(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトンおよびその水和物、誘導体および類似体を含む水性懸濁液組成物、製剤および水分散性乾燥組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5685 20060101AFI20241024BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20241024BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241024BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241024BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241024BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241024BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20241024BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20241024BHJP
A61P 33/10 20060101ALI20241024BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20241024BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/5685
A61K9/19
A61K9/10
A61P1/16
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P17/02
A61P11/00
A61P3/10
A61P3/00
A61P11/06
A61P35/00
A61P7/00
A61P1/02
A61P29/00
A61P37/06
A61P31/10
A61P33/00
A61P33/10
A61P33/02
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/06
A61P37/04
A61K47/26
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/18
(21)【出願番号】P 2021546004
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 US2019069171
(87)【国際公開番号】W WO2020163026
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521348111
【氏名又は名称】エスディー ケム, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SD CHEM, INC.
【住所又は居所原語表記】5940 Pacific Mesa Ct., Suite 202, San Diego, CA 92121(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】ジーイー, ユ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-540119(JP,A)
【文献】杉本功、高橋嘉輝,溶媒和物、非晶質固体と医薬品製剤,紛体工学会誌,1985年,22(2),85-97
【文献】Ulrich J. GRIESSER,“The Importance of Solvates”,Polymorphism,2006年02月06日,p.211-233,DOI: 10.1002/3527607889.ch8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量の少なくとも30%w/wの水と、式Iの構造を有する化合物を含む組成物であり、
【化2】
式I
式中、nは0~4であり、
溶媒和物は、H
2O、C
1-4-OH、C
1-4-COOH、C
1-4-COOC
1-4テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、(CH
3)
2O、(C
2H
5)
2O、HC(O)N(CH
3)
2、(CH
3)
2SO、またはそれらの組み合わせであり;
Xは、F、Cl、BrまたはIであり;
Rは、-H、-Si-(C
1-6アルキル)3、エステル、チオエステル、ホスホエステル、ホスホチオエステル、ホスホノエステル、ホスフィニエステル、亜硫酸エステル、硫酸エステル、アミド、アミノ酸、ペプチド、エーテル、チオエーテル、アシル基、チオアシル基、炭酸塩、カルバメート、チオカーボネート、任意に置換されたアルキル基、任意に置換されたアルケニル基、任意に置換されたアルキニル基、任意に置換されたアリール部分、任意に置換されたヘテロアリール部分、任意に置換された単糖、任意に置換されたオリゴ糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリマーであり
;、
前記化合物は、水中において水性懸濁液として安定化された粒子の形態である、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記化合物は凍結乾燥することにより
調製される、ことを特徴とする請求項1に記載の水分散性乾燥組成物。
【請求項3】
前記粒子のサイズは0.01μm~15μmにある、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、界面活性剤、懸濁剤、および医薬賦形剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール(PEG)-8-オクチル酸/デカン酸およびポリエチレングリコール(PEG)ヒドロキシステアリン酸エステル、卵黄レシチン、大豆レシチン、オレイン酸ナトリウム、胆汁塩、またはそれらの混合物であってもよい、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記懸濁剤は、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、アルギン酸塩、アカシア、トラガカント、キサンタンゴム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、またはそれらの混合物である、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記医薬賦形剤は、注射用水、pH調節剤、浸透圧調節剤、凍結乾燥保護添加剤、封鎖剤、抗酸化剤、防腐剤、医薬品成分またはそれらの混合物である、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記医薬賦形剤は防腐剤を含み、かつ、前記防腐剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ビタミンC、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、L-システイン、アミノ酸、またはそれらの組合せである、ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、
0.3~25%(w/v)の前記化合物、
0.01~5%(w/v)の前記界面活性剤、
0.01~3%(w/v)の前記懸濁剤、
および薬剤賦形剤としての浸透圧調節剤、
を含む注射可能な懸濁液である、ことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記浸透圧調節剤は塩化ナトリウムまたはデキストロースである、ことを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、前記化合物、界面活性剤、懸濁剤、および少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む凍結乾燥製剤であり、前記化合物の量は3mg~500mgであり、前記化合物と前記界面活性剤との比は1:50~500:1であり、前記化合物と前記懸濁剤との比は0.1:10~500:1である、ことを特徴とする請求項2に記載の水分散性乾燥組成物。
【請求項12】
前記溶媒和物は水であり、Rは水素であり、Xは臭素であり、nは0.5であり、前記化合物は、以下の構造を有する16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトン半水和物である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【化3】
【請求項13】
治療を必要とする動物(ヒトを除く)に請求項1に記載の組成物を非経口、経口またはエアロゾル投与経路で投与するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用方法。
【請求項14】
治療を必要とする動物(ヒトを除く)に治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与するステップを含み、ここで、前記治療は、オートファジーおよび自然免疫を刺激し、非生産的炎症を調節し、免疫応答をTh1応答(IFN-γ、細胞性免疫経路)またはTh2応答、病理学的状態(ウイルスまたは寄生虫感染など)、またはそれらの組合せに偏らせるために対象に使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用方法。
【請求項15】
治療を必要とする動物(ヒトを除く)に治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与するステップを含み、ここで、前記治療は、感染症または調節不全の炎症に対する治療である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用方法。
【請求項16】
前記治療は、外傷、感染症(ウイルス、細菌、原虫、真菌および蠕虫)、腫瘍形成、代謝、自己免疫または神経炎症性および炎症性血管疾患に対する治療である、ことを特徴とする請求項15に記載の組成物の使用方法。
【請求項17】
前記治療は、結核菌および非結核性抗酸菌、MAP感染、クラミジア感染症、細菌性肺炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、多発性骨髄腫、喘息、代謝症候群、2型糖尿病、1型糖尿病、閉塞性肺疾患、外傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、心臓サルコイドーシス、関節リウマチ、または非アルコール性脂肪性肝疾患に対する治療である、ことを特徴とする請求項15に記載の組成物の使用方法。
【請求項18】
請求項2に記載の水分散性乾燥組成物と希釈剤とを含む再構成組成物であって、前記希釈剤が水を含み、前記再構成された組成物中の前記水の含有量が、前記再構成された組成物の少なくとも30%w/wであることを特徴とする再構成組成物。
【請求項19】
水性懸濁液中で安定化された粒子の形態の式Iの化合物と、組成物の少なくとも30%w/wの水とを含む組成物を調製し、
組成物を凍結乾燥して、請求項2に記載の水分散性乾燥組成物を得る、
ことを特徴とする水分散性乾燥組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項2に記載の水分散性乾燥組成物を使用する方法であって、
前記水分散性乾燥組成物を希釈剤と混合して再構成された組成物を形成し、
治療上有効な量の再構成された組成物を治療する必要がある動物(ヒトを除く)に投与することを特徴とする使用方法。
【請求項21】
前記粒子の90%が15μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年2月5日に出願された米国特許出願第16/267,815号の優先権を主張する。前述の米国出願の主題および内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医薬物質16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトンおよびその水和物、溶媒和物、誘導体および類似体の水性懸濁液組成物および製剤に関する。さらに、本発明はまた、該薬学的物質を含む組成物および製剤の調製プロセス、ならびに免疫調節剤などの薬学的および非薬学的適用におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトン(BEA)は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の合成類似体であり、その構造は次のとおりである。
【化1】
BEA
【0004】
α-ブロモケトンとして、BEAは求核攻撃を受けやすいことが知られ、16α-ブロモは求核剤によって置換される。Numazawa,M.ら、「16α-17-ケトステロイドの立体選択的加水分解と、16α-ブロモ-17-ケトンおよび2a-ブロモ-3-ケトンの加水分解に対するそれらの長距離置換効果(Stereoselective Hydrolysis of 16alpha-17-Keto Steroids and Long-range Substitution Effects on the Hydrolysis of 16alpha-Bromo-17-Ketones and 2a-Bromo-3-Ketones)」、《ステロイド(Steroid)》,45(5),403-10(1985)を参照する。したがって、BEAは、一般に、化学的に不安定である。
【0005】
BEAは水の存在下で16位でエピマー化し、キラル純度を失うことも知られる。Numazawa,M.ら、「対応する16-ブロモ-17-ケトンの制御されたアルカリ加水分解による16α-ヒドロキシ-17-オキソステロイドの定位合成とその反応機構(Stereospecific Synthesis of 16alpha-Hydroxy-17-oxo Steroids by Controlled Alkaline Hydrolysis of Corresponding 16-Bromo-17-Ketones and its Reaction Mechanism)」、《有機化学ジャーナル(J.Org.Chem)》,47(21),4024-4029(1982)を参照する。
【0006】
BEAは水に極めて溶けにくいため、注射用製剤は一般に、非水溶液として調製される。BEAの化学的不安定性と水の存在下でのエピマー化のため、非水溶液は、それをより安定にするためには、非常に乾燥していなければならず、含水量は一般に0.1%以下である必要がある。しかしながら、このような低い含水量であっても、溶液製剤は依然として安定ではない。製剤の滅菌、分注、包装は低温で行う必要がある。これらの製剤も低温で保管する必要がある。Ahlem,C.らの米国特許出願公開US2003060425A1を参照する。
【0007】
BEAは安定性が低いため、医薬品としての使用には適さない。該化合物は注射の直前に調製しなければならない。BEAを有効な医薬品にするためには、BEAを安定化させる新しい製剤が必要である。
【0008】
非水性BEAの注射用製剤は、BEAをポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコールなどの有機溶媒に溶解して調製される。該非水性溶液製剤は、動物と人間の両方で注射部位に対する重度の刺激を引き起こし、患者のコンプライアンスに深刻な影響を与えることが見出される。注射部位に対する刺激の原因は、BEAの水溶性が低いことである。注射後にBEAの有機溶液が水と接触すると、BEAは直ちに沈殿し、組織に大きな固形物を形成し、そして刺激性を引き起こす。
【0009】
有機溶媒は、注射用のBEA溶液を調製するために使用される。BEA溶液を投与すると、大量の有機溶剤が体内に注入される。有機溶剤に対する耐性が低いことも、注射部位に対する刺激の原因の1つである。したがって、有機溶剤による刺激や毒性をなくすために、水性製剤が必要である。
【0010】
DHEAおよび他のステロイドは、免疫応答の調節など、さまざまな用途があることが知られる。例えば、米国特許番号5869090、5863910、5856340、5824668、5804576、5753237、5714481、5709878、5407684、5206008、5077284、4978532、4898694、4542129、3711606および3710795を参照する。BEAは、筋肉内または皮下注射および経口粘膜投与によるヒト免疫不全ウイルス (HIV)、結核病(TB)、およびマラリアの治療のための免疫調節ステロイドとして使用される。
【0011】
Stickney,D.ら、「エイズ患者における結核病およびその他の日和見感染の発症に対する免疫調節剤HE2000の安全性と活性(Safety and Activity of the Immune Modulator HE2000 on the Incidence of Tuberculosis and Other Opportunistic Infections in AIDS Patients)」、《抗菌剤および化学療法(Antimicrob. Agents Chemother)》,51(7),2639-41(2007)において、BEAと賦形剤(ポリエチレングリコール300、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコールなど)を含む製剤の筋肉内注射により、結核病の発症率とエイズ患者の感染率が低下することが開示される。しかしながら、結果は注射部位に対する重度の刺激を示す。
【0012】
Reading,c.ら、「16α-ブロモエピアンドロステロン(HE2000) で治療された個体のパラメータとヒト免疫不全ウイルス-1ウイルス応答の改善(Improvement in Parameters and Human Immunodeficiency Virus-1 Viral Response in Individuals Treated with 16alpha-bromoepiandrosterone(HE2000))」、《臨床微生物学と感染(Clin.Microbiol.Infect.)》,12(11),1082-8(2006)において、皮下注射によるHIV患者に対する試験のための別のBEA製剤の使用が開示される。該製剤は、PEG200、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコール中のBEAの溶液である。臨床試験では、HIV 活性、免疫効果、耐性、安全性への影響が研究され、結果から、BEAグループにおけるIL-1β、TNF-α、IL-6およびCox-2転写物が有意に減少した一方で、CD8+が有意に増加したことを示す。安全性試験の結果は、BEAが注射部位に対する重度の刺激を引き起こし、耐性が低いことを再び示す。
【0013】
Frincke J.M.ら、「HE2000投与による合併症のないマラリア患者の寄生虫レベルの低下(Reduction of Parasite Levels in Patients with Uncomplicated Malaria by Treatment with HE2000)」、《アメリカ熱帯医学と衛生ジャーナル(Am.J.Trop.Med.Hyg.)》,76(2),232-6(2007)において、皮下注射および粘膜薬物送達システムによるマラリア患者の試験における2つのBEA製剤の使用が開示される。皮下注射用製剤は、PEG200、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、およびベンジルアルコール中のBEAの溶液である。粘膜薬物送達システム用の製剤は、BEAと賦形剤(乳糖、クロスポビドン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素など)の混合物である。臨床試験において、BEA製剤の安全性、耐性、抗マラリア活性が調査される。結果は、2つの異なる製剤が同様の抗マラリア反応を示すことを証明する。安全性試験では、最も頻度の高い有害事象は注射部位の頻繁な激しい痛みであることが示される。
【0014】
Hernandez-Pando,R.ら、「16a-ブロモエピアンドロステロンによる進行性肺結核モデルにおける1型Tヘルパー細胞活性の回復、および化学療法誘発性細菌のクリアランスの促進(16a-Bromoepiandrosterone Restores T Helper Cell Type 1 Activity and Accelerates Chemotherapy-Induced Bacterial Clearance in a Model of Progressive Pulmonary Tuberculosis)」、《感染症ジャーナル(Journal of Infectious Diseases)》,191,299-306(2005)において、BEAは、結核菌に感染した肺結核BALB/cマウスのTh1活性を回復させ、細菌の増殖を阻害し、TNF-α、IFN-、およびiNOSの発現を増加させることが開示される。従来の化学療法(リファンピシン、イソニアジド、およびピラジナミド)の補助薬として使用すると、BEAは細菌の除去効果を高めることが開示される。
【0015】
Nicoletti,F.ら、「16α-ブロモエピアンドロステロン(HE2000) による非生産的炎症に対する制限、および肺の免疫力に対する刺激(16alpha-Bromoepiandrosterone (HE2000) limits non-productive inflammation and stimulates immunity in lungs)」、《臨床および実験免疫学(Clin Exp Immunol.)》,158(3),308-16(2009)において、BEAがリポ多糖(LPS)によって刺激されたRAW264.7細胞で一酸化窒素の発生を低下させることが開示される。BEAによる治療はまた、マウスのカラギーナン誘発性胸膜炎およびLPS誘発性肺損傷に関連する非生産的炎症を軽減させる。ハプテン-キャリアレポート抗原膝窩リンパ節試験において、BEAは、リンパ球、抗原提示細胞、ハプテン特異的免疫グロブリンM(IgM)抗体形成細胞の絶対数を増加させ、そしてインターフェロン-γ(IFN-γ)/インターロイキン-4(IL-4)のバランスは、インターフェロン-γ(IFN-γ)を生成する傾向がある。嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CFTR(-/-))マウスモデルの急性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症では、BEA治療により肺の細菌負荷が引き続き減少する。すべてのBEA効果は投与量に依存する。BEAは、動物と患者における過剰な炎症と日和見肺感染症に関連する死亡率を低下させる。
【0016】
Carrero,J.ら、「アメーバ症および嚢虫症に対する16α-ブロモエピアンドロステロン(EpiBr)の殺虫効果(Parasiticidal effect of 16alpha-bromoepiandrosterone (EpiBr) in amoebiasis and cysticercosis)」、《微生物と感染症(Microbes and Infection)》,12(8-9),677-82(2010)において、条虫であるカブトウオ条虫(Taenia crassiceps)および原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の体内と体外におけるBEAの効果が開示され、マウスにおいて、嚢虫症感染前にBEAを投与すると、対照と比較して寄生虫の量が50%減少することを見出す。また、BEAの投与により、ハムスターのアメーバ性肝膿瘍の増殖が20%抑制された。BEAを用いてカブトウオ条虫と赤痢アメーバの培養物を体外で処理すると、投与量と時間に応じて繁殖力、運動性、生存率を低下させる。これらの結果は、嚢虫症とアメーバを含む寄生虫症に対する薬物としてのホルモン類似体の可能性を評価するために使用できる。
【0017】
細胞は、進化的に保存された細胞内プロセスであるオートファジーにより、不要な分子、細胞小器官、および微生物を除去する。強力なオートファジーは、中心抗原処理細胞として、および微生物を殺す最終段階のエフェクター細胞として、先天性食細胞(マクロファージおよび樹状細胞)の機能にとって特に重要である。マクロファージは、オートファジーのプロセスを通じて、結核菌およびその他の微生物感染症に対処する。オートファジー酵素は、小胞体から脂質を誘導して微生物を取り囲み、微生物をオートファジー小胞に包み込む。リソソームはそれと融合し、微生物を殺す成分をもたらして細菌を破壊する。微生物分子に保存された情報は、パターン認識受容体のトリガー経路によって説明され、この経路は、適切な遺伝子ネットワークを活性化して適切なシグナル伝達サイトカインと受容体転写物を合成する経路を核に誘導する。消化された抗原は、MHC装置によって適切なシグナル分子とともに、免疫ネットワークの適応アームのT細胞に提示され、それによって効果的な全体的免疫応答を調整する。マイコバクテリア感染を効果的に制御するためには、効果的なオートファジーおよびTh1/細胞媒介応答が必要である。統合された応答の構成要素として、適切に機能するオートファジーは、NALP3インフラマソームをオフにし、炎症促進性IL-1βの放出を停止させることによって炎症を抑制するのに重要である。Deretic,V.ら、「結核におけるオートファジー(Autophagy in Tuberculosis)」、《医学におけるコールドスプリングハーバーの展望(Cold Spring Harbor Perspectives in Medicine)》(2014)を参照する。
【0018】
オートファジー障害の最終結果は、持続的な微生物感染、不適切なサイトカイン産生、適応免疫ネットワークのT細胞への誤った抗原提示、免疫シグナル伝達の調節不全、およびIL-1βのダウンレギュレーションの失敗であり、慢性的な損傷をもたらす炎症性疾患を引き起こす。Nakahira,K.ら、「オートファジータンパク質により、NALP3インフラマソームによって媒介されるミトコンドリアDNAの放出を阻害することによる自然免疫応答に対する調節」、《ネイチャーイミュノロジー(Nat.Immunol.)》,12(3),222-30(2011);Liang,Y.ら、「リファンピシンによるオートファジーの亢進を介するロテノン誘発性ミクログリア炎症の抑制」、《神経毒性学》,63,137-45(2017)を参照する。
【0019】
マウス系における活発なTh1(ヘルパーTell1)応答は、感染を排除するか、または感染の進行を遅らせるのに役立つ。被験者の免疫応答がTh2型応答に偏っていると、免疫系が活発なTh1応答を開始する能力が抑制される傾向がある。不十分なTh1応答は、いくつかの感染または他の状態の進行と関連し得る。Clercici,M.ら、《イムノロジートゥデイ(Immunol.Today)》,14,107-111(1993);Clercici,M.ら、《今日の免疫学》,15,575-581(1994)を参照する。
【0020】
後生動物における生物学的経路のホルモン制御は、一般に冗長で並列のシグナル伝達経路を含む機能的応答に統合された、さまざまな細胞型の複雑なプロセスに関する。「パイオニア」という転写因子は、ヒストンを覆うことによって関連する大きな遺伝子ネットワークを開き、前記ヒストンは、最終的な転写遺伝子を選択するために他の転写因子によってさらに制御される。BEAは他のステロイドホルモンと同様に、複雑な免疫応答を調整するためのパイオニア転写因子として機能する。オートファジーを刺激する能力の結果として、BEAは自然免疫を刺激し、非生産的炎症をダウンレギュレーションし、Th1免疫バイアスを発揮し、ウイルス、細菌、原虫および蠕虫に対して活性を示す。
【0021】
自然免疫および炎症に影響を及ぼすことができる薬物は、外傷、感染、腫瘍形成、代謝、自己免疫、神経炎症および血管疾患のプロセスにおいて治療的役割を果たす。したがって、結核菌(MTB)、非結核性抗酸菌症、免疫および炎症を伴う全てのウイルス性、細菌性、原虫性、真菌性および蠕虫性疾患、そして呼吸器を伴う細菌性肺炎は、BEAの明確な標的である。
【0022】
オートファジーおよび相互に連結した細胞内シグナル伝達経路を含む基本的な生物学的シグナル伝達経路に対するBEAの効果のため、BEAは、疾患プロセスが異なるように見える一連の疾患に有益な効果を発揮する。調節不全で非生産的炎症の制御を回復しながら、自然免疫を刺激するBEAの能力は、その有効性の鍵である。多くの急性および慢性の感染症、腫瘍性疾患および特発性の慢性炎症性疾患は、細胞内および細胞外の両方において、損傷したオートファジーおよび調節不全のシグナル伝達経路に関連する調節不全の免疫シグナル伝達と関連する。ホルモンとして、BEAは宿主全体で異なる細胞型の応答を誘発し、免疫ネットワークの「動的恒常性」を回復させる。該用語は、BEAが自然免疫を強化し、非生産的炎症をダウンレギュレーションし、Th1細胞媒介性免疫プロセスを促進し、パターン認識受容体(PRR)経路を介して説明される微生物病原体関連分子パターン(PAMPS)および腫瘍リスク関連分子パターン(DAMPS)の脅威により効果的に応答する能力によって証明されるように、BEAが免疫系の正常な機能を回復できることを意味する。適応免疫系の下流シグナル伝達に影響を及ぼすプロ抗原提示細胞としての樹状細胞およびマクロファージに対するBEAの影響は、免疫動態恒常性の回復におけるその全体的な役割にとって非常に重要である。
【0023】
ヨーネ菌(Mycobacterium avium ss. paratuberculosis,MAP)は、クローン病、関節リウマチ、ブラウ症候群、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、およびサルコイドーシスに関連する、抗酸菌染色の小さな棒状菌である。該細菌は牛や他の反すう動物でもヨーネ病を引き起こす可能性もある。BEAがMTBに感染したマウスの細菌増殖を阻害し、TNF-α、IFN-γおよびiNOSの発現を増加させること(R.Hernandez-Sarcomaら(2005)参照)から、BEAがMTBだけでなく、クローン病、関節リウマチ、ブラウ症候群、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、サルコイドーシスおよびヨーネ病を治療するために使用できることを示す。
【0024】
ヒトに発生する慢性炎症性腸疾患であるクローン病の病因にMAPが関与しているかどうかを明らかにするために、広範な研究が行われる。1980年代にCD患者からのMAPの分離は、CDの病因におけるMAPの役割の可能性を示す最初の直接的証拠となった。Chiodini,R.ら,「炎症性腸疾患におけるマイコバクテリアの可能な役割。I.クローン病の患者から分離された未分類のマイコバクテリウム種(Possible role of mycobacteria in inflammatory bowel disease. I. An unclassified Mycobacterium species isolated from patients with Crohn’s disease)」、《消化器疾患と科学(Dig.Dis.Sci.)》29,1073-1079(1984)を参照する。CD患者における防御免疫の破壊につながるメカニズムは、MTBに対する防御免疫の破壊に関連するメカニズムと類似していると予想される。BEAはMTBの治療に効果的であるため、CDの治療にも効果が期待できる。
【0025】
関節リウマチ(RA)は遺伝的感受性、慢性炎症および同様の生物学的製剤による治療を共有しているため、CDと関連付けられる。最近の研究で、2つのMAPの間の関連性が発見された。(Sharp,R.ら、「プロテインチロシンホスファターゼ非受容体2型および22型(PTPN2/22)の多型は、関節リウマチにおける過剰増殖性T細胞およびマイコバクテリアに対する感受性に関連する(Polymorphisms in Protein Tyrosine Phosphatase Non-receptor Type 2 and 22 (PTPN2/22) Are Linked to Hyper-Proliferative T-Cells and Susceptibility to Mycobacteria in Rheumatoid Arthritis)」、《細胞および感染微生物学のフロンティア(Front.Cell.Infect.Microbiol.)》,第8巻,第11章(2018))を参照する。RAとCDは同じ原因を有し、かつ、同じ薬物で治療されるため、MAPを阻害することによってCDを効果的に治療できる薬物は、RAに対しても効果的であると合理的に予測できる。BEAはCDの動物モデルに効果的であるため、RAの治療にも効果的であると考えられる。
【0026】
多発性硬化症はMAP感染と関連していることが多くの研究で示される。Cossu,D.ら、「サルデーニャ人患者におけるヨーネ病と多発性硬化症との関連(Association of Mycobacterium avium subsp.paratuberculosis with Multiple Sclerosis in Sardinian Patients)」《プロスワン(PLoS ONE)》6(4):e18482(2011)を参照する。BEAはMAPにも関連する結核菌の治療にも成功する。Stickneyら(2007)を参照する。したがって、BEAは結核と同じメカニズムで多発性硬化症の治療に使用される可能性がある。1型糖尿病(T1DM)は、インスリン産生β細胞集団が浸潤したTリンパ球により破壊される多因子性自己免疫疾患である。T1DMの正確な原因はまだ確認されていないが、遺伝的感受性および環境因子の程度の違いが疾患の進行および転帰に関連する。MAPとクローン病との関連性についての理解が高まるにつれて、MAPはクローン病以外にもT1DMを誘発すると考えられる潜在抗原であると仮定された。マイコバクテリアタンパク質(Hsp65)と膵臓グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)間のエピトープ相同性および乳幼児期栄養研究は、MAPがT1DMのトリガーの一つであることを示唆する。サルデーニャの糖尿病患者におけるPCRおよびELISA分析は、MAPがT1DMの可能なトリガーとして機能することを示唆する。BEAの結核菌に対する有効性を考慮すると、BEA製剤をT1DMの治療に使用することは考えられる。
【0027】
クラミジアはグラム陰性の偏性細胞内病原体であり、ヒトからアメーバまでの多様な生物の共生体である。クラミジア肺炎は、ヒトを含む多くの脊椎動物の気道に感染する偏性細胞内細菌である。クラミジア肺炎感染症は、無症候性および急性の肺炎および気管支炎を引き起こし、閉塞性肺疾患(COPD)と喘息などの慢性呼吸器疾患の発症および/または悪化に関連し、感染症の病因は、アテローム性動脈硬化症(Blanchard,T.ら、「クラミジア肺炎とアテローム性動脈硬化症(Chlamydia neumoniae and atherosclerosis)」 Lancet,341,825(1993))、アルツハイマー病(Balin,B.ら、「アルツハイマー病の脳におけるクラミジア肺炎の同定と局在(Identification and localization of Chlamydia pneumoniae in the Alzheimer’s brain)」、《医療微生物学および免疫学(Med Microbiol Immunol.)》,187,23-42(1998))、炎症性関節炎(Cheryl,V.ら、「持続性クラミジアおよび慢性関節炎(Persistent Chlamydiae and chronic arthritis)」、《関節炎研究(Arthritis Res.)》,4(1),5-9(2002))、多発性硬化症(Sriram, S.,ら、「CNSクラミジア肺炎感染症に関連する多発性硬化症(Multiple sclerosis associated with Chlamydia pneumoniae infection of the CNS)」、《神経学(Neurology)》50,571-572(1998))、喘息(Galeone, C.ら、「重度喘息の標的療法における精密医療:(オミクス)技術の活躍の場はあるのか?」、《国際生物医学研究(BioMed Research International)》,記事ID 4617565,p.15(2018))、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(Blasi,F.ら、「COPDの急性増悪におけるクラミジア肺炎感染症(Chlamydia pneumoniae infection in acute exacerbations of COPD)」、《欧州呼吸器学会誌(Eur.Respir.J.)》6,19-22(1993))などの多様な疾患に関連する。効果的なワクチンはなく、抗生物質は短期間しか使用できない。自然免疫の改善はクラミジアと戦うために不可欠である。Shimada,K.ら、「クラミジア肺炎感染症に対する自然免疫応答:TLR、NLR、およびインフラマソームの役割(Innate immune responses to Chlamydia pneumoniae infection: Role of TLRs,NLRs, and the Inflammasome)」、《微生物および感染症(Microbes Infect.)》,14(14),1301-1307(2012)を参照する。BEAは自然免疫を刺激し、オートファジーを亢進させる可能性がある。オートファジーの亢進は、関与するマクロファージが感染を排除するのに役立つ可能性がある。したがって、BEAは、マラリアの治療における有効性によって示されるように、クラミジアを治療するために使用することができる。
【0028】
最近の研究で、アルツハイマー病は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)、クラミジア肺炎、およびいくつかの型のスピロヘータなどの微生物感染と関連している。(Itzhaki,R.ら、「微生物およびアルツハイマー病(Microbes and Alzheimer’s Disease)」、《アルツハイマー病学会誌(J. Alzheimers Dis.)》,51(4):979-984(2016))。慢性的なグリア活性化は、アルツハイマー病の脳における病的なタンパク質の蓄積に伴う顕著な特徴である。持続的な神経炎症は、さまざまな方法で神経細胞の損傷と死を誘発する可能性がある。自然免疫は、ニューロンの生存能力に直接的な影響を及ぼすだけでなく、アミロイドβおよびタウの病理蓄積にも影響を及ぼし、ひいては神経変性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、自然免疫はアルツハイマー病の病因に不可欠な要素であり、疾患進行の駆動力となる可能性がある。ニューロンを損傷することなく恒常性または病的状態の下で老廃物のクリアランスを増加させるために脳内の免疫活性を亢進させることは、アルツハイマー病を治療するための代替戦略となる可能性がある。Shi,Y.ら、「自然免疫とアルツハイマー病の相互作用:注目されるAPOEとTREM2(Interplay between innate immunity and Alzheimer’s disease: APOE and TREM2 in spotlight)」、《ネイチャーレビューズイミュノロジー(Nature Reviews Immunology)》18, 759-772(2018)を参照する。BEAは、ヒトおよび動物の両方において、調節不全および非生産的炎症の制御を再確立しながら、自然免疫を刺激する能力を有し、したがって、慢性炎症を制御することによってアルツハイマー病を治療するために使用することができる。
【0029】
メタボリックシンドロームは、血圧の上昇、高血糖、腰回りの体脂肪の増加、およびコレステロールまたはトリグリセリド値の異常という一連の状態であり、これらが同時に発生し、心疾患、脳卒中、および糖尿病のリスクを増大させる。クラミジア肺炎もT2DMに関連する。
【0030】
Blasi,F.らは、142人のCOPD患者を含む研究において、COPDが少なくとも部分的にクラミジア肺炎に関連していることを開示する。ヒトおよび動物の両方において、調節不全および非生産的炎症の制御を再確立しながら、自然免疫を刺激するBEAの能力は、COPDの治療に使用できることを示唆する。
【0031】
喘息は気道の慢性炎症性疾患と定義される。それは世界で最も一般的な慢性疾患の1つである。最大限の薬物療法を行っても、喘息患者の多くは十分な喘息コントロールを達成できず、その結果、追加の抗喘息薬が必要となる。基礎となる生理学的および免疫学的プロセスは完全には理解されない。Black,P.ら、「クラミジア肺炎感染症と喘息の重症度を関連付ける血清学的証拠(Serological evidence of infection with Chlamydia pneumoniae is related to the severity of asthma)」、《欧州呼吸器学会誌》,15(2),254-9(2000)において、クラミジア肺炎感染症が、明らかに非定型肺炎、喘息、および虚血性心疾患の可能性に関連していることが開示される。BEAによる治療は、アレルギー反応を調節するTh-2サイトカインパターンに対するアンタゴニストであるTh-1応答の効果的な活性化のため、喘息における気道炎症を軽減する可能性がある。
【0032】
外傷性プロセスは初期の炎症を伴い、「サイトカインストーム」後の免疫不全を引き起こすことがある。外傷は、逆説的に、感染に対する抵抗力の低下に関連する急性の非特異的な免疫応答を含む全身反応を誘発する。感染に対する身体の免疫を増強することを目的とした治療は、感染および死亡率を大幅に低減させる。Lord,J.ら、「外傷に対する全身性免疫応答:病理学と治療の概要(The systemic immune response to trauma: an overview of pathophysiology and treatment)」、Lancet,384(9952),1455-1465(2014)を参照する。免疫恒常性を回復させるBEAの能力は、外傷の治療に効果的になる。
【0033】
相対的な免疫不全を伴う腫瘍性疾患もBEAの標的である。十分なデータによって裏付けられた長年の仮説は、現在自己免疫疾患として分類される特発性慢性炎症性疾患のいくつか(ほとんどではない)は実際には潜在的な感染因子によって引き起こされる。有害な炎症をダウンレギュレーションし、免疫力をさらに損なわないBEAの能力は、現在の免疫抑制療法を改善する。免疫療法は癌の標準的治療法として急速に普及している。CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、すべての腫瘍細胞型によって発現されるMHCクラスI分子によって提示される細胞内抗原を検出するため、腫瘍を標的とするための好ましいツールである。CD4+T細胞は、効果的な抗腫瘍免疫にも必要である。CD4+T細胞の補助機能を最大限に活用することで、癌免疫療法の効果を高めることができる。Borst,J.ら、「癌の免疫学と免疫療法に役立つCD4+T細胞(CD4+T cell help in cancer immunology and immunotherapy)」、《ネイチャーレビュー免疫学》,18,635-647(2018)を参照する。BEAはヒト臨床試験において患者のCD8+レベルを上昇させることが証明される。(Stickney D.ら、(2007))。したがって、BEAは癌免疫療法剤として使用することができる。
【0034】
多発性骨髄腫は、モノクローナル形質細胞の進行性の蓄積を特徴とする、一般的に致命的なB細胞悪性腫瘍である。インターロイキン6(IL-6)は骨髄腫細胞の中心的な増殖因子であることが示される。Kawano,M.ら、「ヒト多発性骨髄腫のオートクリン産生とBSF-2/IL-6の要件」、《ネイチャー》,332(6159),83-85(1988)を参照する。多くのサイトカインがIL-6産生を刺激できるが、骨髄腫では、インターロイキン1(IL-1)βが骨髄間質細胞のパラクライン分泌によるIL-6産生を担う主要なサイトカインの1つであると思われる。Xiong,Y.ら、「多発性骨髄腫患者のうち、インターロイキン1の産生量が多いまたは少ない2つのグループの特定(Identification of two groups of smoldering multiple myeloma patients who are either high or low producers of interleukin-1)」、《インターフェロンとサイトカイン研究のジャーナル(J.Interferon Cytokine Res.)》,26(2),83-95(2006)を参照する。臨床試験では、熊M-スパイクまたはMタンパク質に基づく多発性骨髄腫のマウスモデルが抗多発性骨髄腫薬の有効性の予測因子であることが示される。Chesi,M.ら、「多発性骨髄腫の遺伝子操作されたマウスモデルにおける薬物反応は臨床効果を予測することができる(Drug response in a genetically engineered mouse model of multiple myeloma is predictive of clinical efficacy)」、《血液(Blood)》,120(2),376-385(2012)を参照する。BEAは、Th1を回復させ、IL-1βおよびIL-6を減少させる能力があるため、多発性骨髄腫の治療薬として期待される。
【0035】
BEAは、好中球およびマクロファージが病原性微生物を死滅させる能力を高め、過剰な炎症反応を調節し、その後の免疫不全状態を改善する。したがって、肺炎、敗血症および膵炎などの急性感染症/炎症状態を治療するために使用することができる。
【0036】
BEAの開発中に使用された多くの動物モデルは、BEAが動物疾患の治療に有効であることを示した。したがって、BEAが治療するヒト疾患に相当するすべての動物疾患もBEAによって治療することができる。
【発明の概要】
【0037】
急速な沈殿を最小限に抑え、大きな固形物の形成を防止し、従って、医薬製剤における注射部位への刺激を低減または排除するために、本発明は、BEAの小粒子からなる懸濁液を提供する。本発明において、BEAの水性懸濁液製剤は、不十分な安定性、注射部位への刺激の深刻さ、そして調製、貯蔵および使用の難しさという現在のBEA製剤における問題を解決するように設計される。
【0038】
公知の化学知識および刊行物に開示された知識とは反対に、本発明は、BEAが本発明の組成物中の固体として水中で異常に安定していることを示す。本発明の組成物における固体BEAの異常な安定性は、水への溶解性が極めて低いことに起因すると考えられる。溶解度が低いため、遊離水分子がBEA粒子に入るのを防止し、BEAを加水分解、エピマー化、および他の劣化から保護する。本発明は、固体BEAの水性懸濁液製剤を調製することによって、既存の製剤の安定性という問題を解決する。本発明の製剤と文献に開示された製剤との間の並行安定性研究は、本発明の製剤が既知の製剤よりもはるかに安定であることを示す。
【0039】
本発明の製剤中にBEAの微粒子を使用することによって、BEAの急速かつ不規則な沈殿を防止し、組織内に大きな固形物を形成する。このプロセスは有機溶媒の除去と共に注射部位への刺激を大幅に改善した。注射部位への刺激に関する広範な研究により、本発明のBEA製剤が既知の製剤よりもはるかに優れていることが証明される。
【0040】
本発明は、以下の目的を達成するための組成物、製剤および方法を提供する。
本発明の第一目的は、治療用途および免疫調節剤などの他の用途に適した新しい製剤および組成物を提供することである。本発明の新しい製剤および組成物は、BEA半水和物を含むBEA半水和物組成物およびそれを調製および使用する方法を含む。
【0041】
本発明の第二目的は、式Iの化合物を含み、溶媒として水を使用する水性懸濁液組成物および製剤を提供することである。
本発明の第三目的は、式Iの化合物を含有するヒト用医薬品および動物用製剤を調製するための中間体として使用できる水分散性乾燥組成物を提供することである。
【0042】
本発明の第四目的は、Th1免疫応答を増強するために式Iの化合物を対象に送達するための間欠投与方法を提供することである。
本発明の第五目的は、BEAなどの式Iの化合物を含有する製剤を対象に投与することによって、対象の自然免疫を調節するか、またはTh1免疫反応を増強する方法を提供することである。
【0043】
本発明の第六目的は、BEAなどの式Iの化合物を含有する製剤を対象に投与することによって、対象における病原体、例えばウイルスの複製を阻害する方法を提供することである。本発明は、免疫抑制または不十分なTh1免疫応答に関連する病的状態の1つ以上の症状を改善するのに有用な製剤を提供する。
【0044】
本発明の第七目的は、式Iの化合物を含有する組成物および製剤を調製および使用する方法を提供することである。
本発明は、ヒト用医薬品用途または獣医学用途に適したBEAおよび1種以上の賦形剤を含む組成物および製剤を提供する。
【0045】
本発明はまた、非経口投与またはエアロゾル投与のためにBEAおよび1種以上の賦形剤を有する水性懸濁液製剤を提供する。
本発明はさらに、非経口投与またはエアロゾル投与のためにBEAおよび1種以上の賦形剤の水分散性乾燥組成物を提供する。
【0046】
本発明はさらに、水性BEA懸濁液を調製する方法を提供する。
本発明はさらに、BEAおよび1種以上の賦形剤の水分散性乾燥組成物を調製する方法を提供する。
【0047】
本発明の組成物は、アモルファス、結晶、共結晶、多形、共結晶多形形態の水和物および溶媒和物を含む式Iの化合物、および1種以上の賦形剤を含み、ここで、該化合物は以下の構造を有し、
【化2】
式中、nは0~4であり、
前記溶媒和物は、H
2O、C
1-4-OH、HO-C
1-4-OH、C
1-4-COOH、C
1-4-COOC
1-4、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、(CH
3)
2O、(C
2H
5)
2O、HC(O)N(CH
3)
2または(CH
3)
2SOであり、
Xは、Cl、BrまたはIであり、
Rは、-H、-Si-(C
1-6アルキル)3、エステル、チオエステル、ホスホエステル、ホスホチオエステル、ホスホノエステル、ホスフィニエステル、亜硫酸エステル、硫酸エステル、アミド、アミノ酸、ペプチド、エーテル、チオエーテル、アシル基、チオアシル基、炭酸塩、カルバメート、チオカーボネート、任意に置換されたアルキル基、任意に置換されたアルケニル基、任意に置換されたアルキニル基、任意に置換されたアリール部分、任意に置換されたヘテロアリール部分、任意に置換された単糖、任意に置換されたオリゴ糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリマーである。
【0048】
本発明はさらに、式Iの化合物および水を含む組成物を提供する。式Iの化合物は、水中に粒子の形態で存在し、式Iの化合物は水中の水性懸濁液中の粒子として存在する。水の含有量は、組成物の少なくとも10%w/wであり、30%w/w以上であってもよい。好ましくは、水の含有量は65%w/w以上であってもよく、より好ましくは、水の含有量は70%w/w以上であってもよく、最も好ましくは、水の含有量は80%w/w以上であってもよく、かつ、水の含有量は90%w/w以上に達してもよく、また、本発明の組成物は、その中の式Iの化合物の安定性を依然として維持する。
【0049】
さらに、本発明は、水分散性乾燥組成物、すなわち、水中での組成物の冷凍乾燥または凍結乾燥によって調製される凍結乾燥組成物を提供する。水分散性乾燥組成物に水を加えて使用すると、水を含有する組成物中の式Iの化合物は安定したままである。
【0050】
本発明の組成物において、好ましくは、式Iの化合物の粒子の大きさは、0.01μm~15μmである。
本発明の組成物は、界面活性剤、懸濁剤、および医薬賦形剤をさらに含み得る。
【0051】
本発明の界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール(PEG)-8-オクチル酸/デカン酸およびポリエチレングリコール(PEG)ヒドロキシステアリン酸エステル、卵黄レシチン、大豆レシチン、オレイン酸ナトリウム、胆汁塩、またはそれらの混合物であってもよい。
【0052】
本発明の懸濁剤は、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、アルギン酸塩、アカシア、トラガカント、キサンタンゴム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、またはそれらの混合物である。
【0053】
医薬賦形剤は、注射用水、pH調節剤、浸透圧調節剤、凍結乾燥保護添加剤、封鎖剤、抗酸化剤、防腐剤、医薬品成分またはそれらの混合物である。医薬賦形剤が防腐剤である場合、それは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ビタミンC、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、L-システイン、アミノ酸、またはそれらの組合せであってもよい。
【0054】
本発明の組成物は、0.3~25%(w/v)の化合物、0.01~5%(w/v)の界面活性剤、0.01~3%(w/v)の懸濁剤、および浸透圧調節剤を含む注射可能な懸濁液であってもよい。好ましくは、浸透圧調節剤は塩化ナトリウムまたはデキストロースである。
【0055】
本発明の組成物は、式Iの化合物、界面活性剤、懸濁剤、および少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む凍結乾燥製剤であってもよく、化合物の量は3mg~500mgであり、化合物と界面活性剤との比は1:50~500:1であり、化合物と懸濁剤との比は0.1:10~500:1である。
【0056】
本発明の組成物において、溶媒和物は水であってもよく、Rは水素(H)であってもよく、Xは臭素(Br)であってもよい。本発明の組成物の一実施形態において、溶媒和物は水であり、Rは水素であり、Xは臭素であり、nは0.5であり、化合物は、以下の構造を有する16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトン半水和物である。
【化3】
【0057】
本発明はさらに、治療を必要とする対象に組成物を非経口、経口またはエアロゾル投与経路で投与するステップを含む組成物の使用方法を提供する。
本発明はさらに、治療を必要とする対象に治療有効量の組成物を投与することを含む組成物の使用方法を提供し、ここで、該治療は、オートファジーおよび自然免疫を刺激し、非生産的炎症を調節し、免疫応答をTh1応答(IFN-γ、細胞性免疫経路)またはTh2応答、病理学的状態(ウイルスまたは寄生虫感染など)、またはそれらの組合せに偏らせるために対象に使用される。特に、該治療は、外傷、感染症(ウイルス、細菌、原虫、真菌および蠕虫)、腫瘍形成、代謝、自己免疫または神経炎症性および炎症性血管疾患、または結核菌および非結核性抗酸菌、MAP感染、クラミジア感染症、細菌性肺炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、多発性骨髄腫、喘息、代謝症候群、2型糖尿病、1型糖尿病、閉塞性肺疾患、外傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、心臓サルコイドーシス、関節リウマチ、または非アルコール性脂肪性肝疾患などの感染症または調節不全の炎症に対する治療である。
【0058】
本発明はさらに、式Iの化合物およびヒト用医薬品用途または獣医学用途に適した1種以上の賦形剤を提供する。本発明の一実施形態は、式Iの化合物および非経口またはエアロゾル投与のための1種以上の賦形剤を有する水性懸濁液製剤を含む。本発明の別の実施形態は、非経口またはエアロゾル投与のための、式Iの化合物および1種以上の賦形剤の水分散性乾燥組成物を提供する。本発明のさらに別の関連する実施形態は、水性の式I化合物懸濁液を調製する方法を提供する。本発明のさらに別の実施形態は、式Iの化合物および1種以上の賦形剤の水分散性乾燥組成物を調製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本発明の実施例6におけるLC-MS/MSによって処理および分析された、経時的なBEA血中濃度を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、0日目に種々の組成物で培養されたマクロファージ内の細胞内生桿菌の数、すなわち、開始カウントを示し、
図2(b)は、1日目、すなわち24時間培養後に種々の組成物で培養されたマクロファージ内の細胞内生桿菌の数を示し、
図2(c)は、4日目、すなわち4日間培養後に種々の組成物で培養されたマクロファージ内の細胞内生桿菌の数を示し、すべてのデータは、本発明の実施例7にある。
【
図3】
図3は、本発明の実施例11におけるマウスM5396B、M5645BおよびM4982Dにおける経時的なMスパイク値の変化を示す。
【
図4】
図4(a)~
図4(d)は、本発明の実施例10における実験結果を示し、ここで、
図4(a)は、F1製剤で治療したストレプトゾトシン誘発2型糖尿病(DM2)マウスのOGTT結果を示し、
図4(b)は、F2製剤で治療したストレプトゾトシン誘発2型糖尿病(DM2)マウスのOGTT結果を示し、
図4(c)は、OGTTの血中グルコースのAUC(曲線下面積)であり、
図4(d)は、ビヒクルで治療した場合と比較したF1およびF2で治療したDM2マウスの正常なグルコースレベルである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本明細書中で使用されるように、および文脈によって別段の記載または暗示がない限り、以下の用語は、本明細書中で定義される意味を有する。
「製剤」または「本発明の製剤」は、存在する成分または成分比率を変化させるさらなる操作なしに、ヒトまたは動物に非経口的またはエアロゾルで投与できる本発明の組成物を意味する。製剤はヒトまたは動物への適用に適している。
【0061】
「本発明の組成物」は、本発明の製剤を調製するために使用できる中間体となる組成物であり、すなわち、製剤を調製するために成分またはその量の変更が必要である。したがって、本発明の組成物は、それが製剤になる前にさらなる処理が必要な組成物、例えば、所望の量の成分を混合または添加する組成物を含む。
【0062】
「賦形剤」とは、本発明の組成物または製剤の他の成分と適合性があり、かつ製剤が投与される患者または動物に対して過度に悪影響を及ぼさないという意味で許容される成分または成分を意味する。本明細書で使用される「賦形剤」は、安息香酸ベンジル、綿実油、N,N-ジメチルアセトアミド、C2-12アルコール(例えば、エタノール)、グリセロール、落花生油、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ビタミンE、ポップコーン種子油、プロピレングリコール、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、および植物油などの液体を含む。賦形剤は、充填剤、結合剤、崩壊剤、および潤滑剤など、医薬製剤技術において一般的に使用される1つ以上の成分を含む。
【0063】
「対象」とは、ヒトまたは動物を意味する。一般に、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜、または狩猟動物のような脊椎動物である。霊長類は、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびアカゲザルなどのマカクを含む。げっ歯類は、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターを含む。家畜および狩猟動物は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科動物(例えば、家畜ネコ)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、鳥類(例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ)、および魚(例えば、マス、ナマズ、およびサケ)を含む。対象は、上記のいずれかのサブセット、例えば上記の全てを含むが、ヒト、霊長類、またはげっ歯類などの1つ以上のグループまたは種を除く。
【0064】
「1つ以上の式I化合物」または「1つの式I化合物」に言及する表現は、1つ以上(一般的には1、2、3または4であり、通常は1である)の式I化合物が存在する本発明の組成物または製剤を意味する。
【0065】
本明細書で使用される「アルキル」は、結合した直鎖、第二級、第三級、または環状炭素原子、すなわち、直鎖、分岐、または環状を意味する。アルキル基または部分の炭素原子の数は、特に指定しない限り、1~約20であり、例えば、C1~8アルキルは、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含むアルキル部分を意味する。例としては、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、2-プロピル(i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-ブチル)、2-メチル-1-プロピル(i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0066】
「アルケニル」とは、1つ以上(一般的には1、2または3、通常は1または2である)の二重結合(例えば、-CH=CH-)が存在する結合した直鎖、第二級、第三級または環状炭素原子を意味する。アルケニル基または部分の炭素原子の数は、特に指定しない限り、2~約20であり、例えば、C1-8アルケニルは、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含むアルケニル部分を意味する。
【0067】
「アルキニル」とは、1つ以上(一般的には1、2、または3、通常は1である)の三重結合(-C≡C-)が存在する結合した直鎖、第二級、第三級、または環状炭素原子を意味する。アルキニル基または部分の炭素原子の数は、特に指定しない限り、2~約20であり、例えば、C1-8アルキニルは、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含むアルキニル部分を意味する。
【0068】
「アリール」は、フェニルまたはナフチルを意味する。
「置換アルキル」、「置換アルケニル」および「置換アルキニル」とは、炭素原子に結合した置換基または炭素原子鎖を中断する置換基を有するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味する。置換基は、エーテル(-O-)、ケトン(-C(O)-)、-ORPR、-C(O)ORPR、-C(O)O-、-C(S)ORPR、-C(S)O-、-OC(O)-、-C(O)H、-OCH2-、-OCH2CH2-、-OCH2O-、-OCH2CH2O-、-NRPR-、-N(RPR)2、-NHRPR、-NHC(O)-、-CH2-NRPR-、-CH2-NHRPR、-CH2-NHC(O)-、-C(O)NH-、-C(O)NHRPR、-OC(O)NRPR、-OC(O)NHRPR、-NRPRC(O)NRPR-、-NRPRC(O)NHRPR、-NRPRCH2-、-NRPRCH2CH2-、-S-、-SRPR、-S(O)-、-S(O)(O)-、-S(O)ORPR、-S(O)H、-CN、-NO2、ハロゲン、およびRPRが独立して水素である場合、保護基または両方のRPRが一緒に保護基であるこれらの部分の組合せを含む。置換基は、2つ以上存在する場合、独立して選択される。置換基を含むアルケニル基およびアルキニル基は、一般に、二重結合から除去された1つ以上のメチレン部分である炭素で置換され、例えば、少なくとも1つ、2つ以上の-CH2-部分によって分離される。RPRは、独立して、水素、保護基であり、または両方のRPRが一緒に保護基である。
【0069】
「複素環」または「複素環式」は、例えば、参照により本明細書に組み込まれたMoss,P.ら、「構造に基づく有機化合物および反応性中間体の分類名の用語集(GLOSSARY OF CLASS NAMES OF ORGANIC COMPOUNDS AND REACTIVE INTERMEDIATES BASED ON STRUCTURE)」、《理論と応用化学(Pure&Appl.Chem.)》,67(819),1307-1375(1995)に記載される複素環を含むが、これらに限定されない。
【0070】
複素環の例は、例として限定されないが、ピリジル、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル(thianaphthalenyl)、インドリル、インドレニル(indolenyl)、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドン、ピロリニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キナジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシンドリニル、ベンゾオキサゾリニルおよびイサチノイル(isatinoyl)を含む。
【0071】
「保護基」とは、それが結合している原子が望ましくない反応に関与することを防止する部分を意味する。例えば、-ORPRについては、RPRは、水素または水酸基に含まれる酸素原子に対する保護基であることができ、一方、-C(O)-ORPRについては、RPRは、水素またはカルボキシル保護基であることができ、-SRPRについては、RPRは、例えば、水素、または例えばチオール中の硫黄に対する保護基であることができ、-NHRPRまたは-N(RPR)2-については、RPRは、水素または第一級または第二級アミンの窒素原子保護基であることができる。ヒドロキシル、アミンおよび他の反応性基は、式Iの化合物中、例えばR1に見出される。これらの基は、分子内の他の場所で起こる反応に対する保護を必要とする。酸素、硫黄または窒素原子に対する保護基は、一般に、求電子性化合物との望ましくない反応を防止するために使用され、例えば、ステロイド化学において使用されるアシル化などが挙げられる。
【0072】
「エステル」とは、-C(O)-0-構造を含む部分を意味する。一般的には、本明細書で使用されるエステルは、約1~50個の炭素原子(例えば、約2~20個の炭素原子)および0~約10個の独立して選択されたヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、ここで、有機部分は、例えば、R1において-C(O)-0-構造、例えば、有機部分-C(O)-0-ステロイドを介して、式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、一般に、上記の有機基のいずれか1つ以上を含み、例えば、C1-20アルキル部分、C2-20アルケニル部分、C2-20アルキニル部分、アリール部分、C2-9複素環またはこれらのいずれかの置換誘導体、例えば、1、2、3、4またはそれ以上の置換基を含み、ここで、各置換基は独立して選択される。これらの有機基における水素または炭素原子の一般的な置換は、1、2、3、4以上、通常は1、2、または3つの-O-、-N(RPR)2(-NH2を含む)、-C(O)ORPR(-C(O)OHを含む)、-OC(O)RPR(-OC(O)-Hを含む)、-ORPR(-を含む) OH)、-SRPR(-SHを含む)、-NO2、-CN、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-A8、-S-A8、-C(O)-A8、-OC(O)-A8、-C(O)O-A8、=N-、-N=、=N-OH、-OPO3(RPR)2、-OSO3H2またはハロゲン部分または原子を含み、ここで、各RPRは-H、独立して選択された保護基であり、または両方のRPRは一緒に保護基を含み、そしてA8はC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)、アリール(例えばフェニル)またはC0-4アルキル-C2-9複素環である。置換は独立して選択される。有機部分は、明らかに不安定な部分、例えば-O-O-を除外するが、そのような不安定な部分が、本明細書に記載される1つ以上の使用のために十分な化学的安定性を有する化合物を調製するために使用できる過渡種である場合を除く。上記の置換基は、一般的には、-O-または-C(O)-などの1つ以上の炭素原子、またはハロゲン、-NH2または-OHなどの1つ以上の水素原子を置換するために使用できる置換基である。
【0073】
「チオエステル」とは、-C(O)-S-構造を含む部分を意味する。一般的には、本明細書において使用されるチオエステルは、約1~50個の炭素原子(例えば、約2~20個の炭素原子)および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、ここで、有機部分は、-C(O)-S-構造、例えば有機部分-C(O)-S-ステロイドを介してR2において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0074】
「ホスホエステル」または「リン酸エステル」は、-O-P(ORPR)(O)-O-構造を含む部分を意味し、ここで、RPRは、水素(-H)、保護基またはエステルについて記載されるような有機部分である。一般的には、本明細書において使用されるホスホエステルは、水素原子、保護基、または約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-O-P(O)(O)-O-構造、例えば、有機部分-O-P(O)(OH)-O-ステロイドを介してR1において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0075】
「ホスホチオエステル」とは、-O-P(SRPR)(O)-O-構造を含む部分を意味し、ここで、RPRは、-H、保護基またはエステルについて記載されるような有機部分である。一般的には、本明細書において使用されるホスホチオエステルは、水素原子、保護基、または約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-O-P(O)(O)-O-構造、例えば、有機部分-O-P(O)(SH)-O-ステロイドを介してR1において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0076】
「ホスホノエステル」とは、-P(ORPR)(O)-O-構造を含む部分を意味し、ここで、RPRは-H、保護基またはエステルについて記載されるような有機部分である。一般的には、本明細書において使用されるホスホノエステルは、水素原子、保護基、または約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-P(ORPR)(O)-O-構造、例えば、有機部分-P(ORPR)(O)-O-ステロイドを介してR1において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0077】
「ホスフィネスター」とは、-P(ORPR)-O-構造を含む部分を意味し、ここで、RPRは-H、保護基またはエステルについて記載されるような有機部分である。一般的には、本明細書において使用されるホスフィネスターは、水素原子、保護基、または約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-P(ORPR)-O-構造、例えば、有機部分-P(ORPR)-O-ステロイドを介してR1~R6において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0078】
「硫酸エステル」とは、-O-S(O)(O)-O-構造を含む部分を意味する。一般的には、本明細書において使用される硫酸エステルは、水素原子、保護基、または約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-O-S(O)(O)-O-構造、例えば、有機部分-O-S(O)(O)-O-ステロイドを介してR1において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0079】
「亜硫酸エステル」とは、-O-S(O)-O-構造を含む部分を意味する。一般的には、本明細書において使用される亜硫酸エステルは、約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-O-S(O)-O-構造、例えば、有機部分-O-S(O)-O-ステロイドを介してR1において式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0080】
「アシル基」とは、1、2、3、4またはそれ以上の-C(O)-基を含む、エステルについて記載された有機部分を意味する。いくつかの実施形態において、-C(O)-基は、Rにおいてステロイド核、例えば、有機部分-C(O)-O-ステロイドに結合する。
【0081】
「チオアシル」とは、1、2、3、4またはそれ以上の-C(S)-基を含む、エステルについて記載された有機部分を意味する。いくつかの実施形態において、-C(S)-基は、Rにおいてステロイド核、例えば、有機部分-C(S)-O-ステロイドに結合する。
【0082】
「炭酸塩」とは、1、2、3、4、またはそれ以上の-O-C(O)-O-構造を含む、エステルについて記載された有機部分を意味する。一般的には、本明細書において使用される炭酸塩基は、約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-O-C(O)-O-構造、例えば、有機部分-O-C(O)-O-ステロイドを介してRにおいて式Iのステロイド核に結合する。
【0083】
「カルバメート」とは、1、2、3、4、またはそれ以上の-NRPR-C(O)-O-構造(ここで、RPRは-H、保護基または有機部分である)を含む、エステルについて記載された有機部分を意味する。一般的には、本明細書において使用されるカルバメート基は、約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-NRPR-C(O)-O-構造、例えば、有機部分-NRPR-C(O)-O-ステロイドを介してRにおいて式Iのステロイド核に結合する。
【0084】
「チオカーボネイト」とは、RPRS-C(O)-O構造を含む部分を意味する。一般的には、本明細書において使用されるチオカーボネイト基は、約1~50個の炭素原子および0~約10個のヘテロ原子(例えば、O、S、N、P、Si)を含む有機部分を含み、有機部分は、-S-C(O)-O構造、例えば、有機部分-S-C(O)-O-ステロイドを介してRにおいて式Iのステロイド核に結合する。有機部分は、エステルについて上記したとおりである。
【0085】
本明細書において使用されるように、「単糖」とは、実験式(CH2O)n(式中、nは3、4、5、6、または7である)を有するポリヒドロキシアルデヒドまたはケトンを意味する。単糖には開鎖型と閉鎖型があるが、通常は閉鎖型である。単糖は、2’-デオキシリボース、リボース、アラビノース、キシロース、それらの2’-デオキシおよび3’-デオキシ誘導体、ならびにそれらの2’、3’-ジデオキシ誘導体などのヘキソフラノースおよびペントフラノース糖を含む。単糖はまた、リボースの2’,3’ジデオキシジデヒドロ誘導体を含む。単糖は、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ガラクトース、アロース、グロース、アルトロース、タロース、フコース、エリスロース、トレオース、リキソース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、プシコース、ソルボース、タガトース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトンのD-、L-およびDL-異性体、およびラムノースなどのそれらのモノデオキシ誘導体を含む。単糖は任意に保護されるか、または部分的に保護される。
【0086】
任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるアルキニル基、任意に置換されるアリール部分および任意に置換される複素環は、C1-20アルキル部分、C2-20アルケニル部分、C2-20アルキニル部分、アリール部分、C2-9複素環またはこれらのいずれかの置換誘導体を含む置換を意味する。これらの有機基に対する一般的な置換は、1、2、3、4またはそれ以上、通常は1または2つの-O-、-S-、-NRPR-、-C(O)-、-N(RPR)2、-C(O)ORPR、-OC(O)RPR、-ORPR、-SRPR、-NO2、-CN、-NHC(O)-、-C(O)NH-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-A8、-S-A8、-C(O)-A8、-OC(O)-A8、-C(O)O-A8、=N-、-N=、-OPO2RPR、-OSO3Hまたはハロゲン部分または原子を含み、ここで、RPRは、独立して-H、保護基であり、または両方のRPRは一緒になって保護基であり、そしてA8は、C1-8アルキル、C1-8アルケニル、C1-8アルキニル、C1-4アルキル-アリール(例えば、ベンジル)、アリール(例えば、フェニル)またはC1-4アルキル-C1-5複素環である。置換は独立して選択される。本明細書に記載される有機部分、および本明細書に記載される他の任意の他の部分は、明らかに不安定な部分、例えば-O-O-を除外するが、そのような不安定な部分が、本明細書に記載される1つ以上の使用のために十分な化学的安定性を有する化合物を調製するために使用できる過渡種である場合を除く。
【0087】
任意に置換される「単糖」は、任意のC3-C7糖、D-、L-またはDL-構成、例えば、エリスロース、グリセロール、リボース、デオキシリボース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、マンノース、グルコサミン、N-アセチルノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、1つ以上のヒドロキシル基で任意に置換されるN-アセチルガラクトサミンを含む。適切な置換は、水素、保護されるヒドロキシル、カルボキシル、アジド、シアノ、-O-C1-6アルキル、-S-C1-6アルキル、-O-C2-6アルケニル、-S-C2-6アルケニル、任意に保護されるアミン、任意に保護されるカルボキシル、ハロゲン、チオールまたは保護されるチオールを含む。単糖とステロイドとの間の結合はαまたはβである。
【0088】
任意に置換される「オリゴ糖」は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の、互いに共有結合した任意のC3~C7糖を含む。結合した糖はD-、L-またはDL-構成を有することができる。適切な糖および置換は、単糖について記載したとおりである。オリゴ糖とステロイドとの間の結合はαまたはβであり、オリゴ糖を構成する単糖間の結合も同様である。
【0089】
ヌクレオシドには、3TC、AZT、D4T、ddI、ddC、G、A、U、C、T、dG、dA、dT、およびdCを含む。
ポリマーには、生体適合性有機ポリマー、例えばPEGおよびポリヒドロキシアルキルポリマーを含む。
【0090】
PEGとは、約20~約2000000個の結合したモノマー、一般的には約50~1000個の結合したモノマー、通常は約100~300個の結合したモノマーを含むエチレングリコールポリマーを意味する。ポリエチレングリコールは、様々な数の結合モノマーを含有するPEG、例えば、PEG20、PEG30、PEG40、PEG60、PEG80、PEG100、PEG115、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG3350、PEG4000、PEG4600、PEG5000、PEG6000、PEG8000、PEG11000、PEG12000、PEG2000000、およびそれらの任意の混合物を含む。
【0091】
実施形態を含む本発明において使用される塩は、式Iの化合物の塩および複合体を包含し、薬学的に許容される塩または比較的毒性のない塩を含む。本発明の化合物のいくつかは、水溶液中、一般的には約4~10のpHで少なくとも部分的な正または負の電荷を有する1つ以上の部分を有し、これらの部分は、塩、複合体、部分的な塩および部分的な複合体特性または他の非共有相互作用を有する組成物の形成に関与することができ、これらは全て「塩」と呼ばれる。塩は、通常、特に哺乳動物細胞に対して、生物学的に適合性であるか、または薬学的に許容されるか、または非毒性である。生物学的に毒性のある塩は、本発明化合物の合成中間体と共に任意に使用される。水溶性組成物が望まれる場合、通常、一価の塩が使用される。
【0092】
金属塩は、一般的には、金属水酸化物を本発明の化合物と反応させることによって調製される。このようにして任意に調製される金属塩の例は、Li+、Na+およびK+を含有する塩である。適当な金属化合物を添加することによって、溶解度の高い塩の溶液から溶解度の低い金属塩を沈殿させることができる。本発明の塩は、特定の有機酸(例えば、有機カルボン酸)および無機酸(例えば、アルキルスルホン酸またはハロゲン化水素酸)の、本発明化合物上の酸性中心または塩基性中心(例えば、本発明化合物のピリミジン塩基類似体上の塩基性中心)への酸付加から形成され得る。金属塩は、Na+、Li+、K+、Ca++又はMg++を含有する塩を含む。他の金属塩は、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、カドミウム、ビスマス、ヒ素、または亜鉛イオンを含み得る。
【0093】
本発明化合物の塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムおよび第四アンモニウムイオンなどの適切なカチオンと、本発明のポリマーまたはモノマー中に存在し得るリン酸またはホスホン酸基の酸アニオン部分との組合せを含み得る。
塩は、選択された酸を含有する水性、水性-アルコールまたは水性-有機溶液中に遊離塩基を溶解してから、任意に溶液を蒸発させることを含む標準的な方法によって調製される。遊離塩基は酸を含む有機溶液中で反応し、この場合、塩は通常直接分離するか、溶液を濃縮することができる。
【0094】
適切なアミン塩は、安定な塩を形成するのに十分な塩基性を有するアミン、通常、トリアルキルアミン(トリプロピルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン)、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-βフェネチルアミン、エフェナミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、およびジシクロヘキシルアミンを含む毒性の低いアミンを含む。
【0095】
塩は、例えば、酸を塩基性中心、一般的にはアミンに添加することによって調製される有機スルホン酸または有機カルボン酸塩を含む。例示的なスルホン酸は、C6-16アリールスルホン酸、C6-16ヘテロアリールスルホン酸およびC1-16アルキルスルホン酸、例えば、フェニルスルホン酸、α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、(S)-カンファースルホン酸、メチル(CH3SO3H)、エチル(C2H5SO3H)、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチルおよびヘキシルスルホン酸を含む。例示的な有機カルボン酸は、C1-16アルキル、C6-16アリールカルボン酸およびC4-16ヘテロアリールカルボン酸、例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、ニコチン性、および2-フェノキシ安息香酸を含む。
【0096】
本発明の塩は、無機酸、例えば、HF、HCl、HBr、HI、H2SO4、H3PO4、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3およびNaClO3から調製された塩を含む。Ca++、Mg++、Li+、Na+、またはK+などのカチオンと共に任意に存在する適切なアニオンは、ヒ酸塩、ギ酸亜ヒ酸塩、ソルビン酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過ヨウ素酸塩、重クロム酸塩、グリコデオキシコール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩、デスオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロリトコール酸塩、テトラホウ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、スルファミン酸塩、次亜硫酸、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、CN-、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ピクリン酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、ホウ酸塩、メタホウ酸塩、タングステン酸塩、および尿酸塩を含む。
【0097】
塩はまた、1つ以上のアミノ酸を有する本発明化合物の塩を含む。多くのアミノ酸、特にタンパク質成分として見出される天然に存在するアミノ酸が適切であるが、アミノ酸は通常、塩基性または酸性基(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはグルタミン酸)または中性基(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、イソロイシン、またはロイシン)を含む側鎖を有するものである。
【0098】
本発明の組成物は、それらの非イオン化および双性イオン形態の化合物、ならびに水和物の場合のように化学量論量の水との組合せを含む。
本発明の化合物(式Iの化合物)の立体異性体は、説明から明らかなように、いずれかまたはすべての非対称原子において濃縮されたまたは分解された光学異性体を含む。ラセミ混合物およびジアステレオマー混合物の両方、ならびに個々の光学異性体は、それらの鏡像異性体またはジアステレオマーパートナーを実質的に含まないように単離または合成することができ、これらは全て本発明の範囲内である。キラル中心は、本発明の化合物において、例えば、RおよびXに見出すことができる。
【0099】
本明細書において使用されるように、「自然免疫」は、対象における非特異的免疫防御機構に典型的に関連する1つ以上の成分を指す。これらの成分は、代替補体経路(例えば、B因子、D因子およびプロパージン);NK細胞、食細胞(単球、マクロファージ)、好中球、好酸球、樹状細胞、線維芽細胞;抗微生物化学物質(例えば、デフェンシン);物理的障壁-皮膚、粘膜上皮;および特定のインターロイキン、ケモカイン、およびサイトカインを含む。自然免疫は、細胞内寄生虫感染(例えば、白血球感染、肝臓感染)、および他の感染(例えば、リンパ節感染)に対する抵抗力において役割を果たす。本明細書において記載される式Iの化合物または方法による自然免疫機構の増強は、いくつかの病原体(例えば、マイコバクテリア、またはリステリアなどの細胞内細菌)が阻害するファゴリソソームの融合または移動を増強し得る。
【0100】
本明細書において使用されるように、CD分子、特異的免疫細胞サブセット、免疫応答などへの言及は、一般に、ヒトにおいて見出される分子、細胞などに適用される命名法を使用する。他の種におけるこのような分子、細胞などの類似体または対応物は、異なる命名法を有し得るが、本発明に含まれる。様々なCD分子および免疫細胞サブセットの命名法および機能の記載は、科学文献に記載されるとおりである。ヒト患者の文脈におけるTh0、Th1またはTh2細胞への言及およびTh1またはTh2免疫応答への言及は、マウスTh0、Th1またはTh2免疫細胞または応答のヒト対応物を指す。レビューについては、例えば、Carli,M.ら、「ヒトTh1およびTh2細胞:機能特性、発生調節および自己免疫における役割(HUMAN THl AND TH2 CELLS: FUNCTIONAL PROPERTIES, REGULATION OF DEVELOPMENT AND ROLE IN AUTOIMMUNITY)」、《自己免疫(Autoimmunity)》,18(4),301-308(1994)を参照する。
【0101】
「免疫抑制分子」とは、シクロスポリン、シクロヘキサミド、マイトマイシンC、アドリアマイシン、タキソール、アンホテリシンBなどの分子を意味する。これらの分子は、免疫系に対して毒性を有する傾向があり、直接的または間接的に免疫抑制、すなわち、分裂細胞に対して毒性を有するか、または免疫をダウンレギュレートすることができる。
【0102】
「ステロイド受容体」は、遺伝子産物、一般的にはリガンド、例えば天然ステロイドまたは式I化合物などのその類似体、例えば結合できるタンパク質モノマーまたはダイマーを意味する。ステロイド受容体はオーファンステロイド受容体を含む。オーファンステロイド受容体は、天然のリガンドまたは生物学的機能が少なくとも部分的に未知であるタンパク質である。本明細書において使用されるように、ステロイド受容体は、ホモ二量体(例えば、SXRおよび(CARβ)2)、およびヘテロ二量体(例えば、PXR-CARβまたはRXR-CARβ)を含む。ステロイド受容体はまた、PXR受容体のアイソフォーム(例えばPXR.1およびPXR.2)、およびステロイド受容体のホモログ(例えば、MB67として知られるCARβのホモログ)を含む。アイソフォームは一般的には1つの遺伝子由来の核RNAの異なるスプライシング経路によって生成されるが、ホモログは一般的にはステロイド受容体遺伝子の別個のコピーであり、ここで、遺伝子コピーは参照ステロイド受容体遺伝子産物と比較して比較的小さな違いしかコードしない。このような違いは、ステロイド受容体構造の二量体化領域とステロイド結合領域以外の領域に見られることが多い。通常、アイソフォームおよびホモログは、参照遺伝子産物またはステロイド受容体と同一または類似のリガンドに結合する。ステロイド受容体は、ヒトまたは動物由来のものであってもよく、例えば、任意の霊長類、げっ歯類(マウスを含む)、鳥類、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、またはネコ種のいずれかの種、または本明細書の他の箇所または本明細書に引用される参考文献に記載される種のいずれかのグループ(例えば、ファミリーまたは属)内のいずれかの種の細胞、組織、または細胞または組織に由来するcDNA発現ライブラリーから得られる。
【0103】
本発明の一実施形態において、BEAは、約0.01~200μm、または約0.1~10μm、または約0.5~5μmの平均粒子サイズに粉砕される。したがって、粉砕されたBEAの平均粒子サイズまたは直径は、比較的小さく、例えば、約0.03~2.0μmまたは約0.1~1.0μmであってもよく、またはいくらか大きく、例えば、約0.5~5.0μmまたは約1~5.0μmであってもよい。粉砕されたBEAは、ヒトまたは獣医学的使用のための固体製剤、非経口およびエアロゾル製剤の調製に適している。粉砕された物質は、水および賦形剤へのBEAの懸濁を容易にし、固体または固体賦形剤との混合を容易にする。
【0104】
被験者にBEAを純粋な化合物として投与することは可能であるが、通常は固形製剤として供給される。製剤は、一般的には、約10~1000mgまたは通常約25~400mgのBEAを含む、経口、頬側、または舌下投与用の単位投与量、例えば、錠剤、カプセル、またはロゼンジを調製するために使用される。あるいは、実施形態は、非経口(例えば、皮下、真皮下、筋肉内、腹腔内)およびエアロゾル投与のための液体製品を含む。非経口およびエアロゾル投与用のこのような製品は、一般的には、約10~170mg/mL、通常は約20~110mg/mLまたは約30~100mg/mLの濃度のBEA、および任意に1種以上の塩、緩衝液または静菌剤または防腐剤(例えば、NaCl、BHA、BHTまたはEDTA)を含む。
【0105】
一般に、本発明の組成物および製剤中に存在する式Iの化合物は、賦形剤と共に水に懸濁される。しかしながら、いくつかの実施形態、例えば、過渡組成物において、式Iの化合物は、賦形剤と共に水中に懸濁され、次いで、凍結乾燥されて水分散性乾燥組成物を生じる。
【0106】
ヒトまたは動物への式I化合物の非経口送達に適した本発明の組成物および製剤は、一般的には、2つ、3つまたはそれ以上の賦形剤を含む。例示的な実施形態は、(1)プロピレングリコール、PEG200、PEG300、エタノールおよび安息香酸ベンジルの任意の2つ、3つまたは4つ;および(2)プロピレングリコール、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400および安息香酸ベンジルの任意の2つ、3つまたは4つを含む。
【0107】
Rは、化学的および/または酵素的に、多くの場合、生理学的条件下で加水分解可能な部分(例えば、エステル、チオエステル、炭酸塩、アミノ酸、ペプチド、および/またはカルバメート)を含む。このような部分は独立して選択される。一般的には、これらの部分は、ステロイド核のR位置において-OHを生じる。式Iの化合物の実施形態は、Rが加水分解可能な部分(例えば、エステル、チオエステル、炭酸塩、アミノ酸、ペプチドまたはカルバメート)であるものを含む。
【0108】
代謝物に関して、本発明の範囲内にあるのは、本明細書に記載される化合物のインビボ代謝物であり、そのような生成物が先行技術に対して新規かつ非自明である程度までである。そのような生成物は、例えば、酵素的または化学的プロセスによる、投与された式Iの化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などから生成し得る。したがって、本発明は、本発明の化合物を対象(例えば、ヒト、げっ歯類、または霊長類)と、その代謝産物を産生するのに十分な期間接触させることを含む方法によって生成される新規かつ非自明な化合物を含む。そのような生成物は、一般的には、本発明の放射性標識された(例えば、14C、3H、131I、32P、35Sまたは99Tc)化合物を調製し、それを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kgより大きい)で非経口的にラット、マウス、モルモット、霊長類、またはヒトなどの動物に投与し、代謝が起こるのに十分な時間(一般に約30秒~30時間)を与え、その変換生成物を尿、血液または他の生物学的サンプルから単離することによって同定される。これらの生成物は標識されているため、単離しやすくなる(他の生成物は、代謝物に残っているエピトープに結合できる抗体を使用して単離される)。代謝産の構造は、従来の方法(例えば、MS、HPLCまたはNMR分析)で決定される。一般に、代謝物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。変換生成物は、他の方法でインビボで見出されない限り、それら自体の治療活性を有さない場合であっても、本発明の化合物の治療投薬のための診断アッセイにおいて有用である。
【0109】
製剤および製剤を調製するための組成物は、本発明において提供される。活性成分を単独で投与することは可能であるが、それらを医薬製剤として供給することは通常である。本発明の製剤は、獣医学用およびヒト用の両方の使用のために、少なくとも1つの活性成分、すなわち式Iの化合物を、そのための1つ以上の許容される賦形剤および任意に他の治療用成分と共に含む。
【0110】
本発明の別の態様は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物に関する。1つ以上の式I化合物(「活性成分」とも呼ばれる)は、治療される状態に適した任意の経路によって投与される。水性懸濁液製剤および他の式I化合物製剤の適切な経路は、経口、直腸、鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣、非経口(皮下、筋肉内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)、およびエアロゾルを含む。一般に、水性懸濁液製剤は、非経口経路によって送達される。本発明の間欠投与方法などの他の態様において、式I化合物は、水性懸濁液製剤、乾燥固形製剤(経口製剤、局所製剤、または非経口製剤)として存在し得る。好ましい経路は、例えば、対象の病理学的状態または体重、または式I化合物による治療または状況に適した他の治療に対する対象の応答によって変化し得ることが理解される。
【0111】
製剤は、前述の投与経路に適したものを含む。製剤は、好都合には、単位投与形態で供給でき、そして薬学の分野において周知の任意の方法によって調製され得る。技術、賦形剤および製剤は、一般に、例えば、Nemaら、《レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)》,マック出版社(Mack Publishing Co.)、ペンシルバニア州イーストン、第17版、《製薬科学技術のPDAジャーナル(PDA J.Pharm.Sci.Tech.)》、1997 51:166-171に見出される。本発明の製剤を調製する方法は、活性成分を賦形剤と結合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体賦形剤または微細に分割された固体賦形剤またはその両方と均一かつ密接に結合させ、次いで、適切であれば、製品を成形することによって調製される。
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの個別の単位として、粉末または顆粒として、水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として、または水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして調製される。活性成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして供給され得る。
【0112】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分と共に、圧縮または成形によって製造される。圧縮錠剤は、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤または分散剤と混合された、粉末または顆粒などの自由流動形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末活性成分の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は、任意にコーティングまたはスコアリングされてもよく、任意に、そこからの活性成分の緩徐または制御された放出を提供するように調製される。
【0113】
眼への局所投与に適した製剤はまた、適切な賦形剤、特に中性に近いpH値(例えば、約pH6~8)で1つ以上の電荷を含む活性成分の水性溶媒中に活性成分を懸濁させた点眼薬を含む。活性成分は、通常、そのような製剤中に、約0.5~20%w/w、一般的には約1~10%w/w、多くの場合は約2~5%w/wの濃度で存在する。
【0114】
口腔内への局所投与に適した製剤は、活性成分をフレーバーベース(通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント)中に含むロゼンジと、活性成分を不活性ベース(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア)中に含むトローチと、活性成分を適切な液体賦形剤中に含む洗口剤とを含む。
【0115】
直腸投与用の製剤は、適当な基剤(例えば、ココアバター又はサリチル酸塩を含む)を有する坐剤として供給することができる。
肺内または鼻腔内投与に適した製剤は、例えば、0.01~500ミクロンの範囲の粒子サイズ(0.1ミクロンまたはその他の増分、例えば、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6、7、8、9、10、20、25、30、35、50、75、100などの0.01~500ミクロンの範囲の平均粒子サイズを含む)を有し、これは鼻腔からの急速吸入または口腔からの吸入により肺胞嚢に到達するように投与される。適切な微粉化製剤は、活性成分の水性または油性の溶液または懸濁液を含む。エアロゾル、乾燥粉末または錠剤の投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製することができ、本明細書に記載されるようなウイルスまたは他の感染症に対する治療または予防にこれまで使用された化合物などの他の製剤と共に送達することができる。このような製剤は、例えば、経口、非経口(i.v.、i.m.、s.c.)、局所、エアロゾル、または頬側経路によって投与されてもよい。
【0116】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて適切であることが当技術分野で知られているような賦形剤を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として供給することができる。
非経口投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤および製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性の滅菌注射溶液と、懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液とを含む。
【0117】
製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで供給され、使用直前に無菌の液体賦形剤、例えば、注射用の水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液および懸濁液は、先に記載した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製される。単位用量製剤は、本明細書に記載されるような1日投与量または単位1日サブ投与量、あるいはそれらの適切な割合の活性成分を含有する製剤である。
【0118】
特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤のタイプに関して当技術分野で慣用の他の薬物または賦形剤を含むことができ、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含み得ることを理解されたい。
【0119】
本発明はさらに、上記に定義された少なくとも1つの活性成分およびそのための獣医用賦形剤を含む獣医学用組成物を提供する。獣医学用賦形剤は、組成物を投与する目的に有用な材料であり、そうでなければ獣医学分野で不活性であるかまたは許容され、活性成分と適合性がある固体、液体または気体の材料であり得る。これらの獣医学用組成物は、経口、非経口または任意の他の所望の経路によって投与することができる。
【0120】
本発明の製剤は、活性成分を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を含み、ここで、該活性成分の放出は、より少ない頻度での投薬を可能にするか、または所与の活性成分の薬物動態プロファイルまたは毒性プロファイルを改善するように制御および調節される。
【0121】
活性成分の有効用量は、少なくとも、治療される状態の性質、毒性、化合物が予防的に(より低い用量で)使用されているか、または活性感染または状態に対して使用されているか、伝達方法、および医薬製剤に依存し、そして、臨床医は、従来の用量漸増試験を用いて決定する。約0.05~約30mg/kg体重/日と予想される。例えば、局所送達の場合、約70kg体重の成人ヒトに対する1日の候補用量は、約1mg~約500mg、一般に約5mg~約40mgの範囲であり、単回または複数回の投与または投与部位の形態をとり得る。
【0122】
実施形態は、式Iの化合物(例えば、BEAまたはそのエステル、カルバメート、炭酸塩、アミノ酸またはペプチド)を含むリポソームまたは脂質複合体を含有する製剤を含む。このような製剤は、既知の方法、例えば、米国特許第4427649号、第5043165号、第5714163号、第5744158号、第5783211号、第5795589号、第5795987号、第5798348号、第5811118号、第5820848号、第5834016号、および第5882678号に従って調製される。リポソームは場合により、追加の治療剤、例えば、アンホテリシンB、シス-プラチン、アドリアマイシン、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体、例えば本明細書において記載されたものの1つを含有する。リポソームを含む製剤は、任意の標準的な経路、例えば、経口、エアロゾルまたは非経口(例えば、s.c.、i.v.またはi.m.)によって対象に送達することができる。
【0123】
治療適用を示す。式Iの化合物、またはインビボでの加水分解または代謝によってこれらの化合物から生成される生物学的に活性な物質は、多くの臨床および非臨床適用を有する。これらの化合物は、一般に、Th1免疫応答を増強するために、またはTh2免疫応答を低減させるために使用される。本明細書において使用されるように、Th1またはTh2免疫応答への言及は、Th1およびTh2の用語が由来するマウス系において観察されない、一般的に哺乳動物において観察される応答を意味する。したがって、ヒトにおいて、Th1細胞はケモカイン受容体CXCR3およびCCR5を優先的に発現し、一方、Th2細胞はCCR4分子および少量のCCR3分子を優先的に発現する。
【0124】
式Iの化合物の他の使用には、化合物を病的状態に苦しむ対象に投与することが含まれる。治療は、病原体(ウイルス、細菌、真菌)による感染、悪性腫瘍、望ましくない免疫応答、すなわち、病理および/または症状を引き起こす免疫応答(例えば、自己免疫状態またはアレルギー)、または増殖低下状態(例えば、正常な組織成長または障害された組織成長、創傷治癒または熱傷治癒)、または免疫抑制状態(例えば、所望の応答の欠如および/または所望の応答の不十分な程度によって特徴付けられる状態)などの病的状態に関連する状態および/または症状の原因を治療または改善し得る。
【0125】
多くの癌または悪性腫瘍は、望ましくないTh2免疫応答または不十分なTh1応答に関連する。不十分なTh1免疫応答は、悪性細胞が免疫監視機構から逃れる能力に影響を与える可能性がある。これらの病態には、非小細胞肺癌、気管支原性癌、腎細胞癌または腎癌、リンパ腫、神経膠腫、黒色腫、膵臓または胃腺癌、ヒトパピローマウイルス関連子宮頸部上皮内腫瘍、子宮頸癌、肝細胞癌および皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉腫、セザリー症候群)を含む。
【0126】
これらの実施形態のいくつかにおいて、対象の過剰増殖または悪性状態は、1つ以上の病原体と関連し得る。例えば、HCVまたはHBVに関連する肝細胞癌、HIV-1またはHIV-2に関連するカポジ肉腫、HTLV Iに関連するT細胞白血病、エプスタイン-バーウイルスに関連するバーキットリンパ腫、またはパピローマウイルスに関連する乳頭腫または癌(HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV45)、またはヘリコバクターピロリ感染に関連する胃腺癌または胃MALTリンパ腫である。他の実施形態において、式Iの化合物は、病原体、例えば、黒色腫、または咽喉、食道、胃、腸、結腸、卵巣、肺、乳房もしくは中枢神経系で発生する癌または前癌に関連しないと思われる過剰増殖状態を有する対象に投与される。
【0127】
例示的な実施形態において、黒色腫または黒色腫前駆病変に罹患しているヒト患者は、2~20%のBEA(w/w)を含有する局所クリーム製剤で治療される。このクリームは、原発性母斑(異形成母斑または一般的な後天性母斑)、原発性皮膚黒色腫、続発性皮膚黒色腫、および母斑または黒色腫の周囲の皮膚に塗布される。実際に使用する際には、クリームを塗布する前に、治療されるべき領域を石鹸で洗浄するか、またはアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)で拭く。約0.1~0.4gのクリームを、治療部位の大きさに応じて、治療部位または病変部に1日1回または2回、約10~20日間塗布する。クリームは、患者が通常の活動を再開する前に約15~30分間、塗布部位で乱さないようにしておく。母斑および黒色腫の進行は大多数の患者で抑制され、一部の病変では有意な退行が観察される。初回治療の後、最初の治療ラウンドで説明したのと同じ用量を用いて、1日おきに少なくとも1~4ヶ月間、製剤を投与する。これらの患者に対しては、前駆病変または黒色腫を治療するための標準治療、例えば、ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミドまたはニトロソ尿素(例えば、BCNU、CCNU)が、患者の医師の推奨に従って、また患者の情報に基づく承認を得て、任意に開始または継続される。腫瘍または前駆病変が外科的に除去され、その部位が十分に治癒した場合、患者は任意に、その部位および隣接する周囲の領域において局所製剤を1日おきに少なくとも1~4ヶ月間使用し続ける。これらの実施形態のいくつかにおいて、式Iの化合物は、例えば、それ自体が新規化合物である式Iの化合物については、経口組成物または製剤として毎日連続的に投与される。BEAはまた、任意に、例えば、悪性黒色腫の場合、1日おきに1~5mg/kg/日を約1週間~約4ヶ月間送達するために、例えば、以下の実施例に記載された製剤を用いて全身的に投与される。
【0128】
別の実施形態において、MスパイクまたはMタンパク質に基づく多発性骨髄腫のマウスモデルは、臨床試験において抗多発性骨髄腫薬の有効性の予測因子として示される。(Chesi、M.ら,(2012))。BEAは、このインビボモデル(実施例11)においてMスパイクを40%減少させ、BEAが多発性骨髄腫の治療に有効であることを示す。
【0129】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物製剤は、自然免疫を調節することによってTBおよびMAP関連疾患を治療するのに有効であることがインビボモデルにおいて証明される。
【0130】
BEAは、オートファジーおよび相互に連結した細胞内シグナル伝達経路を含む基本的な生物学的シグナル伝達経路に作用するため、一見異なる疾患プロセスを伴う一連の疾患に有益な効果を発揮する。調節不全で非生産的炎症の制御を再確立しながら、自然免疫を刺激するBEAの能力は、その有効性の鍵となる。多くの急性および慢性の感染性、腫瘍性および特発性の慢性炎症性疾患は、細胞内および細胞外の両方で、オートファジーの低下およびシグナル伝達経路の調節異常に関連する免疫シグナル伝達の調節異常と関連する。
【0131】
一実施形態において、ホルモンとして作用するBEAは、宿主全体で異なる細胞型において応答を誘発し、その結果、免疫ネットワークの「動的恒常性」が回復する。この用語は、BEAが自然免疫を増強し、非生産性炎症をダウンレギュレートし、Th1細胞媒介性免疫プロセスを促進し、パターン認識受容体(PRR)経路を介して解釈される微生物病原体関連分子パターン(PAMPS)および腫瘍性危険関連分子パターン(DAMPS)からの脅威に対してより効果的に応答する能力によって証明されるように、BEAが免疫系の機能を正常に回復させることを意味する。
【0132】
別の実施形態において、適応免疫系の下流シグナル伝達に影響を及ぼすプロ抗原提示細胞としての樹状細胞およびマクロファージに対するBEAの影響は、免疫動的恒常性を回復する上でのその全体的な全身効果の中心である。
【0133】
ヨーネ菌(MAP)は、抗酸菌染色の小さな棒状菌である。クローン病、関節リウマチ、ブラウ症候群、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症およびサルコイドーシスと関連する。また、牛や他の反芻動物にヨーネ病を引き起こす。
さらに別の実施形態において、BEAを使用して、MTBに感染したマウスの細菌増殖を阻害し、TNF-α、IFN-γおよびiNOSの発現を増加させることができる。R.Hernandez-Pandoら(2005)を参照する。
【0134】
別の実施形態において、BEAは、本発明の実施例5に記載された炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルにおいて確認されたように、MTBだけでなく、クローン病、関節リウマチ、ブラウ症候群、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症およびサルコイドーシス、ならびにヨーネ病を治療するために使用することができる。
【0135】
不十分なTh1免疫応答はウイルス感染と関連することがよくある。ウイルス感染は、DNAウイルスまたはRNAウイルス、例えば、ヘルペスウイルス、ヘパドナウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、トガウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、フラビウイルス、ライノウイルス、パピローマウイルスおよび/またはペスチウイルスから生じ得る。本明細書において使用されるように、レトロウイルスは、ヒトおよび動物ウイルス、例えば、HIV-1、HIV-2、LAV、ヒトT細胞白血病ウイルスI(「HTLV I」)、HTLV II、HTLV III、SIV、SHIV、FIV、FeLVを含む。ウイルス感染を確立し得る追加のウイルス(その遺伝子群、クレード、分離株、株などを含む)は、ヒトC型肝炎ウイルス(「HCV」)、ヒトB型肝炎ウイルス(「HBV」)、ヒトA型肝炎ウイルス(「HAV」)、アヒル肝炎ウイルス、ウッドチャック肝炎ウイルス、ヒト(「HPV」、例えば、HPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31、HPV45)または動物乳頭腫ウイルス、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス1(「HSV-1」)、単純ヘルペスウイルス2(「HSV-2」)、ヒトヘルペスウイルス6(「HHV-6」)、ヒトヘルペスウイルス8(「HHV-8」)、デングウイルス(1~4型)、西部馬脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルスおよびウシウイルス性下痢ウイルスを含む。
【0136】
免疫不均衡または過剰なTh2免疫応答が関与する他の病状は、SLE(全身性紅斑性狼瘡)、骨粗鬆症、多発性硬化症、重症筋無力症、グレーブス病、ダニ関連潰瘍性皮膚炎、関節リウマチおよび骨関節炎などの自己免疫疾患を含む。過剰なTh2免疫応答はまた、加齢、アレルギーおよび炎症状態(例えば、嚢胞性線維症患者におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アトピー性喘息、アレルギー性呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気道過敏性における上皮下線維症、慢性の副鼻腔炎、通年性アレルギー性鼻炎、クローン病(局所腸炎)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、線維化肺胞炎(肺線維症)など)に関連する望ましくない症状または病理、例えば、疲労、疼痛、発熱または感染症の発生率の増加と関連する。
【0137】
過剰なTh2免疫応答(例えば、疲労、疼痛、発熱または感染症発生率の増加)に関連する、またはそれに一致する症状を伴う他の臨床適応症は、統合失調症、急性脊髄炎、サルコイドーシス、火傷、外傷(例えば、骨折、出血、手術)および異種移植に対する免疫応答である。これらすべての疾患の病態の少なくとも一部に共通の基礎的な免疫成分により、単一の薬物を効果的に使用して疾患を治療し、不十分なTh1応答または過剰なTh2応答に関連する1つ以上の症状を治療することができる。不十分なTh1応答または望ましくないTh2応答が存在するすべての状態において、本明細書に記載される方法に従って有効量の式I化合物を投与することによって、その状態に関連する1以上の症状の改善が達成される。したがって、本明細書に記載されるような製剤および投与経路を使用して、式I化合物を断続的に投与することができる。
【0138】
いくつかの適用において、式I化合物は、ウイルスまたは寄生虫(マラリア)などの病原体の複製、発生または細胞間伝達を直接的および/または間接的に妨害することができる。対象の臨床状態における改善は、感染性因子または悪性細胞に対する直接的な影響から生じる可能性がある。細胞複製に対する妨害は、寄生虫または感染細胞が正常な複製または代謝のために使用する1つ以上の酵素、例えば、NADPHの細胞生成に影響を及ぼすグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの阻害から生じる可能性がある(例えば、Raineriら、《生化学(Biochemistry)》1970 9:2233-2243参照)。この影響は、いくつかの式I化合物が有し得る細胞増殖静止効果に寄与する可能性がある。細胞酵素の発現または活性の調節はまた、病原体(例えば、HIVまたはマラリア寄生虫)の複製または発生、または新生物細胞の複製または発生を阻害し、例えば、血管新生を阻害することができる。臨床的改善はまた、一般的に、増強されたTh1免疫応答によってもたらされる。
【0139】
BEAの治療的使用は、免疫系に対する影響から生じる。BEAはマクロファージのオートファジーを促進し、自然免疫を強化し、非生産的炎症を調節し、免疫応答をTh1応答(IFN-γ、細胞性免疫経路)に偏らせる。免疫のこれらの基本的な側面に影響を及ぼす能力は、感染と炎症の調節不全を伴う疾患プロセスに役立つ。一般的に、BEAは、外傷、感染症(ウイルス、細菌、原虫、真菌および蠕虫)、新生物、代謝、自己免疫、神経炎症性および炎症性血管障害の治療に役立つ。具体的な適応症は、結核菌および非結核性抗酸菌、クラミジア感染症、細菌性肺炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、関節リウマチ、非アルコール性脂肪性肝疾患、多発性硬化症およびアルツハイマー病を含む。本質的に、BEAは、炎症および調節不全免疫を伴う任意の疾患に役立つ可能性がある。
【0140】
関連する実施形態は、BEA粒子、およびヒトの薬学的使用または獣医学的使用に適した1以上の賦形剤を含む。別の関連する実施形態は、非経口投与またはエアロゾル投与のためのBEA粒子および1つ以上の賦形剤の水性懸濁製剤および水分散性乾燥組成物を含む。BEA粒子のサイズは、0.01μm~100μm、好ましくは0.05μm~10μm、より好ましくは0.01μm~5μmである。
【0141】
BEAは水に極めて不溶性であるため、注射可能な製剤は非水溶液として製造されることがよくある。水の存在下でのBEAの化学的不安定性およびエピマー化のため、非水溶液は、それをより安定させるためには、非常に乾燥していなければならず、含水量は、一般に、0.1%を超えてはならない。製剤の滅菌、分注および包装は低温下で行わなければならない。これらの製剤も低温で保存しなければならない。(Ahlem,C.ら、US2003060425A1参照)。しかしながら、極端に低い含水量であっても、下記の実施例2に示すように、製剤は依然として安定ではない。
【0142】
本発明の製剤は、非経口およびエアロゾル投与用の水性懸濁液である。調製中および保存中に溶媒として水を使用する。文献の教示とは対照的に、BEAのこの水性懸濁液製剤および水分散性乾燥組成物は、その安定性研究に基づいて安定である(以下の実施例2に示されるように)。
【0143】
非水性BEA製剤は、有機溶剤を使用しているため、より強い疼痛および注射部位に対する刺激を引き起こす。原薬(BEA)は、注射直後に溶液から沈殿する。組織中に生じたBEA固体も激しい痛みおよび注射部位に対する刺激を引き起こす。Stickney D.R.ら、(2007);Reading C.ら、(2006);Frincke J.M.ら(2007);Ahlem,C.ら、US2003060425A1を参照する。
【0144】
米国特許第2003060425A1の実施形態1において報告された非水性製剤の安定性試験において、水が存在する場合には、わずか0.1%であっても安定ではなく、かつ、分解しやすいことが見出される。本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤および水分散性乾燥組成物は、非水性溶媒の代わりに、調製および貯蔵のプロセスにおいて溶媒として水を使用する。本発明の実施例2に示されるように、含水率が高い(>90%)にもかかわらず、顕著な安定性を示した。
【0145】
US2003060425A1の報告された非水性製剤と比較して、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤は、注射部位に対する刺激を引き起こさず、身体により十分に吸収される。患者の痛みを大幅に軽減し、患者のコンプライアンスを向上させる。それはまた、本発明の実施例4に示されるように、長期使用にとって極めて重要である組織への損傷を排除または軽減させる。
【0146】
DSS誘発ラット大腸炎モデルにおいて、本発明のBEA粒子の水性懸濁製剤は、明らかな毒性を伴わない優れた効果を示した。血便のある動物の数を大幅に減少させ,疾患により短縮する結腸の長さを増加させた。この製剤で治療されたグループの体重の有意な減少はなかった。デキサメタゾンの標準治療よりも効果が高く、毒性も少ない。血液化学分析は、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤が白血球を大幅に減少させたことを示し、これは試験薬物が炎症の治療に有効であることを示した。マクロファージの細胞数が大幅に増加し、験薬物が免疫不全に有効であることを示した。IL-6レベルを大幅に低下させ,IL-6/TNF-αレベルを改善したことから、Th1応答の強化およびTh2応答の抑制、すなわち免疫環境の改善が示唆された。免疫器官重量分析によれば、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤は、胸腺の萎縮には何ら影響を及ぼさないが、脾臓の肥大を有意に抑制し、本発明の実施例5に示されるように、該試験薬物が炎症の治療に有効であることを示す。
【0147】
予備的イヌPK研究は、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤が、報告された非水性製剤よりもはるかに高い血中BEA暴露およびより長い半減期を有し、本発明の実施例6に示されるように、より良好な特性および生物学的利用能を有することを示す。
【0148】
インビトロ研究において、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤は、本発明の実施例7に示されるように、マクロファージの桿菌を死滅させる能力を改善し、細胞内生存桿菌の数を大幅に減少させた。
【0149】
マウス結核菌モデルにおける並行有効性研究において、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤は、十分に許容され、報告された非水性製剤と同等またはより良好な有効性をインビボで示す。なお、本発明の実施例8に示されるように、エアロゾル投与(気管内)は非経口投与(皮下)よりも効果が優れる。
【0150】
全体として、本発明のBEA粒子の水性懸濁液製剤および水分散性乾燥組成物は、水において異常で予想外の安定性を有する。常温で保存可能である。PKなどの性質を大幅に向上させる。注射部位に刺激を与えないか、またはほとんど与えない。また、報告されされた非水性製剤と比較して、インビボおよびインビトロの両方においてより優れた有効性を示した。結果は、それが免疫調節剤として作用することを示す。Th1応答を強化し、Th2応答を減少させる。それはマクロファージを刺激する。それは抗炎症作用を示す。それは、自然免疫を向上させ、免疫不全を軽減させる。
【0151】
本発明の一実施形態において、式I化合物の水性懸濁液製剤および水分散性乾燥注射可能組成物は水を含む。本発明の別の実施形態において、BEAの水性懸濁液製剤および水分散性乾燥注射可能組成物は水を含む。本発明の一実施形態は、BEA粒子の水性懸濁液製剤および水分散性乾燥注射可能組成物を提供する。その特徴は、これらの組成物および製剤に、以下のものを含み、
(a)BEA粒子:本発明において、BEA粒子の90%が15μm未満であり、好ましくは10μm未満であり、より好ましくは5μm未満である。
(b)界面活性剤:組成物の界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール(PEG)-8-オクチル酸/デカン酸およびポリエチレングリコール(PEG)ヒドロキシステアリン酸エステル、卵黄レシチン、大豆レシチン、オレイン酸ナトリウムおよび胆汁酸塩の1つ以上の混合物である。ポロキサマー、ポリソルベート、ポリエチレングリコール(PEG)ヒドロキシステアリン酸エステルが好ましい。
(c)懸濁剤:懸濁剤は、セルロース誘導体、例えば、メチHルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、アルギン酸塩、アカシア、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、またはそれらの混合物の1つ以上の混合物である。
(d)他の医薬品賦形剤:組成物は、他の医薬品賦形剤、例えば、注射用水、pH調節剤、浸透圧調節剤、凍結乾燥保護添加剤、封鎖剤、抗酸化剤、保存剤、および1つ以上の他の医薬品成分を含み得る。
【0152】
好ましくは、浸透圧調節剤は、グルコース、スクロース、トレハロース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリンおよび塩化ナトリウムのうちの1つ以上であってもよく、凍結乾燥保護添加剤は、グルコース、ソルビトール、マンニトール、乳糖、スクロース、トレハロース、フルクトース、グリシンおよびアルブミンのうちの1つ以上であってもよく、pH調節剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸およびその塩のうちの1つ以上であってもよく、封鎖剤は、エチレンジアミン四酢酸およびその塩のうちの1つ以上であってもよく、抗酸化剤は、tert-ブチルアルコール、フェノール、クレゾールおよび安息香酸塩で架橋されたエチレンジアミン四酢酸塩、ベンジルアルコール、p-ヒドロキシ安息香酸エステルのうちの1つ以上であってもよく、防腐剤は、ビタミンC、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび他のアミノ酸l-システインであってもよい。
【0153】
該組成物は、注射、好ましくは筋肉内注射または皮下注射に使用することができ、筋肉内注射がより好ましい。該組成物は、エーロゾル投与にも使用することができる。単回投与または複数回投与のタイプは、組成物の通常のタイプであり、その単回投与は、通常のように3~500mg、好ましくは10~200mgのDEAを含有する。組成物は注射製剤または凍結乾燥製剤に調製することができ、後者が好ましい。
【0154】
該組成物の注射可能な懸濁液は、0.3~25%(w/v)のBEA、0.01~5%(w/v)、好ましくは0.1~1%(w/v)の界面活性剤、0.01~3%(w/v)、好ましくは0.05~0.8%(w/v)の懸濁剤を含有し、また、浸透圧調節剤、好ましくは塩化ナトリウムまたはデキストロースを含有する。
【0155】
該組成物の凍結乾燥製剤は、3~500mg、好ましくは10~200mgのBEA粒子を含有する注射用滅菌水で希釈した後、臨床に使用することができる。BEA粒子と界面活性剤との比は1:50~500:1、好ましくは1:5~100:1である。BEA粒子と懸濁剤との比は、0.1:10~500:1、好ましくは1:5~100:1である。該組成物は、少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む。
【0156】
本発明はまた、組成物を調製するための3つの方法を提供する。第一の方法は、(a)BEAを適量の溶媒に溶解させ、水を加えて再結晶化させた後、溶媒を除去するステップと、(b)各賦形剤を水に溶解させて賦形剤溶液を調製するステップと、(c)再結晶化されたBEAを賦形剤溶液に分散させるステップと、(d)高圧下で均質化するステップと、(e)充填および密封し、または充填、凍結乾燥および密封するステップとを含む。
【0157】
第二の方法は、(a)各賦形剤を水に溶解させて賦形剤溶液を調製するステップと、(b)BEAを賦形剤溶液に分散させるステップと、(c)高圧下で均質化するステップと、(d)充填および密封し、または充填、凍結乾燥および密封するステップとを含む。
【0158】
第三の方法は、(a)各賦形剤を水に溶解させて賦形剤溶液を調製するステップと、(b)賦形剤溶液中にBEA粒子を分散させ、十分に湿潤するまで連続的に混合するステップと、(c)充填および密封し、または充填、凍結乾燥および密封するステップとを含む。
【0159】
実施例1 製剤および組成物の調製
以下の製剤/組成物を提供して本発明を説明し、16α-ブロモ-3β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン-17-ケトンまたはその水和物(BEA)を含有する注射可能な製剤および組成物の調製に使用される材料および方法を説明する。前記製剤/組成物は決して本発明の範囲を定義するものと解釈されるべきではない。
【0160】
BEA粒子は2つの方法で調製される。第一の方法において、500gのBEA半水和物を10Lの無水エタノールに溶解させ、撹拌しながら40Lの水を溶液に加え、白色の粉末を沈殿させ、濾過し、水で洗浄してから乾燥させてBEA粒子I(467g)を得る。第二の方法において、100gのBEA半水和物をジェットミリングマイクロナイザーで2回微粉化してBEA粒子II(87g)を得る。
【0161】
【表1】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、凍結乾燥させる。
【0162】
【表2】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、凍結乾燥させる。
【0163】
【表3】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、凍結乾燥させる。
【0164】
【表4】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後、117℃で30分間滅菌する。
【0165】
【表5】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後、117℃で30分間滅菌する。
【0166】
【表6】
調製方法:賦形剤をその中に加えて70mLの水に溶解させ、溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後、117℃で30分間滅菌する。
【0167】
【表7】
調製方法:賦形剤を70mLの水に溶解させ、HClで溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0168】
【表8】
調製方法:賦形剤を160mLの水に溶解させ、撹拌しながらBEA粒子Iを得られた溶液に分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0169】
【表9】
調製方法:賦形剤を80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で溶液を4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0170】
【表10】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、溶液(1mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0171】
【表11】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHおよびHClで溶液のpHを約5に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0172】
【表12】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0173】
【表13】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0174】
【表14】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHでpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーにより600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0175】
【表15】
調製方法:賦形剤を約150mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0176】
【表16】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0177】
【表17】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0178】
【表18】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで800バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0179】
【表19】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで400バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0180】
【表20】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0181】
【表21】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で溶液を2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0182】
【表22】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0183】
【表23】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0184】
【表24】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0185】
【表25】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで800バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0186】
【表26】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで400バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0187】
【表27】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0188】
【表28】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、HClで溶液のpHを約7に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0189】
【表29】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0190】
【表30】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0191】
【表31】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、溶液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0192】
【表32】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHおよびHClで溶液のpHを約5に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーを用いて600バールの圧力で4回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0193】
【表33】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、撹拌しながら得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、溶液(1mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0194】
【表34】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後121℃で8分間滅菌する。
【0195】
【表35】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で25分間滅菌する。
【0196】
【表36】
調製方法:賦形剤を約150mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0197】
【表37】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0198】
【表38】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0199】
【表39】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで800バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、凍結乾燥させる。
【0200】
【表40】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで400バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填してから、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0201】
【表41】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0202】
【表42】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0203】
【表43】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0204】
【表44】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0205】
【表45】
調製方法:賦形剤を約160mLの水に溶解させ、撹拌しながら得た溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を200mLに調整し、溶液(2mL)をアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0206】
【表46】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで800バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0207】
【表47】
調製方法:賦形剤を約80mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで400バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0208】
【表48】
調製方法:賦形剤を約70mLの水に溶解させ、NaOHで溶液のpHを約6に調整し、得られた溶液にBEA粒子Iを分散させた後、水を加えて総量を100mLに調整し、高圧ホモジナイザーで600バールの圧力で2回均質化する。得られた調製液(1mL)をそれぞれアンプルに充填し、密封後117℃で30分間滅菌する。
【0209】
実施例2 製剤および組成物の安定性試験
本発明の組成物1~6の製剤およびUS20030060425A1における実施例1の製剤は、それぞれ、60℃で10日間、40℃±2℃、相対湿度75%±5%で30日間保存される。サンプルを取って、BEAおよび関連物質(分解生成物)の濃度を分析する。
【0210】
分析条件は以下のとおりであり、HPLCのクロマトグラフ条件:高速液体クロマトグラフィー:Waters-e2685、移動相:アセトニトリル-水(60/40); クロマトグラフ用カラム:C18,4.6×250mm。
【0211】
検出器:UV、波長:210nm、サンプルサイズ:20μl、流量:1.2ml/min、カラム温度:室温。
BEA含有量の測定:参照物質(BEA標準)の原液を調製し、これを移動相で希釈して標準溶液を調製する。溶液を分析して標準曲線を作成する。サンプルを溶解させて移動相で希釈してBEA濃度を約1mg/mLにする。次にサンプルを分析し、BEAの濃度を外部標準曲線に基づいて計算する。
【0212】
関連物質(分解生成物)の測定:BEA含有量の測定方法に従い、試験溶液を調製する。溶液を分析し、BEAに対する相対濃度に基づいて関連物質の含有量を計算する。
【表49】
結果は、本発明の製剤/組成物1~6の安定性がWO2000056757A1における実施例1の安定性よりも有意に優れることを示す。表2-2に3種類の製剤の分解の程度をまとめる。
【0213】
【表50】
表2-2に示されるように、水分散性BEA組成物については、60℃で10日および40℃で30日におけるBEAの平均変化(組成物/製剤1~3)はそれぞれ0.1%および-1.5%である。水性BEA製剤(組成物/製剤4~6)の変化は、それぞれ-0.7%および-1.4%である。比較すると、同じ研究における非水性BEA製剤(実施例1、WO2000056757A1)は、BEAの変化が-51%と55.7%であるので、前記WO2000056757A1の実施例1の非水性BEA製剤におけるBEAの損失は、本発明の組成物/製剤より34-428倍悪化している。
【0214】
実施例3 粒子サイズの決定
Cremophor EL、レシチン、オレイン酸ナトリウムを界面活性剤として使用し(100バイアル、1mL/バイアル、凍結乾燥)、表3-1の製剤および組成物1の製剤に記載された方法に従ってサンプルを調製する。
【表51】
本発明の組成物1~6の製剤および組成物a~cの比較製剤(組成物1~3の製剤および組成物の比較製剤の凍結乾燥注射可能組成物)中のすべてのサンプルの1滴を、必要に応じて水に懸濁し、次いで顕微鏡で観察すると、3つのマイクロビジョンが検出される。
【0215】
【表52】
粒子サイズの結果は、製剤/組成物1~6に対して明らかな粒子凝集がないことを示し、粒子の90%は15μm未満である。界面活性剤としてポロキサマーを使用するサンプルは、最小の粒子サイズを有するが、粒子凝集は、比較製剤/組成物の全てにおいて生じた。
【0216】
実施例4 注射部位に対する刺激の試験
サンプルは、表4-1の製剤および実施例1における組成物4の製剤に記載された方法に従って調製され、それらはそれぞれ6%のポロクサマー、2%のTwain80および6%のポリオキシエチレンヒドロキシステアレート(100mL)を含有した。
【表53】
153匹の健康なウサギをランダムに51のグループに分け,各グループに3匹のウサギを入れる。ウサギを固定し、両側の大腿四頭筋の毛を剃り落とす。各ウサギの左脚の大腿四頭筋をヨードチンキおよびアルコールで消毒した後、1mLの試験溶液を注射し、右脚の大腿四頭筋には対照として生理食塩液を注射する。全てのウサギを注射の48時間後に屠殺する。大腿四頭筋を切除し、注射部位に対する刺激(うっ血、浮腫、硬結、変性または壊死)について分析する。反応の順序は表4-2に従って決定する。
【0217】
【表54】
一般に、ウサギの反応スコアが2未満の場合には筋肉内注射に使用でき、ウサギの反応スコアが3を超える場合には筋肉内注射に使用できない。さらに、平均反応スコアが2~3の場合には、テストを繰り返し、または他の指標を考慮することができる。表4-3に反応スコアを示す。
【0218】
【表55】
結果は、本発明の組成物1~48の製剤で得られた製剤の注射部位に対する刺激が、WO2000056757A1における実施例1の注射部位に対する刺激よりも有意に低く、そして、比較製剤/組成物d~fで得られた製剤の刺激が、本発明の製剤/組成物の刺激よりも高いことを示す。
【0219】
実施例5 DSS誘発マウス大腸炎モデルにおけるBEAの効果
実験動物:雌雄72匹のICRマウス、実験開始前体重25~29g。
サブグループ化:実験動物をランダムに6つのグループに分け、各グループに12匹のマウスがある:生理食塩水グループ、本発明の製剤/組成物1で得られたBEAの高投与量グループ(40mg/kg)、中等投与量グループ(20mg/kg)、低投与量グループ(10mg/kg)、デキサメタゾングループ(0.1mg/kg)、DSSモデルグループ。
【0220】
モデルの複製:実験マウスに3%DSSを注射し、水を定期的に7日間与え、大腸炎モデルを複製する。
薬物の投与:DSSを注射した日と同じ日にマウスに試験薬物を注射する。
実験動物の管理:全身の健康状態、軟便、血便が毎日観察される。
薬を注射してから3日後に便潜血検査を行う。血液検査は7日目に行われる。マクロファージを数え、それらのIL-6およびTNF-αを測定する。それらの炎症および潰瘍レベルが観察される。結腸の内容物を採取して塗抹し、染色し、G+/G-を測定する。胸腺、脾臓、肝臓を取って秤量し、臓器指数を計算する。結腸の切片は病理学的検査のために送られる。結果を表5-1に示す。
【0221】
【表56】
*P<0.01 vs 対照; **P<0.05 vs モデル;***P<0.05 vs 初期重量;Dex:デキサメタゾン;対照:生理食塩水、モデル:水を与えたDSS
【0222】
結果の説明:
1.初期体重は、サブグループ化時の動物の体重を表す。異なるグループ間に有意差は認められない。試験薬物の投与から7日後の対照グループを除いて、すべての実験動物の体重は減少傾向にある。デキサメタゾングループでは動物の体重が減少したが、BEAグループでは動物の体重に有意な変化はない。
2.便潜血検査:便潜血とは、消化管に軽度の出血があり、赤血球が消化および破壊され、便の外観に異常がないことをいう。便潜血陽性動物は3日目に各グループに現れる。
3.血便のある動物:解剖時に結腸の内容物を注意深く観察し、内容物中の目に見える新鮮な血液を記録する。
4.結腸の長さ:モデルグループにおける動物の結腸の長さは、対照グループと比較して明らかに短い。DEXと高投与量のBEA治療が効果的である。中等投与量は低投与量よりもはるかに効果的である。
【0223】
【表57】
*P<0.05、**P<0.01 vs 対照、#P<0.05 vs モデル
【0224】
結果の説明:
1.血球数: モデルグループにおける動物の白血球数は明らかに増加したが、白血球数の増加は治療グループで有意に減少し、試験薬物が炎症治療に有効であることが示唆される。
2.マクロファージ細胞数:モデルグループにおける動物の腹部マクロファージ細胞数は明らかに減少したが、BEAグループの中等投与量で有意に増加し、試験薬物が免疫不全に対して効果的であることが示唆される。
3.サイトカイン:Th2サイトカイン数はDSSモデルグループにおいてより高い。IL-6レベルの有意な低下とIL-6/TNF-αレベルの改善は,免疫環境の改善を示唆する。
【0225】
【表58】
**P<0.01 vs 対照;*P<0.05 vs モデル
【0226】
結果の説明:胸腺の萎縮および脾臓の腫大は炎症反応を示す。モデルグループにおけるマウスの胸腺は萎縮する傾向があるが,有意ではない。モデルグループにおけるマウスの脾臓の腫大は対照グループと比較して有意である。DEXは胸腺の萎縮と脾臓の腫大を有意に促進する。BEAは胸腺の萎縮には影響を及ぼさないが、脾臓の腫大を抑制することから、炎症治療に効果的であることが示唆される。
【0227】
さらに、実施例における炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルは、BEAが、クローン病(CD)、関節リウマチ(RA)、ブラウ症候群、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、サルコイドーシス、およびヨーネ病を含むMAP関連疾患の治療に使用できることを確認する。DSS誘発マウス大腸炎モデル(IBDモデル)におけるBEAの効果に関する実施例は、本発明のBEA水性製剤が、デキサメタゾン(標準治療および陽性対照)よりも効果的であることを示す。RAとCDは同じ病因を有し、同じ薬物で治療されるため、MAPを阻害することによってCDを効果的に治療できる薬物は、RAに対しても効果的であると予測するのは合理的である。BEAはCD動物モデルに効果的であるため、RAの治療にも効果的であると考えられる。したがって、BEAはCDおよびRAの治療に使用できる可能性がある。
【0228】
実施例6 異なる製剤におけるBEAの比較イヌPK研究
文献(WO2000056757A1の実施例1)に基づいて調製されたBEA製剤と本発明(実施例1の組成物1の製剤)のイヌPKを実験で比較する。
雄ビーグル犬(体重11~13kg)9匹を3つのグループに分け、各グループ3匹とする。第一グループにおいて、本発明の実施例1における組成物1の製剤5mg/kgを筋肉内に投与する。第二グループにおいて、WO2000056757A1の実施例1における製剤5mg/kgを筋肉内に投与する。第三グループにおいて、WO2000056757A1の実施例1における製剤5mg/kgを皮下投与する。血液は0.33、0.67、1、1.5、2、4、6、8、16、24時間、2、3、4、5、6、7日に採取される。サンプルはLC-MS/MSによって処理および分析され、BEA血中濃度を測定する。
【0229】
図1に示されるように、結果は、本発明の実施例1における組成物1の製剤を用いたBEAが、WO2000056757A1の実施例1における製剤を用いたBEAよりも良好な血中暴露を有することを示唆する。
【0230】
実施例7 マクロファージに対するBEA製剤のインビトロ効果
ヒトマクロファージの系統を、結核菌参照株H37Rv、MOI1~5(マクロファージ1個につき細菌5個)に感染させ、2つの異なる濃度(5または6M)の7OH-DHEA、天然DHEA、WO2000056757A1製剤の実施例1を含むBEA(F1)および実施例1発明製剤の組成物1の製剤を含むBEA(F2)、ならびにクルクミンとともにインキュベートする。
【0231】
1時間後(D0)、24時間後(1D)および4日後(4D)に、細胞内の生きた桿菌の数を測定するために、細胞外の細菌を洗い流し、マクロファージを溶解して平板培養し、D0は食作用活性を示し、かつ、化合物なしでインキュベートした感染マクロファージに対応する対照と比較するために使用され、5M濃度のF2を除いて、すべてのDHEA誘導体はきわめて効果的である。1日後と4日後、マクロファージは桿菌を死滅させるため、4日目には5M濃度のF1、続いて5M濃度のF2によって、DHEA誘導体による生きた桿菌が著しく減少する。結果は
図2(a)、2(b)および2(c)に示される。(対象と比較した場合、*p<0.05;**p<0.01;***p<0.005)。
【0232】
実施例8 マウス結核菌モデルにおける本発明のBEA製剤の効果
非水性BEA製剤は、マウスモデルにおいて抗結核菌を有することが報告される(Hernandez-パンド,R.ら(2005))。この研究の目的は、本発明のBEA製剤が、並行研究において、既存の非水性BEA製剤と同程度に有効であることを証明することである。陽性結果は、本発明の製剤が、既存の製剤によって示されるすべての適応症(例えば、HIV、マラリアおよび結核菌)において有効である可能性が高いことを確認する。
【0233】
この実験において、F1は、文献(WO2000056757A1の実施例1)に基づいて調製されたBEA製剤である。F2は、本発明に基づいて調製されたBEA製剤(実施例1における組成物1の製剤)である。
雄BALB/cマウスを結核菌株H37Rvに気管内感染させ、2ヶ月後、8匹の動物のグループを皮下(SC)または気管内(IT)経路でF1(WO2000056757A1の実施例1における製剤を含むBEA)またはF2(実施例1における本発明製剤の組成物1の製剤を含むBEA)で互いに1日おきに治療され、1ヶ月後および2ヶ月後に4匹の動物のグループを安楽死させ、右肺を均質化し、固形増殖培地7H9中に平板培養し、21日後にコロニー数を数え、左肺をホルマリンで灌流する。いずれの製剤も効果が高く、対照と比較してコロニー形成単位(CFU)を有意に減少する。2カ月の治療は1カ月よりも効果が高い。F1またはF2を用いた実験のためのCFUは類似している。F2は気管内投与2か月後にやや優れる。これらの結果は、BEA水性発明製剤が既存の製剤と同等以上に有効であることを証明した。
【0234】
【0235】
実施例9 マウス喘息モデルにおけるBEA発明製剤の効果
喘息は慢性炎症疾患によるものであり、クラミジアトラコマチス(Black,P.ら、《欧州呼吸器学会》、15(2),254-9(2000))。BEAの抗炎症作用を考慮すると、BEAは喘息の治療に有効であると予測される。この実験は、マウス喘息モデルを用いてBEAの有効性を実証するように設計される。
この実験において、BEA製剤は、本発明の製剤(実施例1における組成物1の製剤)に基づいて調製される。
【0236】
18匹の8週齢のBALB/c雄マウスを、1mgの水酸化アルミニウム(Thermo Scientific,Rockford,IL,USA)中に乳化された10μgの鶏卵オボアルブミン(OVA、グレードV;Sigma)を5日おきに2回腹腔内(IP)投与し、総容量100μlで感作する。次いで、1ヶ月後、マウスに、0.75%OVAを気管内(IT)投与によってチャレンジさせる。BEA製剤は、0.2mg/kg用量で0.1mLの注射容量で、2つの異なる投与経路(気管内および皮下(SC))において、OVAチャレンジの1時間後、1日1回、最大7日間投与される。次に動物をペントバルビタール麻酔下で放血により安楽死させる。マウスの気管支肺胞洗浄(BAL)は、炎症細胞の総数を測定するために使用される。対照マウスには生理食塩水を腹腔内(IP)投与する。すべての実験は、INCMNメキシコシティの規則に従って実施される。2つの独立した実験が実施される。
【0237】
表9-1に、BEA製剤投与3日後および7日後の気管支肺胞洗浄における総炎症細胞数を対照と比較して要約する。BEA製剤を気管内および皮下の両方で投与されたマウスは、生理食塩水を投与されたマウスと比較して有意に少ない炎症細胞数を有し、3日目にそれぞれ67%および71%減少し、7日目に炎症細胞数が74%および55%減少する。これらの結果は、BEA製剤が喘息治療に有効であることを示す。また、BEA製剤が他の肺炎クラミジア関連の慢性疾患の治療に有効である可能性があるという予測を支持する。
【0238】
【0239】
実施例10 マウスメタボリックシンドロームに対するBEA製剤の効果
この実験において、F1は、文献(WO2000056757A1の実施例1)に基づいて調製されたBEA製剤である。F2は、本発明(実施例1における組成物1の製剤)に基づいて調製されたBEA製剤である。
【0240】
この実験は、Ana Maria Leal-Diaz,M.らによって報告されたマウス代謝症候群モデル、「アガベサルミアナ由来のアグアミエル濃縮物およびその抽出サポニンは、C57BL6マウスにおいて肥満および脂肪肝を軽減し、アッカーマンシアムシニフィラを増加させた」、ネイチャー社の《科学レポート(Sci.Rep.)》,6,34242(2016)に基づいて設計される。
【0241】
若齢BALB/cマウス(3週齢)に低カロリー食を与える。8週齢で、エストレプトゾトシン1回(100mg)をIP経路で投与する。8週間後、マウスにBEA製剤F1およびF2をそれぞれIT、SCおよびIT+SCを介して0.2mg/kgで週3回、8週間投与する。IT+SCグループは2回の投与を受ける。
【0242】
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、BEA製剤の8週間投与終了ときにマウス1匹当たり8%ブドウ糖溶液100μlを4時間絶食後に強制経口投与することにより実施される。血液サンプルは、グルコース投与の0分後、15分後、30分後、60分後および120分後に尾静脈から採取される。AUCは、台形則を用いて計算される。同じ時間帯に正常な血糖値を測定する。
【0243】
図4(a)は、F1製剤で治療されたストレプトゾトシン誘発2型糖尿病(DM2)マウスのOGTT結果である。
図4(b)は、F2製剤で治療されたストレプトゾトシン誘発2型糖尿病(DM2)マウスのOGTT結果である。
図4(c)はOGTTの血糖の曲線下面積(AUC)である。
【0244】
OGTTの結果は、ITおよびSC経路の両方を介するF1およびF2製剤の両方が、DM2マウスの耐糖能レベルを効果的に増強し得ることを示した。AUCデータはまた、本発明に基づいて調製されたBEA製剤であるF2(実施例1における組成物1の製剤)が、文献(WO2000056757A1の実施例1)に基づいて調製されたBEA製剤であるF1よりも優れることを示唆する。
【0245】
図4(d)は、ビヒクルで治療した場合と比較したF1およびF2で治療したDM2マウスの正常なグルコースレベルである。結果は、F1およびF2製剤の両方において、BEAがDM2マウスの血中グルコース濃度を正常化できることを示す。全体として、この実験の結果は、本発明の製剤を含むBEAが、2型糖尿病を治療するための良好な候補であることを示唆する。
【0246】
実施例11 Vk*MYCマウスにおけるBEA抗骨髄腫活性の評価
実験は、アリゾナ州スコッツデールにあるメイヨークリニックの総合がんセンターのMarta Chesi博士のグループによって行われる。実験の詳細は、彼女の刊行物(Chesi,M.ら、2012,遺伝子操作された多発性骨髄腫のマウスモデルにおける薬物反応は臨床的有効性を予測する(Drug response in a genetically engineered mouse model of multiple myeloma is predictive of clinical efficacy)、《血液(Blood)》,120(2),376-385)に記載される。3匹のVk*MYCマウスが評価される。マウスM5645BおよびM5489Dに15および20mg/kg/日のBEA製剤を1~5日目、8~12日目にI.P.投与経路で投与する。M-スパイク値はそれぞれ7日目および14日目に評価する。マウスM5369は、15mg/kg/日のBEA製剤を1~5日目、8~12日目にI.M.投与経路で投与し、その後15~19日目に15mg/kg/日のBEA製剤をI.P.投与経路で投与する。M-スパイク値はそれぞれ7日目、14日目および21日目に評価する。
【0247】
図3に示される結果は、Vk*MYCマウスにおいて、インビボモデルにおけるM-スパイクの40%減少が15mg/kg/日で達成されることを示し、BEA製剤が多発性骨髄腫に対して有効であることを強く示唆する。BEAの抗多発性骨髄腫活性は実施例に示されるため、BEAが癌免疫療法剤として使用され得ることがさらに裏付けられる。