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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133904
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030123
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-174704(JP,A)
【文献】登録実用新案第3010812(JP,U)
【文献】特開平11-347096(JP,A)
【文献】特開平03-007170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足置部を有する筐体と、
前記足置部において、足裏の各部位に対応する位置に設けられた複数の電極と、
前記複数の電極から少なくとも2つの電極を選択する選択手段と、
選択された少なくとも2つの電極に、該選択された少なくとも2つの電極に応じてあらかじめ定められた同じ周波数の電圧を印加する印加手段とを有し、
前記印加手段が、一方の足への刺激と他方の足への刺激とを所定のタイミングで交互に繰り返す
電気刺激装置。
【請求項2】
左右それぞれの足について、先端から後端に向かって、足趾部、足裏前部、足裏中部、足裏後部、踵部が規定され、
前記複数の電極は、それぞれの足について、前記足趾部に対応する位置に設けられた第1電極と、前記足裏前部に対応する位置に設けられた第2電極と、前記足裏中部に対応する位置に設けられた第3電極と、前記足裏後部に対応する位置に設けられた第4電極と、前記踵部に対応する位置に設けられた第5電極とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記印加手段は、前記選択された少なくとも2つの電極に対応して、3kHz~5kHzの第1周波数帯、10kHz~20kHzの第2周波数帯、および20kHz~50kHzの第3周波数帯から選択された一の周波数帯のうち前記あらかじめ定められた同じ周波数の交流電圧を印加する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記印加手段は、
左足に対応する前記第5電極と右足に対応する前記第5電極とを用いて、前記第1周波数帯の交流電圧を印加する第1期間と、
前記第1期間の後に、いずれか片方の足に対応する2つの前記第4電極を用いて、前記第2周波数帯の交流電圧を印加する第2期間、
前記第2期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する2つの前記第3電極を用いて、前記第3周波数帯の交流電圧を印加する第3期間、
前記第3期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する前記第2電極と前記第5電極とを用いて、前記第2周波数帯の交流電圧を印加する第4期間、
前記第4期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する前記第1電極と前記第2電極とを用いて、前記第3周波数帯の交流電圧を印加する第5期間
を一サイクルとして、左右それぞれの足に対応する電極を用いた印加を交互に実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記印加手段は、
いずれか片方の足に対応する前記第1電極と前記第2電極とを用いて、前記第3周波数帯の交流電圧を印加する第1期間、
前記第1期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する前記第2電極と前記第5電極とを用いて、前記第2周波数帯の交流電圧を印加する第2期間、
前記第2期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する2つの前記第3電極を用いて、前記第3周波数帯の交流電圧を印加する第3期間、
前記第3期間の後に、いずれか片方の足に対応する2つの前記第4電極を用いて、前記第2周波数帯の交流電圧を印加する第4期間、
前記第4期間の後に、左足に対応する前記第5電極と右足に対応する前記第5電極とを用いて、前記第1周波数帯の交流電圧を印加する第5期間
を一サイクルとして、左右それぞれの足に対応する電極を用いた印加を交互に実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の電気刺激装置。
【請求項6】
前記印加手段は、左足に対応する電極を用いて印加を行う際の前記第1期間において印加される交流電圧の位相と、右足に対応する電極を用いて印加を行う際の前記第1期間において印加される交流電圧の位相は180°ずれている
ことを特徴とする請求項4に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足裏から電気刺激を与える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ効果やトレーニング効果を得ることを目的として、足裏から電気刺激(EMS)を与える技術がある。例えば特許文献1には、足裏を複数のゾーンに区分し、各ゾーンに対応する位置に設けられた電極(通電ポイント)を適宜選択してパルス電圧を印加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-45562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
足裏といっても、その部位によって筋肉の種類は様々である。一般に、筋肉の性質に応じて適切な電気刺激の与え方も異なる。効率よく動く周波数は筋肉の種類によっても異なるし、周波数帯によっては、筋肉を動かすことができたとしてもしびれといった不快感をユーザが感じる可能性もある。
この点に関し、例えば文献1の技術においては、各ゾーンに印加するパルス波形は固定的であり、各ゾーンの筋肉に適した電気刺激を与えるといったことはできない。
本発明は、足の各部位の筋肉の性質に応じた電気刺激を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一の態様において、足置部を有する筐体と、前記足置部において、足裏の各部位に対応する位置に設けられた複数の電極と、前記複数の電極から少なくとも2つの電極を選択する選択手段と、選択された少なくとも2つの電極に、該選択された少なくとも2つの電極に応じて定められる周波数の電圧を印加する印加手段とを有する電気刺激装置を提供する
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、足の各部位の筋肉の性質に応じた電気刺激を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】足裏刺激装置10の外観図。
図2】足裏刺激装置10の機能図。
図3】左右の足への電圧の印加タイミングを説明する図。
図4】各足について1サイクルの間に印加される交流周波数の変化を示す。
図5】足裏の各部位へ印加する電圧波形プロファイルを示す。
図6】左右のそれぞれの足について、1サイクルの電気刺激において、選択される電極と印加電圧のプロファイルとを示す表。
図7】左右のそれぞれの足について、踵部から電気刺激を与える際の電圧波形の違いを説明するための図。
図8】左右の足への電圧の印加タイミングの他の例を説明する図。
図9】各足について1サイクルの間に印加される交流周波数の変化の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施例>
図1は足裏刺激装置10の外観図を示す。足裏刺激装置10は、略平面である足置部100を有する筐体を有し、ユーザによって床面等に設置される。なお、足置部100は、例えば土踏まずなど足裏の凹凸形状にあわせて曲面形状に成形されていてもよい。好ましくは、ユーザは、椅子等に腰かけた状態で足置部100に足を乗せて使用する。使用方法はこれに限らず、例えばユーザが直立した状態で足を乗せて使用してもよい。なお、床面等と接地する部分(筐体の底面部)に可動部を設け、体重のかけ方に応じて足置部100の姿勢変化(傾きの方向や角度)を許容する機構(図示せず)をさらに備えていてもよい。足置部100には、前記足置部において、足裏の各部位に対応する位置に複数の突起状の電極130が設けられる。なお、各電極の形状やサイズ(突起の高さや太さなど)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0009】
より具体的には、電極130は、左右の足をそれぞれ乗せる足型をかたどった領域の内側に設けられる。この領域は、左右の足のそれぞれについて、7つに区分されている。区分された各領域に設けられた電極群を、つま先から踵側へ、そして内側から外側に向かって、AR、BR、CR1、CR2、DR1、DR2、GR(以上、右足用の領域)、AL、BL、CL1、CL2、DL1、DL2、GL(以上、左足用の領域)と称する。
換言すると、左右それぞれの足について、つま先側から踵側に向かって、足趾部、足裏前部、足裏中部、足裏後部、踵部と規定すると、電極130は、それぞれの足について、足趾部に対応する位置に設けられた第1電極(AR、AL)と、足裏前部に対応する位置に設けられた第2電極(BR、BL)と、足裏中部に対応する位置に設けられた第3電極(CR1、CR2、CL1、CL2)と、足裏後部に対応する位置に設けられた第4電極(DR1、DR2、DL1、DL2)と、踵部に対応する位置に設けられた第5電極(GR、GL)とを有する。
【0010】
一の区分に属する複数の電極130は、すべて等電位の電極として機能する。よって、以下、「1の電極を選択する」といった場合、AR、BR、CR1、CR2、DR1、DR2、GR、AL、BL、CL1、CL2、DL1、DL2、GLの計14に区分された電極群から、1の電極群を選択することを意味する。
【0011】
表示部110は、液晶画面等であって、現在の動作モードやその他の情報を表示する。スイッチ120はユーザによって操作されるスイッチであって、電源のオン・オフ、動作内容の指定、その他の指示を入力する。
【0012】
図2は足裏刺激装置10の機能図である。足裏刺激装置10は、表示部110と制御部150とモード設定部160と191と切替部140と波形生成部170と電源190とを有する。
モード設定部160は、プロセッサやメモリ等によって実現され、スイッチ120にて受け付けたユーザからの指示に基づき、制御部150における制御の内容を決定する。
電源190は、足裏刺激装置10の筐体内に収納されたバッテリあるいは外部電源から電源供給を受ける端子であって、各部を動作させるための電力を供給するとともに、電極130へ印加するための電圧波形を生成するために波形生成部170に電源を供給する。
波形生成部170は、整流回路や任意の電圧波形を生成する回路等によって実現され、波形決定部151から供給された制御信号に基づいて所定の電圧波形を生成し、切替部140に供給する。
切替部140はスイッチ素子や選択回路によって実現され、タイミング決定部152から供給される制御信号に基づくタイミングで、電極130のうち少なくとも2つの電極を選択し、選択された少なくとも2つの電極へ、波形生成部170から供給された波形の電圧を印加する。
【0013】
制御部150は、プロセッサや動作モードの内容を記憶したメモリによって実現され、選択された少なくとも2つの電極に、該選択された少なくとも2つの電極に応じて定められる周波数の電圧を印加する。制御部150は、波形決定部151とタイミング決定部152とを含む。
タイミング決定部152は、各電極を選択するタイミングを決定し、各電極を選択するタイミングを示す制御信号を切替部140に供給する。
波形決定部151は、選択された電極に対して印加する電圧波形(プロファイル)を示す制御信号を生成して波形生成部170に供給する。
【0014】
一の態様において、制御部150は、選択された少なくとも2つの電極に対応して、3kHz~5kHzの第1周波数帯、足裏刺激装置10kHz~20kHzの第2周波数帯、および20kHz~50kHz第3周波数帯から選択された一の周波数帯の交流電圧が印加されるように、制御信号を生成する。
【0015】
好ましい態様において、制御部150は、左足に対応する第5電極と右足に対応する第5電極とを用いて、第1周波数帯の交流電圧を印加する第1期間と、第1期間の後に、いずれか片方の足に対応する2つの第4電極を用いて、第2周波数帯の交流電圧を印加する第2期間、第2期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する2つの第3電極を用いて、第3周波数帯の交流電圧を印加する第3期間、第3期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する第2電極と第5電極とを用いて、第2周波数帯の交流電圧を印加する第4期間、第4期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する第1電極と第2電極とを用いて、第3周波数帯の交流電圧を印加する第5期間を一サイクルとして、左右それぞれの足に対応する電極を用いた印加が交互に実行されるように、制御信号を生成する。
【0016】
好ましい態様において、制御部150は、左足に対応する電極を用いて印加を行う際の第1期間において印加される交流電圧の位相と、右足に対応する電極を用いて印加を行う際の第1期間において印加される交流電圧の位相とが180°ずれた電圧波形を生成する旨の制御信号を生成する。
【0017】
以下、制御部150が、歩行時に足(の筋肉)に加わる刺激を模擬した電気刺激を付与することをモード設定部160から指示された場合の動作例について、図3~6を用いて詳細に説明する。なお、グラフの各軸の縮尺は適宜調整している。
なお、以下において、足(の筋肉)へ加わる刺激とは、電極130と接触する足裏にある筋肉に直接作用する刺激だけでなく、足裏から加えられた刺激が、下腿部など歩行時に関係する筋肉や他の組織へ到達した刺激を含む。すなわち、模擬したい刺激は、少なくとも理想的には、足部にある筋肉を含む、歩行に関連するあらゆる筋肉に加えられると考えられる刺激である。
【0018】
図3は、左右それぞれの足へ電気刺激を与えるための電圧の印加タイミングを示す図である。同図において、「ON」は選択された電極に電圧印加される時間、OFFが当該選択された電極に電圧が印加される時間を意味する。この例では、時点tlsにおいて左足への電圧印加が開始され、電圧印加はtlfで終了する。印加期間TL(=tlr-tls)は、例えば0.4~1.5秒であり、歩行時に左足が地面に着地してから離れるまでの期間に対応している。一方、右足への電圧印加については、左足への電圧印加が終了するよりも前の時点trsで開始し、時点trrで終了する。印加期間TR(=trr―trs)は、TLと同様、例えば0.4~1.5秒である。そして、当該印加期間TRが終了する前に、次の左足への刺激が開始される。以下同様に、左足への刺激と右足への刺激を所定のタイミングで交互に繰り返す。上述した電気刺激のタイミングは、片足が地面から離れるよりも前に他の足が着地するという典型的な歩行時の左右の足の着地タイミングを模したものとなっている。
【0019】
続いて、図3における各印加期間TLおよびTRにおいて印加される交流電圧の周波数特性について、図4を用いて説明する。図4は、横軸が時間を、縦軸が印加する交流電圧の周波数を示す。同図に示すように、各印加期間(TL、TR)は、T0で開始しT5で終了する。そして、各印加期間(TL、TR)において、第1期間(T0~T1)、第2期間(T1~T2)、第3期間(T2~T3)、第4期間(T3~T4)、第5期間(T4~T5)の5つに区分される。また、第1周波数帯fa1(3kHz~10kHz)、第2周波数帯fa2(10kHz~20kHz)、fa3第3周波数帯(20kHz~50kHz)に区分される。換言すると、第1期間~第5期間を1サイクルとして、片足の電気刺激付与が行われる。
同図に示すように、区分された期間ごとに印加される交流周波数が異なっている。具体的には、第1期間においては第1周波数帯fa1の周波数が用いられ、第2期間においては第2周波数帯fa2の周波数が設定され、第3期間においては第3周波数帯fa3の周波数が用いられ、第4期間においては第2周波数帯fa2の周波数が用いられ、第5期間においては第3周波数帯fa3の周波数が用いられる。
【0020】
図5は、図4に示した第1期間~第5期間の各々において、電圧波形プロファイルの詳細を概念的に示したものである。なお、図5では第1期間(T0~T1)を例に説明しているが、第2~第5期間においても同様の特徴を有する(ただし周波数は異なる)。すなわち、各期間は、交流電圧(この例では第一周波数fa1)を印加する期間Tonと、電圧を印加しない期間Toffが交互に設けられる。同図では繰返し周波数はfb1となっている。
なお、筋肉をより多く刺激するという目的であれば交流電圧を印加し続けたほうがよいとも考えられるが、電圧を印加しない期間を周期的に設けている。これは、交流電圧を印加し続けると「しびれ」といった好ましくない体感をユーザに与える可能性を考慮したためである。
【0021】
図6は、図3図5にて示した、左右のそれぞれの足への1サイクル(印加期間TL、TR)の電気刺激を付与する際に、1サイクル内の区分された各期間において選択される電極と印加電圧のプロファイル(交流周波数と繰返し周波数)を示す表である。
【0022】
同図に示すように、第1期間(T0~T1)においては、GLおよびGRを用いて、両足の踵部から刺激を与えることで、主に片足側の踵から脛やふくらはぎにかけての筋肉を刺激することを目的とする。この筋肉は比較的太く、この性質を加味して3~5kHzのいわゆる低周波電圧が用いられる。繰返し周波数は、体感的に良いとされる5~100Hzが用いられる。なお、第1期間だけは左の足に対応する電極と右の足に対応する電極とを用いているが、刺激対象を左右いずれの足に選択するのかについては、後述する。
【0023】
第2期間(T1~T2)においては、足裏後部の筋肉が刺激付与の対象である。この筋肉に適した周波数であるfa2が、この部位に対応するDL1およびDL2(左足を刺激する場合)またはDR1およびDR2(右足を刺激する場合)を用いて印加される。なお、DL1とDL2のいずれかを陽極とするのかについて(換言すると位相)については任意である。繰返し周波数は、第1期間と同様、体感的に良いとされる5~100Hzが用いられる。
【0024】
第3期間(T2~T3)においては、主に足底前部の筋肉が刺激不要の対象である。よって、この筋肉に適した周波数として第3周波数帯fa3が用いられる。5~100Hz体感重視で心地よい感覚を与えることができる。
【0025】
第4期間(T3~T4)においては、主に足底筋膜郡が刺激付与の対象である。よって、この筋肉の性質に適した周波数である第2周波数帯fa2が用いられる。また、繰返し周波数は、筋膜の炎症に効果的とされる143Hzを含む繰返し周波数帯が設定される。
【0026】
第5期間(T4~T5)においては、足指の腱を刺激付与の対象とする。ここで、指先は電気刺激に敏感であり、低周波を印加すると体感に与える悪影響が大きい可能性があるため、20kHz以下のいわゆる低周波を用いずに、20kHz以上の第3周波数帯fa3の周波数で腱を動かす。また、繰返し周波数は50Hz以下とすることで体感への悪影響を低減させることが期待される。
【0027】
このように、1サイクルの期間において、刺激を付与する順序は、踵→足裏後部→足裏中部→足裏前部→足趾部となっている。これは、歩行時にまず踵が着地し、足裏後部→足裏中部→足裏前部の順で地面に接し、最後に足指で地面から離れるという動作に対応している。
そして、足裏の各部に応じて、その部位の筋肉の適した交流周波数および繰返し周波数が用いられる。
【0028】
図6に示すように、左足への刺激を与える場合と右足への刺激を与える場合とで、印加する順序、交流周波数、繰返し周波数は同一であるが、唯一異なるのは、第1期間において印加する交流電圧の位相である。これを図7を用いて詳細に説明する。
【0029】
図7は左右のそれぞれの足について、第一期間の開始時点の電気刺激の波形を対比した図である。同図に示すように、左足の第1期間と右足の第1期間とで、電圧波形の位相が180°異なっている。本件発明者は、GLをプラス側(陽極)、GRをマイナス側(陰極)とすると、同図(a)のように正位相の波形は主に左足の筋肉に刺激が与えられているような体感を与え、同図(b)のように逆位相の波形は主に左足の筋肉に刺激が与えられているような体感を与えることを見出した。図7に示した位相制御は、この知見に基づいたものである。
【0030】
上記実施例によれば、足裏の各部位に応じて、その部位の筋肉の性質を加味した電気刺激が与えられる。さらに、歩行時において足裏の各部位に与えられるタイミングと同様のタイミングで刺激が与えられるように印加タイミングを制御することで、例えば座ったままでも足を足置部100に乗せるだけで歩行した感覚が味わえる。これとともに、歩行に重要な足裏、前脛およびふくらはぎ等の下肢の筋肉をトレーニングする効果が期待される。
【0031】
<変形例>
左右の足への電圧の印加タイミングは、図3に示す例に限られない。図8は、左右の足への電圧の印加タイミングの他の例を説明する図である。同図に示すように、左足へ刺激を与える印加期間TLと左足へ刺激を与える印加期間TRとが重なる期間が存在しなくてもよい。つまり、どちらの足にも電圧が印加されない瞬間が存在してもよい。ここで、走る際は、どちらの足も地面についていない(つまり地面からの刺激を受けていない)期間が存在するので、図8に示した制御例は歩行ではなく走る場面を模擬しているといえる。この場合において、例えば踵を地面に着地させないような走る動作を模擬したければ、それぞれ、DL1、DL2、DRl、DR2、CL1、CL2、CR1、CR2を使用せず、図6に示した第4期間および第五期間の2つの期間のみ一サイクルの印加期間TLおよびTRを構成すればよい。
【0032】
また、歩行といっても足の動かし方は千差万別である。例えば、つま先から着地し、踵が最後に地面から離れるという足の使い方を普段から行っている人もいる。このようなユーザの場合は、普段の足の使い方を模擬すべく、例えば、図9に示すように、図6と刺激の順序が反対となるような制御を行ってもよい。
すなわち、制御部150は、いずれか片方の足に対応する第1電極(AR、AL)と第2電極(BR、BL)とを用いて、第3周波数帯fa3の交流電圧を印加する第I期間、第I期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する第2電極と第5電極(GR、GL)とを用いて、第2周波数帯fa2の交流電圧を印加する第II期間、第II期間の後に、当該いずれか片方の足に対応する2つの第3電極(CL1とCL2またはCR1とCR2)を用いて、第3周波数帯の交流電圧を印加する第III期間、第III期間の後に、いずれか片方の足に対応する2つの第4電極(DL1とDL2またはDR1とDR2)を用いて、第2周波数帯の交流電圧を印加する第IV期間、第IV期間の後に、左足に対応する第5電極(GL)と右足に対応する第5電極(GR)とを用いて、第1周波数帯fa1の交流電圧を印加する第V期間から構成される期間を一サイクルとして、左右それぞれの足に対応する電極を用いた印加を交互に実行する。
【0033】
このように、模擬すべき運動の内容(足や下肢の使い方)は、歩く、走るに限らず、スキップなどいかなるものであってもよい。
具体的には、予め運動の内容と、その運動を行った際の筋肉の使われ方(どの部位の筋肉にどのような刺激が与えられるのか)を再現する波形とを対応付けて制御部150のメモリに記憶しておき、ユーザが疑似体験したい運動内容をモード設定部160を用いて指定すればよい。モード設定部160は、指定された運動内容に対応する波形を読み出して制御部150へ供給する。
要するに、本発明の電気刺激装置は、足置部を有する筐体と、前記足置部において、足裏の各部位に対応する位置に設けられた複数の電極と、前記複数の電極から少なくとも2つの電極を選択する選択手段と、選択された少なくとも2つの電極に、該選択された少なくとも2つの電極に応じて定められる周波数の電圧を印加する印加手段とを有していればよい。
【符号の説明】
【0034】
10・・・足裏刺激装置、100・・・足置部、110・・・表示部、120・・・スイッチ、130・・・電極、160・・・モード設定部、190・・・電源、170・・・波形生成部、140・・・切替部、150・・・制御部、151・・・波形決定部、152・・・タイミング決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9