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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】水力発電/蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/06 20060101AFI20241024BHJP
   F03B 9/00 20060101ALI20241024BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20241024BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
F03B17/06
F03B9/00
H02J15/00 D
B63B35/00 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023032385
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2024124601
(43)【公開日】2024-09-13
【審査請求日】2023-04-12
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511216204
【氏名又は名称】東福 憲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100101926
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 孝和
(72)【発明者】
【氏名】東福 憲郎
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/152307(WO,A1)
【文献】特開2011-032994(JP,A)
【文献】特許第7174503(JP,B1)
【文献】特開2016-100970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00-11/08
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する水力駆動装置と、上記出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、これら水力駆動装置及び発電装置が取り付けられた取付体と、上記発電装置で発電された電気を蓄電するための蓄電装置を有する蓄電船とを備えた水力発電/蓄電システムであって、
上記水力駆動装置は、
上記取付体の一方端部側に回転自在に取り付けられた第1の回転体と、
その回転中心軸が上記第1の回転体の回転中心軸と平行になるように上記取付体の他方端部側に回転自在に取り付けられた第2の回転体と、
上記第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、
各抵抗部材が水流圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、
その回転中心軸が上記第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、上記第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ上記取付体に取り付けられた複数の補助回転体と、を備え、
上記発電装置は、
上記水力駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、
上記水力駆動装置は、上記第1の回転体及び第2の回転体の少なくとも回転中心軸が水面の上方に位置し、且つ上記無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が水中内に完没するように、上記取付体に取り付けられており、
上記取付体が、上記蓄電船の船体に設けられ、
当該取付体は、上記第1の回転体が上記蓄電船の前方を向くように、蓄電船の横側部に並んで固定されている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項2】
水流圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する水力駆動装置と、上記出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、これら水力駆動装置及び発電装置が取り付けられた取付体と、上記発電装置で発電された電気を蓄電するための蓄電装置を有する蓄電船とを備えた水力発電/蓄電システムであって、
上記水力駆動装置は、
上記取付体の一方端部側に回転自在に取り付けられた第1の回転体と、
その回転中心軸が上記第1の回転体の回転中心軸と平行になるように上記取付体の他方端部側に回転自在に取り付けられた第2の回転体と、
上記第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、
各抵抗部材が水流圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、
その回転中心軸が上記第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、上記第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ上記取付体に取り付けられた複数の補助回転体と、を備え、
上記発電装置は、
上記水力駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、
上記水力駆動装置は、上記第1の回転体及び第2の回転体の少なくとも回転中心軸が水面の上方に位置し、且つ上記無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が水中内に完没するように、上記取付体に取り付けられており、
上記取付体が、上記蓄電船とは別体の浮体具に設けられ、
当該浮体具は、上記蓄電船に固定されることなく、水面上に配置されるものである、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記第1の抵抗部材が、可撓性素材で形成された上記受圧面部と、当該受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成されている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記第1の抵抗部材が、互いに背中合わせに接合された1対の上記受圧面部と、これら1対の受圧面部を上記無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成されている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項5】
請求項3に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記水力駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、水力駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項6】
請求項4に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記水力駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、水力駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされて、上記無端ベルトの上記下側の無端ベルト部分が、水深方向に略くの字状に湾曲している、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項9】
請求項7に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の水力発電/蓄電システムにおいて、
上記複数の補助回転体は、上記取付体に上下動自在に取り付けられている、
ことを特徴とする水力発電/蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力による発電と発電した電気エネルギを蓄電することができる水力発電/蓄電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に示すように、水力を効率的に電気エネルギに変換して、天候や日射量に左右されることなく、高発電効率と大きな発電量を安定的に得ることができる水力発電技術が存在する。
これらの水力発電技術は、各種装置が組み付けられた支持体を水底に固定することで、水深の浅い水上で使用することができる。したがって、その建設のコストや時間はさほど費やさない。
しかし、これらの水力発電技術では、水深の深い洋上で使用する場合に、水力発電システムを建設するために多大なコストと時間がかかる。さらに、そのメインテナンス作業も面倒且つ煩雑である。
そこで、特許文献3に記載のような水力発電技術が発明された。
この水力発電技術は、水力を効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでない。この技術は、水深が深い洋上で使用する場合においても、水力発電システムの建設コストの低減とメインテナンス作業の負担軽減とを図ることができるという、優れた技術である。
この技術は、水力駆動装置と発電装置とを浮体装置上に組み付けた技術である。したがって、これらの装置を、目的の洋上まで運んで、降ろし、浮体装置の浮体具を係留具で固定することで、水力発電システムを、水深が深い洋上に設置することができる。
このため、水深が深い洋上に建設するためのコストや時間を低減することができるだけでなく、メインテナンスも容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6731561号公報
【文献】特許第6894556号公報
【文献】特許第7174503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の技術では、次のような問題がある。
上記特許文献3の技術では、水力発電した電気を陸上の蓄電所に送るには、当該水力発電システムと蓄電所とを海底ケーブルで繋ぐ必要がある。
したがって、複数の水力発電システムを遠く異なる洋上にそれぞれ設置する場合には、海底ケーブルをそれぞれのシステムと陸上の蓄電所との間に敷設しなければならず、コスト面で問題が生じる。また、海底ケーブル敷設による環境への影響も考慮しなければならない。
このため、海底に敷設する海底ケーブル数は、必要最小限の本数に限定され、この水力発電システムの設置箇所も、海底ケーブルの近くに限定されてしまう。
つまり、上記従来の技術では、洋上ならばどのような場所でも水力発電することができるというわけではなく、この技術によって水力発電することができる場所は、著しく限定されている。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、遠洋及び近洋、いかなる場所でも水力発電が可能で且つその蓄電も可能な水力発電/蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明は、水流圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する水力駆動装置と、出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、これら水力駆動装置及び発電装置が取り付けられた取付体と、発電装置で発電された電気を蓄電するための蓄電装置を有する蓄電船とを備えた水力発電/蓄電システムであって、水力駆動装置は、取付体の一方端部側に回転自在に取り付けられた第1の回転体と、その回転中心軸が第1の回転体の回転中心軸と平行になるように取付体の他方端部側に回転自在に取り付けられた第2の回転体と、第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、各抵抗部材が水流圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、その回転中心軸が第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ取付体に取り付けられた複数の補助回転体と、を備え、発電装置は、水力駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、水力駆動装置は、第1の回転体及び第2の回転体の少なくとも回転中心軸が水面の上方に位置し、且つ無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が当該水中内に完没するように、取付体に取り付けられている構成とした。
かかる構成により、蓄電船を動かして、水力駆動装置と発電装置を、取付体と一体に所望の洋上位置まで移動させることができる。
そして、蓄電船を当該洋上に停留させて、水力駆動装置と発電装置とを、取付体と共に当該洋上位置に固定することができる。
これにより、水中に完没した複数の第1の抵抗部材が、水流圧を受け、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、水流方向に回転する。そして、その回転力が水力駆動装置の出力軸に出力され、発電装置に伝達されて、発電動作が行われる。
発電装置で発電された電気は、蓄電船の蓄電装置に充電することができる。
水流が弱まった場合等、水流に変化が生じた場合には、蓄電船を再駆動させて、所望の水流が生じている洋上まで移動する。そして、蓄電船を当該洋上に再度停留させることで、水力駆動装置と発電装置によって、当該洋上での発電/蓄電作業を行うことができる。
そして、蓄電装置への充電が完了したときは、蓄電船を駆動させて、充電した電気を陸上の所望蓄電所まで輸送することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、取付体が、蓄電船の船体に設けられている構成とした。
【0008】
第3の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、取付体が、蓄電船とは別体の浮体具に設けられている構成とした。
【0009】
第4の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、第1の抵抗部材が、可撓性素材で形成された受圧面部と、当該受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成されている構成とした。
かかる構成により、水力駆動装置の第1の抵抗部材は、流れに対向する受圧面部で水流圧を受けて、第1の回転体及び第2の回転体を回転させる。そして、水流の方向が変わった場合には、可撓性素材で形成された受圧面部が流れ方向に撓む。この結果、受圧面部が流れに対向するように変化し、水流圧を受けて、第1の回転体及び第2の回転体を回転させる。
すなわち、この発明によれば、水流の向きの変化に応じて、第1の抵抗部材の受圧面部の向きが変わる。したがって、水流の向きが変わった場合に、水力駆動装置の向き水流の向きに合わせる必要がない。つまり、水力駆動装置や発電装置の向きを変えることなく、発電動作を継続させることができる。
【0010】
第5の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、第1の抵抗部材が、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部と、これら1対の受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成されている構成とした。
かかる構成により、水流方向が変わっても、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部のうち、流れの方向に対向する受圧面部が水流を捉えるので、水力駆動装置や発電装置の向きを変えることなく、発電動作を継続させることができる。
【0011】
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、水力駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、水力駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた構成とする。
かかる構成により、水流の方向に変化がない場合には、水力駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、例えば同一方向に設定することができる。そして、水流の方向が逆転した場合には、水力駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、逆方向に設定することができる。
【0012】
第7の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされて、無端ベルトの下側の無端ベルト部分が、水深方向に略くの字状に湾曲している構成とした。
かかる構成により、水中に完没した複数の第1の抵抗部材が、水流圧を受けると、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、水流圧方向に回転し、その回転力が水力駆動装置の出力軸に出力される。このとき、無端ベルトの下側の無端ベルト部分が、水中の深さ方向に略くの字状に湾曲しているので、水中に完没した複数の第1の抵抗部材が、水流圧を効率的に受けることができる。そして、その回転力が、発電装置に伝達され、発電された電気が、蓄電装置に蓄電される。
【0013】
第8の発明は、第7の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されている構成とした。
かかる構成により、複数の第1の抵抗部材が、水流圧を効率的に確保することができ、この結果、極めて大きな電力を発電することができる。
すなわち、上記下方に位置する補助回転体よりも上流側に位置する複数の第1の抵抗部材が、水流圧を強く受ける。そして、上記下方に位置する補助回転体よりも下流側に位置する複数の第1の抵抗部材が受ける水流圧は、弱い。
しかし、この発明では、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置している。このため、ほぼ全ての第1の抵抗部材が強い水流圧を効率的に受けることができ、その結果、極めて大きな電力を発電することができる。
【0014】
第9の発明は、第7の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されている構成とした。
かかる構成により、上記下方に位置させた補助回転体よりも上流に位置する複数の第1の抵抗部材が、水流圧を受けて、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとを回転させることになる。したがって、例えば、水が左から右に流れている場合、下方に位置している補助回転体よりも左側に位置する複数の第1の抵抗部材がその水流圧を受け、右側に位置する複数の第1の抵抗部材は水流圧をほとんど受けない。しかし、水流が、右から左に変化した場合、下方に位置している補助回転体よりも右側に位置する複数の第1の抵抗部材がその水流圧を受け、左側に位置する複数の第1の抵抗部材は水流圧をほとんど受けない。このとき、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されているので、この補助回転体よりも左側に位置する第1の抵抗部材の数と補助回転体よりも右側に位置する第1の抵抗部材とは、ほぼ同数である。したがって、例えば、第4の発明又は第5の発明の第1の抵抗部材を適用することで、左方向からの水流圧によって得られる回転エネルギと右方向からの水流圧によって得られる回転エネルギとが、ほとんど同じになり、水流の方向が変化しても、常にほぼ同じ大きさの電力を得ることができる。
【0015】
第10の発明は、第1の発明に係る水力発電/蓄電システムにおいて、複数の補助回転体は、取付体に上下動自在に取り付けられている構成とした。
かかる構成により、特定の補助回転体を上下動することにより、第1の抵抗部材の水深や無端ベルトの弛み等を修正することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳しく説明したように、この発明によれば、所望の洋上で発電と蓄電とを行うことができるので、水力発電した電気を海底ケーブル等を用いて陸上の蓄電所に送る必要はない。このため、海底ケーブル敷設による環境悪化を考慮する必要もない。
さらに、蓄電船によって、遠く異なる洋上に自由に移動することができるので、蓄電船で移動可能な場所ならば、水力発電及び蓄電作業をどのような場所でも行うことができる。例えば、季節で変化する潮流の流れの変化に対応して、蓄電船を最適の場所に移動させ、発電及び蓄電作業を行うことができる。
発電は、通常、蓄電船を停留させた状態で行うが、所望容量の蓄電が緊急に必要な場合には、蓄電船を運行させながら、水力駆動装置及び発電装置によって発電することができる。これにより、蓄電船の燃料消費は高くなるものの、所望容量の電気を蓄電装置に迅速に蓄電することができる。勿論、蓄電船が燃料燃焼方式のエンジンでなく、電気駆動方式のモータの場合には、蓄電された電気を蓄電船の運行に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の第1実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す斜視図である。
図2】水力発電/蓄電システムを示す側面図である。
図3】水力発電/蓄電システムを示す正面図である。
図4】水力駆動装置と発電装置と取付体とを示す分解斜視図である。
図5】水力駆動装置と発電装置とが取付体に取り付けられた状態を示す側面図である。
図6】水力駆動装置と発電装置とが取付体に取り付けられた状態を示す平面図である。
図7】第1の抵抗部材を示す斜視図である。
図8図7の矢視B-B断面図である。
図9】補助回転体を1対の油圧ジャッキによって支持している状態を示す斜視図である。
図10】油圧ジャッキの取付状態を説明するための部分断面図である。
図11】無端ベルトの弛み修正状態を示す側面図である。
図12】第1の回転体又は第2の回転体を用いた弛み修正構造の一例を示す部分側面図である。
図13】第1の回転体又は第2の回転体を用いた弛み修正構造の他の例を示す部分側面図である。
図14】取付体の変形例を示す斜視図である。
図15】この発明の第2実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す断面図である。
図16】第2実施例に適用される回転方向変換器を説明するための平面図である。
図17】この発明の第3実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部である第1の抵抗部材を示す斜視図である。
図18】第3実施例の動作を説明するための側面図である。
図19】この発明の第4実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す側面図である。
図20】この発明の第5実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す側面図である。
図21】この発明の第6実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す正面図である。
図22】この発明の第7実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す正面図である。
図23】浮体具の斜視図である。
図24】この発明の第8実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す前面図であり、図24の(a)は、取付体を2基備えたシステムを示し、図24の(b)は、補助具を備えたシステムを示し、図24の(c)は、蓄電船を2艘備えたシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す斜視図であり、図2は、水力発電/蓄電システムを示す側面図であり、図3は、水力発電/蓄電システムを示す正面図である。
図1に示すように、この実施例の水力発電/蓄電システム1は、水力駆動装置2と発電装置3と取付体4と蓄電船5とを備えている。
【0020】
水力駆動装置2と発電装置3とは、取付体4に取り付けられており、図2及び図3に示すように、取付体4は、ブラケット10によって、蓄電船5の横側部に固定されている。
【0021】
水力駆動装置2は、図1に示すように、水流圧に対応した回転力を出力するための装置であり、第2の回転体20Bのシャフト部20bを出力軸としている。
この水力駆動装置2は、第1の回転体20Aと第2の回転体20Bと無端ベルト21と複数の第1の抵抗部材22と複数の補助回転体20C~20Gとを有しており、これらの部材は取付体4に組み付けられている。
【0022】
図4は、水力駆動装置2と発電装置3と取付体4とを示す分解斜視図であり、図5は、水力駆動装置2と発電装置3とが取付体4に取り付けられた状態を示す側面図であり、図6は、水力駆動装置2と発電装置3とが取付体4に取り付けられた状態を示す平面図である。
図4に示すように、取付体4は、支持板40と基台41とで構成されている。
支持板40は、長方形の格子板であり、1対の軸受部42と1対の軸受部43とが、支持板40の前側(図の左側)及び後側(図の右側)にそれぞれ立設されている。そして、5枚の長板状の橋部44が、支持板40のほぼ中央部に列設されている。
一方、基台41は、上フレーム45と下フレーム46と柱フレーム47とで形成された直方形のフレーム体であり、平面視において、支持板40と同じ大きさの長方形をなす。
図5及び図6に示すように、支持板40は、この基台41の上フレーム45に載置され、図示しないボルトとナットにより、基台41上に固定されている。これにより、支持板40の強度が、基台41によって補強されている。
【0023】
第1の回転体20Aは、この取付体4の前方端部側に回転自在に取り付けられ、第2の回転体20Bは、その回転中心軸が第1の回転体20Aの回転中心軸と平行になるように、取付体4の後方端部側に回転自在に取り付けられている。
具体的には、図4に示すように、第1の回転体20Aは、回転中心軸としてのシャフト部20aを有し、このシャフト部20aの両端部が、支持板40の1対の軸受部42に回転自在に取り付けられている。また、第2の回転体20Bは、第1の回転体20Aと同形であり、第1の回転体20Aと同様に回転中心軸としてのシャフト部20bを有している。そして、このシャフト部20bの両端部が、1対の軸受部43に回転自在に取り付けられている。
【0024】
無端ベルト21は、このような第1の回転体20Aと第2の回転体20Bとに巻き付けられている。
無端ベルト21は、幅広の帯状体であり、多層構造のゴム部材、合成樹脂、金属製チェーンベルト等で形成することができる。この無端ベルト21の表面には、複数の第1の抵抗部材22が、凹状の受圧面部22A(図7参照)を無端ベルト21の長さ方向に向けた状態で、等間隔で立設されている。
【0025】
図7は、第1の抵抗部材を示す斜視図であり、図8は、図7の矢視B-B断面図である。
これらの図に示すように、各第1の抵抗部材22は、受圧面部22Aと、この受圧面部22Aを保持する支持部材22Bとによって構成されている。
受圧面部22Aは、水流圧を受けるための部分であり、断面弧状に凹んでいる。受圧面部22Aの長さは、無端ベルト21の幅に対応して設定されている。受圧面部22Aの材質は任意であるが、この実施例では、凹状に湾曲された金属板を適用した。
支持部材22Bは、枠部22b1と、この枠部22b1の両端に形成された固定部22b2,22b2とを有している。枠部22b1は、無端ベルト21の幅方向に沿って配置され、固定部22b2は、無端ベルト21にビス等により固定されている。
そして、受圧面部22Aが枠部22b1内に嵌められ、その上端22a1と下端22a2とが、枠部22b1に固着されている。
【0026】
図4図6に示すように、複数の補助回転体20C~20Gは、後述する中心軸としてのシャフト部20c~20gを平行にした状態で、第1及び第2の回転体20A,20Bと無端ベルト21の間に配設されている。そして、各補助回転体20C(20D~20G)は、取付体4に取り付けられた油圧ジャッキ6によって上下動自在に支持されている。
【0027】
図9は、補助回転体20C(20D~20G)を1対の油圧ジャッキ6によって支持している状態を示す斜視図であり、図10は、油圧ジャッキ6の取付状態を説明するための部分断面図である。
図9に示すように、油圧ジャッキ6は、一般的な周知のジャッキであり、シリンダ61とラム62とで構成されている。シリンダ61内の油圧を、図示しないレバーを操作して調整することにより、ラム62を上下させることができる。
【0028】
この実施例では、1対の油圧ジャッキ6が、対向配置され、各補助回転体20C(20D~20G)のシャフト部20c(20d~20g)の両端が、1対の油圧ジャッキ6のラム62の先端部に回動自在に取り付けられている。
図10に示すように、補助回転体20C(20E,20G)を支持する1対の油圧ジャッキ6は、取付体4を構成する支持板40の橋部44に、下向きに取り付けられ、補助回転体20D(20F)を支持する1対の油圧ジャッキ6は、橋部44に、上向きに取り付けられている。
【0029】
具体的には、補助回転体20C(20E,20G)を支持する1対の油圧ジャッキ6においては、孔44aが、支持板40の橋部44に開けられ、ラム62が、孔44aに下向きに挿通されると共に、シリンダ61の肩部が、橋部44の上面に固定されている。そして、シャフト部20c(20e,20g)が、橋部44の下側に延出しているラム62の先端部に回動自在に取り付けられている。
一方、補助回転体20D(20F)を支持する1対の油圧ジャッキ6においては、ラム62が上向きにされた状態で、シリンダ61の尻部が、橋部44に固定されている。そして、シャフト部20d(20f)が、上向きのラム62の先端部に回動自在に取り付けられている。
これにより、油圧ジャッキ6のラム62を上下動させることで、無端ベルト21(図5参照)を、各補助回転体20C(20D~20G)によって、部分的に押し上げ又は押し下げることができるようになっている。
【0030】
この実施例では、図5に示すように、全ての油圧ジャッキ6のラム62がシリンダ61内に引き込まれた状態にされ、無端ベルト21の上側ベルト部21Aと下側ベルト部21Bが、補助回転体20C~20Gによって、水平に保持されている。
【0031】
図11は、無端ベルト21の弛み修正状態を示す側面図である。
図5に示すような状態で、第1及び第2の回転体20A,20Bを長時間稼働させていると、無端ベルト21に弛みが発生する。そのような場合には、図11に示すように、補助回転体20D,20Fの双方又は一方を、油圧ジャッキ6によって上昇させることで、無端ベルト21の弛みを修正することができる。
【0032】
図12は、第1の回転体20A又は第2の回転体20Bを用いた弛み修正構造の一例を示す部分側面図であり、図13は、第1の回転体20A又は第2の回転体20Bを用いた弛み修正構造の他の例を示す部分側面図である。
無端ベルト21の弛みを修正する技術は、図11に示した技術だけでなく、第1の回転体20A又は第2の回転体20Bに工夫を加えた技術によっても可能である。
例えば、図12の(a)に示すように、軸受部42(又は43)を取付体4の支持板40に回動可能に取り付ける。そして、図12の(b)に示すように、軸受部42(又は43)を回転させて、第1の回転体20A(又は第2の回転体20B)を取付体4の前方側(又は後方側)に動かすことにより、無端ベルト21の弛みを解消することができる。
また、図13の(a)に示すように、軸受部42(又は43)を取付体4の支持板40にスライド可能に取り付ける。そして、図13の(b)に示すように、軸受部42(又は43)をガイド溝40aに沿ってスライドさせて、第1の回転体20A(又は第2の回転体20B)を取付体4の前方側(又は後方側)にスライドさせることにより、無端ベルト21の弛みを解消することができる。
【0033】
図1に示した発電装置3は、水力駆動装置2の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う装置である。
具体的には、図4及び図6に示すように、発電装置3は、傘歯車31,32でなるギア機構と発電機30とで構成されており、水力駆動装置2の出力軸としてのシャフト部20bの一方端部が、噛み合った傘歯車31,32を介して発電機30の回転軸30aに連結されている。そして、これらギア機構と発電機30とが、取付体4の上面に組み付けられ固定されている。
【0034】
以上のように、水力駆動装置2と発電装置3とが取り付けられた取付体4は、図1及び図3に示したブラケット10により、蓄電船5の横側部に固定されている。
具体的には、図3の囲み破線A内に示すように、ブラケット10は水平な固定部11とU字状のフック部12とを有している。固定部11は、ボルト13とナット14とによって蓄電船5の甲板に固定されている。そして、フック部12は、取付体4の上フレーム45(基台41)に係合されている。
【0035】
図14は、取付体4の変形例を示す斜視図である。
図4に示したように、取付体4は、支持板40と基台41とで構成され、基台41は、上フレーム45と下フレーム46と柱フレーム47とで形成された直方形のフレーム体である。
したがって、基台41の側部が開いており、横波が基台41の開口から浸入して、水力駆動装置2が、この横波を強く受ける場合がある。このような場合には、図14に示すように、基台41の柱フレーム47を平板状の防波フレーム47’に変えた取付体4を用いることで、横波を防波フレーム47’によってブロックすることができる。
なお、防波フレーム47’は、基台41の両側面でなく、一方の側面のみに設けても良い。
【0036】
蓄電船5は、図1に示すように、蓄電装置50を搭載しており、発電装置3の発電機30で発電された電気を、この蓄電装置50に蓄電することができるようになっている。
具体的には、蓄電装置50は、交流/直流変換器51と蓄電池52とを有しており、発電装置3の発電機30の出力線30bは、蓄電装置50の交流/直流変換器51に接続することができるようになっている。そして、この交流/直流変換器51の出力部は、蓄電池52の入力部に電気的に接続されている。
これにより、発電機30によって生成された交流電気が交流/直流変換器51によって直流に変換され、しかる後、蓄電池52に蓄電される。
なお、蓄電船5の形状は任意である。但し、取付体4を船体の横側部に取り付けるため、バランスに対する安定性が求められる。したがって、蓄電船5自身は、曳舟・タグボートやクレーン船のように船高が低くて甲板が広い構造のものが好ましいといえる。
【0037】
次に、この実施例の水力発電/蓄電システム1の作用及び効果についてついて説明する。
図1に示すように、水力駆動装置2と発電装置3とが、取付体4に組み付けられ、取付体4がブラケット10を通じて蓄電船5の横側部に固定されているので、蓄電船5を駆動させることにより、水力駆動装置2と発電装置3を遠くの洋上位置まで移動させることができる。
所望の洋上に到達したら、図2に示すように、蓄電船5を当該洋上に停留させる。 この際、取付体4の前方側(図2の左方側)を水流に対向するように、蓄電船5の向きを決定する。
また、取付体4を海水W中に所定深さだけ沈めることによって、水力駆動装置2における無端ベルト21の下側ベルト部21Bに位置する複数の第1の抵抗部材22を海水W中に完没させることができる。
ところで、第1の回転体20Aのシャフト部20aと第2の回転体20Bのシャフト部20bが、海水W中に位置すると、第1及び第2の回転体20A,20Bが海水Wの波を被り、その円滑な回転が阻害される。したがって、第1の回転体20Aのシャフト部20aと第2の回転体20Bのシャフト部20bが、海面Sの上方に位置するように、取付体4の沈み深さを設定する。
このような取付体4の沈み深さの設定は、蓄電船5が出航する前に予め行っておくことができる。勿論、かかる設定を出航前には行わず、所望の洋上に到達した後、行っても良い。
【0038】
このような状態で、蓄電船5を停留させておくと、海水Wが取付体4の前方側から後方側に向かって流れるので、水流圧が、下側ベルト部21Bにある複数の第1の抵抗部材22に加わる。これにより、無端ベルト21が巻き付けられた第1の回転体20Aと第2の回転体20Bとが、水流方向に回転する。そして、その回転力は、水力駆動装置2の出力軸であるシャフト部20bから出力し、傘歯車31,32でなるギア機構(図4及び図6参照)を介して発電装置3の発電機30に伝わる。
この結果、発電機30が発電動作し、発電された交流電流が、図1に示す出力線30bを通じて蓄電船5の蓄電装置50に伝わる。そして、この交流電流が、交流/直流変換器51によって、直流電流に変換された後、蓄電池52に蓄電される。
【0039】
蓄電装置50の蓄電池52への充電が完了したときは、蓄電船5を駆動させて、充電した電気を陸上の所望蓄電所まで輸送することができる。
つまり、この実施例の水力発電/蓄電システム1によれば、水力発電した電気を海底ケーブル等を用いて陸上の蓄電所に送る必要はないので、海底ケーブル敷設による環境の悪化を回避することができる。
【0040】
ところで、上記のような発電及び蓄電作業中に、海水Wの水流が弱まる等、水流に変化が生じる場合がある。このような場合には、蓄電船5を再駆動させて、所望の水流が生じている洋上まで移動する。そして、蓄電船5を当該洋上に再度停留させることで、水力駆動装置2と発電装置3と蓄電装置50とによって、当該洋上での発電/蓄電作業を行うことができる。
つまり、この実施例の水力発電/蓄電システム1によれば、蓄電船5で移動可能な場所ならば、水力発電及び蓄電作業をどのような場所でも行うことができる。したがって、季節で変化する潮流の流れの変化に対応して、蓄電船5を最適の場所に移動させ、発電及び蓄電作業を行うことができる。
【0041】
上記したように、水力発電/蓄電システム1による発電及び蓄電作業は、蓄電船5を所望の洋上で停留させた状態で行うのが通常である。
しかし、所定容量の蓄電が緊急に必要な事態が生じる場合がある。このような場合には、蓄電船5を運航させながら、水力駆動装置2と発電装置3と蓄電装置50によって発電及び蓄電をすることができる。これにより、蓄電船5の燃料消費は高くなるものの、所定容量の電気を蓄電装置50に迅速に蓄電することができる。また、蓄電船5が燃料燃焼方式のエンジンでなく、電気駆動方式のモータの場合には、蓄電された電気を蓄電船5の運航に利用することができる。
【0042】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図15は、この発明の第2実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す断面図であり、図16は、この実施例に適用される回転方向変換器を説明するための平面図である。
この実施例では、可撓性構造の第1の抵抗部材22と回転方向変換器3Aとを備えている点が、上記第1実施例と異なる。
【0043】
図15に示すように、この実施例に適用される第1の抵抗部材22は、可撓性素材で形成された受圧面部22Cと、受圧面部22Cを支持する支持部材22Bとで構成されている。
受圧面部22Cは、可撓性素材で形成されていれば良く、布製、合成繊維製、合成樹脂性等、その種類は任意である。この実施例では、受圧面部22Cとして、布製のものを適用した。
かかる構成により、水流圧が、一点鎖線で示す矢印方向から実線で示す受圧面部22Cに加わると、受圧面部22Cは、水流圧により一点鎖線で示すように撓んで、ヨットの帆のように、水流圧を受ける。また、水流圧の方向が、二点鎖線で示す方向に変化すると、一点鎖線状態の受圧面部22Cが、二点鎖線で示すように、水流圧方向に撓み、ヨットの帆のように、水流圧を受ける。
【0044】
図16に示すように、回転方向変換器3Aは、水力駆動装置2と発電装置3との間に設けられている。
具体的には、回転方向変換器3Aは、ギア機構の傘歯車32と発電機30の回転軸30aとの間に設けられている。この回転方向変換器3Aは、水力駆動装置2の出力軸20bの回転方向と発電機30の回転軸30aの回転方向とを同一方向又は逆方向に手動で変換することができる。このような回転方向変換器3Aとして、全ての周知の変換器を適用することができるので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0045】
この実施例に適用される第1の抵抗部材22が、上記構造をとっているので、図2の実線矢印で示すように、水流方向が右方向の場合には、図15に示したように、第1の抵抗部材22の受圧面部22Cが、水流圧を受けて、右方に撓み、第1の回転体20Aと第2の回転体20Bと無端ベルト21とが、下側ベルト部21Bの第1の抵抗部材22に加わる水流圧によって反時計回りに回転する。
そして、図2の二点差鎖線矢印で示すように、水流方向が左方向に変わった場合には、第1の抵抗部材22の受圧面部22Cが、水流圧を受けて、左方に撓む。この結果、回転方向変換器3Aが作動すると共に、第1の回転体20Aと第2の回転体20Bと無端ベルト21とが時計回りに回転する。
つまり、この実施例によれば、流れが変化するような場所で使用する場合において、水力駆動装置2及び発電装置3の向きを水流方向の変化に合わせて変えることなく、発電及び蓄電作業を継続することができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0046】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図17は、この発明の第3実施例の要部である第1の抵抗部材を示す斜視図であり、図18は、実施例の動作を説明するための側面図である。
この実施例の水力発電/蓄電システムでは、水力駆動装置2における第1の抵抗部材の構造が上記第1及び第2実施例と異なる。
【0047】
すなわち、図17に示すように、この実施例の第1の抵抗部材22’は、上記第1実施例で適用された第1の抵抗部材22と同構造の抵抗部材23,24を背中合わせで接合した構造になっている。具体的には、図左向きの抵抗部材23の受圧面部22Aと図右向きの抵抗部材24の受圧面部22Aとが、中間部材25を介して背中合わせに接合されている。
【0048】
第1の抵抗部材22’が、このような構造になっているので、図18に示すように、水流方向が右方向の場合には、下側ベルト部21Bの第1の抵抗部材22’において、この第1の抵抗部材22’の左側の抵抗部材24が、実線矢印で示す方向の水流圧を受ける。
そして、水流方向が左方向に変化した場合には、第1の抵抗部材22’の右側の抵抗部材23が、二点鎖線矢印で示す方向の水流圧を受ける。
つまり、流れが変化するような洋上で使用する場合においても、水力駆動装置2及び発電装置3の向きを水流方向の変化に合わせて変えることなく、発電及び蓄電作業を継続させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0049】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図19は、この発明の第4実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す側面図である。
図11に示したように、各補助回転体20C(20D~20G)は、油圧ジャッキ6によって上下動自在に移動させることができるようになっている。したがって、補助回転体20C,20E,20Gのいずれかを下方に移動させることで、無端ベルト21の下側ベルト部21Bを、海水Wの水深方向に略く字状に湾曲させることができる。このように、無端ベルト21の下側ベルト部21Bを、海水Wの水深方向に略く字状に湾曲させることにより、発電量を増加させることができる。
この点に注目して、この実施例では、図19に示すように、水力駆動装置2の補助回転体20C~20Gのうち、最下流に位置する補助回転体20Gを、他の補助回転体20C~20Fよりも下方に位置させた。
具体的には、補助回転体20D,20Fを無端ベルト21の上側ベルト部21Aに接触させると共に、補助回転体20C,20Eを下側ベルト部21Bに接触させた。そして、最下流に位置する補助回転体20Gを、他の補助回転体20C~20Fよりも下側に位置させて固定した。
【0050】
これにより、下側ベルト部21Bにある各第1の抵抗部材22は、前に位置する他の第1の抵抗部材22の背後に隠れることなく、その下方に位置するので、前の第1の抵抗部材22が受ける水流圧と同じ水流圧受け取ることができる。
つまり、下側ベルト部21Bにある全ての第1の抵抗部材22がそれぞれ同じ水流圧を受けることができるので、水流圧を効率的に確保することができ、極めて大きな電力を発電することができる。
その他の構成,作用及び効果は上記第1実施例ないし第3実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0051】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図20は、この発明の第5実施例に係る水力発電/蓄電システムの要部を示す側面図である。
図20に示すように、この実施例では、複数の補助回転体20C~20Gのうち略中央に位置する補助回転体20Eを、他の補助回転体20C,20D,20F,20Gよりも下方に位置させた。
【0052】
具体的には、無端ベルト21の上側ベルト部21Aが、補助回転体20D,20Fによって水平に支持されている。そして、下側ベルト部21Bが、中央に位置する最下位の補助回転体20Eによってくの字状に湾曲され、補助回転体20C,20Gが、下側ベルト部21Bの内面に当接されている。
なお、この実施例では、理解を容易にするため、奇数個の補助回転体20C~20Gを、複数の補助回転体として適用した例を示すが、補助回転体の数は、奇数に限定されない。偶数の補助回転体を適用して、そのほぼ中央の補助回転体を最下位に位置決めした構造のものも、この発明の水力駆動装置2として適用することができる。
【0053】
また、この実施例では、第1の抵抗部材として、可撓性の受圧面部22Cを有した第2実施例の第1の抵抗部材22(図15参照)を適用すると共に、回転方向変換器3A(図16参照)を、水力駆動装置2と発電装置3との間に設けた。
但し、第1の抵抗部材として、受圧面部が背中合わせの第3実施例の第1の抵抗部材22’(図18参照)を適用することもできる。
【0054】
この実施例の水力駆動装置2が、かかる構成をとることにより、図20の実線矢印で示すように、水流方向が右方向の場合には、補助回転体20Eよりも左側に位置する第1の抵抗部材22の受圧面部22Cが、水流圧を受けて、右方に撓み、第1の回転体20Aと第2の回転体20Bと無端ベルト21とが、水流圧によって反時計回りに回転する。
そして、二点鎖線矢印で示すように、水流方向が左方向に変わった場合には、補助回転体20Eよりも右側に位置する第1の抵抗部材22の受圧面部22Cが、水流圧を受けて、左方に撓む。この結果、回転方向変換器3Aが作動すると共に、第1の回転体20Aと第2の回転体20Bと無端ベルト21とが時計回りに回転する。
したがって、この実施例によれば、流れが変化するような場所でも、第2実施例や第3実施例の流体発電システム1のように、装置を動かすことなく、発電及び蓄電作業を継続することができる。
【0055】
ところで、第2実施例(又は第3実施例)においては、無端ベルト21の下側ベルト部21Bが水平になっているため、下側ベルト部21Bにある複数の第1の抵抗部材22(22’)が横一列に並んで、水流圧を受けることになる。このため、水流圧を100%受けることができるのは、最初の第1の抵抗部材22(22’)だけであり、その背後に位置する多数の第1の抵抗部材22(22’)が受けることができる水流圧は、お互いの干渉によって、非常に少なくなる。
これに対して、この実施例では、水流圧を受けることができる第1の抵抗部材22(22’)は、補助回転体20Eの片側に位置する第1の抵抗部材22(22’)であり、その数は、下側ベルト部21Bにある第1の抵抗部材22(22’)の数の半数である。しかし、これら第1の抵抗部材22(22’)は、横一列でなく、互いに干渉しないように、その位置が互いに水深方向にずれているので、各第1の抵抗部材22(22’)は100%の水流圧を受けることができる。
したがって、この実施例では、水流圧を受ける第1の抵抗部材22の数が第2実施例(第3実施例)における第1の抵抗部材22(22’)よりも少ないものの、その発電能力は第2実施例(第3実施例)における発電能力よりも大きいと解される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例ないし第4実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0056】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図21は、この発明の第6実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す正面図である。
図21に示すように、この実施例の流体発電システム1では、水力駆動装置2と発電装置3とが取り付けられた取付体4が、ブラケット10を介して、蓄電船5とは別体の浮体具としての船5’に取り付けられている。
かかる構成により、必要なときに、蓄電船5だけを、陸上の蓄電所等に帰航させることができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第5実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0057】
(実施例7)
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図22は、この発明の第7実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す正面図であり、図23は、浮体具の斜視図である。
図22に示すように、この実施例の流体発電システム1では、水力駆動装置2と発電装置3とが取り付けられた取付体4が、蓄電船5とは別体の浮体具7に取り付けられている。
【0058】
具体的には、図23に示すように、浮体具7は、矩形状に組み立てられた1対のタンク70とアンカ71とで構成されている。水力駆動装置2及び発電装置3が取り付けられた取付体4は、図22に示すように、この浮体具7の取付口C内に嵌め込まれ、タンク70内の空気によって洋上に浮かされている。
【0059】
かかる構成により、浮体具7に取り付けられた取付体4を、蓄電船5によって、所望の洋上位置まで曳航し、アンカ71を用いてタンク70を係留させることで、水力駆動装置2及び発電装置3を有する取付体4を洋上に固定することができる。
海面Sに対する沈み深さは、蓋70aを開けて、海水Wをタンク70内に注入又はタンク70内の海水Wを排出することにより、設定することができる。
この実施例においても、上記第5実施例と同様に、蓄電船5だけを、陸上の蓄電所等に帰航させることができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第5実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0060】
(実施例8)
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図24は、この発明の第8実施例に係る水力発電/蓄電システムを示す前面図であり、図24の(a)は、取付体4を2基備えたシステムを示し、図24の(b)は、補助具を備えたシステムを示し、図24の(c)は、蓄電船5を2艘備えたシステムを示す。
【0061】
上記第1ないし第6実施例では、水力駆動装置2及び発電装置3を有する取付体4を、蓄電船5の横側部に取り付けた構成になっているので、海面Sの状況によっては、取付体4の安定した姿勢が崩されるおそれがある。
そこで、この実施例では、取付体4の安定した姿勢を確保することができる水力発電/蓄電システム1の構成を例示する。
【0062】
まず、図24の(a)に示すように、同じ構造の2基の取付体4を、ブラケット10を介して蓄電船5の両側に取り付けることで、水力駆動装置2及び発電装置3を有する取付体4の安定性を確保すると共に、2倍の発電量を得ることができる。
【0063】
また、図24の(b)に示すように、フロート8を、補助具として、取付体4の横側部に取り付けることで、取付体4の安定性を確保することができる。
【0064】
さらに、図24の(c)に示すように、取付体4の両側を、ブラケット10を介して、2艘の蓄電船5にそれぞれ取り付けることで、取付体4の安定性を確保することができると共に、取付体4に取り付けられた水力駆動装置2及び発電装置3を横波から保護することができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第7実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0065】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、ブラケット10を用いて、水力駆動装置2及び発電装置3を有する取付体4を蓄電船5に取り付けた例を示したが、取付体4を蓄電船5に設ける構造は、これに限定されるものではなく、公知のあらゆる接合構造を含む。すなわち、ブラケット10を用いずに、溶接やボルトナット等を用いて、取付体4自体を蓄電船5に直接接合する様にしてもよい。この場合には、取付片部を取付体4に形成しておくことが好ましい。
また、上記実施例では、ギア機構を介して、水力駆動装置2の出力軸20bと発電機30の回転軸30aとを連結した例を示したが、水力駆動装置2の出力軸の回転力を発電機30の回転軸に伝える構造は、これに限定されるものではない。ギヤ機構以外の公知のあらゆる機械的機構を用いて、水力駆動装置2の出力軸と発電機30の回転軸とを連結するができる。また、特別な機構を介さずに、水力駆動装置2の出力軸と発電機30の回転軸とを直接連結してもよい。
さらに、上記実施例では、補助回転体20C~20Gを上下動させる昇降装置として、油圧ジャッキ6を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、補助回転体20C~20Gを上下動させることができるあらゆる公知の昇降装置や昇降機構を用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…水力発電/蓄電システム、 2…水力駆動置、 3…発電装置、 3A…回転方向変換器、 4…取付体、 5…蓄電船、 5’…船、 6…油圧ジャッキ、 7…浮体具、 8…フロート、 10…ブラケット、 11,22b2…固定部、 12…フック部、 13…ボルト、 14…ナット、 20A…第1の回転体、 20B…第2の回転体、 20C~20G…補助回転体、 20a~20g…シャフト部、 21…無端ベルト、 21A…上側ベルト部、 21B…下側ベルト部、 22,22’…第1の抵抗部材、 22A,22C…受圧面部、 22a1…上端、 22a2…下端、 22B…支持部材、 22b1…枠部、 23,24…抵抗部材、 25…中間部材、 30…発電機、 30a…回転軸、 30b…出力線、 31,32…傘歯車、 40…支持板、 40a…ガイド溝、 41…基台、 42,43…軸受部、 44…橋部、 44a…孔、 45…上フレーム、 46…下フレーム、 47…柱フレーム、 47’…防波フレーム、 50…蓄電装置、 51…交流/直流変換器、 52…蓄電池、 61…シリンダ、 62…ラム、 70…タンク、 71…アンカ、 70a…蓋、 W…海水、 S…海面。
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