(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20241024BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L21/52 A
(21)【出願番号】P 2020185121
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】山路 知明
(72)【発明者】
【氏名】岩本 峻
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-333332(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184844(WO,A1)
【文献】特開2015-103638(JP,A)
【文献】実開昭57-047059(JP,U)
【文献】特開平09-120019(JP,A)
【文献】特開2016-115881(JP,A)
【文献】国際公開第2020/144794(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0177793(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102420222(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載基板と、
前記搭載基板上に配された金属からなる素子載置部と、
金属からなる素子接合層を有し、前記素子載置部の上面上に前記素子接合層を介して接合された支持基板並びに前記支持基板上に形成された半導体発光層を含む半導体層を有する発光素子と、を含み、
前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されており、
前記素子載置部は前記搭載基板上に1の方向に複数配列されており、前記発光素子は当該複数配列された前記素子載置部の各々の上面上に配され、前記発光素子の各々は、上面視において、前記支持基板の各々の下面が前記素子載置部の各々の上面に対して1の向きに偏倚しており、前記支持基板の各々の下面が前記素子載置部の各々の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記素子載置部は、柱状の本体部と、前記本体部の上面上に形成された底面が前記本体部の上面端から側方に突出している錐台部と、を有し、
前記素子接合層が溶出してなる金属層が、前記錐台部の上面及び側面に亘って延在していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記支持基板の前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出している下面には、前記素子接合層が溶出してなる金属溜まりが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記支持基板の前記素子載置部の上面の前記1の向きと反対の向きを向いた側面には、前記素子接合層が溶出してなるフィレット部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して前記1の向き及び前記1の向きと異なる向きの他の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向き及び前記他の向きに突出するように接合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記素子載置部は、Cu、Ni、Au又はCu、Ni、Pd、Auの金属層がこの順で前記搭載基板上に積層されて形成されており、前記素子接合層は金錫合金からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
発光装置の製造方法であって、
金属からなる素子載置部を上面に有する搭載基板を用意する基板準備工程と、
金属からなる素子接合層を有する発光素子を、前記素子載置部上に、前記素子載置部の上面と前記素子接合層とが接するように載置する素子載置工程と、
前記発光素子を保持しつつ上方から押圧しつつ加熱及び冷却を行い前記素子接合層が前記素子載置部と前記発光素子とを接合する素子接合工程と、を含み、
前記素子接合工程において、前記発光素子は、上面視において、前記発光素子の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚され、前記発光素子の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように保持されることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項8】
搭載基板と、
前記搭載基板上に配された金属からなる素子載置部と、
金属からなる素子接合層を有し、前記素子載置部の上面上に前記素子接合層を介して接合された支持基板並びに前記支持基板上に形成された半導体発光層を含む半導体層を有する発光素子と、を含み、
前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されており、
前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して前記1の向き及び前記1の向きと異なる向きの他の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向き及び前記他の向きに突出するように接合されていることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
搭載基板と、
前記搭載基板上に配された金属からなる素子載置部と、
金属からなる素子接合層を有し、前記素子載置部の上面上に前記素子接合層を介して接合された支持基板並びに前記支持基板上に形成された半導体発光層を含む半導体層を有する発光素子と、を含み、
前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されており、
前記素子載置部は、Cu、Ni、Au又はCu、Ni、Pd、Auの金属層がこの順で前記搭載基板上に積層されて形成されており、前記素子接合層は金錫合金からなることを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子及び配線などの導電パターンが設けられた基板と、当該基板の導電パターン上に金属材を介して接合された発光素子を含む発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、実装基板上に設けられた金錫(AuSn)合金からなる接合用層上に発光素子を載置し、加熱しつつ発光素子を上方から押圧して当該接合用層のAuSnを溶融させ、当該溶融したAuSnを横方向に押し広げた後冷却凝固させて接合させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、実装基板に対して発光素子を押圧した状態で加熱を行い金属を溶融させて発光素子を接合する場合、当該溶融した金属の一部が接合部分からはみ出して球状に凝固されたはんだボールが形成される可能性がある。はんだボールが他の電極又は配線に接触してしまうと、発光装置内部で短絡等の不具合が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、発光素子を基板に接合する際に接合用の金属部材による不具合の発生を抑えることが可能な発光装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、搭載基板と、前記搭載基板上に配された金属からなる素子載置部と、金属からなる素子接合層を有し、前記素子載置部の上面上に前記素子接合層を介して接合された支持基板並びに前記支持基板上に形成された半導体発光層を含む半導体層を有する発光素子と、を含み、前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚しており、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、金属からなる素子載置部を上面に有する搭載基板を用意する基板準備工程と、金属からなる素子接合層を有する発光素子を、前記素子載置部上に、前記素子載置部の上面と前記素子接合層とが接するように載置する素子載置工程と、前記発光素子を保持しつつ上方から押圧しつつ加熱及び冷却を行い前記素子接合層が前記素子載置部と前記発光素子とを接合する素子接合工程と、を含み、前記素子載置工程において、前記発光素子は、上面視において、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面に対して1の向きに偏倚され、前記支持基板の下面が前記素子載置部の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように保持されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る発光装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る発光装置の上面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る発光装置の断面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る発光装置の素子載置面の断面拡大図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る発光装置の製造フローを示す図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る発光装置の製造フローを示す図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
【
図9】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の接合プロファイルである。
【
図10】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
【
図11】本発明の実施例1に係る発光装置の製造時の1ステップにおける断面図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る発光装置の断面図である。
【
図13】本発明の実施例2に係る発光装置の素子載置面の断面拡大図である。
【
図14】本発明の実施例3に係る発光装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。なお、以下の説明において、「材料1/材料2」との記載は、材料1の上に材料2が積層された積層構造を示す。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る発光装置10の斜視図である。発光装置10は、基板11と、基板11上に配列されるように形成された素子載置部13と、素子載置部13の各々の上面上に載置された発光素子20と、を有する。実施例1においては、発光装置10は、基板11上に並置された3つの発光素子20を有する。
【0012】
搭載基板としての基板11は、例えば、絶縁性を有する基材からなる平板形状を有する基板である。基板11は、例えば、高い熱伝導性を有するAlN等の基材からなる。また、基板11は、上面上に1の方向である長辺方向に沿った方向に互いに離間して配列されるように素子載置部13及びボンディング部15が形成されている。なお、実施例1においては、素子載置部13及びボンディング部15が形成されている基板11の上面が素子載置面として機能し、基板11の下面が実装基板への実装面として機能する。
【0013】
素子載置部13及びボンディング部15は、例えば、基板11の上面から銅(Cu)/ニッケル(Ni)/金(Au)又は銅(Cu)/ニッケル(Ni)/パラジウム(Pd)/金(Au)の順で積層された金属からなる配線電極である。実施例1においては、素子載置部13及びボンディング部15が基板11の上面からCu/Ni/Auの順で積層されている場合について説明する。なお、PdをNi上に積層することにより、NiのAu表面への析出を抑制してAu層を薄くすることができる。すなわち、素子載置部13は、Cu、Ni、Au又はCu、Ni、Pd、Auの金属層がこの順番で積層されて形成されている。
【0014】
また、基板11は、上面と下面との間を貫通する図示しない貫通電極を有している。当該貫通電極を介して、素子載置部13及びボンディング部15はそれぞれ基板11の下面に形成されたアノード及びカソードとしてそれぞれ機能する図示しない実装電極に接続されている。なお、素子載置部13は、各々の上面形状の大きさ及び形状が発光素子20の底面と略同一の形状及び大きさで形成されている。
【0015】
発光素子20は、基板11の素子載置部13上に載置された、例えば、発光ダイオードなどの半導体発光素子である。発光素子20は、例えば、シリコンを主材料とする支持基板21上に積層された半導体発光層としての発光部22有する半導体発光素子である。発光部22は、例えば、p型半導体層、発光層及びn型半導体層を積層させた構造からなる。また、n型半導体層の上面は、発光部22の各々の上面であり、発光素子20における光取り出し面として機能する。本実施例においては、p型半導体層、発光層及びn型半導体層は、例えば、窒化ガリウム(GaN)等を主材料とする窒化物半導体であり、多重量子井戸構造を有する発光層から青色の光を放射する青色発光ダイオード(LED)である。
【0016】
また、発光素子20は、支持基板21上に発光部22と離間するように形成された電極パッド23を有する。電極パッド23は、発光部22のp型半導体層と電気的に接続されており、発光素子20のアノード電極として機能する。電極パッド23は、例えば、Auからなる導電性のボンディングワイヤBWを介して基板11のボンディング部15と電気的に接続されている。
【0017】
また、発光素子20は、下面に素子接合層24が形成されている。素子接合層24は、例えば、AuSn合金からなる金属層である。発光素子20は、素子接合層24が溶融され素子載置部13の上面と固着することにより、素子載置部13上に接合される。また、発光素子20の支持基板21は、発光部22のn型半導体層と電気的に接続されており、発光素子20の下面がカソード電極として機能する。発光素子20の下面であるカソード電極は、素子接合層24を介して基板11の素子載置部13と電気的に接続されている。
【0018】
なお、本実施例においては、発光素子20の各々における発光部22は、矩形の上面形状を有する。また、基板11上においては、発光部22の各々が1列に整列するように配置され且つ、電極パッド23の各々が発光部22の配列方向に沿って1列に整列するように配置されている。
【0019】
上記の通り、発光装置10は、基板11と、基板11上に配された金属からなる素子載置部13と、金属からなる素子接合層24を有し、素子載置部13の上面上に素子接合層24を介して接合された支持基板21並びに支持基板21上に形成された半導体発光層を含む発光部22を有する発光素子20と、を含む。
【0020】
波長変換体30は、発光素子20の発光部22上に図示しない透光性の接着樹脂を介して配されている。また、波長変換体30は、発光素子20の各々の発光部22に亘って一体的に形成されている。波長変換体30は、発光素子20の各々からの放出光に対して波長変換を行う。波長変換体30は、例えば、セリウム(Ce)をドープしたYAGを主材料とする蛍光体粒子と、ガラス又はアルミナ等のセラミックのバインダとを含む板状の部材を含む。本実施例においては、波長変換体30は、発光素子20が放射する青色の光の波長変換を行い、白色の光を放射する波長変換体である。
【0021】
被覆部材40は、基板11上に形成され、発光素子20の各々を封止し、かつ波長変換体30の側面を覆う光反射性の部材である。なお、
図1においては、発光装置10の被覆部材40の内側の構造を図示するため、被覆部材40の外縁のみを破線で示し、その図示を省略している。
【0022】
被覆部材40は、発光素子20から放出される光及び波長変換体30から出射される光に対して反射性を有する。被覆部材40は、例えば、酸化チタン粒子等の光散乱性の粒子を含有する白色の熱硬化性樹脂である。被覆部材40は、波長変換体30の上面を露出させるように、基板11上に形成されている。すなわち、波長変換体30の上面である被覆部材40から露出した表面は、発光装置10における光取り出し面として機能する。
【0023】
なお、波長変換体30の上面は、発光装置としての光の出射方向を一様にするために、実装面である基板11の下面と平行であることが好ましい。また、波長変換体30の上面からの光の色ムラや輝度ムラを低減するために、波長変換体30の下面は、複数の発光素子20の各々の光取り出し面である発光部22の上面と同一の距離でかつ平行に接着されていることが好ましい。従って、複数の発光素子20の各々の発光部22の上面は、実装面である基板11の下面に対して極力同じ取り付け高さでありかつ互いに平行面とする必要がある。
【0024】
また、本実施例においては、矩形の断面形状を有する波長変換体30を用いる場合について説明したが、波長変換体30の形状はこれに限定されない。例えば、波長変換体30は、光取り出し面である上面が光入射面である下面よりも小さいサイズとなるように形成されていてもよい。これにより、波長変換体30の下面から入射されて上面に向かう光を集光することができ、高輝度な光を出射させることが可能となる。
【0025】
図2は、発光装置10の上面図を示している。また、
図3は、発光装置10の断面図を示している。なお、
図3は、
図2におけるA-A線に沿った断面図である。なお、
図2においては、発光装置10の波長変換体30及び被覆部材40の内側の構造を図示するため、その図示を省略している。
【0026】
上述の通り、基板11の上面上には、1の方向に配列されかつ互いに離間するように形成された複数の素子載置部13及びボンディング部15が形成されている。素子載置部13の各々は、例えば、基板11の短辺方向に沿った辺の長さが約1.16mm、基板11の長辺方向に沿った辺の長さが約0.99mmで形成されている。また、互いに隣接する素子載置部13は、例えば、約100μmの距離で離間するように形成されている。
【0027】
また、素子載置部13の各々の上面上には、複数の発光素子20がそれぞれ配されている。発光素子20の各々は、例えば、基板11の短辺方向に沿った辺の長さが約1.18mm、基板11の長辺方向に沿った辺の長さが約1.01mmで形成されている。
【0028】
また、複数の発光素子20の各々は、素子載置部13の上面の中心位置に対して、それぞれが1の方向である基板11の長辺方向に沿った方向にオフセット(辺が並行して端部がずれる)されるように配されている。発光素子20の各々の1の方向に沿った方向にオフセット量は、例えば、約40μmである。
【0029】
図2においては、発光素子20は素子載置部13に対して図中左方向にオフセットされている。発光素子20は、素子載置部13への載置時において、オフセットされた方向の側の辺(図中左辺)が素子載置部13の外縁から突出している。また、発光素子20は、当該オフセットされた方向の側の辺と対向する辺(図中右辺)が素子載置部13の内縁に位置している。
【0030】
すなわち、
図2に示す通り、素子載置部13の上面位置及び発光素子20が載置される位置においては、発光素子20が素子載置部13の端部から突出して発光素子20の下面から露出しているオーバーハング領域OHと、発光素子20の下面と素子載置部13の上面が重なり合う接合領域JCと、素子載置部13の上面から露出している露出領域EXが形成されている。
【0031】
また、発光素子20の各々は、発光素子20の下面に形成された素子接合層24を介して素子載置部13と接合されている。素子接合層24は、AuSnからなる合金であり、発光素子20を素子載置部13に載置した後、押圧しつつ加熱溶融、冷却凝固を行うことで、上記のオフセットされた位置に接合される。
【0032】
言い換えれば、発光素子20は、上面視において、支持基板21の下面が素子載置部13の上面に対して1の向きに偏倚しており、支持基板21の下面が素子載置部13の上面の外縁よりも前記1の向きに突出するように接合されている。また、さらに言い換えれば、発光装置10の素子載置部13は、基板11上に1の方向に複数配列されており、発光素子20の各々は、上面視において、支持基板21の各々の下面が素子載置部13の各々の上面に対して1の向きに偏倚しており、支持基板21の各々の下面が素子載置部13の各々の上面の外縁よりも1の向きに突出するように接合されている。
【0033】
発光素子20を押圧しつつ素子接合層24を加熱溶融させる際、接合領域JC内の溶融した余剰の素子接合層24は接合領域JCの外側へ押し出される。
【0034】
これにより、
図3に示す通り、オーバーハング領域OHにおいて、溶融し押し出された素子接合層24が支持基板21の下面に貯留される。これにより溶融し押し出された素子接合層24が貯留することによってはんだボールの発生を抑えることが可能となる。
【0035】
なお、上述の通り、発光装置10は、波長変換体30の上面からの光の出射方向の統一及び色ムラ、輝度ムラの低減を行うために、複数の発光素子20の各々の発光部22の上面が実装面である基板11の下面と平行とする必要がある。それ故、本発明においては、発光素子20を素子載置部13に接合する際に発光素子20を上方から押圧しつつ接合することにより、それぞれの発光素子20の発光部22の上面を基板11の上面及び下面に対して同じ取り付け高さでありかつ互いに平行面とするようにしている。
【0036】
また、発光素子20を押圧しつつ接合を行うため、素子接合層24を加熱溶融させる際、溶融した素子接合層24は発光素子20の支持基板21と素子載置部13との接合面の外側へ押し出される。そこで、本発明においては、上記のようにはんだボールの発生を抑えるために発光素子20を素子載置部13の上面の中心位置からオフセットさせた位置に接合させている。
【0037】
仮に、押圧させずに発光素子20と素子載置部13を接合させると、上述の取り付け高さの影響に加え、溶融した素子接合層24の表面張力によるセルフアライメントが生じてしまい発光素子20の載置位置がずれてしまう。そのため、発光素子20を素子載置部13の上面の中心位置からオフセットさせた位置に接合させるためには、押圧しつつ接合を行う必要がある。
【0038】
ここで、
図4を用いて、素子載置部13の詳細な構造と素子接合層24の濡れ広がりの挙動を説明する。
【0039】
図4は、
図3の互いに隣接する素子載置部13、支持基板21及び素子接合層24の間のキャビティを示すBT部の拡大断面図である。
【0040】
素子載置部13は、基板11の上面から第1の金属層13Aと、第2の金属層13Bと、第3の金属層13Cとが順に積層された矩形の断面上を有する構造で形成されている。第1の金属層13Aは、例えば、Cuからなる金属層であり、基板11の上面上から約50μmの厚さで形成されている。また、第2の金属層13Bは、例えば、Niからなる金属層であり、第1の金属層13Aの上面上から約5μmの厚さで形成されている。また、第3の金属層13Cは、例えば、Auからなる金属層であり、第2の金属層13Bの上面上から約1μmの厚さで形成されている。また、素子載置部13の各々は、上記の通り、基板11の長辺方向に沿った辺の長さが約0.99mmで形成されている。また、互いに隣接する素子載置部13は、例えば、約100μmの距離で離間するように形成されている。
【0041】
また、発光素子20の各々は、上記の通り、発光素子20の各々の中心位置が素子載置部13の各々の中心位置に対して、基板11の長辺方向に沿った方向にオフセットされた位置に素子載置部13と接合される。また、上記の通り、発光素子20の各々は、基板11の長辺方向に沿った辺の長さが約1.01mmで形成されている。また、発光素子20の各々の基板11の長辺方向に沿った方向にオフセット量は、例えば、約40μmである。
【0042】
また、発光素子20の素子載置部13への接合前の状態において、発光素子20の下面には予め薄膜状の素子接合層24が約2~3μmの厚さで形成されている。素子接合層24は、上記の通り、発光素子20の素子載置部13への接合時において、発光素子20が押圧された状態で加熱溶融、冷却凝固され、支持基板21と素子載置部13とを接合する。
【0043】
素子接合層24は、発光素子20が押圧された状態で溶融されることによって接合領域JC内の素子接合層24が押し広げられ、露出領域EX及びオーバーハング領域OHに押し出される。
【0044】
この時、露出領域EXにおいては、押し出された素子接合層24が素子載置部13の上面上に濡れ広がる。また、露出領域EXに濡れ広がった素子接合層24の一部は支持基板21の側面に這い上がり、素子載置部13の上面端部から支持基板21の側面にかけて凹状の表面形状を有するフィレット部としてのフィレットFLが形成される。言い換えれば、支持基板21の素子載置部13の上面の1の向きと反対の向きを向いた側面には、素子接合層24が溶出してなるフィレットFLが形成されている。
【0045】
露出領域EXにおいて、素子接合層24が支持基板21の側面まで這い上がったフィレットFLが形成されることにより、支持基板21と素子載置部13との接合強度を向上させることが可能となる。
【0046】
また、オーバーハング領域OHにおいては、素子載置部13の上面端部から支持基板21の下面端部にかけて、押し出された素子接合層24が表面張力によって凸状の曲面の表面形状を有する金属溜まりとしての貯留部PLが形成される。言い換えれば、支持基板21の素子載置部13の上面の外縁よりも1の向きに突出している下面には、素子接合層24が溶出してなる貯留部PLが形成されている。
【0047】
なお、素子載置部13において、素子接合層24であるAuSnとの濡れ性が良好な金属層は、Auである第3の金属層13Cのみである。第1の金属層13AであるCu及び第2の金属層13BであるNiは、露出されている金属層の表面の各々が酸化膜に覆われており、当該酸化膜はAuSnとの濡れ性がAuよりも乏しい。よって、素子載置部13は、接合領域JC内の余剰の素子接合層24が多量な場合であっても、貯留部PLに貯留された素子接合層24が第3の金属層13Cよりも下方の側面へ垂れることを抑制することが可能となる。つまり、溶出したAuSn層の端部は、素子載置部13の側面の途中で留まる。
【0048】
上記のように、発光装置10によれば、フィレットFL及び貯留部PLは、発光素子20と素子載置部13との接合時に接合領域JC内から押し出された余剰の素子接合層24を貯留することにより、はんだボールの発生を抑えることが可能となる。
【0049】
なお、実施例1においては、発光素子20を素子載置部13の中心位置から基板11の長辺方向に沿った方向に約40μmオフセットさせて接合させている。すなわち、上面視において発光素子20と素子載置部13の重なり合う部分の面積は、発光素子20及び素子載置部13の中心位置を合わせて接合させた場合と比較して約4%減少する。しかし、露出領域EXに素子接合層24のフィレットFLが形成されることによって、発光素子20と素子載置部13との接合強度は保たれている。
【0050】
次に、
図5及び
図6~11を用いて、本願の実施例に係る発光装置10の製造手順について説明する。
図5は、本願の実施例1に係る発光装置10の製造手順を示す製造フローである。また、
図6~
図8及び
図10、11は、
図5に示す製造手順の各ステップにおける発光装置10の断面図である。また、
図9は、発光素子20と素子載置部13との接合時における温度と印加荷重のプロファイルを示す図である。
【0051】
まず、基板準備工程として、
図6に示すように、上面上に1の方向に沿って互いに離間して配列されるように形成された素子載置部13及びボンディング部15を有する基板11を用意する(ステップS11)。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、金属からなる素子載置部13を上面に有する基板11を用意する基板準備工程を含む。なお、素子載置部13及びボンディング部15は、例えば、無電解めっきを実施してシード層を形成した基板11上にマスクを施し、電界めっきによってCu、Ni、Auの順で金属層を積層させた後にマスク及びシード層を除去して形成される。
【0052】
次に、素子載置工程として、
図7に示すように、基板11をダイボンド装置にセットし、素子載置部13の各々の上面上に発光素子20を載置する(ステップS12)。上述の通り、発光素子20の下面には、予め素子接合層24が形成されている。本ステップにおいては、ダイボンド装置は、素子載置部13の上面と素子接合層24とが接するように発光素子20を載置する。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、金属からなる素子接合層24を有する発光素子20を、素子載置部13上に、素子載置部13の上面と素子接合層24とが接するように載置する素子載置工程を含む。また、基板11は、ダイボンド装置内の加熱ステージST上に配置されてから発光素子20が載置されるまでの間、予備加熱が行われている。また、発光素子20の各々は、加熱可能な吸着ピックアップツール又は吸着コレット等のツールTLによって一括的に保持されて素子載置部13上に載置される。また、上述の通り、発光素子20の各々は、素子載置部13の中心位置から1の方向にオフセットされた位置に載置される。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、素子載置工程において、発光素子20は、上面視において、支持基板21の下面が素子載置部13の上面に対して1の向きに偏倚され、支持基板21の下面が素子載置部13の上面の外縁よりも1の向きに突出するように保持される。なお、本ステップ終了時においてもツールTLの発光素子20の保持は継続して行われる。
【0053】
次に、素子接合工程として、
図8に示す通り、ダイボンド装置は、ツールTLで発光素子20を保持したまま下方への荷重の印加、加熱及び冷却を行い素子接合層24を溶融させて支持基板21と素子載置部13とを接合する(ステップS13)。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、発光素子20を保持しつつ上方から押圧しつつ加熱及び冷却を行い素子接合層24が素子載置部13と発光素子20とを接合する素子接合工程を含む。なお、本ステップにおいては上述の通り、発光素子20に荷重を印加しつつ接合を行っているため、溶融した素子接合層24の表面張力によって発光素子20の載置位置が素子載置部13の中心位置にセルフアライメントされることはない。
【0054】
図9は、ステップS12及びS13における加熱ステージST並びにツールTLの温度及びツールTLが印加する荷重のプロファイルを示す図である。横軸は時間を示しており、左縦軸は加熱ステージST並びにツールTLの温度を示しており、右縦軸はツールTLが印加する荷重を示している。
【0055】
時間T0~T1までの間の時間がステップS12の基板11が加熱ステージST上に載置されてから、ツールTLが素子載置部13の各々の上面上に発光素子20を載置した時までの時間を示す。また、時間T0~T5までの間の時間がステップS13における加熱ステージST並びにツールTLの温度及びツールTLが印加する荷重のプロファイルである。
【0056】
まず、時間T0において、基板11は、ダイボンド装置にセットされ、予めAuSnの溶融温度以上の所定の温度に加熱された加熱ステージSTに載置されて基板11が予備加熱される。当該予備加熱の間に、ツールTLは、例えば、ダイシングシート上でダイシングされた複数の発光素子20をピックアップする。
【0057】
次に、時間T1において、予めAuSnの溶融温度以下まで冷却されたツールTLがピックアップした複数の発光素子20の下面に形成された素子接合層24を素子載置部13の上面に接触させて載置する。
【0058】
次に時間T1から時間T2にかけて、ツールTLは、発光素子20を上方から荷重を印加して所定の荷重値となるまで押圧する。
【0059】
時間T2において、ダイボンド装置がツールTLの印加荷重が所定の荷重値となったことを検知すると、時間T2から時間T3にかけてダイボンド装置はツールTLをAuSnの溶融温度以上の所定の温度になるまで加熱を行う。
【0060】
時間T3において、ダイボンド装置がツールTLの温度が所定の温度まで加熱されたことを検知すると、ダイボンド装置はツールTLを所定の温度、荷重のまま時間T4までこれを保持する。なお、時間T3から時間T4までの間の時間で素子接合層24は、加熱によって溶融し、素子載置部13の第3の金属層13CであるAuと共晶反応を起こす。
【0061】
時間T4において、素子接合層24と素子載置部13の第3の金属層13Cとの共晶反応が終了するまで加熱ステージST並びにツールTLの温度及びツールTLの荷重が保持された後、ダイボンド装置は時間T4から時間T5にかけて加熱ステージST及びツールTLを所定の温度となるまで冷却する。
【0062】
時間T5において、ダイボンド装置が素子接合層24が完全に凝固された所定の温度となるまで冷却されたことを検知すると、ダイボンド装置は時間T5から時間T6にかけてツールTLが発光素子20に印加している荷重を減少させていく。
【0063】
時間T6において、ダイボンド装置がツールTLの発光素子20に印加している荷重を開放させると、ダイボンド装置はツールTLの発光素子20の吸着を開放し、素子接合工程が終了する。
【0064】
以上の時間T0~時間T6までの間の加熱ステージST並びにツールTLの温度及びツールTLが印加する荷重のプロファイルによって、発光素子20は上述の素子載置部13に対して1の方向にオフセットされた位置に接合される。
【0065】
次に、素子載置部13上に発光素子20が接合された基板11をボンディング装置にセットし、電極パッド23とボンディング部15とをボンディングワイヤBWにて接続する(ステップS14)。なお、ボンディングワイヤBWでの接続方法は、電極パッド23上に圧着ボールを形成してボンディング部15をステッチ接続する順ボンディングの態様、又は、ボンディング部15に圧着ボールを形成し予め電極パッド23上に形成したバンプ上にステッチ接続する逆ボンディングの態様のどちらでもよい。
【0066】
次に、
図10に示すように、発光素子20の発光部22の上面上に波長変換体30を接着する(ステップS15)。波長変換体30は、上述の通り、発光素子20の発光部22上に図示しない透光性の接着樹脂を介して配され接着される。また、波長変換体30は、発光素子20の各々の発光部22の上面を覆うような位置に配される。
【0067】
次に、
図11に示すように、基板11上に発光素子20の各々を封止し、かつ波長変換体30の側面を覆うように被覆部材40を形成する(ステップS16)。被覆部材40は、原料となる光散乱性の粒子を含有する熱硬化性樹脂を基板11に塗布し、これを加熱することで形成される。
【0068】
以上の製造工程を処理することにより、発光装置10を製造する。
【0069】
実施例1によれば、発光装置10は、基板11と、基板11上に形成された素子載置部13と、素子載置部13上に配された発光素子20と、を含む。また、発光素子20は、上面視において、素子載置部13の中心位置から1の方向にオフセットされた位置に接合される。また、発光装置10は、上面視において、発光素子20が素子載置部13の端部から突出して発光素子20の下面が露出しているオーバーハング領域OHと、発光素子20の下面と素子載置部13の上面が重なり合う接合領域JCと、素子載置部13の上面が露出している露出領域EXと、を有する。また、発光素子20と素子載置部13との接合時において、接合領域JC内の余剰の素子接合層24がオーバーハング領域OH及び露出領域EXに押し出され、貯留部PL及びフィレットFLを形成することにより、はんだボールの発生を抑えることができる。これにより、発光装置10によれば、発光素子20を基板11の素子載置部13に接合する際に接合用の金属部材による不具合の発生を抑えることが可能となる。
【0070】
なお、実施例1においては、発光素子20を1の方向にオフセットさせて接合する際、1の方向を基板11の長辺方向としたが、当該1の方向はこれに限定されない。すなわち、1の方向は基板11の短辺方向としてもよい。また、素子配列方向に沿ってボンディング部15が配列している場合、1の方向は、素子配列方向に沿うことが好ましい。
【実施例2】
【0071】
なお、実施例1においては、素子載置部13が矩形の断面形状を有するように形成されている場合について説明したが、素子載置部13の断面形状は、これに限定されない。
【0072】
図12は、実施例2に係る発光装置10Aの断面図である。
図12に示す断面図は、
図3と同様に、
図2のA-A線に相当する位置における断面を示している。
【0073】
発光装置10Aは、実施例1の発光装置10と基本的に同様の構成であり、同様の外観を有する。しかし、発光装置10Aは、素子載置部60が柱状の本体部61と本体部61の上面上に形成された底面が本体部61の上面端から側方に突出している錐台部62とからなる点について異なる。言い換えれば、発光装置10Aの素子載置部60は、柱状の本体部61と、本体部61の上面上に形成された底面が本体部61の上面端から側方に突出している錐台部62と、を有する。
【0074】
錐台部62の上面の面積は、対応する発光素子20の下面の面積よりも小さい面積に形成されている。また、錐台部62の底面の外縁は、実施例1の素子載置部13の上面形状と同様に、基板11の短辺方向に沿った辺の長さが約1.16mm、基板11の長辺方向に沿った辺の長さが約0.99mmで形成されている。また、互いに隣接する素子載置部60の錐台部62の底面は、例えば、約100μmの距離で離間するように形成されている。
【0075】
発光素子20は、実施例1と同様に、素子載置部60の中心位置から1の方向にオフセットされた位置に接合される。この時、オーバーハング領域OH、接合領域JC及び露出領域EXを画定する端部は、錐台部62の底面の端部となる。
【0076】
図13は、
図12の互いに隣接する素子載置部60、支持基板21及び素子接合層24の間のキャビティを示すBT部の拡大断面図である。
【0077】
錐台部62は、本体部61の上面から第1の金属層62Aと、第2の金属層62Bと、第3の金属層62Cとが順に積層された構造を有する。第1の金属層62Aは、本体部61と同一の材料からなり、例えば、Cu等の金属からなる。また、本体部61及び第1の金属層62Aは、例えば、電界めっきによって一体的に形成される。また、基板11の上面から第1の金属層62Aの上面までの高さは、約50μmの高さで形成されている。
【0078】
第2の金属層62Bは、例えば、電界めっきによって形成されたNiからなる金属層であり、第1の金属層62Aの上面及び側面を覆うように約5μmの厚さで形成されている。また、第3の金属層62Cは、例えば、電界めっきによって形成されたAuからなる金属層であり、第2の金属層62Bの上面及び側面を覆うように約1μmの厚さで形成されている。
【0079】
上記の通り、発光素子20は、素子載置部60の中心位置から1の方向に約40μmオフセットされた位置に接合される。また、この接合においては、実施例1と同様に、発光素子20を上方から押圧しつつ加熱、冷却を行うことで素子接合層24と第3の金属層62Cとを共晶接合する。
【0080】
発光素子20と素子載置部60との接合時、素子接合層24は、発光素子20が押圧されつつ溶融されることによって接合領域JC内の余剰の素子接合層24が押し広げられ、露出領域EX及びオーバーハング領域OHに押し出される。
【0081】
この時、溶融し押し出された素子接合層24は、接合領域JCのオーバーハング領域OHに面している錐台部62の側面部に濡れ広がる。当該錐台部62の側面は、その側面上に溶融した素子接合層24を貯留することによって、接合領域JCの接合時に余剰の素子接合層24の量を低減することが可能となる。
【0082】
また、露出領域EXにおいては、溶融して押し出された素子接合層24が第3の金属層62Cと共晶反応しつつ錐台部62の側面の下端まで濡れ広がる。また、露出領域EXに濡れ広がった素子接合層24の一部は、支持基板21の側面に這い上がり、錐台部62の側面の下端から支持基板21の側面にかけてフィレットFLを形成する。素子接合層24が錐台部62の側面の下端まで濡れ広がりかつフィレットFLを形成することによって、露出領域EXはより多くの余剰の素子接合層24を貯留することが可能となる。
【0083】
また、オーバーハング領域OHにおいては、錐台部62の側面の下端から支持基板21の下面端部にかけて、押し出された素子接合層24が表面張力によって凸状の曲面の表面形状を有する貯留部PLが形成される。錐台部62の側面まで素子接合層24が濡れ広がることによって、オーバーハング領域OHはより多くの余剰の素子接合層24を貯留することが可能となる。すなわち、発光装置10Aの素子接合層24は、錐台部62の上面及び側面に亘って延在している。
【0084】
また、実施例2の発光装置10Aの素子接合層24と素子載置部60の接する面積は、実施例1の発光装置10の素子接合層24と素子載置部13の接する面積よりも大きい。これにより、発光素子20と素子載置部60の接合強度をより高くすることが可能となる。
【0085】
また、実施例2の発光装置10Aは、素子接合層24が錐台部62の側面の下端まで濡れ広がることによって、素子接合層24が錐台部62を挟み込むような形状で接合されている。これにより、発光素子20が駆動して発熱を繰り返す場合において、素子接合層24と素子載置部60とが剥離しにくくなり、長期信頼性を向上させることが可能となる。
【0086】
実施例2によれば、発光装置10Aは、素子載置部60が柱状の本体部61と本体部61の上面上に形成された底面が本体部61の上面端から側方に突出している錐台部62とからなる。また、素子接合層24が錐台部62の側面の下端まで濡れ広がることにより、素子載置部60上により多くの余剰の素子接合層24を貯留することが可能となる。
【0087】
実施例2の発光装置10Aによれば、接合領域JC、オーバーハング領域OH及び露出領域EXは、より多くの余剰の素子接合層24を貯留することができ、より確実にはんだボールの発生を抑えることが可能となる。
【実施例3】
【0088】
また、実施例1においては、発光素子20を素子載置部13の中心位置から1の方向にオフセットされた位置に接合する場合について説明したが、発光素子20のオフセット方向は、複数の方向であってもよい。
【0089】
図14は、実施例3に係る発光装置10Bの上面図である。発光装置10Bは、実施例1の発光装置10と基本的に同様の構成であるが、発光素子20を載置する際に素子載置部13の中心位置からオフセットさせる方向を基板11の長辺方向及び短辺方向の両方とする点について異なる。
【0090】
実施例1の発光装置10は、発光素子20の載置位置のオフセット方向が1の方向のみであるため、フィレットFLは発光素子20の側面のうち1の側面に形成される。
【0091】
実施例3の発光装置10Bにおいては、発光素子20を素子載置部13の中心位置から基板11の長辺方向及び短辺方向の両方にオフセットして素子載置部13と接合する。すなわち、基板11の長辺方向に沿った断面方向において、オーバーハング領域OH1、接合領域JC1及び露出領域EX1が形成される。また、基板11の短辺方向に沿った断面方向において、オーバーハング領域OH2、接合領域JC2及び露出領域EX2が形成される。言い換えれば、発光素子20は、上面視において、支持基板21の下面が素子載置部13の上面に対して1の向き及び1の向きと異なる向きの他の向きに偏倚しており、支持基板21の下面が素子載置部13の上面の外縁よりも1の向き及び他の向きに突出するように接合されている。これにより、発光装置10Bによれば、フィレットFLは発光素子20の側面のうち2の側面に形成されるので、発光素子20と素子載置部13との接合強度をより向上させることが可能となる。
【0092】
なお、発光素子20のオフセット量は、はんだボールの発生と発光素子20と素子載置部13との接合強度を考慮して適宜設定すればよい。具体的には、発光素子20のオフセット量は、接合領域の面積減少率が実施例1と同様に4%となるように長辺方向及び短辺方向において調整してもよい。これにより、発光装置10Bは、実施例1と同等にはんだボールの発生を抑えることが可能となり、さらに発光素子20と素子載置部13との接合強度を向上させることが可能となる。
【0093】
また、発光素子20のオフセット量は、例えば、基板11の長辺方向においては実施例1と同様に約40μmの距離とした上で、短辺方向においてさらに増やしてもよい。これにより、発光装置10Bは、実施例1よりもさらにはんだボールの発生を抑えることが可能となる。
【0094】
なお、上述した実施例の各々においては、基板11上に基板11の長辺に沿った方向に複数の発光素子20が配列された発光装置である場合について説明した。しかし、基板11に搭載される発光素子20の数量は単数であってもよい。例えば、上面に金属からなる配線パターンが形成されている基板を用いる場合等において、発光素子を接合する接合用の金属部材による不具合の発生を抑えることが可能となる。
【0095】
また、上述した実施例の各々においては、平板形状の基板11を用いる場合について説明したが、基板11は、上面の外縁部に上方に向かって伸長する枠体を備えていてもよい。具体的には、基板11の当該枠体に囲まれた領域に素子載置部13、ボンディング部15、発光素子20、波長変換体30を配し、被覆部材40の原料を充填するようにしてもよい。この場合、基板11の上面から枠体の上面までの高さは、波長変換体30の上面の取り付け高さと同等以下の高さが好ましい。
【0096】
なお、上記に示した実施例の各々は、一例に過ぎない。例えば、上記した種々の実施例は組み合わせることができる。例えば、実施例2の素子載置部60に対して、実施例3のように発光素子20の載置位置を素子載置部13の中心位置から基板11の長辺方向及び短辺方向の両方にオフセットさせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 発光装置
11 基板
13 素子載置部
15 ボンディング部
20 発光素子
21 支持基板
22 発光部
23 電極パッド
24 素子接合層
30 波長変換体
40 被覆部材
60 素子載置部
61 本体部
62 錐台部