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  • 特許-支持壁の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】支持壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E21D11/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018226225
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090776
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-08-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 英明
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆正
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敦
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】加藤 範久
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115315(JP,A)
【文献】特開平8-21196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの床版を支持するための支持壁の施工方法であって、
前記支持壁は、
インバートの上面に立てられるプレキャストコンクリート製の下壁体と、
前記下壁体に積み重ねられるプレキャストコンクリート製の上壁体と、を備えている板状の壁体であり、
前記上壁体の上面には、前記床版に連結される連結部が設けられ、
前記下壁体と前記上壁体とは、前記インバートの上面から前記床版までの高さの間において連結されるように構成されており、
前記下壁体および前記上壁体を、前記インバートの上面に対して垂直な状態で台車に積載して、既設の前記床版の下方を通じて坑口側から切羽側に搬送する段階と、
既設の前記床版よりも切羽側で前記下壁体を前記インバートの上面に立てる段階と、
前記下壁体に前記上壁体を積み重ねる段階と、
前記上壁体の上面に前記床版を設置する段階と、を備えていることを特徴とする支持壁
の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの支持壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの底部に床版を設置し、床版の上面に道路を構築するとともに、床版の下方空間に電気や排水の設備を構築しているものがある(例えば、特許文献1参照)。この構成では、インバートの上面に立てたプレキャストコンクリート製の支持壁によって床版を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-127834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した支持壁を施工する場合には、支持壁を傾けた状態で台車に積載し、坑口側から既設の床版の下方空間を通って切羽側に支持壁を搬送している。その後、油圧装置およびクレーンを用いて支持壁を起こしている。この施工方法では、支持壁の搬送および設置が難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、トンネル内において支持壁を容易に搬送および設置できる支持壁の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、発明は、トンネルの床版を支持するための支持壁の施工方法である。前記支持壁は、インバートの上面に立てられたプレキャストコンクリート製の下壁体と、前記下壁体に積み重ねられたプレキャストコンクリート製の上壁体と、を備えている板状の壁体である。前記上壁体の上面には、前記床版に連結される連結部が設けられている。前記下壁体と前記上壁体とは、前記インバートの上面から前記床版までの高さの間において連結される。
【0007】
記施工方法は、前記下壁体および前記上壁体を、前記インバートの上面に対して垂直な状態で台車に積載して、既設の前記床版の下方を通じて坑口側から切羽側に搬送する段階と、既設の前記床版よりも切羽側で前記下壁体を前記インバートの上面に立てる段階と、を備えている。また、前記施工方法は、前記下壁体に前記上壁体を積み重ねる段階と、前記上壁体の上面に前記床版を設置する段階と、を備えている。
【0008】
第一の発明および第二の発明において、下壁体および上壁体のそれぞれの高さは、インバートの上面から床版までの高さよりも小さくなるため、下壁体および上壁体を傾けることなく、既設の床版の下方空間を通して搬送できる。また、下壁体および上壁体は、支持壁全体に比べて小型化および軽量化されているため、下壁体および上壁体を組み付け易い。
【0009】
前記した支持壁において、複数の前記下壁体を前記トンネルの延長方向に間隔を空けて並べて、隣り合う二つの前記下壁体に跨って前記上壁体を設置した場合には、トンネルの幅員方向に貫通した開口部を有する支持壁を容易に構築できる。
【0010】
前記した支持壁において、前記下壁体の下縁部に側面および下面に開口した窪み部を形成し、前記インバートの上面に連結される連結部材を前記窪み部の内部に設けることで、連結部材を支持壁の側面から突出させないことが好ましい。
【0011】
前記した支持壁において、前記上壁体の下縁部に側面および下面に開口した窪み部を形成し、前記下壁体の上面に連結される連結部材を前記窪み部の内部に設けることで、連結部材を支持壁の側面から突出させないことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の支持壁の施工方法では、支持壁が下壁体と上壁体とに分割されているため、トンネル内において支持壁を容易に搬送および設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る支持壁を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る支持壁を示した側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る支持壁を示した断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る支持壁の施工方法において、トンネルにインバートを設置する段階を示した斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る支持壁の施工方法において、インバートに下壁体を設置する段階を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、図1に示すように、シールド工法によって構築されたトンネルT内に設けられる支持壁50について説明する。
【0015】
本実施形態のトンネルTの周壁部は、プレキャストコンクリート製のセグメントSである。また、トンネルTの底部には、図3に示すように、床版80が所定の高さに設置されている。床版80の上面には道路が構築されるとともに、床版80の下方空間には電気や排水の設備が構築される。
【0016】
トンネルTの底面にはインバートIが設置されている。インバートIは、図4に示すように、複数のインバート部材10をトンネルTの延長方向に連続して並べることで構築されている。
インバート部材10は、プレキャストコンクリート製のブロックである。インバート部材10の上面には、複数の支持台15が突出している。支持台15は、台車用の軌道を支持するための四角錐台形状の台座である。
【0017】
図3に示すように、インバート部材10において、トンネルTの幅員方向の中央に並んだ二つの支持台15,15の間となる領域には、二本のインサートアンカー16,16が埋め込まれている。インサートアンカー16は、後記する下壁体60に組み付けられたアンカーボルト63が螺合される雌ねじ部材である。
【0018】
支持壁50は、床版80を所定の高さに支持するためのプレキャストコンクリート製の壁体である。支持壁50は、インバート部材10の上面に垂直に立てられている。また、支持壁50は、トンネルTの幅員方向の中央に並んだ二つの支持台15,15の間に配置されている。
【0019】
支持壁50は、図1に示すように、インバート部材10の上面に立てられた複数の下壁体60と、各下壁体60に積み重ねられた複数の上壁体70と、を備えている。また、支持壁50には、複数の開口部51がトンネルTの延長方向に所定の間隔で形成されている。開口部51は、支持壁50をトンネルTの幅員方向に貫通している。
【0020】
下壁体60は、図2に示すように、側面視で四角形の壁体である。下壁体60の下面は、インバート部材10の上面に載置されている。一つの下壁体60は隣り合う二つのインバート部材10,10の上面に亘って設置されている。本実施形態では、図5に示すように、複数の下壁体60がトンネルTの延長方向に間隔を空けて並べられている。
【0021】
下壁体60においてトンネルTの幅員方向の下縁部には、図2および図3に示すように、側面および下面に開口した窪み部61が形成されている。下壁体60には、四つの窪み部61が形成されている。各窪み部61は、インバート部材10の各インサートアンカー16に対応する位置に設けられている。
【0022】
窪み部61の内部には、継手ボックスとして鋼製の連結部材62が設けられている。連結部材62には、上下方向に貫通した挿通穴が形成されている。
連結部材62の挿通穴に上方から挿通させたアンカーボルト63を、インバート部材10のインサートアンカー16に螺合させることで、下壁体60がインバート部材10の上面に連結されている。
【0023】
下壁体60の上面には、四本のインサートアンカー64が埋め込まれている。インサートアンカー64は、後記する上壁体70に組み付けられたアンカーボルト73が螺合される雌ねじ部材である。本実施形態では、四本のインサートアンカー64がトンネルTの延長方向および幅員方向に間隔を空けて配置されている。
【0024】
上壁体70は、図2に示すように、側面視で門形の壁体である。上壁体70のトンネルTの延長方向の中央部には、上壁体70の下面から上方に向けて窪んだ凹部75が形成されている。凹部75は、上壁体70の両側面に開口している。凹部75においてトンネルTの延長方向の幅は、隣り合う二つの下壁体60,60の間隔と同じである。
【0025】
上壁体70は、下壁体60の上面に積み重ねられている。本実施形態では、一つの上壁体70が隣り合う二つの下壁体60,60に跨って設置されている。
上壁体70において、凹部75よりも一方側の部位は、一方の下壁体60の上面の半分に載置されている、また、上壁体70において、凹部75よりも他方側の部位は、他方の下壁体60の上面の半分に載置されている。
隣り合う二つの下壁体60,60の間の隙間と、上壁体70の凹部75とが連通することで、開口部51が形成されている。
【0026】
上壁体70においてトンネルTの幅員方向の下縁部には、図2および図3に示すように、側面および下面に開口した窪み部71が形成されている。上壁体70には、四つの窪み部71が形成されている。各窪み部71は、下壁体60の各インサートアンカー64に対応する位置に設けられている。
【0027】
窪み部71の内部には、継手ボックスとして鋼製の連結部材72が設けられている。連結部材72には、上下方向に貫通した挿通穴が形成されている。
連結部材72の挿通穴に上方から挿通させたアンカーボルト73を、下壁体60のインサートアンカー64に螺合させることで、上壁体70が下壁体60の上面に連結されている。
【0028】
上壁体70の上面には、四つの連結部78が形成されている。連結部78は、上壁体70の上面から下方に向けて延びている有底の穴である。本実施形態では、四つの連結部78がトンネルTの延長方向および幅員方向に間隔を空けて配置されている。
【0029】
連結部78は、床版80の下面に連結される部位である。図3に示すように、床版80の側縁部には、上下方向に貫通した連結穴81が形成されている。上壁体70の連結部78と床版80の連結穴81とが連通するように、上壁体70の上面に床版80の側縁部が載置されている。さらに、連結穴81および連結部78には、コンクリートが充填されている。このようにして、上壁体70の上面に床版80が連結されている。
【0030】
次に、前記した支持壁50の施工方法について説明する。
まず、図4に示すように、セグメントSの底面に複数のインバート部材10をトンネルTの延長方向に連続して並べる。
【0031】
続いて、図1に示す下壁体60および上壁体70をそれぞれトンネルT内に搬入する。そして、図5に示すように、トンネルTの幅員方向の中央に並んだ二つの支持台15,15の間に下壁体60を設置する。
図2および図3に示すように、下壁体60の連結部材62に組み付けたアンカーボルト63を、インバート部材10のインサートアンカー16に螺合させて、下壁体60をインバート部材10に連結する。このようにして、図5に示すように、複数の下壁体60をトンネルTの延長方向に間隔を空けて設置する。
【0032】
続いて、図1に示すように、隣り合う二つの下壁体60,60の上面に上壁体70を積み重ねる。
図2および図3に示すように、上壁体70の連結部材72に組み付けたアンカーボルト73を、下壁体60のインサートアンカー64に螺合させて、上壁体70を下壁体60に連結する。
【0033】
このようにして、複数の上壁体70を複数の下壁体60に積み重ねることで、開口部51を有する支持壁50を構築する。
その後、インバート部材10の上面にコンクリートを流し込んで、インバート部材10の上面に上層部20を構築する。これにより、二つの支持台15,15の間において支持壁50の下部がコンクリートに埋め込まれる。
【0034】
また、図3に示すように、上壁体70の上面に床版80の側縁部を載置し、上壁体70の連結部78と床版80の連結穴81とにコンクリートを充填して、上壁体70の上面に床版80の下面を連結する。
【0035】
これにより、床版80は、支持壁50によって所定の高さに支持される。本実施形態では、トンネルTの幅員方向に並べた二つの床版80,80において、内側の側縁部が支持壁50に支持されている。なお、両床版80,80の外側の側縁部は、セグメントSの内面に支持されている。
【0036】
トンネルTの掘削が進んだら、既設の床版80の切羽側に新たに複数のインバート部材10を設置する。また、新たな下壁体60および上壁体70をトンネルTの坑口側から既設の床版80の下方空間を通って切羽側に搬送する。
このとき、下壁体60および上壁体70のそれぞれの高さは、インバートIの上面から床版80の下面までの高さよりも小さいため、下壁体60および上壁体70をインバート部材10の上面に対して垂直な状態で台車に積載して、既設の床版80の下方空間を通過させることができる。
【0037】
そして、図2に示すように、前記した支持壁50の設置作業と同様に、複数の下壁体60をインバート部材10の上面に設置するとともに、各下壁体60に複数の上壁体70を積み重ねることで、支持壁50を切羽側に延長する。
【0038】
以上のような本実施形態の支持壁50およびその施工方法では、図3に示すように、支持壁50を下壁体60と上壁体70とに分割しているため、下壁体60および上壁体70を傾けることなく、既設の床版80の下方空間を通して搬送できる。また、下壁体60および上壁体70は、支持壁50全体に比べて小型化および軽量化されているため、下壁体60および上壁体70を組み付け易い。
したがって、本実施形態の支持壁50およびその施工方法では、トンネルT内において支持壁50を容易に搬送および設置できるため、トンネルTの施工効率を高めることができる。
【0039】
本実施形態の支持壁50は、図2に示すように、複数の下壁体60をトンネルTの延長方向に間隔を空けて並べるとともに、上壁体70を隣り合う二つの下壁体60,60に跨って設置している。このようにすることで、トンネルTの幅員方向に貫通した開口部51を有する支持壁50を容易に構築できる。
【0040】
本実施形態の支持壁50の下壁体60では、図3に示すように、インバート部材10に連結される連結部材62が窪み部61の内部に設けられている。また、上壁体70では、下壁体60に連結される連結部材72が窪み部71の内部に設けられている。このようにすることで、連結部材62,72が支持壁50の側面から突出しないように構成できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態の支持壁50では、図2に示すように、隣り合う二つの下壁体60,60の間の空間と、上壁体70の凹部75とによって開口部51が形成されている。しかしながら、上壁体70に凹部75を形成することなく、隣り合う二つの下壁体60,60の間の空間のみによって開口部51を形成してもよい。
【0042】
また、支持壁50に開口部51を形成してなくてもよい。この場合には、隣り合う二つの下壁体60,60を連続させて配置する。また、支持壁50に開口部51を形成しない場合には、一つの上壁体70を一つの下壁体60に積み重ねてもよい。
【0043】
下壁体60とインバート部材10との連結構造および下壁体60と上壁体70との連結構造は限定されるものではなく、各種公知の連結構造を用いることができる。
【0044】
本実施形態の支持壁50を設置するインバートIの構造は限定されるものではなく、例えば、現場打ちコンクリートによってインバートI全体を構築してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 インバート部材
15 支持台
16 インサートアンカー
20 上層部
50 支持壁
51 開口部
60 下壁体
61 窪み部
62 連結部材
63 アンカーボルト
64 インサートアンカー
70 上壁体
71 窪み部
72 連結部材
73 アンカーボルト
75 凹部
78 連結部
80 床版
81 連結穴
I インバート
S セグメント
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5