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特許7576379積層体、ハードコート塗膜、及び塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】積層体、ハードコート塗膜、及び塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20241024BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241024BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241024BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241024BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241024BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241024BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20241024BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241024BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241024BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/022
B32B27/00 D
B32B27/18 Z
B32B27/40
C09D201/00
C09J7/35
C09J11/04
C09J11/06
C09J201/00
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2022504469
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008553
(87)【国際公開番号】W WO2021177425
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020037112
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020037226
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】白石 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 一也
(72)【発明者】
【氏名】高野橋 寛朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】服部 恭平
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104719(JP,A)
【文献】特開2007-320145(JP,A)
【文献】特開2009-288756(JP,A)
【文献】特開2017-206699(JP,A)
【文献】特表2018-531999(JP,A)
【文献】特開2016-186010(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134416(WO,A1)
【文献】特開2011-006620(JP,A)
【文献】特開2002-338928(JP,A)
【文献】特開2010-070696(JP,A)
【文献】特開2011-011363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤(S1)とを含む接着層を有する接着層付き基材と、
前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層(C)と、
を備える積層体であって、
前記接着層付き基材のヘイズ値H1が、前記積層体のヘイズ値H2よりも大きく、
前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)の質量比が、1:0.3~1:10であり、
前記無機酸化物(G)が連結構造のシリカであり、
前記接着層が、ウレタン化合物をさらに含む、積層体。
【請求項2】
前記H2が、5%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤(S1)とを含む接着層を有する接着層付き基材と、
前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層(C)と、
を備える積層体であって、
前記接着層付き基材の表面粗さRa1が、前記積層体の表面粗さRa2よりも大きく、
前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)の質量比が、1:0.3~1:10であり、
前記無機酸化物(G)が連結構造のシリカであり、
前記接着層が、ウレタン化合物をさらに含む、積層体。
【請求項4】
前記Ra1が、10~500nmである、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記Ra2が、100nm未満である、請求項3又は4に記載の積層体。
【請求項6】
前記遮光剤(S1)が、紫外線吸収剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記接着層が、ヒンダードアミン系光安定剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記ハードコート層(C)が、前記マトリクス成分(B)に分散した重合体ナノ粒子(A)をさらに含み、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMAと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMBとが、HMB/HMA>1の関係を満たし、
前記ハードコート層のマルテンス硬度HMが、100N/mm2以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径が、10nm以上400nm以下である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記ハードコート層(C)中の前記重合体ナノ粒子(A)の体積分率が2%以上80%以下である、請求項8又は9に記載の積層体。
【請求項11】
前記重合体ナノ粒子(A)は、加水分解性珪素化合物(a)を含み、
前記重合体ナノ粒子(A)中の前記加水分解性珪素化合物(a)の含有量が、50質量%以上である、請求項8~10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
前記加水分解性珪素化合物(a)が、下記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに下記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含む、請求項11に記載の積層体。
-R1 n1SiX1 3-n1 (a-1)
(式(a-1)中、R1は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、R1は、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、X1は、加水分解性基を表し、n1は、0~2の整数を表す。)
SiX2 4 (a-2)
(式(a-2)中、X2は、加水分解性基を表す。)
【請求項13】
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
前記ハードコート層(C)が、遮光剤(S2)をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
前記接着層が、前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項16】
前記無機酸化物(G)、前記接着性エマルション粒子(F)、及び前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体からなる群より選択される少なくとも1つの平均粒子径が、2nm以上400nm以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項17】
ASTM D1044に準拠し、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件で前記ハードコート層をテーバー摩耗試験に供したとき、回転数500回におけるヘイズと、前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が、10以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項18】
ASTM D1044に準拠し、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件で前記ハードコート層をテーバー摩耗試験に供したとき、回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が、10以下である、請求項1~17のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項19】
ISO14577-1に準拠したインデンテーション試験から測定される、前記ハードコート層の弾性回復率ηITが、0.50以上である、請求項1~18のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項20】
前記ハードコート層の厚みが、1μm以上100μm以下である、請求項1~19のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項21】
前記マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項22】
前記加水分解性珪素化合物(b)が、下記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに下記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含む、請求項21に記載の積層体。
-R2 n2SiX3 3-n2 (b-1)
(式(b-1)中、R2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、R2は、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、X3は、加水分解性基を表し、n2は、0~2の整数を表す。)
SiX4 4 (b-2)
(式(b-2)中、X4は、加水分解性基を表す。)
【請求項23】
前記無機酸化物(D)の平均粒子径が、2nm以上150nm以下である、請求項1~22のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項24】
前記無機酸化物(D)が、シリカ粒子である、請求項1~23のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項25】
自動車部材用である、請求項1~24のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項26】
接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との混合物、及び/又は、当該無機酸化物(G)と当該接着性エマルション粒子(F)との複合体と、
遮光剤(S1)と、
イソシアネート化合物と
を含む、塗料組成物であって、
前記混合物及び/又は複合体の平均粒子径が、2nm以上2000nm以下であり、
前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との質量比が1:0.3~1:10であり、
前記無機酸化物(G)が連結構造のシリカである、塗料組成物。
【請求項27】
前記遮光剤(S1)が、紫外線吸収剤を含む、請求項26に記載の塗料組成物。
【請求項28】
ヒンダードアミン系光安定剤をさらに含む、請求項26又は27のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項29】
前記無機酸化物(G)のアスペクト比(長径/短径)が、3~25である、請求項26~28のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項30】
前記イソシアネート化合物が、水分散性イソシアネート化合物である、請求項26~29のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項31】
前記水分散性イソシアネート化合物が、ブロックイソシアネートである、請求項30に記載の塗料組成物。
【請求項32】
重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、を含む塗料組成物であって、
ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験から測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAが、0.30以上0.90以下であり、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMAと、前記マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB'とが、HMB'/HMA>1の関係を満たし、
前記マトリクス原料成分(B’)が、無機酸化物(D)を含み、
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有し、
前記重合体ナノ粒子(A)が、ポリ(メタ)アクリレート-シリコーン系の共重合体を含む、塗料組成物。
【請求項33】
遮光剤(S2)をさらに含む、請求項32に記載の塗料組成物。
【請求項34】
前記重合体ナノ粒子(A)及び/又は前記接着性エマルション粒子(F)が、2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)を有する、請求項26~33のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項35】
前記重合体ナノ粒子(A)及び/又は前記接着性エマルション粒子(F)が、水酸基を有する官能基を有する、請求項26~34のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項36】
重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含むハードコート塗膜であって、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMAと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMBとが、HMB/HMA>1の関係を満たし、
前記ハードコート塗膜のマルテンス硬度HMが、100N/mm2以上であり、
前記マトリクス成分(B)が、無機酸化物(D)を含み、
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有し、
前記重合体ナノ粒子(A)が、ポリ(メタ)アクリレート-シリコーン系の共重合体を含む、ハードコート塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、ハードコート塗膜、及び塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(第1の背景技術)
重合により得られる水分散体は、常温あるいは加熱下で乾燥形成した被膜が、バリア性、耐汚染性、耐薬品性、難燃性、耐熱性、耐候性、耐擦過性、耐摩耗性を発現する傾向にあることから、水系塗料として用いられている。このような水系塗料を透明性が要求される用途に用いると、屋外や紫外線に長期間曝露されることに起因し、透明性や曇りといった光学特性、変色、白化、クレーズの発生などが問題となり得る。更に、塗料をトップコートとして用いる場合には、トップコートには耐摩耗性が求められる。耐摩耗性の観点からは、溶剤系塗料が使用されこともある。かかる溶剤系塗料は、塗料や得られる塗膜の性状を維持しつつ有機系の遮光剤を含有させることが比較的容易である。しかしながら、作業現場への衛生状態や地球環境への負荷への配慮から、水系塗料の使用が望まれている。
【0003】
水系塗料の光学特性を改善するための技術として、特許文献1には、耐候性付与の目的で、紫外線吸収剤を重合中に含有させる方法が記載されている。また、特許文献2では、成膜助剤成分に紫外線吸収剤を溶解させ、含有させる方法が記載されている。また、樹脂材料へハードコート性を含有させる技術として、樹脂材料に無機酸化物を添加する方法(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)が記載されている。
【0004】
(第2の背景技術)
樹脂材料は、成形性及び軽量性に優れるが、金属やガラスなどの無機材料と比較し、硬度、バリア性、耐汚染性、耐薬品性、難燃性、耐熱性、耐候性などに劣る場合が多い。中でも、樹脂材料の硬度は、無機ガラスと比較し著しく低く、表面が傷つきやすいため、ハードコートを施して使用することが多いが、ハードコート塗膜の煤塵などへの耐汚染性や高温高湿下での性能保持、紫外線に長期間曝露された際の外観の維持が難しく、ハードコートを施した樹脂材料は、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を必要とする用途には使用されていない。
【0005】
樹脂材料に耐摩耗性を付与する目的で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた方法(例えば、特許文献5参照)、樹脂材料に無機酸化物を添加する方法(例えば、特許文献3及び特許文献6参照)、及び樹脂材料に重合体粒子を添加する方法(例えば、特許文献7参照)が提案されている。また、樹脂材料に耐候性を付与する目的では、アクリル系重合体と酸化セリウムとを併用することが提案されている(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-12505号公報
【文献】特開平7-173404号公報
【文献】特開2006-63244号公報
【文献】特開平8-238683号公報
【文献】特開2014-109712号公報
【文献】特開平8-238683号公報
【文献】特開2017-114949号公報
【文献】特開平5-339400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(第1の課題)
特許文献1や特許文献2の方法は、水系塗料へ耐候性を付与する一般的な方法であるが、塗膜中で紫外線吸収剤の含有できる量が少なく、高い耐候性を付与することは困難である。また、基材上に配される塗膜としては、密着性が不足している。
特許文献3及び特許文献4の方法は、樹脂材料に耐摩耗性を付与する一般的な方法であるが、溶剤系塗料を用いており、水系塗料に適用することは容易ではない。
上記のとおり、従来技術において水系塗料から得られる塗膜付きの基材については、高い耐摩耗性及び光学特性の観点から、依然として改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い耐摩耗性、密着性及び光学特性を有する積層体を提供することを第1の目的とする。
【0009】
(第2の課題)
特許文献5や特許文献3の方法は、樹脂材料に耐摩耗性を付与する一般的な方法であるが、高い耐摩耗性を付与することは困難である。
特許文献6の方法は、ハードコート塗膜として柔軟なシリコーンポリマーと、硬質な無機酸化物微粒子と、を用いた一般的な方法であるが、マトリクス成分に該当するシリコーンポリマーが十分な硬度を有していないために耐摩耗性が十分ではない。
特許文献7の方法は、ハードコート塗膜として重合体粒子、シリコーンポリマー、無機酸化物微粒子と、を用いた方法であり、塗膜の物性に関する記載はあるが、各成分の物性に関する記載はなく、耐摩耗性が十分ではなく、耐汚染性に関する記載はない。
特許文献8によれば、耐候性においてある程度の改善はみられるものの、耐摩耗性及び耐久性を加味した物性バランスの観点からは十分な水準とはいえない。
上記のとおり、従来技術におけるハードコート塗膜については、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性の観点から、依然として改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を有する、ハードコート塗膜、ハードコート塗膜付き基材、塗料組成物及び窓材を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の接着層付き基材とハードコート層とを備える積層体とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
[1]
基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤(S1)とを含む接着層を有する接着層付き基材と、
前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層(C)と、
を備える積層体であって、
前記接着層付き基材のヘイズ値H1が、前記積層体のヘイズ値H2よりも大きい、積層体。
[2]
前記H2が、5%以下である、[1]に記載の積層体。
[3]
基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤(S1)とを含む接着層を有する接着層付き基材と、
前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層(C)と、
を備える積層体であって、
前記接着層付き基材の表面粗さRa1が、前記積層体の表面粗さRa2よりも大きい、積層体。
[4]
前記Ra1が、10~500nmである、[3]に記載の積層体。
[5]
前記Ra2が、100nm未満である、[3]又は[4]に記載の積層体。
[6]
前記遮光剤(S1)が、紫外線吸収剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]
前記接着層が、ヒンダードアミン系光安定剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]
前記ハードコート層(C)が、前記マトリクス成分(B)に分散した重合体ナノ粒子(A)をさらに含み、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとが、HM/HM>1の関係を満たし、
前記ハードコート層のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]
前記重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径が、10nm以上400nm以下である、[8]に記載の積層体。
[10]
前記ハードコート層(C)中の前記重合体ナノ粒子(A)の体積分率が2%以上80%以下である、[8]又は[9]に記載の積層体。
[11]
前記重合体ナノ粒子(A)は、加水分解性珪素化合物(a)を含み、
前記重合体ナノ粒子(A)中の前記加水分解性珪素化合物(a)の含有量が、50質量%以上である、[8]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]
前記加水分解性珪素化合物(a)が、下記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに下記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含む、[11]に記載の積層体。
-R n1SiX 3-n1 (a-1)
(式(a-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n1は、0~2の整数を表す。)
SiX (a-2)
(式(a-2)中、Xは、加水分解性基を表す。)
[13]
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する、[1]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]
前記ハードコート層(C)が、遮光剤(S2)をさらに含む、[1]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]
前記無機酸化物(G)が球状及び/又は連結構造のシリカである、[1]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16]
前記接着層が、前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体を含む、[1]~[15]のいずれかに記載の積層体。
[17]
前記無機酸化物(G)、前記接着性エマルション粒子(F)、及び前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体からなる群より選択される少なくとも1つの平均粒子径が、2nm以上400nm以下である、[1]~[16]のいずれかに記載の積層体。
[18]
前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)の質量比が、1:0.1~1:10である、[1]~[17]のいずれかに記載の積層体。
[19]
前記接着層が、イソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物をさらに含む、[1]~[18]のいずれかに記載の積層体。
[20]
ASTM D1044に準拠し、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件で前記ハードコート層をテーバー摩耗試験に供したとき、回転数500回におけるヘイズと、前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が、10以下である、[1]~[19]のいずれかに記載の積層体。
[21]
ASTM D1044に準拠し、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件で前記ハードコート層をテーバー摩耗試験に供したとき、回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が、10以下である、[1]~[20]のいずれかに記載の積層体。
[22]
ISO14577-1に準拠したインデンテーション試験から測定される、前記ハードコート層の弾性回復率ηITが、0.50以上である、[1]~[21]のいずれかに記載の積層体。
[23]
前記ハードコート層の厚みが、1μm以上100μm以下である、[1]~[22]のいずれかに記載の積層体。
[24]
前記マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)を含む、[1]~[23]のいずれかに記載の積層体。
[25]
前記加水分解性珪素化合物(b)が、下記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに下記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含む、[24]に記載の積層体。
-R n2SiX 3-n2 (b-1)
(式(b-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n2は、0~2の整数を表す。)
SiX (b-2)
(式(b-2)中、Xは、加水分解性基を表す。)
[26]
前記無機酸化物(D)の平均粒子径が、2nm以上150nm以下である、[1]~[25]のいずれかに記載の積層体。
[27]
前記無機酸化物(D)が、シリカ粒子である、[1]~[26]のいずれかに記載の積層体。
[28]
自動車部材用である、[1]~[27]のいずれかに記載の積層体。
[29]
接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との混合物、及び/又は、当該無機酸化物(G)と当該接着性エマルション粒子(F)との複合体と、
遮光剤(S1)と、
を含む、塗料組成物であって、
前記混合物及び/又は複合体の平均粒子径が、2nm以上2000nm以下であり、
前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との質量比が1:0.1~1:10である、塗料組成物。
[30]
前記遮光剤(S1)が、紫外線吸収剤を含む、[29]に記載の塗料組成物。
[31]
ヒンダードアミン系光安定剤をさらに含む、[29]又は[30]のいずれかに記載の塗料組成物。
[32]
前記無機酸化物(G)が、球状及び/又は連結構造のシリカである、[29]~[31]のいずれかに記載の塗料組成物。
[33]
前記無機酸化物(G)のアスペクト比(長径/短径)が、3~25である、[29]~[32]のいずれかに記載の塗料組成物。
[34]
イソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物をさらに含む、[29]~[33]いずれかに記載の塗料組成物。
[35]
前記イソシアネート化合物が、水分散性イソシアネート化合物である、[34]に記載の塗料組成物。
[36]
前記水分散性イソシアネート化合物が、ブロックイソシアネートである、[35]に記載の塗料組成物。
[37]
重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、を含む塗料組成物であって、
ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験から測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAが、0.30以上0.90以下であり、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’とが、HMB’/HM>1の関係を満たし、
前記マトリクス原料成分(B’)が、無機酸化物(D)を含み、
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する、塗料組成物。
[38]
遮光剤(S2)をさらに含む、[37]に記載の塗料組成物。
[39]
前記重合体ナノ粒子(A)及び/又は前記接着性エマルション粒子(F)が、2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)を有する、[29]~[38]のいずれかに記載の塗料組成物。
[40]
前記重合体ナノ粒子(A)及び/又は前記接着性エマルション粒子(F)が、水酸基を有する官能基を有する、[29]~[39]のいずれかに記載の塗料組成物。
[41]
重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含むハードコート塗膜であって、
前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとが、HM/HM>1の関係を満たし、
前記ハードコート塗膜のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上であり、
前記マトリクス成分(B)が、無機酸化物(D)を含み、
前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する、ハードコート塗膜。
【発明の効果】
【0012】
(第1の効果)
本発明によれば、高い耐摩耗性、密着性及び光学特性を有する積層体を提供できる。
【0013】
(第2の効果)
本発明によれば、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を有する、ハードコート塗膜、ハードコート塗膜付き基材、塗料組成物及び窓材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
<<第1実施形態>>
ここでは、本実施形態に係る第1の態様(本明細書中、「第1実施形態」ともいう。)について、詳細に説明する。
【0016】
<積層体>
本実施形態(以降、特に断りがない限り、<<第1実施形態>>の項における「本実施形態」は第1実施形態を意味する。)の積層体は、基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤とを含む接着層を有する接着層付き基材と、前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層と、を備える積層体であって、前記接着層付き基材のヘイズ値H1が、前記積層体のヘイズ値H2よりも大きい。本実施形態の積層体は、上述のように構成されているため、高い耐摩耗性、密着性及び光学特性を有する。
本実施形態において、密着性の観点から、H2に対するH1の比(H1/H2)が2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。
また、本実施形態において、上述したH1及びH2の大小関係が確認し難い場合であっても、表面粗さを評価することで当該大小関係を推定することもできる。すなわち、本実施形態の積層体は、基材、及び前記基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤(S1)とを含む接着層を有する接着層付き基材と、前記接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むハードコート層(C)と、を備える積層体であって、前記接着層付き基材の表面粗さRa1が、前記積層体の表面粗さRa2よりも大きいものと特定することができる。
本実施形態において、密着性の観点から、Ra2に対するRa1の比(Ra1/Ra2)が1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、5以上であることが特に好ましい。
本実施形態の積層体は、上述のように構成されているため、高い耐摩耗性、密着性及び光学特性を有する。本実施形態の積層体は、高いレベルでの耐摩耗性、密着性及び光学特性を発現するため、以下に限定されないが、例えば、建材、自動車部材や電子機器や電機製品等のハードコートとして有用であり、とりわけ自動車部材用とすることが好ましい。
【0017】
[接着層付き基材]
本実施形態における接着層付き基材は、基材と、基材上に配されると共に接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤とを含む接着層と、を有する。本実施形態において、接着層は、少なくとも基材の片面及び/又は両面に配される。
【0018】
[基材]
本実施形態における基材としては、特に限定されないが、樹脂、金属、ガラス等が挙げられる。基材の形状としては、以下に限定されないが、例えば、板状、凹凸を含む形状、曲面を含む形状、中空の形状、多孔体の形状、それらの組み合わせ、などが挙げられる。また、基材の種類は問わず、例えば、シート、フィルム、繊維、などが挙げられる。その中で、ハードコート性の付与や成形性の観点から樹脂であることが好ましい。基材として用いられる樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。基材として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂などが挙げられる。また基材として用いられる熱硬化性樹脂としては、以下に限定されないが、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、SBゴム、天然ゴム、熱硬化性エラストマーなどが挙げられる。
【0019】
[接着層]
本実施形態に接着層としては、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と遮光剤とを含むものである。
【0020】
[接着性エマルション粒子(F)]
本実施形態における接着性エマルション粒子(F)は、柔軟性付与と基材への密着性向上の役割を果たすものである。接着性エマルション粒子(F)は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂などのポリカルボニル化合物、シリコーン化合物などを1種又は2種以上から構成される粒子である。本実施形態において、接着性エマルション粒子(F)は、ポリ(メタ)アクリレート系であることが好ましい。
【0021】
本実施形態における接着性エマルション粒子(F)の調製方法としては、特に限定されないが、水及び乳化剤の存在下に、ビニル単量体を重合して得られる構造であることが好ましい。このようにして得られる接着性エマルション粒子(F)が接着層に含まれる場合、基材への密着性の維持により優れる傾向にある。
【0022】
ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アルキル部の炭素数が1~50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0025】
上記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、4-ビニルトルエン等が挙げられる。
【0027】
シアン化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0028】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの2塩基酸のハーフエステル等が挙げられる。カルボキシル基含有のビニル単量体を用いる場合、本実施形態における接着性エマルション粒子(F)にカルボキシル基を導入することができ、粒子間の静電的反発力をもたせることでエマルションとしての安定性を向上させ、例えば攪拌時の凝集といった外部からの分散破壊作用への抵抗力が向上する傾向にある。この際、静電的反発力をさらに向上させる観点から、上記導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
【0029】
上記水酸基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート等のフマル酸のヒドロキシアルキルエステル;アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート;プロピレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート;、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
【0030】
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0031】
(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0032】
上記エポキシ基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル基含有ビニル単量体等が挙げられる。グリシジル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0033】
上記カルボニル含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
また、上記以外のビニル単量体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p-t-ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0035】
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等を例示することができる。具体的には、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
上記シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などの加水分解縮合物が挙げられる。
【0036】
前記接着性エマルション粒子(F)は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
【0037】
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エレミノールJS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムルS-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロンHS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸のアンモニウム塩、アリルスルホン酸のナトリウム塩、アリルスルホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
【0038】
[接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径]
本実施形態における接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径は、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径は、特に限定されないが、300nm以下であることが好ましい。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径を上記範囲に調整することにより、基材との接触面積向上により密着性がより一層優れた接着層を形成できる傾向にある。また、得られる接着層の透明性が向上する観点から、平均粒子径は200nm以下であることがより好ましく、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0039】
[無機酸化物(G)]
本実施形態における接着層は、ハードコート層との相互作用による密着性向上の観点から、無機酸化物(G)を含む。本実施形態における接着層は、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)とを含むことで、接着層の表面粗度が大きくなり、これによって密着性が向上するものと考えられる。接着層の表面粗度については、例えば、熱勾配試験機を用いて、JIS K6828-2に準拠して測定される最低造膜温度を接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)とで比較することにより、評価することができる。すなわち、接着性エマルション粒子(F)の最低造膜温度T1が、無機酸化物(G)の最低造膜温度T2よりも小さいことにより、接着層が十分な表面粗度を有することを間接的に確認することができる。最低造膜温度T1及びT2の具体的な測定方法としては、後述する実施例に記載の方法に基づくものとする。
【0040】
本実施形態における無機酸化物(G)の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、コバルト、銅などの酸化物が挙げられる。これらは単体であっても混合物でもよい。上記したものの中でも、無機酸化物(G)は、シリカ粒子であることが好ましい。一方、光学特性を高める観点からは、無機酸化物(G)は、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化スズ及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0041】
本実施形態における無機酸化物(G)の一次平均粒子径は、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、一次平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは4nm以上50nm以下である。一次平均粒子径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
無機酸化物(G)としては、特に限定されないが、後述する加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点及びハードコート層との密着性の観点から、乾式シリカやコロイダルシリカに代表される、シリカ粒子が好ましい。水性分散液の形態でも使用できるため、コロイダルシリカが好ましい。
【0043】
[無機酸化物(G)として好適に用いられるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。
市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0044】
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックスHS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
【0045】
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、TOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)などが挙げられる。
【0046】
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL、株式会社トクヤマ製レオロシールなどが挙げられる。
【0047】
シリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
【0048】
[無機酸化物(G)の形状]
さらに、本実施形態における無機酸化物(G)の形状は、以下に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、鎖状などのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。本実施形態において、積層体の硬度及び透明性の観点から、無機酸化物(G)は、球状、及び/又は数珠状や鎖状等の連結構造を有するものであることが好ましい。さらに、積層体の密着性の観点から、無機酸化物(G)は、数珠状や鎖状等の連結構造を有するものことがより好ましい。ここで、数珠状とは、球状の一次粒子が数珠状に連結した構造であり、鎖状とは、球状の一次粒子が鎖状に連結した構造である。本実施形態においては、無機酸化物(G)が球状及び/又は連結構造を有するシリカであることがとりわけ好ましい。
数珠状又は鎖状の無機酸化物(G)のアスペクト比(長径/短径)は3~25が好ましい。密着性の観点から、アスペクト比(長径/短径)は3以上が好ましい。また、透明性の観点から、アスペクト比(長径/短径)は25以下が好ましい。アスペクト比は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0049】
[接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体]
無機酸化物(G)は予め接着性エマルション粒子(F)と複合化したものであってもよい。接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体は、例えば、無機酸化物(G)の存在下に、前述した接着性エマルション粒子(F)を構成するビニル単量体を重合することで得られる。当該ビニル単量体は、無機酸化物(G)との相互作用の観点から、前述した2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を含むことが好ましい。無機酸化物(G)の水酸基と2級及び/又は3級アミド基の水素結合により、好ましく複合体を形成することができる。
【0050】
本実施形態において、無機酸化物(G)、前記接着性エマルション粒子(F)、及び前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体からなる群より選択される少なくとも1つの平均粒子径が、透明性、密着性の観点から2nm以上400nm以下であることが好ましい。上記平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。ここで、本実施形態における接着層は、後述する塗料組成物(J)を基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができ、したがって、塗料組成物(J)における無機酸化物(G)、前記接着性エマルション粒子(F)、及び前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体の平均粒子径が既知であれば、それらは対応する接着層中の無機酸化物(G)、前記接着性エマルション粒子(F)、及び前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との複合体の平均粒子径に良く一致するものとして、接着層における各平均粒子径を決定することができる。
【0051】
接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比は密着性の観点から1:0.1~1:10が好ましく、1:0.3~1:5がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、本実施形態における接着層は、後述する塗料組成物(J)を基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができ、したがって、塗料組成物(J)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比が既知であれば、当該質量比は対応する接着層中の接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比に良く一致するものとして、接着層における質量比を決定することができる。
【0052】
上記接着層の厚みは、密着性の観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上あり、透明性の観点から、好ましくは100.0μm以下であり、より好ましくは50.0μm以下である。
【0053】
[遮光剤]
本実施形態の接着層は、光学特性を確保する観点から、接着性エマルション粒子(F)及び無機酸化物(G)に加え、遮光剤をさらに含む。遮光剤としては、特に限定されないが、光学特性を高める観点から、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤の具体例としては、以下に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノールなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、TINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、TINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN PR25、HOSTAVIN B-CAP、HOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)、などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、HOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)、などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート、などのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)、などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、UV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、ヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。この中で、紫外線吸収能の観点から、紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、アニリド系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0054】
[接着層に含んでもよい成分]
本実施形態における接着層は、接着性エマルション粒子(F)、無機酸化物(G)及び遮光剤を含むものであれば特に限定されず、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム・エラストマーなどが挙げられ、その中でもアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが好ましい。また、接着層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでもよい。添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、触媒などが挙げられ、光学特性の観点から、光安定剤及び/又は酸化防止剤を含むことが好ましい。同様の観点から、光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等が挙げられる。
架橋剤は、以下に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤などが挙げられる。
光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、TINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系光安定剤;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤;ユーダブルE-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、ユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有する重合体等が挙げられる。
上述した各成分は1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0055】
紫外線吸収剤の含有量は、光学特性の観点から接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、12質量部以上が更に好ましく、20質量部以上がより更に好ましい。また、溶解性の観点から、接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、300質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。
光安定剤の含有量は、光学特性の観点から、接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上がより更に好ましい。また、塗料安定性の観点から、接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
酸化防止剤の含有量は、光学特性の観点から、接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上がより更に好ましい。また、塗料安定性の観点から、接着性エマルション粒子(F)の固形分100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0056】
[イソシアネート化合物]
本実施形態における接着層は、接着層と基材との密着性向上の観点から、イソシアネート系架橋剤として、イソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物をさらに含有することが好ましい。イソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物をさらに含む場合、前述した水酸基含有ビニル単量体を含む単量体から重合された接着性エマルション粒子(F)を用いることが好ましい。その場合、接着性エマルション粒子(F)の水酸基とイソシアネート化合物が塗膜形成時にウレタン結合を形成し、塗膜密着性、塗膜強度が向上する傾向にある。
【0057】
イソシアネート化合物とは、少なくともイソシアネート基を1分子中に1個以上有する化合物のことをいう。イソシアネート化合物は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であってよい。
該イソシアネート化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネ-ト;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナートエチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエートなどの脂肪族トリイソシアネート;1,3-または1,4-ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3-または1,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル(3-イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-または2,6-ジイソシアナートメチルノルボルナンなどの脂環族ジイソシアネ-ト;2,5-または2,6-ジイソシアナートメチル-2-イソシネートプロピルノルボルナンなどの脂環族トリイソシアネート;m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネートなどのアラルキレンジイソシアネート;m-またはp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-または2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェートなどの芳香族トリイソシアネート、さらには上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するジイソシアネートあるいはポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを種々のアルコールと反応せしめて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを、ポリヒドロキシ化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリアミン化合物の如き活性水素を含有する化合物と反応させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。さらに分子内にアルコキシシラン部位及び/又はシロキサン部位を有するイソシアネート化合物として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等及び/又は3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の加水分解縮合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用できる。イソシアネート化合物は、イソシアネート基をブロック化剤と反応させたブロックポリイソシアネートであってもよい。
上記ブロック化剤としては、特に限定されないが、例えば、オキシム系化合物、アルコール系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、フェノール系化合物、アミン系化合物、活性メチレン系化合物、イミダゾール系化合物、及びピラゾール系化合物が挙げられる。オキシム系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。アルコール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、及び2-ブトキシエタノールが挙げられる。酸アミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、及びγ-ブチロラクタムが挙げられる。酸イミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸イミド、及びマレイン酸イミドが挙げられる。フェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、及びヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。アミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、及びイソプロピルエチルアミンが挙げられる。活性メチレン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、及びアセチルアセトンが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、及び2-メチルイミダゾールが挙げられる。ピラゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、及び3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0058】
また、上記ポリイソシアネート化合物の中では、脂肪族系あるいは脂環族系のジイソシアネートまたはトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネートあるいは、それらから誘導されるポリイソシアネートが、耐候性やポットライフの面で特に好ましい。さらに該ポリイソシアネートとしては、分子内にビュレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するものが好ましい。ビュレット構造を有するものは接着性に優れている場合が多い。イソシアヌレート構造を有するものは耐候性に優れている場合が多い。長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン構造を有するものは弾性及び伸展性に優れている場合が多い。ウレトジオン構造あるいはアロファネート構造を有するものは低粘度である場合が多い。
【0059】
イソシアネート化合物としては、水分散性の点からは、上記1分子中にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物と、ノニオン性及び/又はイオン性の親水基を有する水酸基含有親水性化合物とをイソシアネート基/水酸基の当量比が1.05~1000の範囲で反応させてなる水分散性イソシアネート化合物が好ましい。より好ましくは当量比が2~200、さらに好ましくは4~100の範囲である。当量比が1.05以上であることで、親水性ポリイソシアネート中のイソシアネート基含有率が所定のレベル以上になるため、架橋性水系被覆組成物中の架橋点が多くなり、硬化速度の増大あるいは塗膜等の被覆物の強度の向上につながり好ましい。当量比が1000以下であることで、親水性が発現し、好ましい。かかる水分散性イソシアネート化合物としては特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、旭化成(株)製のWT30-100や旭化成(株)製のWM44-L70Gが上述した特徴を備えるものとして好ましく用いられる。
【0060】
水分散性イソシアネート化合物としては、従来公知の手法により親水基を導入してなるものであれば特に限定されず使用できる。例えば、一般式RO(RO)-H(ここでRは炭素数1から30のアルキル基または芳香環を2つ以上含有する基を表し、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示される化合物(m)とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物や、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物、アルコキシポリアルキレングリコールとジアルカノ-ルアミンとを反応させることにより得られる乳化剤とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物などを挙げることができる。これらの中で、化合物(m)とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物は、水分散性に優れるため、特に好ましい。
【0061】
化合物(m)としては、例えばポリメチレングリコ-ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノエチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシテトラメチレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコールポリブチレングリコ-ルモノメチルエーテルなどのアルコキシポリアルキレングリコ-ル類、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基、モノ(又はジ,トリ)スチリル-メチル-フェニル基、トリベンジルフェニル基、β-ナフチル基などの芳香環を2つ以上含有する基を有するノニオン型界面活性剤を挙げることができる。中でもポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基を有するノニオン型界面活性剤が、自己乳化能、およびポットライフの点で好ましい。
これら化合物(m)としては、好ましくは分子量が100~10000より好ましくは300~5000の範囲を有するものが好適に使用できる。
【0062】
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の親水性基としては、公知の各種アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられ、ノニオン性基であることが好ましい。ノニオン性基であることでコーティング組成物のポットライフが著しく延長し、またポリイソシアネート油滴の粒子径が小さくなるので、形成される塗膜の耐水性が更に向上する傾向にある。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の具体例としては、例えばアクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。これらの中でも、形成される塗膜の耐候性の観点からアクリル系重合体が好ましい。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体として好適なアクリル系重合体を得るための重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、懸濁重合、乳化重合又は溶液重合が挙げられる。好ましくは親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)および水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(ii)を溶液重合することによって得られるアクリル系重合体であり、必要に応じてこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)を使用することもできる。
【0063】
親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)としては、例えばメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類の他、(メタ)アクリルアミド系単量体、アニオン型ビニル単量体等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類のように、親水性基と水酸基を分子内に併せ持つエチレン性不飽和単量体を使用することもできる。これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
また、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類、カルボニル基含有ビニル単量体、オレフィン類、ジエン類、ハロオレフィン類、ビニルエーテル類、アリルエステル類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
親水性基及び水酸基を含有するビニル系重合体は、好ましくは重量平均分子量(ポリスチレン換算GPC法)2000~100000、より好ましくは3000~50000の範囲を有するものが好適に使用できる。
【0064】
塗料組成物(J)におけるイソシアネート化合物(M)の水酸基含有ビニル単量体を含む単量体から重合された接着性エマルション粒子(F)に対する含有量は、接着性エマルション粒子(F)中に含まれる水酸基のモル数とイソシアネート化合物(C)中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X=イソシアネート基モル数/水酸基モル数)が0.02以上であることが好ましい。Xは、形成される塗膜と基材との密着性の観点で0.1以上であることがより好ましく、塗膜の耐擦過性の観点から0.15以上であることがさらに好ましい。また、塗料組成物の安定性(ゲル化、高粘度化に対する耐性)の観点から、Xは10以下が好ましく、形成される塗膜の低い水接触角、高透明性(低HAZE)の観点から5以下がより好ましい。比(X)は、0.02以上10以下、0.02以上5以下、0.1以上10以下、0.1以上5以下、0.15以上10以下、0.15以上5以下であってよい。
【0065】
一実施態様として、イソシアネート化合物の接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)に対する質量比(イソシアネート化合物の質量/接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との合計質量)は、密着性の観点から0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。また、この質量比は、透明性の観点から、1.0以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
【0066】
また、イソシアネート化合物(M)の粘度は、好ましくは1~50000mPa・s(20℃)、より好ましくは1~20000mPa・s(20℃)、さらに好ましくは10~10000mPa・s(20℃)である。イソシアネート化合物(C)の粘度は、10~50000mPa・s(20℃)、10~20000mPa・s(20℃)、または10~10000mPa・s(20℃)であってよい。ポリイソシアネート化合物(M)の粘度は、50000mPa・s以下で水への分散が容易であるため好ましい。ここでの粘度は、一般的なE型粘度計で測定可能である。一実施形態において、粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製RE-80U)を用いて、回転数2.5rpm、25℃で測定される。かかるイソシアネート化合物としては特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、旭化成(株)製のWT30-100や旭化成(株)製のWM44-L70Gが上述した特徴を備えるものとして好ましく用いられる。
【0067】
上述した各種イソシアネート化合物は、その一部又は全量がポリオールと反応する等してウレタン化合物の形態となっていてもよい。
【0068】
<接着層の製法>
本実施形態における接着層の製法は、特に限定されないが、例えば、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)と、遮光剤と、適宜その他の成分とを溶媒に分散、溶解させた塗料組成物(J)を、前記基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができる。なお、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)とは、予めこれらを複合体としたものを用いてもよい。さらに、前記塗装方法としては、以下に限定されないが、例えばスプレー吹付法、フローコート法、刷毛塗法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。なお、前記塗装された塗料組成物(J)は、好ましくは室温~250℃、より好ましくは40℃~150℃での熱処理や紫外線、赤外線照射などにより塗膜化することができる。さらに、この塗装は、すでに成型した基材だけでなく、防錆鋼板を含むプレコートメタルのように、成型加工する前にあらかじめ平板に塗装することも可能である。
【0069】
[塗料組成物(J)]
本実施形態における塗料組成物(J)は、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との混合物、及び/又は、当該無機酸化物(G)と当該接着性エマルション粒子(F)との複合体と、遮光剤(S1)と、を含む、塗料組成物であって、前記混合物及び/又は複合体の平均粒子径が、2nm以上2000nm以下であり、前記無機酸化物(G)と前記接着性エマルション粒子(F)との質量比が1:0.1~1:10であることが好ましい。
上記平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、塗料組成物(J)が接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との混合物を含む場合、接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径と無機酸化物(G)の一次平均粒子径との双方が2nm以上2000nm以下であるとき、当該混合物の平均粒子径が2nm以上2000nm以下であるというものとする。
【0070】
塗料組成物(J)は、溶媒を含むことができ、当該溶媒としては後述する塗料組成物(I)について使用できるものを適宜採用することができる。
【0071】
塗料組成物(J)に含まれる各成分について、以下で言及のない点についての詳細は接着層に含まれる各成分について前述したとおりである。
【0072】
[接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体]
塗料組成物(J)に含まれる接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)は、それぞれ混合してもよく、予め接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体を形成したものであってもよい。接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体は、例えば無機酸化物(G)の存在下に、前述した接着性エマルション粒子(F)のビニル単量体を重合することで得られる。
ビニル単量体は無機酸化物(G)との相互作用の観点から、前述した2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を含むことが好ましい。無機酸化物(G)の水酸基と2級及び/又は3級アミド基の水素結合により、複合体が好ましく形成される。
【0073】
本実施形態における、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)との混合物及び/又は接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体の平均粒子径は、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、20nm以上がより好ましく、透明性の観点から2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは1000nm以下であり、更に好ましくは500nm以下である。
上記平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができ、例えば、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比率や固形分濃度によって上述した範囲に調整することができる。
【0074】
塗料組成物(J)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比は1:0.1~1:10が好ましく、1:0.3~1:5がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。
【0075】
塗料組成物(J)における無機酸化物(G)は、球状及び/又は連結構造のシリカであることが好ましく、接着層に含まれる球状及び/又は連結構造のシリカとして前述したものを適宜採用することができる。球状のシリカとしては特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスCやスノーテックスOSが好ましく用いられる。また、連結構造のシリカとしても特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスPSSOが好ましく用いられる。
【0076】
塗料組成物(J)における無機酸化物(G)のアスペクト比(長径/短径)は、3~25であることが好ましい。上記アスペクト比は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。上記したようなアスペクト比を有する無機酸化物(G)としては特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスPSSOが好ましく用いられる。
【0077】
塗料組成物(J)は、遮光剤(S1)を含み、接着層に含まれる遮光剤(S1)として前述したものを適宜採用することができる。本実施形態においては、遮光剤(S1)が、紫外線吸収剤を含むことが好ましく、接着層に含まれる紫外線吸収剤として前述したものを適宜採用することができる。
【0078】
塗料組成物(J)は、ヒンダードアミン系光安定剤をさらに含むことが好ましく、接着層に含まれるヒンダードアミン系光安定剤として前述したものを適宜採用することができる。
【0079】
塗料組成物(J)において、前記接着性エマルション粒子(F)が、2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)を有することが好ましい。2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)としては、特に限定されないが、例えば、後述する塗料組成物(I)における2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)として例示するものを適宜採用することができる。
【0080】
塗料組成物(J)において、前記接着性エマルション粒子(F)が、水酸基を有する官能基を有することが好ましい。水酸基を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、後述する塗料組成物(I)における水酸基を有する官能基として例示するものを適宜採用することができる。
【0081】
[イソシアネート化合物]
塗料組成物(J)は、接着層と基材との密着性向上の観点からイソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物を含有することが好ましく、イソシアネート化合物が水分散性イソシアネート化合物であることがより好ましく、水分散性イソシアネート化合物がブロックイソシアネートであることがさらに好ましい。イソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物としては、特に限定されないが、例えば、接着層におけるイソシアネート化合物及び/又はウレタン化合物として前述したものを適宜採用することができる。また、水分散性イソシアネート化合物ないしブロックイソシアネートも、接着層における水分散性イソシアネート化合物及びブロックイソシアネートとして前述したものを適宜採用することができる。
【0082】
[塗料組成物(J)の性状]
塗料組成物(J)は、塗装性の観点から好ましい固形分濃度は0.01~60質量%、より好ましくは1~40質量%である。また、塗装性の観点から、塗料組成物(J)の20℃における粘度としては、好ましくは0.1~100000mPa・s、好ましくは1~10000mPa・sである。
【0083】
[ハードコート層]
本実施形態におけるハードコート層(以下、「層(C)」ともいう。)は、接着層付き基材上に配されると共に無機酸化物(D)を含有するマトリクス成分(B)を含むものであり、積層体の耐久性に寄与する。なお、本明細書において、マルテンス硬度HMが100N/mm以上である層を特に「ハードコート層」と称する。
【0084】
本実施形態において、耐摩耗性の観点から、ハードコート層は、ハードコート層が、前記マトリクス成分(B)に分散した重合体ナノ粒子(A)をさらに含み、前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとが、HM/HM>1の関係を満たし、前記ハードコート層のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上であることが好ましい。
なお、上記マルテンス硬度HM及びマルテンス硬度HMの大小関係を確認し難い場合でも、後述する重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)の凝着力を比較することで、前述したマルテンス硬度の大小関係を推定することができる。凝着力は、低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高いことを表す。具体的には、上述した好ましい層(C)は、次のように特定することもできる。すなわち、上述した好ましい層(C)は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含み、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の凝着力モードで測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fと、前記マトリクス成分(B)の凝着力Fとが、F/F>1の関係を満たし、前記ハードコート層のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上である。
【0085】
本実施形態の層(C)において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)に分散していることが好ましい。本実施形態における「分散」とは、重合体ナノ粒子(A)を分散相とし、マトリクス成分(B)を連続相とし、重合体ナノ粒子(A)がマトリクス成分(B)中へ均一または構造を形成しながら分布することである。上記分散は、ハードコート層の断面SEM観察によって確認することができる。本実施形態におけるハードコート層においては、重合体ナノ粒子(A)が、マトリクス成分(B)に分散していることにより、高い耐摩耗性を有する傾向にある。
【0086】
[マルテンス硬度]
本実施形態におけるマルテンス硬度は、ISO14577-1に準拠した硬度であり、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において2mNでの押し込み深さから算出される値である。本実施形態におけるマルテンス硬度は、例えば、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)を用いて測定でき、押し込み深さが浅い程マルテンス硬度は高く、深い程マルテンス硬度は低い。
【0087】
[凝着力]
本実施形態における凝着力は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定することができ、凝着力が低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高い。凝着力の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、島津製作所製SPM-970、SPM-9700HT、Bruker AXS社製Dimension ICON、日立ハイテクサイエンス社製AFM5000II等を用いて測定することができる。
【0088】
[他の硬度]
上述した本実施形態におけるマルテンス硬度や凝着力の大小関係は、他の硬度を指標として測定値の大小関係を確認することによっても推定することができる。他の硬度としては、材料に力が加えられた際の、材料の変形のしにくさを示す指標であれば特に限定されず、微小硬度計やナノインデンテーション測定機器に代表される押し込み硬度計で測定されるビッカース硬度、インデンテーション硬度や、剛体振り子型物性試験器に代表される振り子型粘弾性で測定される対数減衰率で表現される指標を挙げることができる。その他、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定される、位相、摩擦力、粘弾性、吸着力、硬さ及び弾性率で表現される指標を挙げることもできる。これらの指標において、マトリクス成分(B)の硬度が重合体ナノ粒子(A)の硬度よりも高いことが確認されれば、マルテンス硬度や凝着力についても、マトリクス成分(B)の方が重合体ナノ粒子(A)よりも硬質であることが推定される。
【0089】
[重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMとマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HM
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとは、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
HM/HM>1 式(1)
式(1)は、柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、層(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与できる傾向にある。この要因としては、以下に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。HMの範囲としては、衝撃吸収性の観点から、50N/mm以上が好ましく、100N/mm以上がより好ましく、成膜性の観点から2000N/mm以下が好ましく、800N/mm以下がより好ましく、350N/mm以下が更に好ましい。HMの範囲としては衝撃吸収性の観点から100N/mm以上が好ましく、150N/mm以上がより好ましく、成膜性の観点から4000N/mm以下が好ましく、2000N/mm以下がより好ましい。
なお、層(C)は、後述する塗料組成物(I)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定される塗料組成物(I)中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMの値は、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMによく一致するものとして、層(C)におけるマルテンス硬度HMの値を決定することができる。
また、マトリクス成分(B)は、後述するマトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物に該当する。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるマトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’の値は、対応するマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMによく一致するものとして、マルテンス硬度HMの値を決定することができる。
上記HM及びHMの値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0090】
[重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fとマトリクス成分(B)の凝着力F
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fと、マトリクス成分(B)の凝着力Fとは、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
/F>1 式(2)
上記式(1)と同様に、式(2)も柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、層(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与できる傾向にある。この要因としては、以下に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。
上述のとおり、重合体ナノ粒子(A)の凝着力F及びマトリクス成分(B)の凝着力Fとは各成分の硬度と相関があり、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0091】
[層(C)のマルテンス硬度HM]
層(C)のマルテンス硬度HMは、耐摩耗性の観点から100N/mm以上であり、高いほど衝撃に対し変形が少なく、破壊を伴う傷付きが少ない点で有利である。層(C)のマルテンス硬度HMは、好ましくは100N/mm以上であり、より好ましくは150N/mm以上であり、更に好ましくは200N/mm以上であり、耐屈曲性の観点から、好ましくは4000N/mm以下、より好ましくは2000N/mm以下、更に好ましくは1500N/mm以下である。層(C)のマルテンス硬度HMを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。特に、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計量に対するマトリクス成分(B)の含有量を増やすと、層(C)のマルテンス硬度HMは上がる傾向にあり、マトリクス成分(B)の含有量を減らすと層(C)のマルテンス硬度HMは下がる傾向にある。
【0092】
[テーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量]
本実施形態におけるテーバー摩耗試験とは、ASTM D1044に記載の方法で測定される方法に準じており、摩耗輪CS-10F、荷重500gの条件下で測定を実施する。ヘイズ変化量が小さいほど耐摩耗性に優れた材料となり、試験前におけるヘイズに対する500回転におけるヘイズ変化量、すなわち回転数500回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が10以下であれば、ECE R43のリアクオーターガラスの規格に適合し、4以下であれば、ANSI/SAE Z.26.1の規格に適合し、自動車用窓材として好適に使用可能である。また、1000回転におけるヘイズ変化量、すなわち、回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が10以下であれば、自動車窓の規格に適合し、自動車用窓材として好適に使用でき、2以下であればANSI/SAE Z.26.1、ECE R43、JIS R3211/R3212の規格に適合し、全ての自動車用窓材に好適に使用可能である。1000回転におけるヘイズ変化量が10以下であれば好ましく、6以下であればより好ましく、2以下であれば、更に好ましい。ヘイズ変化量を上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
【0093】
[層(C)の弾性回復率ηIT
層(C)の弾性回復率ηITは、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比であり、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータである。弾性回復率ηITが高いほど、塗膜が変形した際、元の状態に戻ることが可能であり、変形に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、弾性回復率ηITは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.50以上であることが好ましく、この範囲であれば値が大きいほど好ましい。より具体的には、弾性回復率ηITが0.55以上であるとより好ましく、更に好ましくは0.60以上であり、より更に好ましくは0.65以上である。本実施形態における塗膜の弾性回復率の測定は、以下に制限されないが、例えば、ハードコート層の表面を、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)、などを用いて押し込み試験を行うことで測定することができる。弾性回復率ηITを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
【0094】
[層(C)の膜厚]
本実施形態において、ハードコート層の耐摩耗性を一層発現させる観点と、基材の変形への追従性を十分に確保する観点から、膜厚を適宜調整することが好ましい。具体的には、層(C)の膜厚は、耐摩耗性の観点から1.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上である。更に、層(C)の膜厚は、基材追従性の観点から100.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは50.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下である。
【0095】
[重合体ナノ粒子(A)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)を用いることにより、ハードコート層に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート層のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる傾向にある。重合体ナノ粒子(A)は、その粒子サイズがnmオーダー(1μm未満)であれば形状は特に限定されない。なお、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMについては、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造及び組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0096】
[重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、nmオーダー(1μm未満)であれば特に限定されず、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、光学特性の観点から10nm以上であることが好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がより好ましく、透明性の観点から400nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定することで可能である。
【0097】
[層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
本実施形態において、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は成膜性の観点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上であり、透明性の観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは45%以下である。層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、層(C)の断面SEM画像における塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、層(C)を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
【0098】
[重合体ナノ粒子(A)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(a)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、加水分解性珪素化合物(a)を含むことが好ましい。加水分解性珪素化合物(a)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であれば、特に限定されない。
【0099】
加水分解性珪素化合物(a)は、耐摩耗性や耐候性が向上する観点から、下記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であることが好ましい。
-R n1SiX 3-n1 (a-1)
【0100】
式(a-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n1は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、このような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0101】
式(a-1)で表される原子団を含有する化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0102】
加水分解性珪素化合物(a)は、ハードコート層に高い硬度を付与でき、より耐摩耗性が向上する観点から、下記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物を含むことが好ましい。
SiX (a-2)
式(a-2)中、Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0103】
式(a-2)で表される化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
【0104】
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(a)が、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0105】
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
本実施形態における加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分重量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましく、含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析等で測定することができる。
【0106】
[マトリクス成分(B)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)を用いることにより、ハードコート層に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート層のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる。マトリクス成分(B)の硬度HMについては、後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0107】
[マトリクス成分(B)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(b)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、重合体ナノ粒子(A)が分散できるような成分であれば特に限定されない。本実施形態において、高靭性の観点から、マトリクス成分(B)は、加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。本明細書において、「マトリクス成分(B)が加水分解性珪素化合物(b)を含む」とは、マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)に由来する構成単位を有する高分子を含むことを意味する。加水分解性珪素化合物(b)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物及び縮合物であれば、特に限定されない。
マトリクス成分(B)としては、上述した高分子以外にも、重合体ナノ粒子(A)を除く様々な成分が含まれていてもよい。その中でも、上述した高分子以外に含まれ得るその他の高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂;PMMA、PAN、ポリアクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、PTFE、PVDF、EVA等のポリマー;及びこれらのコポリマー等が挙げられる。
【0108】
加水分解性珪素化合物(b)は、耐摩耗性及び耐候性が一層向上する観点から、下記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物、並びに下記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
-R n2SiX 3-n2 (b-1)
式(b-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n2は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
SiX (b-2)
式(b-2)中、Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0109】
一般式(b-1)で表される原子団を含む化合物の具体例としては、以下に限定されないが、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0110】
式(b-2)で表される化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
【0111】
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(b)が、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0112】
本実施形態において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス成分(B)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス成分(B)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
【0113】
[無機酸化物(D)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス成分(B)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上する。また、無機酸化物(D)の粒子表面の水酸基の親水性によって塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。
【0114】
本実施形態における無機酸化物(D)の具体例としては、以下に限定されないが、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、コバルト、銅などの酸化物が挙げられる。これらは形状を問わず、単独で用いてもよく、混合物として用いてもよい。無機酸化物(D)としては、前述した加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、乾式シリカやコロイダルシリカに代表されるシリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水性分散液の形態であることが好ましく、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができる。
また、本実施形態において、無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分(以下、単に「無機成分」ともいう。)を含有することが好ましい。無機酸化物(D)が当該無機成分を含むことにより、耐摩耗性と耐久性を損ねることなく耐候性が向上する傾向にある。以下に限定されないが、市販品を利用する場合、例えば、CIKナノテック株式会社製の酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化錫、酸化チタンの超微粒子マテリアル製品;多木化学社製の酸化チタン「タイノック」(商品名)、酸化セリウム「ニードラール」(商品名)、酸化錫「セラメース」(商品名)、酸化ニオブゾル、酸化ジルコニウムゾルが挙げられる。耐候性向上性能の観点から、無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含むことが好ましく、Ceを含むことがより好ましい。
本実施形態における無機酸化物(D)は、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物(D’)を含有することが好ましく、ハードコート塗膜中における無機酸化物(D’)の含有量は、特に限定されないが、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、透明性の観点から、上記含有量は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。ここで、上記含有量は、ハードコート塗膜を100質量%としたときのCe、Nb、Zn、Ti及びZrの総量として特定することができる。
【0115】
[無機酸化物(D)の平均粒子径]
本実施形態における無機酸化物(D)の平均粒子径は、ハードコート層の組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。無機酸化物の平均粒子径(D)の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、水分散コロイダルシリカに対し、透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値から測定することができる。
【0116】
[無機酸化物(D)に含まれうるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0117】
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックスHS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
【0118】
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、TOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)などが挙げられる。
【0119】
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL、株式会社トクヤマ製レオロシールなどが挙げられる。
【0120】
また、これらシリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
【0121】
[無機酸化物(D)の形状]
さらに、本実施形態における無機酸化物(D)の形状は、以下に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、鎖状などが挙げられ、ハードコート層の硬度及び透明性の観点から、球状であることが特に好ましい。
【0122】
[官能基(e)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)中への重合体ナノ粒子(A)の分散性が向上し、耐摩耗性を向上させることができる観点から、マトリクス成分(B)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
【0123】
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、以下に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
【0124】
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
【0125】
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス成分(B)との相互作用の観点から、官能基(e)を有することが好ましい。
【0126】
[重合体ナノ粒子(A)に含んでもよいその他の化合物]
本実施形態による重合体ナノ粒子(A)は、粒子間の静電反発力をもたせることで粒子の安定性を向上させる観点から、以下に示す重合体を含んでもよい。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系の重合体、又はポリ(メタ)アクリレート-シリコーン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系、スチレン無水マレイン酸系の共重合体が挙げられる。
【0127】
上述の重合体ナノ粒子(A)に含んでもよい重合体の中でも、静電反発に特に優れる化合物として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体が挙げられる。具体例としては、以下に限定されないが、メチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体が挙げられる。この際、(メタ)アルクリ酸は、静電反発力をさらに向上させるために、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類や、NaOH、KOHなどの塩基で中和してもよい。
【0128】
また、重合体ナノ粒子(A)は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
【0129】
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エレミノールJS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムルS-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロンHS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸のアンモニウム塩、アリルスルホン酸のナトリウム塩、アリルスルホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
【0130】
[層(C)に含んでもよいその他の成分]
本実施形態の層(C)は、用途に応じて、マトリクス成分(B)として、溶媒、乳化剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、触媒を含んでもよい。特に屋外用途では高い耐候性が求められることから、遮光剤(S2)、光安定剤を含むことが好ましい。遮光剤(S2)としては、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤及び光安定剤の具体例としては、以下に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノール、などのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、TINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、TINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN PR25、HOSTAVIN B-CAP、HOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)、などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、HOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)、などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート、などのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)、などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、UV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、TINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系光安定剤;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤;ユーダブルE-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、ユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、ヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤;酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化スズ、酸化チタンなどの無機系紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0131】
[ハードコート層の透明性]
本実施形態において、ハードコート層の透明性は、外観変化の観点から、下記式で得られる全光線透過率維持率で評価することができる。本実施形態において、ハードコート層の全光線透過率維持率は、90%以上が好ましく、採光確保の観点から95%以上がより好ましく、材料越しにおける視認性確保の観点から98%以上がとりわけ好ましい。ハードコート層の全光線透過率維持率は、例えば、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)として前述した好ましい態様を採用することで、上記した範囲に調整することができる。
ハードコート層の全光線透過率維持率(%)=(積層体の全光線透過率(%)/基材の全光線透過率(%)) × 100
【0132】
<塗料組成物(I)>
本実施形態において、層(C)は、例えば、下記の塗料組成物(I)を用いることで好ましく得られる。塗料組成物(I)は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、を含む塗料組成物であって、ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験から測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAが、0.30以上0.90以下であり、前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’とが、HMB’/HM>1の関係を満たし、前記マトリクス原料成分(B’)が、無機酸化物(D)を含むことが好ましい。
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有することが好ましい。
塗料組成物(I)に含まれる各成分については、以下で言及のない点についての詳細は層(C)に含まれる各成分について前述したとおりである。
【0133】
[重合体ナノ粒子(A)の硬度HMとマトリクス原料成分(B’)の硬度HM
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’とは、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
HMB’/HM>1 式(3)
上記のとおり、塗料組成物(I)において、上記関係が満たされるため、塗料組成物(I)を用いることで得られる層(C)において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’も上記式(3)関係を満たすこととなる。塗料組成物(I)における各マルテンス硬度は、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された各成分に対し、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記HM及びHMの値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0134】
[重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITA
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、ISO14577-1でWelast/Wtotalの比ηITとして記載されているパラメータを、成膜した重合体ナノ粒子(A)の塗膜で測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITAが高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.30以上であることが好ましく、塗膜にする際の基材やマトリクス原料成分(B’)の変形に追従できる観点からηITAは0.90以下であることが好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは0.50以上であるとより好ましく、0.60以上であれば更に好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率の測定は、以下に限定されないが、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された重合体ナノ粒子(A)を溶媒中に分散させて得られる組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。弾性回復率ηITAを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
なお、層(C)は、塗料組成物(I)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定される塗料組成物(I)中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAの値は、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAによく一致するものとして、層(C)における弾性回復率ηITAの値を決定することができる。
【0135】
[溶媒(H)]
本実施形態における塗料組成物(I)は溶媒(H)を含有することが好ましい。使用可能な溶媒(H)は、特に限定されず、一般的な溶媒を用いることができる。溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、水;エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エタノール、メタノール、変性エタノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコールグリセリン、モノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのアルコール類;トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化合物類;ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン;などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用しても構わない。その中で、溶媒除去時の環境負荷低減の観点から、水、アルコール類を含む方が特に好ましい。
【0136】
以下、塗料組成物(I)に含まれる重合体ナノ粒子(A)の構成成分、サイズ、組成比等について説明するが、以下で言及のない点についての詳細は層(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)について前述したとおりである。
また、塗料組成物(I)に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、層(C)を得る過程において、加水分解縮合等により硬化される。すなわち、塗料組成物(I)に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、得られる層(C)中において、対応するマトリクス成分(B)となる関係にある。以下では、マトリクス原料成分(B’)の構成成分、サイズ、組成比等についても説明するが、以下で言及のない点についての詳細は、層(C)に含まれるマトリクス成分(B)について前述したとおりである。
【0137】
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)が、前述した加水分解性珪素化合物(a)を含み、マトリクス原料成分(B’)が、前述した加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。また、塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(a)としても、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。同様に、塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(b)としても、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(a)及び(b)の詳細については、層(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)について上述したとおりである。
【0138】
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
塗料組成物(I)において、加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分重量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましい。上記含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析、などで測定することができる。
【0139】
[官能基(e)]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス原料成分(B’)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)の表面にマトリクス原料成分(B’)が吸着しやすくなり、保護コロイドとなって安定化する傾向にあるため、結果として塗料組成物(I)の貯蔵安定性が向上する傾向にある。さらに、重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)との間の相互作用が強くなることで、塗料組成物(I)の固形分濃度に対する増粘性が高まり、複雑な形状への塗装時におけるタレが抑制される傾向にあり、結果として層(C)の膜厚が均一となる傾向にある。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
【0140】
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、以下に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
【0141】
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
【0142】
[マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’及びマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITB
塗料組成物(I)において、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’は、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータで、成膜したマトリクス原料成分(B’)の塗膜を測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITB’が高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’は、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や成分(A)の変形に追従できる観点から、ηITB’は0.95以下であることが好ましい。マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率の測定は、以下に限定されないが、例えば、遠心分離等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離されたマトリクス原料成分(B’)を溶媒中に溶解させた組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。
なお、前述したとおり、マトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物がマトリクス成分(B)に該当する。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるマトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’の値は、対応するマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBによく一致するものとして、弾性回復率ηITBの値を決定することができる。すなわち、本実施形態におけるマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBは、0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や成分(A)の変形に追従できる観点から、ηITBは0.95以下であることが好ましい。
弾性回復率ηITB’及び弾性回復率ηITBを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、マトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
【0143】
塗料組成物(I)において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス原料成分(B’)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス原料成分(B’)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
【0144】
[無機酸化物(D)]
塗料組成物(I)において、マトリクス原料成分(B’)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス原料成分(B’)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上するだけでなく、粒子表面の水酸基の親水性により、塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。
【0145】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)としては、形状を問わず、単体であっても混合物でもよい。前述した加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、シリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水性分散液の形態であることが好ましく、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができる。
【0146】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)の平均粒子径は、塗料組成物(I)の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。塗料組成物(I)における無機酸化物(D)の平均粒子径の測定方法としては、層(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
【0147】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)のその余の特徴としては、層(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
【0148】
[重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率は成膜性の観点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上であり、透明性の観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは45%以下である。塗料組成物(I)における重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、層(C)とした後の断面SEM画像における塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、塗料組成物(I)を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
【0149】
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス原料成分(B’)との相互作用の観点からも、前述した官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が、コア/シェル構造を有することは、例えば、塗膜断面の透過型電子顕微鏡画像等により確認することができる。
【0150】
[塗料組成物(I)に含まれてもよいその他の成分]
塗料組成物(I)の塗装性をより向上させる観点から、塗料組成物(I)は、マトリクス原料成分(B’)として、上述した成分に加え、必要に応じて、増粘剤、レべリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、分散剤、湿潤剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、可塑剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、静電防止剤、帯電防止剤などを配合することができる。成膜性向上の観点から、湿潤剤や成膜助剤を用いることが好ましく、具体的には、特に限定されないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、メガファックF-443、F-444、F-445、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-489、F-172D、F-178K(商品名、DIC株式会社製)、SNウェット366、SNウェット980、SNウェットL、SNウェットS、SNウェット125、SNウェット126、SNウェット970(商品名、サンノプコ株式会社製)などが挙げられる。これらの化合物は、1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0151】
[遮光剤(S2)]
塗料組成物(I)は、遮光剤(S2)を含んでいてもよい。塗料組成物(I)が遮光剤(S2)を含む場合、点で好ましい。遮光剤(S2)としては、特に限定されないが、例えば、塗料組成物(J)における遮光剤(S1)として前述したものを適宜採用することができる。
【0152】
[触媒]
塗料組成物(I)は、マトリクス原料成分(B’)として、触媒を含んでいてもよい。塗料組成物(I)が反応性基同士の反応を促進する触媒を含む場合、塗膜中に未反応性基が残存しにくく、硬度が高くなり耐摩耗性が向上するだけでなく、耐候性も向上する点で好ましい。触媒は、特に限定されないが、ハードコート塗膜を得る際に、溶解もしくは分散するものが好ましい。そのような触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、金属アルコキシド、金属キレートなどが挙げられ、これら触媒は、1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0153】
[塗料組成物(I)の性状]
塗料組成物(I)は、塗装性の観点から好ましい固形分濃度は0.01~60質量%、より好ましくは1~40質量%である。また、塗装性の観点から、塗料組成物(I)の20℃における粘度としては、好ましくは0.1~100000mPa・s、好ましくは1~10000mPa・sである。
【0154】
<ハードコート層の製法>
本実施形態におけるハードコート層の製法は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、無機酸化物(D)と、適宜その他の成分とを溶媒に分散、溶解させた塗料組成物(I)を、前記基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができる。さらに、前記塗装方法としては、以下に限定されないが、例えばスプレー吹付法、フローコート法、刷毛塗法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。なお、前記塗装された塗料組成物(I)は、好ましくは室温~250℃、より好ましくは40℃~150℃での熱処理や紫外線、赤外線照射などにより塗膜化することができる。さらに、この塗装は、すでに成型した基材だけでなく、防錆鋼板を含むプレコートメタルのように、成型加工する前にあらかじめ平板に塗装することも可能である。
【0155】
[ハードコート層の表面加工]
本実施形態におけるハードコート層は、耐候性の観点から、表面をシリカ加工してシリカ層を形成してもよい。シリカ層の形成方法としては、特に限定されないが、具体例としては、シリコーン又はシラザンを蒸着/硬化させるPECVDによるシリカ加工、155nm紫外線照射によって表面をシリカに改質させるシリカ加工技術が挙げられる。特に、表面を劣化させることなく酸素や水蒸気を通しにくい層を作製できることから、PECVDによる表面加工が好ましい。PECVDに用いることのできるシリコーン又はシラザンは、以下に限定されないが、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルメトリキシラン、ビニルメトキシシラン、ジメチルジメトキシラン、TEOS、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0156】
本実施形態において、ハードコート層の少なくとも1つの表面上に機能層をさらに有してもよい。機能層としては、以下に限定されないが、例えば、反射防止層、防汚層、偏光層、衝撃吸収層などが挙げられる。
【0157】
[接着層付き基材のヘイズ値H1と積層体のヘイズ値H2]
本実施形態の積層体において、接着層付き基材のヘイズ値H1は、積層体のヘイズ値H2よりも大きい。このような関係を満たすことで、本実施形態の積層体は、接着層付き基材とハードコート層との界面に散乱層が形成される結果、干渉縞の生成が抑制され、光学特性が向上する。
【0158】
本実施形態において、透明性の観点から、接着層付き基材のヘイズ値H1は60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。同様の観点から、積層体のヘイズ値H2は5%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。各ヘイズ値を上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、H1は接着性エマルション粒子(F)の粒径、無機酸化物(G)の粒子径や形状、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の重量比率、遮光剤の含有量、硬化剤やその他添加剤の含有量を制御することが挙げられ、H2は重合体ナノ粒子(A)の粒径、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の成分比及びマトリクス成分(B)中の無機酸化物(D)の含有率を制御することが挙げられる。特に、無機酸化物(G)あるいは無機酸化物(D)の量を増やすと各ヘイズ値は上がる傾向にあり、減らすと下がる傾向にある。
各ヘイズ値は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。なお、ヘイズ値H1については、接着層付き基材を対象として測定し、ヘイズ値H2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)を対象として測定することができる。ヘイズ値H1及びH2は、接着層付き基材及び積層体を形成させた後にそれぞれ測定してもよい。
【0159】
[接着層付き基材の表面粗さRa1と積層体の表面粗さRa2]
本実施形態の積層体において、接着層付き基材の表面粗さRa1は、積層体の積層体の表面粗さRa2よりも大きい。このような関係を満たすことで、本実施形態の積層体は、接着層付き基材とハードコート層との界面に散乱層が形成される結果、干渉縞の生成が抑制され、光学特性が向上する。
【0160】
本実施形態において、透明性の観点から、接着層付き基材の表面粗さRa1は500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下であり、最も好ましくは150nm以下である。また、本実施形態において、密着性の観点から、接着層付き基材の表面粗さRa1は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは40nm以上である。
また、透明性の観点から、積層体の表面粗さRa2は100nm未満であることが好ましく、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下であり、よりさらに好ましくは20nm以下である。
表面粗さRa1及びRa2を上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、Ra1は接着性エマルション粒子(F)の粒径、接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の重量比率及び遮光剤の含有量を制御することが挙げられ、Ra2は重合体ナノ粒子(A)の粒径、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の成分比及びマトリクス成分(B)中の無機酸化物(D)の含有率を制御することが挙げられる。特に、無機酸化物(G)あるいは無機酸化物(D)の量を増やすと各表面粗さRaは上がる傾向にあり、減らすと下がる傾向にある。
各表面粗さRa1及びRa2は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。なお、表面粗さRa1については、接着層付き基材を対象として測定し、表面粗さRa2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)を対象として測定することができる。表面粗さRa1及びRa2は、接着層付き基材及び積層体を形成させた後にそれぞれ測定してもよい。また、積層体の断面SEM像から、接着層、及びハードコート層界面の形状を測定し、表面粗さRaを算出してもよい。
【0161】
<積層体の用途>
本実施形態の積層体は、優れた耐摩耗性と耐久性を有する。したがって、ハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材の用途としては、特に限定されないが、例えば、建材、車両用部材や電子機器、電機製品などが挙げられる。
建材用途としては、以下に限定されないが、例えば、建設機械の窓ガラス、ビルや家屋、温室などの窓ガラス、ガレージ及びアーケードなどの屋根、照明や信号機等の照灯類、壁紙表皮材、看板、浴槽や洗面台のようなサニタリー製品、台所用建材外壁材、フローリング材、コルク材、タイル、クッションフロア、リノリウムのような内装用床材が挙げられる。
車両用部材としては、以下に限定されないが、例えば、自動車、航空機、列車の各用途で使用される部品が挙げられる。具体的な例としては、フロント、リア、フロントドア、リアドア、リアクォーター、サンルーフ等の各ガラス、フロントバンパーやリアバンパー、スポイラー、ドアミラー、フロントグリル、エンブレムカバー、ボディー等の外装部材、センターパネル、ドアパネル、インストルメンタルパネル、センターコンソールなどの内装部材、ヘッドランプやリアランプ等のランプ類の部材、車載カメラ用レンズ部材、照明用カバー、加飾フィルム、さらには種々のガラス代替部材が挙げられる。
電子機器や電機製品としては、以下に限定されないが、例えば、携帯電話、携帯情報端末、パソコン、携帯ゲーム機、OA機器、太陽電池、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク、偏光板や光学フィルター、レンズ、プリズム、光ファイバー等の光学部品、反射防止フィルムや配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム等が好ましく挙げられる。
本実施形態の積層体は、上記の他、機械部品や農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具及び雑貨など、様々な領域への適用が可能である。
【0162】
<<第2実施形態>>
ここでは、本実施形態に係る第2の態様(以下、「第2実施形態」ともいう。)について、詳細に説明する。
【0163】
<ハードコート塗膜>
本実施形態(以降、特に断りがない限り<<第2実施形態>>の項における「本実施形態」は第2実施形態を意味する。)のハードコート塗膜(以下、「塗膜(C)」ともいう。)は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含むハードコート塗膜であって、前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとが、HM/HM>1の関係を満たし、前記ハードコート塗膜のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上であり、前記マトリクス成分(B)が、無機酸化物(D)を含み、前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する。
なお、上記マルテンス硬度HM及びマルテンス硬度HMの大小関係を確認し難い場合でも、後述する重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)の凝着力を比較することで、前述したマルテンス硬度の大小関係を推定することができる。凝着力は、低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高いことを表す。具体的には、本実施形態のハードコート塗膜は、次のように特定することもできる。すなわち、本実施形態のハードコート塗膜は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含むハードコート塗膜であって、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の凝着力モードで測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fと、前記マトリクス成分(B)の凝着力Fとが、F/F>1の関係を満たし、前記ハードコート塗膜のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上であり、前記マトリクス成分(B)が、無機酸化物(D)を含み、前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する。
本実施形態のハードコート塗膜は、上述のように構成されているため、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を有する。本実施形態のハードコート塗膜は、高いレベルでの耐摩耗性、耐久性及び耐候性を発現するため、以下に限定されないが、例えば、建材、自動車部材や電子機器や電機製品等のハードコートとして有用であり、とりわけ自動車部材用とすることが好ましい。
【0164】
本実施形態のハードコート塗膜において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)に分散していることが好ましい。本実施形態における「分散」とは、重合体ナノ粒子(A)を分散相とし、マトリクス成分(B)を連続相とし、重合体ナノ粒子(A)がマトリクス成分(B)中へ均一または構造を形成しながら分布することである。上記分散は、ハードコート塗膜の断面SEM観察によって確認することができる。本実施形態のハードコート塗膜においては、重合体ナノ粒子(A)が、マトリクス成分(B)に分散していることにより、高い耐摩耗性を有する傾向にある。
【0165】
なお、本明細書において、マルテンス硬度HMが100N/mm以上である塗膜を特に「ハードコート塗膜」と称する。
【0166】
[マルテンス硬度]
本実施形態におけるマルテンス硬度は、ISO14577-1に準拠した硬度であり、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において2mNでの押し込み深さから算出される値である。本実施形態におけるマルテンス硬度は、例えば、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)を用いて測定でき、押し込み深さが浅い程マルテンス硬度は高く、深い程マルテンス硬度は低い。
【0167】
[凝着力]
本実施形態における凝着力は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定することができ、凝着力が低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高い。凝着力の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、島津製作所製SPM-970、SPM-9700HT、Bruker AXS社製Dimension ICON、日立ハイテクサイエンス社製AFM5000II等を用いて測定することができる。
【0168】
[他の硬度]
上述した本実施形態におけるマルテンス硬度や凝着力の大小関係は、他の硬度を指標として測定値の大小関係を確認することによっても推定することができる。他の硬度としては、材料に力が加えられた際の、材料の変形のしにくさを示す指標であれば特に限定されず、微小硬度計やナノインデンテーション測定機器に代表される押し込み硬度計で測定されるビッカース硬度、インデンテーション硬度や、剛体振り子型物性試験器に代表される振り子型粘弾性で測定される対数減衰率で表現される指標を挙げることができる。その他、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定される、位相、摩擦力、粘弾性、吸着力、硬さ及び弾性率で表現される指標を挙げることもできる。これらの指標において、マトリクス成分(B)の硬度が重合体ナノ粒子(A)の硬度よりも高いことが確認されれば、マルテンス硬度や凝着力についても、マトリクス成分(B)の方が重合体ナノ粒子(A)よりも硬質であることが推定される。
【0169】
[重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMとマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HM
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMとは、下記式(1)の関係を満たす。
HM/HM>1 式(1)
式(1)は、柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、塗膜(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与することができる。この要因としては、以下に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。HMの範囲としては、衝撃吸収性の観点から、50N/mm以上が好ましく、100N/mm以上がより好ましく、成膜性の観点から2000N/mm以下が好ましく、800N/mm以下がより好ましく、350N/mm以下が更に好ましい。HMの範囲としては衝撃吸収性の観点から100N/mm以上が好ましく、150N/mm以上がより好ましく、成膜性の観点から4000N/mm以下が好ましく、2000N/mm以下がより好ましい。
なお、塗膜(C)は、後述する塗料組成物(I)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定される塗料組成物(I)中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMの値は、塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMによく一致するものとして、塗膜(C)におけるマルテンス硬度HMの値を決定することができる。
また、マトリクス成分(B)は、後述するマトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物に該当する。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるマトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’の値は、対応するマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMによく一致するものとして、マルテンス硬度HMの値を決定することができる。
上記HM及びHMの値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0170】
[重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fとマトリクス成分(B)の凝着力F
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fと、マトリクス成分(B)の凝着力Fとは、下記式(2)の関係を満たす。
/F>1 式(2)
上記式(1)と同様に、式(2)も柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、塗膜(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与することができる。この要因としては、以下に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。
上述のとおり、重合体ナノ粒子(A)の凝着力F及びマトリクス成分(B)の凝着力Fとは各成分の硬度と相関があり、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0171】
[塗膜(C)のマルテンス硬度HM]
塗膜(C)のマルテンス硬度HMは、耐摩耗性の観点から100N/mm以上であり、高いほど衝撃に対し変形が少なく、破壊を伴う傷付きが少ない点で有利である。塗膜(C)のマルテンス硬度HMは、耐摩耗性の観点から、好ましくは150N/mm以上であり、より好ましくは200N/mm以上であり、耐屈曲性の観点から、好ましくは4000N/mm以下、より好ましくは2000N/mm以下、更により好ましくは1500N/mm以下である。塗膜(C)のマルテンス硬度HMを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。特に、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計量に対するマトリクス成分(B)の含有量を増やすと、塗膜(C)のマルテンス硬度HMは上がる傾向にあり、マトリクス成分(B)の含有量を減らすと塗膜(C)のマルテンス硬度HMは下がる傾向にある。
【0172】
[テーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量]
本実施形態におけるテーバー摩耗試験とは、ASTM D1044に記載の方法で測定される方法に準じており、摩耗輪CS-10F、荷重500gの条件下で測定を実施する。ヘイズ変化量が小さいほど耐摩耗性に優れた材料となり、試験前におけるヘイズに対する1000回転におけるヘイズ変化量、すなわち、回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が10以下であれば、自動車窓の規格に適合し、自動車窓用ハードコート塗膜として好適に使用でき、2以下であればANSI/SAE Z.26.1、ECE R43、JIS R3211/R3212の規格に適合し、全ての自動車窓材に好適に使用可能である。回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差は、10以下であれば好ましく、6以下であればより好ましく、2以下であれば更により好ましい。ヘイズ変化量を上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
【0173】
[テーバー摩耗試験回転数500回におけるヘイズと回転数10回におけるヘイズの差(以下、「ΔA」ともいう。)]
塗膜(C)のΔAは、上記テーバー摩耗試験において、回転数500回におけるヘイズと回転数10回におけるヘイズの差を示し、ΔAが低いほど長期的な耐汚染性に優れるため好ましい。すなわち、より高い耐汚染性が発現する観点から、ΔAが10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下である。詳細な理由は不明であるが、例えば、ΔAが低いほど汚染物質が膜内に食い込みにくく、汚染物質の洗浄性に優れる傾向があると推察される。塗膜(C)のΔAを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中に分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。特に、重合体ナノ粒子(A)の組成、後述するマトリクス原料成分(B’)の組成、配合比率、加えて、配合条件として例えば溶媒組成、配合順、撹拌時間、固形分濃度など、成膜条件として熱処理の場合、乾燥温度、湿度、乾燥時間など、紫外線照射の場合、照射強度、照射時間、湿度など、赤外線照射の場合、照射強度、照射時間、湿度などが挙げられる。
【0174】
[塗膜(C)の弾性回復率ηIT
塗膜(C)の弾性回復率ηITは、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比であり、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータである。弾性回復率ηITが高いほど、塗膜が変形した際、元の状態に戻ることが可能であり、変形に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、弾性回復率ηITは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.50以上であることが好ましく、この範囲であれば値が大きいほど好ましい。より具体的には、弾性回復率ηITが0.55以上であるとより好ましく、更に好ましくは0.60以上であり、より更に好ましくは0.65以上である。本実施形態における塗膜の弾性回復率の測定は、以下に制限されないが、例えば、ハードコート塗膜の表面を、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)、などを用いて押し込み試験を行うことで測定することができる。弾性回復率ηITを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
【0175】
[塗膜(C)の膜厚]
本実施形態において、ハードコート塗膜の耐摩耗性を一層発現させる観点と、基材の変形への追従性を十分に確保する観点から、膜厚を適宜調整することが好ましい。具体的には、塗膜(C)の膜厚は、耐摩耗性の観点から1.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上である。更に、塗膜(C)の膜厚は、耐候性及び基材追従性の観点から100.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは50.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下である。
【0176】
[重合体ナノ粒子(A)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)を用いることにより、ハードコート塗膜に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート塗膜のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる。重合体ナノ粒子(A)は、その粒子サイズがnmオーダー(1μm未満)であれば形状は特に限定されない。なお、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMについては、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造および組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0177】
[重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、nmオーダー(1μm未満)であれば特に限定されず、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、光学特性の観点から10nm以上であることが好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がより好ましく、透明性の観点から400nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定することで可能である。
【0178】
[塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
本実施形態において、塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は成膜性の観点から、好ましくは2%以上、透明性の観点から、好ましくは80%以下である。すなわち、塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は2%以上80%以下が好ましく、より好ましくは3%以上70%以下であり、更に好ましくは5%以上45%以下である。塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、塗膜(C)の断面SEM画像のにおける塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、塗膜(C)を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
【0179】
[重合体ナノ粒子(A)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(a)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、加水分解性珪素化合物(a)を含むことが好ましい。加水分解性珪素化合物(a)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であれば、特に限定されない。
【0180】
加水分解性珪素化合物(a)は、耐摩耗性や耐候性が向上する観点から、下記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であることが好ましい。
-R n1SiX 3-n1 (a-1)
【0181】
式(a-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n1は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、このような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0182】
式(a-1)で表される原子団を含有する化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0183】
加水分解性珪素化合物(a)は、ハードコート塗膜に高い硬度を付与でき、より耐摩耗性が向上する観点から、下記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物を含むことが好ましい。
SiX (a-2)
式(a-2)中、Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0184】
式(a-2)で表される化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
【0185】
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(a)が、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0186】
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
本実施形態における加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分重量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましく、含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析等で測定することができる。
【0187】
[マトリクス成分(B)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)を用いることにより、ハードコート塗膜に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート塗膜のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる。マトリクス成分(B)の硬度HMについては、後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造および組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0188】
[マトリクス成分(B)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(b)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、重合体ナノ粒子(A)が分散できるような成分であれば特に限定されない。本実施形態において、高靭性の観点から、マトリクス成分(B)は、加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。本明細書において、「マトリクス成分(B)が加水分解性珪素化合物(b)を含む」とは、マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)に由来する構成単位を有する高分子を含むことを意味する。加水分解性珪素化合物(b)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物及び縮合物であれば、特に限定されない。
マトリクス成分(B)としては、上述した高分子以外にも、重合体ナノ粒子(A)を除く様々な成分が含まれていてもよい。その中でも、上述した高分子以外に含まれ得るその他の高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂;PMMA、PAN、ポリアクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、PTFE、PVDF、EVA等のポリマー;及びこれらのコポリマー等が挙げられる。
【0189】
加水分解性珪素化合物(b)は、耐摩耗性及び耐候性が一層向上する観点から、下記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物、並びに下記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
-R n2SiX 3-n2 (b-1)
式(b-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、Xは、加水分解性基を表し、n2は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
SiX (b-2)
式(b-2)中、Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0190】
一般式(b-1)で表される原子団を含む化合物の具体例としては、以下に限定されないが、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0191】
式(b-2)で表される化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
【0192】
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(b)が、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0193】
本実施形態において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス成分(B)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス成分(B)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
【0194】
[無機酸化物(D)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス成分(B)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上するだけでなく、粒子表面の水酸基の親水性により、塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。さらに、無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分(以下、単に「無機成分」ともいう。)を含有する。無機酸化物(D)が当該無機成分を含むことにより、耐摩耗性と耐久性を損ねることなく耐候性を向上させることができる。以下に限定されないが、市販品を利用する場合、例えば、CIKナノテック株式会社製の酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化錫、酸化チタンの超微粒子マテリアル製品;多木化学社製の酸化チタン「タイノック」(商品名)、酸化セリウム「ニードラール」(商品名)、酸化錫「セラメース」(商品名)、酸化ニオブゾル、酸化ジルコニウムゾルが挙げられる。耐候性向上性能の観点から、無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含むことが好ましく、Ceを含むことがより好ましい。
【0195】
本実施形態における無機酸化物(D)における無機成分は、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物(D’)を含有することが好ましく、ハードコート塗膜中における無機酸化物(D’)の含有量は、特に限定されないが、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、透明性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。ここで、上記含有量は、ハードコート塗膜を100質量%としたときのCe、Nb、Zn、Ti及びZrの総量として特定することができる。
【0196】
本実施形態における無機酸化物(D)の具体例としては、以下に限定されないが、無機成分として上述したアルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、アンチモン、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、コバルト、銅などの酸化物の他、ケイ素、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、モリブデンなどの酸化物も挙げられる。これらは形状を問わず、単独で用いてもよく、混合物として用いてもよい。無機酸化物(D)としては、無機成分を含有していれば特に限定されないが、前述した加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、乾式シリカやコロイダルシリカに代表されるシリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水性分散液の形態であることが好ましく、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができる。
【0197】
[無機酸化物(D)の平均粒子径]
本実施形態における無機酸化物(D)の平均粒子径は、ハードコート塗膜の組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましく、透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましい。すなわち、無機酸化物(D)の平均粒子径は、2nm以上150nm以下であることが好ましく、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。無機酸化物の平均粒子径(D)の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、水分散コロイダルシリカに対し、透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値から測定することができる。
なお、無機酸化物(D)が複数種の無機酸化物を含む場合、各無機酸化物の平均粒子径の平均値をハードコート塗膜ないし塗料組成物における無機酸化物(D)の平均粒子径とする。
【0198】
[無機酸化物(D)に含まれうるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0199】
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックスHS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
【0200】
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、TOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)などが挙げられる。
【0201】
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL、株式会社トクヤマ製レオロシールなどが挙げられる。
【0202】
また、これらシリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
【0203】
[無機酸化物(D)の形状]
さらに、本実施形態における無機酸化物(D)の形状は、以下に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、パール状などが挙げられ、ハードコート塗膜の硬度及び透明性の観点から、球形であることが特に好ましい。
【0204】
[官能基(e)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)中への重合体ナノ粒子(A)の分散性が向上し、耐摩耗性を向上させることができる観点から、マトリクス成分(B)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
【0205】
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、以下に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
【0206】
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
【0207】
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス成分(B)との相互作用の観点から、官能基(e)を有することが好ましい。
【0208】
[重合体ナノ粒子(A)に含んでもよいその他の化合物]
本実施形態による重合体ナノ粒子(A)は、粒子間の静電反発力をもたせることで粒子の安定性を向上させる観点から、以下に示す重合体を含んでもよい。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系の重合体、又はポリ(メタ)アクリレート-シリコーン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系、スチレン無水マレイン酸系の共重合体が挙げられる。
【0209】
上述の重合体ナノ粒子(A)に含んでもよい重合体の中でも、静電反発に特に優れる化合物として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体が挙げられる。具体例としては、以下に限定されないが、メチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体が挙げられる。この際、(メタ)アルクリ酸は、静電反発力をさらに向上させるために、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類や、NaOH、KOHなどの塩基で中和してもよい。
【0210】
また、重合体ナノ粒子(A)は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
【0211】
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エレミノールJS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムルS-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロンHS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスホン酸のアンモニウム塩、アリルスホン酸のナトリウム塩、アリルスホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
【0212】
[塗膜(C)に含んでもよいその他の成分]
本実施形態の塗膜(C)は、用途に応じて、マトリクス成分(B)として、溶媒、乳化剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、有機系の紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、触媒を含んでもよい。特に屋外用途では高い耐候性が求められることから、有機系の紫外線吸収剤、光安定剤を含むことが好ましい。
有機系の紫外線吸収剤及び光安定剤の具体例としては、以下に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノール、などのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、TINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、TINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN PR25、HOSTAVIN B-CAP、HOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)、などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、HOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)、などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート、などのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)、などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、UV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、TINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系光安定剤;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤;ユーダブルE-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、ユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、ヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0213】
[ハードコート塗膜の透明性]
本実施形態のハードコート塗膜を透明材料として適用する場合は、材料の外観や材料越しの視認性に悪影響を与えないような透明性を有することが好ましい。ハードコート塗膜の透明性は、外観変化の観点から、下記式で得られる全光線透過率維持率で評価することができる。本実施形態において、ハードコート塗膜の全光線透過率維持率は、90%以上が好ましく、採光確保の観点から95%以上がより好ましく、材料越しにおける視認性確保の観点から98%以上がとりわけ好ましい。ハードコート塗膜の全光線透過率維持率は、例えば、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)として前述した好ましい態様を採用することで、上記した範囲に調整することができる。
ハードコート塗膜の全光線透過率維持率(%)=(ハードコート塗膜付き基材の全光線透過率(%)/基材の全光線透過率(%)) × 100
【0214】
[ハードコート塗膜の耐汚染性]
本実施形態のハードコート塗膜を透明材料として適用する場合は、長期間使用した際の視認性に悪影響を与えないことが要求される。すなわち、上記用途において、ハードコート塗膜は良好な耐汚染性を有することが好ましい。ここでの耐汚染性とは、長期間使用した際の煤塵の付着度合いを示し、例えば、摩耗試験後の塗膜にJIS試験用粉体1(12種 カーボンブラック)を付着させ、下記式で得られる試験後における全光線透過率維持率で評価することができる。
ブラックカーボン試験後の全光線透過率維持率(%)=(試験後の全光線透過率/試験前の全光線透過率) × 100
ブラックカーボン試験後の全光線透過率維持率が高いほど、長期間使用した際のブラックカーボンの付着は少なく、耐汚染性に優れる傾向にある。
【0215】
[ハードコート塗膜の耐湿性]
本実施形態のハードコート塗膜を長期間使用する用途においては、使用環境下においてハードコート塗膜の性能を維持することが求められる。例えば、自動車の窓材の用途においては、高い温度と高い湿度下での使用が想定されるため、JIS-R3211、R3222に準拠し、50℃95%RHで2週間晒した後、外観や密着性に変化がないことが好ましい。
【0216】
<ハードコート塗膜付き基材>
本実施形態に係るハードコート塗膜付き基材は、基材と、基材の片面及び/又は両面に形成された本実施形態のハードコート塗膜と、を含む。ハードコート塗膜付き基材は、少なくとも基材の片面及び/又は両面に有する。
本実施形態のハードコート塗膜付き基材は、上述のように構成されているため、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を有する。本実施形態のハードコート塗膜付き基材は、高いレベルでの耐摩耗性、耐久性及び耐候性を発現するため、以下に限定されないが、例えば、建材、自動車部材や電子機器や電機製品等のハードコートとして有用であり、とりわけ自動車部材用とすることが好ましい。
【0217】
[基材]
本実施形態のハードコート塗膜が塗布される基材としては、特に限定されないが、樹脂、金属、ガラス等が挙げられる。基材の形状としては、以下に限定されないが、例えば、板状、凹凸を含む形状、曲面を含む形状、中空の形状、多孔体の形状、それらの組み合わせ、などが挙げられる。また、基材の種類は問わず、例えば、シート、フィルム、繊維、などが挙げられる。その中で、ハードコート性の付与や成形性の観点から樹脂であることが好ましい。すなわち、樹脂を含む基材と、本実施形態のハードコート塗膜と、を有する構造体は、優れた耐摩耗性、成形性、耐汚染性を有する。基材として用いられる樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。基材として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂などが挙げられる。また基材として用いられる熱硬化性樹脂としては、以下に限定されないが、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、SBゴム、天然ゴム、熱硬化性エラストマー、などが挙げられる。
【0218】
[接着層]
本実施形態に係るハードコート塗膜付き基材は、基材とハードコート塗膜との間に、接着層をさらに有していてもよい。接着層としては、一般的に使用される接着層を用いることができ、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム・エラストマーなどが挙げられ、その中でもアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが好ましい。また、上記接着層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでもよい。添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、無機酸化物、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。架橋剤は、以下に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤などが挙げられる。
【0219】
[接着性エマルション粒子(F)]
本実施形態において、前記接着層は、接着性エマルション粒子(F)を含むことが好ましい。接着性エマルション粒子(F)は、柔軟性付与と基材への密着性向上の役割を果たすものである。接着性エマルション粒子(F)は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂などのポリカルボニル化合物、シリコーン化合物などを1種又は2種以上から構成される粒子である。本実施形態において、接着性エマルション粒子(F)は、ポリ(メタ)アクリレート系であることが好ましい。
【0220】
本実施形態における接着性エマルション粒子(F)の調製方法としては、特に限定されないが、水及び乳化剤の存在下に、ビニル単量体を重合して得られる構造であることが好ましい。このようにして得られる接着性エマルション粒子(F)が接着層に含まれる場合、基材への密着性の維持により優れる傾向にある。
【0221】
ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
【0222】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アルキル部の炭素数が1~50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0223】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0224】
上記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0225】
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、4-ビニルトルエン等が挙げられる。
【0226】
シアン化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0227】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの2塩基酸のハーフエステル等が挙げられる。カルボキシル酸基含有のビニル単量体を用いる場合、本実施形態における接着性エマルション粒子(F)にカルボキシル基を導入することができ、粒子間の静電的反発力をもたせることでエマルションとしての安定性を向上させ、例えば攪拌時の凝集といった外部からの分散破壊作用への抵抗力が向上する傾向にある。この際、静電的反発力をさらに向上させる観点から、上記導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
【0228】
上記水酸基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート等のフマル酸のヒドロキシアルキルエステル;アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート;プロピレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート;、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
【0229】
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0230】
(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0231】
上記エポキシ基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル基含有ビニル単量体等が挙げられる。グリシジル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0232】
上記カルボニル含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0233】
また、上記以外のビニル単量体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p-t-ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6,-ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0234】
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等を例示することができる。具体的には、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
上記シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などの加水分解縮合物が挙げられる。
【0235】
前記接着性エマルション粒子(F)は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
【0236】
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エレミノールJS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムルS-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロンHS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸のアンモニウム塩、アリルスルホン酸のナトリウム塩、アリルスルホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
【0237】
[接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径]
本実施形態における接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径は、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましい。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径を上記範囲に調整することにより、基材との接触面積向上により密着性がより一層優れた塗膜を形成できる傾向にある。また、得られる塗膜の透明性が向上する観点から、平均粒子径は200nm以下であることがより好ましい。接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径の測定方法は、以下に限定されないが、例えば、接着性エマルション粒子(F)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定することが可能である。
【0238】
[無機酸化物(G)]
前記接着層は、ハードコート塗膜との相互作用による密着性向上の観点から、無機酸化物(G)をさらに含むことが好ましい。
【0239】
本実施形態における無機酸化物(G)の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデンなどの酸化物が挙げられる。これらは単体であっても混合物でもよい。上記したものの中でも、無機酸化物(G)は、シリカ粒子であることが好ましい。
【0240】
本実施形態における無機酸化物(G)の平均粒子径は、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましく、ハードコート塗膜付き基材全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましい。このため、平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
【0241】
前述した加水分解性珪素化合物(b)との相互作用が強く、前記ハードコート塗膜との密着性の観点から、特に限定されないが、乾式シリカやコロイダルシリカに代表される、シリカ粒子が好ましい。水性分散液の形態でも使用できるため、コロイダルシリカが好ましい。
【0242】
[無機酸化物(G)として好適に用いられるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。
市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0243】
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックスHS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
【0244】
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、TOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)などが挙げられる。
【0245】
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL、株式会社トクヤマ製レオロシールなどが挙げられる。
【0246】
シリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
【0247】
[無機酸化物(G)の形状]
さらに、本実施形態における無機酸化物(G)の形状は、以下に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、パール状などが挙げられ、ハードコート塗膜の硬度、透明性、密着性の観点から、球形、パール状、数珠状であることが特に好ましい。
【0248】
上記接着層の厚みは、密着性の観点から、好ましくは0.1μm以上100.0μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上50.0μm以下である。
【0249】
塗膜(C)は、その少なくとも1つの表面上に機能層をさらに有してもよい。機能層としては、以下に限定されないが、例えば、反射防止層、防汚層、偏光層、衝撃吸収層などが挙げられる。
【0250】
ハードコート塗膜付き基材は、耐候性の観点から、表面をシリカ加工してシリカ層を形成してもよい。シリカ層の形成方法については後述する。
【0251】
[接着層に含んでもよい成分]
本実施形態の接着層は、用途に応じて、溶媒、乳化剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、触媒を含んでもよい。特に屋外用途では高い耐候性が求められることから、紫外線吸収剤、光安定剤を含むことが好ましい。具体的には、以下に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノール、などのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、TINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、TINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN PR25、HOSTAVIN B-CAP、HOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)、などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、HOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)、などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート、などのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)、などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、UV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、TINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系光安定剤;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤;ユーダブルE-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、ユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、ヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤;酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化コバルト及び酸化銅などの無機系紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0252】
<塗料組成物>
本実施形態の塗膜(C)は、例えば、下記の塗料組成物(I)を用いることで得られる。塗料組成物(I)は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、を含む塗料組成物であって、ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験から測定される、前記重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAが、0.30以上0.90以下であり、前記重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、前記マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’とが、HMB’/HM>1の関係を満たし、前記マトリクス原料成分(B’)が、無機酸化物(D)を含み、前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する。このように構成されているため、塗料組成物(I)は、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を発現する。
【0253】
[重合体ナノ粒子(A)の硬度HMとマトリクス原料成分(B’)の硬度HM
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’とは、下記式(3)の関係を満たす。
HMB’/HM>1 式(3)
上記のとおり、塗料組成物(I)において、上記関係が満たされるため、塗料組成物(I)を用いることで得られる塗膜(C)において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMB’も上記式(3)関係を満たすこととなる。塗料組成物(I)における各マルテンス硬度は、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された各成分に対し、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記HM及びHMの値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0254】
[重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITA
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、ISO14577-1でWelast/Wtotalの比ηITとして記載されているパラメータを、成膜した重合体ナノ粒子(A)の塗膜で測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITAが高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.30以上であることが好ましく、塗膜にする際の基材やマトリクス原料成分(B’)の変形に追従できる観点からηITAは0.90以下であることが好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは0.50以上であるとより好ましく、0.60以上であれば更に好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率の測定は、以下に限定されないが、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された重合体ナノ粒子(A)を溶媒中に分散させて得られる組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。弾性回復率ηITAを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
なお、塗膜(C)は、塗料組成物(I)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定される塗料組成物(I)中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAの値は、塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAによく一致するものとして、塗膜(C)における弾性回復率ηITAの値を決定することができる。
【0255】
[溶媒(H)]
本実施形態における塗料組成物(I)は溶媒(H)を含有することが好ましい。使用可能な溶媒(H)は、特に限定されず、一般的な溶媒を用いることができる。溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、水;エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エタノール、メタノール、変性エタノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコールグリセリン、モノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのアルコール類;トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化合物類;ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン;などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用しても構わない。その中で、溶媒除去時の環境負荷低減の観点から、水、アルコール類を含む方が特に好ましい。
【0256】
以下、塗料組成物(I)に含まれる重合体ナノ粒子(A)の構成成分、サイズ、組成比等について説明するが、以下で言及のない点についての詳細は塗膜(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)について前述したとおりである。
また、塗料組成物(I)に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、塗膜(C)を得る過程において、加水分解縮合等により硬化される。すなわち、塗料組成物(I)に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、得られる塗膜(C)中において、対応するマトリクス成分(B)となる関係にある。以下では、マトリクス原料成分(B’)の構成成分、サイズ、組成比等についても説明するが、以下で言及のない点についての詳細は、塗膜(C)に含まれるマトリクス成分(B)について前述したとおりである。
【0257】
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)が、前述した加水分解性珪素化合物(a)を含み、マトリクス原料成分(B’)が、前述した加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。また、塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(a)としても、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。同様に、塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(b)としても、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
塗料組成物(I)における加水分解性珪素化合物(a)及び(b)の詳細については、塗膜(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)について上述したとおりである。
【0258】
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
塗料組成物(I)において、加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分重量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましい。上記含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析、などで測定することができる。
【0259】
[官能基(e)]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス原料成分(B’)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)の表面にマトリクス原料成分(B’)が吸着しやすくなり、保護コロイドとなって安定化する傾向にあるため、結果として塗料組成物(I)の貯蔵安定性が向上する傾向にある。さらに、重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)との間の相互作用が強くなることで、塗料組成物(I)の固形分濃度に対する増粘性が高まり、複雑な形状への塗装時におけるタレが抑制される傾向にあり、結果として塗膜(C)の膜厚が均一となる傾向にある。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
【0260】
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、以下に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
【0261】
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
【0262】
[マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’及びマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITB
塗料組成物(I)において、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’は、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータで、成膜したマトリクス原料成分(B’)の塗膜を測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITB’が高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’は、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や成分(A)の変形に追従できる観点から、ηITB’は0.95以下であることが好ましい。マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率の測定は、以下に限定されないが、例えば、遠心分離等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離されたマトリクス原料成分(B’)を溶媒中に溶解させた組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。
なお、前述したとおり、マトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物がマトリクス成分(B)に該当する。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるマトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB’の値は、対応するマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBによく一致するものとして、弾性回復率ηITBの値を決定することができる。すなわち、本実施形態におけるマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBは、0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や成分(A)の変形に追従できる観点から、ηITBは0.95以下であることが好ましい。
弾性回復率ηITB’及び弾性回復率ηITBを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、マトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
【0263】
塗料組成物(I)において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス原料成分(B’)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス原料成分(B’)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
【0264】
[無機酸化物(D)]
塗料組成物(I)において、マトリクス原料成分(B’)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス原料成分(B’)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上するだけでなく、粒子表面の水酸基の親水性により、塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。さらに、無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する。無機酸化物(D)が当該無機成分を含むことにより、耐摩耗性と耐久性を損ねることなく耐候性を向上させることができる。耐候性向上性能の観点から、無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含むことが好ましく、Ceを含むことがより好ましい。
【0265】
塗料組成物(I)において、無機酸化物(D)における無機成分は、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、Ce、Nb、Zn、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物(D’)を含有することが好ましく、塗料組成物中における前記無機酸化物(D’)の含有量は、特に限定されないが、耐摩耗性、耐久性及び耐候性のバランスの観点から、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、透明性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。ここで、上記含有量は、塗料組成物の固形分を100質量%としたときのCe、Nb、Zn、Ti及びZrの総量として特定することができる。
【0266】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)としては、無機成分を含有していれば特に限定されない。すなわち、塗料組成物(I)における無機酸化物(D)としては、形状を問わず、単体であっても混合物でもよい。前述した加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、シリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水性分散液の形態であることが好ましく、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができる。
【0267】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)の平均粒子径は、塗料組成物(I)の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましく、透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましい。すなわち、上記平均粒子径は、好ましくは2nm以上150nm以下であり、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。塗料組成物(I)における無機酸化物(D)の平均粒子径の測定方法としては、塗膜(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
【0268】
塗料組成物(I)における無機酸化物(D)のその余の特徴としては、塗膜(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
【0269】
[重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、成膜性の観点から、好ましくは2%以上であり、成膜した塗膜の透明性の観点から、好ましくは80%以下である。すなわち、塗料組成物(I)における重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、2%以上80%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以上70%以下であり、更に好ましくは5%以上45%以下である。塗料組成物(I)における重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、塗膜(C)とした後の断面SEM画像における塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、塗料組成物(I)を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
【0270】
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
塗料組成物(I)において、重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス原料成分(B’)との相互作用の観点からも、前述した官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が、コア/シェル構造を有することは、例えば、塗膜断面の透過型電子顕微鏡画像等により確認することができる。
【0271】
[塗料組成物(I)に含まれてもよいその他の成分]
塗料組成物(I)の塗装性をより向上させる観点から、塗料組成物(I)は、マトリクス原料成分(B’)として、上述した成分に加え、必要に応じて、増粘剤、レべリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、分散剤、湿潤剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、可塑剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、静電防止剤、帯電防止剤などを配合することができる。成膜性向上の観点から、湿潤剤や成膜助剤を用いることが好ましく、具体的には、特に限定されないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、メガファックF-443、F-444、F-445、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-489、F-172D、F-178K(商品名、DIC株式会社製)、SNウェット366、SNウェット980、SNウェットL、SNウェットS、SNウェット125、SNウェット126、SNウェット970(商品名、サンノプコ株式会社製)などが挙げられる。これらの化合物は、1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0272】
[触媒]
塗料組成物(I)は、マトリクス原料成分(B’)として、触媒を含んでいてもよい。塗料組成物(I)が反応性基同士の反応を促進する触媒を含む場合、塗膜中に未反応性基が残存しにくく、硬度が高くなり耐摩耗性が向上するだけでなく、耐候性も向上する点で好ましい。触媒は、特に限定されないが、ハードコート塗膜を得る際に、溶解もしくは分散するものが好ましい。そのような触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、金属アルコキシド、金属キレートなどが挙げられ、これら触媒は、1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0273】
[塗料組成物(I)の性状]
塗料組成物(I)は、塗装性の観点から好ましい固形分濃度は0.01~60質量%、より好ましくは1~40質量%である。また、塗装性の観点から、塗料組成物(I)の20℃における粘度としては、好ましくは0.1~100000mPa・s、好ましくは1~10000mPa・sである。
【0274】
<ハードコート塗膜の製法>
本実施形態のハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材の製法は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、無機酸化物(D)と、適宜その他の成分とを溶媒に分散、溶解させた塗料組成物(I)を、前記基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができる。さらに、前記塗装方法としては、以下に限定されないが、例えばスプレー吹付法、フローコート法、刷毛塗法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。なお、前記塗装された塗料組成物(I)は、好ましくは室温~250℃、より好ましくは40℃~150℃での熱処理や紫外線、赤外線照射などにより塗膜化することができる。
【0275】
[表面加工]
本実施形態のハードコート塗膜ないしハードコート塗膜付き基材は、耐候性の観点から、表面をシリカ加工してシリカ層を形成してもよい。シリカ層の形成方法としては、特に限定されないが、具体例としては、シリコーン又はシラザンを蒸着/硬化させるPECVDによるシリカ加工、155nm紫外線照射によって表面をシリカに改質させるシリカ加工技術が挙げられる。特に、表面を劣化させることなく酸素や水蒸気を通しにくい層を作製できることから、PECVDによる表面加工が好ましい。PECVDに用いることのできるシリコーン又はシラザンは、以下に限定されないが、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルメトリキシラン、ビニルメトキシシラン、ジメチルジメトキシラン、TEOS、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0276】
<ハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材の用途>
本実施形態のハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材は、優れた耐摩耗性と耐久性を有する。したがって、ハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材の用途としては、特に限定されないが、例えば、建材、車両用部材や電子機器、電機製品などが挙げられる。
建材用途としては、以下に限定されないが、例えば、建設機械の窓ガラス、ビルや家屋、温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照明や信号機等の照灯類、壁紙表皮材、看板、浴槽や洗面台のようなサニタリー製品、台所用建材外壁材、フローリング材、コルク材、タイル、クッションフロア、リノリウムのような内装用床材、が挙げられる。
車両用部材としては、以下に限定されないが、例えば、自動車、航空機、列車の各用途で使用される部品が挙げられる。具体的な例としては、フロント、リア、フロントドア、リアドア、リアクォーター、サンルーフ等の各ガラス、フロントバンパーやリアバンパー、スポイラー、ドアミラー、フロントグリル、エンブレムカバー、ボディー等の外装部材、センターパネル、ドアパネル、インストルメンタルパネル、センターコンソールなどの内装部材、ヘッドランプやリアランプ等のランプ類の部材、車載カメラ用レンズ部材、照明用カバー、加飾フィルム、さらには種々のガラス代替部材が挙げられる。
電子機器や電機製品としては、以下に限定されないが、例えば、携帯電話、携帯情報端末、パソコン、携帯ゲーム機、OA機器、太陽電池、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク、偏光板や光学フィルター、レンズ、プリズム、光ファイバー等の光学部品、反射防止フィルムや配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム等が好ましく挙げられる。
本実施形態のクリアコート剤、クリアコート塗膜付き基材及び積層体は、上記の他、機械部品や農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨など、様々な領域への適用が可能である。
【0277】
<窓材>
本実施形態の窓材(以下、「窓材(J)」ともいう。)は、ポリカーボネート樹脂と、前記ポリカーボネート樹脂上に配された塗膜と、を有する窓材であって、前記塗膜が、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含み、前記重合体ナノ粒子(A)が、加水分解性珪素化合物(a)を含み、前記マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)を含み、前記窓材のマルテンス硬度HMが、100N/mm以上4000N/mm以下であり、ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験から測定される、前記窓材の弾性回復率ηITJが、0.50以上であり、前記マトリクス成分(B)が、無機酸化物(D)を含み、前記無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有する。このように構成されているため、窓材(J)は、高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を有する。窓材(J)は、高いレベルでの高い耐摩耗性、耐久性及び耐候性を発現するため、以下に限定されないが、例えば、自動車用の窓材として適用することが好ましい。
【0278】
以下、窓材(J)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)の構成成分等に言及しながら窓材(J)について説明する場合があるが、当該構成成分等の詳細については、塗膜(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)について前述したとおりである。
【0279】
窓材(J)において、重合体ナノ粒子(A)がマトリクス成分(B)に分散していることが好ましい。かかる分散状態は、塗膜の断面SEM観察によって確認することができる。
【0280】
窓材(J)において、重合体ナノ粒子(A)は、前述した加水分解性珪素化合物(a)を含み、マトリクス成分(B)は、前述した加水分解性珪素化合物(b)を含む。また、窓材(J)における加水分解性珪素化合物(a)としても、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。同様に、窓材(J)における加水分解性珪素化合物(b)としても、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
窓材(J)における加水分解性珪素化合物(a)及び(b)の詳細については、塗膜(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)について上述したとおりである。
【0281】
[窓材(J)のマルテンス硬度HM
窓材(J)のマルテンス硬度HMは、耐摩耗性の観点から、好ましくは150N/mm以上であり、より好ましくは200N/mm以上であり、耐屈曲性の観点から、好ましくは4000N/mm以下、より好ましくは2000N/mm以下、更により好ましくは1500N/mm以下である。窓材(J)のマルテンス硬度HMを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、上記式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。特に、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計量に対するマトリクス成分(B)の含有量を増やすと、窓材(J)のマルテンス硬度HMは上がる傾向にあり、マトリクス成分(B)の含有量を減らすと窓材(J)のマルテンス硬度HMは下がる傾向にある。
【0282】
窓材(J)の弾性回復率ηITJは、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比であり、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータである。弾性回復率ηITJが高いほど、窓材が変形した際、元の状態に戻ることが可能であり、変形に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、弾性回復率ηITJは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.50以上であり、この範囲であれば値が大きいほど好ましい。上記弾性回復率ηITJは0.55以上であると好ましく、0.60以上であるとより好ましく、更に好ましくは0.65以上である。本実施形態における窓材の弾性回復率の測定は、以下に制限されないが、例えば、窓材の表面を、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)、など、を用いて押し込み試験を行うことで測定することができる。弾性回復率ηITJを上記範囲内に調整するための方法としては、以下に限定されないが、例えば、上記式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
【0283】
窓材(J)において、加水分解性珪素化合物(a)の含有量を調整することが好ましい。ここで、加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の当該重合体ナノ粒子(A)に対する固形分重量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましく、含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、以下に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析等で測定することができる。
【実施例
【0284】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0285】
<<第1実施形態に対応する実施例>>
後述する実施例及び比較例(以降、特に断りがない限り、<<第1実施形態に対応する実施例>>の項における「実施例」及び「比較例」は、それぞれ、「第1実施形態に対応する実施例」及び「第1実施形態に対応する比較例」を意味する。)における、各種の物性は下記の方法で測定した。
【0286】
(1)厚みの測定
各層の厚みは、大塚電子株式会社製反射分光膜厚計(品番:FE-3000)を用いて測定した。
【0287】
(2)微粒子の最低成膜温度の測定
アプリケーターを用いて0.1mmの塗膜を形成するべく、熱勾配試験機の上に置いたアルミ板上に、接着性エマルション粒子(F)として使用した後述するE2050S水分散液又はX-2水分散体を塗工し、乾燥し、接着性エマルション粒子(F)からなる塗膜を得た。
別途、アプリケーターを用いて0.1mmの塗膜を形成するべく、熱勾配試験機の上に置いたアルミ板上に、無機酸化物(G)として使用した後述するスノーテックスC又はスノーテックスOSを塗工し、乾燥し、無機酸化物(G)からなる塗膜を得た。
上述した熱勾配試験機を用いて、JIS K6828-2に準拠し、得られた塗膜の最低造膜温度を測定した。なお、測定温度範囲は0~150℃とし、造膜しなかった場合は、最低造膜温度を150℃超とした。
【0288】
(3)重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径
後述する方法により得られた重合体ナノ粒子(A)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定し、重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径とした。
【0289】
(4)無機酸化物(D)及び(G)の一次平均粒子径並びに無機酸化物(G)のアスペクト比
透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値を測定し、その値を無機酸化物(D)及び(G)の一次平均粒子径とした。また、上記で測定された長径及び短径の各平均値から長径平均値/短径平均値を算出し、得られた値をアスペクト比とした。
【0290】
(5)ヘイズの測定
ヘイズは、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて、JIS K7136に規定される方法により測定した。ヘイズ値H1については、接着層付き基材を対象として上記方法にて測定した。ヘイズ値H2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)を対象として上記方法にて測定した。
【0291】
(6)表面粗さRaの測定
表面粗さRaは、カラー3Dレーザー顕微鏡「VK-9700」(株式会社キーエンス社製の商品名)を用いて、JIS B0601に規定される算術平均粗さRaを測定した。表面粗さRa1については、接着層付き基材のハードコート層を形成する側の表面を対象として上記方法にて測定した。表面粗さRa2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)のハードコート層側の表面を対象として上記方法にて測定した。
【0292】
(7)ハードコート層のマルテンス硬度HMの測定
フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、ハードコート層のマルテンス硬度HMを測定した。
【0293】
(8)ハードコート層の弾性回復率ηITの測定
フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)によりハードコート層の微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、くぼみの全機械的仕事量Wtotalに対するくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastの比、すなわち、Welast/Wtotalの値をハードコート層の弾性回復率ηITとして測定した。
【0294】
(9)重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITAの測定
重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMは、重合体ナノ粒子(A)の水分散体を、バーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃2時間かけて乾燥することにより、得られた塗膜を用いて上記(6)と同様に測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMを測定した。また、上記(7)と同様に弾性回復率ηITA(=Welast/Wtotal)を計測した。
【0295】
(10)成分(B’)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’の測定
成分(B’)のマルテンス硬度HMB’は、成分(B’)を固形分濃度8質量%として水/エタノール/酢酸(組成比77質量%/20質量%/3質量%)へ溶解又は分散させ、得られた溶液はバーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃で2時間かけて乾燥することにより、得られた塗膜を用いて測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、HMB’及びηITB’(=Welast/Wtotal)を計測した。後述するとおり、成分(B)は、対応する成分(B’)の加水分解縮合物に該当することから、上記のようにして測定された成分(B’)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’の値は、それぞれ、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBによく一致するものとしてマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBの値を決定した。
【0296】
(11)ハードコート層の耐摩耗性の評価
ハードコート層の耐摩耗性の評価は、安田精機株式会社製テーバー式アブレーションテスター(No.101)を用い、ASTM D1044の規格に準拠して行った。すなわち、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件でテーバー摩耗試験を実施し、当該試験前のヘイズ、回転数500回及び1000回におけるヘイズを各々、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて、JIS R3212に規定される方法により測定し、試験前のヘイズとの差をとることによって耐摩耗性を下記のように評価した。
回転数500回の場合
A:ヘイズ差が4以下、
B:ヘイズ差が4超10以下、
C:ヘイズ差が10超
回転数1000回の場合
A:ヘイズ差が2以下、
B:ヘイズ差が2超10以下、
C:ヘイズ差が10超30以下
D:ヘイズ差が30超
【0297】
(12)透明性の評価
積層体の透明性は、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて全光線透過率を測定し、下記のように評価した。
A:90%以上、
B:80%以上90%未満、
C:80%未満
【0298】
(13)ハードコート層の初期密着性の測定
<テープ密着性>
ハードコート層の初期密着性は、テープ(ニチバン社製クロスカット試験・碁盤目試験準拠テープ)を積層体のハードコート層側に貼り付け、剥がした際にハードコート層が接着層付き基材上に保持されるかで評価した。
<クロスカット試験>
JIS K5600-5-6に規定されるクロスカット法により、積層体のハードコート層側にカッター刃で1mm間隔で25マス切込みを入れ、テープ(ニチバン社製クロスカット試験・碁盤目試験準拠テープ)をマス上に張り付け、剥がした際の塗膜剥離度合いを分類0~5の6段階で評価した。分類0が最も密着性が高く、番号が大きくなるにつれ密着性が低くなる。
【0299】
(14)重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、塗膜(C)の断面を走査電子顕微鏡を用いて50,000倍に拡大して観察し、サイズ1μm×1μmの一視野においてナノ粒子(A)が占める合計面積から面積比として算出した。
【0300】
(15)重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量
重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、後述する重合体ナノ粒子(A)水分散体調製時の全仕込み量から水、ドデシルベンゼンスルホン酸、過硫酸アンモニウムを除いた重量中の完全加水分解縮合換算重量の割合から算出した。ここで、完全加水分解縮合換算重量は、仕込みに用いた加水分解性珪素化合物の加水分解性基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサンになった場合の重量とした。
【0301】
(16)干渉斑の評価
積層体の基材側表面を黒インキで塗りつぶし、当該積層体のハードコート層側の表面が三波長蛍光灯下となるように配置し、目視にて、干渉斑の有無を確認した。すなわち、下記の基準にて干渉斑の評価を実施した。
S:干渉縞が全く見えない
A:下記B及びCに該当せず、実使用上問題とならない、
B:干渉斑が薄く見える、
C:干渉斑がはっきり見える
【0302】
(17)耐候性の評価
<一次評価>
耐候性は、キセノンウェザーメーター(スガ試験機製)を用いて、JIS K5600に従い、照射照度60W/m、パネル温度63℃にて、降雨と照射を同時に18分間行った後、照射を112分間行う合計120分を1サイクルとしたサイクル運転で行い、500MJ/m照射後のハードコート層について下記のように評価した。
A:外観変化なし
B:変色あり
<二次評価>
積層体の耐候性は、キセノンアーク(スガ試験機社製、製品名SX-75)による紫外線照射をANSI/SAE Z26.1の規格の条件に従って行い、2000MJ/m照射前後のΔbで下記のように評価した。
S:Δb<1
A:Δb=1~4
B:Δb>4
【0303】
(18)接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径、及び接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体の平均粒子径
後述する接着性エマルション粒子(F)水分散体又は複合体粒子水分散体を動的光散乱式粒度分布測定に供した。すなわち、大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)により接着性エマルション粒子(F)又は複合体粒子のキュムラント粒子径をそれぞれ測定し、平均粒子径とした。
【0304】
〔接着性エマルション粒子(F)水分散体の調製〕
<接着性エマルション粒子(F-2)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水410g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、ジメチルジメトキシシラン65g、フェニルトリメトキシシラン37gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液33g、アクリル酸ブチル50g、ジエチルアクリルアミド90g、テトラエトキシシラン120g、フェニルトリメトキシシラン50g、アクリル酸3g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)8g、イオン交換水1000gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して接着性エマルション粒子(F-2)の水分散体を得た。得られた接着性エマルション粒子(F-2)はコアシェル構造を有するものであり、その固形分は14.2質量%であった。
【0305】
<接着性エマルション粒子(F-3)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して接着性エマルション粒子(F-3)の水分散体を得た。得られた接着性エマルション粒子(F-3)の固形分は10質量%であった。
【0306】
〔接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の複合体の調製〕
<複合体粒子(FG-1)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-1)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-1)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は80nmであり、固形分は12質量%であった。
【0307】
<複合体粒子(FG-2)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水570g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%)1150g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-2)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-2)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は40nmであり、固形分は12質量%であった。
【0308】
<複合体粒子(FG-3)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水840g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)320g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-3)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-3)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は7/3であり、その平均粒子径は120nmであり、固形分は12質量%であった。
【0309】
<複合体粒子(FG-4)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1200g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)1750g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-4)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-4)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は3/7であり、その平均粒子径は60nmであり、固形分は12質量%であった。
【0310】
<複合体粒子(FG-5)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル15g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド53g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-5)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-5)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は100nmであり、固形分は12質量%であった。
【0311】
<複合体粒子(FG-6)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル63g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド5g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-6)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-6)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は80nmであり、固形分は12質量%であった。
【0312】
<複合体粒子(FG-7)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル25g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル65g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-7)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-7)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は80nmであり、固形分は12質量%であった。
【0313】
<複合体粒子(FG-8)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水960g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル75g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル15g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-8)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-8)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は80nmであり、固形分は12質量%であった。
【0314】
<複合体粒子(FG-9)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水130g、無機酸化物(G)として水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、一次平均粒子径8nm、固形分10質量%)200g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液4g、2%過硫酸アンモニウム水溶液5g、アクリル酸ブチル5g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル5g、ジエチルアクリルアミド10g、アクリル酸0.1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)0.5gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子(FG-9)の水分散体を得た。得られた複合体粒子(FG-9)における接着性エマルション粒子(F)と無機酸化物(G)の質量比(接着性エマルション粒子(F)/無機酸化物(G))は1/1であり、その平均粒子径は30nmであり、固形分は11質量%であった。
【0315】
〔重合体ナノ粒子(A)水分散体の調製〕
後述する実施例において用いた重合体ナノ粒子(A)水分散体を以下のとおりに合成した。
【0316】
<重合体ナノ粒子(A-1)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1500g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液45g、メチルトリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン23g、テトラエトキシシラン27gを用いて、50℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、温度を80℃とした後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液43g、アクリル酸ブチル11g、ジエチルアクリルアミド12g、アクリル酸1g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、重合体ナノ粒子(A-1)の水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A-1)はコアシェル構造を有するものであり、その平均粒子径は60nmであり、固形分は5.9質量%であった。
【0317】
<重合体ナノ粒子(A-2)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸12g、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン151gを用いて、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液40g、アクリル酸ブチル150g、ジエチルアクリルアミド165g、テトラエトキシシラン30g、フェニルトリメトキシシラン145g、アクリル酸3g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)13g、イオン交換水1900gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して重合体ナノ粒子(A-2)の水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A-2)はコアシェル構造を有するものであり、その平均粒子径は40nmであり、固形分は10.1質量%であった。
【0318】
<重合体ナノ粒子(A-3)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1500g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液90g、メチルトリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン23g、テトラエトキシシラン27gを用いて、50℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、温度を80℃とした後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液43g、アクリル酸ブチル11g、ジエチルアクリルアミド12g、アクリル酸1g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、重合体ナノ粒子(A-3)の水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A-3)はコアシェル構造を有するものであり、その平均粒子径は30nmであり、固形分は5.9質量%であった。
【0319】
<重合体ナノ粒子(A-4)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1500g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液20g、メチルトリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン23g、テトラエトキシシラン27gを用いて、50℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、温度を80℃とした後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液43g、アクリル酸ブチル11g、ジエチルアクリルアミド12g、アクリル酸1g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、重合体ナノ粒子(A-4)の水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A-4)はコアシェル構造を有するものであり、その平均粒子径は120nmであり、固形分は5.9質量%であった。
【0320】
[マトリクス原料成分(B’)コーティング組成液の調製]
後述する実施例において用いたマトリクス原料成分(B’)コーティング組成液を以下のとおりに調製した。
【0321】
<マトリクス原料成分(B’-1)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、トリメトキシシラン66g、テトラエトキシシラン63g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)333gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-1)のコーティング組成液を得た。
【0322】
<マトリクス原料成分(B’-2)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン48g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート81g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」333gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-2)のコーティング組成液を得た。
【0323】
<マトリクス原料成分(B’-3)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン35g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート81g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」333gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-3)のコーティング組成液を得た。
【0324】
<マトリクス原料成分(B’-4)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、トリメトキシシラン66g、テトラエトキシシラン63g、無機酸化物(D)として水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、平均粒子径8nm、固形分10質量%)333gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-4)のコーティング組成液を得た。
【0325】
<マトリクス原料成分(B’-5)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、トリメトキシシラン66g、テトラエトキシシラン63g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」317g、水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」16gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-5)のコーティング組成液を得た。
【0326】
<マトリクス原料成分(B’-6)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン97g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、平均粒子径8nm)300gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-6)のコーティング組成液を得た。
【0327】
<マトリクス原料成分(B’-7)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化ジルコニウムゾル「バイラールZr-C20」(商品名、多木化学株式会社製、固形分20質量%、平均粒子径10nm)7gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-7)のコーティング組成液を得た。
【0328】
<マトリクス原料成分(B’-8)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化チタンゾル「タイノックNRA-6」(商品名、多木化学株式会社製、固形分6質量%、平均粒子径30nm)23gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-8)のコーティング組成液を得た。
【0329】
<マトリクス原料成分(B’-9)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化ニオブゾル「バイラールNb-G6000」(商品名、多木化学株式会社製、固形分6質量%、平均粒子径5nm)23gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-9)のコーティング組成液を得た。
【0330】
[接着層組成液の調製]
<接着層(Z-1)組成液>
接着性エマルション粒子(F-1)としてE2050S水分散液(旭化成株式会社製、固形分濃度46%、最低造膜温度55℃)15g、無機酸化物(G)として球状の水分散コロイダルシリカ「スノーテックスC」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、一次平均粒子径15nm、最低造膜温度150℃超)14g、遮光剤としてTinuvin400(商品名、BASFジャパン株式会社製)2.1g、光安定剤としてTinuvin123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.1g、水33g、エタノール35gを室温条件下で混合し、接着層(Z-1)組成液を得た。接着層(Z-1)組成液の固形分濃度は12質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/スノーテックスC/Tinuvin400/Tinuvin123=100/40/30/2であった。
【0331】
<接着層(Z-2)組成液>
接着性エマルション粒子(F-1)としてE2050S水分散液15g、無機酸化物(G)として球状の水分散コロイダルシリカ「スノーテックスC」14g、遮光剤としてTinuvin400を2.1g、水33g、エタノール35gを室温条件下で混合し、接着層(Z-2)組成液を得た。接着層(Z-2)組成液の固形分濃度は12質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/スノーテックスC/Tinuvin400=100/40/30であった。
【0332】
<接着層(Z-3)組成液>
前述のとおりに得られた接着性エマルション粒子(F-2)(最低造膜温度120℃)28g、無機酸化物(G)として球状の水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、一次平均粒子径8nm、最低造膜温度150℃超)20g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート6.0g、水13g、エタノール33gを室温条件下で混合し、接着層(Z-3)組成液を得た。接着層(Z-3)組成液の固形分濃度は12質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/スノーテックスOS/トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート=100/100/100であった。
【0333】
<接着層(Z-4)組成液>
無機酸化物(G)として連結構造の水分散コロイダルシリカ「スノーテックスPSSO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%、平均短径15nm、平均長径100nm、アクペクト比7)を用いた以外は接着層(Z-1)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-4)組成液を得た。接着層(Z-4)組成液の固形分濃度は12質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/スノーテックスPSSO/Tinuvin400/Tinuvin123=100/40/30/2であった。
【0334】
<接着層(Z-5)組成液>
接着性エマルション粒子としてF-3を用いた以外は接着層(Z-1)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-5)組成液を得た。接着層(Z-5)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、F-3/スノーテックスC/Tinuvin400/Tinuvin123=100/100/16/3であった。
【0335】
<接着層(Z-6)組成液>
硬化剤としてポリイソシアネートA(旭化成(株)製、WT30-100)をさらに用いた以外は接着層(Z-5)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-6)組成液を得た。接着層(Z-6)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、F-3/スノーテックスC/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=100/100/16/3/40であった。
【0336】
<接着層(Z-7)組成液>
接着性エマルション粒子と無機酸化物として、複合体粒子(FG-1)を用いた以外は接着層(Z-6)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-7)組成液を得た。接着層(Z-7)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0337】
<接着層(Z-8)組成液>
複合体粒子(FG-2)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-8)組成液を得た。接着層(Z-8)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-2/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0338】
<接着層(Z-9)組成液>
複合体粒子(FG-3)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-9)組成液を得た。接着層(Z-9)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-3/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0339】
<接着層(Z-10)組成液>
複合体粒子(FG-4)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-10)組成液を得た。接着層(Z-10)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-4/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0340】
<接着層(Z-11)組成液>
複合体粒子(FG-5)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-11)組成液を得た。接着層(Z-11)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-5/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0341】
<接着層(Z-12)組成液>
複合体粒子(FG-6)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-12)組成液を得た。接着層(Z-12)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-6/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0342】
<接着層(Z-13)組成液>
複合体粒子(FG-7)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-13)組成液を得た。接着層(Z-13)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-7/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0343】
<接着層(Z-14)組成液>
複合体粒子(FG-8)を用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-14)組成液を得た。接着層(Z-14)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-8/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/40であった。
【0344】
<接着層(Z-15)組成液>
ポリイソシアネートA量を変えた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-15)組成液を得た。接着層(Z-15)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/10であった。
【0345】
<接着層(Z-16)組成液>
ポリイソシアネートA量を変えた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-16)組成液を得た。接着層(Z-16)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA=200/16/3/70であった。
【0346】
<接着層(Z-17)組成液>
ポリイソシアネートAをポリイソシアネートB(旭化成(株)製、WM44-L70G)変えた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-17)組成液を得た。接着層(Z-17)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートB=200/16/3/40であった。
【0347】
<接着層(Z-18)組成液>
無機酸化物(G)として水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、一次平均粒子径8nm、固形分10質量%)をさらに用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-18)組成液を得た。接着層(Z-18)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA/ニードラールB-10=200/16/3/44/5であった。
【0348】
<接着層(Z-19)組成液>
複合体粒子(FG-9)をさらに用いた以外は接着層(Z-7)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-18)組成液を得た。接着層(Z-18)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、FG-1/Tinuvin400/Tinuvin123/ポリイソシアネートA/FG-9=200/16/3/44/10であった。
【0349】
<接着層(Z-20)組成液>
遮光剤及び光安定剤を用いなかった以外は接着層(Z-1)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-20)組成液を得た。接着層(Z-20)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/スノーテックスC=100/40であった。
【0350】
<接着層(Z-21)組成液>
無機酸化物(G)を用いなかった以外は接着層(Z-1)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-21)組成液を得た。接着層(Z-21)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、E2050S/Tinuvin400/Tinuvin123=100/30/2であった。
【0351】
<接着層(Z-22)組成液>
接着性エマルション粒子(F)を用いなかった以外は接着層(Z-1)組成液の調製と同様にして、接着層(Z-22)組成液を得た。接着層(Z-22)組成液の固形分濃度は10質量%、各成分の固形分比率は、スノーテックスC/Tinuvin400/Tinuvin123=40/30/2であった。
【0352】
[接着層付き基材の製造]
<接着層付き基材1>
以下のようにして、ポリカーボネート基材(タキロン株式会社製、品番1600、厚み:2mm)の片側の表面に接着層を形成した。すなわち、接着層(Z-1)組成液を、バーコーターを用いてポリカーボネート基材上に塗布した。次いで、塗布液を130℃で2時間乾燥し、膜厚3.0μmの接着層1をポリカーボネート基材上に形成した。このようにして接着層付き基材1を得た。
【0353】
<接着層付き基材2>
接着層の膜厚を1.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材2を得た。
【0354】
<接着層付き基材3>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-2)組成液を用いた以外は、接着層基材1の製造と同様にして接着層付き基材3を得た。
【0355】
<接着層付き基材4>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-3)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材4を得た。
【0356】
<接着層付き基材5>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-4)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材5を得た。
【0357】
<接着層付き基材6>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-5)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材6を得た。
【0358】
<接着層付き基材7>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-6)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材7を得た。
【0359】
<接着層付き基材8>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-7)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材8を得た。
【0360】
<接着層付き基材9>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-8)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材9を得た。
【0361】
<接着層付き基材10>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-9)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材10を得た。
【0362】
<接着層付き基材11>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-10)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材11を得た。
【0363】
<接着層付き基材12>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-11)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材12を得た。
【0364】
<接着層付き基材13>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-12)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材13を得た。
【0365】
<接着層付き基材14>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-13)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材14を得た。
【0366】
<接着層付き基材15>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-14)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材15を得た。
【0367】
<接着層付き基材16>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-15)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材16を得た。
【0368】
<接着層付き基材17>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-16)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材17を得た。
【0369】
<接着層付き基材18>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-17)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材18を得た。
【0370】
<接着層付き基材19>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-7)組成液を用いて、膜厚を1.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材19を得た。
【0371】
<接着層付き基材20>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-7)組成液を用いて、膜厚を10.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材20を得た。
【0372】
<接着層付き基材21>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-18)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材21を得た。
【0373】
<接着層付き基材22>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-19)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材22を得た。
【0374】
<接着層付き基材23>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-20)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材23を得た。
【0375】
<接着層付き基材24>
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-21)組成液を用いて、膜厚を5.0μmとした以外は、接着層付き基材1の製造と同様にして接着層付き基材24を得た。
【0376】
[実施例1]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-1)=100:200となるように、上記で調整した重合体ナノ粒子(A-1)水分散体と、上記で調整したマトリクス原料成分(B’-1)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、実施例1の塗料組成物を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物(I)を接着層付き基材1へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚5.0μmのハードコート層を有する、積層体を得た。
積層体及びハードコート層について各種評価を行った結果を表1に示す。
なお、塗料組成物中のマトリクス原料成分(B′-1)に由来する塗膜中のマトリクス成分を成分(B-1)と称し、以下同様に塗料組成物中のマトリクス原料成分(B′-2)等に由来する塗膜中のマトリクス成分を(B-2)等と称する。すなわち、マトリクス成分(B-1)~(B-6)は、それぞれ、マトリクス原料成分(B′-1)~(B′-6)の加水分解縮合物であるといえる。
【0377】
上記実施例で用いた重合体ナノ粒子(A-1)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITA、マトリクス原料成分(A′-1)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’、並びにマトリクス成分(A-1)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBを上述の測定方法に従って測定した。評価結果を表6に示す。
【0378】
[実施例2]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-2)を用い、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-2)=100:300とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0379】
[実施例3]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-3)を用い、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-3)=50:300とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0380】
[実施例4]
塗料組成物を接着層付き基材3へ塗布した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0381】
[実施例5]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-4)を用い、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-4)=100:200とした以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0382】
[実施例6]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-5)を用い、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-5)=100:200とした以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0383】
[実施例7]
容積50gのサンプル管に、ULS-1385MG(商品名、コーティング用高分子紫外線吸収剤、平均粒子径65nm、固形分30質量%)1.4g、1-メトキシ-2-プロパノール8.5g、イオン交換水1.0gを仕込み、700rpmで撹拌しながら、酢酸1.0g、メチルトリメトキシシラン4.0g、ジメトキシー3-グリシドキシプロピルメチルシラン1.9g、20%p-トルエンスルホン酸メタノール液0.1gの順に、それぞれ1分間かけて滴下した。引き続き、室温で60分間撹拌、1日静置し、これを液1とした。
容積20gのサンプル管に、3-イソシアネートプロピルトリエトキシラン2.2g、2-ブタノンオキシム(イソシアネート基のブロック化剤)0.7gを仕込み、500rpmで、10分間撹拌後、1日静置し、これを液2とした。
冷却管を取り付けた200mL三口フラスコに、液1と撹拌子を入れ、窒素気流下、60rpmで、80℃で3時間加熱した。引き続き、液2を加え、同条件にて、80℃で4時間加熱した。
さらに、これに3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.8gを、2分間かけて滴下した後、80℃で6時間加熱した。
引き続き、暗所25℃にて、1日静置した後、650rpmで撹拌しながら、水分散コロイダルシリカ「スノーテックスO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、平均粒子径15nm)6.9g、水分散酸化セリウムゾル「ニードラールU-15」(商品名、多木化学株式会社製、平均粒子径8nm、固形分15質量%)2.0gを2分間かけて滴下した。室温で30分間撹拌後、さらに80℃で30分加熱した。
引き続き、1週間静置し、実施例7の塗料組成物を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物を接着層付き基材2へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚7.0μmのハードコート層を有する、積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0384】
[実施例8]
<シリル化紫外線吸収剤(UVEsilane)の合成>
温度計、加熱還流装置の付いたフラスコに、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン100g(0.406mol)をメチルイソブチルケトン(MIBKと略記)500gに入れ、撹拌することで溶解させた。これに、アリルブロマイド100g(0.82mol)と無水炭酸カリウム138g(1mol)を加え、激しく撹拌しながら、外部からオイルバスにより110℃で5時間加熱した。
生成した臭化カリウムの塩をろ過により除いた。この反応溶液は、減圧ストリップにより溶媒MIBKを除いたところ、約100gの2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアリロキシベンゾフェノンの赤色高粘度オイルを得た。これに、メタノールを加えて結晶化させた後、ろ過することで88.6g(0.272mol)の黄色固体の2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアリロキシベンゾフェノンを得た。
2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアリロキシベンゾフェノン(32.6g、0.1mol)を70mLのトルエン中に懸濁した。これに白金触媒PL50-T(信越化学工業(株)製)を2滴加え、温度を65℃に上げてトリメトキシシラン(29.3g、0.24mol)を加えた。
温度を約65~85℃に約1~2時間保ち、しかる後に反応混合物を冷却し、ワコーゲルC-100の5gを加え、白金触媒を吸着させた後、濾過し、溶剤を減圧ストリップにより除き、赤色のオイル状物51.9g(0.091mol)を得た。
【0385】
<原料ポリシロキサンの製造>
温度計、撹拌機、冷却器を備えた2Lの三口フラスコに、メチルトリメトキシシラン408部、トルエン400部を仕込み、98%メタンスルホン酸11部を触媒として添加し、内温を30℃以下に保ちながら水146部を滴下し、メチルトリメトキシシランを加水分解した。滴下終了後、室温で2時間撹拌して反応を完結させた。
その後、酸性成分を中和し、生成したメタノールを減圧留去した。2回水洗することにより完全に中和塩を除去した後、再び減圧にて105℃,3時間乾燥前後の質量減少が1.1質量%となるまでトルエン等の溶剤成分を除去することにより、無色透明固体のシロキサン樹脂210部を得た。予めシロキサン樹脂283部は、イソプロパノール717部を加えて、溶解させることにより、固形分濃度28質量%のシロキサン樹脂溶液とした。
【0386】
<原料メタノール溶液の製造>
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた0.5リットルフラスコに、チタンテトライソプロポキシド170.6g(0.6モル)を仕込み、氷冷下で撹拌しながら滴下ロートによりアセチルアセトン140g(1.4モル)を45分間で滴下した。それにより内温は25℃まで上昇した。そのまま2時間室温で撹拌熟成を行い、黄色透明溶液状の加水分解性金属化合物を得た。
次いで、室温下で6.9%アンモニア水溶液46.0g(水2.38モル)を20分間で滴下した。発熱により35℃まで上昇し、その後室温に戻った。室温下で20時間反応させたところ、黄白色沈殿が生成した。これを濾過、アセトン洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥を行い、121gの黄白色粉末物質を得た。
最終的に、このものの固形分濃度が20%になるようにメタノールで希釈した溶液を作成し、原料メタノール溶液とした。
【0387】
<塗料組成物の合成>
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた2リットルフラスコにメチルトリメトキシシラン371g、UVEsilane8.6gを仕込み、撹拌しながら20℃に維持し、ここに水分散コロイダルシリカ「スノーテックスO」108gと0.25Nの酢酸水溶液252gとの混合溶液を添加して高速撹拌した。
更に、60℃にて3時間撹拌後、シクロヘキサノン330gを添加したのち、常圧にて副生したメタノールと一部の水、計335gを留去した。
次いで、イソプロパノール205g、シロキサン樹脂溶液400g、原料メタノール溶液(20%メタノール溶液)4g、レベリング剤としてポリエーテル変性シリコーンKP-341(信越化学工業(株)製)0.6gを添加し、硬化触媒として10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液3.7gを添加した。こうして得られたオルガノポリシロキサン溶液を実施例8の塗料組成物とした。
バーコーターを用いて塗料組成物を接着層付き基材2へ塗布した後、室温で45分風乾した後、135℃で1時間乾燥し、ハードコート層を有する、膜厚5.0μmの積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0388】
[実施例9]
20℃以下に冷却された3200gのAS4010(Momentive Performance Materialsより入手可能のメチルトリメトキシシランの部分縮合物、コロイド状シリカ、およびシリル化ジベンゾレゾルシノールの混合物であり、共溶媒としてのイソプロパノールおよびn-ブタノールを有するもの)に対し、32gのヘキサメチルジシラザンを添加し、実施例9の塗料組成物を得た。
バーコーターを用いて塗料組成物を接着層付き基材2へ塗布した後、20℃、40%の相対湿度で20分風乾した後、90℃で2時間乾燥し、ハードコート層を有する、膜厚5.0μmの積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0389】
[実施例10]
重合体ナノ粒子(A)として(A-3)を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0390】
[実施例11]
重合体ナノ粒子(A)として(A-4)を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0391】
[実施例12]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-7)を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0392】
[実施例13]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-8)を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0393】
[実施例14]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-9)を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0394】
[実施例15]
塗料組成物を接着層付き基材5へ塗布し、積層体膜厚を10μmとした以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0395】
[実施例16]
塗料組成物を接着層付き基材6へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0396】
[実施例17]
塗料組成物を接着層付き基材7へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0397】
[実施例18]
塗料組成物を接着層付き基材8へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0398】
[実施例19]
塗料組成物を接着層付き基材9へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0399】
[実施例20]
塗料組成物を接着層付き基材10へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0400】
[実施例21]
塗料組成物を接着層付き基材11へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0401】
[実施例22]
塗料組成物を接着層付き基材12へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0402】
[実施例23]
塗料組成物を接着層付き基材13へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0403】
[実施例24]
塗料組成物を接着層付き基材14へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0404】
[実施例25]
塗料組成物を接着層付き基材15へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0405】
[実施例26]
塗料組成物を接着層付き基材16へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0406】
[実施例27]
塗料組成物を接着層付き基材17へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0407】
[実施例28]
塗料組成物を接着層付き基材18へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0408】
[実施例29]
塗料組成物を接着層付き基材19へ塗布し、積層体膜厚を6μmとした以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0409】
[実施例30]
塗料組成物を接着層付き基材20へ塗布し、積層体膜厚を15μmとした以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0410】
[実施例31]
塗料組成物を接着層付き基材8へ塗布し、積層体膜厚を6μmとした以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0411】
[実施例32]
塗料組成物を接着層付き基材8へ塗布し、積層体膜厚を15μmとした以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。実施例3と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0412】
[実施例33]
塗料組成物を接着層付き基材21へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0413】
[実施例34]
塗料組成物を接着層付き基材22へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0414】
[実施例35]
重合体ナノ粒子(A)として(A-1)、マトリクス原料成分(B’)として(B’-3)、遮光剤としてTinuvin400を用い、固形分質量比で(A-1):(B-3):Tinuvin400=50:300:10とした以外は、実施例18と同様にして積層体を得た。実施例18と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0415】
[比較例1]
重合体ナノ粒子として(A-2)、マトリクス原料成分(B’)として(B’-6)を用い、固形分質量比で(A-2):(B-6)=100:145とし、接着層付き基材4に、膜厚が500nmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。実施例1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0416】
[比較例2]
塗料組成物を接着層付き基材23へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0417】
[比較例3]
塗料組成物を接着層付き基材24へ塗布した以外は、実施例15と同様にして積層体を得た。実施例15と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0418】
[比較例4]
接着層(Z-1)組成液の代わりに接着層(Z-22)組成液を用いたこと以外は接着層付き基材1の製造と同様としたが、成膜不良のため接着層付き基材は得られなかった。
【0419】
実施例1~35及び比較例1~4の各種評価結果を表1~9に示す。
【0420】
【表1】
【0421】
【表2】
【0422】
【表3】
【0423】
【表4】
【0424】
【表5】
【0425】
【表6】
【0426】
【表7】
【0427】
【表8】
【0428】
【表9】
【0429】
<<第2実施形態に対応する実施例>>
後述する実施例及び比較例(以降、特に断りがない限り、<<第2実施形態に対応する実施例>>の項における「実施例」及び「比較例」は、それぞれ、「第2実施形態に対応する実施例」及び「第2実施形態に対応する比較例」を意味する。)における、各種の物性は下記の方法で測定した。
【0430】
(1)ハードコート塗膜の膜厚の測定
ハードコート塗膜の膜厚は、大塚電子株式会社製反射分光膜厚計(品番:FE-3000)を用いて測定した。
【0431】
(2)重合体ナノ粒子(A)及び接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径
後述する方法により得られた重合体ナノ粒子(A)水分散体及び接着性エマルション粒子(F)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定し、重合体ナノ粒子(A)及び接着性エマルション粒子(F)の平均粒子径とした。
【0432】
(3)無機酸化物(D)及び(G)の平均粒子径
後述する水分散コロイダルシリカに対し、透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値を測定し、その値を各無機酸化物の平均粒子径とした。
【0433】
(4)ヘイズの測定
ハードコート塗膜のヘイズは、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて、JIS K7136に規定される方法により測定した。
【0434】
(5)ハードコート塗膜のマルテンス硬度HMの測定
フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、塗膜のマルテンス硬度HMを測定した。
【0435】
(6)ハードコート塗膜の弾性回復率ηITの測定
フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により塗膜の微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、くぼみの全機械的仕事量Wtotalに対するくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastの比、すなわち、Welast/Wtotalの値を塗膜の弾性回復率ηITとして測定した。
【0436】
(7)重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITAの測定
重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMは、重合体ナノ粒子(A)の水分散体を、バーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃2時間かけて乾燥することにより、得られたハードコート塗膜を用いて上記(6)と同様に測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMを測定した。また、上記(6)と同様に弾性回復率ηITA(=Welast/Wtotal)を計測した。
【0437】
(8)成分(B’)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’の測定
成分(B’)のマルテンス硬度HMB’は、成分(B’)を固形分濃度8質量%として水/エタノール/酢酸(組成比77質量%/20質量%/3質量%)へ溶解又は分散させ、得られた溶液をバーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃で2時間かけて乾燥することにより、得られたハードコート塗膜を用いて測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、HMB’及びηITB’「Welast/Wtotal」を計測した。後述するとおり、成分(B)は、対応する成分(B’)の加水分解縮合物に該当することから、上記のようにして測定された成分(B’)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’の値は、それぞれ、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBによく一致するものとしてマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBの値を決定した。
【0438】
(9)耐摩耗性の評価
塗膜の耐摩耗性の評価は、安田精機株式会社製テーバー式アブレーションテスター(No.101)を用い、ASTM D1044の規格に準拠して行った。すなわち、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件でテーバー摩耗試験を実施し、当該試験前のヘイズ及び回転数1000回におけるヘイズを各々上記(4)に基づいて測定し、差をとることによって耐摩耗性を評価した。
【0439】
(10)全光線透過率の測定
ハードコート塗膜の全光線透過率は、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)用いて測定した。測定値より、以下の計算式に基づいてハードコート塗膜の全光線透過率維持率を算出した。
ハードコート塗膜の全光線透過率維持率(%)=(ハードコート塗膜付き基材の全光線透過率(%)/基材の全光線透過率(%)) × 100
【0440】
(11)初期密着性の測定
初期密着性は、テープ(ニチバン社製クロスカット試験・碁盤目試験準拠テープ)をハードコート塗膜付き基材の塗膜側に貼り付け、剥がした際にハードコート塗膜が基材上に保持されるかで評価した。
【0441】
(12)耐湿性の測定
ハードコート塗膜の耐湿性は、小型環境試験機(エスペック社製型番SH-642)50℃95%RH環境下にてハードコート塗膜付き基材を2週間静置し、2週間後のハードコート塗膜の変化を密着性の変化で評価した。密着性は、テープ(ニチバン社製クロスカット試験・碁盤目試験準拠テープ)をハードコート塗膜付き基材に貼り付け、剥がした際にハードコート塗膜が基材上に保持されるか否かで評価した。各表において、耐湿試験後、密着性に変化のないものをA、実用上問題はないものの一部剥離したものをB、全体が剥離したものをCとして評価した。
【0442】
(13)テーバー摩耗試験回転数500回と10回とのヘイズ差(ΔA)の測定
回転数500回と10回とのヘイズ差(ΔA)の測定は、ASTM D1044の規格(摩耗輪CS-10F、及び荷重500g)に準拠して行った。評価は、テーバー摩耗試験を10回実施後、ヘイズを上記(4)に基づいて測定し、その後、ヘイズを測定した箇所において、テーバー摩耗試験を490回実施し、再度ヘイズを上記(4)に基づいて測定した。
【0443】
(14)耐汚染性の測定
ハードコート塗膜の耐汚染性は、アセトン5gにJIS試験用粉体1(12種 カーボンブラック)10gを分散させた液を、ASTM D1044の規格に準拠したテーバー摩耗試験回転数500回後のハードコート塗膜付き基材に塗り、その後、柔らかい布と洗剤及び水を用いて上記粉体を除去したハードコート塗膜付き基材を用いて評価した。評価は、上記の耐汚染性試験の前後でのハードコート塗膜の全光線透過率維持率で行い、全光線透過維持率の算出は以下の計算式で算出し、全光線透過率は日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)用いて測定した。
耐汚染試験後の全光線透過率維持率(%)=(試験後の全光線透過率/試験前の全光線透過率) × 100
【0444】
(15)塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率
塗膜(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、塗膜(C)を製造する際に用いた塗料組成物の配合比から算出した。
【0445】
(16)重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、塗料組成物(I)を製造する際に用いた重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の配合比から算出した。
【0446】
(17)重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量
重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、後述する重合体ナノ粒子(A)水分散体調製時の全仕込み量から水、ドデシルベンゼンスルホン酸、過硫酸アンモニウムを除いた重量中の完全加水分解縮合換算重量の割合から算出した。ここで、完全加水分解縮合換算重量は、仕込みに用いた加水分解性珪素化合物の加水分解性基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサンになった場合の重量とした。
【0447】
(18)凝着力の測定
凝着力の測定は、サンプル断面をクライオCPを用いて作成し、Ar雰囲気下においてサンプル断面をAFM(Bruker AXS社製Dimension ICON+NanoscopeV)のPeakForce QNMモードで測定を実施した。得られた画像から、凝着力の高低を判断した。
【0448】
(19)291nm光線透過率の評価
291nm光線透過率は、基材に石英を用いてUV-Vis(パーキンエルマー社製)で291nmでの透過率を測定した。
【0449】
(20)291nm光線吸収割合の評価
291nm光線吸収割合は、石英基材とハードコート塗膜付き石英基材の291nm光線透過率を上記(19)と同様の方法で測定し、下記式により291nm光線吸収割合を算出した。291nm光線吸収割合が高い程、基材へ届く紫外光が少なくなることから、高い耐候性を有すると評価した。
291nm光線吸収割合(%)=100-(ハードコート塗膜付き石英基材の291nm光線透過率(%)/石英基材の291nm光線透過率(%)×100)(%)
【0450】
〔重合体ナノ粒子(A)水分散体の調製〕
後述する実施例において用いた重合体ナノ粒子(A)水分散体を以下のとおりに合成した。
【0451】
<重合体ナノ粒子(A-1)水分散体>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器で、イオン交換水1500g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液45g、トリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン23g、テトラエトキシシラン27gを用いて、50℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、温度を80℃とした後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液43g、アクリル酸ブチル11g、ジエチルアクリルアミド12g、アクリル酸1g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行い、100メッシュの金網で濾過し、重合体ナノ粒子(A-1)の水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A-1)はコアシェル構造を有するものであり、その固形分は5.9質量%であった。
【0452】
[マトリクス原料成分(B’)コーティング組成液の調整]
以下、後述する実施例及び比較例において用いた成分(B’)を調合した。
【0453】
<マトリクス原料成分(B’-1)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径8nm)14gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-1)のコーティング組成液を得た。
【0454】
<マトリクス原料成分(B’-2)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化ジルコニウムゾル「バイラールZr-C20」(商品名、多木化学株式会社製、固形分20質量%、平均粒子径10nm)7gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-2)のコーティング組成液を得た。
【0455】
<マトリクス原料成分(B’-3)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化チタンゾル「タイノックNRA-6」(商品名、多木化学株式会社製、固形分6質量%、平均粒子径30nm)23gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-3)のコーティング組成液を得た。
【0456】
<マトリクス原料成分(B’-4)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)40g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化ニオブゾル「バイラールNb-G6000」(商品名、多木化学株式会社製、固形分6質量%、平均粒子径5nm)23gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-4)のコーティング組成液を得た。
【0457】
<マトリクス原料成分(B’-5)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(ALDRICH社製)30g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)68g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)282g、水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径8nm)14gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-5)のコーティング組成液を得た。
【0458】
<マトリクス原料成分(B’-6)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(ALDRICH社製)41g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)93g、無機酸化物(D)として水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径8nm)38gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-6)のコーティング組成液を得た。
【0459】
<マトリクス原料成分(B’-7)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(ALDRICH社製)31g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)69g、無機酸化物(D)として水分散酸化セリウムゾル「ニードラールB-10」(商品名、多木化学株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径8nm)286gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-7)のコーティング組成液を得た。
【0460】
<マトリクス原料成分(B’-8)コーティング組成液>
加水分解性珪素化合物(b)として、テトラエトキシシラン「KBE04」(商品名、信越化学工業株式会社製)41g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート「KBM9659」(商品名、信越化学株式会社製)69g、無機酸化物(D)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスOXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、平均粒子径5nm)286gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’-8)のコーティング組成液を得た。
【0461】
[接着層付きポリカーボネート基材の製造]
<接着層付きポリカーボネート基材1>
以下のようにして、ポリカーボネート基材(タキロン株式会社製、品番1600、厚み:2mm)の片側の表面に接着層1を形成した。すなわち、接着性エマルション粒子(F)としてE2050S水分散液(旭化成株式会社製、固形分濃度46%)19g、無機酸化物(G)として水分散コロイダルシリカ「スノーテックスC」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、平均粒子径15nm)17g、水29g、エタノール35gを混合した液を、バーコーターを用いてポリカーボネート基材上に塗布した。次いで、塗布液を130℃で2時間乾燥し、膜厚1.0μmの接着層1をポリカーボネート基材上に形成した。このようにして接着層付きポリカーボネート基材1を得た。
【0462】
[実施例2-1]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-1)=50:305となるように、上記で調整した重合体ナノ粒子(A-1)水分散体と、上記で調整したマトリクス原料成分(B’-1)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、実施例2-1の塗料組成物(I)を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物(I)を接着層付きポリカーボネート基材1へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚5.0μmのハードコート塗膜を有する、ハードコート塗膜付き基材を得た。
ハードコート塗膜のマルテンス硬度HM、弾性回復率ηIT、耐摩耗性、全光線透過率、初期密着性、耐湿性、耐汚染性の評価を行った。評価結果を表10に示す。
なお、塗料組成物中のマトリクス原料成分(B’-1)に由来する塗膜中のマトリクス成分を成分(B-1)と称し、以下同様に塗料組成物中のマトリクス原料成分(B’-2)等に由来する塗膜中のマトリクス成分を(B-2)等と称する。すなわち、マトリクス成分(B-1)~(B-6)は、それぞれ、マトリクス原料成分(B’-1)~(B’-6)の加水分解縮合物であるといえる。
【0463】
上記実施例で用いた重合体ナノ粒子(A-1)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITA、マトリクス原料成分(B’-1)のマルテンス硬度HMB’及び弾性回復率ηITB’、並びにマトリクス成分(B-1)のマルテンス硬度HM及び弾性回復率ηITBを上述の測定方法に従って測定した。評価結果を表11に示す。
【0464】
別途、上記のように調製した塗料組成物(I)を石英基材上に塗布し、膜厚5.0μmのハードコート塗膜を有する、ハードコート塗膜付き石英基材を得た。当該ハードコート塗膜付き石英基材の291nm光線透過率、291nm光線吸収割合を上述の測定方法に従って測定し、吸収割合から耐候性の評価を行った。評価結果を表12に示す。
【0465】
[実施例2-2]
ハードコート塗膜の膜厚を3.0μmにした以外は、実施例2-1と同様にしてハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0466】
[実施例2-3]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-2)を用いた以外は、実施例2-1と同様にしてハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0467】
[実施例2-4]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-3)を用いた以外は、実施例2-1と同様にしてハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0468】
[実施例2-5]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-4)を用いた以外は、実施例2-1と同様にしてハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0469】
[実施例2-6]
マトリクス原料成分(B’)として(B’-5)を用いた以外は、実施例2-1と同様にしてハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0470】
[実施例2-7]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-6)=50:210となるように、上記で調整した重合体ナノ粒子(A-1)水分散体と、上記で調整したマトリクス原料成分(B’-6)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、実施例2-1の塗料組成物(I)を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物(I)を接着層付きポリカーボネート基材1へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚5.0μmのハードコート塗膜を有する、ハードコート塗膜付き基材を得た。
【0471】
[実施例2-8]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-7)=50:300となるように、上記で調整した重合体ナノ粒子(A-1)水分散体と、上記で調整したマトリクス原料成分(B’-7)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、実施例2-1の塗料組成物(I)を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物(I)を接着層付きポリカーボネート基材1へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚5.0μmのハードコート塗膜を有する、ハードコート塗膜付き基材を得た。
【0472】
[比較例2-1]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A-1):(B-8)=50:300となるように、上記で調整した重合体ナノ粒子(A-1)水分散体と、上記で調整したマトリクス原料成分(B’-8)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、比較例2-1の塗料組成物(I)を得た。次いで、バーコーターを用いて塗料組成物(I)を接着層付きポリカーボネート基材1へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚5.0μmのハードコート塗膜を有する、ハードコート塗膜付き基材を得た。実施例2-1と同様の評価方法にて各物性の評価結果を得た。
【0473】
[凝着力の評価結果]
実施例2-1~2-8、比較例2-1で得られたハードコート塗膜の凝着力を(18)の測定方法に準拠して実施した結果、いずれも重合体ナノ粒子(A)の凝着力Fはマトリクス成分(B)の凝着力Fより高かった。
【0474】
実施例2-1~2-8及び比較例2-1の各種評価結果を表10~12に示す。
【0475】
【表10】
【0476】
【表11】
【0477】
【表12】
【0478】
[評価結果]
表10~12より、塗膜中にCe、Nb、Ti又はZrを含有していない比較例2-1の塗膜と比較して、実施例2-1~8のハードコート塗膜は、耐摩耗性、透明性、密着性、耐汚染性を維持しつつ耐候性に優れることが分かった。
上記のとおり、実施例2-1~8のハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材は、高いレベルでの耐摩耗性と耐汚染性、さらには高いレベルでの耐候性をも発現するため、自動車用の窓材として好ましく適用できるものと評価された。
【0479】
本出願は、2020年3月4日出願の日本特許出願(特願2020-037112号)及び2020年3月4日出願の日本特許出願(特願2020-037226号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0480】
本発明によって提供される、積層体、ハードコート塗膜、及び塗料組成物は、建材、自動車部材や電子機器や電機製品などのハードコートとして有用である。