(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241024BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20241024BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F24F7/06 101B
F24F7/06 101Z
F04D29/44 P
F04D29/62 C
(21)【出願番号】P 2021107736
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】595039852
【氏名又は名称】株式会社渡辺製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】図子田 勇人
(72)【発明者】
【氏名】原 一哲
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008729(JP,A)
【文献】特開2013-036732(JP,A)
【文献】特開2013-036722(JP,A)
【文献】特開2013-024449(JP,A)
【文献】特開2013-029280(JP,A)
【文献】特開2013-148226(JP,A)
【文献】特開平04-203726(JP,A)
【文献】特開2007-333228(JP,A)
【文献】特開2017-090025(JP,A)
【文献】特開2018-071866(JP,A)
【文献】特開平11-270495(JP,A)
【文献】特開昭61-197926(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01517094(EP,A1)
【文献】中国実用新案第210859334(CN,U)
【文献】中国実用新案第208983441(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24C 15/20
F04D 29/44
F04D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機を支持する送風機筐体と、
前記送風機筐体が配設される送風機ボックスと、
前記送風機ボックスの下方に配設されるフード本体部と、
前記フード本体部の下方に配設され、前記フード本体部へ吸い込まれる空気の流れを規制する板状整流板と、を備え、
前記送風機筐体には、前記送風機を介して前記送風機筐体の内部へと前記空気を吸い込むための吸気口が形成され、
前記吸気口には
、その開口端部に沿って筒状整流板が配設され、
前記送風機の回転軸は、前記筒状整流板の開口部
の中心に配置され、
前記筒状整流板は、前記回転軸のスラスト方向において、前記送風機筐体の内部へと延在する整流部を有すると共に、前記整流部は、少なくとも前記送風機筐体の前記開口端部と前記送風機の前端面との間の隙間の一部を塞ぐように配設され、
前記送風機は、前記筒状整流板が取り付けられた状態にて、前記開口部から前記送風機筐体に対して脱着可能であることを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記整流部は、前記吸気口の前記開口端部に沿って一環状に配設され、
前記スラスト方向において、
前記整流部の先端面が、前記送風機の
前記前端面から
前記送風機筐体側へと3mm離間した位置から前記送風機
側へと6mm重なる位置までの範囲内に
位置するように、
前記筒状整流板は、前記送風機筐体に配設されることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記筒状整流板は、前記送風機筐体の外側に固定される固定部と、を更に有し、
前記整流部と前記固定部とは連続して形成されると共に、前記筒状整流板の径方向における断面
がL字形状であり、
前記送風機筐体と前記送風機との間には、前記整流
部にて囲まれた段差部が形成されることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記固定部は、前記吸気口の前記開口端部に沿って一環状に配設されると共に、前記固定部には、前記送風機筐体の外側へと突起する流線形部が形成されることを特徴とする
請求項3に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関し、特に、ベルマウスレス構造とすることで、送風機の脱着作業が容易となりお手入れ性を向上させるレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンジフード100として、
図8及び
図9に示す構造が知られている。
図8は、従来のレンジフード100を説明する断面図である。
図9は、従来のレンジフード100の送風機筐体102を説明する正面図である。
【0003】
図8に示す如く、レンジフード100は、主に、送風機ボックス101と、送風機ボックス101の内部に固定される送風機筐体102と、送風機筐体102内に配設される送風機103と、送風機筐体102と連通するダクト108(
図9参照)と、を備える。そして、レンジフード100は、調理器(図示せず)の上方に設置され、送風機103を稼働させることで、調理時に調理器から立ち上がる油煙や水蒸気等を捕集し、ダクト108を介して屋外へと排出する。
【0004】
図9に示す如く、送風機筐体102は、略円筒形状の筐体であり、その中心部に吸気口104が形成される。吸気口104の開口形状は、略円形状である。送風機103が、吸気口104の中心と回転軸とが略一致するように、送風機筐体102の内部に配設される。そして、送風機筐体102には、吸気口104の開口端部に沿ってベルマウス105が配設される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、レンジフード100は、調理時に調理器から立ち上がる油煙や水蒸気等を捕集するため、長期間の使用により送風機103等には、多量の油等が付着する。そして、送風機103の油汚れ等を落とすためには、送風機筐体102から送風機103を取り出し、丸洗いする必要がある。
【0007】
このとき、
図8及び
図9に示す如く、送風機103の外径D3は、送風機筐体102に取り付けられたベルマウス105の内径D4よりも大きいため、先ずは、送風機筐体102からベルマウス105を取り外す必要がある。そして、ベルマウス105は、送風機筐体102に対して、1箇所の螺合部106と2箇所の係合突起107とを用いて固定される。
【0008】
この構造により、ユーザは、頭上にて送風機筐体102の内部へ吸気口104から手を入れ、螺合部106の取付ネジ106Aを取り外した後、係合突起107からベルマウス105を取り外す必要がある。その結果、ユーザは、ベルマウス105の取り外し作業が大変であり、また、作業領域が目視し難いことで危険でもあり、送風機103のお手入れ作業性が悪いという課題がある。
【0009】
更には、送風機103の丸洗い作業が終了し、送風機筐体102内に送風機103を装着した後、再び、ユーザは、頭上の目視し難い作業領域にてベルマウス105を送風機筐体102に取り付ける必要がある。つまり、送風機103のお手入れ作業時には、送風機筐体102へのベルマウス105の脱着作業が必要となり、ユーザの利便性を向上し難いという課題がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ベルマウスレス構造とすることで、送風機の脱着作業が容易となりお手入れ性を向上させるレンジフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のレンジフードは、送風機を支持する送風機筐体と、前記送風機筐体が配設される送風機ボックスと、前記送風機ボックスの下方に配設されるフード本体部と、前記フード本体部の下方に配設され、前記フード本体部へ吸い込まれる空気の流れを規制する板状整流板と、を備え、前記送風機筐体には、前記送風機を介して前記送風機筐体の内部へと前記空気を吸い込むための吸気口が形成され、前記吸気口には、その開口端部に沿って筒状整流板が配設され、前記送風機の回転軸は、前記筒状整流板の開口部の中心に配置され、前記筒状整流板は、前記回転軸のスラスト方向において、前記送風機筐体の内部へと延在する整流部を有すると共に、前記整流部は、少なくとも前記送風機筐体の前記開口端部と前記送風機の前端面との間の隙間の一部を塞ぐように配設され、前記送風機は、前記筒状整流板が取り付けられた状態にて、前記開口部から前記送風機筐体に対して脱着可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のレンジフードでは、前記整流部は、前記吸気口の前記開口端部に沿って一環状に配設され、前記スラスト方向において、前記整流部の先端面が、前記送風機の前記前端面から前記送風機筐体側へと3mm離間した位置から前記送風機側へと6mm重なる位置までの範囲内に位置するように、前記筒状整流板は、前記送風機筐体に配設されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のレンジフードでは、前記筒状整流板は、前記送風機筐体の外側に固定される固定部と、を更に有し、前記整流部と前記固定部とは連続して形成されると共に、前記筒状整流板の径方向における断面がL字形状であり、前記送風機筐体と前記送風機との間には、前記整流部にて囲まれた段差部が形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のレンジフードでは、前記固定部は、前記吸気口の前記開口端部に沿って一環状に配設されると共に、前記固定部には、前記送風機筐体の外側へと突起する流線形部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレンジフードでは、送風機筐体には送風機が配設されると共に、吸気口が形成される。吸気口には、公知のベルマウスが配設されることなく、筒状整流板が配設される。そして、送風機は、吸気口に筒状整流板が装着された状態にて、送風機筐体に対して着脱自在となる。この構造により、ユーザは、送風機を掃除する際に、筒状整流板の着脱作業が不要となり、送風機のお手入れ性が向上される。
【0018】
また、本発明のレンジフードでは、筒状整流板の整流部が、吸気口の開口端部に沿って一環状に形成されると共に、整流部が、送風機の前端面に対して、その前後方向に-3mmから6mmの範囲内にて配設される。この構造により、吸気口に流入する空気の整流効果が向上され、ベルマウスレス構造であるが、レンジフードとして所望の風量特性が実現される。
【0019】
また、本発明のレンジフードでは、筒状整流板の整流部が、送風機の前端面と略面一あるいは一部重畳して配設される。この構造により、整流部が、送風機筐体の吸気口への戻り空気を遮り易くなり、吸気口に流入する空気の整流効果が向上される。
【0020】
また、本発明のレンジフードでは、筒状整流板の整流部が、送風機の前端面の近傍まで配設される。この構造により、整流部が、送風機筐体の吸気口への戻り空気を遮り易くなり、吸気口に流入する空気の整流効果が向上され、ベルマウスレス構造であるが、レンジフードとして所望の風量特性が実現される。また、送風機を着脱する際のクリアランス幅が確保され、ユーザにとって送風機の着脱作業が容易となる。
【0021】
また、本発明のレンジフードでは、吸気口の開口端部に沿って送風機筐体の内部側へと窪んだ段差部が形成される。この構造により、送風機の稼働時には、段差部に渦流が発生し、上記渦流により吸気口に流入する空気の整流効果が向上され、ベルマウスレス構造であるが、レンジフードとして所望の風量特性が実現される。
【0022】
また、本発明のレンジフードでは、筒状整流板の固定部に流線形部が形成される。この構造により、吸気口に流入する空気が、流線形部により整流され、ベルマウスレス構造であるが、レンジフードとして所望の風量特性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の一実施形態であるレンジフードを説明する斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施形態であるレンジフードを説明する断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態であるレンジフードの送風機ユニットを説明する斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態であるレンジフードの送風機ユニットを説明する分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるレンジフードの筒状整流板を説明する斜視図である。
【
図4A】本発明の一実施形態であるレンジフードの筒状整流板の配置状態及び送風機筐体での空気の流れを説明する断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態であるレンジフードの筒状整流板の変形例を説明する断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態であるレンジフードの筒状整流板の配置状態及び送風機筐体での空気の流れを説明する断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態であるレンジフードの筒状整流板の配置状態及び送風機筐体での空気の流れを説明する断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態であるレンジフードの風量特性を説明するグラフである。
【
図6B】本発明の一実施形態であるレンジフードの風量特性を説明するグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態であるレンジフードの風量特性を説明するグラフである。
【
図8】従来のレンジフードを説明する断面図である。
【
図9】従来のレンジフードの送風機筐体を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るレンジフード10を
図1Aから
図7に基づき詳細に説明する。尚、以下の本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、上下方向はレンジフード10の高さ方向を示し、左右方向はレンジフード10の横幅方向を示し、前後方向はレンジフード10の奥行方向を示す。また、紙面左右方向は、送風機17の回転軸のラジアル方向と一致し、紙面前後方向は、送風機17の回転軸のスラスト方向と一致する。
【0025】
図1Aは、本実施形態のレンジフード10を前方(前面側)から見た状態を説明する斜視図である。
図1Bは、レンジフード10を説明する断面図であり、
図1Aに示すレンジフード10のA-A線方向の断面である。
【0026】
図1A及び
図1Bに示す如く、本実施形態のレンジフード10は、主に、薄型のフード本体部11と、フード本体部11の上面に配設される送風機ボックス12と、送風機ボックス12内に配設される送風機ユニット13と、送風機ボックス12と連通する排煙管路14と、フード本体部11の下方に配設される板状整流板15と、を備える。尚、送風機ボックス12の開口部12A近傍には、フィルタ12Bが送風機ボックス12に対して配設される。そして、フィルタ12Bは、送風機ボックス12の係止部(図示せず)に対して引っ掛ける構造により簡単に着脱される。
【0027】
レンジフード10は、加熱調理台(図示せず)の上方の壁(図示せず)に対して固定して配設される。レンジフード10は、送風機ユニット13の送風機17を稼働させることで、調理時に加熱調理台から立ち上がる油煙や水蒸気等を含む空気を捕集し、排煙管路14を介して屋外へと排出する。
【0028】
フード本体部11は、薄型の箱状体であり、その底面側には大きく開口した開口部11Aが形成される。そして、フード本体部11の下方には、板状整流板15が、開口部11Aの大部分を塞ぐように取り付けられる。フード本体部11と板状整流板15との間には、板状整流板15の外周端部に沿って環状の隙間16が形成される。
【0029】
フード本体部11は、送風機ユニット13を構成する送風機17が生成する空気流を利用して、加熱調理台から立ち上がる上記油煙等を含む空気を隙間16からレンジフード10内へと吸引する。このとき、隙間16は、フード本体部11の開口部11Aよりも狭い開口領域となることで、送風機17にて生成される空気流の勢いが強められ、上記油煙等を含む空気がレンジフード10内へと勢い良く吸引される。
【0030】
送風機ボックス12は、送風機ユニット13をその内部に収納する箱状体である。そして、送風機ボックス12は、フード本体部11と連通するように、フード本体部11の上面にネジ固定される。また、送風機ボックス12の天面板には、排煙管路14が配設される。排煙管路14は、接続口18を介して送風機ボックス12内に配設される送風機ユニット13と連通する。
【0031】
送風機ユニット13は、主に、送風機17と、送風機17の駆動源となる電動モータ19と、送風機17や電動モータ19を支持する送風機筐体20と、送風機筐体20の吸気口20A(
図2B参照)に配設される筒状整流板21(
図2B参照)と、を有する。そして、送風機17としては、遠心送風機、軸流送風機や斜流送風機等が用いられ、本実施形態では、例えば、シロッコファンが用いられる。
【0032】
送風機筐体20は、送風機ボックス12内部の天面板等に対してネジ固定される。そして、送風機筐体20は、送風機17の外周領域に上記油煙等を含む空気を流すための風路20Bを形成する。上記風路20Bは、送風機ボックス12の天面板の接続口18を介して排煙管路14と連通する。
【0033】
また、電動モータ19は、送風機ユニット13の背面板に対して固定される。そして、送風機17は、電動モータ19を介して回転することで、上記油煙等を含む空気をレンジフード10内へと吸い込むと共に、上記油煙等を含む空気を排煙管路14等を介して外部へと吹き出す。
【0034】
具体的には、矢印25にて示すように、上記油煙等を含む空気は、フード本体部11と板状整流板15との間の隙間16からレンジフード10内へと流入する。次に、上記油煙等を含む空気は、送風機ボックス12の開口部12Aを介して送風機ボックス12内へと流入する。次に、上記油煙等を含む空気は、送風機筐体20の前面に形成される吸気口20A(
図2B参照)を介して送風機17内へと流入する。その後、矢印22にて示すように、上記油煙等を含む空気は、送風機17により送風機筐体20の風路20Bへと吹き出され、排煙管路14へと流入し、屋外へと排出される。
【0035】
図2Aは、本実施形態のレンジフード10の送風機ユニット13を前方(前面側)から見た状態を説明する斜視図である。
図2Bは、本実施形態のレンジフード10の送風機ユニット13を説明する分解斜視図である。
【0036】
図2Aに示す如く、送風機ユニット13の送風機筐体20は、略円柱形状の外形であり、その前面板20Cの中心領域には、吸気口20Aが形成される。吸気口20Aは、送風機ボックス12内の空気を送風機筐体20内へと吸い込むための開口領域であり、略円形状に形成される。そして、筒状整流板21が、吸気口20Aの開口端部に沿って配設されると共に、筒状整流板21は、送風機筐体20に対してネジ固定される。また、送風機筐体20の送風機17の外周領域には、上記油煙等を含む空気を流すための風路20Bが形成される。
【0037】
尚、送風機筐体20に筒状整流板21が配設された場合には、上記吸気口20Aは、筒状整流板21の内側の開口領域となる。また、筒状整流板21は、送風機筐体20に対してネジ固定される場合に限定するものでない。筒状整流板21は、その他、送風機筐体20に対して爪構造にて嵌め込まれる場合、スポット溶接される場合、ブラインドリベットにより固定される場合等、種々の設計変更が可能である。
【0038】
図2Bに示す如く、送風機ユニット13の背面板には、電動モータ19(
図1B参照)が固定され、電動モータ19の回転軸19Aは、吸気口20Aの略中心位置に配設される。そして、送風機17は、略円筒形状であり、電動モータ19の回転軸19Aに回転自在に軸支される。具体的には、送風機17及びスピンナー23が、この順序にて回転軸19Aに対して取付けられる。この構造により、送風機17は、回転軸19Aに対して軸ぶれすることなく回転し、周囲の部材と干渉することが防止される。
【0039】
図示したように、送風機17は、前面視略円形状であり、送風機17の外径D1は、吸気口20Aの内径D2よりも若干小さくなる。本実施形態では、例えば、送風機17の外径D1は、吸気口20Aの内径D2よりも4mm程度小さくなる。つまり、送風機17は、吸気口20Aに対して全周に渡り約2mmのクリアランスを有した状態となる。尚、筒状整流板21の板厚は、例えば、0.8mmであり、送風機筐体20に筒状整流板21が配設された場合でも、上記クリアランスとして、約1.2mm確保される。
【0040】
この構造により、送風機17を掃除する際には、筒状整流板21が送風機筐体20にネジ固定された状態にて、ユーザは、送風機筐体20から送風機17を取り外すことが出来る。つまり、レンジフード10は、ベルマウスレス構造となることで、ユーザは、頭上の目視し難い領域において、送風機筐体20へのベルマウスの脱着作業が不要となる。
【0041】
具体的には、ユーザは、最初に、板状整流板15の片側をフード本体部11から外し、板状整流板15をフード本体部11に吊り下げた状態とする。次に、ユーザは、頭上に両手を伸ばし、フィルタ12Bを送風機ボックス12から取り外した後、開口部11A,12Aから両手を送風機ボックス12内へと入れて、スピンナー23を回転軸19Aから取り外す。
【0042】
次に、ユーザは、頭上に両手を伸ばし、開口部11A,12Aから両手を送風機ボックス12内へと入れて、送風機17を内側から両手にて支持しながら、送風機17をレンジフード10から取り外す。このとき、ユーザは、回転軸19Aにガイドされながら送風機17を取り外すことで、送風機17が周囲の部材と接触することなく、簡単に作業を行うことが出来る。尚、送風機17の掃除後には、上記作業の逆手順により送風機17をレンジフード10へと装着することが出来る。
【0043】
つまり、ユーザは、頭上の目視し難い領域においてベルマウスのネジ外し、送風機筐体20からベルマウスを外す作業を行う必要がなく、安全に、且つ簡易にレンジフード10から送風機17の脱着作業を行うことが可能となる。その結果、本実施形態のレンジフード10では、送風機17のお手入れ性が向上し、ユーザの利便性が向上する。
【0044】
尚、上述したように、送風機筐体20から送風機17を着脱する際には、送風機17は筒状整流板21に対して全周に渡り略1.2mmのクリアランスを有することで、送風機17が送風機筐体20に接触することが防止される。
【0045】
図3は、本実施形態のレンジフード10の送風機ユニット13の筒状整流板21を説明する斜視図である。
図4Aは、本実施形態の筒状整流板21の取付け状態及び送風機筐体20での空気の流れを説明する断面図である。
図4Bは、本実施形態の筒状整流板21の変形例を説明する断面図である。
図5A及び
図5Bは、本実施形態の筒状整流板21の取付け状態及び送風機筐体20での空気の流れを説明する断面図である。尚、
図4及び
図5では、説明の都合上、その寸法は模式的に図示している。
【0046】
図3に示す如く、筒状整流板21は、主に、一環状に形成される整流部31と、整流部31と一体に形成される固定部32と、を有する。詳細は後述するが、筒状整流板21は、吸気口20A(
図2B参照)から送風機筐体20内へと流入する風量を向上させる部材である。図示したように、整流部31と固定部32とは略直角に折り曲げ加工して形成され、筒状整流板21の半径方向における断面は、略L字形状となる。そして、筒状整流板21の開口部は、吸気口20Aと略同一形状である円形状である。尚、送風機筐体20に筒状整流板21が配設された場合には、吸気口20Aは、筒状整流板21の内側に位置する。
【0047】
また、
図2Aに示すように、筒状整流板21は、吸気口20Aの開口端部に位置合わせして配設される。そして、筒状整流板21の固定部32は、送風機筐体20の前面板20Cにネジ固定される。一方、整流部31は、送風機筐体20の内部側へと延在し、送風機17と送風機筐体20との間の隙間33(
図4A参照)の一部を塞ぐように配設される。
【0048】
図4Aに示す如く、筒状整流板21の整流部31は、送風機17の前端面17Aに対して略ラジアル方向(紙面前後方向)へと延在する。そして、整流部31の先端面31Aは、送風機17の前端面17Aと略面一となる様に配置される。尚、
図5A及び
図5Bを用いて後述するが、整流部31の先端面31Aは、送風機17の前端面17Aに対して前方側へと約3mm手前側の位置から上記前端面17Aに対して約6mm後方側の位置までの範囲内にて、任意の設計変更が可能である。
【0049】
また、図示したように、送風機17は、送風機筐体20の前面板20Cから距離L1として14.5mm程度、その内部側(紙面後方側)に入った位置に配置される。そして、送風機17の枠体の幅W2は約15mmとなる。上述したように、送風機筐体20から送風機17を脱着するためのクリアランスとして、送風機筐体20と送風機17の外周面17Bとの離間幅W1として約2mm確保される。この構造により、点線41にて示すように、送風機17と送風機筐体20との間には、吸気口20Aの開口端部に沿って、一環状の段差部が形成される。尚、上述したように、筒状整流板21の板厚は、例えば、0.8mmであり、送風機筐体20に筒状整流板21が配設されることで、上記クリアランスは、約1.2mmとなる。
【0050】
一方、筒状整流板21の整流部31は、送風機17の前端面17Aと略直交方向へと延在する。この構造により、吸気口20Aの開口端部に沿って配置される整流部31のみの構造では、矢印44にて示すように、吸気口20Aから送風機17内へと流入する空気に対して、公知のベルマウス構造(
図8参照)と同等の整流効果は得られ難い。
【0051】
ここで、送風機筐体20の内部では、矢印42にて示すように、送風機17から吹き出された空気の大部分は、送風機筐体20の風路20B(
図2A参照)へと流れ込み、排煙管路14へと流入する。一方、矢印43にて示すように、送風機17から吹き出された空気の一部は、送風機筐体20の内部にて吸気口20A側へと流れる。
【0052】
図示したように、筒状整流板21の整流部31が、吸気口20Aの開口端部近傍に配置されることで、送風機17と送風機筐体20との間の隙間33の大部分が塞がれる。言い換えると、送風機17の前方側の送風機筐体20の内部と吸気口20Aとの間の大部分が、整流部31にて塞がれる。その結果、点線41にて示す段差部には、矢印43にて示すように、送風機17から吹き出された空気が逆流し難くなる。
【0053】
この構造により、矢印44にて示す送風機17の内部へと吸い込まれる空気の流れにより、点線41にて示す段差部での空気の流れが支配される。その結果、上記段差部には、矢印45にて示すように、送風機17の内部側へと回転する渦流が発生する。そして、上記渦流は、矢印44にて示す送風機17の内部へと吸い込まれる空気の流れをサポートし、公知のベルマウス構造のように、吸気口20Aでの整流効果が得られる。つまり、上記段差部は、吸気口20Aの開口端部に沿って一環状に形成されることで、レンジフード10としてはベルマウスレス構造であるが、所望の風量特性が実現される。
【0054】
尚、
図4Bに示す如く、筒状整流板21の固定部32の前面側には、流線形部34が形成される場合でも良い。流線形部34は、吸気口20Aの開口端部に沿って一環状に形成される。そして、矢印44にて示すように、送風機17の内部へと吸い込まれる空気は、上記段差部の渦流と合わせて、流線形部34にて整流されることで、レンジフード10としてはベルマウスレス構造であるが、所望の風量特性が実現される。また、
図5A及び
図5Bに示す筒状整流板21に対しても流線形部34が形成される場合でも良い。
【0055】
図5Aに示す如く、筒状整流板21の整流部31は、送風機17の前端面17Aよりも送風機筐体20の内部まで延在し、先端側の一部が、送風機17と重畳して配置される場合でも良い。上述したように、整流部31の先端面31Aは、送風機17の前端面17Aから送風機筐体20の内部側(紙面後方側)に入り込む構造により、点線41にて示す段差部に発生する矢印45の渦流により、吸気口20Aでの整流効果が得られる。そして、レンジフード10は、ベルマウスレス構造であるが、所望の風量特性が実現される。
【0056】
図5Bに示す如く、筒状整流板21の整流部31は、送風機17の前端面17Aよりも送風機筐体20の手前側に位置し、点線41に示す段差部にて、整流部31の先端側の隙間33が若干広がる場合でも良い。上述したように、整流部31の先端面31Aは、送風機17の前端面17Aから送風機筐体20の手前側に約3mmまで離間して位置する場合でも、上記段差部に発生する矢印45の渦流により、吸気口20Aでの整流効果が得られる。そして、レンジフード10は、ベルマウスレス構造であるが、所望の風量特性が実現される。
【0057】
図6Aは、本実施形態のレンジフード10の風量特性を説明するグラフであり、筒状整流板21と送風機17とのスラスト方向(紙面前後方向)での配置位置における風量特性を示す。
図6Bは、本実施形態のレンジフード10の風量特性を説明するグラフであり、送風機17と筒状整流板21とのラジアル方向(紙面左右方向)での離間距離L2における風量特性を示す。
図7は、本実施形態のレンジフード10の風量特性を説明するグラフである。
【0058】
図6Aでは、送風機17が静圧100Paにて稼働時における風量特性を示し、縦軸は、
図1に示すレンジフード10の風量を示し、横軸は、上記離間距離L2を示す。尚、実線は、レンジフード10に公知のベルマウスが装着された場合の風量値を示す。点線は、レンジフード10に公知のベルマウス及び本実施形態の筒状整流板21が装着されない場合の風量値を示す。一点鎖線は、レンジフード10に本実施形態の筒状整流板21のみが装着され、上記離間距離L3が0mmとなる場合を示す。二点鎖線は、レンジフード10に本実施形態の筒状整流板21のみが装着され、上記離間距離L3が-3mmとなる場合を示す。三点鎖線は、レンジフード10に本実施形態の筒状整流板21のみが装着され、上記離間距離L3が6mmとなる場合を示す。
【0059】
先ず、実線にて示す如く、公知のベルマウスが装着された場合には、レンジフード10は、約435m3/hの風量が得られる。一方、点線にて示す如く、公知のベルマウス及び本実施形態の筒状整流板21が装着されない構造の場合には、レンジフード10は、約415m3/hの風量が得られる。そして、この構造の場合のレンジフード10では、その風量の低下量が実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造の風量の2%より大きくなり、レンジフード10として所望の風量特性が得られなかった。
【0060】
次に、一点鎖線では、
図4を用いて上述したように、整流部31の先端面31Aと送風機17の前端面17Aとが略面一となる場合の風量特性を示す。そして、この構造の場合には、少なくとも上記離間距離L2が3.0mmまでは、レンジフード10の風量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフード10と同等程度の風量が確保され、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。
【0061】
次に、三点鎖線では、
図5Aを用いて上述したように、整流部31の先端面31Aが、送風機17の前端面17Aから6.0mm後方まで延在する場合の風量特性を示す。そして、この構造の場合には、少なくとも上記離間距離L2が3.0mmまでは、レンジフード10の風量の低下量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフード10の風量から2%以下に抑えることができ、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。
【0062】
次に、二点鎖線では、
図5Bを用いて上述したように、整流部31の先端面31Aが、送風機17の前端面17Aから-3.0mm前方まで離間する場合の風量特性を示す。そして、この構造の場合には、少なくとも上記離間距離L2が1.5mmまでは、レンジフード10の風量の低下量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフード10の風量から2%以下に抑えることができ、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。
【0063】
図6Bでは、送風機17が静圧100Paにて稼働時における風量特性を示し、縦軸は、
図1に示すレンジフード10の風量を示し、横軸は、上記離間距離L3を示す。尚、実線は、レンジフード10に公知のベルマウスが装着された場合の風量値を示す。点線は、レンジフード10に公知のベルマウス及び本実施形態の筒状整流板21が装着されない場合の風量値を示す。一点鎖線は、レンジフード10に筒状整流板21を配設し、上記離間距離L3を可変させた場合を示す。
【0064】
先ず、実線にて示す如く、公知のベルマウスが装着された場合には、レンジフード10は、約435m3/hの風量が得られる。一方、点線にて示す如く、公知のベルマウス及び本実施形態の筒状整流板21が装着されない構造の場合には、レンジフード10は、約415m3/hの風量が得られる。そして、この構造の場合のレンジフード10では、その風量の低下量が実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造の風量の2%より大きくなり、レンジフード10として所望の風量特性が得られなかった。
【0065】
次に、一点鎖線にて示す如く、上記離間距離L3が0mmから3mmの場合には、レンジフード10の風量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフード10と同等程度の風量が確保され、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。
【0066】
また、上記離間距離L3が-3mmから0mmの場合や上記離間距離L3が3mmから6mmの場合には、レンジフード10の風量の低下量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフードの風量から2%以下に抑えることができ、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。
【0067】
一方、上記離間距離L3が-3mmより短くなる場合や上記離間距離L3が6mmより長くなる場合には、レンジフード10の風量の低下量は、実線にて示す公知のベルマウスが装着された構造のレンジフード10の風量の2%より大きくなり、レンジフード10として所望の風量特性が得られなかった。
【0068】
尚、
図6Bに示す風量特性を計測する試験では、送風機17の外周面17Bと送風機筐体20の吸気口20Aとの間の上記離間幅W1は、1.5mmに設定している。
【0069】
図7では、送風機17が静圧100Paにて稼働時における風量特性を示し、縦軸は、上記離間距離L3を示し、横軸は、上記離間距離L2を示す。尚、
図7では、
図6A及び
図6Bを用いて説明した風量特性の試験を、上記離間距離L2,L3を様々な距離に変更して実施し、その結果から得られた線形近似線ある。
【0070】
図7では、斜線のハッチングにて示す領域が、本実施形態の筒状整流板21のみが装着されたレンジフード10の風量は、従来のベルマウスが装着された構造のレンジフード10と同等程度の風量が確保された場合、あるいは、本実施形態の筒状整流板21のみが装着されたレンジフード10の風量の低下量は、従来のベルマウスが装着された構造のレンジフード10の風量から2%以下に抑えることができた場合であり、レンジフード10として所望の風量特性が得られた場合である。
【0071】
図示したように、整流部31の先端面31Aと送風機17の前端面17Aとの離間距離L3が0mmから6mmの範囲内の場合には、上記離間距離L2が3mmまでは、レンジフード10として所望の風量特性が得られた。つまり、離間距離L3が0mmから6mmの範囲内の場合には、上記離間距離L2が3mmとなる最大離間幅にて略同一幅となった。
【0072】
これは、
図4Aまたは
図5Aに示すように、整流部31が送風機17と重畳し、送風機17と送風機筐体20との間の隙間33が狭まる。そして、矢印43にて示す送風機17から吹き出される空気が、整流部31に阻まれ、点線41の段差部に流れ込み難くなることで、上記段差部に整流効果を高める渦流が発生するからと推測される。
【0073】
その一方、離間距離L3が6mmより長くなることで、矢印42にて示す送風機17から風路20Bへと吹き出される空気が整流部31に阻害されることで、所望の風量が得られ難くなると推測される。また、上記離間距離L2が3mmより長くなることで隙間33が広がり、送風機17から吹き出された空気の一部が、隙間33から点線41の段差部に流れ込み、上記渦流が乱れることで、所望の風量が得られ難くなると推測される。
【0074】
また、図示したように、整流部31の先端面31Aと送風機17の前端面17Aとの離間距離L3が-3mmから0mmの範囲内の場合には、以下の特徴を有する。
【0075】
ここで、離間距離L3が-3mmより短くなる場合、言い換えると、整流部31が、
図5Bに示す構造よりも短くなる場合には、矢印43にて示すように、送風機17から吹き出され、送風機筐体20の内部にて吸気口20A側へと流れる空気は、上記隙間33から点線41の段差部に流れ込み、上記渦流が乱れることで、所望の風量が得られ難くなると推測される。
【0076】
しかしながら、本実施形態のように、
図5に示す構造よりも上記離間距離L3が長くなる場合には、上記隙間33も狭まり、上記渦流の乱れが小さくなり、整流効果が得られることで、レンジフード10として所望の風量特性が得られると推測される。そして、上記隙間33の幅を狭め、上記渦流の乱れを小さくするためには、上記離間距離L3が短くなるにつれて、上記離間距離L2を狭める必要があり、上記離間距離L2の最大離間幅は、上記離間距離L3に対して反比例の関係が得られた。
【0077】
尚、本実施形態では、筒状整流板21が送風機筐体20と別体として形成され、送風機筐体20の吸気口20Aの開口端部に沿って後付けされる構造について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、筒状整流板21が、送風機筐体20と一体に形成され、整流部31が吸気口20Aの開口端部に沿って一環状に形成される場合でも良い。この場合には、整流部31が、送風機17の前面に対して上述した整流部31と同じ位置条件を満たすことで、同様な効果が得られる。
【0078】
また、レンジフード10としては、送風機17を縦方向に配置する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、送風機17を横方向に配置するレンジフード10の構造においても、筒状整流板21を配設することで、所望の風量特性を満たす上述した本実施形態のベルマウスレス構造が実現される。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 レンジフード
11 フード本体部
11A 開口部
12 送風機ボックス
12A 開口部
12B フィルタ
13 送風機ユニット
14 排煙管路
15 板状整流板
17 送風機
17A 前端面
17B 外周面
19 電動モータ
19A 回転軸
20 送風機筐体
20A 吸気口
20B 風路
20C 前面板
21 筒状整流板
31 整流部
31A 先端面
32 固定部
34 流線形部