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特許7576301磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム、磁場影響を考慮した線量分布作成方法、および線量分布作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム、磁場影響を考慮した線量分布作成方法、および線量分布作成装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020185160
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074801
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】角谷 倫之
(72)【発明者】
【氏名】梶川 智博
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥平
(72)【発明者】
【氏名】土橋 卓
(72)【発明者】
【氏名】神宮 啓一
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0254277(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310761(US,A1)
【文献】特表2020-528791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、前記撮影画像から計算され且つ正規化された非磁場下の線量分布とを取得させ、
正規化された非磁場下の線量分布と、撮影画像に基づく情報とが入力されたときに正規化された磁場下の線量分布を出力するように学習された複数の層から成る学習モデルに、取得された前記非磁場下の線量分布と、取得された前記撮影画像に基づく情報とを入力させ、磁場下の線量分布を推定させる、
磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム。
【請求項2】
前記撮影画像に基づく情報は、
前記被験者のCT画像、前記被験者のMR画像、前記被験者のCT画像から生成した電子密度マップ、および前記被験者のMR画像から生成した電子密度マップのうちの1つである、
請求項1に記載の磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム。
【請求項3】
前記学習モデルは、
Dense Blockを備える畳み込みニューラルネットワークであり、
前記コンピュータは、
前記複数の層から成る学習モデルの前記Dense Blockの後の任意の層に、前記被験者を光子線または荷電粒子線によって撮影させた画像に基づく情報を入力させる、 請求項1または請求項2に記載の磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム。
【請求項4】
前記学習モデルは、
Skip Connectionを備える畳み込みニューラルネットワークである、
請求項1または請求項2に記載の磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム。
【請求項5】
コンピュータが、
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、前記撮影画像から計算され且つ正規化された非磁場下の線量分布とを取得し、
正規化された非磁場下の線量分布と、撮影画像に基づく情報とが入力されたときに正規化された磁場下の線量分布を出力するように学習された複数の層から成る学習モデルに、取得された前記非磁場下の線量分布と、取得された前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定する、
磁場影響を考慮した線量分布作成方法。
【請求項6】
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、前記撮影画像から計算され且つ正規化された非磁場下の線量分布とを取得する取得部と、
正規化された非磁場下の線量分布と、撮影画像に基づく情報とが入力されたときに正規化された磁場下の線量分布を出力するように学習された複数の層から成る学習モデルに、取得された前記非磁場下の線量分布と、取得された前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定する磁場補正部と、
を備える線量分布作成装置。
【請求項7】
コンピュータに、
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得させ、
前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力させ、磁場下の線量分布を推定させ、
前記線量分布は、
放射線の照射方向に平行な分布像または前記照射方向に垂直な複数の断層像からなり、事前学習および入力に供する前記非磁場下における線量分布は正規化された前記分布像または複数の断層像であり、磁場下の線量分布は正規化されたのち、各画素値を磁場の影響を表す係数で補正して得られる複数の断層像である、
磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム。
【請求項8】
コンピュータが、
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得し、
前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定し、
前記線量分布は、
放射線の照射方向に平行な分布像または前記照射方向に垂直な複数の断層像からなり、事前学習および入力に供する前記非磁場下における線量分布は正規化された前記分布像または複数の断層像であり、磁場下の線量分布は正規化されたのち、各画素値を磁場の影響を表す係数で補正して得られる複数の断層像である、
磁場影響を考慮した線量分布作成方法。
【請求項9】
被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得する取得部と、
前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定する磁場補正部と、
を備え、
前記線量分布は、
放射線の照射方向に平行な分布像または前記照射方向に垂直な複数の断層像からなり、事前学習および入力に供する前記非磁場下における線量分布は正規化された前記分布像または複数の断層像であり、磁場下の線量分布は正規化されたのち、各画素値を磁場の影響を表す係数で補正して得られる複数の断層像である、
線量分布作成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム、磁場影響を考慮した線量分布作成方法、および線量分布作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療の新たな治療装置として、磁場を用いるMR(Magnetic Resonance)装置と放射線治療装置(Linac)が一体化されたMR-Linacが普及し始めている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
このようなMR-Linacを用いた放射線治療では、例えば、まず治療前にMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置で撮影し、撮影されたMR画像に基づいて治療計画を作成する。次にMR-Linac装置で治療当日にMR画像を取得する。次に、治療当日に撮影されたMR画像を用いて、予定されている治療プランでの照射位置等を計算し、治療計画の修正が必要であるか否かを医師らが確認する。そして、予定していた治療プランで治療を実施して良い場合は、治療プラン通りの放射線治療を実施する。予定していた治療プランで治療を実施できない場合は、治療当日に撮影されたMR画像を用いて、被験者(患者)が治療台にいる状態で治療計画を作成し治して治療を行う。
【0004】
非特許文献1に記載のように、このような磁場を用いるMR装置と放射線治療装置が一体化された装置では、放射線に対する磁場の影響がある。例えば、ファントムから出た二次電子が磁場によって曲げられ,再度ファントム中に入ることで、この空気と水の境界面部分の線量が高くなるElectron Return Effect(ERE) 現象が発生する。また、磁場によって二次電子が曲げられるため、高線量域を含めて線量分布が偏る現象が生じる。このため、このような装置を用いた治療では、磁場が常に発生した状態で患者体内の放射線ビームの挙動を計算する必要がある。
【0005】
また、放射線治療計画の作成において、機械学習アプローチおよびニューラルネットワーク構成要素の使用を通じて放射線療法治療計画を策定するためのシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、1つまたは複数の三次元医用画像と、1つまたは複数の三次元解剖学的マップと、1つまたは複数の線量分布とを使用してニューラルネットワークがトレーニングされ、フルエンスマップまたは線量マップを予測する。特許文献1に記載の技術では、トレーニング中に、ニューラルネットワークは、予想線量分布と比較されるニューラルネットワークによって決定された予想線量分布を受け取る。特許文献1に記載の技術では、所定の閾値が達成されるまで比較が反復して行われる。特許文献1に記載の技術では、次いで、トレーニングされたニューラルネットワークを利用して三次元線量分布を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-526380号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】角谷倫之、「MR-Linac融合装置の現状」、〈第110回日本医学物理学会学術大会特集〉シンポジウム2「診断と治療の融合技術」、医学物理 第36巻 第4号、2016、p229-235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の殆どの治療装置は磁場に対応していない。一部、磁場に対応した治療計画装置もあるが、磁場による曲げる力を線量分布に反映させるために、放射線を1本1本計算する必要があった。このため、従来技術では、正確な線量計算のために低速な計算アルゴリズムを使用する必要があり、線量計算に多くの時間を要し、被験者が治療台にいる状態が長くなるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、従来より高速かつ正確な磁場下で線量計算を可能とする磁場影響を考慮した線量分布作成プログラム、磁場影響を考慮した線量分布作成方法、および線量分布作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成プログラムは、コンピュータに、被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得させ、前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力させ、磁場下の線量分布を推定させる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成プログラムにおいて、前記撮影画像に基づく情報は、前記被験者のCT画像、前記被験者のMR画像、前記被験者のCT画像から生成した電子密度マップ、および前記被験者のMR画像から生成した電子密度マップのうちの1つであるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成プログラムにおいて、前記線量分布は、放射線の照射方向に平行な分布または前記照射方向に垂直な複数の断層像からなり、事前学習および入力に供する前記非磁場下における線量分布は正規化された前記分布または複数の断層像であり、磁場下の線量分布は正規化されたのち、各画素値を磁場の影響を表す係数で補正して得られる複数の断層像であるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成プログラムにおいて、前記学習モデルは、Dense Blockを備える畳み込みニューラルネットワークであり、前記コンピュータは、前記複数の層から成る学習モデルの前記Dense Blockの後の任意の層に、前記被験者を磁場と電波または光子線によって撮影された画像に基づく情報を入力させるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成プログラムにおいて、前記学習モデルは、Skip Connectionを備える畳み込みニューラルネットワークであるようにしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る磁場影響を考慮した線量分布作成方法は、コンピュータが、被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得し、前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定する。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る線量分布作成装置は、被験者を磁場と電波または光子線によって撮影させた撮影画像と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを取得する取得部と、前記非磁場下の線量分布と、前記磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報と、を用いて学習された複数の層から成る学習モデルに、前記非磁場下の線量分布と、前記撮影画像に基づく情報とを入力し、磁場下の線量分布を推定する磁場補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来より高速かつ正確な磁場下で線量計算を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る磁場影響を考慮した線量分布作成処理の概要を示す図である。
図2】実施形態に係る線量分布作成装置の構成例を示すブロック図である。
図3】CT値電子密度変換テーブルを説明するための図である。
図4】実施形態に係る磁場補正モデルの一例を示す図である。
図5】実施形態に係る学習時の処理例を示す図である。
図6】実施形態に係る学習モデルの学習の処理手順例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る磁場下の線量分布の推定処理手順例を示すフローチャートである。
図8】学習曲線を示す図である。
図9】線量誤差を示す図である。
図10】線量分布の第1の例を示す図である。
図11図10に対応するプロファイルの例を示す図である。
図12】線量分布の第2の例を示す図である。
図13図12に対応するプロファイルの例を示す図である。
図14】測定箇所全てにおけるGamma passing rateを示す図である。
図15】皮膚(3mm)におけるGamma passing rateを示す図である。
図16】実施形態に係る他の学習モデルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。なお、以下の説明では、装置がMR撮影装置、CT撮影装置、MR-Linacを備える場合を例に説明するが、本実施形態の手法は、他の装置やシステムにも適用可能である。
【0020】
<磁場影響を考慮した線量分布作成処理の概要>
図1は、本実施形態に係る磁場影響を考慮した線量分布作成処理の概要を示す図である。図1のように、磁場影響を考慮した線量分布作成処理は、学習工程と線量分布作成工程を備える。
【0021】
学習工程において、線量分布作成装置が備えるMR撮影装置またはCT撮影装置である撮影装置は、非磁化下または磁場下の画像(撮影画像)g11(被験者のMR画像またはCT画像)を撮影する。次に、線量分布作成装置は、撮影された撮影画像g11と、撮影画像から非磁場下の線量分布g12と磁場下の線量分布g13とを計算して取得する。次に、線量分布作成装置は、磁場下の線量分布g12と非磁場下の線量分布g13を三次元から二次元の情報に切り分ける(g15)。次に、線量分布作成装置は、二次元の非磁場下の線量分布と、二次元の磁場下の線量分布と、撮影画像g11から生成した電子密度マップ(ED map)情報g14または撮影画像g11を学習モデルg16に入力して、教師付学習を行う。なお、以下の説明では、「撮影画像から生成した電子密度マップ(ED map)情報、または撮影画像」を「撮影画像に基づく情報」ともいう。なお、線量分布は、放射線の照射方向に並行な分布(平行な三次元分布、あるいは垂直な複数の二次元分布など)または垂直な複数の断層(2次元)像からなる。また、線量分布は、光子線を用いて線量計算した線量分布であってもよく、荷電粒子線を用いて線量計算した線量分布でもよく、他の線量分布であってもよい。また、事前学習および治療時に入力される非磁場下における線量分布、正規化された分布または複数の断層像であり、磁場下の線量分布は正規化されたのち、各画素値を磁場の影響を表す係数(例えば、磁場下の最大画素値/非磁場下の最大画素値)で補正して得られる複数の断層像である。なお、線量分布作成装置は、非磁場下の線量分布g12と磁場下の線量分布g13を三次元から二次元の情報に切り分けずに、三次元のまま学習モデルg16に入力するようにしてもよい。また、線量分布作成装置は、教師データとなる磁場下の線量分布に一致するように学習モデルg16をチューニングする。このように、本実施形態では、撮影された画像に基づく情報と、非磁場下の線量分布と、磁場下の線量分布とを用いて、学習モデルのトレーニングを行う。
【0022】
線量分布作成工程において、線量分布作成装置が備えるMR-Linacは、治療当日に非磁化下または磁場下の撮影画像を取得する。線量分布作成装置は、撮影画像から非磁場下の線量分布を計算して取得する。次に、線量分布作成装置は、二次元に切り分けられた非磁場下の線量分布g17と、撮影画像に基づく情報とを、学習済みの学習モデルg16に入力する。次に、線量分布作成装置は、学習済みの学習モデルg16によって磁場下の線量分布g18を作成する。
【0023】
<線量分布作成装置の構成例>
次に、線量分布作成装置の構成例を説明する。図2は、本実施形態に係る線量分布作成装置の構成例を示すブロック図である。図2のように、線量分布作成装置1は、架台装置11、寝台装置12、撮影装置13、放射線治療装置14、画像処理部15(取得部、処理部)、線量分布処理部16(取得部、処理部)、磁場補正部17、制御部18、記憶部19、操作部20、および表示部21を備える。また、磁場補正部17は、学習モデル171を備える。
【0024】
線量分布作成装置1は、例えば、MR撮影装置、CT撮影装置、MR-Linac等の撮影装置を含む。
【0025】
架台装置11は、被検体に対して撮影を行う装置である。架台装置11には、撮影装置13と放射線治療装置14が取り付けられている。
【0026】
寝台装置12は、例えば被検体が横たわる装置である。寝台装置12は、撮影者(撮影者、撮影補助者のうちの少なくとも一方)が手動で移動させるベッド等であってもよく、制御部18が動作を制御してもよい。
【0027】
撮影装置13は、MR撮影装置またはCT(Computed Tomography)撮影装置である。撮影装置13は、制御部18の制御に応じて、患者の撮影を行い、撮影した撮影画像を画像処理部15に出力する。なお、撮影画像は、非磁化下または磁場下のMR画像又はCT画像である。
【0028】
放射線治療装置14は、例えば直線加速装置(Linac)である。放射線治療装置14は、制御部18の制御に応じて治療計画に基づいて治療を行う。
【0029】
画像処理部15は、撮影装置13が撮影した撮影画像を取得する。画像処理部15は、取得した撮影画像からED map情報を生成し、生成されたED map情報を正規化して磁場補正部17の学習モデル171に入力する。または、画像処理部15は、取得した撮影画像を正規化して磁場補正部17の学習モデル171に入力する。
【0030】
線量分布処理部16は、撮影装置13から撮影画像を取得する。線量分布処理部16は、取得した撮影画像に対して線量分布計算を行って非磁場下の線量分布と磁場下の線量分布とを門毎に取得する。なお、学習時に、線量分布処理部16は、非磁場下の線量分布と磁場下の線量分布とを使用する。また、治療時に、線量分布処理部16は、非磁場下の線量分布の計算のみを行い、磁場下の線量分布の計算を行わないようにしてもよい。なお、門とは、例えば固定照射法において、1門、対向2門、直交2門、斜入射2門、4門十字火、多門等である。また、線量分布処理部16は、例えば、AAA(Anisotropic Analytical Algorithm)法、CCC(Collapsed Cone Convolution)法、モンテカルロ法等によって、非磁場下の線量分布を計算する。また、線量分布処理部16は、例えばモンテカルロ法等によって、磁場下の線量分布を計算する。線量分布処理部16は、以下の第1の処理と第2の処理を行って、三次元情報に対して行い、さらに二次元に切り分ける。
・第1の処理;非磁場下の線量分布を例えば0~1の間の値に正規化する。
・第2の処理;磁場下の線量分布を例えば0~1の間の値に正規化し、係数{例えば(最大値(磁場下)/最大値(非磁場下))}を乗じる。
なお、線量分布処理部16は、三次元情報を二次元情報に切り分けなくてもよい。
線量分布処理部16は、記憶部19が記憶する線量計算に使用するCT-ED Table(CT-相対電子密度変換テーブル)を元に、CT-ED Tableの範囲でテーブルの下限を0とし上限を1として正規化してED mapを作成する。なお、ED mapは二次元情報である。
【0031】
磁場補正部17は、学習時に、磁場下の線量分布を教師データとし、撮影画像に基づく情報と、非磁場下の線量分布とを用いて、学習モデル171のトレーニングを行う。なお、トレーニング方法は後述する。磁場補正部17は、治療時に、正規化された非磁場下の線量分布と、正規化された撮影画像から生成したED map情報または撮影画像を入力とし、学習済みの学習モデルを用いて門ごとに線量分布を補正する。なお、学習モデル171の構成例については後述する。
【0032】
制御部18は、操作部20が取得した操作情報と記憶部19が記憶する情報を用いて、各機能部、各装置を制御する。
【0033】
記憶部19は、CT-ED Table(CT値電子密度変換テーブル)を記憶する。操作部20が取得した操作結果に含まれる撮影条件等を記憶する。記憶部19は、制御プログラム、しきい値等を記憶する。
【0034】
操作部20は、例えば表示部21上に設けられているタッチパネルセンサ、機械式スイッチ、キーボード、マウス等である。操作部20は、利用者が操作した操作結果を検出し、検出した操作結果を制御部18に出力する。
【0035】
表示部21は、例えば液晶画像表示装置、有機EL(Electro Luminescence)画像表示装置、またはタブレット等の携帯端末である。表示部21は、制御部18が出力する提示画像を表示する。
【0036】
なお、画像処理部15、線量分布処理部16、磁場補正部17、および制御部18は、例えばパーソナルコンピュータ、CPU(中央演算装置)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等であってもよい。
【0037】
<電子密度マップ>
ここで、電子密度マップ(ED map)について説明する。図3は、CT値電子密度変換テーブルを説明するための図である。
線量計算に直接影響する値が電子密度である。CT値電子密度変換テーブルは、各ボクセルのCT値(MR画像g21)またはMR値(MR画像g22)から電子密度に変換するマップ(g23)である。マップg23において、横軸はCT値[HU]であり、縦軸は電子密度[g/cm]である。画像処理部15は、この変換テーブルを用いて、CT画像を電子密度に変換して電子密度マップを作成する。
【0038】
<磁場補正モデル>
ここで、学習モデルである磁場補正モデル例について説明する。図4は、本実施形態に係る磁場補正モデルの一例を示す図である。図4の学習モデルである磁場補正モデル100は、CNN(Convolutional Neural Networks)とDenseNet(参考文献1)をベースにした例である。また、本実施形態の磁場補正モデル100では、局所的特徴に重きを置くため、プーリングや圧縮等のDown Samplingは使用しない。
【0039】
参考文献1;Gao Huang、Zhuang Liu等、“Densely Connected Convolutional Networks”、2017 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR)、IEEE、2017
【0040】
磁場補正モデル100は、例えば、畳み込み層121、Dense Block122、Dense Block123、Dense Block124、畳み込み層125、畳み込み層126、畳み込み層127、および畳み込み層128の順に接続されている。
【0041】
磁場補正モデル100には、二次元の非磁場下の線量分布101と、二次元のED map102が入力される。ED map102の解像度は、例えば160×224である。
また、磁場補正モデル100は、Dense Block後の任意の位置、例えば畳み込み層125と畳み込み層126との間にED map102を再入力する。
【0042】
まず、入力に対してフィルターサイズが3×3の畳み込みを行う(105)。
次に、Dense Block122~124は、Dense Blockでの処理を行う(106~108)。
次に、フィルターサイズが1×1の畳み込みを行う(109)。
次に、畳み込み層125の出力とED map102を入力として、フィルターサイズが3×3の畳み込みを行う(110)。
次に、フィルターサイズが3×3の畳み込みを行う(111~112)。
次に、フィルターサイズが1×1の畳み込みを行う(113)。
磁場補正モデル100の出力は、二次元の磁場下の線量分布114であり、解像度は、例えば160×224である。
【0043】
符号131が示す領域の図は、Dense Blockのイメージ図である。Dense Blockは、前方の各層からの出力すべてが後方の層への入力として用いられる。また、Dense Blockは、層間の情報の伝達を最大化するためにすべての特徴量サイズが同じ層を結合させ、逆伝播を保つため、ある層より前の層の出力を入力としている。また、Dense Blockは、BottleNeckとよばれる1×1の畳み込みと3×3の畳み込みを交互に備える。
【0044】
なお、図4に示した例では、Dense Block後の任意の層にED mapを入力する例を説明したが、Dense Block後の任意の層への入力は被験者のCT画像(またはMR画像)あるいはCT画像(またはMR画像)を正規化し二次元に切り出した画像であってもよい。
【0045】
なお、図4に示した磁場補正モデル100、Dense Blockの構成例は一例であり、層数、フィルタ数等は、これに限らない。また、図4に示した例では、ネットワークがCNNの例を説明したが、ネットワークは他のネットワーク、例えばRNN(Recurrent Neural Network)等であってもよい。
【0046】
本実施形態の磁場補正モデルg100は、Dense Blockを備え、さらにDense Block後の任意の位置で、再度ED map102を入力する。なお、Dense Blockでは、例えば磁場下での二次電子の影響を補正する。これにより、本実施形態によれば、解剖学的構造を反映できる。
【0047】
<学習時の処理>
次に、学習時の処理例について説明する。図5は、本実施形態に係る学習時の処理例を示す図である。なお、以下の処理例では、撮影画像に基づく情報として電子密度マップ(ED map)情報を用い、学習モデルに三次元から切り出した二次元の情報を入力する例を説明する。
【0048】
(1)撮影工程g301
撮影装置13は、非磁場下または磁場下の撮影画像g302(MR画像またはCT画像)を撮影する。次に、線量分布作成装置1は、撮影画像を取得する。次に、線量分布処理部16は、取得した撮影画像から非磁場下の線量分布と磁場下の線量分布とを計算して取得する。
【0049】
(2)前処理工程g311
線量分布作成装置1は、切り分けた二次元の非磁場下の線量分布g312と、撮影画像からCT値電子密度変換テーブルを用いて生成した電子密度マップ(ED map)情報g313を学習モデル(磁場補正モデル)g322に入力する。また、教師データとして磁場下の線量分布g314を用いる。
【0050】
(3)学習、確認工程g321
線量分布作成装置1は、4分割した学習モデルg323を用いて、学習と確認を4分割交差検証法で行う。
【0051】
(4)テスト工程g331
線量分布作成装置1は、4分割された学習モデルg323毎の推定した磁場下の線量分布g332を合成し平均化して補正された磁場下の線量分布g333を作成する。
線量分布作成装置1は、正解データである磁場下の線量分布g314と比較し、比較した結果に基づいて報酬を作成して学習に反映させる。なお、正解データである磁場下の線量分布g314は、学習時のため、演算に時間を要しても支障が無いので、磁場が常に発生した状態で患者体内の放射線ビームの挙動を計算する。
【0052】
なお、図5の処理では、上述した正規化等の処理を省略して説明している。
【0053】
<方法>
次に、作業手順例を説明する。まず、学習時の処理手順について説明する。
図7は、本実施形態に係る磁場下の線量分布の推定処理手順例を示すフローチャートである。なお、以下の処理例も、撮影画像に基づく情報として電子密度マップ(ED map)情報を用い、学習モデルに三次元から切り出した二次元の情報を入力する例を説明する。
【0054】
(ステップS11)操作部20は、学習用の撮影条件等を取得する。
(ステップS12)撮影装置13は、学習用に制御部18の制御に応じて被験者の撮影を行う。
(ステップS13)画像処理部15は、撮影装置13が撮影した撮影画像(CT画層またはMR画像)を取得する。続けて、画像処理部15は、撮影画像からCT値電子密度変換テーブルを用いて電子密度マップを生成し、生成した電子密度マップを正規化する。
【0055】
(ステップS14)線量分布処理部16は、撮影装置13から撮影画像を取得する。続けて、線量分布処理部16は、撮影画像から非磁場下の線量分布と磁場下の線量分布とを計算して取得する。続けて、線量分布処理部16は、三次元で磁場下の線量分布と非磁場下の線量分布とを正規化し、さらに二次元で切り分ける。
【0056】
(ステップS15)磁場補正部17は、画像処理部15によって撮影画像から生成した電子密度マップと、線量分布処理部16によって計算された非磁場下の線量分布と磁場下の線量分布と、を用いて、学習モデル171を学習させる。
【0057】
次に、治療時の手順例を説明する。
図6は、本実施形態に係る処理手順例を示すフローチャートである。なお、以下の処理例では、撮影画像に基づく情報として電子密度マップ(ED map)情報を用い、学習モデルに三次元から切り出した二次元の情報を入力する例を説明する。
【0058】
(ステップS21)操作部20は、治療用の撮影条件等を取得する。撮影装置13は、治療用に制御部18の制御に応じて被験者の撮影を行う。なお、この処理は省略してもよい。線量分布作成装置1は、例えば予め撮影された画像を取得して用いてもよい。
【0059】
(ステップS22)画像処理部15は、撮影装置13が撮影した撮影画像(CT画層またはMR画像)、または予め撮影された撮影画像を取得する。続けて、画像処理部15は、撮影画像からCT値電子密度変換テーブルを用いて電子密度マップを生成し、生成した電子密度マップを正規化する。
【0060】
(ステップS23)線量分布処理部16は、撮影装置13から撮影画像を取得する。続けて、線量分布処理部16は、撮影画像から非磁場下の線量分布を計算して取得する。続けて、線量分布処理部16は、三次元で非磁場下の線量分布を正規化し、さらに二次元で切り分ける。
【0061】
(ステップS24)磁場補正部17は、非磁場下の線量分布と、撮影画像から生成した電子密度マップとを学習モデル171に入力して、磁場下の線量分布を推定する。
【0062】
(ステップS25)制御部18は、推定された磁場下の線量分布を表示部21に表示させる。
【0063】
なお、上述した処理において、学習時または治療時に、線量分布処理部16は、線量分布を三次元から二次元に変換しなくてもよい。この場合、線量分布処理部16は、三次元の線量分布を正規化して学習モデル171に入力するようにしてもよい。
また、上記処理のステップS24において、制御部18は、推定された磁場下の線量分布に基づいて治療計画を作成し、作成した治療計画も表示部21に表示させるようにしてもよい。
【0064】
<確認結果>
次に、本実施形態の学習モデルの学習や、学習された学習モデルを用いて推定した場合等の確認結果を説明する。
図8は、学習曲線を示す図である。図8において、横軸は学習回数(エポック数)であり、縦軸はMSE(Mean Squared Error;平均二乗誤差)[×10-3]である。折れ線g401は学習データの損失特性であり、折れ線g402は検証データの損失特性である。図8のように、数回の学習でMSEが収束している。
【0065】
図9は、線量誤差を示す図である。図9において、縦軸はMSE)[×10-3]である。符号g411はCNNにDense Blockを用いた本実施形態による補正した場合の線量誤差であり、符号g412は補正無しの場合の線量誤差である。図9のように、本実施形態の手法で補正した方が、MSEが1/3以下に改善されている。
【0066】
次に、第1の線量分布とプロファイルの例を説明する。
図10は、線量分布の第1の例を示す図である。線量分布g421は、補正無しの非磁場下の線量分布を示し、拡大図g422は線量分布g421の一部を拡大したものである。線量分布g431は、補正無しの磁場下の線量分布示し、拡大図g432は線量分布g431の一部を拡大したものである。符号g441はED mapを示す。線量分布g451は、本実施形態による補正有りの磁場下の線量分布示し、拡大図g452は線量分布g451の一部を拡大したものである。図10のように、本実施形態による補正を行った場合は、拡大図g452のように、補正無しと比較して右下の部分の分布が異なっている。
【0067】
次に、図10に対応するプロファイルを説明する。
図11は、図10に対応するプロファイルの例を示す図である。図10において横軸はピクセルであり、グラフg460の左縦軸は相対線量であり、グラフg460の右縦軸はエラーであり、グラフg470の縦軸は相対電子密度である。
また、実線g461は磁場下の線量分布における相対線量を示し、破線g462は本実施形態の手法で補正した磁場下の線量分布における相対線量を示し、破線g463は補正していない磁場下の線量分布における相対線量を示す。さらに、破線g464は本実施形態の手法で補正した磁場下の線量分布におけるエラーを示し、破線g465は補正していない磁場下の線量分布におけるエラーを示す。
【0068】
なお、このピクセルが約90以上は、図10における線量分布の拡大部分の右下に相当する。
図11のように、本実施形態の手法で補正した場合は、ピクセルが約90以上で補正していない場合と比較して、相対線量とエラーとに差が出ている。本実施形態の手法で補正した場合の方が、補正していない場合と比較してピクセルが約90以上でも、実線g461の磁場下の線量分布における相対線量に非常に近い。また、エラーについても、ピクセル90以上で、補正してない場合はエラーが増えている。
【0069】
次に、第2の線量分布とプロファイルの例を説明する。第2の線量分布は、腸を撮影した例である。
図12は、線量分布の第2の例を示す図である。線量分布g521は、補正無しの非磁場下の線量分布を示し、拡大図g522は線量分布g521の一部を拡大したものである。線量分布g531は、補正無しの磁場下の線量分布示し、拡大図g532は線量分布g531の一部を拡大したものである。符号g541はED mapを示す。線量分布g551は、本実施形態による補正有りの磁場下の線量分布示し、拡大図g552は線量分布g551の一部を拡大したものである。図12のように、本実施形態による補正を行った場合は、拡大図g552のように、補正無しと比較して下の部分の分布が異なっている。
【0070】
次に、図12に対応するプロファイルを説明する。
図13は、図12に対応するプロファイルの例を示す図である。図13において横軸はピクセル番号(位置)であり、グラフg560の左縦軸は相対線量であり、グラフg560の右縦軸はエラーであり、グラフg570の縦軸は相対電子密度である。
また、実線g561は磁場下の線量分布における相対線量を示し、破線g562は本実施形態の手法で補正した磁場下の線量分布における相対線量を示し、破線g563は補正していない磁場下の線量分布における相対線量を示す。さらに、破線g564は本実施形態の手法で補正した磁場下の線量分布におけるエラーを示し、破線g565は補正していない磁場下の線量分布におけるエラーを示す。
【0071】
なお、ピクセルが約60~70は、腸の境界線の部分であり、図12における線量分布の拡大部分の下に相当する。
図13のように、本実施形態の手法で補正した場合は、ピクセルが約60~70で補正していない場合と比較して、相対線量とエラーとに差が出ている。本実施形態の手法で補正した場合の方が、補正していない場合と比較してピクセルが約60~70でも、実線g561の磁場下の線量分布における相対線量に近い。また、エラーについても、ピクセル60~70で、補正してない場合の方が、エラーの増加が多い。
【0072】
次に、ガンマ解析結果例を、図14図15を用いて説明する。なお、Gamma passing rateは、100%であれば完全に二つの線量分布が一致していることを意味する。
図14は、測定箇所全てにおけるGamma passing rateを示す図である。図15は、皮膚(3mm)におけるGamma passing rateを示す図である。図14図15の横軸は(ΔD[%]/Δd[mm])であり、縦軸はGamma passing rate[%]である。なお、ΔD[%]は線量差であり、Δd[mm]はDTA(Distance To Agreement)である。また、ハッチング領域g601は本実施形態の補正を行った場合であり、ハッチング領域g602は補正を行っていない場合である。
【0073】
図14図15に示すように、本実施形態の手法で補正を行うことで、真値である磁場ありの線量分布と良く一致している(100%に近い)ことがわかる。
【0074】
従来の一般的な計算アルゴリズムでは、磁場の影響を考慮できなかった。モンテカルロアルゴリズムを用いた場合は、磁場の影響を考慮できるが、約10~20分程度の計算時間を要していた。このため、従来の技術では、治療の際に、寝台に被験者に横たわらせたまま、このような演算処理の結果を待って治療計画を立てることが困難であった。そして、磁場下における高精度かつ高速な線量計算アルゴリズムは、現在存在していない。
これに対して、本実施形態によれば、従来より高速に磁場の影響を考慮した補正を行うことができる。
【0075】
<他の学習モデルの例>
次に、他の学習モデルの例を説明する。
図16は、本実施形態に係る他の学習モデルの例を示す図である。図16のように、学習モデルである磁場補正モデル100Aは、Skip Connection(恒等写像)を備えるCNNである。Skip Connectionは、層を飛び越えた結合を有している。また、磁場補正モデル100Aの各層は、3×3の畳み込み(Conv;Convolution)層、1×1の畳み込み層、3×3のプーリング(枝刈り,Pool;Pooling)層、逆畳み込み(Deconv;Deconvolution)層である。
【0076】
この学習モデルを用いる場合も、上述した実施形態と同様に、学習時、教師データは磁場下の線量分布であり、入力は、非磁場下の線量分布g701と、撮影画像から生成した電子密度マップg702(または撮影画像)とである。治療時の入力は、非磁場下の線量分布g701と、撮影画像から生成した電子密度マップg702(または撮影画像)とである。学習モデルの出力は、上述した実施形態と同様に、磁場下の線量分布g703である。
【0077】
この磁場補正モデル100Aを用いた場合も、上述した実施形態と同様に事前に学習を行い、磁場下の線量分布g703を推定する。この磁場補正モデル100Aを用いた場合も、従来より高速かつ正確に磁場下の線量分布g703を推定することができる。
なお、図15に示した構成は一例であり、層数や入出力の解像度等はこれに限らない。
【0078】
なお、上述した手法において、線量分布は、X線(光子線)によるCT画像撮影時の線量分布に対しても、磁場と電波によるMR画像撮影時の線量分布に対しても、荷電粒子線を用いて線量計算した線量分布に対しても、他の線量分布に対しても適用である。
また、本実施形態の手法は、治療に用いる最終的な線量分布の導出のために使用することもでき、最適化プロセスに結合することもできる。
【0079】
なお、本発明における線量分布作成装置1の機能の全てまたは一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより線量分布作成装置1が行う処理の全てまたは一部を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0080】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0081】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…線量分布作成装置、11…架台装置、12…寝台装置、13…撮影装置、14…放射線治療装置、15…画像処理部、16…線量分布処理部、17…磁場補正部、18…制御部、19…記憶部、20…操作部、21…表示部、171…学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16