(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】HIFU照射装置
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20241024BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2024069710
(22)【出願日】2024-04-23
(62)【分割の表示】P 2023118823の分割
【原出願日】2023-07-21
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植山 剛
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亨
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02962729(EP,A1)
【文献】特開平08-071069(JP,A)
【文献】特開平09-103434(JP,A)
【文献】特開2013-244167(JP,A)
【文献】特開2013-055984(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1312303(KR,B1)
【文献】特開平06-327691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/225
8/00
A61N 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面に沿って配置された複数の超音波振動子を制御する振動子制御部と、
前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、
前記振動子制御部および前記データ取得部を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点であって、前記Bモード画像データが示すBモード画像に輝度の強弱によって現れる焦点を、前記Bモード画像データに基づいて探索する処理を実行
し、
前記焦点が検出されたときの前記遅延時間で、複数の前記超音波振動子のそれぞれから超音波を発生させた状態から、さらに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させることを特徴とするHIFU照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIFU照射装置とその焦点調整方法に関し、特に、Bモード画像を用いた焦点の位置の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound)を用いた治療装置が広く用いられている。この治療装置は、HIFU照射装置あるいはHIFU照射システムと称され、治療部位に集束超音波を照射して生体組織を壊死させる。
【0003】
一般に、HIFU照射装置は、凹面に沿って配置された治療用の複数の超音波振動子を備えている。複数の超音波振動子は、それぞれから発せられた超音波が一点に照射され焦点を形成するように配置されている。治療の際には、焦点の位置が治療部位に合わせられ超音波が照射される。照射位置の確認には、超音波画像上に焦点を表す超音波診断装置が用いられる。
【0004】
以下の特許文献1には、Bモード画像(断層画像)を表示する超音波診断装置を用いて焦点の位置を観測する超音波治療装置が記載されている。この装置では、組織に影響のない弱いレベルの超音波が治療用の超音波振動子から発せられると共に、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信によって断層画像が表示される。患者の組織の音響特性は組織の温度変化に応じて変化するため、断層画像には焦点の位置が輝度の強弱によって示される。また、非特許文献1に示されているように、患者の組織には超音波の照射によって変位が生じるため、断層画像には焦点の位置が輝度の変化によって示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】ARFIを利用した組織硬度測定インターネット<https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/siemens/technical_notes/140368>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
強力集束超音波を用いた治療では、音響特性が周囲と異なる領域が患者の組織にあると、治療用の超音波振動子から発せられる超音波の屈折によって、音響特性が一様な場合に対して焦点の位置がずれてしまうことがある。これによって、超音波の焦点がBモード画像上に現れず、治療用超音波の焦点の位置を治療部位に合わせる操作が困難となることがある。
【0008】
本発明の目的は、HIFU照射装置について、治療用超音波の焦点の位置を治療部位に合わせる操作を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の関連技術に係るHIFU照射装置は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子を制御する振動子制御部と、前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブを、前記中心軸の周りで回転させるプローブ駆動部と、前記超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、前記振動子制御部、前記プローブ駆動部および前記データ取得部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、前記中心軸周りの前記超音波プローブの回転角度位置を変化させながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索する処理と、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で、前記超音波プローブを静止させる処理と、を実行する。
【0010】
望ましくは、前記コントローラは、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で前記超音波プローブを静止させた状態で、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させる。
【0011】
また、本発明の関連技術に係るHIFU照射装置は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子を制御する振動子制御部と、前記凹面の中心軸の周りで複数の前記超音波振動子を回転させる超音波振動子駆動部と、前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、前記振動子制御部、前記超音波振動子駆動部および前記データ取得部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子の前記中心軸周りの回転角度位置を変化させながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索する処理と、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で、複数の前記超音波振動子を静止させる処理と、を実行する。
【0012】
望ましくは、前記コントローラは、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で複数の前記超音波振動子を静止させた状態で、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させる。
【0013】
また、本発明に係るHIFU照射装置は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子を制御する振動子制御部と、前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、前記振動子制御部および前記データ取得部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、
複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点であって、前記Bモード画像データが示すBモード画像に輝度の強弱によって現れる焦点を、前記Bモード画像データに基づいて探索する処理を実行し、前記焦点が検出されたときの前記遅延時間で、複数の前記超音波振動子のそれぞれから超音波を発生させた状態から、さらに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させることを特徴とする。前記コントローラは、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索する処理を実行してよい。
【0015】
また、本発明の関連技術は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子と、前記凹面の中心軸上に、前記中心軸の周りで回転自在に配置された超音波プローブと、前記超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、を備えるHIFU照射装置の焦点調整方法であって、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、前記中心軸周りの前記超音波プローブの回転角度位置を変化させながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索するステップと、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で、前記超音波プローブを静止させるステップと、を含む。
【0016】
望ましくは、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で前記超音波プローブを静止させた状態で、複数の前記超音波振動子から発せられる各超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させるステップを含む。
【0017】
また、本発明の関連技術は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子であって、前記凹面の中心軸の周りで回転自在に配置された複数の超音波振動子と、前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブと、前記超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、を備えるHIFU照射装置の焦点調整方法であって、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、前記中心軸周りの複数の前記超音波振動子の回転角度位置を変化させながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索するステップと、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で、複数の前記超音波振動子を静止させるステップと、を含む。
【0018】
望ましくは、前記焦点が検出されたときの前記回転角度位置で複数の前記超音波振動子を静止させた状態で、複数の前記超音波振動子から発せられる各超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させるステップを含む。
【0019】
また、本発明の関連技術は、凹面に沿って配置された複数の超音波振動子と、前記凹面の中心軸上に配置された超音波プローブによってBモード画像データを取得するデータ取得部と、を備えるHIFU照射装置の焦点調整方法であって、前記HIFU照射装置は、さらに、複数の前記超音波振動子を制御する振動子制御部を備え、前記振動子制御部および前記データ取得部を制御するコントローラが、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点であって、前記Bモード画像データが示すBモード画像に輝度の強弱によって現れる焦点を、前記Bモード画像データに基づいて探索するステップ、を実行することを特徴とする。前記焦点調整方法は、複数の前記超音波振動子に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、前記Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波の焦点を探索するステップを含んでよい。
【0020】
望ましくは、前記焦点が検出されたときの前記遅延時間で、複数の前記超音波振動子のそれぞれから超音波を発生させた状態から、さらに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、前記中心軸に前記焦点を近付け、または、前記中心軸上に前記焦点を位置させるステップを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、治療用超音波の焦点の位置を治療部位に合わせる操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係るHIFU照射装置の構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るHIFU照射装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
図1には、本発明の第1実施形態に係るHIFU照射装置100の構成が示されている。HIFU照射装置100は、HIFU振動子ユニット10、超音波プローブ12、カップリング袋24、プローブ駆動部14、データ取得部16、振動子制御部18、表示部20およびコントローラ22を備えている。
【0024】
図1には、HIFU振動子ユニット10の断面が示されている。HIFU振動子ユニット10は、開口が下方に向けられた凹面30を有する振動子筐体26と、振動子筐体26における凹面30に沿って配置され、振動子筐体26に固定された複数の超音波振動子32を備えている。HIFU振動子ユニット10は、必ずしも実体的な凹面30を有していなくてもよい。この場合、複数の超音波振動子32は、仮想的な凹面に沿って配置されるように、振動子筐体26に固定されてよい。
【0025】
振動子筐体26の凹面30は、錐体の側面と同様の形状であってよい。ここで、錐体とは、空間内の1点から底面に伸びる直線の集合によって形成される立体形状をいう。また、振動子筐体26の凹面30は、上側にドーム状に膨らんだ形状を有してもよい。各超音波振動子32は、各超音波振動子32が超音波を発したときに、振動子筐体26の下方の治療基準点Pで、超音波の強度が強められるように振動子筐体26に固定されている。
【0026】
コントローラ22は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等であってよい。コントローラ22はプログラムの実行によって各機能を実現してよい。コントローラ22には、ユーザがHIFU照射装置100を操作するための操作機器(図示せず)が接続されている。操作機器は、マウス、表示部20と一体化されたタッチパネル、スイッチ、キーボード等を含んでよい。
【0027】
振動子制御部18は、プログラムを実行することで各超音波振動子32を制御するプロセッサによって構成されてよい。振動子制御部18は、コントローラ22の制御に応じて、各超音波振動子32に超音波を発生させる。また、振動子制御部18は、コントローラ22の制御に応じて、各超音波振動子32が発生する超音波の強度および遅延時間のうち少なくとも一方を調整する。
【0028】
上下方向に延伸する超音波プローブ12は、振動子筐体26の下方、かつ、治療基準点Pの上方の位置で超音波が送受信されるように、振動子筐体26に取り付けられている。本実施形態では、振動子筐体26の凹面30の頂点部を超音波プローブ12が上下方向に貫通し、超音波を送受信する送受信部28が下方に向けられている。
【0029】
HIFU振動子ユニット10の下方には、各超音波振動子32と患者との間、および超音波プローブ12と患者との間の音響インピーダンスを整合させるカップリング袋24が設けられている。カップリング袋24は、水等の液体が充填された袋であってよい。カップリング袋24の上方から内部には超音波プローブ12が貫通し、送受信部28がカップリング袋24の内部に位置している。
【0030】
データ取得部16には超音波診断装置が用いられてよい。データ取得部16は、コントローラ22の制御に応じて、次のような処理を実行する。すなわち、データ取得部16は、超音波プローブ12に超音波を送信させ、送信される超音波によるビーム(超音波ビーム)を走査させる。
【0031】
超音波プローブ12の送受信部28には長軸方向と短軸方向が定められており、長軸方向かつ送受信部28から離れる方向に広がる観測面44で超音波ビームが走査される。超音波プローブ12は、振動子筐体26の凹面30の頂点部を上下に貫通する中心軸40を観測面44が含むようにHIFU振動子ユニット10に取り付けられている。
【0032】
データ取得部16は、超音波ビームが向けられた方向から到来する反射超音波を超音波プローブ12に受信させ、超音波ビームが向けられた各方向から受信された反射超音波に基づく受信信号を取得する。データ取得部16は、観測面44で得られた受信信号に基づいて超音波データを生成し、コントローラ22に出力する。超音波データは、例えば、観測面44に対して取得されたBモード画像(断層画像)を示すデータであってよい。
【0033】
超音波プローブ12は、プローブ駆動部14によって中心軸40周りで回転自在となっている。プローブ駆動部14は、HIFU振動子ユニット10に対して超音波プローブ12を中心軸40の周りで回転させる。すなわち、プローブ駆動部14は、コントローラ22の制御に応じて、超音波プローブ12を中心軸40の周りで回転させ、中心軸40の周りで超音波プローブ12の観測面44を回転させる。
【0034】
治療の際には、カップリング袋24の下方が患者に密着するように、カップリング袋24、超音波プローブ12およびHIFU振動子ユニット10が配置される。治療用超音波がHIFU振動子ユニット10から患者に照射される前には、以下のような位置決め処理が実行される。
【0035】
振動子制御部18は、HIFU振動子ユニット10が備える各超音波振動子32に、治療時よりも強度が小さい超音波を送信させる。プローブ駆動部14は、所定の方向に広がる観測面44で超音波ビームが走査されるように、超音波プローブ12の回転角度位置(回転角によって表される位置)を設定する。
【0036】
データ取得部16は、超音波プローブ12の回転角度位置によって規定される観測面44で超音波プローブ12に超音波ビームを走査させ、超音波データを取得し、コントローラ22に出力する。コントローラ22は、超音波データが示すBモード画像と、治療基準点Pを示す画像とを重ねて表示部20に表示させる。施術者としてのユーザは、表示部20に表示された画像を参照して、HIFU振動子ユニット10から送信される超音波が強められる位置(焦点F)と治療基準点Pの位置との相違を確認する。
【0037】
ユーザは、焦点Fの位置と治療基準点Pの位置との相違が許容範囲内でないときは、カップリング袋24、超音波プローブ12およびHIFU振動子ユニット10の位置または姿勢を変更する。あるいは、ユーザは、カップリング袋24と患者34との接触状態を変更する。ユーザは、焦点Fの位置と治療基準点Pの位置とが一致していること、あるいは、焦点Fの位置と治療基準点Pの位置との相違が許容範囲内であることを確認した後に、コントローラ22に対して治療のための操作を行う。コントローラ22は、ユーザによる操作に応じて振動子制御部18を制御する。振動子制御部18は、コントローラ22による制御に応じて、治療に必要な強度を有する治療用超音波を各超音波振動子32に送信させる。これによって、焦点Fにおける生体組織が焼灼され、治療が施される。
【0038】
強力集束超音波を用いた治療では、音響特性が周囲と異なる領域が患者の組織にあると、超音波振動子32から発せられる超音波の屈折によって、音響特性が一様な場合に対して焦点Fの位置がずれてしまうことがある。これによって、超音波の焦点FがBモード画像上に現れず、位置決め処理が困難となることがある。
【0039】
そこで、本実施形態に係るHIFU照射装置100では、位置決め処理が実行される前に、以下に説明する焦点調整処理が実行されてよい。焦点調整処理によって、焦点Fは超音波プローブ12の観測面44上に移動する。さらに、焦点Fは、中心軸40に近付けられ、または中心軸40上に設定されてもよい。
【0040】
コントローラ22は、データ取得部16を制御して、データ取得部16に超音波データとしてBモード画像データを取得させる。データ取得部16は、超音波プローブ12に超音波を送信させ、超音波ビームを観測面44で走査させる。データ取得部16は、超音波ビームが向けられた方向から到来する反射超音波を超音波プローブ12に受信させ、超音波ビームが向けられた各方向から受信された反射超音波に基づく受信信号を取得する。データ取得部16は、観測面44で得られた受信信号に基づいて超音波データを生成し、コントローラ22に出力する。
【0041】
また、コントローラ22は、振動子制御部18を制御して、HIFU振動子ユニット10が備える各超音波振動子32に、治療時よりも強度が小さい超音波を送信させる。
【0042】
図2~
図4は焦点調整処理を説明する図である。
図2の左側には送受信部28の短軸方向が左右に向けられた状態が示されている。
図2の右側には送受信部28の長軸方向が左右に向けられた状態が示されている。
図3には送受信部28の長軸方向が左右に向けられた状態が示されており、
図4には送受信部28の短軸方向が左右に向けられた状態が示されている。
【0043】
図2の左側には、観測面44から離れた位置に焦点Fがある状態が示されている。ただし、この図では明確化のため、カップリング袋24の表記は省略されている。後述する
図3および
図4についてもカップリング袋24の表記は省略される。コントローラ22は、プローブ駆動部14を制御して、超音波プローブ12を中心軸40で回転させながら、データ取得部16から出力される超音波データが示すBモード画像上で焦点Fを探索する。プローブ駆動部14は、超音波プローブ12を中心軸40の周りで、最小90°の範囲で回転させる。コントローラ22は、プローブ駆動部14を制御して、Bモード画像上で焦点Fが検出されたときの回転角度位置で、超音波プローブ12を静止させる。
図2の右側および
図3の左側には、Bモード画像上で焦点Fが検出されたときの超音波ビーム走査領域42と焦点Fが模式的に示されている。ここで、超音波ビーム走査領域42は、超音波ビームを走査させる領域であり、この領域に対してBモード画像データが生成される。
【0044】
コントローラ22は、振動子制御部18を制御して、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整させ、焦点Fを観測面44内で移動させる。すなわち、振動子制御部18は、コントローラ22の制御に応じて、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整し、観測面44内で焦点Fを移動させ、焦点Fを中心軸40に近付け、または焦点Fを中心軸上に位置させる。
図3の右側には、焦点Fを中心軸40上に位置させたときの超音波ビーム走査領域42と焦点Fが模式的に示されている。
【0045】
HIFU照射装置100では、
図3の左側に示されているように、中心軸40上に焦点Fが位置していなくても、Bモード画像上に焦点Fがある状態で位置決め処理が実行されてもよいし、
図3の右側に示されているように、中心軸40上に焦点Fが位置する状態で、位置決め処理が実行されてもよい。
【0046】
焦点調整処理は、超音波プローブ12を回転させずに、複数の超音波振動子32のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整することで実行されてもよい。
図4の左側には、観測面44から離れた位置に焦点Fがある状態が示されている。コントローラ22は、振動子制御部18を制御して、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整させ、焦点Fを観測面44に交わる平面内、例えば、観測面44に垂直な平面内で移動させる。すなわち、振動子制御部18は、コントローラ22の制御に応じて、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整し、観測面44に交わる平面内で焦点Fを移動させ、焦点Fを観測面44上に位置させる。
図4の右側には、焦点Fを観測面44上に位置させたときの超音波ビーム走査領域42と焦点Fが模式的に示されている。
【0047】
図4の右側に示されている状態は、
図3の左側に示されている状態と同一である。コントローラ22は、振動子制御部18を制御して、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整させ、焦点Fを観測面44内で移動させる。すなわち、振動子制御部18は、コントローラ22の制御に応じて、複数の超音波振動子32のそれぞれが発生する超音波の遅延時間を調整し、観測面44内で焦点Fを移動させ、焦点Fを中心軸40に近付け、または焦点Fを中心軸40上に位置させる。
図3の右側には、焦点Fを中心軸40上に位置させたときの超音波ビーム走査領域42と焦点Fが模式的に示されている。
【0048】
超音波プローブ12を回転させない場合についても、HIFU照射装置100では、
図3の左側に示されているように、中心軸40上に焦点Fが位置していなくても、Bモード画像上に焦点Fがある状態で位置決め処理が実行されてもよい。また、
図3の右側に示されているように、中心軸40上に焦点Fが位置する状態で、位置決め処理が実行されてもよい。
【0049】
このように、HIFU照射装置100では、次の(i)~(iii)のステップを含む焦点調整方法によって焦点調整処理が実行される。
(i)複数の超音波振動子32に超音波を送信させているときに、中心軸40周りの超音波プローブ12の回転角度位置を変化させながら、Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の超音波振動子32から発せられる超音波の焦点Fを探索するステップ
(ii)焦点Fが検出されたときの回転角度位置で、超音波プローブ12を静止させるステップ
(iii)焦点Fが検出されたときの回転角度位置で超音波プローブ12を静止させた状態で、複数の超音波振動子32から発せられる各超音波の遅延時間を調整して、中心軸40に焦点を近付け、または、中心軸40上に焦点Fを位置させるステップ
【0050】
焦点調整方法では、上記(iii)のステップは必ずしも実行されなくてもよい。焦点調整方法は、上記(i)および(ii)のステップが実行されるものであってよい。
【0051】
また、HIFU照射装置100では、次の(a)および(b)のステップを含む焦点調整方法によって焦点調整処理が実行されてもよい。
(a)複数の超音波振動子32に超音波を送信させているときに、複数の超音波振動子32のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の超音波振動子32から発せられる超音波の焦点Fを探索するステップ
(b)焦点Fが検出されたときの遅延時間で、複数の超音波振動子32のそれぞれから超音波を発生させた状態から、さらに、複数の超音波振動子32のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整して、中心軸40に焦点を近付け、または、中心軸40上に焦点Fを位置させるステップ
【0052】
焦点調整方法では、上記(b)のステップは必ずしも実行されなくてもよい。焦点調整方法は、上記(a)のステップが実行されるものであってよい。
【0053】
図5には、本発明の第2実施形態に係るHIFU照射装置102の構成が示されている。HIFU照射装置102は、HIFU照射装置100に対し、振動子ユニット駆動部90を追加したものである。振動子ユニット駆動部90は、コントローラ22の制御に従って、患者34が横たえられるベッド等に固定された基準座標系に対し、中心軸40の周りでHIFU振動子ユニット10を回転させる。すなわち、振動子ユニット駆動部90は、凹面30に沿って配置された複数の超音波振動子32を中心軸40の周りで回転させる超音波振動子駆動部としての機能を有する。
【0054】
本実施形態では、プローブ駆動部14は、超音波プローブ12を静止した状態に維持する。ここで、超音波プローブ12が静止した状態とは、超音波プローブ12が基準座標系で静止した状態をいう。振動子ユニット駆動部90は、第1実施形態について
図2~
図4を参照して説明された焦点調整処理における超音波プローブ12の回転方向とは逆の回転方向に、HIFU振動子ユニット10を回転させる。
【0055】
プローブ駆動部14は、HIFU振動子ユニット10に対して超音波プローブ12を中心軸40の周りで回転させるものである。そのため、HIFU振動子ユニット10に対する超音波プローブ12の回転角度を、HIFU振動子ユニット10の基準座標系における回転角度に対して、逆方向の同一角度とすることで、超音波プローブ12が基準座標系で静止した状態となる。これによって、表示部20に表示されるBモード画像を変化させることなく、Bモード画像上の焦点Fの位置が調整され得る。
【0056】
HIFU照射装置102では、次の(α)~(γ)のステップを含む焦点調整方法によって焦点調整処理が実行される。
(α)複数の超音波振動子32に超音波を送信させているときに、中心軸40周りのHIFU振動子ユニット10の回転角度位置、すなわち、複数の超音波振動子32の回転角度位置を変化させながら、Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の超音波振動子32から発せられる超音波の焦点Fを探索するステップ
(β)焦点Fが検出されたときの回転角度位置で、HIFU振動子ユニット10を静止させるステップ
(γ)焦点Fが検出されたときの回転角度位置でHIFU振動子ユニット10を静止させた状態で、複数の超音波振動子32から発せられる各超音波の遅延時間を調整して、中心軸40に焦点を近付け、または、中心軸40上に焦点Fを位置させるステップ
【0057】
焦点調整方法では、上記(γ)のステップは必ずしも実行されなくてもよい。焦点調整方法は、上記(α)および(β)のステップが実行されるものであってよい。
【0058】
以上説明したような焦点調整処理によれば、焦点Fを観測面44上に位置させることができる。したがって、屈折によってBモード画像に焦点Fが現れない状態となっても、焦点Fを観測面44上に位置させることで位置決め処理が実行され得る。また、焦点調整処理では、焦点Fは中心軸40に近付けられ、または、焦点Fは中心軸40上に設定されもよい。この場合、焦点Fは超音波プローブ12の下方に位置し、Bモード画像の見易い位置に焦点Fの像が位置する。したがって、位置決め処理の作業が容易になる。
【符号の説明】
【0059】
10 HIFU振動子ユニット、12 超音波プローブ、14 プローブ駆動部、16 データ取得部、18 振動子制御部、20 表示部、22 コントローラ、24 カップリング袋、26 振動子筐体、28、送受信部、30 凹面、32 超音波振動子、40 中心軸、42 超音波ビーム走査領域、44 観測面、90 振動子ユニット駆動部、100,102 HIFU照射装置。
【要約】
【課題】本発明の目的は、HIFU照射装置について、治療用超音波の焦点の位置を治療部位に合わせる操作を容易にすることである。
【解決手段】振動子制御部18は、凹面30に沿って配置された複数の超音波振動子32を制御する。データ取得部16は、凹面30の中心軸40上に配置された超音波プローブ12によってBモード画像データを取得する。コントローラ22は、振動子制御部18およびデータ取得部16を制御する。コントローラ22は、複数の超音波振動子32に超音波を送信させているときに、複数の前記超音波振動子のそれぞれから発せられる超音波の遅延時間を調整しながら、Bモード画像データが示すBモード画像上で、複数の超音波振動子32から発せられる超音波の焦点Fを探索する処理を実行する。
【選択図】
図1