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  • 特許-緑化工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】緑化工法
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/20 20180101AFI20241024BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20241024BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20241024BHJP
   A01G 24/46 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
A01G20/20
A01G20/00
A01G24/30
A01G24/46
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024044241
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002199
【氏名又は名称】株式会社丹勝
(72)【発明者】
【氏名】丹野 勝治
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504915(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0053888(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 20/00、20/20
A01G 24/30、24/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工範囲を見切り枠で囲い、下から順にベニヤ板、防水シート、防根シート、植栽マット、係止部材となる溶接金網、さらに植栽マットを重ね一体化したTK植栽マットを前記見切り枠の内部に敷設し、複数のTK植栽マット同士の接触面の端部の隅部に設けた隙間の中央に根鉢植物を載置するにあたり、鉤状アングルを設けたフック付アンカーピンを、係止部材としての溶接金網に複数本保持固定するとともに、前記フック付アンカーピンの頭部にはナット付きアイアンクロ―を備えるとともに、塩ビチューブに通した環状ワイヤーを前記アイアンクロ―の下端に係止めし、フック付アンカーピンの頭部に備えたナットによって環状ワイヤーを絞り込むことによって、環状ワイヤーの内部に予め設けた根鉢植物の根巻部を活着し、その後、前記根鉢植物に、良質土、ビニール、ラッセルネットの順で被覆しピン止めによって固定した緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを打設した屋根や屋上、またはアスファルトやコンクリートなどで舗装された無土壌面に植栽マット体を形成し、樹木固定具により樹木の大きさを問わず植栽でき、かつ雑草の繁茂を抑制する緑化構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市街地は、都市化が進むに従って高層建築が乱立するとともに、地面の多くがアスファルトやコンクリートによる舗装が行なわれ植物の生育場所が減少し、草花や樹木類の植物が少なくなり自然環境が失われている。特に都市部の建築物の屋根・屋上は廃熱施設が占拠され、また建築コスト削減のための床荷重制限から防水処理を施すのみとなっており、人間社会に癒しや潤いを与え、生活周辺に自然環境を取り戻すために市街地の緑化が強く要求されている。
【0003】
そこで、当社が開発した特許文献1の「樹木固定具を用いたコンクリート打設面用の樹木生育装置とその樹木生育工法」や特許文献2の「樹木系植物の緑化工法と薄型緑化システム」を用いての植栽緑化が普及しつつある。
【0004】
しかし、特許文献1の工法は、ボックス型植栽箱に樹木固定具を用いて植栽木を固定植栽する植栽工法で、屋上や店舗前の修景緑化に適しているが、植栽箱を配置する庭園設計は、従来の庭園造りとしては、自然感に物足りなさがあった。さらに緑化範囲に貯水部を設けてあるため、荷重制限が厳しい既存建物への設置は重量的に限界があった。
【0005】
また、特許文献2の手法は、薄型植栽マット体の表面に、腐食しにくいネット状又は格子状の抑え体が固定されている緑化対象域に、樹木系植物を植栽し、無土壌面や既存の植生緑化施工面に草花類及びセダム系植物を植え付けるだけでなく、樹木を含め簡単に緑化するための樹木系植物の緑化工法とそのための薄型緑化システムであるが、根鉢固定具がワイヤを使用しているため、樹木と言っても低木植栽に限られるため既存建物への設置は可能であったが庭園的な景観に物足りなさがあった。
さらに、当該手法は薄型植栽マット体の表面上に根鉢固定具を設置するため、長尺の金属棒を直接植栽マット体に都度水平に差し込む必要があり、不陸整生程度の施工面では水平を確保する作業が困難であることから広範囲に及ぶ緑化には不向きである。
そして、防草機能を有しておらず、飛来する雑草の種子類による生育・繁茂を抑えることができず、景観を保全することに欠けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3416799号
【文献】特許第3896360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景技術で記載した問題を解決すべく、無土壌面の荷重制限箇所での中高木植栽を可能とする雑草繁茂防止の薄型植栽マット等を利用した緑化を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、初めに施工範囲を見切り枠で囲い、下から順にベニヤ板防水シート、防根シート、植栽マット、係止部材となる溶接金網、さらに植栽マットを重ね一体化したTK植栽マットとし、同植栽マットを敷き詰めた同士の接触面(四隅の隙間)の中央に根鉢植物を設置。鉤状アングルのフック付アンカーピンを係止部材の溶接金網に保持固定させ、各アンカーピン頭部にはナット付きの両端部に下垂した爪部のあるCリング形状となる鋼製部材(アイアンクロー)を備え、これに塩ビチューブに通した環状ワイヤーで各フック付アンカーピンを連結し、ナットの増し締めにより環状ワイヤーを絞り込み、根鉢植物を固定する。根鉢部は良質土にて保護し、TK植栽マットとともに表面全体を不織布、ビニール、ラッセルネット、ピン止めの順で被覆し、風雨等による飛散や土壌流出の防止と軽量化、そして雑草の繁茂抑制を図った緑化工法。
【発明の効果】
【0009】
植栽マットを使用したことにより、風雨等による植栽基盤土の流失がなく、樹木を植栽する場合でも特別厚い盛土を形成することなく、また樹木固定具としてフック付アンカーピンを用いた簡単な作業により、支柱を使わずに中高木の植栽ができるため、本格的庭園造りが短期間に低コストで施工できる。
【0010】
また、植栽木の根鉢をフック付アンカーピンで保持することにより、植栽木は傾きやぐらつきがなく、強風や振動によって倒木することがなく、既存のビル屋上にでも高木を交えた庭園緑化が可能となった。
【0011】
さらに、植栽マット全体を不織布、ビニール、ラッセルネットの3層で被覆することで、飛来する雑草種子類の生育・繁茂を抑制することができ、緑化の維持・メンテナンスの省力化、景観保全が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】TK植栽マットの構成を示す説明図である
図2】TK植栽マット上に樹木植栽を固定保持したことを示す説明図である
図3】溶接金網にフック付アンカーピンを係止めした状態を示す説明図である。
図4】根鉢植物をフック付アンカーピンによって固定した状態を示す図である。
図5】根鉢植物の根鉢部に良質土、TKマット表面全体にビニール、ラッセルネットを被覆したことを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の緑化工法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例
【0014】
図1はTK植栽マットを示す説明図である。下から順に不陸整正のためのベニヤ板潅水による水分が漏出しないように厚さ0.5~2.0mm程度の防水シート2、施工面への根張り防止のための厚さ1.3~2.0mm程度の防根シート3、厚さ20mm の植栽マット4、係止め部材としての溶接金網5、厚さ30mmの植栽マット6を重ね一体化させたTK植栽マット7である。

【0015】
なお、植栽マットの内部構成については以下のとおり。下から黒マルチシート、そして高密度ポリエチレンの縦糸380デニールと挿入糸950デニールの糸で、ラッセル編みした遮効率約90~95%のラッセル遮光ネット、ポリエステル繊維から形成された透水性不織布の順に重ね、この上に人工土壌(ココピート50%、ピートモス10%、水苔10%、バーク堆肥20%、バミュキライト10%混合)を圧縮して20~50mm厚の基盤土に形成し、その上にポリエステル繊維から形成された植根を通す透水性不織布、高密度ポリエチレンの縦糸380デニールと挿入糸950デニールの糸でラッセル編みした遮効率約60~65%のラッセル遮光ネット、黒マルチシートの順に重ねて上部を形成し、底部と上部を一体化させ植生基盤土の体内移動を抑え、構造体を堅持するために縦横所定間隔で縫製したものである。
【0016】
図2はTK植栽マットを隙間なく敷設し、樹木植栽を固定保持したことを示す説明図である。初めに施工範囲を見切り枠12で囲い、TK植栽マット7を敷設。TK植栽マット7を敷き詰めた同士の接触面(四隅の隙間)の中央に根鉢植物15を載置。鉤状アングルのフック付アンカーピン13をTK植栽マット同士の接触面の位置に挿入し、係止部材の溶接金網を利用し保持固定させる。フック付アンカーピン13の頭部にはナット付きの両端部に下垂した爪部のあるCリング形状となる鋼製部材(アイアンクロー)を備え、これに塩ビチューブに通した環状ワイヤー14で各アンカーピンを連結し、ナットの増し締めにより環状ワイヤーを絞り込み、倒木しないように根鉢植物を植立固定して活着させる。
フック付アンカーピン13の挿入位置はTK植栽マット7同士の隙間に挿入することで、溶接金網との保持固定位置を可視化でき施工が容易となる。
TK植栽マット表面には、飛来する雑草種子の育成・繁茂を抑制するため、不織布8、黒マルチシート9、ラッセルネット10を三層とした保護シートで覆うとともに、各シートのつなぎ目は両面テープ11を用いて隙間が生じないように接着させる。
【0017】
図3は溶接金網にフック付アンカーピンを係止めした状態を示す説明図である。TK植栽マットを構成している溶接金網5部分にフック付アンカーピン13下部の鉤状となっている係止部を係止めするとともに、フック付アンカーピン13上部は環状ワイヤー10を係止めする。環状ワイヤー10の係止めのために、各フック付アンカーピン頭部はナット16付きの両端部に下垂した爪部のあるCリング形状となる鋼製部材(アイアンクロー)17を備えさせ、塩ビチューブ18に環状ワイヤー10を通し、ナット16を増し締めすることで倒木しないように根鉢植物を植立固定して活着させる。溶接金網5、アンカーピン13、アイアンクロ―17、ナット16、環状ワイヤー10のいずれも耐腐食性を確保するため、メッキ塗装を施すか、ステンレス製とする。
【0018】
図4は根鉢植物をフック付アンカーピンによって固定した状態を示す図である。根鉢植物15を根巻部を下にしてフック付アンカーピン13を溶接金網5に係止めした中央に載置。フック付アンカーピン13は同下部の鉤状となっている係止部を溶接金網5に係止めするとともに、各フック付アンカーピン頭部にあるナット16付きの両端部に下垂した爪部のあるCリング形状となる鋼製部材(アイアンクロー)17に対し、塩ビチューブに通した環状ワイヤーで各フック付アンカーピンを連結し、ナット16の増し締めにより環状ワイヤー10を絞り込み、根鉢植物をTK植栽マット7と活着させる。
【0019】
図5は根鉢植物の根巻部を中心に良質土、ビニール、ラッセルネットを被覆したことを示す説明図である。環状ワイヤー14、ナット16、アイアンクロ―17によりTK植栽マット7に活着した根鉢植物に対し、所定の厚さに良質土20を投入して根巻部を埋め込む。さらに飛来する雑草種子の育成・繁茂を防止するためのビニール21を用いて被覆し、さらにビニール20が飛散しないようにラッセルネット22で覆い、ピン止め23を利用して固定する。
根鉢植物15を植込んだ箇所以外のTK植栽マット7部分に対しては、『TK防草植込式緑化工法(特許第7425253号)』19を利用する。ビニール21に植穴を開孔し、所望植物を植え込み、開口部には粘性改良土を注入する。開口部には蔦類・セダム類のほふく茎系の植物を植え込みすることで、地表の湿気と温度が保たれて早期に発育しランナーしながら成長してビニール面上を覆い尽くす。これが太陽光の紫外線によるビニール、植栽マットの劣化・損耗を防止し、対候性を向上させる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
重量制限が厳しい既存のコンクリート建物が多い都市部の既存建物の屋上やベランダに中高木を交えた庭園型植栽緑化を可能とし、ビル風や風雨などの強風によって植栽木が倒木することなく、また、雑草繁茂を抑制させることでメンテナンス作業を大幅に省力化可能となる景観を保てる植栽緑化が可能となった。
また、植物のもつ温度上昇緩和及びオアシス効果によりヒートアイランド現象を緩和し、癒しの場所としてさらに、都市景観の向上を図れることから、これからの都市緑化として今後利用される可能性が高いものになった。

【符号の説明】
【0021】
ベニヤ
2 防水シート
3 防根シート
4 植栽マット
5 溶接金網
6 植栽マット
7 植栽マット基盤
8 不織布
9 黒マルチシート
10 ラッセルネット
11 両面テープ
12 見切り枠
13 フック付アンカーピン
14 環状ワイヤー
15 根鉢植物
16 ナット
17 アイアンクロー
18 塩ビチューブ
19 植込み式緑化
20 良質土
21 ビニール
22 ラッセルネット
23 ピン止め

【要約】      (修正有)
【課題】コンクリートを打設した屋根や屋上、またはアスファルトやコンクリートなどでの緑化工法の提供。
【解決手段】施工範囲を見切り枠で囲い、TK植栽マットを敷き詰めた同士の接触の中央に根鉢植物を載置し、鉤状アングルのアンカーピンをTK植栽マット同士の接触面の位置に挿入し、係止部材の溶接金網を利用し保持固定させる。アンカーピンの頭部に備えたアンカークローに塩ビチューブに通した環状ワイヤーを係止めして、アンカーピン同士を連結し、アンカーピン頭部に備えたナットを増し締めすることにより環状ワイヤーを絞り込み、倒木しないように樹木を植立固定して活着させる緑化工法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5