(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】自発光パネル、表示装置、および、自発光パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 59/122 20230101AFI20241024BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20241024BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20241024BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241024BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241024BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20241024BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20241024BHJP
H10K 59/82 20230101ALI20241024BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241024BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20241024BHJP
H10K 71/70 20230101ALI20241024BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241024BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20241024BHJP
H10K 50/80 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
H10K59/122
H05B33/14 Z
H05B33/10
G09F9/00 338
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
H05B33/02
H10K50/115
H10K59/82
H10K71/12
H10K71/60
H10K71/70
H10K77/10
H10K59/124
H10K50/80
(21)【出願番号】P 2020186615
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】重松 沙樹
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089293(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 99/00
H05B 33/00 - 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上方に配され、第1方向に延伸する複数の隔壁と、
前記基板上方において、隣り合う2つの前記隔壁の間隙に前記第1方向に列設される、第1電極を含む複数の下地層と、
前記第1方向に隣り合った2つの前記下地層の間隙を被覆する画素間規制層と、
前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に配される、塗布膜である機能層と、
前記機能層の上方に配される第2電極とを備え、
前記下地層のそれぞれは、上面に窪みを有し、
前記複数の下地層は、上面の窪みの少なくとも一部が対応する前記画素間規制層に被覆されていない特定下地層を含み、対応画素間規制層の上面に前記特定下地層側の端から他の下地層まで連続する溝が設けられ、前記特定下地層の上面の窪みの内部に前記機能層と同一の材料からなる塗布層を有
し、
前記基板は、前記下地層の下方に配線層を含み、前記下地層と前記配線層とを電気的に接続するコンタクトホールが開設されており、
前記下地層の上面の窪みは、前記コンタクトホール
に対応する部分のみが窪んでなる
ことを特徴とす
る自発光パネル。
【請求項2】
前記基板の上面を基準としたとき、前記画素間規制層の上面の高さは、前記溝の内部において前記下地層の上面の高さより高い
ことを特徴とする請求項
1に記載の自発光パネル。
【請求項3】
基板と、
前記基板上方に配され、第1方向に延伸する複数の隔壁と、
前記基板上方において、隣り合う2つの前記隔壁の間隙に前記第1方向に列設される、第1電極を含む複数の下地層と、
前記第1方向に隣り合った2つの前記下地層の間隙を被覆する画素間規制層と、
前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に配される、塗布膜である機能層と、
前記機能層の上方に配される第2電極とを備え、
前記下地層のそれぞれは、上面に窪みを有し、
前記複数の下地層は、上面の窪みの少なくとも一部が対応する前記画素間規制層に被覆されていない特定下地層を含み、対応画素間規制層の上面に前記特定下地層側の端から他の下地層まで連続する溝が設けられ、前記特定下地層の上面の窪みの内部に前記機能層と同一の材料からなる塗布層を有
し、
前記画素間規制層において、前記溝の前記特定下地層側の端と前記特定下地層の窪みは平面視したときに
、隣り合う2つの前記隔壁が並ぶ方向である第2方向に重なる位置にない
ことを特徴とする自発光パネル。
【請求項4】
前記基板は、前記下地層の下方に配線層を含み、前記下地層と前記配線層とを電気的に接続するコンタクトホールが開設されており、
前記下地層の上面の窪みは、前記コンタクトホールの一部である
ことを特徴とする請求項
3に記載の自発光パネル。
【請求項5】
前記画素間規制層の溝の内部に、前記機能層と同一の材料からなる塗布膜を備える
請求項1から4のいずれか1項に記載の自発光パネル。
【請求項6】
前記下地層と前記第2電極と前記機能層とを含む有機EL素子が前記基板上に複数形成されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の自発光パネル。
【請求項7】
前記機能層は、有機発光材料を含む
請求項6に記載の自発光パネル。
【請求項8】
前記画素間規制層において、前記溝の前記特定下地層側の端と前記特定下地層の窪みは平面視したときに重なる位置にない
請求項
1に記載の自発光パネル。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の自発光パネルを備える表示装置。
【請求項10】
基板を形成し、
前記基板上方に第1電極を含む下地層を複数形成し、
前記下地層を第1方向に区画する画素間規制層を形成し、
前記下地層を第2方向に区画する隔壁を形成し、
前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に機能層を塗布により形成し、
前記機能層の上方に第2電極を形成し、
前記下地層の形成において、前記下地層の上面に窪みが形成され、
前記画素間規制層の形成において、前記画素間規制層によって区画される2つの下地層の上方を連通するように溝を形成
し、
前記基板は、前記下地層の下方に配線層を含み、前記下地層と前記配線層とを電気的に接続するコンタクトホールが開設されており、
前記下地層の上面の窪みは、前記コンタクトホールに対応する部分のみが窪んでなる
ことを特徴とする自発光パネルの製造方法。
【請求項11】
基板を形成し、
前記基板上方に第1電極を含む下地層を複数形成し、
前記下地層を第1方向に区画する画素間規制層を形成し、
前記下地層を第2方向に区画する隔壁を形成し、
前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に機能層を塗布により形成し、
前記機能層の上方に第2電極を形成し、
前記下地層の形成において、前記下地層の上面に窪みが形成され、
前記画素間規制層の形成において、前記画素間規制層によって区画される2つの下地層の上方を連通するように溝を形成し、
前記画素間規制層において、前記溝の前記2つの下地層側のそれぞれの端と前記2つの下地層のそれぞれの窪みは平面視したときに前記第2方向に重なる位置にない
ことを特徴とする自発光パネルの製造方法。
【請求項12】
基板を形成し、
前記基板上方に第1電極を含む下地層を複数形成し、
前記下地層を第1方向に区画する画素間規制層を形成し、
前記下地層を第2方向に区画する隔壁を形成し、
前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に機能層を塗布により形成し、
前記機能層の上方に第2電極を形成し、
前記下地層の形成において、前記下地層の上面に窪みが形成され、
前記画素間規制層の形成は、前記画素間規制層が前記下地層の窪みを完全に覆っているか否かの検査と、前記画素間規制層が前記下地層の窪みを完全に覆っていない場合に当該画素間規制層によって区画される2つの下地層の上方を連通する溝の形成とを含む
ことを特徴とする自発光パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界発光現象や量子ドット効果を利用した発光素子を用いた自発光パネル、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL素子、量子ドット効果を利用したQLEDなどの発光素子を用いた自発光パネルを有する表示装置が普及しつつある。
【0003】
発光素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも発光層が挟まれた構造を有している。現在、発光層を含む機能層を効率よく形成する方法として、機能性材料を含むインクをウェットプロセスで塗布して形成することが行われている。ウェットプロセスでは、真空蒸着装置と比較して製造装置を小型化することができ、また、機能性材料を蒸着する際に使用するシャドウマスクを使用する必要がない。そのため、シャドウマスクの位置合わせ等の作業が必要なく、大型パネルの生成や量産性を考慮したパネルサイズを混合したような大型基板の製造も容易となり、効率の良いパネル生成に適した特徴がある。また蒸着法と異なり、ウェットプロセスでは、高価な発光材料等の機能性材料の使用効率が向上することより、パネル製造コストの低減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェットプロセスにより製造される自発光パネルでは、撥液性で高さの高い隔壁を平行に設け、隔壁間隙に同一構成の発光素子を複数配置する、いわゆるラインバンクが一般的である。ラインバンク方式では、隔壁により、混色等の意図しないインクの混合を抑止する。その一方で、同一の隔壁間隙に配される発光素子は親液性で高さの低い画素間規制層で区切ることにより、電気的に発光素子間を絶縁しつつ、ウェットプロセスにおいて複数の発光素子の予定領域に機能性材料を含むインクが濡れ広がるようにして、膜厚の均一化を図っている。また、発光素子の基板側の電極である画素電極はコンタクトホールを通じて制御回路と接続されており、画素電極のコンタクトホールに対応する領域は平坦性が低いため、画素間規制層は、一般に、コンタクトホールに対応する領域を被覆する役割も担っている。
【0006】
しかしながら、画素間規制層は画素電極や画素電極上に蒸着やスパッタリングで構成される層(以下、「蒸着層」と呼ぶ。また、画素電極と画素電極上の蒸着層との積層構造を以下「下地層」と呼ぶ)のパターニングとは別工程でパターニングされるため、フォトマスクの位置ずれなどにより、下地層のコンタクトホールに対応する領域が画素間規制層に被覆されず、ウェットプロセスの実行時において露出している場合がある。このような場合にウェットプロセスで機能層を形成すると、コンタクトホールに対応する領域の凹凸によりインクの局在化が発生し、機能層の膜厚が不均一になる課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、機能層を下地層上にウェットプロセスで形成する自発光パネルにおいて、機能層の膜厚を均一化する構成、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る自発光パネルは、基板と、前記基板上方に配され、第1方向に延伸する複数の隔壁と、前記基板上方において、隣り合う2つの前記隔壁の間隙に前記第1方向に列設される、第1電極を含む複数の下地層と、前記第1方向に隣り合った2つの前記下地層の間隙を被覆する画素間規制層と、前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に配される、塗布膜である機能層と、前記機能層の上方に配される第2電極とを備え、前記下地層のそれぞれは、上面に窪みを有し、前記複数の下地層は、上面の窪みの少なくとも一部が対応する前記画素間規制層に被覆されていない特定下地層を含み、対応画素間規制層の上面に前記特定下地層側の端から他の下地層まで連続する溝が設けられ、前記特定下地層の上面の窪みの内部に前記機能層と同一の材料からなる塗布層を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記態様の自発光パネルによれば、上面の窪みの少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない下地層において、機能層の形成時に、下地層の上面の窪みの内部に材料が流れ込むことで失われる機能層の材料を画素間規制層の溝を通じて隣り合う下地層上方から補充することができ、機能層の膜厚を均一化することができる。したがって、上面の窪みの一部または全部が画素間規制層に被覆されていない発光素子の輝度ムラを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路構成を示す模式ブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る自発光パネル10の各副画素100における回路構成を示す模式図である。
【
図3】実施の形態に係る自発光パネル10の模式平面図である。
【
図6】隔壁と画素間規制層を形成した段階におけるA0部の一部分の斜視図である。
【
図7】隔壁と画素間規制層を形成した段階におけるA1部の一部分の斜視図である。
【
図8】(a)は
図4におけるA1-A1の模式断面図、(b)は
図4におけるA2-A2の模式断面図、(c)は
図5におけるA3-A3の模式断面図である。
【
図9】凹部15が露出していない場合における正孔輸送層の形成過程を示す模式断面図であって、(a)は材料インク塗布工程の状態、(b)はインク塗布直後の状態、(c)は成膜が完了した状態を示す。
【
図10】凹部15が露出しており画素間規制層14Xに溝部14Xbがない場合における正孔輸送層の形成過程を示す模式断面図であって、(a)は材料インク塗布工程の状態、(b)はインク塗布直後の状態、(c)は成膜が完了した状態を示す。
【
図11】凹部15が露出しており画素間規制層14Xaに溝部14Xbが存在する場合における正孔輸送層の形成過程を示す模式断面図であって、(a)は材料インク塗布工程の状態、(b)はインク塗布直後の状態、(c)は成膜が完了した状態を示す。
【
図12】実施の形態2に係る自発光パネルの製造過程を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、基材上にTFT層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、TFT層上に層間絶縁層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料層が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、画素電極材料層上に正孔注入材料層が形成された状態を示す部分断面図である。(e)は、画素電極材料層と正孔注入材料層とがパターニングされて画素電極と正孔注入層の積層構造が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図14】実施の形態2に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、正孔注入層および層間絶縁層上に隔壁材料層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、隔壁が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層の材料インクが塗布され正孔輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、隔壁の開口部内に発光層の材料インクが塗布され発光層が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図15】実施の形態2に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、隔壁上及び発光層上に電子輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、電子輸送層上に電子注入層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図16】実施の形態2に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、正孔注入層および層間絶縁層上に画素間規制材料層が形成された状態を示す部分断面図である。(b)は、画素間規制材料層にフォトマスクを用いた露光が行われた状態を示す部分断面図である。(c)は、溝部以外の画素間規制層が形成された状態を示す部分断面図である。(d)は、画素間規制材料層にフォトマスクを用いた露光が行われた状態を示す部分断面図である。(e)は、画素間規制層の溝部周辺が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図17】実施の形態2に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図である。(a)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層の材料インクが塗布された状態を示す部分断面図である。(b)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。(c)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層の材料インクが塗布された状態を示す部分断面図である。(d)は、隔壁の開口部内に正孔輸送層が形成された状態を示す部分断面図である。
【
図18】変形例に係る画素間規制層の溝部の形状を示す模式平面図である。
【
図19】変形例に係る画素間規制層の溝部の形状を示す模式平面図である。
【
図20】実施の形態3に係る自発光パネルの製造過程を示すフローチャートである。
【
図21】実施の形態3に係る自発光パネルの製造工程の一部を模式的に示す模式平面図である。(a)は、画素間規制層の検査工程における状態を示す模式平面図である。(b)は、画素間規制層に溝部が形成された状態を示す模式平面図である。
【
図22】変形例に係る溝部の形状を示す模式図であって、(a)は模式平面図、(b)は部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪本開示の一態様に至った経緯≫
ラインバンク方式では、機能層材料を含むインクを撥液性の隔壁の間隙に塗布し、乾燥させることにより機能層を形成する。以下、このようなウェットプロセスで形成された膜を塗布膜とも呼ぶ。塗布膜の膜厚の均一性を向上させるためには、インクの濡れ広がる範囲が広く流動性が確保されていることが好ましい。したがって、一般的に、同一の隔壁間隙に形成される複数の発光素子に跨るように塗布膜を形成する。その構成を実現するため、同一の隔壁間隙内の発光素子を電気的に絶縁し区画するための画素間規制層が、画素電極及び蒸着型の機能層(下地層)と隣り合う下地層とを区画し、かつ、下地層と連続して塗布膜である機能層の下地となるように設けられる。
【0012】
また、自発光パネルでは、一般に、基板の下層部にTFT(Thin Film Transistor)などを含む制御回路を設け、制御回路と、基板上の発光素子の2つの電極のうち基板側の電極(以下、「画素電極」と呼ぶ)とを電気的に接続することで制御を容易としている。制御回路と画素電極とは基板の厚み方向に層間絶縁層によって隔てられているため、一般に、画素電極の直下となる位置に制御回路の接続電極を設け、層間絶縁層の接続電極上領域に設けたコンタクトホールを通じて、接続電極と画素電極とを電気的に接続する。一方で、画素電極は層間絶縁層とコンタクトホール上とに跨って形成されるため、特に、コンタクトホール上では窪みが形成されるなど平坦性が低下する。したがって、コンタクトホール直上が発光領域とならないよう、画素電極の端部に対応する位置にコンタクトホールを設け、コンタクトホールに対応する領域が画素間規制層に被覆されるように画素間規制層を設ける設計が行われる。
【0013】
しかしながら、下地層の形成工程と画素間規制層の形成工程とのそれぞれにおいてパターニングが行われるため、フォトマスクのずれ等により、1以上の発光素子において、コンタクトホールに対応する領域が画素間規制層に被覆されず機能層の形成工程において露出したままとなる場合がある。このような場合、ウェット方式で機能層を形成すると、機能層形成工程における乾燥プロセス、特にインクの流動性が失われる乾燥末期において、コンタクトホールに対応する領域に機能層材料が流入しても他の下地層上部からインクが補充されず、当該下地層上に形成される機能層の膜厚が小さくなる。
【0014】
発明者は、上記課題を解決する表示パネルの構造について検討し、本開示に至ったものである。
【0015】
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る自発光パネルは、基板と、前記基板上方に配され、第1方向に延伸する複数の隔壁と、前記基板上方において、隣り合う2つの前記隔壁の間隙に前記第1方向に列設される、第1電極を含む複数の下地層と、前記第1方向に隣り合った2つの前記下地層の間隙を被覆する画素間規制層と、前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に配される、塗布膜である機能層と、前記機能層の上方に配される第2電極とを備え、前記下地層のそれぞれは、上面に窪みを有し、前記複数の下地層は、上面の窪みの少なくとも一部が対応する前記画素間規制層に被覆されていない特定下地層を含み、対応画素間規制層の上面に前記特定下地層側の端から他の下地層まで連続する溝が設けられ、前記特定下地層の上面の窪みの内部に前記機能層と同一の材料からなる塗布層を有していることを特徴とする。
【0016】
上記態様の自発光パネルによれば、上面の窪みの少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない下地層において、機能層の形成時に、下地層の上面の窪みの内部に材料が流れ込むことで失われる機能層の材料を画素間規制層の溝を通じて隣り合う下地層上方から補充することができ、機能層の膜厚を均一化することができる。したがって、上面の窪みの一部または全部が画素間規制層に被覆されていない発光素子の輝度ムラを抑止することができる。
【0017】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記基板は、前記下地層の下方に配線層を含み、前記下地層と前記配線層とを電気的に接続するコンタクトホールが開設されており、前記下地層の上面の窪みは、前記コンタクトホールの一部である、としてもよい。
【0018】
上記構成により、コンタクトホールに起因する下地層の窪みに関して少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない場合において、窪みの内部に材料が流れ込むことによる機能層の膜厚ムラを抑止し、それによる発光素子の輝度ムラを抑止することができる。
【0019】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記基板の上面を基準としたとき、前記画素間規制層の上面の高さは、前記溝の内部において前記下地層の上面の高さより高い、としてもよい。
【0020】
上記構成により、溝の存在によって第1方向に隣り合う発光素子の間の絶縁性が低下することを抑止し、リーク電流の発生や規制容量の発生等を抑止することができる。
【0021】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記画素間規制層において、前記溝の前記特定下地層側の端と前記特定下地層の窪みは平面視したときに重なる位置にない、としてもよい。
【0022】
上記構成により、画素間規制層の溝を通じて隣り合う下地層上方から補充した機能層の材料が窪みに流れ落ちて失われる事態を抑止することができる。
【0023】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記画素間規制層の溝の内部に、前記機能層と同一の材料からなる塗布膜を備える、としてもよい。
【0024】
上記構成により、機能層の材料の流動性を十分に向上し、機能層の膜厚の均一性を高めることができる。
【0025】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記下地層と前記第2電極と前記機能層とを含む有機EL素子が前記基板上に複数形成されている、としてもよい。
【0026】
上記構成により、自発光パネルとして、有機EL素子を備える有機ELパネルを実現できる。
【0027】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルは、前記機能層は、有機発光材料を含む、としてもよい。
【0028】
上記構成により、発光層を塗布方式で形成する有機ELパネルにおいて、本開示の一態様を適用できる。
【0029】
また、本開示の一態様に係る表示装置は、本開示のいずれかの態様に係る自発光パネルを備えることを特徴とする。
【0030】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルの製造方法は、基板を形成し、前記基板上方に第1電極を含む下地層を複数形成し、前記下地層を第1方向に区画する画素間規制層を形成し、前記下地層を第2方向に区画する隔壁を形成し、前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に機能層を塗布により形成し、前記機能層の上方に第2電極を形成し、前記下地層の形成において、前記下地層の上面に窪みが形成され、前記画素間規制層の形成において、前記画素間規制層によって区画される2つの下地層の上方を連通するように溝を形成することを特徴とする。
【0031】
上記態様の自発光パネルの製造方法によれば、上面の窪みの少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない下地層において、機能層の形成時に、下地層の上面の窪みの内部に材料が流れ込むことで失われる機能層の材料を画素間規制層の溝を通じて隣り合う下地層上方から補充することができ、機能層の膜厚を均一化することができる。したがって、上面の窪みの一部または全部が画素間規制層に被覆されていない発光素子の輝度ムラを抑止した自発光パネルを製造することができる。さらに、上面の窪みの少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない下地層が発生したか否かに関わらず画素間規制層に溝を設けるため、下地層を検査する工程を必要とせず工程を単純化することができる。
【0032】
また、本開示の一態様に係る自発光パネルの製造方法は、基板を形成し、前記基板上方に第1電極を含む下地層を複数形成し、前記下地層を第1方向に区画する画素間規制層を形成し、前記下地層を第2方向に区画する隔壁を形成し、前記隔壁の間隙において前記下地層のそれぞれの上に機能層を塗布により形成し、前記機能層の上方に第2電極を形成し、前記下地層の形成において、前記下地層の上面に窪みが形成され、前記画素間規制層の形成は、前記画素間規制層が前記下地層の窪みを完全に覆っているか否かの検査と、前記画素間規制層が前記下地層の窪みを完全に覆っていない場合に当該画素間規制層によって区画される2つの下地層の上方を連通する溝の形成とを含む、としてもよい。
【0033】
上記態様の自発光パネルの製造方法によっても、上面の窪みの少なくとも一部が画素間規制層に被覆されていない下地層において、機能層の形成時に、下地層の上面の窪みの内部に材料が流れ込むことで失われる機能層の材料を画素間規制層の溝を通じて隣り合う下地層上方から補充することができ、機能層の膜厚を均一化することができる。したがって、上面の窪みの一部または全部が画素間規制層に被覆されていない発光素子の輝度ムラを抑止した自発光パネルを製造することができる。さらに、画素間規制層が下地層の上面の窪みを完全に被覆していない場合にのみ溝を設けるため、既存の製造工程に対して検査工程や溝開設工程を追加するだけでよく、既存の製造設備を最大限利用することができる。
【0034】
≪実施の形態1≫
1.表示装置の構成
以下、本開示に係る自発光パネルとして有機EL表示パネルを用いた表示装置(以下、単に「表示装置」と称する)の実施の形態について説明する。
【0035】
(1)表示装置1の回路構成
図1は、表示装置1の回路構成を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すように、表示装置1は、有機EL表示パネル10(以下、「自発光パネル10」と称する)と、これに接続された駆動制御回路部200とを有して構成されている。
【0037】
自発光パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルであって、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状(行列状)に配列され構成されている。
【0038】
駆動制御回路部200は、4つの駆動回路210~240と制御回路250とにより構成されている。
【0039】
(2)自発光パネル10の回路構成
自発光パネル10においては、複数の単位画素100eが行列状に配されて表示領域を構成している。各単位画素100eは、3個の有機EL素子、つまり、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に発光する3個の副画素100seから構成される。各副画素100seの回路構成について、
図2を用い説明する。
【0040】
図2は、表示装置1に用いる自発光パネル10の各副画素100seに対応する有機EL素子100における回路構成を示す回路図である。
【0041】
図2に示すように、本実施の形態に係る自発光パネル10では、各副画素100seが2つのトランジスタTr
1、Tr
2と一つのキャパシタC、及び発光部としての有機EL素子部ELとを有し構成されている。トランジスタTr
1は、駆動トランジスタであり、トランジスタTr
2は、スイッチングトランジスタである。
【0042】
スイッチングトランジスタTr2のゲートG2は、走査ラインVscnに接続され、ソースS2 は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタTr2 のドレインD2は、駆動トランジスタTr1のゲートG1に接続されている。
【0043】
駆動トランジスタTr1のドレインD1は、電源ラインVaに接続されており、ソースS1 は、有機EL素子部ELの画素電極(アノード)に接続されている。有機EL素子部ELにおける共通電極(対向電極:カソード)は、接地ラインVcatに接続されている。
【0044】
なお、キャパシタCの第1端は、スイッチングトランジスタTr2のドレインD2及び駆動トランジスタTr1のゲートG1と接続され、キャパシタCの第2端は、電源ラインVaと接続されている。
【0045】
自発光パネル10においては、隣り合う複数の副画素100se(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つの副画素100se)を組み合せて1つの単位画素100eを構成し、各単位画素100eが分布するように配されて画素領域を構成している。
【0046】
そして、各副画素100seのゲートG2からゲートラインが各々引き出され、自発光パネル10の外部から接続される走査ラインVscnに接続されている。同様に、各副画素100seのソースS2からソースラインが各々引き出され自発光パネル10の外部から接続されるデータラインVdatに接続されている。
【0047】
また、各副画素100seの電源ラインVa及び各副画素100seの接地ラインVcatは集約されて、表示装置1の電源ライン及び接地ラインに接続されている。
【0048】
なお、各有機EL素子の駆動回路は、上記のものに限られず、他の構成でも構わない。
【0049】
(3)自発光パネル10の全体構成
(3-1)自発光パネル10の概要
本実施の形態に係る自発光パネル10について、図面を用いて説明する。なお、図面は模式図であって、その縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0050】
図3は、自発光パネル10の模式平面図である。自発光パネル10は、有機化合物の電界発光現象を利用した有機EL表示パネルであり、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成された基板11(TFT基板)に、各々が画素を構成する複数の有機EL素子100が行列状に配され、上面より光を発するトップエミッション型の構成を有する。ここで、本明細書では、
図3におけるX方向、Y方向、Z方向を、それぞれ自発光パネル10における、行方向、列方向、厚み方向とする。
【0051】
図3に示すように、自発光パネル10は、基板11上をマトリックス状に区画してRGB各色の発光単位を規制する隔壁14Yと画素間規制層14Xとが配された区画領域10a(X、Y方向にそれぞれ10Xa、10Ya、区別を要しない場合は10aとする)と、区画領域10aの周囲に非区画領域10b(X、Y方向にそれぞれ10Xb、10Yb、区別を要しない場合は10bとする)とから構成されている。区画領域10aの列方向の外周縁は隔壁14Yの列方向の端部に相当する。非区画領域10bには、区画領域10aを取り囲む矩形状の封止部材(不図示)が形成されている。区画領域10aにおいて、隔壁14Yと画素間規制層14Xによって区画される各領域のうち、外周部を含む非表示領域10qは表示に寄与せず、非表示領域10qの内側に設けられる表示領域10pに有機EL素子100が形成される。なお、非表示領域10qには有機EL素子は形成されなくてもよいが、非表示領域10qに有機EL素子が形成されるとしてもよい。
【0052】
(3-2)有機EL素子100の概要
図4は、
図3におけるA0部の拡大平面図である。
【0053】
自発光パネル10の表示領域10pには、複数の有機EL素子100から構成される単位画素(画素領域)100eが行列状に隙間なく配されている。各単位画素100eには、赤色に発光する発光素子100R、緑色に発光する発光素子100G、青色に発光する発光素子100Bの3種類の発光素子が副画素100seとして含まれる。すなわち、行方向に並んだ発光素子100R、100G、100Bが1組となりカラー表示における単位画素100eを構成する。発光素子100R、100G、100Bは、それぞれ、赤色に発光する発光領域100aR、緑色に発光する発光領域100aG、青色に発光する発光領域100aB(以後、100aR、100aG、100aBを区別しない場合は、「発光領域100a」と略称する)と、非発光領域100bとを含む。なお、
図4においては、発光領域100aR、発光領域100aG、発光領域100aBの行方向(X方向)の幅がそれぞれ違う例について示しているが、発光領域100aR、100aG、発光領域100aBの行方向(X方向)の幅は、すべて同一としてもよいし、2つが同一で1つのみ異なる、としてもよく、任意の設計であってよい。
【0054】
自発光パネル10には、画素電極13と正孔注入層15との積層構造である下地層が、基板11上に行及び列方向にそれぞれ所定の距離だけ離れた状態で行列状に複数配されている。3つの正孔注入層15とその周辺まで領域が単位画素(画素領域)100eに含まれ、画素単位100eと画素単位100eの境界は、列方向に隣り合う正孔注入層15の間隙を列方向に二分する直線、および、行方向に隣り合う発光素子100B、100Rの画素電極13の間隙を行方向に二分する直線となる。
【0055】
正孔注入層15とこれに隣り合う正孔注入層15とは、互いに絶縁されている。隣り合う正孔注入層15間には、絶縁層形式のライン状に延伸する絶縁層が設けられている。
【0056】
1つの正孔注入層15と、これに行方向に隣り合う正孔注入層15との間に位置する基板11上の領域上方には、各条が列方向に延伸する隔壁14Yが複数列並設されている。そのため、発光領域100aの行方向外縁は、隔壁14Yの行方向外縁により規定される。
【0057】
一方、1つの正孔注入層15と、これに列方向に隣り合う正孔注入層15との間に位置する基板11上の領域上方には、画素間規制層14Xがそれぞれ設けられている。画素間規制層14Xが形成される領域は、正孔注入層15上方の発光層17において有機電界発光が生じないために非発光領域100bとなる。そのため、発光領域100aの列方向における外縁は、画素間規制層14Xの列方向外縁により規定される。
【0058】
なお、ここでは、画素電極13および正孔注入層15は全副画素に対して同一の形状であり、正孔注入層15の一部が隔壁14Y、画素間規制層14Xによって被覆される構成であるとした。しかしながら、隔壁14Y、画素間規制層14Xによって被覆される個所は電極として機能しない部分であるから、隔壁14Yによって被覆されるべき部分、および画素間規制層14Xによって被覆されるべき部分のうち凹部15aとその近傍以外の部分については画素電極13および正孔注入層15を形成しない、としてもよい。
【0059】
隣り合う隔壁14Y間を間隙14aと定義したとき、間隙14aには、発光領域100aRに対応する赤色間隙14aR、発光領域100aGに対応する緑色間隙14aG、発光領域100aBに対応する青色間隙14aB(以後、間隙14aR、間隙14aG、間隙14aBを区別しない場合は、「間隙14a」と称する)が存在し、自発光パネル10は、隔壁14Yと間隙14aとが交互に多数並んだ構成を採る。
【0060】
自発光パネル10では、複数の画素領域100eが、発光領域100aと非発光領域100bとが交互に繰り返されるように、間隙14aR、間隙14aG、間隙14aBに沿って列方向に並んで配されている。非発光領域100bには、画素電極13とTFTのソースS1 とを接続する接続凹部(コンタクトホール)があり、下地層の上面、すなわち、正孔注入層15の上面には、コンタクトホール直上の一部または全部の領域に凹部15aが形成される。
【0061】
図6は、隔壁14Yと画素間規制層14Xの形成状態を説明するための、上記自発光パネル10の一部の斜視図である。同図に示すように、画素間規制層14Xの高さが隔壁14Yの高さよりも十分低い構造となっている(ラインバンク方式)。
【0062】
上記構成により、間隙14aR、14aG、14aBのそれぞれに吐出されたインクは、その液面が画素間規制層14Xよりも高くなり、インクが列方向に流動するため、インクの液面が平坦化され膜厚の列方向における変動が少なくなる。
【0063】
また、
図5は、
図3におけるA1部の拡大平面図である。
【0064】
A1部においては、A0部とは異なり、正孔注入層15の上面の凹部15aの一部が画素間規制層14Xaに被覆されず、当該一部とその周辺部が発光領域100a内に存在している。但し、画素間規制層14Xaは、列方向に隣り合う2つの正孔注入層15の上面に跨るように形成され、列方向に隣り合う2つの正孔注入層15を電気的に絶縁している。
【0065】
一方、凹部15aの一部と接触している画素間規制層14Xaの上面には、画素間規制層14Xaより上面の低い溝部14Xbが設けられている。溝部14Xbは、画素間規制層14Xaによって区画される2つの正孔注入層15(下地層)に面するように設けられる。すなわち、溝部14Xbは、一端が発光領域100aに接し、もう一端が他の発光領域100aに接している。
【0066】
図7は、隔壁14Yと画素間規制層14Xaの形成状態を説明するための、上記自発光パネル10の一部の斜視図である。同図に示すように、画素間規制層14Xaの高さが隔壁14Yの高さよりも十分低い構造となっており、溝部14Xbの内部の高さは画素間規制層14Xaの上面高さよりさらに低い構造となっている。
【0067】
上記構成により、間隙14aR、14aG、14aBのそれぞれに吐出されたインクは、その液面が画素間規制層14Xaよりも低い状態となっても、溝部14Xbより高い状態であればインクが列方向に流動するため、インクの液面が平坦化され膜厚の列方向における変動が少なくなる。詳しくは後述する。
【0068】
(3-3)自発光パネル10の各部構成
以下、自発光パネル10の各部構成について説明する。
図8(a)は、
図4のA1-A1断面に相当する断面模式図である。
図8(b)は、
図4のA2-A2断面に相当する断面模式図である。
図8(c)は、
図5のA3-A3断面に相当する断面模式図である。
【0069】
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT層112とを含む。TFT層112には、画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。これらよりプロセス温度に対して耐久性を有するように選択し、1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0070】
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、
図4および
図5に示すように、層間絶縁層12には、画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
【0071】
<画素電極>
画素電極13は層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
【0072】
本実施形態においては、画素電極13は、光反射性の陽極として機能する。
【0073】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0074】
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0075】
なお、画素電極13は、光透過性の陽極として機能してもよい。このとき、画素電極13は、金属材料で形成された金属層、金属酸化物で形成された金属酸化物層のうち少なくとも一方を含んでいる。金属層の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。透光性を確保するため、金属層の膜厚は1nm~50nm程度である。金属酸化物層の材料としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)が挙げられる。この場合も、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。さらに、本構成の場合は、基板11のうち少なくとも画素電極13の下側に位置する部分が透光性を備える必要がある。
【0076】
なお、上述の通り、画素電極13は、隔壁14Y、画素間規制層14Xに被覆される領域の一部または全部に相当する場所が形成されない、としてもよい。但し、画素電極として機能するために、画素電極として機能する部分と、TFTとが電気的に接続されている必要がある。
【0077】
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔(ホール)の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15の材料の具体例としては、例えば、遷移金属の酸化物であり、遷移金属の具体例としては、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などである。遷移金属は複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与するからである。この場合、正孔注入層15は、大きな仕事関数を有することが好ましい。正孔注入層15が遷移金属の酸化物で形成される場合、正孔注入層15は真空蒸着法、スパッタリングなどで形成することができる。後述する正孔輸送層16が塗布膜として形成される場合、正孔注入層15と画素電極13との積層構造が下地層となる。
【0078】
なお、正孔注入層15は、PEDOT/PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を用いて形成されてもよい。正孔注入層15が塗布膜として形成される場合、正孔注入層15は機能層となり、画素電極13が下地層となる。または、正孔注入層15は、遷移金属の酸化物上に導電性ポリマー材料を積層した積層構造であってもよい。この場合は、遷移金属の酸化物を真空蒸着法、スパッタリングなどで形成し、エッチングなどで成形した後、導電性ポリマー材料を塗布法で成膜することにより正孔注入層15を形成することができる。このとき、正孔注入層15のうち遷移金属の酸化物と、画素電極13との積層構造が下地層となり、正孔注入層15のうち、導電性ポリマー材料で形成された部分が機能層となる。
【0079】
<隔壁14Y>
隔壁14Yは、下地層の上面である正孔注入層15の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で正孔注入層15上に形成されている。正孔注入層15上面において隔壁14Yで被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁14Yは、サブピクセルごとに設けられた間隙14aを有する。
【0080】
隔壁14Yは、正孔注入層15が形成されていない部分では、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、正孔注入層15が形成されていない部分では、隔壁14Yの底面は層間絶縁層12の上面と接している。
【0081】
隔壁14Yは、正孔輸送層16や発光層17を塗布法で形成する際、塗布されたインクが隣り合うサブピクセルのインクと接触しないようにするための構造物として機能する。隔壁14Yは、頂部とそれに続く側壁部の上部が撥液部分であり、側壁部のうち撥液部分を除く部分が親液部分である。隔壁14Yは、絶縁性の樹脂材料からなる母材に、フッ素系化合物やシリコーン系化合物などの撥液性の界面活性剤が添加されてなる。絶縁性の樹脂材料である母材としては、例えば、ポジ型の感光性材料を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。なお、母材はポジ型の感光性材料に限られず、例えば、ネガ型の感光材料を用いてもよいし、感光性でない材料を用いてもよい。
【0082】
隔壁14Yは、それぞれ四角錐台状もしくはそれに類似した形状であり、断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状もしくは上に凸のお椀状である。
【0083】
<画素間規制層14X>
画素間規制層14Xは、下地層の上面である正孔注入層15の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で正孔注入層15上に形成されている。画素間規制層14Xは、隔壁14Yの間隙14aを横断するように形成され、列方向に隣り合う正孔注入層15を区画している。
【0084】
本実施の形態において、画素間規制層14Xは、正孔注入層15が形成されていない部分では、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、正孔注入層15が形成されていない部分では、画素間規制層14Xの底面は層間絶縁層12の上面と接している。
【0085】
画素間規制層14Xは、列方向に隣り合う正孔注入層15間を電気的に絶縁するとともに、正孔輸送層16や発光層17を塗布法で形成する際、塗布されたインクの列方向への流動を制御するためのものである。画素間規制層14Xの形状は、四角錐台状もしくはそれに類似した形状であり、断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状もしくは上に凸のお椀状である。また、層間絶縁層12からの画素間規制層14Xの高さは、層間絶縁層12からの隔壁14Yの高さよりも低い。さらに、画素間規制層14Xが正孔注入層15の凹部15aを完全に被覆していない場合には、
図5に示すように、画素間規制層14Xaの上面に、画素間規制層14Xaの列方向における2つの端部を連通する溝部14Xbを有している。
図5、
図7および
図8(b)、(c)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの一方の列方向端部から他方の列方向端部まで延伸しており、その底面は、画素間規制層14Xaの上面より低い。なお、溝部14Xbの延伸方向に直交する断面形状は、矩形状、U字溝、V字溝など、任意の形状であってよい。なお、画素間規制層14Xaは、溝部14Xbを有する以外は画素間規制層14Xと同じ形状である。画素間規制層14Xは、樹脂材料からなり、例えば、ポジ型の感光性材料を用いることができる。このような感光性材料として、具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。なお、樹脂材料はポジ型の感光性材料に限られず、例えば、ネガ型の感光材料を用いてもよいし、感光性でない材料を用いてもよい。
【0086】
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有し、正孔を正孔注入層15から発光層17へと効率よく輸送するため、正孔移動度の高い有機材料で形成されている。正孔輸送層16の形成は、有機材料溶液の塗布および乾燥により行われる。正孔輸送層16を形成する有機材料としては、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物を用いることができる。
【0087】
正孔輸送層16の膜厚は、発光色に関わらず一定であるとしてもよいし、発光色ごとに異なるとしてもよい。例えば、発光素子100の共振器構造による光学長の調整を正孔輸送層16の膜厚で行ってもよく、発光色の波長が長い発光素子100ほど正孔輸送層16の膜厚が大きい、としてもよい。
【0088】
なお、下地層上面の凹部である凹部15aの一部または全部が画素間規制層14Xによって被覆されていない場合、正孔輸送層16をウェットプロセスで形成すると、凹部15aの内部にも、正孔輸送層16と同一の材料からなる塗布膜が形成される。但し、凹部15aの内部では、凹部15aの外部と比較して機能層の膜厚が過剰に厚くなり、局所的に電気抵抗が高くなって電流がほとんど流れない。したがって、画素間規制層14Xによって被覆されていない凹部15aの内部は非発光領域100bとなり、凹部15aの内部の塗布膜は正孔輸送層16としては機能しない。
【0089】
<発光層>
発光層17は、間隙14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0090】
発光素子100が有機EL素子である場合、発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質を用いることができる。また、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質を用いることができる。また、発光層17は、ポリフルオレンやその誘導体、ポリフェニレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の高分子化合物等、もしくは前記低分子化合物と前記高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。なお、発光素子100は量子ドット発光素子(QLED;Quantum-dot Light Emitting Diode)であってもよく、発光層17の材料として量子ドット効果を有する材料を使用することができる。
【0091】
なお、下地層上面の凹部である凹部15aの一部または全部が画素間規制層14Xによって被覆されていない場合、発光層17をウェットプロセスで形成すると、凹部15aの内部にも、発光層17と同一の材料からなる塗布膜が形成される。但し、凹部15aの内部では、凹部15aの外部と比較して機能層の膜厚が過剰に厚くなり、局所的に電気抵抗が高くなって電流がほとんど流れない。したがって、画素間規制層14Xによって被覆されていない凹部15aの内部は非発光領域100bとなり、凹部15aの内部の塗布膜は発光層17としては機能しない。
【0092】
<電子輸送層>
電子輸送層18は、複数の画素に共通して発光層17および隔壁14Y上に形成されており、対向電極20から注入された電子を発光層17へと輸送する機能を有する。電子輸送層18は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0093】
電子輸送層18の形成は、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナンスロリン誘導体などの材料を蒸着法により複数の画素に共通して成膜することでなされる。なお、電子輸送層18の形成は塗布法であってもよく、この場合、電子輸送層18は、発光層17等と同様、画素ごとに形成されてもよい。
【0094】
<電子注入層>
電子注入層19は、電子輸送層18上に複数の画素に共通して設けられており、対向電極20から発光層17への電子の注入を促進させる機能を有する。
【0095】
電子注入層19は、例えば、電子輸送性を有する有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料がドープされてなる。ここで、ドープとは、金属材料の金属原子または金属イオンを有機材料中に略均等に分散させることを指し、具体的には、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相を形成することを指す。なお、それ以外の相、特に、金属片や金属膜など、金属材料のみからなる相、または、金属材料を主成分とする相は、存在していないことが好ましい。また、有機材料と微量の金属材料を含む単一の相において、金属原子または金属イオンの濃度は均一であることが好ましく、金属原子または金属イオンは凝集していないことが好ましい。金属材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類から選択されることが好ましい。電子輸送性を有する有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
【0096】
なお、電子注入層19は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される金属のフッ化物層を発光層17側に有していてもよい。
【0097】
電子注入層19の形成は、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナンスロリン誘導体などの材料と、金属材料とを共蒸着法により複数の画素に共通して製膜することでなされる。なお、電子注入層19の形成は塗布法であってもよく、この場合、電子注入層19は、発光層17等と同様、画素ごとに形成されてもよい。
【0098】
<対向電極>
対向電極20は、複数の画素に共通して電子注入層19上に形成されており、陰極として機能する。
【0099】
本実施の形態では、対向電極20は、透光性と導電性とを兼ね備えており、金属材料で形成された金属層、金属酸化物で形成された金属酸化物層のうち少なくとも一方を含んでいる。透光性を確保するため、金属層の膜厚は1nm~50nm程度である。金属層の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム-銀合金(MgAg)、インジウム-銀合金が挙げられる。Al合金としては、マグネシウム-アルミニウム合金(MgAl)、リチウム-アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。その他の合金として、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金が挙げられる。金属酸化物層の材料としては、例えば、ITO、IZOが挙げられる。
【0100】
陰極は、金属層単独、または、金属酸化物層単独で構成してもよいが、金属層の上に金属酸化物層を積層した積層構造、あるいは金属酸化物層の上に金属層を積層した積層構造としてもよい。
【0101】
なお、画素電極13および画素電極13下の層間絶縁層12、基板11が透光性を有する場合は、対向電極20は光反射性の電極であるとしてもよい。この場合、対向電極20の材料としては、Ag、Al、Al合金、Mo、APC、ARA、MoCr、MoW、NiCrを用いることができる。
【0102】
<封止層>
対向電極20の上には、封止層21が設けられている。封止層21は、基板11の反対側から不純物(水、酸素)が対向電極20、電子注入層19、電子輸送層18、発光層17等へと侵入するのを防ぎ、不純物によるこれらの層の劣化を抑制する機能を有する。封止層21は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0103】
本実施の形態においては、有機EL表示パネル10がトップエミッション型であるため、封止層21は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0104】
<その他>
区画領域10aのうち非表示領域10qについては、有機EL素子100が形成されてもよく、有機EL素子100を構成する一部の要素のみが形成されてもよいし、有機EL素子100が形成されなくてもよい。非表示領域10qの各領域について発光層17、正孔輸送層16等の塗布膜を形成してダミー画素としてもよく、ダミー画素に塗布膜を形成することにより、塗布膜の形成時(乾燥時)に溶媒の蒸気圧を均一化し表示領域10pにおける塗布膜の膜厚ムラを抑止することができる。
【0105】
なお、非表示領域10qについて、TFTは設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0106】
2.実施の形態に係る溝部14Xbの効果
以下、模式断面図を用いて、実施の形態に係る溝部14Xbの効果について説明する。
【0107】
図9(a)~(c)は、凹部15aが画素間規制層14Xに完全に被覆されている場合の、正孔輸送層16の材料インクの塗布直後から乾燥完了までの状態を示す、列方向の断面模式図である。正孔輸送層16をウェットプロセスで成膜する場合、
図9(a)に示すように、正孔輸送層16の材料を含むインク滴160a、b、c、dを塗布する。インク滴160a、b、c、dは正孔注入層15上(下地層上)または画素間規制層14Xに触れると間隙14a内に濡れ広がり、インク滴160同士が接触して、
図9(b)に示すように、インク161が列方向におよそ均一に濡れ広がる。最終的には
図9(c)に示すように、正孔注入層15上(下地層上)および画素間規制層14X上に、ほぼ均一の膜厚を有する塗布膜が形成され、塗布膜のうち、発光領域100a内に存在する部分が正孔輸送層16となる。
【0108】
一方、
図10(a)~(c)は、凹部15aが画素間規制層14Xに完全に被覆されておらず、溝部14Xbが存在しない場合における、正孔輸送層16の材料インクの塗布直後から乾燥完了までの状態を示す、列方向の断面模式図である。
図10(a)に示すように、正孔輸送層16の材料を含むインク滴160a、b、c、dを塗布する。インク滴160a、b、c、dは正孔注入層15上(下地層上)または画素間規制層14Xに触れると間隙14a内を濡れ広がる。しかしながら、凹部15aが露出しているため、凹部15a上またはその近傍において正孔注入層15上(下地層上)または画素間規制層14Xに触れたインク滴160は、その一部または全部が凹部15a内部に流れ込んだり、凹部15aの近傍に滞留したりするため、列方向(Y方向)に十分に濡れ拡がらない。したがって、正孔輸送層16の材料を含むインク滴160の滴下される位置と、画素間規制層14Xおよび露出した凹部15aとの位置関係によっては、
図10(b)に示すように、インク161の厚さにおいて、列方向(Y方向)にムラが生じることがある。したがって、最終的には
図10(c)に示すように、インク161の列方向(Y方向)における分布の偏りが正孔輸送層16の膜厚に反映され、正孔輸送層16の膜厚が列方向(Y方向)に不均質となる。
【0109】
これに対し、
図11(a)~(c)は、凹部15aが画素間規制層14Xaに完全に被覆されていないが、溝部14Xbが存在する場合における、正孔輸送層16の材料インクの塗布直後から乾燥完了までの状態を示す、列方向の断面模式図である。
図11(a)に示すように、正孔輸送層16の材料を含むインク滴160a、b、c、dを塗布する。インク滴160a、b、c、dは正孔注入層15上(下地層上)または画素間規制層14Xに触れると間隙14a内を濡れ広がり、インク滴160同士が接触して、
図9(b)に示すように、インク161が列方向におよそ均一に濡れ広がる。露出した凹部15aの近傍においては、上述したように、正孔注入層15上(下地層上)または画素間規制層14Xに触れたインク滴160は、その一部または全部が凹部15a内部に流れ込んだり、凹部15aの近傍に滞留したりする。しかしながら、画素間規制層14Xaには溝部14Xbが設けられているため、画素間規制層14X上に滴下されたインク滴160、または、溝部14Xbに接触したインク滴160は、溝部14Xb内を容易に流動する。したがって、凹部15aの近傍に滞留したインクは溝部14Xbを通じて画素間規制層14Xを越えることができ、また、凹部15a内部にインクが流れ込み凹部15a近傍でインクが不足した場合には、溝部14Xbを通じて画素間規制層14Xを超えた先の他の下地層上からインクが補充される。したがって、
図11(b)に示すように、インク161の厚さにおいて、列方向(Y方向)にムラの発生が抑制される。したがって、
図11(c)に示すように、凹部15aの一部が画素間規制層14Xから露出している正孔注入層15上においても、正孔輸送層16の膜厚のムラの発生を抑制することができる。
【0110】
なお、溝部14Xbは画素間規制層14Xaを超えて隣り合う2つの下地層上を連通させインクの流路として機能する必要がある。したがって、溝部14Xbは、少なくとも、画素間規制層14Xaの列方向の一端から多端まで連続していることが好ましい。また、上述したように、溝部14Xbは、凹部15a内部への流入によって減少したインクを補充する役割を有するため、補充されたインクが凹部15a内部へ流入することは好ましくない。したがって、溝部14Xbは、凹部15aが露出している側の画素間規制層14Xaの列方向端部については凹部15aから離れていることが好ましく、少なくとも凹部15a上に存在しないことが好ましい。
【0111】
さらに、画素間規制層14Xaは溝部14Xbにおいても、画素間規制層14Xaを超えて隣り合う2つの下地層上を電気的に絶縁する必要がある。したがって、溝部14Xbの底の高さは下地層の上面より高い。例えば、画素電極13の膜厚を200nm、正孔注入層15の膜厚を9nmとしたとき、層間絶縁層12の上面から溝部14Xbの底までの膜厚方向の距離は、少なくとも209nmより大きい。
【0112】
なお、層間絶縁層12の上面を基準としたときの溝部14Xbの底の高さは、均一であってもよいし、または、凹部15aが露出している下地層側が低く、他方の下地層側が高い、としてもよい。露出した凹部15a内部にインクが流れ込む現象を抑制したい場合、凹部15aが露出している下地層に向かって低くなる傾斜を設けることにより、凹部15a内部に流れ落ちたインクの補充がより容易となる。または、凹部15aが露出している下地層側が高く、他方の下地層側が低い、としてもよい。露出した凹部15aの近傍にインクが滞留する現象を抑止したい場合は、凹部15aが露出している下地層に向かって高くなる傾斜を設けることにより、凹部15a近傍に駐留したインクを画素間規制層14Xaを超えた先の他の下地層上に排出することが容易となる。
【0113】
なお、上述した正孔輸送層16の材料を含むインクの列方向(Y方向)における濡れ拡がりの態様およびインクの偏在状態は一例であり、凹部15aの一部が画素間規制層14Xから露出している場合において、上述の現象が起きない場合や、上述の現象以外の原因によって列方向(Y方向)におけるインクの偏在が発生する場合がある。そのような場合であっても、実施の形態に係る画素間規制層の溝部は、凹部15aの一部が画素間規制層14Xから露出していることに起因して列方向(Y方向)におけるインクの偏在が発生しうる場合に、溝部を通じたインクの流動によって機能層の膜厚のばらつきを抑止することができるため有用である。
【0114】
<小括>
以上説明したように、実施の形態に係る画素間規制層の溝部は、下地層のコンタクトホールに対応する凹凸が被覆されていない場合においても、塗布層の膜厚を均一化させる構成として好適である。したがって、画素間規制層が、列方向に隣り合う発光素子を電気的に絶縁しているものの下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない、という程度に位置ずれを起こしている場合においても、機能層の膜厚のばらつきを抑止することができるので、輝度ムラのない高品質な自発光パネルを製造することができ、歩留まり向上に奏功する。また、コンタクトホールと画素間規制層との相対位置のずれ許容量が小さい場合において、相対位置のずれがずれ許容量より大きくなっても機能層の膜厚のばらつきを抑止することができるので、例えば、開口率の向上などのための設計が容易となる。
【0115】
≪実施の形態2≫
1.有機EL表示パネル10の製造方法
実施の形態2では、実施の形態1に係る有機EL表示パネル10の製造方法の1つについて、図面を用い説明する。
【0116】
図12は、有機EL表示パネル10の製造方法を示すフローチャートである。
図13から
図15は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す模式断面図であり、
図4のA1-A1断面に相当する。
図16(a)~(c)および
図17(a)、(b)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。
図16(d)~(e)および
図17(c)、(d)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す模式断面図であり、
図5のA3-A3断面に相当する。
【0117】
(1)基板11の作成
まず、基材111を準備し(ステップS10)、基材111上にTFT層112を成膜して基板11(TFT基板)を作成する(ステップS10、
図13(a))。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
【0118】
(2)層間絶縁層12の作成
次に、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、ポジ型の感光性材料であるアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂を溶媒に溶解させた溶液を、スピンコート法などを用いて一様に塗布し、露光、現像することにより形成される(
図13(b))。
【0119】
なお、
図13(b)には図示していないが、露光時にコンタクトホールを開設し、その後、コンタクトホール内に接続電極を形成する。
【0120】
(3)画素電極13および正孔注入層の形成
次に、
図13(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(ステップS31)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0121】
次に、
図13(d)に示すように、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成する(ステップS32)。正孔注入材料層150は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0122】
そして、
図13(e)に示すように、画素電極材料層130および正孔注入材料層150をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の、画素電極13と正孔注入層15からなる下地層を形成する(ステップS33)。
【0123】
(4)画素間規制層14Xaの形成
次に、正孔注入層15および層間絶縁層12上に、画素間規制層14Xaの材料である画素間規制層用樹脂を塗布し、画素間規制材料層140Xを形成する(
図16(a))。行バンク用樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂が用いられる。画素間規制材料層140Xは、例えば、フェノール樹脂など副壁用樹脂を溶媒に溶解させた溶液を正孔注入層15上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。
【0124】
次に、フォトマスクを用いて画素間規制層14Xaをパターン露光する(
図16(b)、
図16(d))。このとき、フォトマスク301の光透過部302Aは、画素間規制層14Xaが形成されない発光領域100aの予定領域に相当する。一方、画素間規制層14Xaが形成されるべき領域のうち、溝部14Xbが形成されるべき領域についてはフォトマスク301のハーフトーン部302Hが、それ以外の領域についてはフォトマスク301の遮光部302Sが、それぞれ対応する。より具体的には、コンタクトホールの直上については遮光部302Sが対応し、フォトマスク301において遮光部302Sとハーフトーン部302Hとが行方向に隣接している。
【0125】
続けて、現像によって露光部分を取り除き焼成する。これにより、
図16(c)に示すように、コンタクトホール直上を含む、溝部14Xbの予定領域以外の画素間規制層14Xa予定領域には、画素間規制層14Xaが形成される。一方、
図16(e)に示すように、コンタクトホール直上以外であって溝部14Xbの予定領域である画素間規制層14Xa予定領域には、画素間規制層14Xaの上面より上面高さの低い溝部14Xbが形成される。これにより、画素間規制層14Xaが完成する(ステップS40)。
【0126】
なお、ここでは1つのフォトマスクを用いた1回の露光によって、溝部14Xbが形成された画素間規制層14Xaを一度に形成するとしたが、画素間規制層14Xaの予定領域以外を露光した後、溝部14Xbの予定領域をさらに露光してもよい。
【0127】
(5)隔壁14Yの形成
次に、
図14(a)に示すように、正孔注入層15、層間絶縁層12、画素間規制層14Xa上に、隔壁14Yの材料である隔壁用樹脂を塗布し、隔壁材料層140Yを形成する(ステップS50)。隔壁用樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂に、撥液性を有する界面活性剤であるフッ素化合物が添加されて用いられる。
【0128】
次に、フォトマスクを用いて隔壁材料層140Yをパターン露光する。続けて、現像によって露光部分を取り除き焼成することにより、
図14(b)に示すように、隔壁14Yを形成する。
【0129】
(6)正孔輸送層16の成膜
次に、
図14(c)および
図17(a)、(c)に示すように、隔壁14Yが規定する間隙14aR、14aG、14aBのそれぞれに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、塗布装置のノズル4010から吐出して間隙14aR、14aG、14aB内の正孔注入層15上に塗布する。特に、
図17(a)、(c)に示すように、塗布されたインクは画素間規制層14Xa上および溝部14Xb内に存在する。そして、焼成(乾燥)を行って、
図14(c)および
図15(b)、(d)に示すように正孔輸送層16を形成する(ステップS60)。なお、正孔輸送層16は溝部14Xb内および/または画素間規制層14Xa上に形成される同一成分の膜と繋がっていてもよいが、この膜は正孔輸送層16としては機能せず、存在していてもよいし存在しなくてもよい。
【0130】
(7)発光層の成膜
次に、
図14(d)に示すように、発光層17R/G/Bの構成材料を含むインクをそれぞれ、塗布装置のノズル4020R/4020G/4020Bから吐出して、間隙14aR、14aG、14aBそれぞれの正孔輸送層16上に塗布する。そして、焼成(乾燥)を行って、
図14(d)に示すように発光層17R、17G、17Bを形成する(ステップS70)。なお、同様に、発光層17R/G/Bのそれぞれは、溝部14Xb内および/または画素間規制層14Xa上に形成される同一成分の膜と繋がっていてもよいが、この膜は発光層17としては機能せず、存在していてもよいし存在しなくてもよい。
【0131】
(8)電子輸送層の成膜
次に、
図15(a)に示すように、発光層17R、17G、17B上および隔壁14Y上に、電子輸送層18を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、電子輸送層18を形成する(ステップS80)。
【0132】
(9)電子注入層の成膜
次に、
図15(b)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入層19を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、電子注入層19を形成する(ステップS90)。
【0133】
(10)対向電極の成膜
次に、
図15(c)に示すように、電子注入層19上に、対向電極20を構成する材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、対向電極20を形成する(ステップS100)。
【0134】
(11)封止層の成膜
最後に、
図15(d)に示すように、対向電極20上に、封止層を形成する材料をCVD法またはスパッタリング法により各サブピクセルに共通して成膜し、封止層21を形成する(ステップS110)。
【0135】
以上の工程を経ることにより有機EL表示パネル10が完成する。
【0136】
上記方法によれば、画素間規制層が列方向に隣り合う発光素子を電気的に絶縁していれば、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない場合においても、下地層のコンタクトホールに対応する凹凸によるインク量のばらつきによる塗布層の膜厚ばらつきを抑止することができる。したがって、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない場合でも輝度ムラのない高品質な自発光パネルを製造することができ、歩留まり向上に奏功する。また、全ての画素間規制層について形成時に溝部を形成しておくことにより、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆しているか否かを検査する必要がなく、製造工程を省力化することができる。
【0137】
≪変形例≫
実施の形態1に係る自発光パネル10では、
図5等に示すように、画素間規制層14Xaの溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向の一端から他端まで伸びる1本の溝であるとした。しかしながら、平面視した場合の溝部14Xbの形状は上述の場合に限られず、以下に説明するような形状であってもよい。
【0138】
図18(a)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図18(a)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで伸びる2本の溝であってもよい。
【0139】
また、
図18(b)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図18(b)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで伸びる4本の溝であってもよい。
【0140】
なお、溝部14Xbの数は、1本、2本、4本に限られず、任意の数であってよい。但し、上述したように、凹部15aにインクが流れ込む流路を形成することは好ましくないので、画素間規制層14Xaと露出した凹部15aとの境界に溝部14Xbが接しないことが好ましい。
【0141】
また、
図18(c)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図18(c)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで伸びる溝であれば、複数の溝が画素間規制層14Xa上で合流、分岐していてもよい。
【0142】
また、
図18(d)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図18(d)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで伸びるものであれば、延伸方向が列方向と平行でなくてもよいし、行方向と直交していなくてもよい。
【0143】
また、
図19(a)および(b)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図19(a)および(b)に示すように、溝部14Xbは、画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで伸びるものであれば、行方向(X方向)の幅や深さ等が一定である必要はなく、幅が一定しない形状であってもよい。
【0144】
また、
図19(c)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図19(c)に示すように、溝部14Xbは、全体としてインクの流路となっていればよく、画素間規制層14Xaは、溝部14Xbの内部に島状の突起を有していてもよい。なお、この島状の突起はインクの流動性を制御するものであってもよいが、溝部14Xbの深さにムラが生じる工程を用いることによって生じたものであってもよい。
【0145】
また、
図19(d)および(e)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図19(d)および(e)に示すように、溝部14Xbは、複数の凹部が画素間規制層14Xaの列方向(Y方向)の一端から多端まで連結したものであってもよい。溝部14Xbは、例えば、レーザー照射や針による押圧で形成することができる。
【0146】
また、
図19(f)は、変形例の1つに係る溝部14Xbの形状である。
図19(f)に示すように、溝部14Xbは、凹部15aの上部及び近傍以外の全域に形成されてもよい。すなわち、画素間規制層14Xaは、凹部15aの上部及び近傍の上面の高さが、それ以外の部分の高さより高い構造であってもよい。
【0147】
なお、溝部14Xbの形状は上述した例に限られず、実施の形態と変形例を組み合わせた形状、複数の変形例を組み合わせた形状であってもよい。
【0148】
≪実施の形態3≫
実施の形態2では、有機EL表示パネル100の製造方法において、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆しているか否かに関わらず、画素間規制層に溝部を設ける場合について説明した。しかしながら、例えば、有機EL表示パネル100の製造方法において、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆しているか否かを検査し、必要な場合にのみ画素間規制層に溝部を設けるとしてもよい。
【0149】
図20は、実施の形態3に係る有機EL表示パネル10の製造方法を示すフローチャートである。なお、実施の形態2に係る有機EL表示パネル10の製造方法を示す
図14と同一の工程については同一のステップ番号を付し、説明を省略する。
図21は、画素間規制層の検査と溝部の形成工程を示す模式平面図である。
【0150】
実施の形態3に係る有機EL表示パネル10の製造方法は、画素電極と正孔注入層の形成工程(ステップS33)までは実施の形態2に係る機EL表示パネル10の製造方法と同一である。以下、画素間規制層の形成工程が実施の形態2と異なるため、以下説明する。
【0151】
画素電極と正孔注入層の形成後、画素間規制層を形成する(ステップS140)。ここでは、溝部14Xbを有さない画素間規制層14Xを形成する。具体的には、正孔注入層15および層間絶縁層12上に、画素間規制層14Xの材料である画素間規制層用樹脂を塗布し、画素間規制材料層140Xを形成する。そして、フォトマスクを用いて画素間規制層14Xをパターン露光する。このとき、フォトマスクとしては、フォトマスク301のハーフトーン部302Hが遮光部302Sに置換されたものを使用する。すなわち、フォトマスクの遮光部が画素間規制層14Xに対応し、光透過部は、画素間規制層14Xが形成されない発光領域100aの予定領域に対応する。そして、現像によって露光部分を取り除く。
【0152】
次に、画素間規制層を検査し、溝部を形成する(ステップS141)。まず、画素間規制層14Xが形成された直後の未完成品について撮影を行い、画素間規制層14Xの位置及び範囲を特定して、コンタクトホールに対応する正孔注入層15の凹部15aそれぞれについて、画素間規制層14Xに完全に覆われているか否かを判定する。
図21(a)は平面模式図であり、凹部15a-11、15a-21、15a-31、15a-32のそれぞれは画素間規制層14X-11、14X-21、14X-31、14X-32に完全に覆われている一方、凹部15a-21、15a-22のそれぞれは画素間規制層14X-12、14X-22に覆われず露出している部分が存在する。このような事象は、例えば、露光時のフォトマスクと未完成品との位置ずれや角度ずれ、光学系の異常等で発生しうる。そして、画素間規制層14Xに完全に覆われていない正孔注入層15の凹部15aについて、当該凹部15aの一部を覆っている画素間規制層14Xに溝部14Xbを形成して画素間規制層14Xaとする。具体的には、例えば、凹部15aの一部を覆っている画素間規制層14Xに対してレーザー光を用いて溝部14Xbを形成する。これにより、
図21(b)に示すように、凹部15aの一部が露出している下地層について、凹部15aの一部を覆っている画素間規制層14Xaに溝部14Xbを設けることで、機能層形成時にインクの流動を容易にする。
【0153】
必要に応じて画素間規制層14Xaを形成した後は、隔壁の形成工程(ステップS50)に進む。以降の工程は実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0154】
なお、画素間規制層の検査と溝部の形成は、画素間規制層14Xの形成直後である必要はなく、隔壁14Yの形成中または形成後であってもよい。但し、塗布膜である機能層の形成より前に行う必要がある。
【0155】
<小括>
実施の形態3に係る自発光パネルの製造方法によっても、画素間規制層が列方向に隣り合う発光素子を電気的に絶縁していれば、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない場合においても、下地層のコンタクトホールに対応する凹凸によるインク量のばらつきによる塗布層の膜厚ばらつきを抑止することができる。したがって、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない場合でも輝度ムラのない高品質な自発光パネルを製造することができ、歩留まり向上に奏功する。また、必要な場合にのみ画素間規制層に溝部を形成するため、画素間規制層が下地層のコンタクトホールに対応する凹凸を完全に被覆していない事象の発生確率が十分に低い場合、不必要な溝部を形成する必要がなくなり、溝部を形成するためのハーフトーン部を有さない従来のフォトマスクをそのまま使用することができる。
【0156】
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)上記各実施の形態および変形例においては、画素間規制層に溝部を設け、画素間規制層を超えて列方向に隣り合う2つの下地層上を連通させインクの流路とした。しかしながら、溝部は画素間規制層ではなく、隔壁14Y側に設けてもよい。
図22は隔壁14Yにインクの流路を設ける構成であり、
図22(a)は模式平面図、
図22(b)は断面図である。
図22(a)、(b)に示すように、画素間規制層14Xと隔壁14Yとの間にインク流路14Yaを設けることにより、同様の効果を得ることができる。
【0157】
(2)上記実施の形態においては、R、G、Bのそれぞれに発光する3種類の発光層を設けた有機EL表示パネルについて説明したが、発光層の種類は2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。ここで、発光層の種類とは発光層や機能層の膜厚のバリエーションを指すものであり、同一の発光色であっても発光層や機能層の膜厚が異なる場合は、種類が異なる発光層と考えてよい。また、発光層の配置についても、RGBRGB…の配置に限られず、RGBBGRRGB…の配置であってもよいし、画素と画素との間に補助電極層やその他の非発光領域を設けてもよい。
【0158】
(3)上記実施の形態及び変形例においては、画素電極13と正孔注入層15との積層構造が下地層であり、正孔輸送層16が塗布膜である機能層であるとしたが、この場合に限られない。例えば、正孔注入層15を塗布法で形成してもよく、この場合には、画素電極13が下地層であり、正孔注入層15が塗布膜である機能層となる。また、例えば、正孔注入層15が蒸着層と塗布膜の2層構造であってもよく、正孔注入層15の蒸着層と画素電極との積層構造が下地層であり、正孔注入層15の塗布膜が機能層となる。同様に、例えば、正孔輸送層16が蒸着層である場合、画素電極13、正孔注入層15、正孔輸送層16の積層構造が下地層であり、発光層17が塗布膜である機能層となる。
【0159】
なお、いずれの場合においても、画素間規制層14Xは、列方向に隣り合う下地層を電気的に区画してそれらの上面の一部を被覆するように形成され、塗布膜である機能層は、下地層上と画素間規制層14X上とに跨るように連続的に形成される。
【0160】
(4)正孔注入層15、正孔輸送層16、電子輸送層18、電子注入層19は必ずしも上記実施の形態および変形例の構成である必要はない。いずれか1以上を備えないとしてもよいし、さらにほかの機能層を備えていてもよい。また、例えば、電子輸送層18と電子注入層19に替えて、単一の電子注入輸送層を備える、としてもよい。
【0161】
(5)上記実施の形態および変形例においては、有機EL表示パネルはトップエミッション型であるとして、画素電極が光反射性を有し、対向電極が光透過性を有する場合について説明した。しかしながら、本開示に係る有機EL表示パネルは、いわゆるボトムエミッション型であるとしてもよい。
【0162】
(6)以上、本開示に係る有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、機能層を塗布法で形成する自発光パネルにおいて、画素電極と画素間規制層の間の位置ずれにより下地層の上面が平坦でない場合においても機能層の膜厚を容易に均一化させることができ、輝度ムラのない自発光パネルを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0164】
1 表示装置
10 有機EL表示パネル(自発光パネル)
100 有機EL素子(発光素子)
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極
14X 画素間規制層
14Xa 画素間規制層
14Xb 溝部
14Y 隔壁
15 正孔注入層
15a 凹部
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層
14Ya インク流路