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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20241024BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L23/14 S
H01L23/02 F
H01L23/02 D
H01L23/12 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020145631
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040769
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 喜昭
(72)【発明者】
【氏名】千葉 広文
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270707(JP,A)
【文献】特開2010-278317(JP,A)
【文献】特開2018-148068(JP,A)
【文献】特開2009-076752(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱酸化膜が形成されている上面を有し、前記上面から凹んだ凹部が形成されている単結晶シリコンからなる基板と、
前記凹部の底面に載置された発光素子と、
下面にフリットガラス層を有しかつ前記基板の前記上面に前記フリットガラス層を介して接合されたガラスからなる透光部材と、を含み、
前記基板と前記フリットガラス層との接合部分において、前記基板と前記フリットガラス層の間には、前記基板の表面から前記熱酸化膜と、前記熱酸化膜と前記フリットガラス層との反応層とが順に形成されており、
前記接合部分における前記熱酸化膜の厚みは、前記接合部分以外の前記熱酸化膜の厚みの0.5倍以上であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記基板には、前記凹部の前記底面から前記基板の裏面まで柱状に貫通しかつ内側面が前記熱酸化膜によって覆われている複数の貫通孔が形成されており、
前記発光装置は、前記複数の貫通孔を充填する柱状の複数の貫通電極を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記複数の貫通電極は、前記凹部の前記底面において、各々が正三角形格子の格子点上に配されていることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記凹部の前記底面に対向する面に一対の素子電極を備え、
前記一対の素子電極の各々は、前記複数の貫通電極と金属接合層を介して接合されていることを特徴とする請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基板は、板状の単結晶シリコンからなる第1の基板と、前記凹部の形状の開口を備えた単結晶シリコンからなる第2の基板とが貼り合わされて形成され、
前記第1の基板の前記第2の基板の側の面には、埋め込み酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記透光部材の熱膨張係数は、3×10-6/℃以上5×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板の上面における前記接合部分以外の前記熱酸化膜の厚みは、0.8μm以上1.2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記貫通孔の内側面に形成された前記熱酸化膜の厚みは、0.8μm以上1.2μm以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記接合部分における前記熱酸化膜の厚みは、前記接合部分以外の前記熱酸化膜の厚みの0.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
発光装置の製造方法であって、
単結晶シリコンからなる第1の基板と、前記第1の基板上に形成された酸化シリコンからなる酸化膜と、前記酸化膜を介して前記第1の基板上に貼り合わされた単結晶シリコンからなる第2の基板を有し、上面に格子状の分割ラインによって画定された複数の素子載置領域を有する複合基板を用意する工程と、
前記複数の素子載置領域の各々において、前記複合基板の下面から前記酸化膜に至る柱状の複数の穴部を前記複数の素子載置領域の各々の1の領域に形成する穴部形成工程と、
前記複数の素子載置領域の各々において、前記複合基板の前記上面から前記酸化膜に至りかつ前記1の領域を含む領域を底面とするように前記複合基板の前記上面に凹状の複数の凹部の各々を形成する凹部形成工程と、
前記複数の凹部の各々の前記底面に露出した前記酸化膜を除去して前記複数の穴部と前記複数の凹部の各々の前記底面とを連通させる酸化膜除去工程と、
前記複合基板の下面、前記複合基板の前記上面及び前記複数の穴部の各々の内側面に0.8μm以上1.2μm以下の熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程と、
前記複数の穴部の各々の内部を充填するように柱状の貫通電極を電界めっきによって形成する貫通電極形成工程と、
前記複数の凹部の各々の前記底面に発光素子を載置するダイボンド工程と、
前記複合基板の前記上面と対向する1の面にフリットガラス層を有するガラスからなる透光部材を前記複数の凹部の各々を覆うように前記複合基板の前記上面に載置し、上方から前記フリットガラス層にレーザを前記複数の凹部の各々の周囲に沿って走査して前記複合基板の前記上面に前記透光部材を接合する透光部材接合工程と、
前記複合基板の前記分割ラインに沿って前記複合基板を切断して個片化するダイシング工程と、を含み、
前記透光部材接合工程の後において、前記複合基板の上面の前記透光部材との接合部分における熱酸化膜の厚みが前記複合基板の上面の前記接合部分以外における熱酸化膜の厚みの0.5倍以上となることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項11】
発光装置の製造方法であって、
単結晶シリコンからなり、凹部を備えた素子搭載領域を有する基板を用意する工程と、
前記基板の上面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程と、
前記凹部内に発光素子を載置するダイボンド工程と、
フリットガラス層を有するガラスからなる透光部材を前記基板の前記上面に前記凹部を覆うように、前記フリットガラス層側が対向するように配置し、前記フリットガラス層を溶融して、前記基板の前記上面に前記透光部材を接合する透光部材接合工程と、
を含み、
前記透光部材接合工程において、前記熱酸化膜と前記フリットガラス層とが相互拡散することにより、前記基板と前記フリットガラス層との接合部には、前記基板の上面から順に前記熱酸化膜、前記熱酸化膜と前記フリットガラス層とが相互に拡散した相互拡散層、前記フリットガラス層が積層され、前記接合部分における前記熱酸化膜の厚みは、前記接合部分以外の前記熱酸化膜の厚みの0.5倍以上であることを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線を照射する発光装置として、紫外線発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の半導体発光素子を光源として用いた発光装置が普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)からなる紫外線発光素子を実装基板に載置し、当該紫外線発光素子を実装基板上においてスペーサとカバーからなるキャップにて気密封止した紫外光を放射する発光装置が開示されている。特許文献1に開示された発光装置において、キャップはガラスであるカバーとシリコンであるスペーサとが陽極接合によって接合されており、当該キャップと窒化アルミニウム(AlN)からなる実装基板とが金錫(AuSn)からなる接合層で共晶接合されることによって、紫外線発光素子が気密に封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-127249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線、特に280nm以下の深紫外線を照射するLEDの材料として一般的に用いられるアルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)は、水や炭化水素由来の酸素又は水素によって高抵抗化等の劣化が発生しやすい。そのため、特許文献1のようなアルミニウム窒化ガリウムを材料としたLED素子を用いた発光装置においては、LED素子を不活性ガス等で気密封止することが重要性である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発光装置においては、実装基板への紫外線発光素子の実装時及び実装基板へのキャップの実装時の2度にわたってAuSnの溶融による共晶接合がなされる。これにより、気密封止時であるキャップ実装時の2度目のAuSn溶融時に、素子の実装時に紫外線発光素子を接合させるために共晶化されたAuSnが再溶融して紫外線発光素子の載置位置ずれ等の製造不良が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、紫外線発光素子を気密封止可能でありかつ製造不良を抑えることが可能な発光装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光装置は、熱酸化膜が形成されている上面を有し、前記上面から凹んだ凹部が形成されている単結晶シリコンからなる基板と、前記凹部の底面に載置された発光素子と、下面にガラスフリット層を有しかつ前記基板の前記上面に前記ガラスフリット層を介して接合されたガラスからなる透光部材と、を含み、前記基板と前記ガラスフリット層との接合部分において、前記基板と前記ガラスフリット層の間には、前記基板の表面から前記熱酸化膜と、前記熱酸化膜とガラスフリット層との反応層とが順に形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、単結晶シリコンからなる第1の基板と、前記第1の基板上に形成された酸化シリコンからなる酸化膜と、前記酸化膜を介して前記第1の基板上に貼り合わされた単結晶シリコンからなる第2の基板を有し、上面に格子状の分割ラインによって画定された複数の素子載置領域を有する複合基板を用意する工程と、前記複数の素子載置領域の各々において、前記複合基板の下面から前記酸化膜に至る柱状の複数の穴部を前記複数の素子載置領域の各々の1の領域に形成する穴部形成工程と、前記複数の素子載置領域の各々において、前記複合基板の上面から前記酸化膜に至りかつ前記1の領域を含む領域を底面とするように前記複合基板の上面に凹状の複数の凹部の各々を形成する凹部形成工程と、前記複数の凹部の各々の前記底面に露出した前記酸化膜を除去して前記複数の穴部と前記複数の凹部の各々の前記底面とを連通させる酸化膜除去工程と、前記複合基板の下面、前記複合基板の上面及び前記複数の穴部の各々の内側面に0.8μm以上1.2μm以下の熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程と、前記複数の穴部の各々の内部を充填するように柱状の貫通電極を電界めっきによって形成する貫通電極形成工程と、前記複数の凹部の各々の前記底面に発光素子を載置するダイボンド工程と、前記複合基板の前記上面と対向する1の面にフリットガラス層を有するガラスからなる透光部材を前記複数の凹部の各々を覆うように前記複合基板の前記上面に載置し、上方から前記フリットガラス層にレーザを前記複数の凹部の各々の周囲に沿って走査して前記複合基板の前記上面に前記透光部材を接合する透光部材接合工程と、前記複合基板の前記分割ラインに沿って前記複合基板を切断して個片化するダイシング工程と、を含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、単結晶シリコンからなり、凹部を備えた素子搭載領域を有する基板を用意する工程と、前記基板の上面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程と、前記凹部内に発光素子を載置するダイボンド工程と、フリットガラス層を有するガラスからなる透光部材を前記基板の前記上面に前記凹部を覆うように、前記フリットガラス層側が対向するように配置し、前記フリットガラス層を溶融して、前記基板の前記上面に前記透光部材を接合する透光部材接合工程と、を含み、前記透光部材接合工程において、前記熱酸化膜と前記フリットガラス層とが相互拡散することにより、前記基板と前記フリットガラス層との接合部には、前記基板の上面から順に前記熱酸化膜、前記熱酸化膜と前記フリットガラス層とが相互に拡散した相互拡散層、前記フリットガラス層が積層されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る発光装置の上面図である。
図2】本発明の実施例1に係る発光装置の断面図である。
図3】本発明の実施例1に係る発光装置の素子載置面の拡大図である。
図4】本発明の実施例1に係る発光装置の複合基板とフリットガラスとの接合領域の断面の拡大図である。
図5】本発明の実施例1に係る発光装置の製造フローを示す図である。
図6】本発明の実施例1に係る発光装置の製造フローを示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図8】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図9】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図10】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図11】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図12】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図13】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図14】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図15】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図16】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図17】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図18】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図19】本発明の実施例2に係る発光装置の断面図である。
図20】本発明の実施例2に係る発光装置の製造フローを示す図である。
図21】本発明の実施例2に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図22】本発明の実施例2に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
図23】本発明の実施例3に係る発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。尚、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。尚、以下の説明において、「材料1/材料2」との記載は、材料1の上に材料2が積層された積層構造を示す。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る発光装置100の上面図を示している。また、図2は、図1の発光装置100のA-A線における断面図を示している。
【0014】
発光装置100は、上面に凹部としてのキャビティを有する複合基板10と、複合基板10のキャビティ底面である素子載置面13に載置された発光素子40と、複合基板10の上面上に複合基板10のキャビティを覆うように形成された透光部材50と、を有する。尚、図1においては、各要素の構造及び位置関係を明確にするために、透光部材50は省略している。
【0015】
複合基板10は、図2に示すように、例えば、主面が(100)の結晶面となる単結晶シリコン(Si)からなる第1の基板11と、第1の基板11の上面上に形成された酸化シリコン(SiO)からなる埋め込み酸化膜(BOX:Buried Oxide)14と、主面が(100)の結晶面となる単結晶シリコン(Si)からなり第1の基板11の上面上に埋め込み酸化膜14を介して貼り合わせた第2の基板12と、を有するSOI(Silicon On Insulator)基板である。
【0016】
第1の基板11は、例えば、約50μmの厚さの基板である。また、第2の基板12は、例えば、約250μmの厚さの基板である。また、埋め込み酸化膜14は、例えば、約1μmの厚さを有し、第1の基板11と第2の基板12とを互いに結着している。
【0017】
開口部15は、複合基板10の上面に第2の基板12の上面から第1の基板11の上面まで貫通するように形成されている。開口部15は、例えば、開口部15の内側面が第2の基板12の(111)の結晶面となるように、第2の基板12の上面から下面に向けて開口面が窄むように形成されている。具体的には、開口部15の内側面は、第1の基板11の上面に対して約54.74°の角度で形成されている。すなわち、第2の基板12は、複合基板10のキャビティの側壁部として機能する。また、第2の基板12の開口部15から露出している第1の基板11の上面は、キャビティ底面である素子載置面13として機能する。
【0018】
上記のように、発光装置100の複合基板10は、板状の単結晶シリコンからなる第1の基板11と、凹部の形状の開口部15を備えた単結晶シリコンからなる第2の基板12とが貼り合わされて形成され、第1の基板11の第2の基板12側の面には、埋め込み酸化膜14が形成されている。
【0019】
複数の貫通孔16は、複合基板10の下面に第1の基板11の下面から上面まで柱状に貫通するように形成されている。また、複数の貫通孔16は、上面視においてキャビティの底面である素子載置面13内の領域内の所定の領域に形成されている。さらに、複数の貫通孔16は、当該所定の領域において規則的に配置されている。
【0020】
第1の基板11に形成されている熱酸化膜17は、第1の基板11の上面並及び下面と複数の貫通孔16の内側面とに形成されている。また、第2の基板12に形成されている熱酸化膜18は、熱酸化膜17と同様に、第2の基板12の上面と開口部15の内側面とに形成されている。
【0021】
すなわち、発光装置100は、熱酸化膜18が形成されている上面を有し、上面から凹んだキャビティが形成されている単結晶シリコンからなる複合基板10を含む。また、複合基板10には、キャビティの底面から複合基板10の裏面まで柱状に貫通しかつ内側面が熱酸化膜17によって覆われている複数の貫通孔16が形成されている。
【0022】
熱酸化膜17及び18の各々は、例えば、単結晶Siである第1の基板11及び第2の基板12に熱酸化処理を施して形成されたSiOからなる酸化膜である。熱酸化膜17及び18の各々は、例えば、約1μmの膜厚で形成されている。熱酸化膜17及び18の各々は、膜厚が0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。透光部材50との接合部における熱酸化膜18について、当該膜厚が薄い場合、後述するように第2の基板12と透光部材50との接合部においてクラック等の発生の可能性が生じるためである。また、貫通孔16の内側面における熱酸化膜17の膜厚も0.8μm以上1.2μm以下で構成されることが好ましい。貫通孔16の内側面における熱酸化膜17は、絶縁確保のためには0.3μm程度で足りるが、0.8μm以上1.2μm以下の厚みで構成することにより、単結晶Siである第1の基板11の面方位による一定方向の応力に起因する割れを抑制することができる。尚、複合基板10の表面は熱酸化膜17及び18によって絶縁されている。
【0023】
また、本実施例においては、発光装置100は、ウェハ状の複合基板10上に格子状に連続して複数の発光装置100を一括的に製造するウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)の態様である。また、ウェハ上で製造された複数の発光装置100をダイシングによって個片化する。すなわち、発光装置100の外側面は、ダイシング切断面である。従って、第1の基板11及び第2の基板12の各々の外側面には、熱酸化膜17及び18は形成されない。尚、複合基板10の外端部の側面には、自然酸化によるSiO膜が形成されているが、本説明においては自然酸化によるSiO膜は図示しない。
【0024】
また、複数の貫通孔16の各々には、当該複数の貫通孔16の各々を充填するように形成された柱状の複数の貫通電極30がそれぞれ形成されている。すなわち、発光装置100は、複数の貫通孔16を充填する柱状の複数の貫通電極30を有する。
【0025】
複数の貫通電極30は、例えば、複合基板10の下面からCu層31、Ni層32及び金属接合層としての金錫合金(以下、AuSnと称する)層33の順で形成されている。
【0026】
Cu層31は、例えば、複合基板10の下面から約49μmの厚さで複数の貫通孔16の各々の内部に充填されている。尚、Cu層31の上面の高さは、素子載置面13の上面高さには達していない。また、Ni層32は、例えば、Cu層31の上面上に約1μmの厚さで複数の貫通孔16の各々の内部に充填されている。また、AuSn層33は、Ni層32の上面上に約5μmの厚さで素子載置面13の上面上より突出するように形成されている。また、AuSn層33は、Ni層32の上面形状に沿った上面形状で形成されている。本実施例においては、図2に示すように、Ni層32は、Ni層32の上面と素子載置面13の上面とが同一高さとなるように形成されている。また、AuSn層33は、AuSn層33が素子載置面13の上面から突出するような断面構造を有する。
【0027】
また、AuSn層33は、加熱溶融されることで発光素子40の底面に形成された金属電極と接合する金属接合層として機能する。また、Ni層32は、AuSn層33が加熱溶融される際にCu層31とAuSn層33とが拡散混合するのを抑制するバリア層として機能する。尚、本実施例においては、Ni層32の上面が素子載置面13の上面と同一高さとなる場合について説明するが、Ni層32の上面の高さ位置はこれに限定されない。例えば、Ni層32の上面は、素子載置面13の上面よりも内側に位置するように形成することができる。Ni層32の上面が素子載置面13の上面より内側に位置することにより、Ni層32の上面が素子載置面13の上面より外側に位置するものと比較して、発光素子との接合安定性を高めることができる。Ni層32の上面が素子載置面13の上面より外側に位置する場合には、Ni層32上と発光素子40の底面に形成された金属電極との間のAuSn層33の膜厚管理など、発光素子との接合安定性の確保が難しくなる可能性があるためである。
【0028】
素子載置面13の上面から突出したAuSn層33は、規則的に配置されているため、発光素子40の底面に形成された金属電極との接合において、規則的な溶融開始点を形成することができる。そのため、規則的な突出のない平坦なAuSn接合層と比較して、意図せずランダム位置にボイドが形成されることを抑制することができ、発光素子40との接合安定性の高い発光装置100を提供することができる。
【0029】
また、複合基板10の下面には、互いに離間して形成された第1の外部電極21と第2の外部電極22とが形成されている。第1の外部電極21及び第2の外部電極22の各々は、例えば、複合基板10の熱酸化膜17側からチタン(Ti)/銅(Cu)/ニッケル(Ni)/金(Au)の順で積層された金属層である。また、第1の外部電極21及び第2の外部電極22の各々は、複合基板10の下面に形成された複数の貫通電極30の各々を覆うように形成されている。また、複数の貫通電極30の各々は、底面において各々のCu層31と第1の外部電極21又は第2の外部電極22とが電気的に接触している。すなわち、発光装置100は、下面の側が図示しない実装基板への実装面となり、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、当該実装基板への実装電極として機能する。
【0030】
複数の貫通電極30の各々は、複数の貫通孔16の各々を充填するように形成されている。また、第1の外部電極21及び第2の外部電極22の各々は、複合基板10の下面において複数の貫通電極30の各々を覆うように形成されている。これにより、複合基板10キャビティは、複数の貫通孔16を介した複合基板10の下面の側に対して気密されている。
【0031】
発光素子40は、素子載置面13の上面上に載置されている。言い換えれば、発光装置100は、キャビティの底面に載置された発光素子40を含む。発光素子40は、例えば、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体層を発光層とする深紫外線の光を放射する発光ダイオードである。具体的には、窒化アルミニウム(AlN)の基板上にn型のAlGaN半導体層、AlGaN活性層及びp型のAlGaN半導体層を積層させ、AlGaN活性層から深紫外線の光を放射する発光素子である。本実施例においては、発光素子40の上面の側からAlN基板、n型のAlGaN半導体層、AlGaN活性層及びp型のAlGaN半導体層が形成されている。また、発光素子40は、n型のAlGaN半導体層と電気的に接続されたアノード電極41及びp型のAlGaN半導体層と電気的に接続されたカソード電極42が下面に形成されたフリップチップ接続の態様の発光素子である。また、AlGaN活性層から放射される深紫外線の光は、AlN基板を透過して発光素子40の上面から放射される。すなわち、発光素子40は、上面が光取り出し面として機能し、下面が複合基板10への実装面として機能する。
【0032】
また、発光素子40は、アノード電極41及びカソード電極42の各々が複数の貫通電極30の各々の上面上に載架されるように接合されている。具体的には、発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42の各々と貫通電極30の各々のAuSn層33とが接合されている。言い換えれば、発光素子40は、キャビティの底面に対向する面に一対の素子電極であるアノード電極41及びカソード電極42を備え、アノード電極41及びカソード電極42は、複数の貫通電極30とAuSn層33を介して接合されている。また、図2に示すように、発光素子40は、アノード電極41が貫通電極30を介して第1の外部電極21と電気的に接続されており、カソード電極42が貫通電極30を介して第2の外部電極22と電気的に接続されている。
【0033】
透光部材50は、複合基板10の上面にフリットガラス層60を介して複合基板10のキャビティを覆うように配されている。言い換えれば、発光装置100は、下面にフリットガラス層60を有しかつ複合基板10の上面にフリットガラス層60を介して接合されたガラスからなる透光部材50を含む。透光部材50は、例えば、SiOを主原料とし、発光素子40から放射される深紫外線を透過する深紫外線透過ガラスである。また、透光部材50の熱膨張係数は、3×10-6/℃以上5×10-6/℃以下である。透光部材50は、単結晶Siである第1の基板11及び第2の基板12の熱膨張係数(3.9×10-6/℃)と整合するように形成されている。また、透光部材50は、フリットガラス層60を介して複合基板10の上面と接合されている。
【0034】
フリットガラス層60は、例えば、粉体状のフリットガラスを含むペーストを原料としている。フリットガラス層60は、原料であるペーストが透光部材50の第2の基板12の上面に対向する面に複合基板10のキャビティの周囲を囲繞するように予め塗布されている。また、ペーストが塗布された透光部材50は、複合基板10との接合前に約500℃で仮焼されている。
【0035】
また、透光部材50及びフリットガラス層60は、複合基板10と同様に、ウェハ状の透光部材50の複合基板10と対向する面に格子状に連続してフリットガラス層60が形成されている。すなわち、透光部材50は、発光装置100の製造時において、複合基板10上に格子状に形成された複数のキャビティを一括的に覆うようにフリットガラス層60を介して接合されている。また、透光部材50は、複合基板10の個片化時に同時に切断される。
【0036】
また、フリットガラス層60は、SiOを主原料としたガラスである。フリットガラス層60は、複合基板10のキャビティの周囲を囲繞するフリットガラス層60を加熱して溶融させることで透光部材50と第2の基板12とを接合している。また、フリットガラス層60は、後述するレーザによって局所的にかつ短時間で加熱することで溶融されて透光部材50と第2の基板12とを接合する。これにより、複合基板10のキャビティは、透光部材50及びフリットガラス層60によって気密に封止された収容空間HSを有する。
【0037】
また、収容空間HSには、紫外光で変質しない封止ガスが充填されている。充填される封止ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。
【0038】
上記の構成の通り、発光装置100は、複合基板10にウェハ状の複合基板10を用いることにより、ウェハ上に発光装置100を格子状に形成するウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)として製造することが可能となる。従来においては、個々のAlNからなる基板を用い、当該基板を1つずつ気密封止する必要があったため、製造時のタクトやコストに難点があった。
【0039】
本実施例においては、発光装置100は、ウェハ状の複合基板10上に格子状にキャビティを形成し、フリットガラス層60を形成した透光部材50で一括に気密封止した後、ダイシングによる個片化をすることが可能となる。これにより、発光装置100は、製造時のタクトやコストを向上させることが可能となる。
【0040】
また、従来においては、発光装置は素子載置部への発光素子の接合及びAlN基板への透光部材の接合の2度にわたってAuSnによる共晶接合を用いて気密封止を行っていた。この際、気密封止時である透光部材の接合時の2度目のAuSn共晶接合時に、発光素子を接合させたAuSnが再溶融して発光素子の載置位置のずれ等の製造不良が発生する可能性があった。
【0041】
本実施例においては、発光装置100は、製造時にAuSnによる共晶接合を行う箇所が発光素子40の接合のみでありかつ、透光部材50をフリットガラス層60のレーザによって局所的にかつ短時間の加熱を行う。これにより、透光部材50と複合基板10との接合時に発光素子40と複数の貫通電極30の各々とのAuSnによる共晶接合層の再溶融を防止することができる。従って、発光装置100は、製造時のAuSnの再溶融による発光素子の載置位置のずれ等の製造不良を防止することが可能となる。
【0042】
図3は、実施例1に係る発光装置100の複数の貫通電極30の構造を示す素子載置面13の上面の拡大図である。尚、図3においては、複数の貫通電極30の構造を及び位置関係を明確にするために、発光素子40、アノード電極41及びカソード電極42を破線にて示している。
【0043】
図3に示す通り、複数の貫通電極30の各々は、発光素子40のアノード電極41又はカソード電極42の各々が載置される領域に複数の貫通電極30が形成されている。複数の貫通電極30の各々は、例えば、直径が30μmの円柱状に形成されている。すなわち、発光素子40は、アノード電極41又はカソード電極42の各々1の電極面に対して、複数の貫通電極30が接合されている。
【0044】
仮に、例えば、素子載置面13に発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42と同等の形状の内部電極を形成する場合、当該内部電極とアノード電極41又はカソード電極42とは互いに1つの面同士でAuSn接合がなされる。この場合、内部電極とアノード電極41又はカソード電極42の接合面において、AuSnの接合層内部に予測できない又は制御できないボイドが発生する可能性がある。このボイドによって、製造後の発光素子の駆動時の発熱時に接合層のクラック等の信頼性に影響を及ぼす恐れがある。
【0045】
本実施例においては、複数の貫通電極30の各々は互いに離間されるように形成されている。そして、規則的に配置された貫通電極30のAuSn層33が素子載置面13から突出していることで、接合工程においてアノード電極41又はカソード電極42に接触することで溶融開始点を規則的に配置することができる。また、発光素子40は、当該複数の貫通電極30の各々の上面を載架するように接合されている。これにより、上記のような予測できない又は制御できないボイドの発生を抑制することができ、発光装置100の製造後に発光素子40と複数の貫通電極30の各々の接合部のボイドによる信頼性への影響を低減することが可能となる。
【0046】
また、図3に示すように、複数の貫通電極30は、キャビティの底面において、各々が正三角形格子の格子点上に配されている。また、複数の貫通電極30の各々は、例えば、直径が30μmの円柱で形成されかつ、隣り合う貫通電極30の中心点同士の距離が60μmとなるように配置されている。上記のような配置で複数の貫通電極30を配することにより、複数の貫通電極30の各々は、1の貫通電極30とその周囲に配置された他の貫通電極30との離間する距離が統一されるように配置されている。
【0047】
仮に、例えば、複数の貫通電極30がマトリクス状に形成されていた場合、上面視において1の貫通電極30と上下左右に配置される他の貫通電極30とは離間距離が等距離となる。しかし、1の貫通電極30の斜め方向に配置される他の貫通電極30との距離は異なる。これにより、発光素子40の接合時や発光素子40の駆動時等の発熱時等に、素子載置面13の上面の面内にかかる応力に偏りが生じ、第1の基板11に微小なクラック等が発生してキャビティ内の気密が破れる可能性がある。
【0048】
本実施例においては、上記に通り、複数の貫通電極30の各々は、正三角形格子の格子点上に配置されている。これにより、発光素子40の接合時や発光素子40の駆動時の発熱時等において、素子載置面13の上面の面内にかかる応力が一様となる故、第1の基板11のクラック等を抑制することが可能となる。
【0049】
また、本実施例のように、複数の貫通電極30の各々を正三角形格子の格子点上に配置することにより、複数の貫通電極30は、マトリクス状に複数の貫通電極30を配置するよりも多い数量の複数の貫通電極30を形成することが可能となる。これにより、発光素子40の駆動時の発熱をより多く実装基板へ放熱することが可能となる。発明者の検証によれば、本実施例のように複数の貫通電極30の各々を正三角形格子の格子点上に配置することにより、マトリクス状に複数の貫通電極30を配置するよりも1.2倍多数量の複数の貫通電極30を配置することが可能となる。
【0050】
図4は、図2に示したフリットガラス層60と第2の基板12の接合部CAの拡大図である。
【0051】
上述の通り、複合基板10は、フリットガラス層60を介して透光部材50と接合されている。また、第2の基板12の上面上には、熱酸化膜18が形成されている。この時、フリットガラス層60と第2の基板12との間には、上方から順にフリットガラス層60と、熱酸化膜18とが相互に拡散した反応層としての相互拡散層70と、残存熱酸化膜18Aと、が形成されている。言い換えれば、発光装置100は、複合基板10とフリットガラス層60との接合部分において、複合基板10とフリットガラス層60の間には、複合基板10の表面から残存熱酸化膜18Aと、熱酸化膜18とフリットガラス層60との相互拡散層70とが順に形成されている。
【0052】
相互拡散層70は、フリットガラス層60を加熱して溶融させることで第2の基板12の上面上に形成された熱酸化膜18のSiOとフリットガラス層60のSiOとが相互拡散をすることで形成される。すなわち、フリットガラス層60の接合部においては、第2の基板12の上面から順に残存熱酸化膜18A、相互拡散層70、フリットガラス層60が積層された構造となる。また、熱酸化膜18は、熱酸化処理において、熱酸化膜18の膜厚(d1)が0.8μm以上1.2μm以下で形成されている。
【0053】
また、熱酸化膜18の膜厚は、残存熱酸化膜18Aが形成されるよう、接合時に形成される相互拡散層70の膜厚を考慮して設計される。残存熱酸化膜18Aが形成されることにより、相互拡散層70の下端近傍にクラックが生じるのを抑制することができるためである。熱酸化膜18の膜厚を0.8μm以上1.2μm以下とすることにより、熱処理後の残存熱酸化膜18Aの形成をより確実なものとすることができる。
【0054】
尚、残存熱酸化膜18Aの膜厚(d2)は、熱酸化膜18の膜厚(d1)の0.5倍以上の膜厚が残存することが好ましい。すなわち、残存熱酸化膜18Aの膜厚(d2)は、0.4μm以上0.6μm以下の膜厚で残存することが好ましい。残存熱酸化膜18Aの膜厚(d2)が薄い場合、あるいは、残存熱酸化膜18Aが形成されない場合、相互拡散層70の下端近傍にクラックが生じ、収容空間HSの気密封止が破られる可能性があるためである。
【0055】
具体的には、熱酸化膜18は、熱酸化処理によって単結晶Siである第2の基板12の表面から酸素が拡散されSiO膜として形成される。しかし、熱酸化膜18は、熱酸化膜18の上面から第2の基板12の上面に至るまで一様にSiOとして形成されていない。具体的には、第2の基板12の上面から上方に向けて徐々にSiに対するSiOの存在比が上昇しかつ、Si結晶性も失われていく。すなわち、第2の基板12の表面近傍の熱酸化膜18は、Siの結晶性を一部有しかつSiとSiOとが混在している。
【0056】
また、熱酸化膜18とフリットガラス層60との相互拡散層70は、アモルファス構造のSiOである。すなわち、残存熱酸化膜18Aの膜厚(d2)が薄い場合、残存熱酸化膜18Aの上端においては、Siとその結晶性を一部有する可能性がある。
【0057】
仮に、アモルファス構造を有するSiO層とSiとその結晶性を一部含むSiO層を接合させた場合、その接合界面において原子の配列が急激に変化する。この場合、当該接合界面の接合強度が低いことが予想される。これにより、発光素子40の駆動時の発熱等により当該接合界面に応力が生じた場合、当該接合界面にクラックが生じて収容空間HSの気密封止が破られる可能性がある。これに対して、十分にアモルファス構造化させたSiO層同士を接合させた場合、両者とも結晶性は持たないため、原子配列の急激な変化は生じない故、発熱時等に応力が生じにくい。
【0058】
よって、残存熱酸化膜18Aは、十分にアモルファス構造となったSiOとなる以上の膜厚と推測される0.4μm以上0.6μm以下の膜厚で残存することが好ましい。これにより、複合基板10と透光部材50とは、フリットガラス層60を介して高い接合強度で接合することが可能となる。
【0059】
すなわち、残存熱酸化膜18Aは、第2の基板12とフリットガラス層60とを接合させる際の接合強度を向上させるバッファ層として機能する。尚、残存熱酸化膜18Aの膜厚(d2)は、十分にアモルファス構造となったSiOとなる以上の膜厚であればよい。
【0060】
上記のように、フリットガラス層60と第2の基板12の接合部において、第2の基板12の上面から残存熱酸化膜18A、相互拡散層70、フリットガラス層60の順で層が形成されることにより、収容空間HSの高い気密性を保持することが可能となる。発明者らの検証によれば、発光装置100の収容空間HSは、日本産業規格JIS-Z2331にて規定されたヘリウム(He)リーク試験において、従来製品であるAlN基板と、AlN基板と透光部材をAuSnにて接合させた製品と同等以上の気密性を得ることができた。
【0061】
次に、図5、6及び図7~17を用いて、本願の実施例1に係る発光装置100の製造手順について説明する。
【0062】
図5及び図6は、本発明の実施例1に係る発光装置100の製造フローを示す図である。また、図7~17は、図5及び図6に示す製造手順の各ステップにおける発光装置100の断面図を示す。図7~17においては、図2と同様に、図1に示したA-A線における断面を用いて説明する。尚、本実施例においては、上述の通り、発光装置100は、ウェハ状の複合基板10上に発光装置100を格子状に形成するWLPである。よって、複合基板10は、ウェハ状の複合基板10上に格子状の所定の分割ラインCLによって画定された複数の素子載置領域R1を有する。すなわち、以下に説明する各ステップの処理は、ウェハ状の複合基板10上に格子状に連続してなされている。尚、以下の各ステップの処理の説明においては、基本的に1の素子載置領域R1に対して処理を行う場合にて説明する。
【0063】
まず、複合基板を用意する工程として、図7に示すように、単結晶Siからなる第1の基板11にSiOからなる埋め込み酸化膜14を介して単結晶Siからなる第2の基板12が貼り合わされた複合基板10を準備する(ステップS101)。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、単結晶シリコンからなる第1の基板11と、第1の基板11上に形成された酸化シリコンからなる埋め込み酸化膜14と、埋め込み酸化膜14を介して第1の基板11上に貼り合わされた単結晶シリコンからなる第2の基板12を有し、上面に格子状の分割ラインCLによって画定された複数の素子載置領域R1を有する複合基板10を用意する工程を含む。尚、第1の基板11の上面及び第2の基板12の下面には、自然酸化によるSiOが形成されているが、本説明において自然酸化膜は図示しない。
【0064】
次に、穴部形成工程として、図8に示すように、複合基板10の下面の側からエッチングを行い、以後のステップで複数の貫通孔16となる柱状の複数の穴部16Aを形成する(ステップS102)。当該複数の穴部16Aの各々は、ボッシュプロセスによる深掘り反応性イオンエッチング(DREI)を用いて形成される。また、複数の穴部16Aの各々のエッチングは、第1の基板11の下面から埋め込み酸化膜14の下面に到達するまで行われる。この際、埋め込み酸化膜14はエッチストッパとして機能する。また、複数の穴部16Aの各々は、後述する素子載置工程において発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42に対応する領域の各々に形成される。尚、図示していないが、本ステップにおいては、複合基板10の下面へのフォトレジストの塗布、当該フォトレジストに複数の穴部16Aの各々の領域を除去する露光及び当該領域のフォトレジストの除去、フォトレジスト開口部分の第1の基板11のエッチング及びフォトレジストの除去工程を含む。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複数の素子載置領域R1の各々において、複合基板10の下面から埋め込み酸化膜14に至る柱状の複数の穴部16Aを複数の素子載置領域R1の各々の発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42に対応する領域に形成する穴部形成工程を含む。
【0065】
次に、図9に示すように、複合基板10の下面及び複数の穴部16Aの各々の内側面に熱酸化膜17Bを形成し、複合基板10の上面に熱酸化膜18Bを形成する(ステップS103)。本ステップで形成する熱酸化膜17B及び18Bは、次ステップのエッチングの際の溝部側面のエッチストッパを形成するものである。熱酸化膜17B及び18Bは、水蒸気雰囲気で1100℃で7時間以上加熱するウェット酸化によって形成される。本ステップで形成される熱酸化膜17B及び18Bは、約1μmの膜厚で形成される。尚、上記の通り、熱酸化膜17B及び18Bは、次ステップのエッチングの際のエッチストッパとして機能する。従って、本ステップにて形成される熱酸化膜17B及び18Bの膜厚はこれに限定されない。具体的には、次ステップにおいてエッチングの際にエッチストッパとして機能する膜厚で形成されていればよい。
【0066】
次に、凹部形成工程として、図10に示すように、複合基板10の上面の側からエッチングを行い、複合基板10のキャビティとなる凹部を形成する(ステップS104)。凹部の形成は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用いたウェットエッチングによって行われる。また、凹部のエッチングは、第2の基板12の上面から埋め込み酸化膜14の上面に到達するまで行われる。また、凹部の形成は、複数の素子載置領域R1の各々において、ステップS102で形成された複数の穴部16Aの各々が形成された領域を含む領域を底面として形成される。また、ステップS102の説明と同様に、図示していないが、本ステップは、第2の基板12の上面へのフォトレジストの塗布、当該フォトレジストにそれぞれの凹部の領域を除去する露光及び当該領域のフォトレジストの除去、フォトレジスト開口部分の熱酸化膜18B及び第2の基板12のエッチング及びフォトレジストの除去工程を含む。これにより、第2の基板12の上面には、側面に単結晶Siの(111)の結晶面が露出した開口部15が形成される。尚、ステップS102と同様に、凹部形成時において埋め込み酸化膜14はエッチストッパとして機能する。すなわち、凹部底面には埋め込み酸化膜14が露出している。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複数の素子載置領域R1の各々において、複合基板10の上面から埋め込み酸化膜14に至りかつ発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42に対応する領域を含む領域を底面とするように複合基板10の上面に凹状の複数の凹部の各々を形成する凹部形成工程を含む。
【0067】
次に、酸化膜除去工程として、図11に示すように、熱酸化膜17B並びに18B及び凹部底面に露出している埋め込み酸化膜14を除去する(ステップS105)。これらの酸化膜の除去は、バッファードフッ酸(BHF)によって除去される。これにより、凹部底面に露出した埋め込み酸化膜14が除去されてステップS102で形成した複数の穴部16Aの各々が当該凹部底面まで連通することにより複数の貫通孔16となる。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複数の凹部の各々の底面に露出した埋め込み酸化膜14を除去して複数の穴部16Aと複数の凹部の各々の底面とを連通させる酸化膜除去工程を含む。
【0068】
次に、図12に示すように、熱酸化膜17B並びに18Bが除去された複合基板10のSi露出面に熱酸化膜17及び18を形成する(ステップS106)。熱酸化膜17は、第1の基板11の下面、凹部底面に露出した第1の基板11の上面及び複数の貫通孔16の各々の内側面に形成される。また、熱酸化膜18は、第2の基板12の上面及び凹部の内側面に形成される。
【0069】
熱酸化膜17及び18は、ステップS103の手法と同様に、水蒸気雰囲気で1100℃で7時間以上加熱するウェット酸化によって形成される。この時形成される熱酸化膜17及び18は、上述の通り、0.8μm以上1.2μm以下の膜厚で形成される。また、開口部15の側面上に熱酸化膜18が形成されることにより、開口部15に囲まれた空間が複合基板10のキャビティとして機能する。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複合基板10を水蒸気雰囲気で1100℃で7時間以上加熱し、複合基板10の下面、複合基板10の上面及び複数の貫通孔16の各々の内側面に熱酸化膜17及び18を形成する熱酸化膜形成工程を含む。
【0070】
次に、貫通電極形成工程として、図13に示すように、複数の貫通孔16の各々の内部にCu層31、Ni層32及びAuSn層33からなる複数の貫通電極30を形成する(ステップS108)。複数の貫通電極30の形成は、まず、複合基板10の下面の側から複合基板10の下面及び複数の貫通孔16の各々の内側面の一部にスパッタ成膜によりチタン(Ti)/Cuの順に積層したシード層を成膜する。尚、本説明においては、シード層は図示しない。その後、複合基板10の下面をマスクし、複数の貫通孔16の各々の内部に複合基板10の下面からCu、Ni、AuSnの順に電解めっきによってCu層31、Ni層32及びAuSn層33を形成する。
【0071】
複数の貫通電極30の各々は、上述の通り、Cu層31が第1の基板11の下面から約49μmの厚さで複数の貫通孔16の各々の内部に充填され、Ni層32がCu層31の上面上に約1μmの厚さで複数の貫通孔16の各々の内部に充填される。また、本実施例においては、Ni層32の上面が第1の基板11の上面に形成された熱酸化膜17の上面と同一高さとなるように形成され、AuSn層33が当該熱酸化膜17の上面から突出するように約5μmの厚さで形成される。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複数の貫通孔16の各々の内部を充填するように柱状の複数の貫通電極30を電界めっきによって形成する貫通電極形成工程を含む。尚、本実施例においては、Ni層32が第1の基板11の上面に形成された熱酸化膜17の上面と同一高さとなる場合について説明したが、Ni層32の高さ位置はこれに限定されない。
【0072】
また、ステップS106及びS107において、第1の基板11の上面の露出面に熱酸化膜17及び複数の貫通電極30の各々が形成されることにより、第1の基板11の上面の露出面が素子載置面13として機能する。その後、第1の基板11の下面のマスクを除去することにより、第1の基板11の下面に複数の貫通電極30の各々のCu層31が露出する。
【0073】
次に、図14に示すように、複合基板10の下面に第1の外部電極21及び第2の外部電極22を形成する(ステップS108)。第1の外部電極21及び第2の外部電極22の形成は、複合基板10の下面の各々の外部電極を除く部分をレジストによりマスクした後に、複合基板10の下面にNi/Auの順で電界めっきによって積層されて形成される。また、電界めっきによって形成される各々の外部電極は、ステップS108で形成した図示しないシード層の下面及び第1の基板11の下面に露出した貫通電極30のCu層31の下面に形成される。この時、各々の外部電極のNi層が約3μmの厚さで形成され、Au層が当該Ni層の下面を覆うように0.2μmの厚さで形成される。尚、シード層はTi/Cuの順に積層されたスパッタ膜で構成されている。
【0074】
その後、第1の基板11の下面のレジストを除去し、さらに各々の外部電極を除く部分に残存したシード層をエッチングする。これにより、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は電気的に絶縁される。
【0075】
次に、ダイボンド工程として、図15に示すように、複合基板10をダイボンド装置にセットして素子載置面13に発光素子40を載置する(ステップS109)。発光素子40の載置は、第1の外部電極21に電気的に接続した貫通電極30とアノード電極41が対応しかつ、第2の外部電極22に電気的に接続した貫通電極30とカソード電極42が対応するような位置に位置合わせを行い、発光素子40を載置する。その後、発光素子40が載置された複合基板10を窒素(N)雰囲気下で340℃で30秒加熱し、貫通電極30のAuSn層33を最下層がAuで構成される発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42と共晶接合させる。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複数のキャビティの各々の底面である素子載置面13の各々に発光素子40を載置するダイボンド工程を含む。
【0076】
次に、図16に示すように、第2の基板12の上面上に、第2の基板12の上面に対向する面に予めフリットガラス層60が形成された透光部材50を複数の素子載置領域R1の各々のキャビティを覆うように載置する(ステップS120)。透光部材50は、複合基板10と同様にフリットガラス層60の原料ペーストが格子状にプリントされている。また、フリットガラス層60の原料ペーストが塗布された透光部材50は、予め酸素(O2)雰囲気下で約500℃の温度で1時間仮焼されている。また、フリットガラス層60の原料ペーストは、第2の基板12の上面位置に対応する位置であって、キャビティを囲繞するようにかつ、複合基板10の分割ラインCLに重複しないサイズとなるように塗布されている。また、透光部材50は、上記と同様に、フリットガラス層60が第2の基板12の上面位置に対応する位置であって、キャビティを囲繞するようにかつ、複合基板10の分割ラインCLに重複しない位置に位置合わせされて載置される。
【0077】
次に、図17に示すように、透光部材50が載置された複合基板10に上方からレーザLBを照射し、フリットガラス層60を溶融させて複合基板10と透光部材50とを接合させる(ステップS121)。レーザLBは、例えば、近赤外線の波長を有するレーザ光である。レーザLBをN雰囲気下でレーザ照射部のフリットガラス層60を局所加熱し溶融させることで複合基板10と接合させる。この時、図4で説明した通り、溶融したフリットガラス層60と第2の基板12上面上の熱酸化膜18とが相互拡散して相互拡散層70を形成する。これにより、キャビティ内部が不活性ガスであるNで充填されかつ気密に封止された収容空間HSが形成される。尚、透光部材50の接合において、熱酸化膜18とフリットガラス層60との相互拡散によっても、残存熱酸化膜18Aが形成されるよう、熱酸化膜18の膜厚、接合時の各種条件を設定する。つまり、第2の基板12とフリットガラス層60との接合部は、第2の基板12の上面から順に残存熱酸化膜18A、相互拡散層70、フリットガラス層60が積層された構造となる。
【0078】
また、レーザLBは、キャビティを囲繞するフリットガラス層60をキャビティの周囲に沿って走査する。そのレーザLBの走査時間は、1の発光装置100あたり約2~3秒程度である。このように、レーザLBによってフリットガラス層60の接合部が局所的にかつ短時間で加熱されてフリットガラス層60が接合されることにより、貫通電極30のAuSn層33の過加熱による再溶融を防止することが可能となる。
【0079】
また、キャビティ内部はNの気体で満たされた空間であり、熱伝導率は単結晶Siを主材料とする複合基板10と比較して非常に小さい。すなわち、レーザLBの照射部の近傍のNが蓄熱することにより、レーザLBの照射部はフリットガラス層60の溶融温度まで到達する。加えて、素子載置面13の熱は単結晶Siの高い熱伝導率により複合基板10の下面の側へと放熱され、AuSn層33の過加熱をさらに防止することが可能となる。発明者らの検証によれば、レーザLB照射時の素子載置面13は250℃以下であった。
【0080】
上記のステップS120及びS121が、透光部材接合工程として処理される。すなわち、言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複合基板10の上面と対向する1の面にフリットガラス層60を有するガラスからなる透光部材50を複数のキャビティの各々を覆うように複合基板10の上面に載置し、上方からフリットガラス層60にレーザLBを複数のキャビティの各々の周囲に沿って走査して複合基板10の上面に透光部材50を接合する透光部材接合工程を含む。
【0081】
次に、ダイシング工程として、図18に示すように、透光部材50が接合された複合基板10をダイサー装置にセットし、分割ラインCLに沿って複合基板10及び透光部材50を切断して個片化する(ステップS122)。これにより、発光装置100は、個々の単位にダイシングされ、複数の発光装置100が製造される。言い換えれば、発光装置100の製造方法は、複合基板10の分割ラインCLに沿って複合基板10を切断して個片化するダイシング工程を含む。
【0082】
本実施例によれば、発光装置100は、単結晶Siからなる第1の基板11と単結晶Siからなる第2の基板12とが埋め込み酸化膜14を介して貼り合わされたSOI基板からなる複合基板10を有する。また、発光装置100は、第2の基板12の上面から第1の基板11の上面まで至る凹部であるキャビティを有する。また、発光装置100は、キャビティ底面である素子載置面13において第1の基板11を貫通するように形成された複数の貫通電極30を有する。また、発光装置100は、複合基板10の表面に0.8μm以上1.2μm以下の範囲の膜厚を有する熱酸化膜17及び18を有する。また、発光装置100は、第2の基板12の上面上にキャビティを覆うようにフリットガラス層60を介して接合された透光部材50を有する。また、発光装置100は、第2の基板12とフリットガラス層60との接合部分において、第2の基板12の表面から残存熱酸化膜18Aと、熱酸化膜18とフリットガラス層60との相互拡散層70とが順に形成されている。また、また、発光装置100は、第2の基板12とフリットガラス層60との接合部分において、残存熱酸化膜18Aが熱酸化膜18の0.5倍以上で残存する。
【0083】
発光装置100は、上記の構成を有することにより、透光部材50とフリットガラス層60とが複合基板10のキャビティを気密に封止することが可能となる。
【0084】
また、熱酸化膜18とフリットガラス層60との相互拡散層70は、レーザLBを接合部分に照射して局所的にかつ短時間で加熱して形成する。これにより、レーザLB照射による複合基板10のキャビティの気密封止時に発光素子40と貫通電極30とを接合するAuSn層33の再溶融を防止することが可能となる。
【0085】
すなわち、発光装置100は、発光素子40を気密封止可能でありかつ製造不良を抑えることが可能な発光装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0086】
また、本実施例によれば、発光装置100は、素子載置面13に互いに離間した複数の貫通電極30を有する。また、発光素子40は、複数の貫通電極30の各々の上面を載架するように接合されている。また、複数の貫通電極30の各々は、正三角形格子の格子点上にキャビティ底面の領域に配置されている。
【0087】
発光装置100は、上記の構成を有することにより、発光素子40のアノード電極41又はカソード電極42の各々と複数の貫通電極30との接合界面において、ボイドの発生を抑制することができ、製造後のボイドによる信頼性への影響を低減することが可能となる。
【0088】
また、発光装置100は、上記の構成を有することにより、1の貫通電極30とその周囲に配置された他の貫通電極30との離間する距離が統一されるように配置されている。これにより、発光素子40の発熱時等において、素子載置面13の上面の面内にかかる応力が一様となる故、第1の基板11のクラック等を抑制することが可能となる。
【0089】
また、発光装置100は、上記の構成を有することにより、マトリクス状に複数の貫通電極30を配置するよりも多く複数の貫通電極30を形成することができ、発光素子40の駆動時における発熱をより多く実装基板へ放熱することが可能となる。
【0090】
尚、本実施例においては、発光素子40が複数の貫通電極30のそれぞれの上面を載架するように接合されている場合について説明した。しかし、発光素子40の接合方法はこれに限定されない。具体的には、複数の貫通電極30を覆うように内部電極を形成し、当該内部電極の上面上に発光素子40を接合するようにしてもよい。
【実施例2】
【0091】
図19は、実施例2に係る発光装置100Aの断面図を示している。図19に示す断面図は、図2と同様に、図1のA-A線に相当する位置における断面を示している。
【0092】
発光装置100Aは、実施例1の発光装置100と基本的に同様の構成であり、同様の外観を有する。しかし、発光装置100Aは、複数の貫通電極30AがCuのみからなりかつ、素子載置面13の上面上に複数の貫通電極30Aを覆うように形成された第1の内部電極80及び第2の内部電極81が形成されている点において発光装置100と異なる。
【0093】
複数の貫通電極30Aの各々は、上記の通り、Cuからなり、第1の基板11の下面から素子載置面13の上面まで貫通孔16を充填するように形成されている。
【0094】
また、素子載置面13の上面には、第1の外部電極21に接続されている複数の貫通電極30Aの各々と第1の基板11上に形成された熱酸化膜17を覆うように第1の内部電極80が形成されている。第1の内部電極80は、Ti層/Cu層/Ni層からなる複合金属層80Aと、複合金属層80Aの上面上に形成されたAuSnからなる接合金属層80Bと、からなる。
【0095】
また、素子載置面13の上面には、第2の外部電極22に接続されている複数の貫通電極30Aと第1の基板11上に形成された熱酸化膜17を覆うように第2の内部電極81が形成されている。第2の内部電極81は、Ti層/Cu層/Ni層からなる複合金属層81Aと、複合金属層81Aの上面上に形成されたAuSnからなる接合金属層81Bと、からなる。
【0096】
また、第1の内部電極80は、上面視において発光素子40のアノード電極41と同等の形状で形成されている。また、第2の内部電極81は、上面視において発光素子40のカソード電極42と同等の形状で形成されている。
【0097】
上記の通り、第1の基板11の上面において、第1の内部電極80及び第2の内部電極81の各々が複数の貫通電極30Aの各々を覆うように形成されている。また、第1の基板11の下面において、第1の外部電極21及び第2の外部電極22の各々が複数の貫通電極30Aの各々を覆うように形成されている。これにより、発光装置100Aは、より気密性の高い収容空間HSを形成することが可能となる。
【0098】
また、上記の通り、第1の内部電極80及び第2の内部電極81が発光素子40のアノード電極41及びカソード電極42のそれぞれと同等の上面形状で形成されている。これにより、発光装置100Aにおいて、発光素子40の接合時に各々の内部電極の接合金属層80B及び81Bが溶融した際に、発光素子40の内部電極の各々の位置に対するセルフアライメントが可能となる。
【0099】
また、フリットガラス層60の接合部の構造及び接合方法は実施例1の発光装置100と同様である故、フリットガラス層60の接合部の気密封止については実施例1の発光装置100と同様の効果が得られる。
【0100】
また、本実施例においても、AuSnからなる接合金属層80B及び81B上面には、規則的に配置された貫通電極30Aに起因した規則的な微細凹凸が形成されているため、接合工程において、規則的に配置された凸部がアノード電極41とカソード電極42と接触して溶融開始点を形成することができる。そのため、発光素子40との接合部における予測できない又は制御できないボイドの発生を抑制することができる。
【0101】
図20は、実施例2に係る発光装置100Aの製造フローを示す図である。また、図21及び図22は、図20に示す製造手順の各ステップにおける発光装置100Aの断面図を示す。図21及び図22においては、図19と同様に、図1に示したA-A線に相当する位置の断面を用いて説明する。尚、本実施例においては、実施例1と同様に、以下に説明する各ステップの処理がウェハ状の複合基板10上に格子状に連続してなされている。
【0102】
尚、図20に示す製造フロー以前の工程については、図5に示した製造フローと同様の処理がなされている故、説明は割愛する。また、図20に示す製造フローのステップS209~S213は、図6に示す製造フローのステップS108~S112と同様の手順である故、説明は割愛する。
【0103】
図21に示すように、図5に示したステップS106の処理が完了し、熱酸化膜17及び熱酸化膜18が形成された複合基板10の複数の貫通孔16の各々の内部に複数の貫通電極30Aの各々を形成する(ステップS207)。複数の貫通電極30Aの各々は、上述の通りCuからなる。複数の貫通電極30Aを形成は、図6で説明したステップS107と同様に、第1の基板11の下面及び貫通孔16の側面の一部にシード層を成膜し、第1の基板11の下面にマスクをした後に電界めっきによって複数の貫通電極30Aを形成する。ただし、ステップS107と異なり、電界めっきによってCuを第1の基板11の下面から上面に至るまで充填するように形成される。その後、第1の基板11の下面のマスクを除去することにより、第1の基板11の下面に複数の貫通電極30Aが露出する。
【0104】
次に、図22に示すように、第1の基板11の上面に複数の貫通電極30Aの各々を覆うように第1の内部電極80及び第2の内部電極81を形成する(ステップS208)。第1の内部電極80及び第2の内部電極81の形成は、まず、第1の基板11の上面の側からキャビティ底面部を覆うようにスパッタ成膜によりTi/Cuの順に積層したシード層を成膜する。尚、本説明においては、シード層は図示しない。次に、複合基板10の上面の各々の内部電極を除く部分をレジストによりマスクした後に、第1の基板11の上面に複合金属層80A及び81AのNi層と、接合金属層80B及び81BのAuSn層とがそれぞれ電界めっきによって積層されて第1の内部電極80及び第2の内部電極81は形成される。
【0105】
複合金属層80A及び81AのNi層は、約1μmの厚さで形成される。接合金属層80B及び81Bは、それぞれ複合金属層80A及び81AのNi層の各々の上面上に約5μmの厚さで形成される。その後、複合基板10の上面のレジストを除去し、さらに各々の内部電極を除く部分に残存したシード層をエッチングする。これにより、第1の内部電極80及び第2の内部電極81は電気的に絶縁される。
【0106】
この後、ステップS209以降(図6のステップS108以降に相当)の工程を実施し、実施例2の発光装置100Aを製造する。
【0107】
尚、実施例1及び実施例2においては、複合基板10として、第1の基板11と第2の基板12とを埋め込み酸化膜14を介して貼り合わせたSOI基板を用いる場合について説明した。しかし、複合基板10は、SOI基板に限定されない。具体的には、単層の単結晶SiからなるSiウェハを用いてもよい。
【実施例3】
【0108】
図23は、実施例3に係る発光装置100Bの断面図を示している。図19に示す断面図は、図2と同様に、図1のA-A線に相当する位置における断面を示している。
【0109】
発光装置100Bは、実施例1の発光装置100と基本的に同様の構成であり、ほぼ同様の外観を有する。しかし、発光装置100Bは、基板10Aが単層の単結晶SiからなるSi基板11Aと、Si基板11Aの上面、下面及び複数の貫通孔16の各々の内側面を覆うように形成された熱酸化膜17Cと、からなる点において発光装置100と異なる。
【0110】
尚、発光装置100Bにおいて、複数の貫通孔16の各々の内部に形成される貫通電極30の構造は発光装置100と同様である。また、基板10Aと透光部材50の接合部分においてフリットガラス層60の接合部の構造及び接合方法は発光装置100と同様である。従って、収容空間HSの気密封止については実施例1の発光装置100と同様の効果が得られる。
【0111】
また、本実施例3の発光装置100Bの製造方法は、実施例1の発光装置100の製造方法と同様である。図5に示した製造方法のステップS102及びS104の処理において、本実施例3ではエッチストッパとして機能する埋め込み酸化膜14がないため、当該ステップにおけるエッチング処理の加工終点をSi加工量で制御し処理を行う。
【0112】
すなわち、実施例3の発光装置100Bの製造方法は、単結晶シリコンからなり、凹部を備えた素子搭載領域を有する基板10Aを用意する工程と、基板10Aの上面に熱酸化膜17Cを形成する熱酸化膜形成工程と、凹部内に発光素子40を載置するダイボンド工程と、フリットガラス層60を有するガラスからなる透光部材50を基板10Aの上面に凹部を覆うように、フリットガラス層60側が対向するように配置し、フリットガラス層60を溶融して、基板10Aの上面に透光部材50を接合する透光部材接合工程と、を含み、透光部材接合工程において、熱酸化膜17Cとフリットガラス層60とが相互拡散することにより、基板10Aとフリットガラス層60との接合部には、基板10Aの上面から順に熱酸化膜17C、熱酸化膜17Cとフリットガラス層60とが相互に拡散した相互拡散層70、フリットガラス層60が積層される。
【0113】
実施例3によれば、基板10Aに単層の単結晶SiからなるSi基板11Aを用いることにより、実施例1のSOI基板を用意することに比較して製造コストを低減することが可能となる。
【0114】
尚、上記に示した実施例の各々は、一例に過ぎない。例えば、上記した種々の実施例は組み合わせることができる。例えば、実施例3の発光装置100Bが発光素子40の載置時にセルフアライメントを行うことができるように、発光装置100Aの複数の貫通電極30A及び第1の内部電極80並びに第2の内部電極81を有していてもよい。
【0115】
また、上述した実施例の各々における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び製造される発光装置に応じて、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0116】
100 発光装置
10 基板
11 第1の基板
12 第2の基板
13 素子載置面
14 埋め込み酸化膜
15 開口部
16 貫通孔
17、18 熱酸化膜
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
30 貫通電極
31 Cu層
32 Ni層
33 AuSn層
40 発光素子
41 アノード電極
42 カソード電極
50 透光部材
60 フリットガラス層
70 相互拡散層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23