(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ドレントラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20241024BHJP
F16T 1/38 20060101ALI20241024BHJP
F16T 1/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16T1/22 Z
F16T1/38 B
F16T1/10
(21)【出願番号】P 2021073053
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-168371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0215208(US,A1)
【文献】特許第6333491(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/22
F16T 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンの流入口、前記流入口からのドレンが貯留される貯留室が形成されたケーシングと、
前記貯留室に位置し、前記貯留室のドレンが流出する弁孔が形成された弁座、前記弁孔を温度に応じて開閉する弁体を有する弁機構と、
前記貯留室における前記弁機構の設置高さを変更する変更機構とを備えている
ことを特徴とするドレントラップ。
【請求項2】
請求項1に記載のドレントラップにおいて、
前記弁体は、前記貯留室における前記弁座の下方に位置し、前記弁座と一体に設けられ、
前記変更機構は、前記弁座に連結され、前記弁座を上下方向に移動させる駆動軸を有している
ことを特徴とするドレントラップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドレントラップにおいて、
前記貯留室の下部に設けられ、前記貯留室のドレンが流出する主弁孔、前記貯留室に収容され、前記主弁孔を開閉するフロートを有する主弁機構をさらに備え、
前記弁機構は、前記弁座が前記貯留室の上部に設けられる副弁機構である
ことを特徴とするドレントラップ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のドレントラップにおいて、
前記弁機構は、複数設けられており、
前記複数の弁機構では、前記流入口との距離が最も近い前記弁機構の設置高さが最も低い
ことを特徴とするドレントラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ドレントラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気システム等に設けられ、蒸気の排出を抑制する一方、ドレンを排出するドレントラップが知られている。例えば特許文献1に開示されているドレントラップは、流路に設けられた弁孔と、その弁孔を開閉する温度応動弁とを備えている。このドレントラップでは、温度が所定温度まで低下すると、温度応動弁が開弁し、ドレンが弁孔から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したようなドレントラップでは、運転条件の変化によってドレンの流入量が低下した場合に、温度応動弁の位置(高さ方向の位置)によっては温度応動弁が開弁しない虞がある。そのため、ドレンの排出が不十分となる。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドレンの流入量が低下した場合でも、ドレンの排出機能を発揮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、ケーシングと、弁機構と、変更機構とを備えるドレントラップである。前記ケーシングは、ドレンの流入口、前記流入口からのドレンが貯留される貯留室が形成されているものである。前記弁機構は、前記貯留室に位置し、前記貯留室のドレンが流出する弁孔が形成された弁座、前記弁孔を温度に応じて開閉する弁体を有している。前記変更機構は、前記貯留室における前記弁機構の設置高さを変更する。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示の技術によれば、ドレンの流入量が低下した場合でも、ドレンの排出機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ドレントラップの概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のB-B線における断面図であり、一部を省略して示す図である。
【
図4】
図4は、ドレントラップの一状態を示す
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
本実施形態のドレントラップ100は、蒸気システム等に設けられ、ドレンが流入してきた場合にはドレンを流出させる一方、蒸気が流入してきた場合には蒸気の流出を阻止する。
【0011】
図1は、ドレントラップ100の概略構成を示す断面図である。
図2は、
図1のA-A線における部分断面図である。
図3は、
図2のB-B線における断面図であり、一部を省略して示す図である。
【0012】
ドレントラップ100は、液体を含む流体の流路が形成されたケーシング10と、流路中に設けられ、流路を開閉する2種類の弁機構(主弁機構30、副弁機構40)と、変更機構50とを備えている。主弁機構30は、ケーシング10内に流入したドレンを排出する。副弁機構40は、ケーシング10内に流入した空気およびドレンを排出する。
【0013】
ケーシング10は、下部11と上部12とを有している。ケーシング10には、ドレンの流入口21および流出口23と、貯留室22と、2つの排出路(主排出路24、副排出路25)とが形成されている。貯留室22は、流入口21と連通しており、貯留室22には、流入口21から流入したドレンが一時的に貯留される。主排出路24は、貯留室22と流出口23とを連通させ、副排出路25は、貯留室22と主排出路24とを連通させている。
【0014】
ケーシング10では、流入口21、貯留室22、流出口23、主排出路24および副排出路25によって流路が形成される。具体的には、流路は、ドレンを排出するための主流路と、空気およびドレンを排出するための副流路を有している。主流路は、流入口21、貯留室22、主排出路24および流出口23によって形成される。副流路は、流入口21、貯留室22、副排出路25、主排出路24および流出口23によって形成される。
【0015】
流入口21および流出口23は、下部11に設けられている。流入口21と流出口23とは、同軸に設けられている。つまり、流入口21および流出口23は、水平に延びる同一の軸心Y上に形成されている。貯留室22は、下部11に設けられている。主排出路24は、下部11に形成されており、上流端が貯留室22の下部に接続され、下流端が流出口23に接続されている。副排出路25は、下部11と上部12とに跨って形成されており、上流端が貯留室22の上部に接続され、下流端が主排出路24に接続されている。
【0016】
なお、流入口21および流出口23のそれぞれは、蒸気システムの配管と接続される。
図1に示すように、ドレントラップ100では、軸心Y方向が上下流方向となっており、高さ方向が上下方向となっている。また、ドレントラップ100では、下流側に向かって右側を右とし左側を左として左右方向を設定する(
図2参照)。
【0017】
主弁機構30は、主流路を開閉するものである。具体的に、主弁機構30は、貯留室22から主排出路24にドレンを流出させる一方、貯留室22から主排出路24への蒸気の流出を阻止する弁機構である。主弁機構30は、貯留室22に設けられており、弁体31および弁座32を有している。
【0018】
弁体31は、中空球形のフロートであり、貯留室22に自由状態で収容されている。弁座32は、貯留室22における主排出路24の接続部に設けられている。弁座32には、貯留室22のドレンが通過する主弁孔としての弁孔33が形成されている。つまり、弁孔33は、貯留室22の下部に設けられ、貯留室22と主排出路24とを連通させている。弁孔33の上流端は、オリフィスを構成している。主排出路24は、弁孔33に連通し、弁孔33を通過したドレンを流出口23に導く。
【0019】
主弁機構30では、貯留室22におけるドレン水位に応じて弁体31が浮上降下し弁孔33を開閉する。具体的に、貯留室22のドレンが増加すると、弁体31が浮上して弁座32から離座し、弁孔33が開放される。一方、貯留室22のドレンが減少すると、弁体31が下降して弁座32に着座し、弁孔33が閉鎖される。こうして、弁孔33が開閉されることにより、主流路が開閉される。
【0020】
また、貯留室22には、流入口21との連通部にスクリーン27が設けられている。スクリーン27によって、流入口21から貯留室22への異物の流入が防止される。また、貯留室22には、上部寄りに弁カバー28が設けられている。弁カバー28は、弁座32の上方に設けられ、貯留室22を上下に仕切っている。弁カバー28は、弁体31が浮上して弁カバー28に接触することにより、弁体31が所定の高さ以上に浮上することを規制するものである。なお、図示しないが、弁カバー28には流入口21からのドレンが流通する貫通孔が設けられている。
【0021】
副弁機構40は、副流路を開閉するものであり、複数(本実施形態では、4つ)設けられている。具体的に、4つの副弁機構40は、貯留室22から副排出路25に低温の空気やドレンを流出させる一方、貯留室22から副排出路25への蒸気の流出を阻止する弁機構である。4つの副弁機構40のそれぞれは、貯留室22の上部に設けられており、弁体41、弁座42、保持部材44および取付部材45を有している。副弁機構40は、本願の請求項に係る弁機構に相当する。
【0022】
なお、4つの副弁機構40のそれぞれを区別して説明する場合には、第1副弁機構40a、第2副弁機構40b、第3副弁機構40c、第4副弁機構40dと称する(
図1および
図3参照)。
【0023】
弁体41は、温度応動部材である。弁体41は、図示しないが、内部に薄板ダイヤフラムと熱膨張収縮液が収容されている。弁座42は、貯留室22における副排出路25の接続部に設けられている。弁座42には、貯留室22のドレン(即ち、流入口21から流入したドレン)が通過する弁孔43が形成されている。つまり、弁孔43は、貯留室22の上部に設けられ、貯留室22と副排出路25とを連通させている。弁孔43の上流端は、オリフィスを構成している。
【0024】
より詳しくは、弁体41は、貯留室22における弁座42の下方に位置している。弁体41は、保持部材44によって保持されている。弁座42は、弁孔43が貫通する略円筒状に形成されている。弁座42は、取付部材45に取り付けられている。
【0025】
取付部材45は、本体45aと、延出部45bとを有している。本体45aは、弁座42と同軸に設けられた略円筒部材である。本体45aには、弁座42が挿入されて取り付けられている。より具体的には、弁座42は、その上流側端部が本体45aから突出する状態で本体45aに挿入されている。本体45aの内周面には雌ねじが形成され、弁座42の外周面には雄ねじが形成されている。弁座42は、本体45aの内周側に螺合により挿入されている。延出部45bは、2つであり、本体45aの下流端から軸心方向に延びている。延出部45bは、本体45aの周方向における一部が延びている。つまり、延出部45bは本体45aと一体に形成されている。2つの延出部45bは、互いに対向している。この延出部45bは、後述する駆動軸51と連結される部分である。
【0026】
取付部材45は、ケーシング10の上部12に挿入されている。具体的に、取付部材45は、上部12との間から蒸気等の流体が漏出しない程度に且つ上部12に対して摺動可能な程度に上部12に挿入されている。取付部材45は、軸心方向に移動可能に且つ軸心回りに回転可能に上部12に挿入されている。そして、保持部材44は、その上部が弁座42と取付部材45の本体45aとによって挟持されることにより弁座42に取り付けられている。
【0027】
こうして、弁体41は、弁座42と一体に設けられている。つまり、副弁機構40では、弁体41、弁座42、保持部材44および取付部材45が一体に移動可能である。
【0028】
副弁機構40は、弁体41(貯留室22)の温度が所定温度まで低下すると弁体41が弁孔43を開放するように構成されている。つまり、副弁機構40では、温度に応じて弁体41が膨張または収縮し弁孔43を開閉する。具体的に、弁体41(貯留室22)の温度が所定温度まで低くなると、弁体41が収縮して弁座42から離座し、弁孔43が開放される。一方、弁体41(貯留室22)の温度が所定温度よりも高くなると、弁体41が膨張して弁座42に着座し、弁孔43が閉鎖される。こうして、弁孔43が開閉されることにより、副流路が開閉される。
【0029】
第1副弁機構40aおよび第2副弁機構40bは、軸心Y方向において上流側から順に配置されている。第3副弁機構40cおよび第4副弁機構40dは、軸心Yと直交する水平方向に順に配置されている(
図3参照)。第3副弁機構40cおよび第4副弁機構40dは、第1副弁機構40aと第2副弁機構40bとの間の略中央を通る軸に沿って配置されている。4つの副弁機構40は、貯留室22において同じ高さに配置されている。このように配置された4つの副弁機構40では、第1副弁機構40aの弁孔43が流入口21と最も近くなる。
【0030】
副排出路25は、4つの副弁機構40のそれぞれの弁孔43に連通すると共に、互いに合流する複数の流路を有し、その複数の流路の合流ドレンを主排出路24を介して流出口23に導く。そして、副排出路25では、前述の複数の流路が互いの下流側へ向かって鋭角に合流している。副排出路25は、本願の請求項に係る排出路に相当する。
【0031】
具体的に、副排出路25は、8つの流路(第1流路251~第8流路258)を有している。この8つの流路のうち、第1流路251~第7流路257は、前述の複数の流路(段落0027に記載の複数の流路、以下同様。)に相当する。
【0032】
第1流路251~第4流路254は、それぞれ、弁孔43から上下に直線状に延びる縦流路である。第1流路251~第4流路254は、4つの副弁機構40のそれぞれの弁孔43に連通している。つまり、第1流路251は第1副弁機構40aの弁孔43に連通し、第2流路252は第2副弁機構40bの弁孔43に連通し、第3流路253は第3副弁機構40cの弁孔43に連通し、第4流路254は第4副弁機構40dの弁孔43に連通している。
【0033】
第5流路255~第7流路257は、第1流路251~第4流路254に接続される横流路である。より詳しくは、第5流路255は、上方から視た場合、軸心Y方向に延びる直線状の流路である。第5流路255における上流端の近傍には、第1流路251が接続されている。また、第5流路255における略中央部には、第2流路252が接続されている。つまり、第5流路255には、上流側から順に、第1流路251および第2流路252が接続されている。さらに言えば、第5流路255は、第1流路251および第2流路252の共通の横流路である。第6流路256は、第5流路255の右側に位置している。第6流路256は、上方から視た場合、軸心Yに対して傾いた直線状の流路である。第6流路256における上流端の近傍には、第3流路253が接続されている。第7流路257は、第5流路255の左側に位置している。第7流路257は、上方から視た場合、軸心Yに対して傾いた直線状の流路である。
【0034】
このように、第1流路251および第5流路255によって形成される連続した流路は、第1副弁機構40aの弁孔43に連通する前述の複数の流路の一つである。第2流路252は、第2副弁機構40bの弁孔43に連通する前述の複数の流路の一つである。第3流路253および第6流路256によって形成される連続した流路は、第3副弁機構40cの弁孔43に連通する前述の複数の流路の一つである。第4流路254および第7流路257によって形成される連続した流路は、第4副弁機構40dの弁孔43に連通する前述の複数の流路の一つである。
【0035】
そして、第1流路251および第5流路255によって形成される流路と、第3流路253および第6流路256によって形成される流路と、第4流路254および第7流路257によって形成される流路とは、互いの下流側へ向かって鋭角に合流している。即ち、第5流路255、第6流路256および第7流路257は、互いの下流側へ向かって鋭角に合流している。そのため、例えば90度または鈍角に合流する場合に比べて、ドレン同士が衝突(合流)することによって生じる流速の低下を抑制することができる。そのため、ドレン同士の衝突(合流)に起因する排出能力(排出流量)の低下を抑制することができる。
【0036】
具体的に、第5流路255、第6流路256および第7流路257は、それぞれの下流端で合流している(接続されている)。第5流路255と第6流路256との合流角度θa、即ち、第5流路255の軸心Xaと第6流路256の軸心Xbとの交差角度は、鋭角である。第5流路255と第7流路257との合流角度θb、即ち、第5流路255の軸心Xaと第7流路257の軸心Xcとの交差角度は、鋭角である。さらに、第6流路256と第7流路257との合流角度(合流角度θa+合流角度θb)も、鋭角である。
【0037】
第8流路258は、上下に直線状に延びる流路である。第8流路258の上流端は、第5流路255、第6流路256および第7流路257の下流端(即ち、合流箇所)に接続されている。第8流路258の下流端は、主排出路24に接続されている。第8流路258は、第5流路255、第6流路256および第7流路257の合流ドレンを主排出路24ひいては流出口23に導く。
【0038】
変更機構50は、貯留室22における副弁機構40の設置高さを変更する。変更機構50は、4つの副弁機構40のそれぞれに設けられており、何れも同じ構成である。変更機構50は、駆動軸51と、保持部材56とを有している。
【0039】
駆動軸51は、取付部材45に連結され、取付部材45を上下方向に移動させる。具体的に、駆動軸51は、取付部材45と同軸に設けられた円形の棒状部材であり、下端部が取付部材45に連結されている。駆動軸51は、軸方向中央のやや下部に螺合部52が形成されている。駆動軸51の下端部には連結部53が形成され、上端部には操作部54が形成されている。螺合部52は、外周面に雄ねじが形成されている。
【0040】
保持部材56は、略円筒部材であり、上側から順に大径部58および小径部57が形成されている。保持部材56は、小径部57の外周面に雄ねじが形成されており、小径部57がケーシング10の上部12のねじ孔に螺合することによりケーシング10に取り付けられている。小径部57および大径部58には、それぞれねじ孔が形成されている。駆動軸51は、螺合部52が小径部57のねじ孔と螺合して保持部材56に保持される。
【0041】
大径部58のねじ孔には、パッキン61が設けられている。パッキン61は、大径部58のねじ孔に螺合される押え部材62によって保持部材56に押し付けられる。押え部材62には、駆動軸51が挿通される貫通孔が形成されている。駆動軸51の操作部54を含む一部および押え部材68は、ケーシング10の外部に位置している。操作部54は、駆動軸51を回転させる(即ち、上下方向に移動させる)ために作業者が把持する部分である。
【0042】
駆動軸51では、連結部53が取付部材45と連結されている。具体的に、連結部53には、駆動軸51の軸心と直交する方向に延びる連結ピン55が設けられている。駆動軸51は、連結ピン55の両端が、取付部材45の2つの延出部45bに挿入されることにより、取付部材45と連結される。つまり、駆動軸51は、取付部材45を介して弁座42に連結されており、取付部材45を介して弁座42を上下方向に移動させる。
【0043】
このように構成された変更機構50では、駆動軸51が作業者によって回転されると、駆動軸51が回転しながら軸心方向に進退し、それに伴い、取付部材45が回転しながら軸心方向に進退する。そのため、弁座42および弁体41を含む副弁機構40が回転しながら軸心方向に進退(移動)する。これにより、貯留室22における副弁機構40の設置高さが変更される。
【0044】
〈動作〉
蒸気システムの運転時における上述したドレントラップ100の動作について説明する。運転時は、高温高圧のドレンがドレントラップ100に流入してくる。
【0045】
具体的に、高温高圧のドレンは、流入口21から流入して貯留室22に貯留される。主弁機構30では、貯留室22のドレン水位が所定位まで上昇すると、弁体31が浮上して弁座32から離座し、弁孔33が開放される。つまり、主弁機構30は開弁する。そうすると、貯留室22のドレンは、主弁機構30を介して主排出路24に流れて流出口23から流出していく。
【0046】
主弁機構30からのドレンの流出量に対して流入口21から貯留室22へのドレンの流入量が多い場合には、貯留室22においてドレンは上部まで溜まる。4つの副弁機構40では、弁体41の温度がドレンの温度に近づくものの所定温度より高い温度にはならない。そのため、4つの副弁機構40では、弁体41が弁座42から離座し、弁孔43が開放されている。そのため、ドレンは、4つの副弁機構40を介して副排出路25に流出し、主排出路24を通って流出口23から流出していく。
【0047】
より詳しくは、第1副弁機構40aを通過したドレンは、第1流路251を介して第5流路255に流れる。第2副弁機構40bを通過したドレンは、第2流路252を介して第5流路255に流れ、第1副弁機構40aを通過したドレンと合流する。第3副弁機構40cを通過したドレンは、第3流路253を介して第6流路256に流れる。第4副弁機構40dを通過したドレンは、第4流路254を介して第7流路257に流れる。第5流路255、第6流路256および第7流路257のそれぞれに流れたドレンは、互いに合流して第8流路258および主排出路24を通って流出口23から流出していく。
【0048】
ここで、運転条件の変化によって流入口21から貯留室22へのドレンの流入量が低下するような場合、
図4に示すように、変更機構50によって副弁機構40の設置高さを低くする。
図4は、ドレントラップ100の一状態を示す
図1相当図である。本実施形態では、一例として、4つの副弁機構40のうち、流入口21との距離が最も近い第1副弁機構40aの設置高さを低くする。
【0049】
ドレンの流入量が低下すると、貯留室22におけるドレン水位はそれほど高くならない。しかしながら、本実施形態では、第1副弁機構40aの設置高さを低くすることにより、主弁機構30からのドレンの流出と、第1副弁機構40aからのドレンの流出を行うことが可能である。そのため、ドレンの排出流量を稼ぐことができる。このように、ドレンの流入量が低下した場合でも、副弁機構40によるドレンの排出機能を発揮させることができる。
【0050】
しかも、流入口21との距離が最も近い第1副弁機構40aの設置高さを低くしているため、流入口21から流入してきたドレンをいち早く副排出路25に流出させることができる。
【0051】
一方、流入口21から貯留室22に高温高圧の蒸気が流入した場合、貯留室22のドレンは、主弁機構30から流出して減少していき、やがて弁体31が弁座32に着座する。こうして、主弁機構30が閉弁し、弁孔33からの蒸気の流出が阻止される。また、貯留室22に蒸気が流入した場合、4つの副弁機構40では弁体41の温度が上昇する。そうすると、弁体41は膨張して弁座42に着座する。こうして、副弁機構40が閉弁し、弁孔43からの蒸気の流出が阻止される。
【0052】
このように、ドレントラップ100は、運転時には、流入してきた高温ドレンを下流側へ流出させる一方、流入してきた蒸気の流出を阻止する。
【0053】
以上のように、前記実施形態のドレントラップ100は、ドレンの流入口21、流入口21からのドレンが貯留される貯留室22が形成されたケーシング10と、貯留室22に位置し、貯留室22のドレンが流出する弁孔43が形成された弁座42、弁孔43を温度に応じて開閉する弁体41を有する副弁機構40(弁機構)と、貯留室22における副弁機構40の設置高さを変更する変更機構50とを備えている。
【0054】
前記の構成によれば、貯留室22における副弁機構40の設置高さを変更できるので、例えば流入口21から貯留室22へのドレンの流入量が低下し場合は、副弁機構40の設置高さを低く変更することにより、ドレンを確実に排出させることができる。そのため、副弁機構40によるドレンの排出機能を発揮させることができる。
【0055】
また、前記実施形態のドレントラップ100において、弁体41は、貯留室22における弁座42の下方に位置し、弁座21と一体に設けられている。そして、変更機構50は、弁座42に連結され、弁座42を上下方向に移動させる駆動軸51を有している。
【0056】
前記の構成によれば、弁体41と弁座42とが一体に設けられているため、駆動軸51によって弁座42を移動させることで弁体41も移動させることができる。このように、弁体41および弁座42を含む副弁機構40を簡易に移動させることができる。
【0057】
また、前記実施形態のドレントラップ100において、副弁機構40は、4つ(複数)設けられている。4つの副弁機構40では、流入口21との距離が最も近い第1副弁機構40aの設置高さが最も低い。
【0058】
前記の構成によれば、流入口21から流入してきたドレンをいち早く副弁機構40から流出させることができる。つまり、副弁機構40によるドレンの排出を効果的に行うことができる。
(その他の実施形態)
本願に開示の技術は、前記実施形態について以下のような構成としてもよい。
【0059】
例えば、前記実施形態のドレントラップ100において、流入口21から貯留室22へのドレンの流入量が低下した場合、4つ副弁機構40の全ての設置高さを同様に低くするようにしてもよい。
【0060】
また、前記実施形態のドレントラップ100において、副弁機構40の数量は、1つ、または、4つ以外の複数であってもよい。
【0061】
また、前記実施形態のドレントラップ100において、主弁機構30を省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願に開示の技術は、ドレントラップについて有用である。
【符号の説明】
【0063】
100 ドレントラップ
10 ケーシング
21 流入口
22 貯留室
30 主弁機構
31 弁体(フロート)
33 主弁孔
40 副弁機構(弁機構)
40a 第1副弁機構(副弁機構)
40b 第2副弁機構(副弁機構)
40c 第3副弁機構(副弁機構)
40d 第4副弁機構(副弁機構)
41 弁体
42 弁座
43 弁孔
50 変更機構
51 駆動軸