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特許7576422発泡性塩化ビニル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体、および発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発泡性塩化ビニル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体、および発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20241024BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20241024BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241024BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 27/22 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241024BHJP
   B29K 27/06 20060101ALN20241024BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C08J9/16 CEV
B29B9/06
B29C44/00 G
B29C44/36
C08K5/01
C08L23/28
C08L25/12
C08L27/06
C08L27/22
C08L33/04
B29K27:06
B29K105:04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020162885
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055453
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】根岩 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】沓水 竜太
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特公昭38-015232(JP,B1)
【文献】特公昭42-024073(JP,B1)
【文献】特開平02-182735(JP,A)
【文献】特開昭58-087135(JP,A)
【文献】特開平07-316335(JP,A)
【文献】特開昭57-137328(JP,A)
【文献】特開昭57-036631(JP,A)
【文献】特開2018-172543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
B29C67/20
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00-9/42
F03D 1/00-80/80
B29B 9/06
C08K 5/01
C08L 23/28
C08L 25/12
C08L 27/06
C08L 27/22
C08L 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす、発泡剤を含有する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子:
(a)前記発泡剤として炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤を含む
(b)前記発泡剤の含有量が発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100重量%において1~30重量%である
(c)発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を水銀圧入法で測定した直径70~500nmの細孔のlog微分細孔容積の和が0.300ml/g以下であ
(d)塩素化塩化ビニル樹脂を含む
【請求項2】
前記炭化水素系発泡剤および前記ケトン系発泡剤の総量を100重量%とした場合に、前記ケトン系発泡剤の比率が4~70重量%である、請求項1に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項3】
前記ケトン系発泡剤の沸点が130℃以下である、請求項1又は2に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項4】
前記炭化水素系発泡剤が、炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項5】
芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリルを構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂および塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子または請求項に記載の予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体。
【請求項8】
次の(A)、(B)、(C)及び(D)を満たす、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法:
(A)塩化ビニル系樹脂組成物と発泡剤とを溶融混錬した発泡剤含有塩化ビニル系樹脂溶融物を複数の孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行う工程を含む、
(B)前記発泡剤が炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤を含む、
(C)前記発泡剤の添加量が前記塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対して1~30重量部である
(D)前記発泡性塩化ビニル系樹脂粒子が、塩素化塩化ビニル樹脂を含む。
【請求項9】
前記炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤の比率が96:4~30:70(重量%)である、請求項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体、および発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、緩衝性等を有し、住宅等の断熱材や配管等の保温材として従来より広く使用されている。その中でも、発泡剤を含有した発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、形状の自由度が高く、押出発泡法等で得られるボード形状の様な単純形状の発泡体では施工困難な部位にも適用できる断熱材として、広く活用されている。スチレン系樹脂は燃えやすい樹脂であるところ、スチレン系樹脂発泡成形体には難燃剤が添加され、ある程度の難燃性能は確保されている。しかし、近年の工事現場での火災事故や、高層マンションでの火災事例などから、建築用の断熱材には、従来よりも高い難燃性能が求められつつある。
【0003】
難燃性能に優れる発泡体としては、難燃性能に優れる塩化ビニル系樹脂あるいは塩素化塩化ビニル樹脂を基材樹脂とした樹脂発泡成形体が挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、塩素化塩化ビニル樹脂と相溶性を呈する溶剤と発泡剤とを含有してなる塩素化塩化ビニル樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭64―132号
【文献】特開平2-182735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示される塩素化塩化ビニル樹脂予備発泡粒子は、難燃性能に優れ、かつ、形状自由度のある発泡成形体を得られるものの、発泡効率には改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、優れた発泡効率を有する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の発泡剤を含有し、かつ特定構造を有する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子が発泡効率に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]次の(a)、(b)及び(c)を満たす、発泡剤を含有する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子:
(a)前記発泡剤として炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤を含む
(b)前記発泡剤の含有量が発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100重量%において1~30重量%である
(c)発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を水銀圧入法で測定した直径70~500nmの細孔のlog微分細孔容積の和が0.300ml/g以下である。
[2]前記炭化水素系発泡剤および前記ケトン系発泡剤の総量を100重量%とした場合に、前記ケトン系発泡剤の比率が4~70重量%である、上記[1]に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[3]前記ケトン系発泡剤の沸点が130℃以下である、上記[1]又は[2]に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[4]前記炭化水素系発泡剤が、炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む、上記[1]~[3]いずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[5]塩素化塩化ビニル樹脂を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[6]芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリルを構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂および塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の予備発泡粒子。
[8]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子または上記[7]に記載の予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体。
[9]次の(A)、(B)及び(C)を満たす、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法:
(A)塩化ビニル系樹脂組成物と発泡剤とを溶融混錬した発泡剤含有塩化ビニル系樹脂溶融物を複数の孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行う工程を含む、
(B)前記発泡剤が炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤を含む、
(C)前記発泡剤の添加量が前記塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対して1~30重量部である。
[10]前記炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤の比率が96:4~30:70(重量%)である、上記[9]に記載の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は発泡効率に優れる。本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子によれば、高発泡倍率を有する予備発泡粒子および発泡成形体を得られうる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は「A以上B以下」を意味する。また、「Aおよび/またはB」は、「A、B、ならびに、AおよびB」を意味する。
上記特許文献1および2では、得られた発泡体の発泡効率は詳細は示されていないが、成形体倍率/予備発泡粒子に再含浸させた発泡剤量を算出したところ、0.6~1.9であり、さらなる発泡効率向上に課題があると考えた。
【0012】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、特定の発泡剤を含有し、かつ、特定の構造を有することで、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡効率が改善することを見出し、本発明を成功するに至った。
【0013】
(発泡性塩化ビニル系樹脂粒子)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤を発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100重量%において1~30重量%含有し、かつ、水銀圧入法で測定した直径70~500nmのLog微分細孔容積の和が0.300ml/g以下であることを特徴とする。当該特徴により、本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、優れた発泡効率を奏することができる。
【0014】
一般的に、炭化水素系発泡剤は塩化ビニル系樹脂ペレットに含浸し難い。本発明においては、炭化水素系発泡剤にケトン系発泡剤を併存させることより、ケトン系発泡剤が塩化ビニル系樹脂の分子間に入り込み、分子鎖間を拡大することで、本来であれば塩化ビニル系樹脂との相溶性が良くない炭化水素系発泡剤が塩化ビニル系樹脂の分子間に入り込みやすくなる空間を作り出し、さらにケトン系発泡剤が塩化ビニル系樹脂と炭化水素系発泡剤との相溶化剤としての効果を発揮するため、炭化水素系発泡剤の塩化ビニル系樹脂への溶解量が増大したと考えられる。また、本発明においては、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の微細な孔を制御することにより、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子における炭化水素系発泡剤も含めた発泡剤の逸散が効果的に制御され、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡剤の保持力が向上しているものと考えられる。もとより、ケトン系発泡剤の効果として、塩化ビニル系樹脂の発泡時の粘度を高発泡倍率を得るのに適した粘度に低下させること、自身も発泡剤であることから発泡効率に寄与していると考えられる。
【0015】
(塩化ビニル系樹脂)
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化したビニル系共重合体等のポリ塩化ビニルや、後塩素化したポリ塩化ビニル、後塩素化した塩化ビニル系共重合体、後塩素化した塩素化オレフィン等の、塩化ビニル系重合体(ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニル系共重合体を総称して「塩化ビニル系重合体」と称することがある。)を改質(塩素化等)したものなどを挙げることができる。更には塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。これらの中で、難燃性の観点から 、塩化ビニル系重合体、塩素化塩化ビニル系重合体が含まれることが好ましく、中でも難燃性および発泡性に優れる点から塩素化塩化ビニル系重合体が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、これらを1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお、本明細書において「塩化ビニル系重合体」は、ポリ塩化ビニルおよび/または塩化ビニル系共重合体を意味する。また、本明細書においては、塩素化塩化ビニル系重合体を塩素化塩化ビニル樹脂と称することがある。
【0016】
本発明の一実施形態として、塩化ビニル系重合体の平均重合度は、特に限定されないが、下限は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。一方、上限は3000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下である。平均重合度が前記範囲であれば、高い発泡倍率を得られる傾向にある。尚、塩素化塩化ビニル系重合体の平均重合度は、実質的に塩素化前の塩化ビニル系重合体の平均重合度とみなす。平均重合度はJIS K6720-2に準拠して測定される。
【0017】
本製法の一実施形態として、塩化ビニル系樹脂は、発泡性の観点から、塩素化塩化ビニル系重合体が主として含まれることが好ましい。特に限定するわけではないが、塩化ビニル系樹脂100重量%において、塩素化塩化ビニル系重合体が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%であり、もっと好ましくは80重量%以上である。一方、上限は塩化ビニル系樹脂100重量%において、塩素化塩化ビニル系重合体が100重量%であることが好ましい。
【0018】
塩素化塩化ビニル系重合体は、通常、原料として塩化ビニル系重合体を用い、同塩化ビニル系重合体を水性媒体中に分散した状態で塩素を供給し、それに水銀灯を照射し光塩素化するか、あるいは加熱塩素化するなど水性媒体中で塩素化する方法、塩化ビニル系重合体を気層中、水銀灯の照射下で塩素化を行うなど気層中で塩素化する方法などにより製造される。原料となる塩化ビニル系重合体としては、上述で例示したポリ塩化ビニルおよび塩化ビニル系共重合体が同様に挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態として、塩素化塩化ビニル系重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、30,000以上400,000以下の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲であれば、高い発泡倍率を得られる傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。
【0020】
本発明の一実施形態として、塩素化塩化ビニル系重合体の塩素含有量は60重量%以上75重量%以下の範囲であることが発泡性を確保する観点から好ましい。より好ましくは64重量%以上70重量%以下である。塩素含有量が高いほど高い発泡倍率を得られる傾向にあるが、一方で塩素含有量が高すぎると溶融粘度の上昇により、加工性が著しく損なわれる傾向にある。塩素化塩化ビニル系重合体の塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0021】
本発明の一実施形態では、塩化ビニル系樹脂として、塩素化塩化ビニル系重合体は1種のみを使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
(発泡剤)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、発泡剤として炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤を含有する。
【0023】
(炭化水素系発泡剤)
本発明の一実施形態として、炭化水素系発泡剤は、公知の炭化水素系発泡剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の発泡剤が挙げられる。例えば、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等である。本発明においては、これらの一種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の一実施形態としては、炭化水素系発泡剤として、炭素数4~6(炭素数4、5および6)の飽和炭化水素の少なくとも1種が含有されることが好ましい。発泡剤の炭素数が4以上であると揮発性が低くなり、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子から発泡剤が逸散しにくくなるため、実際に使用する際に発泡工程で発泡剤が十分に残り、十分な発泡力を得ることが可能となり、高倍率化が容易となるため好ましい。また、炭素数が6以下であると、発泡剤の沸点が高すぎないため、予備発泡時の加熱で十分な発泡力を得やすく、高発泡化が易しい傾向となる。炭素数4~6の飽和炭化水素としては、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサンが例示される。炭素数4~6の飽和炭化水素としては、発泡剤の樹脂への溶解性及び保持性の観点から、少なくともペンタンが使用されることが好ましい。これら炭化水素系発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
(ケトン系発泡剤)
本発明の一実施形態として、ケトン系発泡剤は、公知のケトン系発泡剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の発泡剤が挙げられる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤とを併用することにより、炭化水素系発泡剤の塩化ビニル系樹脂への溶解性が更に向上しうる。
【0026】
本発明の一実施形態としては、ケトン系発泡剤としては、沸点が130℃以下のケトン系発泡剤が含有されることが好ましい。ケトン系発泡剤の沸点が130℃以下であれば加熱発泡時にケトンも発泡剤として作用するため高発泡倍率が得られ易い。また発泡時に樹脂から揮散し易くなり、発泡完了時に樹脂の粘度が上がることで気泡膜が破れにくくなり、高発泡倍率が得られ易くなる。沸点が130℃以下のケトン系発泡剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルブチルケトンが例示される。沸点が130℃以下のケトン系発泡剤としては、発泡剤として寄与し易いことから、少なくともアセトンが使用されることが好ましい。これらケトン系発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態として、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含有される炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤との割合は、炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤との総和100重量%において、好ましくは炭化水素系発泡剤/ケトン系発泡剤=96~30/4~70(重量%)であり、より好ましくは炭化水素系発泡剤/ケトン系発泡剤=90~40/10~60(重量%)であり、特に好ましくは炭化水素系発泡剤/ケトン系発泡剤=85~50/15~50(重量%)である。炭化水素系発泡剤とケトン系発泡剤が前記範囲であることで、塩化ビニル系樹脂に対する炭化水素系発泡剤の溶解量を増大させることが可能となるばかりか、発泡効率を高めることが可能となり、高発泡が可能となる。
【0028】
(その他の発泡剤)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、発泡剤として上記炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤が含まれていればよいが、その他の発泡剤を含有してもよい。その他の発泡剤としては、公知の発泡剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の発泡剤が挙げられる。例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~4の飽和アルコール、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234e)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス-HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234yf)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)などのハイドロフルオロオレフィンあるいは塩素化されたハイドロフルオロオレフィン、水、二酸化炭素、窒素などの無機系発泡剤などの物理発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤を用いることができる。これら他の発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、発泡剤の含有量が発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100重量%に対して1~30重量%であり、2~25重量%であることが好ましい。前記所定の範囲に発泡剤の含有量を制御することにより、高い発泡倍率を有する発泡粒子及び表面美麗性に優れた発泡成形体を得やすい、という効果を奏する。より好ましい範囲としては、3~22重量%であり、更に好ましくは4~20重量%である。
【0030】
(加工助剤)
本発明の一実施形態として、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子が加工助剤を含有してもよい。加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂に一般的に使用される加工助剤で特に問われないが、例えば、スチレンーアクリロニトリル共重合体のような芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系重合体のような耐衝撃改良剤、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。高発泡倍率の発泡粒子並びに発泡成形体を得やすい点から、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂および塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種が含有されることが好ましい。中でも、塩化ビニル系樹脂の流動性を改善し、成形加工性を改善する観点から、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体および/またはアクリル系樹脂と、塩素化ポリエチレンとを併用することがより好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態では、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体を塩化ビニル系樹脂に用いることにより、特に水蒸気加熱条件での予備発泡や発泡成形において、高発泡倍率の発泡粒子並びに発泡成形体を得やすい効果に優れる。
【0032】
芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体の芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α―メチルスチレン、エチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0033】
本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体は、上記芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体由来の構造単位(その他共重合可能な単量体)を有していても良い。その他共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸N-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどが挙げられる。
【0034】
芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体中における不飽和二トリル単量体の好ましい範囲としては、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体全体を100重量%として、5~45重量%であり、より好ましくは、8~35重量%であり、更に好ましくは、10~30重量%である。前記範囲であることで、高発泡倍率の発泡粒子並びに発泡成形体を得られやすい。
【0035】
好ましい芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体としては、スチレンーアクリロニトリル共重合体が挙げられる。芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体は、1種のみを使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい実施形態としては、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体の少なくとも1種としてスチレンーアクリロニトリル共重合体が使用される。芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体は、その重量平均分子量が、使用される塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも高いのものを使用することが高発泡倍率を確保しやすい点から好ましい。尚、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構造単位に有する共重合体として、例えばGalata製のBlendex869等が使用できる。
【0036】
アクリル系樹脂の具体例としては、たとえばメタクリル酸メチルを重合させてえられるポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸n-ブチルなどのアルキル基の炭素数が2~8のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸エチルなどのアルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステル、およびブチレン、置換スチレン、アクリロニトリルなどのこれらと共重合可能な単量体の少なくとも1種との共重合体などがあげられる。アクリル系樹脂は、その重量平均分子量が、使用される塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも高いのものを使用することが高発泡倍率を確保しやすい点から好ましい。尚、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。アクリル系樹脂として、例えばカネカ製のカネエースPA-40等を使用することができる。
【0037】
塩素化ポリエチレンは、塩化ビニル系樹脂に使用される公知の塩素化ポリエチレンを同様に使用できる。尚、塩素化ポリエチレンの塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0038】
加工助剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1~50重量部であることが好ましく、5~50重量部がより好ましく、8~30重量部が更に好ましい。1重量部以上であると、高い発泡倍率を有する発泡粒子および/または発泡成形体を得やすくなり、50重量部以下であると、難燃性能に優れた発泡粒子および/または発泡成形体を得ることができる。
【0039】
(その他添加剤)
本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤、安定剤、滑剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、輻射伝熱抑制剤、可塑剤、溶剤及び顔料・染料などの着色剤等を含有しても良い。
【0040】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができ、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ素系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート等のイントメッセント系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化化合物、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛などの難燃助剤が挙げられる。
【0041】
安定剤としては、従来より塩化ビニル系樹脂に用いられるものを使用することができる。例えば、錫系安定剤、フェノール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、エポキシ系安定剤、ゼオライト等が挙げられる。其々の安定剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0042】
滑剤としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス等のワックス、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。
【0043】
造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ゼオライトもしくはタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0044】
輻射伝熱抑制剤としては、近赤外又は赤外領域の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質が挙げられ、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、酸化チタン、アルミニウムなどがある。
【0045】
可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂と相溶性を有する物質が挙げられ、例えば、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、エポキシ化大豆油、トリフェニルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートなどがある。
【0046】
本発明の効果を損なわない範囲で、塩化ビニル系樹脂に他の樹脂(熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)を併用してもよい。
【0047】
他の樹脂を併用する場合、他の樹脂の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0~99重量部が好ましい。
【0048】
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、水銀圧入法で測定される直径が70~500nmの細孔におけるLog微分細孔容積の和が0.300ml/g以下である。Log微分細孔容積の和は0.250ml/g以下が好ましく、より好ましくは0.200ml/g以下であり、さらに好ましくは0.150ml/g以下である。Log微分細孔容積の和を0.300ml/g以下とすることで、発泡剤の逸散を効果的に抑制でき、発泡剤の保持力が向上する。ここでいうLog微分細孔容積の和は、後述する測定方法で求めることができる。
【0049】
本発明の一実施形態は、後述するような発泡性樹脂粒子を予備発泡・発泡成形できる形状の粒子であれば、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の形状は特に問わないが、一般的な粒状物(例えば、球状、略球状、凸レンズ状、凹レンズ状、紡錘状などの丸みを帯びた小さい粒子)だけでなく、凹みのある粒子も含まれるものとする。尚、本発明の一実施形態では、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の粒重量は発泡粒子の成形金型への充填性、ひいては発泡成形体の表面美麗性などの成形性を確保する観点から、0.5~10mg/粒であることが好ましく、1~8mg/粒がより好ましく、2.5~7mg/粒が更に好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態では、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子からの発泡剤の逸散速度を小さくする、あるいはより発泡倍率を向上させる観点から、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度が1100kg/m以上であることが好ましく、1150kg/m以上がより好ましく、1200kg/m以上が更に好ましく、1250kg/m以上が特に好ましい。ここでいう真密度は、後述する測定方法で求めることができる。
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の一実施形態としては、最大発泡倍率(倍)/発泡時発泡剤量(重量%)が1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2.0以上であり、特に好ましくは2.4以上である。最大発泡倍率(倍)/発泡時発泡剤量(重量%)が前記範囲であれば、少ない発泡剤量において高発泡が可能であり、発泡効率に優れているといえる。すなわち、発泡効率に優れる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子とは、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子製造時の使用発泡剤量に対して発泡剤の保持性が良好であり、かつ発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の含有する発泡剤量が少なくても、予備発泡時および/または発泡成形時に高倍発泡が可能な発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を意図している。
ここでいう最大発泡倍率は加熱空気雰囲気下で発泡評価を行った際の最も高い倍率であり、発泡時発泡剤量は加熱空気雰囲気下での発泡評価時に用いた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を150℃で30分間加熱した際の重量変化率のことであり、具体的には後述する測定方法で求めることができる。なお、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の発泡剤量は経時的に変化することから、最大発泡倍率および発泡時発泡剤量は同日に測定された値を使用する。
【0051】
(発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法(以下、「発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法」は「発泡性粒子の製法」と称することがある。)は、(A)発泡剤含有塩化ビニル系樹脂溶融物を複数の孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行う工程を含み、(B)前記発泡剤が炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤を含んでおり、かつ(C)前記発泡剤の添加量が塩化ビニル系樹脂100部に対して1~30重量部である。
【0052】
本発明の発泡性粒子の製法では、発泡剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物が溶融混錬された発泡剤含有塩化ビニル系樹脂溶融物において、発泡剤として炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡剤が併用されて塩化ビニル系樹脂に溶融混錬されることで、炭化水素系発泡剤の塩化ビニル系樹脂への溶解が促進されるとともに、得られる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に形成される微細な孔を制御でき、発泡効率に優れた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を製造できる。つまり、本発明の発泡性粒子の製法は、本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の好適な製法の一実施形態と言える。
【0053】
発泡性粒子の製法の一実施形態としては、塩化ビニル系樹脂、必要に応じて各種添加剤を押出機に供給して溶融混練し、発泡剤を前記押出機または押出機以降の分散設備によって溶融混練物に溶解・分散させ、押出機以降に取り付けた、小孔を多数有するダイを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有塩化ビニル系樹脂組成物の溶融混練物を押し出し、押し出し直後から、ダイと接する回転カッターにより前記溶融混練物を切断すると共に加圧循環水により冷却固化し、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得る製造方法が挙げられる。
【0054】
以下に、上記発泡性粒子の製法の一実施形態について説明する。なお、発泡性粒子の製法で使用される各成分等は、以下に説明する事項以外は、上述した発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の各種成分やその含有量、発泡性粒子の構造等が同様に適用される。
【0055】
発泡性粒子の製法の一実施形態において、押出機としては一般的な押出機を使用することができ、具体的には、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機などが挙げられる。タンデム押出機としては、単軸押出機を二機連結したものや、二軸押出機に単軸押出機を連結したものなどが挙げられる。また、押出機とスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機などの分散設備を併用してもよい。
【0056】
尚、発泡性粒子の製法の一実施形態において、塩化ビニル系樹脂は十分にゲル化させることが好ましい。十分にゲル化が行われないと、発泡性樹脂粒子とした場合に、発泡剤の発泡性樹脂粒子からの散逸速度が大きくなる場合があり、発泡に発泡剤が寄与し難い傾向にあり、結果として高発泡倍率あるいは高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得ることが困難となる場合がある。
【0057】
本発明の発泡性粒子の製法において、発泡剤の添加量は塩化ビニル系樹脂100部に対して1~30重量部であり、好ましくは2~25重量部であり、より好ましくは3~20重量部であり、さらに好ましくは4~15重量部である。前記所定の範囲に発泡剤の添加量を調整し、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子における発泡剤含有量を制御することにより、発泡倍率の高い予備発泡粒子が得られ易くなり、高い倍率を有する発泡成形体を得やすい、という効果を奏する。
【0058】
前記炭化水素系発泡剤およびケトン系発泡性の比率は、発泡性と発泡剤保持力のバランスの観点から、96:4~30:70(重量%)であることが好ましく、90:10~40:60(重量%)がより好ましく、85:15~50:50(重量%)が更に好ましい。
【0059】
発泡性粒子の製法の一実施形態において、樹脂溶融混練時の樹脂温度については、塩化ビニル系樹脂及び添加剤の分解に影響を及ぼす可能性があることから、押出機先端の樹脂溶融物の樹脂温度が130~250℃であることが好ましく、より好ましくは140~240℃であり、更に好ましくは150~220℃である。押出機先端の樹脂溶融物の樹脂温度は、押出機先端に取り付けられた温度センサーにて測定される値である。ダイより上流側に押出機が二つ以上取り付けられている場合は、最も下流側の押出機の先端温度を、本明細書中の押出機先端の樹脂溶融物の樹脂温度とする。樹脂温度が130℃以上であれば、樹脂粘度が下がり押出機内での十分な溶融混練が可能となる。樹脂温度が250℃を超えると塩化ビニル系樹脂、必要により併用される塩化ビニル系樹脂及び添加剤の分解の恐れがあり、結果として発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の劣化を誘発し、発泡性能の低下に繋がる恐れがある。
【0060】
(粒子化工程の各条件)
発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法における粒子化工程の条件について説明する。
【0061】
発泡性粒子の製法の一実施形態において、ダイより上流側に取り付けられた押出機の先端圧力が4~20MPaであることが好ましく、より好ましくは6~18MPaであり、7~15MPaであるこことが更に好ましい。なお、押出機先端圧力は、押出機先端に取り付けられた圧力センサーにて測定される値である。ダイより上流側に押出機が二つ以上取り付けられている場合は、最も下流側の押出機の先端圧力を、本明細書中の押出機先端圧力とする。押出機先端圧力が4MPa以上であれば、溶融混練時に樹脂への発泡剤の溶解分散が容易になり、安定的に発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得ることができる。一方で、押出機先端圧力が20MPa以下であれば、溶融混練時のせん断発熱を抑制することができ、塩化ビニル系樹脂及び添加剤の分解が生じにくくなる。
【0062】
発泡性粒子の製法の一実施形態において、ダイより押出される直前の溶融樹脂の温度は、発泡剤を含まない状態での樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg+20℃以上であることが好ましく、Tg+20℃~Tg+130℃がより好ましく、Tg+30℃~Tg+110℃であることがさらに好ましく、Tg+40℃~Tg+90℃であることが特に好ましい。尚、塩化ビニル系樹脂については、塩素含有量の増加に伴い、ガラス転移温度が上昇するため、使用する塩化ビニル系樹脂の塩素含有量に伴い、適宜調整することが好ましい。Tg+20℃以上であれば、押出された溶融樹脂の粘度が低くなり、小孔詰まりが発生しにくく、実質小孔開口率の低下が起きないため、得られる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の形状が歪もしくは不揃いとなる事態を避けることができる。一方で、Tg+130℃以下であれば、押出された溶融樹脂が固化し易くなり、回転カッターに巻き付き難くなり、安定的に切断できる。
【0063】
発泡性粒子の製法の一実施形態においてダイは特に限定されないが、例えば、好ましくは直径0.3mm~2.0mm、より好ましくは0.4mm~1.5mmの小孔を有するものが挙げられる。
【0064】
発泡性粒子の製法の一実施形態における循環加圧冷却水に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイに接触する回転カッターで切断されて小球化され、加圧循環冷却水中で発泡することなく、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。
【0065】
加圧循環冷却水の条件については、使用する樹脂、添加剤、発泡剤などの種類や、各含有量によって調整すべきであるが、ダイより押し出される溶融樹脂の発泡が抑制され、安定的にカッターで切断される条件が好ましい。具体的には、加圧循環冷却水の温度条件としては、好ましくは40℃~99℃、より好ましくは60~90℃である。
【0066】
圧力条件としては、得られる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率が1.0~1.25倍となるよう、圧力を調整することが好ましい。尚、前記発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率は、基材樹脂の真密度(kg/m)を発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度(kg/m)で除した値を指す。ここでいう基材樹脂及び発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度は、重量W(kg)の塩化ビニル系樹脂ペレットまたは発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m)を求め、算出される。具体的には後述する測定方法から求めることができる。
使用する発泡剤の種類にも依存するが、圧力条件は、好ましくは0.6~2.0MPa、より好ましくは0.7~1.8MPa、更に好ましくは0.8~1.6MPaである。
【0067】
(塩化ビニル系樹脂発泡粒子及びその製造方法)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、加熱空気や水蒸気などの加熱媒体により、2~110倍に予備発泡されて塩化ビニル系樹脂発泡粒子(予備発泡粒子に相当する)にされたのち、発泡成形体に使用されうる。使用できる水蒸気は、飽和水蒸気であってもよいし過熱水蒸気であってもよい。
【0068】
発泡時の加熱温度は、樹脂のガラス転移温度や融点、更には発泡剤の含有量によって適宜調整すべきであるが、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、発泡粒子間の発泡倍率バラつきの抑制や発泡粒子の収縮防止の観点から150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0069】
(塩化ビニル系樹脂発泡成形体及びその製造方法)
得られた塩化ビニル系樹脂発泡粒子は、従来公知の成形機を用い、例えば水蒸気によって成形(例えば型内成形)されて塩化ビニル系樹脂発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
【0070】
本発明の塩化ビニル系樹脂発泡粒子及びその塩化ビニル系樹脂発泡成形体は、平均セル径が好ましくは70~1000μm、より好ましくは90~800μm、さらに好ましくは100~600μmである。平均セル径が前述の範囲にあることによって、断熱性のより高い塩化ビニル系樹脂発泡成形体となる。平均セル径が70μm以上であると、発泡倍率の高倍化が容易となる傾向にあり、また、1000μm以下であると、熱伝導率が増加、即ち断熱性能が悪化するのを避けることができる。
【0071】
本発明の塩化ビニル系樹脂発泡粒子及びその塩化ビニル系樹脂発泡成形体は、独立気泡率が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。独立気泡率が前述の範囲にあることによって、成形時にも発泡粒子が2次発泡しやすく、発泡粒子の成形性が良くなり、得られる発泡成形体の表面性等が良化する等の効果を奏する。また、独立気泡率が前述の範囲にあることによって、発泡成形体の圧縮強度等の強度を高くできる傾向にある。
【0072】
(発泡成形体の用途)
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を用いて成形される発泡成形体は、高発泡倍率及び高独立気泡率であり、難燃性能に優れる。従って、難燃性や耐火性が求められる製品や部材の軽量化や高断熱化を図るのに好適である。例えば、建築用断熱材、天井材、金属サンドイッチパネルの芯材、食品容器箱、保冷箱、緩衝材、農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に好適である。
【0073】
本発明の一実施形態は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0076】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の粒重量の測定>
0.01mgまで測定できる電子天秤を用いて、ランダムにサンプリングした発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100粒の重量を測定し、以下の式で粒重量を算出した。
粒重量(mg)=[粒子100粒の重量(mg)]/100
【0077】
<塩化ビニル系樹脂ペレット(基材樹脂)の真密度測定>
塩化ビニル系樹脂と加工助剤、安定剤、滑剤等の副原料をブレンドし均一な配合物を得た後、押出機にて溶融混練し、得られた塩化ビニル系樹脂ペレット重量W(kg)を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m)を求め、以下の式で算出した。
塩化ビニル系樹脂ペレットの真密度(kg/m)=(W/V
前記方法に基づき、実施例および比較例で用いた塩化ビニル系樹脂ペレットの真密度は1430kg/mであり、この値を実施例および比較例で用いる基材樹脂の密度とした。
【0078】
<塩化ビニル系樹脂発泡粒子の発泡倍率測定>
重量W(kg)の塩化ビニル系樹脂発泡粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m)を求め、以下の式で算出した。前述の<塩化ビニル系樹脂ペレット(基材樹脂)の真密度測定>から、基材樹脂密度1430kg/mを用いた。
塩化ビニル系樹脂発泡粒子の発泡倍率(倍)=1430/(W/V
【0079】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡評価>
実施例および比較例で得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子につき、以下の測定方法に従って、塩化ビニル系樹脂発泡粒子の最大発泡倍率および発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量(発泡時発泡剤量)を測定した。なお、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡評価を適切に行うため、以下の測定を同日に実施した。
【0080】
<塩化ビニル系樹脂発泡粒子の最大発泡倍率評価>
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の一部を130℃に加熱したオーブン(アズワン株式会社製、強制対流定温乾燥器SOFW-600)に投入し、温度130℃の加熱空気雰囲気下で加熱時間を変更して発泡させ、各加熱時間毎の発泡粒子を得た。加熱時間はオーブン投入後30秒、60秒、90秒の様に30秒間隔で変更し、加熱過多による発泡粒子の収縮(発泡粒子倍率の低下)が確認されるまで加熱した。得られた加熱時間毎の発泡粒子の発泡倍率を(前述の塩化ビニル系樹脂発泡粒子の発泡倍率測定)に基づき測定し、これらのうち最も高い倍率を塩化ビニル系樹脂発泡粒子の最大発泡倍率とした。
【0081】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量の測定>
後述する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中のノルマルペンタン含有量の測定結果およびアセトン含有量の測定結果から、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中に含まれるノルマルペンタンとアセトンの和を発泡剤量とした。
【0082】
<発泡性塩化ビニル系樹脂中のノルマルペンタン含有量の評価>
発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中のノルマルペンタン含有量は、約130ccの密閉可能なガラス容器(以下、「密閉容器」と言う)に、約0.35gの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を入れ、真空ポンプにより密閉容器内の空気抜きを行った。その後、密閉容器を190で15分間加熱し、発泡性樹脂粒子中の発泡剤を密閉容器内に取り出した。密閉容器が常温に戻った後、密閉容器内にヘリウムを導入して大気圧に戻した後、ガスクロマトグラフィーを用いて、以下の機器、測定条件にて測定した。
使用機器;ガスクロマトグラフ GC-2014 [(株)島津製作所製]
使用カラム;G-Column G-950 25UM [化学物質評価研究機構製]
測定条件;
・カラム温度:110℃
・キャリーガス:高純度ヘリウム
・キャリーガス流量:40mL/分
・検出器:TCD
【0083】
<発泡性塩化ビニル系樹脂中のアセトン含有量の評価>
発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中のアセトン含有量は、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子1.0gをテトラヒドロフラン20mLに溶解し、ガスクロマトグラフィーを用いて、以下の装置、測定条件にて測定した。
使用機器;ガスクロマトグラフ GC-2014 [(株)島津製作所製]
使用カラム;G-Column G-100 3UM [化学物質評価研究機構製]
測定条件;
・カラム温度:70℃
・キャリーガス:高純度ヘリウム
・キャリーガス流量:20mL/分
・検出器:FID
【0084】
<Log微分細孔容積の和の評価>
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子をオートポアIV9500(米国マイクロメリティックス社製)を用いて下記条件にてLog微分細孔容積の和の評価を実施した。
【0085】
試料として発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を0.35g秤量し、次に記載するセルに加えた。用いたセルは粉体用のセルであり、試料室容積は5cc、最大測定容積0.366cc、全ステム容積0.392cc、最大水銀頭圧4.45psia、セル定数11.117μL/pF、外形寸法I215mm、H230mm、D1.473mmであるセルを用いた。また、Correction methodはNoneを選択し、補正せずに測定を実施した。試料を加えたセルを50μmHgまで減圧し、さらに5分間減圧を行った。減圧後のセルに1.52psiaの圧力で水銀を満たし後に、2~33000psiaまで圧力を加え、ポロシティ評価を行った。なお、明細書記載中では、20~33000psiaの圧力範囲で試料中に侵入した水銀量をポロシティと称する。細孔中に侵入した水銀量は、試料容器内の水銀柱の変位から求めることができる。変位は、水銀と試料容器の管壁にある電極間の静電容量の変化から算出される。オートポアIV9500は静電容量型検出器により、測定された静電容量から水銀柱の変位を計算し、試料中に侵入した水銀量(ポロシティ)を算出している。
【0086】
測定時の圧力プロフィールは以下の通りであり、記載の圧力まで昇圧し、平衡時間は10秒で測定を行った。
【0087】
2psia、3psia、4psia、5.5psia、7psia、8.5psia、10.5psia、13psia、16psia、20psia、23psia、25psia、30psia、40psia、50psia、60psia、75psia、90psia、115psia、140psia、175psia、220psia、270psia、330psia、420psia、520psia、640psia、700psia、800psia、990psia、1200psia、1300psia、1400psia、1500psia、1600psia、1700psia、1900psia、2050psia、2200psia、2350psia、2500psia、2650psia、2700psia、2850psia、3000psia、3250psia、3500psia、3750psia、4000psia、4250psia、4500psia、4740psia、5000psia、5300psia、5500psia、5750psia、6000psia、6250psia、6500psia、6750psia、7000psia、7500psia、8000psia、8500psia、9000psia、9300psia、9600psia、10050psia、10500psia、11000psia、11500psia、12000psia、12600psia、13100psia、13650psia、14000psia、14340psia、14600psia、15000psia、15450psia、15800psia、16200psia、16650psia、17000psia、17350psia、17700psia、18100psia、18450psia、18800psia、19200psia、19800psia、20300psia、20800psia、21200psia、21650psia、22050psia、22650psia、23200psia、23750psia、24100psia、24650psia、25050psia、25450psia、25900psia、26450psia、26950psia、27400psia、27800psia、28250psia、29000psia、29500psia、30000psia、30450psia、30900psia、31300psia、31800psia、32350psia、33000psia
測定時の細孔半径はr=2δcosθ/Pで算出される。r:細孔半径、δ:水銀の表面張力、θ:水銀の接触角、P:圧入圧力であり、それぞれ水銀の接触角を130°、表面張力を485dynes/cmとして試料に存在する細孔を算出した。圧入接触角、退出接触角ともに130°とし、水銀密度は13.5335g/mlを用いた。得られたデータの中から、直径が70~500nmの細孔におけるLog微分細孔容積(ml/g)の総和を、直径70~500nmの細孔におけるLog微分細孔容積の和とした。
【0088】
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
(塩化ビニル系樹脂)
(A-1)塩素化塩化ビニル樹脂[(株)カネカ製、H716S、平均重合度600、塩素含有量67.6重量%]
(加工助剤)
(B-1)アクリル系樹脂[(株)カネカ製、カネエースPA-40]
(B-2)スチレン-アクリロニトリル共重合体(Galata製、Blendex869、重量平均分子量286万、共重合体中のアクニロニトリル由来の成分比率;20重量%)
(発泡剤)
(C-1)ノルマルペンタン[富士フィルム和光純薬(株)製]
(C-2)アセトン[富士フィルム和光純薬(株)製]
【0089】
(実施例1)
[発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の作製]
塩化ビニル系樹脂(A-1)100重量部に対し、加工助剤(B-2)を13重量部、更にブチル錫メルカプト系安定剤5重量部、滑剤(エステルワックス、ポリエチレンワックス)3重量部、塩素含有量35重量%の塩素化ポリエチレン5重量部を加え、この配合物をブレンドし均一な配合物を得た後、同方向噛み合い二軸押出機にて溶融混練し、上記配合比率のペレット(塩化ビニル系樹脂組成物)を得た。
得られたペレットを、φ40mm同方向噛み合い二軸押出機に40kg/hrのフィード量で溶融混練した。φ40mm同方向噛み合い二軸押出機の途中から、前記ペレット100重量部に対して、ノルマルペンタン(C-1)8.6重量部とアセトン(C-2)3.9重量部を圧入した。その後、二軸押出機先端に取り付けられた継続管、単軸押出機、ギアポンプ、ダイバータバルブを経て、樹脂温度165℃に冷却し、ダイバータバルブの下流に取り付けられた直径1.0mm、ランド長3.5mmの小孔を30個有する230℃に設定したダイから、吐出量45kg/hrで、温度70℃及び1.3MPaの加圧循環水中に押出した。この際の押出機先端圧力は12MPaであり、溶融物の樹脂温度(すなわち、押出機先端の樹脂溶融物の樹脂温度)は167℃であった。押出された溶融樹脂は、ダイに接触する回転カッターを用いて、切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、粒重量5.5mg、真密度1280kg/mの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。
【0090】
[発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡評価]
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で3日間養生した後、前述の<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量の測定>、<塩化ビニル系樹脂発泡粒子の最大発泡倍率評価>にて発泡時発泡剤量及び発泡評価を実施した結果、発泡時発泡剤量9.7重量%、発泡粒子の最大発泡倍率は32.6倍であった。尚、最大発泡倍率/発泡時発泡剤量は3.4であった。
【0091】
(実施例2)
実施例1において、アセトン(C-2)添加量3.9重量部を2.2重量部と変更し、ダイの設定温度を245℃、加圧循環水温度を85℃と変更した以外は、実施例1と同様にして、粒重量5.4mg、真密度1300kg/mの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は14MPaであり、溶融物の樹脂温度は167℃であった。
【0092】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡時発泡剤量及び発泡評価を実施した結果、発泡時発泡剤量8.7重量%、発泡粒子の最大発泡倍率は27.2倍であった。尚、最大発泡倍率/発泡時発泡剤量は3.1であった。
【0093】
(実施例3)
実施例2において、アセトン(C-2)添加量2.2重量部を0.9重量部と変更した以外は、実施例2と同様にして、粒重量6.0mg、真密度1330kg/mの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は14MPaであり、溶融物の樹脂温度は167℃であった。
【0094】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡時発泡剤量及び発泡評価を実施した結果、発泡時発泡剤量8.2重量%、発泡粒子の最大発泡倍率は25.9倍であった。尚、最大発泡倍率/発泡時発泡剤量は3.2であった。
【0095】
(実施例4)
実施例1において、加工助剤(B-2)13重量部を(B-1)13重量部に変更した以外は実施例1と同様にするようにして、粒重量5.4mg、真密度1260kg/mの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は15MPaであり、溶融物の樹脂温度は167℃であった。
【0096】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡時発泡剤量及び発泡評価を実施した結果、発泡時発泡剤量9.0重量%、発泡粒子の最大発泡倍率は24.6倍であった。尚、最大発泡倍率/発泡時発泡剤量は2.7であった。
【0097】
(比較例1) 実施例4において、アセトン(C-2)添加量3.9重量部を0重量部、ノルマルペンタン(C-1)添加量8.6重量部を12.5重量部と変更した以外は実施例4と同様にするようにして、粒重量5.6mg、真密度1320kg/mの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は4~11MPaと不安定であった。溶融物の樹脂温度は167℃であった。
【0098】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして発泡時発泡剤量及び発泡評価を実施した結果、発泡時発泡剤量5.5重量%、発泡粒子の最大発泡倍率は5.0倍であった。尚、最大発泡倍率/発泡時発泡剤量は0.9であった。
【0099】
【表1】