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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20241024BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020007539
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021112808
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一則
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、複数の気泡を含み、65%以上の空隙率を有しており、前記複数の気泡には200μm以上の気泡径を有する大径気泡が15%以上の個数割合で含まれており、
前記複数の気泡の平均気泡径が120μm以上200μm以下であり、
前記ポリウレタン樹脂発泡体における20℃での貯蔵弾性率が20MPa以上50MPa以下であり、
前記ポリウレタン樹脂発泡体における20℃でのtanδが0.1以上0.15以下で、且つ、前記ポリウレタン樹脂発泡体における50℃でのtanδが0.1以上0.15以下である、研磨パッド。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂発泡体のJIS-A硬度が75以下である、請求項に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の圧縮率が3%以上である、請求項1または2に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハやガラス板などの被研磨物を研磨する研磨パッドとしては、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドが知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-274361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨パッドによる研磨では、通常、砥粒を含んだ研磨用スラリーを介在させて研磨パッドの研磨面と被研磨物の表面(被研磨面)とが摺接される。
作業効率の向上を図る目的で、このような研磨では研磨レートを高めることが求められている。
しかし、研磨レートの向上を図ると研磨後の被研磨物の表面の品質が低下し易く、研磨レートの向上と得られる被研磨物の品質とがトレードオフの関係になる。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような状況に鑑み、被研磨物を高い研磨レートで研磨し易く、高い研磨レートで研磨しても研磨後の被研磨物の表面の品質を低下させ難い研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る研磨パッドは、
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、複数の気泡を含み、65%以上の空隙率を有しており、前記複数の気泡には200μm以上の気泡径を有する大径気泡が15%以上の個数割合で含まれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被研磨物を高い研磨レートで研磨し易く、高い研磨レートで研磨しても研磨後の被研磨物の表面の品質を低下させ難い研磨パッドが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例及び比較例の研磨パッドのポリウレタン樹脂発泡体における貯蔵弾性率E’の温度変化を示す図。
図2】実施例及び比較例の研磨パッドのポリウレタン樹脂発泡体における損失弾性率E’’の温度変化を示す図。
図3】実施例及び比較例の研磨パッドのtanδの温度変化を示す図。
図4】実施例及び比較例のポリウレタン樹脂発泡体の個数基準の気泡径の分布曲線を示す図。
図5】実施例及び比較例のポリウレタン樹脂発泡体の個数基準の気泡径の累積頻度分布曲線を示す図。
図6】比較例1のポリウレタン樹脂発泡体の表面のSEM画像。
図7】比較例2のポリウレタン樹脂発泡体の表面のSEM画像。
図8】比較例3のポリウレタン樹脂発泡体の表面のSEM画像。
図9】実施例1のポリウレタン樹脂発泡体の表面のSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を有するポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドである。
また、本実施形態に係る研磨パッドは、研磨面を有し、該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
本実施形態の研磨パッドは、前記研磨面と被研磨物の表面(被研磨面)との間に砥粒を含んだ研磨用スラリーを介在させて前記研磨面と前記被研磨面とが摺接されることで該被研磨面を研磨する。
【0011】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、複数の気泡を含み、65%以上の空隙率を有しており、前記複数の気泡には200μm以上の気泡径を有する大径気泡が15%以上の個数割合で含まれている。
【0012】
本実施形態に係る研磨パッドは、上記の通り前記ポリウレタン樹脂発泡体が65%以上もの高い空隙率を有する。
したがって、本実施形態に係る研磨パッドは、空隙率の低いポリウレタン樹脂発泡体に比べて前記研磨面における易変形性に優れ、研磨時において前記研磨面が被研磨物の表面に対して良好な密着性を示す。
【0013】
本実施形態に係る研磨パッドの前記研磨面では、前記ポリウレタン樹脂発泡体に含まれる前記気泡が開口した状態になっているため、研磨時には該気泡に研磨用スラリーが収容されることになる。
本実施形態に係る研磨パッドは、空隙率の低いポリウレタン樹脂発泡体に比べて研磨面で開口している気泡の総面積が大きい。
したがって、本実施形態に係る研磨パッドは、研磨面での研磨用スラリーの保持量が高い。
そして、研磨面での易変形性に優れる本実施形態の研磨パッドは、被研磨物によって研磨面に圧力を受けた際に気泡内に収容されている研磨用スラリーを研磨面に素早く滲出させることができる。
【0014】
本実施形態の研磨パッドは、上記の通り前記ポリウレタン樹脂発泡体に200μm以上の気泡径を有する大径気泡が15%以上の個数割合で含まれている。
そのため、研磨面で開口している気泡の深さが深い。
研磨に際しては被研磨面において削り取られた被研磨物の一部が粉末状の研磨クズとなって発生し、研磨の進行に伴って気泡に目詰まりが生じる場合があるが、本実施形態に係る研磨パッドは、研磨クズの収容量も大きく目詰まりを生じ難い。
【0015】
研磨面と被研磨物との間にスラリーが十分供給されることで本実施形態の研磨パッドを用いた研磨では、高い研磨レートを発揮させることができる。
研磨に際して局所的に研磨用スラリーが途切れた箇所が形成されると該箇所においてスティックスリップ現象のような挙動を生じて被研磨物の被研磨面が傷つくおそれがあるが、本実施形態の研磨パッドを用いた研磨では、そのようなおそれを抑制することができる。
【0016】
本実施形態の研磨パッドは、空隙率が高く、しかも、200μm以上の気泡径を有する大径気泡が数多く含まれるため、隣り合う気泡どうしの距離が短く、隣り合う気泡の間で膜状になっているポリウレタン樹脂(以下「気泡膜」ともいう)に孔が形成され易い。
本実施形態の研磨パッドは、前記孔によって厚さ方向に連通した複数の気泡を有する。
研磨面に開口した気泡に収容された研磨クズは、該気泡の下方に位置する気泡へと移動し、研磨面から遠ざけられる。
【0017】
研磨に際して研磨面と被研磨物との間に研磨クズが多く存在すると研磨後の被研磨物の表面の品質を十分良好にすることが難しくなる場合がある。
研磨レートを高めると単位時間当たりの研磨クズの発生量も多くなるが本実施形態の研磨パッドを用いた研磨では研磨クズが研磨面から遠ざけられ得ることから研磨後の被研磨物の表面が良好な品質となり得る。
【0018】
上記のような機能をより十分に発揮する点で、ポリウレタン樹脂発泡体の空隙率は、70%以上であることが好ましく、72%以上であることがより好ましい。
前記空隙率は、80%以下であることが好ましく、78%以下であることがより好ましい。
【0019】
ポリウレタン樹脂発泡体の大径気泡の個数割合は、15%以上であることが重要であり、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。
前記個数割合は、通常、30%以下である。
【0020】
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、前記複数の気泡の平均気泡径が、好ましくは110μm以上、より好ましくは120μm以上である。
本実施形態の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂発泡体が高い平均気泡径を有することにより、前記気泡膜に孔がよりいっそう形成され易い状態になるという利点を有する。
前記平均気泡径は、200μm以下であることが好ましい。
【0021】
平均気泡径、大径気泡の個数割合、及び、空隙率は、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-I)を用いて、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲(例えば、0.7mm×1.6mm×1.6mmの部分2つ分)に含まれている、各気泡の体積を測定し、この体積と同じ体積の真球の直径を各気泡の直径とする。
なお、「平均気泡径」は、各気泡の体積から求めた気泡径の算術平均値[=(「各気泡径」の合計値)/(気泡数)]を意味する。
また、「大径気泡の個数割合」は、得られた各気泡の直径の値の内、200μm以上の直径を有する気泡(大径気泡)の数をカウントし、気泡総数に占める大径気泡の割合を意味する。
さらに、空隙率は、ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲の体積に対する、気泡の全体積の比を意味する。
【0022】
本実施形態の研磨パッドは、研磨面が被研磨物の被研磨面に対して良好な追従性を示すことが好ましい。
したがって、ポリウレタン樹脂発泡体は、JIS-A硬度が75以下であることが好ましい。
なお、JIS-A硬度は、JIS K6253-3:2012に準拠した方法(タイプA)で測定する。この測定の際には、ポリウレタン樹脂発泡体の厚みが12mm未満である場合には、ポリウレタン樹脂発泡体を複数枚積層させてこの積層体の厚みを12mm以上にし、この積層体の硬度を測定する。また、JIS-A硬度は、押針を研磨面に押し込んで測定した硬さである。
【0023】
ポリウレタン樹脂発泡体は、研磨面のJIS-A硬度が70以下となるように調製されていることがより好ましい。
前記JIS-A硬度は、68以下であることがさらに好ましい。
前記JIS-A硬度は、40以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
【0024】
ポリウレタン樹脂発泡体は、被研磨物の被研磨面に対して良好な追従性を発揮するという観点から、圧縮率が3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましい。
圧縮率についてもJIS-A硬度と同様に研磨面を測定対象としてもよく、研磨面を構成しているポリウレタン樹脂発泡体と同じ状態のポリウレタン樹脂発泡体を別途作製してこれを測定対象としてもよい。
【0025】
なお、圧縮率は、以下の方法で求めることができる。
すなわち、JIS L1096:2010に記載の圧縮弾性試験機(圧力子の面積:50mm)を用い、圧力子でポリウレタン樹脂発泡体に300gf/cmの圧力で厚み方向に加圧して60秒間保持した後のポリウレタン樹脂発泡体の厚みT1を測定し、次に、圧力子でポリウレタン樹脂発泡体に1800gf/cmの圧力で厚み方向に加圧して60秒間保持した後のポリウレタン樹脂発泡体の厚みT2を測定し、下記式により圧縮率を求めることができる。
圧縮率 = (T1-T2)×100/T1
【0026】
ポリウレタン樹脂発泡体は、被研磨物の被研磨面に対して良好な追従性を発揮するという観点から、20℃での貯蔵弾性率が50MPa以下であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂発泡体は、20℃における貯蔵弾性率E’が、45MPa以下であることがより好ましく、40MPa以下であることがさらに好ましい。
ポリウレタン樹脂発泡体の貯蔵弾性率E’は、通常、20MPa以上である。
【0027】
ポリウレタン樹脂発泡体は、20℃から50℃の範囲内の温度で用いられることが多いため、この温度範囲全域において動的粘弾性特性が大きく変化しないことが好ましい。
すなわち、ポリウレタン樹脂発泡体は、20℃から50℃までの間において貯蔵弾性率E’が、20~50MPaであることが好ましい。
該温度域での貯蔵弾性率E’は、20~45MPaであることがより好ましく、20~40MPa以下であることがさらに好ましい。
【0028】
ポリウレタン樹脂発泡体は、20℃におけるtanδ(損失弾性率E’’/貯蔵弾性率E’)が0.1以上であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂発泡体は、50℃におけるtanδ(損失弾性率E’’/貯蔵弾性率E’)が0.1以上であることが好ましい。
尚、20℃におけるtanδや50℃におけるtanδは、通常、0.15以下である。
【0029】
前記tanδは、20℃から50℃の温度範囲全域において0.1以上であることが好ましい。
20℃におけるtanδの値(tanδ(20℃))に対する50℃におけるtanδの値(tanδ(50℃))の比率(tanδ(50℃)/tanδ(20℃))は、0.9を超え1.1未満であることが好ましい。
【0030】
斯かる研磨パッドでは、前記tanδが大きい(0.10以上)ことにより、研磨時の被研磨物の微細振動を抑制でき、そして、研磨時の被研磨物のダンピングを抑制できる。その結果、研磨時において、研磨パッドと被研磨物とが密着しやすくなる。
その結果、斯かる研磨パッドは、平坦性を高めることができる。
【0031】
貯蔵弾性率E’、及び、損失弾性率E’’は、JIS K7244-4:1999「プラスチック-動的機械特性の試験方法-第4部:引張振動-非共振法」に従い以下の条件で測定することができる。
測定温度範囲:0℃~100℃
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
ひずみ:0.5%
【0032】
さらに、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、見掛け密度が、好ましくは0.3~0.4g/cmである。
見掛け密度は、0.37g/cmであることが好ましい。
なお、見掛け密度は、JIS K7222:2005に基づいて測定することができる。
【0033】
前記ポリウレタン樹脂発泡体を構成するポリウレタン樹脂は、研磨パッドに用いられているものと同様のものを採用することができる。
ポリウレタン樹脂は、活性水素を含む化合物(以下、「活性水素化合物」ともいう。)の第1の構成単位と、イソシアネート基を含む化合物(以下、「イソシアネート化合物」ともいう。)の第2の構成単位とを備える。
また、前記ポリウレタン樹脂は、活性水素化合物とイソシアネート化合物とがウレタン結合して、活性水素化合物の第1の構成単位とイソシアネート化合物の第2の構成単位とが交互に繰り返した構造となっている。
【0034】
前記活性水素化合物は、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を分子内に有する有機化合物である。該活性水素基としては、具体的には、ヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、チオール基などの官能基が挙げられ、前記活性水素化合物は、分子中に該官能基を1種のみ有していてもよく、分子中に該官能基を複数種有していてもよい。
【0035】
前記活性水素化合物としては、例えば、分子中に複数のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、分子内に複数の第1級アミノ基又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物などを用いることができる。
【0036】
前記ポリオール化合物としては、ポリオールモノマー、ポリオールポリマーが挙げられる。
【0037】
前記ポリオールモノマーとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコールが挙げられ、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐脂肪族グリコールが挙げられ、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ジオールが挙げられ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0038】
前記ポリオールモノマーとしては、反応時の強度がより高くなりやすく、製造された発泡ポリウレタンを含む研磨パッドの剛性がより高くなりやすく、比較的安価であるという点で、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
【0039】
前記ポリオールポリマーとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
なお、ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーも挙げられる。
【0040】
前記ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコールなどが挙げられる。
【0041】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられ、また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応混合物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0042】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0043】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0044】
前記ポリオール化合物としては、その他に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール等も挙げられる。
【0045】
前記ポリアミン化合物としては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレン ビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0046】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネートモノマー、ポリイソシアネートポリマーが挙げられる。
【0047】
前記ポリイソシアネートモノマーとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。また、前記芳香族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物なども挙げられる。
【0049】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0050】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
【0051】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0052】
前記ポリイソシアネートポリマーとしては、ポリオールと、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートの少なくとも何れかのジイソシアネートとが結合されてなるポリマー等が挙げられる。
【0053】
ポリウレタン樹脂発泡体のtanδを高めるという観点から、前記ポリウレタン樹脂は、ポリプロピレングリコール(PPG)を構成単位として含むことが好ましい。
また、前記ポリウレタン樹脂は、ポリプロピレングリコール(PPG)を構成単位として含むことにより、比較的もろい構造を有することになり、その結果、研磨パッドのドレス時の切削速度が高まるという利点を有する。
さらに、本実施形態に係る研磨パッドは、前記ポリウレタン樹脂を100質量%としたときに、前記ポリウレタン樹脂の構成単位に含まれるポリプロピレングリコール(PPG)を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40~70質量%、さらにより好ましくは50~65質量%含有する。
【0054】
なお、ポリウレタン樹脂を100質量%としたときにおける、前記ポリウレタン樹脂の構成単位に含まれるポリプロピレングリコール(PPG)の含有割合は、以下のようにして求めることができる。
まず、ポリウレタン樹脂発泡体を極性溶媒(重DMF、重DMSO等)に溶かして溶解物を得る。次に、該溶解物を1H-NMRで分析することより、ポリプロピレングリコール(PPG)を定量し、前記ポリプロピレングリコール(PPG)の含有割合を求める。
また、前記ポリプロピレングリコール(PPG)の含有割合の別の求め方としては、以下の方法がある。
まず、ポリウレタン樹脂発泡体をメタノールで化学分解して分解物を得る。次に、該分解物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等で分画して分取し、各分取物を1H-NMR又はGC-MSで分析することより、ポリプロピレングリコール(PPG)を定量し、前記ポリプロピレングリコール(PPG)の含有割合を求める。
【0055】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板、シリコンウエハなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨パッドは、シリコンウエハやガラス板の研磨に好適に用いられる。
さらに、本実施形態に係る研磨パッドは、仕上げ研磨、精密研磨等に好適に用いられる。
【0056】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0057】
次に、実施例、及び、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0058】
下記表1及び図1~5に示す特性を有するシート状のポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを用意した。
なお、下記表1及び図1~3に示す特性は、上述した方法で測定した。
また、図4に示す「個数基準の気泡径の分布曲線」、及び、図5に示す「個数基準の気泡径の累積頻度分布曲線」は、下記の方法で求めた。
まず、上述した方法で各気泡の直径を求めた。
そして、気泡径0μmから50μm間隔毎に気泡数を求め、「各間隔の気泡数」を「各間隔の上限の気泡径の気泡数」として作成された曲線を「個数基準の気泡径の分布曲線」とした。
また、個数基準の気泡径の累積頻度分布曲線は、個数基準の気泡径の分布曲線のデータを用いて作成した。
さらに、比較例1~3、及び、実施例1の研磨パッドの表面のSEM画像を図6~9に示す。
なお、比較例1~比較例3の研磨パッドは、市販の研磨パッドである。
【0059】
【表1】
【0060】
(評価試験)
研磨パッドを用いて、下記条件で被研磨物を研磨し、研磨速度を求めた。
<装置>
研磨機:NH-5B2MT(KOEI)
ドレッサー:Dresser#120
<ブレイクイン条件>
時間:60min(比較例1)、60min(比較例2)、
160min(比較例3)、220min(実施例1)
定盤回転数:20rpm
DIwater流量:3L/min
<研磨条件>
被研磨物:ソーダライムガラス板(厚み:約700μm、直径65mm)
研磨用スラリー:CeOを20質量%含有する研磨用スラリー
研磨用スラリーの流量:450mL/min
研磨時間:25min/run
荷重:142gf/cm
定盤回転数:45rpm
研磨速度は、研磨によって減少した厚みを研磨時間で割ることにより求めた。なお、研磨によって減少した厚みは、研磨前後の被研磨物の質量差から計算により求めた。
また、マイクロスクラッチ数については、マイクロスコープ(キーエンス社製のVHX-5000 DIGITAL MICROSCOPE)を用いて、研磨後のソーダライムガラス板の研磨した面の一視野部分(2.5mm×3.4mm)の拡大画像(倍率:100倍)を取り込み、この拡大画像におけるスクラッチの数を目視にて確認し、研磨面全面における合計のスクラッチの数をマイクロスクラッチ数とした。
評価試験の結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、実施例の研磨パッドを用いた場合、被研磨物の表面の品質を低下させずに高い研磨レートで研磨できている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9