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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】運搬用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/18 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B65D6/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021008301
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112432
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 義久
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064679(JP,A)
【文献】特開2003-312658(JP,A)
【文献】特開2004-262540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0146591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、
前記口枠に対して回転可能に連結された一対の揺動板と、
前記底板及び前記口枠に対して回転可能に連結された一対の折曲板と、を備え、
前記一対の揺動板のうち一方又は両方の揺動板は、
前記揺動板の主体を構成する主板と、
前記主板から外側方に距離をあけて位置し、指先を挿し込み可能な空間を前記主板との間に形成する一対の操作片と、
前記主板から外側方に突出するように設けられた横長の補強筋と、を含み、
前記主板を正面視したときの左右方向において、
前記一対の操作片は、互いに距離をあけて位置し、
前記補強筋は、前記一対の操作片の間に位置し、
前記揺動板の前記補強筋は、前記一対の操作片と連続して設けられ、
前記補強筋と、その左右両側に位置する前記一対の操作片とは、正面から見たときに一直線状に連続している
運搬用容器。
【請求項2】
底板と、
前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、
前記口枠に対して回転可能に連結された一対の揺動板と、
前記底板及び前記口枠に対して回転可能に連結された一対の折曲板と、を備え、
前記一対の揺動板のうち一方又は両方の揺動板は、
前記揺動板の主体を構成する主板と、
前記主板から外側方に距離をあけて位置し、指先を挿し込み可能な空間を前記主板との間に形成する一対の操作片と、
前記主板から外側方に突出するように設けられた横長の補強筋と、を含み、
前記主板を正面視したときの左右方向において、
前記一対の操作片は、互いに距離をあけて位置し、
前記補強筋は、前記一対の操作片の間に位置し、
前記揺動板の前記補強筋は、前記一対の操作片と連続して設けられ、
前記操作片は、前記主板の下部から外側方に距離をあけて位置し、前記空間を、その上方から指を挿し込み可能に形成するものであり、
前記揺動板は、前記空間をその下方から覆う底部を、更に含み、
前記補強筋と、その左右両側に位置する前記底部とは、正面から見たときに一直線状に連続している
運搬用容器。
【請求項3】
前記揺動板の前記補強筋は、前記主板の一部が外側方に膨出することで構成されており、
前記主板の内側方を向く面のうち、前記補強筋の裏側に位置する部分には、凹溝部が設けられている
請求項1又は2の運搬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運搬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み可能な運搬用容器として、底板、口枠、一対の揺動板及び一対の折曲板を備えたものが、従来公知である(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
この種の運搬用容器においては、揺動板は口枠に対して回転可能に連結されており、揺動板の下端部が、底板の端縁部に対して内側方から係合することで、運搬用容器が組み立てられる。
【0004】
運搬用容器を折り畳み状態から組み立てる際に、揺動板の下端部を底板に係合させる作業は、一般的に、作業者が口枠を持ち上げたうえで、揺動板をその内側から手で押し込むことで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5843311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した運搬用容器においては、運搬用容器の内部に既に荷物が入っていたり、運搬用容器の上に別の容器が積み重ねられていたりする状態において、揺動板と底板との係合が不十分であったり、荷重が掛かることで揺動板と底板との係合が外れたりした場合に、揺動板が適正位置(つまり底板に対して適正に係合する位置)からずれてしまうことがある。このとき、作業者にとっては、揺動板を内側から押し込んで適正位置に戻すことが容易でない。揺動板と底板との係合が外れた状態のまま段積みを行うと、荷崩れを起こすおそれがある。
【0007】
本開示が解決しようとする課題は、揺動板を適正位置に戻す作業を、簡単に行うことができる運搬用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一様態に係る運搬用容器は、底板と、前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、前記口枠に対して回転可能に連結された一対の揺動板と、前記底板及び前記口枠に対して回転可能に連結された一対の折曲板と、を備える。
【0009】
前記一対の揺動板のうち一方又は両方の揺動板は、前記揺動板の主体を構成する主板と、前記主板から外側方に距離をあけて位置し、指先を挿し込み可能な空間を前記主板との間に形成する一対の操作片と、前記主板から外側方に突出するように設けられた横長の補強筋と、を含む。前記主板を正面視したときの左右方向において、前記一対の操作片は、互いに距離をあけて位置し、前記補強筋は、前記一対の操作片の間に位置する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、揺動板を適正位置に戻す作業を、簡単に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は一実施形態の運搬用容器の斜視図である。
図2図2は同上の運搬用容器の分解斜視図である。
図3図3は同上の運搬用容器が備える底板の斜視図である。
図4図4は同上の底板の平面図である。
図5図5は同上の運搬用容器が備える口枠の斜視図である。
図6図6は同上の運搬用容器が備える揺動板の斜視図である。
図7図7は同上の揺動板の正面図である。
図8図8図7のA-A線断面図である。
図9図9図7のB-B線断面図である。
図10図10図7のC-C線断面図である。
図11図11は同上の揺動板の背面図である。
図12図12は同上の運搬用容器が備える折曲板の分解斜視図である。
図13図13Aは揺動板の変形例1の正面図であり、図13Bは揺動板の変形例2の正面図であり、図13Cは揺動板の変形例3の正面図であり、図13D図13CのD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.一実施形態
一実施形態の運搬用容器について、添付図面に基づいて説明する。以下の説明において用いる上下等の各方向は、運搬用容器が組み立てられた状態を基準とする。
【0013】
1-1.概要
図1図2に示すように、一実施形態の運搬用容器は、矩形板状の外形を有する底板1と、矩形枠状の外形を有して底板1の上方に位置する口枠2と、底板1と口枠2の間で起立するように設けられた一対の揺動板3と、同じく底板1と口枠2の間で起立するように設けられた一対の折曲板4とを備える。一実施形態の運搬用容器を構成する各部材1,2,3,4は、合成樹脂製の成形品である。
【0014】
一対の揺動板3は、それぞれ合成樹脂製の主板31で主体が構成されている。各揺動板3の上縁部分(主板31の上縁部分)である連結端部38が、口枠2に対して回転可能に連結する。各揺動板3の下縁部分(主板31の下縁部分)である係合端部39は、底板1の周縁部分に対して、該周縁部分の内側から係脱可能に係合する。
【0015】
一対の折曲板4は、互いに回転可能に連結された合成樹脂製の上板41と下板42とで、それぞれの主体が構成されている。各折曲板4の上縁部分(上板41の上縁部分)が、口枠2に対して回転可能に連結され、各折曲板4の下縁部分(下板42の下縁部分)が、底板1の周縁部分に対して回転可能に連結される。各折曲板4において、上板41と下板42は、内側に向けて「く」字状に折れ曲がるように構成されている。
【0016】
1-2.底板
図3図4等に示すように、底板1は、その主体をなす矩形板状の底板本体11と、底板本体11の周縁部分に設けられた複数の係合部13と、底板本体11の周縁部分に設けられた複数の連結部15とを備える。
【0017】
底板本体11の周縁部分は、互いに平行である一対の短辺部分111と、互いに平行である一対の長辺部分112とを有する。一対の短辺部分111と一対の長辺部分112とは、底板1の周方向において交互にかつ連続して位置する。本文で用いる平行の文言は厳密な意味での平行に限定されず、略平行な場合も含む。
【0018】
一対の短辺部分111には、それぞれ係合部13と外側片14とが一体に設けられている。係合部13は、揺動板3の係合端部39が内側から係脱可能に係合する部分であり、短辺部分111の長手方向の中央部に位置する。外側片14は、係合部13よりも外側に位置する。係合部13に対して揺動板3の係合端部39が係合することで、揺動板3は、底板1と口枠2との間で起立姿勢に保持される。
【0019】
一対の長辺部分112には、それぞれ複数の連結部15と外側片16とが設けられている。複数の連結部15には、折曲板4の下縁部分が回転可能に連結される。外側片16は、複数の連結部15よりも外側に位置する。
【0020】
1-3.口枠
図5等に示すように、口枠2は、揺動板3の連結端部38が連結される一対の短側フレーム21と、折曲板4の上縁部分が連結される一対の長側フレーム22とを、一体に有する。一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22とは、口枠2の周方向において交互にかつ連続して位置する。
【0021】
口枠2の開口部20は、一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22とで全周を囲まれた部分である。開口部20は、上下に貫通している。
【0022】
口枠2の内外方向の厚みのうち、短側フレーム21の厚みと長側フレーム22の厚みとは、略同一である。折り畳み式の運搬用容器において、口枠2の短側フレーム21は長側フレーム22よりも厚く設けられることが一般的であるが、短側フレーム21の厚みと長側フレーム22の厚みとが略同一であることで、口枠2の軽量化と内寸の確保が実現される。
【0023】
1-4.揺動板
図6図7等に示すように、揺動板3の主板31の上縁部分を構成する連結端部38には、複数の連結部385が設けられている。複数の連結部385は、口枠2の短側フレーム21に対して回転可能に連結するように、主板31の横方向(つまり主板31を正面視したときの左右方向)に距離をあけて一直線状に並設されている。
【0024】
揺動板3の主板31の下縁部分を構成する係合端部39には、係合部395が設けられている。係合部395は、底板1の係合部13に対してその内側から係脱可能に係合する部分であり、係合端部39の長手方向の中央部に設けられている。
【0025】
係合部395には、底板1の係合部13に係合するための2つの係合爪397が形成されている。係合爪397の数は2つに限定されず、少なくとも1つであればよい。
【0026】
主板31には、持ち手37が形成されている。持ち手37は、主板31の上部において、主板31の厚み方向に貫通している。持ち手37が貫通孔で構成されていることで、揺動板3を回転させるときの空気抵抗が低減される。そのため、組み立て時に揺動板3が勢いよく回転して底板1に係合しやすくなる。
【0027】
主板31の厚み方向は、言い換えれば揺動板3の厚み方向である。主板31の厚み方向と横方向は、互いに直交する。
【0028】
主板31の横方向の両端部分には、縦長の補強筋36が、それぞれ外側方D1に向けて断面コ字状に膨出するように設けられている。補強筋36は、連結端部38と係合端部39とをつなぐように、上下に一直線状に形成されている。図8図11に示すように、主板31の内側方D2を向く面312(以下「内面312」という。)には、主板31の外側方D1を向く面311(以下「外面311」という。)に設けられた左右一対の補強筋36と一対一で対応するように、左右一対の凹溝部365が設けられている。
【0029】
一対の凹溝部365は、主板31の横方向の両端部分に、上下に一直線状に形成されている。各凹溝部365は、対応する補強筋36の裏側に位置し、対応する補強筋36よりも一回り小さな外形を有する。
【0030】
主板31の外面311のうち、一対の補強筋36に挟まれる位置には、一対の縦リブ35が形成されている。一対の縦リブ35は、それぞれ上下に一直線状の形状を有し、互いに平行である。一対の補強筋36と一対の縦リブ35とは、一対一で対応している。
【0031】
揺動板3の横方向において、縦リブ35は、対応する補強筋36の内側に位置する。縦リブ35とこれに対応する補強筋36とは互いに平行であり、両者35,36の間には複数の横リブ355が設けられている。複数の横リブ355は、上下に距離をあけて互いに平行に位置する3つの横リブ355である。補強筋36に隣接して位置する横リブ355は、補強筋36と縦リブ35とをつなぐように、補強筋36及び縦リブ35と一体に形成されている。
【0032】
揺動板3には、主板31の下部の横方向の両端部分から、外側方D1に距離をあけて位置するように、一対の操作片32が更に設けられている。当該距離は、主板31と操作片32との間に作業者が指先を挿し込むことができる程度の距離である。本実施形態における主板31の下部は、主板31のうち下端から1/3の範囲内の部分であることが好ましく、主板31のうち下端から1/5の範囲内の部分であることが更に好ましい。一対の操作片32は、揺動板3の横方向において、互いに距離をあけて位置する。
【0033】
操作片32は、外側方D1に向けて滑らかに膨らむように円弧状に湾曲している。操作片32のうち横方向の中央部分が、操作片32のうち主板31から最も距離を隔てた部分であり、主板31のうち横方向の両端部分が、操作片32のうち主板31に最も近い部分である。
【0034】
操作片32は、補強筋36とこれの内側で隣接する縦リブ35との間に、位置している。操作片32は、補強筋36と縦リブ35とをつなぐように、補強筋36及び縦リブ35と一体に設けられている。主板31と操作片32との間に形成された空間9が、作業者が自身の指先を挿入することのできる空間である。空間9は補強筋36及び縦リブ35に沿って上向きに開放されており、作業者は空間9に対して、その上方から指先を挿し込むことが可能である。
【0035】
一実施形態の揺動板3には、空間9をその下方から覆う板状の底部33が、更に設けられている。底部33は、補強筋36とこれに隣接する縦リブ35との間に、補強筋36と縦リブ35とをつなぐように形成されている。底部33は、主板31及び操作片32と一体に設けられており、また、補強筋36及び縦リブ35と一体に設けられている。
【0036】
加えて、揺動板3には、一対の操作片32の間に位置する横長の補強筋34が設けられている。補強筋34は、主板31の一部が外側方D1に向けて断面コ字状に膨出することで構成されている(図10参照)。補強筋34は、補強筋34を挟んで両側に位置する一対の操作片32をつなぎ、かつ、同じく両側に位置する一対の底部33をつなぐように、横方向に長い一直線状に形成されている。主板31の内面312のうち、補強筋34の裏側に位置する部分には、横方向に長い一直線状の凹溝部345が設けられている(図11参照)。
【0037】
凹溝部345は、補強筋34よりも一回り小さな外形を有する。主板31の内面312には、補強筋34を分断するように少なくとも1つの縦リブ347が設けられている。少なくとも1つの縦リブ347は、横方向において互いに距離をあけて位置する複数(具体的には2つ)の縦リブ347である。凹溝部345は、2つの縦リブ347を介して3つの凹溝部345a,345b,345cに分断されている。3つの凹溝部345a,345b,345cは、横方向に一直線状に並んでいる。
【0038】
図7等に示すように、補強筋34と、その左右両側に位置する一対の操作片32とは、正面から見たときに一直線状に連続している。一直線状に連続した補強筋34及び一対の操作片32と、左右両側の縦長の補強筋36とは、上向きに開放されたコ字状をなすように連結されている。同様に、補強筋34と、その左右両側に位置する一対の底部33とは、正面から見たときに一直線状に連続している。
【0039】
補強筋34の外側方D1を向く面は、左右両側の操作片32及び底部33の外側方D1を向く面のうち、一部に対して面一に連続している。以下、外側方D1を向く面を「外側面」という。当該一部(つまり、補強筋34の外側面に対して面一に連続する面)は、操作片32の下部の外側面と底部33の外側面とが合わさったものの、全部又は一部であることが好ましい。当該一部が、操作片32の下部の外側面の全部又は一部で構成されてもよいし、底部33の外側面の全部又は一部で構成されてもよいし、操作片32の下部の外側面と底部33の外側面の一部とが合わさったもので構成されてもよい。上記の構造を備えることで、操作片32を用いて揺動板3を操作したときに、揺動板3が撓むことが抑えられる。
【0040】
一対の操作片32は、それぞれ補強筋34よりも外側方D1に突出するように設けられている。一対の操作片32の突出量は、互いに同一である。本文で用いる同一の文言は厳密な意味での同一に限定されず、略同一な場合も含む。
【0041】
補強筋34の縦方向(つまり主板31を正面視したときの上下方向)の幅は、操作片32の縦方向の幅よりも大きく設定されているが、操作片32の縦方向の幅と同一に設定されてもよいし、操作片32の縦方向の幅よりも小さく設定されてもよい。
【0042】
揺動板3の外側方D1を向く面(主板31の外面311)のうち、上下及び左右方向の中央部分は、ラベルを貼るためのラベル面である。ラベル面は、リブが設けられていない平坦な面である。ラベル面は、左右方向において、両側の縦長の補強筋36の間に位置し、かつ両側の縦リブ35の間に位置する。ラベル面は、上下方向において、持ち手37と横長の補強筋34との間に位置する。
【0043】
1-5.折曲板
図12等に示すように、折曲板4は、矩形板状の上板41と、矩形板状の下板42とで主体が構成されている。上板41と下板42とが連結状態において相対的に回転することで、折曲板4の全体が「く」字状に折り曲がる。
【0044】
上板41の上縁部分(上板41のうち口枠2に近い側の縁部分)には、口枠2の長側フレーム22に対して回転可能に連結する連結縁部412が設けられている。
【0045】
上板41の下縁部分(上板41のうち口枠2から離れた側の縁部分)には、下板42に対して回転可能に連結するためのヒンジ軸414と軸受部416とが設けられている。また、上板41の下縁部分には、ヒンジ軸414と軸受部416よりも内側方に位置するように、内側片418が設けられている。
【0046】
下板42の下縁部分(下板42のうち底板1に近い側の縁部分)には、複数の連結部422が設けられている。複数の連結部422は、底板1の長辺部分112に設けられた複数の連結部15に対して、回転可能に連結する。
【0047】
下板42の上縁部分(下板42のうち底板1から離れた側の縁部分)には、上板41に対して回転可能に連結するためのヒンジ軸424と軸受部426とが設けられている。下板42と上板41との相対的な回転範囲は、上板41の内側片418によって、内側に向けて「く」字状に折れ曲がる範囲に制限されている。
【0048】
1-6.全体
一実施形態の運搬用容器は、上記の各構成を備えるので、運搬用容器を折り畳み状態から組み立てる際に、揺動板3と底板1との係合が不十分であったり、組み立て後に荷重が掛かって揺動板3と底板1との係合が外れたりした場合には、揺動板3を適正位置に戻して底板1に係合させる作業を、簡単に行うことができる。
【0049】
例えば、一実施形態の運搬用容器の内部に既に荷物が入っている状況や、一実施形態の運搬用容器の上に別の容器が積み重ねられている状況では、揺動板3をその内側から手で押し込むことは容易でなく、揺動板3と底板1とが適正に係合されていないと荷崩れのおそれがあるが、このような状況にあるときは、揺動板3を適正位置に戻して底板1に係合させる作業を、以下の簡単な作業で効率的に行うことが可能である。
【0050】
つまり、一実施形態の運搬用容器において、揺動板3を適正位置に戻したいときには、主板31と操作片32との間に形成された空間9に対して上方から指先を挿し入れ、その指先で操作片32を外側に引っ張ることで、揺動板3を適正位置に戻して底板1に係合させる作業を、簡単に行うことが可能である。
【0051】
揺動板3には、横方向に距離をあけて操作片32が一対設けられているので、一方の操作片32にだけ指先を引っ掛けて揺動板3を回転操作することも可能であるし、両方の操作片32に指先を引っ掛けて揺動板3を回転操作することも可能である。
【0052】
一対の操作片32の一方又は両方を用いて揺動板3を回転操作するとき(特に、一方の操作片32だけを利用して揺動板3を回転操作するとき)には、操作片32に加わる外力によって揺動板3に撓みが生じやすいが、これに対して、一実施形態の運搬用容器では、一対の操作片32の間に横長の補強筋34が位置していることで、揺動板3の撓みが効果的に抑えられる。そのため、揺動板3の係合部395(より具体的には2つの係合爪397)を、底板1の係合部13に対して適正に係合させることが容易である。
【0053】
組み立て後の運搬用容器では、揺動板3の補強筋34の下端部と、底板1の短辺部分111の上端部とが、正面から見たときに重なる位置にある。底板1の短辺部分111の上端部は、補強筋34の下端部よりも外側方D1に位置する。そのため、底板1の短辺部分111に対して外部から負荷が掛かった場合には、短辺部分111の上端部が補強筋34に当たることで、それ以上の変形が抑制される。
【0054】
2.変形例
一実施形態の運搬用容器の各種の変形例について説明する。以下の説明において、一実施形態の運搬用容器と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0055】
2-1.変形例1
図13Aには、揺動板3の変形例1を示している。変形例1では、一対の操作片32が、主板31の下部でなく、主板31の上下方向の中間部から外側方D1に距離をあけて位置するように設けられている。ここでの主板31の中間部は、例えば、主板31のうち下端から1/3を超え、かつ下端から2/3を超えない範囲内の部分である。
【0056】
一対の操作片32は、主板31の中間部のうち横方向の両端部分から、外側方D1に距離をあけて位置するように設けられている。一直線状に連続した補強筋34及び一対の操作片32と、左右両側の縦長の補強筋36とは、H字状をなすように連結されている。
【0057】
変形例1では、揺動板3には底部33が設けられていないことが好ましい。この場合、空間9は上下の両方に開放されるので、作業者は、空間9に対してその上下両方から指を挿し込むことが可能である。
【0058】
補強筋34は、主板31の中間部のうち一対の操作片32に挟まれる位置にあり、横方向に長い一直線状の外形を有する。一対の操作片32と補強筋34とは、揺動板3を正面から見たときに、揺動板3の中間部において一直線状に連続する。そのため、変形例1では、揺動板3の強度が高められるという利点がある。
【0059】
2-2.変形例2
図13Bには、揺動板3の変形例2を示している。変形例2では、一対の操作片32とこれの間に位置する横長の補強筋34とが、上下にずれた位置関係にある。具体的には、横長の補強筋34が、一対の操作片32よりも下方に位置している。変形例2においても、揺動板3の横方向において一対の操作片32に挟まれる位置に、鉛直断面コ字状の補強筋34が設けられていることで、一対の操作片32の一方又は両方を用いて揺動板3を回転操作したときに、揺動板3が撓むことが効果的に抑えられる。
【0060】
なお、一対の操作片32と補強筋34との相対的な上下位置関係はこれに限定されず、例えば、補強筋34が一対の操作片32よりも上方に位置してもよいし、上下方向において補強筋34の一部と一対の操作片32とがオーバーラップしてもよい。
【0061】
2-3.変形例3
図13C及び図13Dには、揺動板3の変形例3を示している。変形例3では、横長の補強筋34が、互いに平行な複数の横リブ349で構成されている。複数の横リブ349は、互いに平行な2つの横リブ349である。
【0062】
補強筋34は、少なくとも1つの横リブ349で構成されていればよく、例えば1つの横リブ349だけで補強筋34が構成されることや、互いに平行な3つ以上の横リブ349で補強筋34が構成されることも好ましい。
【0063】
変形例3のように、補強筋34が少なくとも1つの横リブ349で構成されている場合には、主板31の内面312のうち補強筋34の裏側に位置する部分は、平坦に設けられていること(つまり一実施形態の凹溝部345のように凹んだ部分が設けられていないこと)が好ましい。
【0064】
2-4.他の変形例
上記した変形例1-3は、それぞれ一実施形態の運搬用容器の変形例の1つに過ぎず、一実施形態の運搬用容器の他の構成についても、適宜に変更することが可能である。
【0065】
例えば、一実施形態の運搬用容器では、一対の揺動板3が共通の構成(つまり一対の操作片32、補強筋34等を含んだ構成)を備えているが、このような構成を一対の揺動板3の一方だけが備えることも可能である。
【0066】
また、一実施形態の運搬用容器では、操作片32が円弧状に湾曲しているが、操作片32が平坦な形状を有することも可能である。
【0067】
また、一実施形態の運搬用容器において、空間9の下方を覆う底部33は貫通孔を有していないが、底部33が少なくとも1つの貫通孔(水抜き孔)を有することも好ましい。
【0068】
3.作用効果
以上、一実施形態及びこれの各種変形例に基づいて説明したように、本開示の運搬用容器は、底板1と、底板1の上方に位置し、上下に貫通する開口部20が形成された口枠2と、口枠2に対して回転可能に連結された一対の揺動板3と、底板1及び口枠2に対して回転可能に連結された一対の折曲板4とを備える。
【0069】
一対の揺動板3のうち一方又は両方の揺動板3は、揺動板3の主体を構成する主板31と、主板31から外側方D1に距離をあけて位置し、指先を挿し込み可能な空間9を主板31との間に形成する一対の操作片32と、主板31から外側方D1に突出するように設けられた横長の補強筋34とを含む。主板31を正面視したときの左右方向において、一対の操作片32は互いに距離をあけて位置し、補強筋34は、一対の操作片32の間に位置する。
【0070】
本開示の運搬用容器によれば、揺動板3と底板1との係合が不十分であったり、組み立て後に揺動板3と底板1との係合が外れたりした場合に、作業者は、自身の指先を空間9に挿し入れ、操作片32に指先を引っ掛けて揺動板3を操作することで、揺動板3を適正位置に戻し、揺動板3を底板1に係合させることができる。しかも、このときに揺動板3が撓むことは、補強筋34によって揺動板3の強度や剛性が高まることで、効果的に抑えられる。そのため、運搬用容器の内部に既に荷物が入っているときや、運搬用容器の上に別の容器が積み重ねられているときであっても、作業者は、揺動板3を操作して適正位置に戻す作業を簡単に行うことができる。
【0071】
また、本開示の運搬用容器において、揺動板3の補強筋34は、一対の操作片32と連続して設けられている。
【0072】
本開示の運搬用容器によれば、揺動板3の強度が効果的に高められる。そのため、操作片32を用いて揺動板3を回転操作するときに、揺動板3が撓んで適正位置に上手く戻らないという事態(ひいては揺動板3が底板1に上手く係合しないという事態)が生じることは、効果的に抑えられる。
【0073】
また、本開示の運搬用容器において、揺動板3の補強筋34は、主板31の一部が外側方D1に膨出することで構成されている。主板31の内側方D2を向く面312のうち、補強筋34の裏側に位置する部分には、凹溝部345が設けられている。
【0074】
本開示の運搬用容器によれば、主板31のうち補強筋34が設けられている部分が、全体として屈曲した形状を有することになり、揺動板3の強度が効果的に高められる。そのため、操作片32を用いて揺動板3を回転操作するときに、揺動板3が撓んで適正位置に上手く戻らないという事態が生じることは、効果的に抑えられる。
【0075】
また、本開示の運搬用容器において、操作片32は、主板31の下部から外側方D2に距離をあけて位置し、空間9を、その上方から指を挿し込み可能に形成するものである。揺動板3は、空間9をその下方から覆う底部33を、更に含む。
【0076】
本開示の運搬用容器によれば、底部33が操作片32を保護するように機能することで、例えば他の容器等に衝突して操作片32が破損することは、効果的に抑えられる。
【0077】
以上、一実施形態及びこれの各種変形例に基づいて本開示の運搬用容器を説明したが、本開示の運搬用容器は、前記の実施形態や変形例に限定されず、適宜の設計変更を行うことや、各種変形例の構成を適宜に組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 底板
2 口枠
20 開口部
3 揺動板
31 主板
312 面
32 操作片
33 底部
34 補強筋
345 凹溝部
4 折曲板
9 空間
D1 外側方
D2 内側方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13