応性官能基が、水酸基又はチオール基のいずれか一方であり、
前記第2の反応性官能基が、ビニル基又はイソシアネート基のいずれか一方であるこ とを特徴とする
ポリグリセリン系アルコキシシラン。
【請求項3】
前記グリセリン誘導体が、末端に第1の反応性官能基を有し、エチレンオキサイド又は
プロピレンオキサイドが付加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2
のいず
れかに記載の
ポリグリセリン系アルコキシシラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリグリセリン系アルコキシシランに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやプラスチック等の基材は透明性が高く、光学フィルムやガラス、レンズ等に用いられるが、高温多湿条件下や温度差が大きい条件下では、基材表面に結露が生じて曇り、可視性が損なわれることが問題となっている。
【0003】
このような曇り現象を防止するための一般的な方法としては、基材表面に防曇効果を付与する塗膜を作製する方法が挙げられ、例えば基材表面に界面活性剤または界面活性剤と親水性ポリマーを含む溶液を塗布することにより、表面を親水化し、水滴の形成を防ぐ方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の防曇性組成物は親水性が高いために被膜の耐水性が低く、水で洗い流されると効果が失われるという問題があった。さらに、この防曇性組成物はガラス表面やプラスチック材料に化学結合していない為、コーティングの直後には防曇効果が発揮されるが、基材表面から容易に剥離し、防曇効果が低下してしまう。すなわち、防曇耐久性が低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガラスやプラスチック等の基材に対し、持続的に防曇性を付与することができる新規な材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、平均重合度が1~100の(ポリ)グリセリン骨格を有し、末端に複数のアルコキシシリル基を有する(ポリ)グリセリン系アルコキシシランが上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の(ポリ)グリセリン系アルコキシシランは、ガラスやプラスチック等の基材に防曇性を付与し、防曇効果の持続性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す「~」は上限と下限を含むものである。
【0010】
本発明は、平均重合度が1~100の(ポリ)グリセリン骨格を有し、末端に複数のアルコキシシリル基を有する(ポリ)グリセリン系アルコキシシランである。なお、(ポリ)グリセリンとは、グリセリン又はポリグリセリンを表している。
【0011】
本発明に係る(ポリ)グリセリンの平均重合度は、1~100であり、好ましくは2~20であり、最も好ましくは2~15である。ここで、平均重合度は末端分析法による水酸基価から、下記式(2)及び下記式(3)から算出される。式(3)中の水酸基価とは、(ポリ)グリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gの(ポリ)グリセリンに含まれる遊離水酸基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編集、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2013年度版」に準じて算出される。
分子量=74n+18 ・・・(2)
水酸基価=56110(n+2)/分子量・・・(3)
【0012】
本発明に係る(ポリ)グリセリン系アルコキシシランは、末端に第1の反応性官能基を有する(ポリ)グリセリン又は(ポリ)グリセリン誘導体と、末端に第2の反応性官能基を有するアルコキシシランを反応させてなる反応生成物であることが好ましい。
【0013】
末端に第1の反応性官能基を有する(ポリ)グリセリン又は(ポリ)グリセリン誘導体は、下記式(1)の構造で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
(n、p、q、rはそれぞれ繰り返し単位の数を表し、nは1~20の整数、p、q、rはそれぞれ0~50の整数である。AOは炭素数1~4のアルキレンオキサイドを示す。R
1は同一又は異なって、水素、もしくは、チオール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アリル基からなる群より選ばれるいずれかを末端に含む反応性官能基である。)
【0014】
AOとしては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)が挙げられ、好ましくはエチレンオキサイド(EO)である。式(1)記載のp、q、rはいずれもポリグリセリンの水酸基1つに対するアルキレンオキサイドの平均付加数を表しており、それぞれ0~50が好ましく、より好ましくは1~20である。また、p、q、rの和(p+q+r)は、1~130であることがより好ましく、5~120であることがさらに好ましい。
【0015】
末端に第1の反応性官能基を有する(ポリ)グリセリン又は(ポリ)グリセリン誘導体として具体的には、(ポリ)グリセリン、(ポリ)グリセリンアルキレンオキサイド付加物、(ポリ)グリセリン(アルキレンオキサイド)チオグリコール酸エステル、(ポリ)グリセリン(アルキレンオキサイド)3-メルカプトプロピオン酸エステル、(ポリ)グリセリン(アルキレンオキサイド)(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリン(アルキレンオキサイド)(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)グリセリン(アルキレンオキサイド)(ポリ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0016】
第2の反応性官能基は特に限定されないが、例えばビニル基、イソシアネート基、チオール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、末端に第2の反応性官能基を有するアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
本発明の(ポリ)グリセリン系アルコキシシランは、(ポリ)グリセリン又は(ポリ)グリセリン誘導体の末端に含まれる第1の反応性官能基と、アルコキシシランの末端にある第2の反応性官能基を反応させてなるものであることが好ましい。具体的には、(ポリ)グリセリン、(ポリ)グリセリンアルキレンオキサイド付加物、もしくは末端にチオール基を有する(ポリ)グリセリン誘導体と、末端にビニル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基のいずれかを含むアルコキシシランとの反応生成物;末端に(メタ)アクリロイル基を有する(ポリ)グリセリン誘導体、もしくは末端にアリル基を有する(ポリ)グリセリン誘導体と、末端にビニル基、チオール基、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランとの反応生成物;末端にエポキシ基を有する(ポリ)グリセリン誘導体と、末端にチオール基、水酸基、アミノ基を含むアルコキシシランとの反応生成物等が挙げられる。なお、それらの得られた反応生成物において、(ポリ)グリセリン又は(ポリ)グリセリン誘導体の第1の反応性官能基のうち20~100%の第1の反応性官能基が反応して結合されていることが好ましく、50~100%の第1の反応性官能基が反応して結合されていることがさらに好ましい。
【0018】
本発明のポリグリセリン系アルコキシシランは、防曇性付与剤や結露防止剤、応力緩和剤として好適に用いることができる。防曇性付与剤や結露防止剤、応力緩和剤として用いる場合は、効果を損なわない範囲でTMOS、TEOS等のシリケートモノマー、メチルシリケート、エチルシリケート等のシリケートオリゴマー、ポリシルセスキオキサン等を含有したコーティング用組成物とすることもできる。このコーティング用組成物を硬化させて得られる硬化塗膜は、ガラスやプラスチック等の基材に対して防曇性に優れるものであり、自動車のフロントガラス、ランプカバー、カメラレンズ、ゴーグル等の防曇コーティング剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって何らの限定を受けるものではない。
【0020】
[合成例1]
温度計、撹拌機、ディーンスターク装置を備えた反応容器に、テトラグリセリン(平均重合度4のポリグリセリン)のEO60モル付加物764g、3-メルカプトプロピオン酸163g、トルエン900g、p-トルエンスルホン酸45gを仕込み、撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約6時間かけて脱水縮合反応を行った。反応終了後、炭酸水素ナトリウムを用いて中和し、酢酸エチル:トルエン=50:50で抽出した。有機層を減圧留去することにより、テトラグリセリンEO60モル付加物の3-メルカプトプロピオン酸エステル367gを得た。撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンEO60モル付加物の3-メルカプトプロピオン酸エステル319gとビニルトリメトキシシラン81gを仕込み、UV光を照射しながら45分撹拌し、アルコキシシラン化合物A1を400g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0021】
[合成例2]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO60モル付加物425g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)210g、ジラウリン酸ジブチルすず0.13gを仕込み、40℃に設定したインキュベーター内で4時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A2を635g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0022】
[合成例3]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、ジグリセリンのEO40モル付加物66g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)34g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で12時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A3を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0023】
[合成例4]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、デカグリセリンのEO120モル付加物66g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)34g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、40℃に設定したインキュベーター内で4時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A4を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0024】
[合成例5]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO6モル付加物28g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)72g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で11時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A5を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0025】
[合成例6]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO7モル付加物29g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)71g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で6時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A6を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0026】
[合成例7]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO8モル付加物31g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)69g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で5時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A7を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0027】
[合成例8]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO12モル付加物37g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)63g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で5時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A8を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基の100%を反応させた。
【0028】
[合成例9]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO12モル付加物44g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)56g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で2時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A9を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基のうち75%を反応させた。
【0029】
[合成例10]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO12モル付加物54g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)46g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で2時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A10を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基のうち50%を反応させた。
【0030】
[合成例11]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO60モル付加物73g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)27g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で12時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A11を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基のうち75%を反応させた。
【0031】
[合成例12]
温度計、撹拌機を備えた反応容器に、テトラグリセリンのEO60モル付加物80g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(TCI製)20g、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを仕込み、60℃に設定したインキュベーター内で6時間撹拌し、アルコキシシラン化合物A12を100g得た。なお、ポリグリセリン誘導体の末端にある水酸基のうち50%を反応させた。
【0032】
<実施例1>
アルコキシシラン化合物A1を1.0g、1-メトキシ-2-プロパノールを1.5g、水0.27g、0.1wt%硝酸水溶液0.1gを均一に撹拌混合して、コーティング用組成物を得た。そして、親水化処理を施したガラス板(76mm×52mm×1.2mm)に上記コーティング用組成物を膜厚が約30μmとなるように塗布し、150℃で30分間加温乾燥して硬化塗膜を得た。なお、ガラス板は、アルカリ溶液(イソプロパノール500mL、水酸化カリウム41.6g、イオン交換水83.3gを混合した溶液)に15時間浸漬し、0.2mol/Lの塩酸水溶液とイオン交換水で洗浄を行うことで親水化処理とした。
【0033】
<実施例2~12>
実施例1で使用したアルコキシシラン化合物A1をアルコキシシラン化合物A2~化合物A12に変更したこと以外は実施例1と同様にコーティング用組成物および硬化塗膜を作製した。
【0034】
実施例1~12の硬化塗膜の防曇性について、以下の蒸気防曇性により評価した。さらに、実施例1、2の硬化塗膜については、防曇耐久性も評価した。
(蒸気防曇性)
硬化塗膜を50℃に調温した水の液面から2.0cm上部に設置し、硬化塗膜が曇るか否かを目視で評価し、塗膜が曇り始めた時間を測定した。
(防曇耐久性)
防曇耐久性は、上記の蒸気防曇性評価の後に、塗膜表面に付着した水分を紙でふき取り、25℃60RH%にて15分間静置し、塗膜表面を乾燥させた後、さらに硬化塗膜を50℃に調温した水の液面から2.0cm上部に設置する操作を計5回繰り返して評価した。
【0035】
<比較例1>
アルカリ溶液(イソプロパノール500mL、水酸化カリウム41.6g、イオン交換水83.3gを混合した溶液)に15時間浸漬し、0.2mol/Lの塩酸水溶液とイオン交換水で洗浄を行ったガラス板を用いて、蒸気防曇性および防曇耐久性を評価した。
【0036】
実施例1から実施例12、比較例1の配合組成及び評価結果を表1、表2に示した。なお、表1における実施例1及び実施例2の配合組成は、改めて処方したものである。
【0037】
【0038】
【0039】
本発明の(ポリ)グリセリン系アルコキシシランから得られる硬化塗膜を用いた実施例1から実施例12は、硬化塗膜を塗布していない比較例1に比べて十分な防曇性を有するものであった。そして、実施例1及び2は、繰り返しの防曇試験においても防曇性が維持されるものであった。
実施例1~12の評価結果より、本発明の(ポリ)グリセリン系アルコキシシランから得られる硬化塗膜は、十分な防曇性と防曇耐久性を有することが明らかとなった。