(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電子チケット管理システム及び電子チケット管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0207 20230101AFI20241024BHJP
G06Q 30/0251 20230101ALI20241024BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241024BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
G06Q30/0207
G06Q30/0251
G06Q50/40
G16Y10/40
(21)【出願番号】P 2020192970
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠一
(72)【発明者】
【氏名】和田 一毅
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊行
(72)【発明者】
【氏名】福山 廣相
(72)【発明者】
【氏名】山形 庄平
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129177(JP,A)
【文献】特開2017-059099(JP,A)
【文献】特開2004-118659(JP,A)
【文献】特開2014-225098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発券したチケットの情報である権利情報と、前記チケットに関係するステークホルダー各々における、所定の状況を改善するために負担可能な他者へのインセンティブの情報を規定したテーブルと、を保持する記憶装置と、
前記ステークホルダー各々の端末から得た前記状況に関する情報を、前記テーブルに照合し、前記ステークホルダーの各間で前記インセンティブを提供しあう組合せのうち、当該ステークホルダーそれぞれの前記状況を改善するものを特定する処理と、前記特定した組合せに関する情報を含む行動変更のオファーを、前記チケットの利用者の端末に通知する処理と、
前記テーブルに関して、前記ステークホルダーのうちいずれかの端末からの変更要求があった場合、各ステークホルダーの端末からの合意確認を得て当該変更を実行する処理と、を実行する演算装置と、
を含むことを特徴とする電子チケット管理システム。
【請求項2】
前記記憶装置は、
前記利用者における、過去のオファーに対する受諾率または前記状況に対する忌避性の少なくともいずれかを含む嗜好情報をさらに保持し、
前記演算装置は、
前記オファーの通知対象となる前記利用者が複数存在する場合、前記嗜好情報が示す前記受諾率または前記忌避性が他利用者よりも相対的に高い者から順に、当該オファーの通知対象とするものである、
ことを特徴とする請求項1 に記載の電子チケット管理システム。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記テーブルで保持する情報に関して、当該情報の提供元であるステークホルダーのみアクセス可能とするアクセス管理を実行し、
前記特定したインセンティブの組合せの情報に関して、少なくとも当該情報における組合せ対象のステークホルダーがアクセス可能とするアクセス管理を実行する、
ことを特徴とする請求項1 に記載の電子チケット管理システム。
【請求項4】
前記演算装置は、
前記オファーの受諾結果に応じて、前記権利情報における前記利用者のチケットの内容を、前記オファーが示す前記行動変更の内容に対応したものに更新する処理と、
前記利用者における前記行動変更の内容を、前記状況に関する情報に反映させて当該状況を更新し、当該更新を経た前記状況が、当該ステークホルダーにおける許容範囲であるか判定する処理と、
をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項1 に記載の電子チケット管理システム。
【請求項5】
情報処理装置が、
発券したチケットの情報である権利情報と、
前記チケットに関係するステークホルダー各々における、所定の状況を改善するために負担可能な他者へのインセンティブの情報を規定したテーブルと、を保持して、
前記ステークホルダー各々の端末から得た前記状況に関する情報を、前記テーブルに照合し、前記ステークホルダーの各間で前記インセンティブを授受する組合せのうち、当該ステークホルダーそれぞれの前記状況を改善するものを特定する処理と、
前記特定した組合せに関する情報を含む行動変更のオファーを、前記チケットの利用者の端末に通知する処理と、
前記テーブルに関して、前記ステークホルダーのうちいずれかの端末からの変更要求があった場合、各ステークホルダーの端末からの合意確認を得て当該変更を実行する処理と、
を実行することを特徴とする電子チケット管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子チケット管理システム及び電子チケット管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通機関や各種イベント、飲食など、種々の事案に関してチケッティング機会が存在し、その運用形態も種々進化している。例えば、チケットの発券システムが、バーコード化したチケット情報を購入者端末に配信する一方、購入者は当該バーコードをチケット使用場面で画面表示させて従来の紙のチケットと同様に使用する、といった形態も増えている。
また、チケット発行後の状況変化に伴う、チケット購入者の不具合を低減する技術も提案されている。例えば、利用者の能動的な意思によらないで、交通機関の障害による利用者への影響を軽減させる通報方法およびプログラム(特許文献1参照)などが提案されている。
【0003】
この技術においては、コンピュータが、利用者ごとに交通機関を利用する経路および利用する時期に係る情報の設定を受けるステップと、前記交通機関の運行を阻害する事象の種類、およびその事象の発生時刻を収集するステップと、前記事象の解消時刻を推定するステップと、前記交通機関利用時における前記事象による影響の有無を利用者ごとに判定するステップと、前記影響があると判定される利用者にその旨を報知するステップとを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術が示すように、交通機関の事業者は、故障や混雑等の事象が起こる度に、振替輸送などの対処手段確保や、チケット払い戻し業務といった特別な対応が必要となる。
この場合、当該交通機関の利用者としては、事業者からの情報に従って予定とは別の経路を選択し移動する、或いは状況好転までその場で待機する、といった意思に反する行動を選択せざるを得ない。
【0006】
こうした状況は、チケットの発行主体における業務効率低下や、チケット購入者(利用者)における移動効率及び満足度の低下につながりやすい。そのため、種々の対処を行ったとしても、そのコストや時間が無駄になりやすい。
【0007】
そこで本発明の目的は、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益を適宜に図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の電子チケット管理システムは、発券したチケットの情報である権利情報と、前記チケットに関係するステークホルダー各々における、所定の状況を改善するために負担可能な他者へのインセンティブの情報を規定したテーブルと、を保持する記憶装置と、前記ステークホルダー各々の端末から得た前記状況に関する情報を、前記テーブルに照合し、前記ステークホルダーの各間で前記インセンティブを提供しあう組合せのうち、当該ステークホルダーそれぞれの前記状況を改善するものを特定する処理と、前記特定した組合せに関する情報を含む行動変更のオファーを、前記チケットの利用者の端末に通知する処理と、前記テーブルに関して、前記ステークホルダーのうちいずれかの端末からの変更要求があった場合、各ステークホルダーの端末からの合意確認を得て当該変更を実行する処理と、を実行する演算装置と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の電子チケット管理方法は、情報処理装置が、発券したチケットの情報である権利情報と、前記チケットに関係するステークホルダー各々における、所定の状況を改善するために負担可能な他者へのインセンティブの情報を規定したテーブルと、を保持して、前記ステークホルダー各々の端末から得た前記状況に関する情報を、前記テーブルに照合し、前記ステークホルダーの各間で前記インセンティブを授受する組合せのうち、当該ステークホルダーそれぞれの前記状況を改善するものを特定する処理と、前記特定した組合せに関する情報を含む行動変更のオファーを、前記チケットの利用者の端末に通知する処理と、前記テーブルに関して、前記ステークホルダーのうちいずれかの端末からの変更要求があった場合、各ステークホルダーの端末からの合意確認を得て当該変更を実行する処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益を適宜に図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の電子チケット管理システムの構成図である。
【
図2】本実施形態における利用者サービスシステムのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3A】本実施形態の混雑状況テーブルの構成例を示す図である。
【
図3B】本実施形態の混雑状況テーブルの構成例を示す図である。
【
図4A】本実施形態の動的インセンティブ設定テーブルの構成例を示す図である。
【
図4B】本実施形態の動的インセンティブ設定テーブルの構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態のインセンティブ取引設定テーブルの構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態の権利情報の構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態の利用者嗜好情報の構成例を示す図である。
【
図8】本実施形態における電子チケット管理方法のフロー例を示す図である。
【
図10】本実施形態における画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<システム構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子チケット管理システムである利用者サービスシステム1000を含むシステム構成図である。ここでは、一例として、ある地域の複数事業者の間で、当該事業者の運営施設や運営機械等での混雑度を指標としたインセンティブについて、そのコストを取引することで、当該施設や装置の利用者に行動変化を促すインセンティブを提供する状況を想定する。
【0012】
また、上述の事業者の一例としては、交通機関(例:鉄道)を運営する事業者、当該交通機関の沿線等で店舗など商業施設を運営する事業者、当該交通機関とは別の交通機関(例:タクシー)を運営する事業者、などを想定する。そのため、チケッティング対象となるのは例えば鉄道の乗車券であり、各事業者における状況は、交通機関や商業施設等における利用者の混雑状況、車輌や店舗運用の遅延状況、などとなる。
【0013】
図1に示す利用者サービスシステム1000は、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益を適宜に図るコンピュータシステムである。こうした利用者サービスシステム1000に加えて、
図1で示す、事業者システム2000、購入端末3000、利用端末4000、利用者アクセス端末5000の少なくともいずれかも含めて、電子チケット管理システムと想定してもよい。
【0014】
例示する本システムでは、各事業者がそれぞれ、利用者サービスシステム1000、事業者システム2000を保持する。また、事業者または利用者が、購入端末3000、利用端末4000、利用者アクセス端末5000を保持する。
【0015】
利用者サービスシステム1000は、他事業者の保持する利用者サービスシステムとの通信を行い、利用者へのインセンティブ付与のためのコスト取引を行うシステムである。また、利用者サービスシステム1000は、事業者システム2000、購入端末3000、利用端末4000、利用者アクセス端末500と通信可能に接続する。
【0016】
上述のシステム構成のうち、購入端末3000は、移動手段(各種交通機関)や店舗の利用者(利用予定者の概念含む)または所定の係員(例:券売窓口の担当者)が操作し、当該移動機関等の利用権(例:座席チケットや回数券)の購入処理を行うための端末である。この購入端末3000は、利用者サービスシステム1000に対して、上述の利用者に関して購入がなされたチケットの情報すなわち権利情報の登録処理を行う。
【0017】
また、利用端末4000は、上述の利用者による移動手段や店舗の利用を制御する端末である。具体的な例としては、鉄道駅や商業施設における入退場ゲートを想定できる。こうした利用端末4000は、店舗や移動手段の利用者が利用者アクセス端末5000を介して提示した権利情報を取得し、この権利情報を利用者サービスシステム1000に照会するなどして、入退場可否の判定や上述の入退場ゲートの開閉制御を行う。
【0018】
また、事業者システム2000は、利用者サービスシステム1000における処理に必要となる情報を提供するシステムとなる。この事業者システム2000は、ダイナミックチケット定義設定機能2001、及び混雑入力機能2002を備える。
【0019】
このうちダイナミックチケット定義設定機能2001は、各事業者が他事業者に提供しうる自身のインセンティブに関する定義情報を入力するための機能である(
図9)。また、このダイナミックチケット定義設定機能2001は、事業者間でのインセンティブコストの取引に関する取り決めを入力するための機能も提供する(
図9)。
【0020】
図9は、ダイナミックチケット定義設定機能2001における設定画面G900の例を示す図である。この設定画面G900は、事業者内設定9100、事業者間設定画面9200、設定完了ボタン9300を含む。
【0021】
このうち事業者内設定9100は、例えば動的インセンティブ設定ボタンや混雑率手動入力ボタンを含み、事業者内で閉じる設定情報を入力可能とする。動的インセンティブ設定ボタンは動的インセンティブ設定テーブル1002の情報を記入するために利用するインターフェイスである。また、混雑率手動入力ボタンは混雑状況テーブル1004を手動で入力・修正するために利用するインターフェイスとなる。
【0022】
また、事業者間設定画面9200は、インセンティブ取引手動設定ボタンや合意確認ボタンを含む。このうちインセンティブ取引手動設定ボタンは、自動で設定されたインセンティブ取引設定テーブル1101の内容を手動で設定するものである。複数事業者が関与するインセンティブ取引設定テーブル1101の情報を変更する場合、関連事業者との合意を問う合意確認ボタンの押下により、当該合意確認の要求が各事業者の事業者システム2000に通知される。その結果、当該関連事業者の事業者システム2000から合意確認を得た場合、変更が実行される。
【0023】
また、設定完了ボタン9300は、すべての設定が完了した際に、情報の確定・更新を
指示するためのボタンである。
【0024】
また、混雑入力機能2002は、利用者サービスシステム1000における事業者間でのインセンティブ取引処理に利用する、各事業者の混雑状況に関する情報すなわち混雑情報を入力するための機能である。この場合、各事業者の事業者システム2000は、当該事業者の交通機関や商業施設などにおける混雑情報を、利用者サービスシステム1000に対して入力する。
【0025】
また、利用者アクセス端末5000は、利用者が保持する端末であり、当該利用者購入した権利情報を保持する端末である。また、利用者アクセス端末5000は、こうした権利情報に関するインセンティブ情報等を含むオファーを、利用者サービスシステム1000から受け取る。利用者アクセス端末5000は、このオファーで提示された情報を表示し、利用者の判断結果に応じて権利情報の追加・変更等の許可を与える。
【0026】
一方、利用者は、こうした権利情報の追加・変更などに伴った行動変更を行うこととなる。この場合の利用者は、事業者から提供された(閑散状況や混雑状況に応じた)上述のインセンティブを得ることができる。他方、各事業者からすれば、当該事業者らが運営する交通手段や店舗等における利用者全体の快適性向上を図ることにもつながる。
【0027】
また、利用者サービスシステム1000は、各事業者システム2000から得る、閑散・混雑状況の情報に基づき、事業者間でのインセンティブコストの取引すなわちインセンティブの組合せを特定し、利用者に対するインセンティブ付与のコストを按分するためのシステムである。
【0028】
この利用者サービスシステム1000は、事業者毎に保持する形態を想定できる。また、利用者サービスシステム1000は、事業者内の機微情報である、閑散・混雑の状況を改善するためのコスト、すなわち利用者へ提示するインセンティブに関して捻出可能なコストの情報や、詳細かつ具体的な閑散・混雑状況の情報をセキュアに管理する。具体的には、当該情報の保有者以外の他事業者の事業者システム2000からのアクセスを排除する。こうした制御を行うことで、機微情報に関する配慮を行いつつ、事業者間でのインセンティブコストの取引が可能となる。
【0029】
また、利用者サービスシステム1000は、ダイナミックチケット定義I/F1001、動的インセンティブ設定テーブル1002、混雑入力I/F1003、混雑状況テーブル1004、利用者調整I/F1005、利用者権利アクセスI/F1006、権利情報1007、利用者嗜好情報1008、事業者連携I/F1009、及びダイナミックチケットエンジン1100を含む。
【0030】
このうちダイナミックチケット定義I/F1001は、動的インセンティブ設定テーブル1002に接続し、事業者システム2000が保持するダイナミックチケット定義設定機能2001によって入力された設定情報を動的インセンティブ設定テーブル1002に反映する。また、ダイナミックチケット定義I/F1001は、ダイナミックチケットエンジン1100に接続し、ダイナミックチケットエンジン1100に対してインセンティブ取引の設定を渡すためのI/Fである。
【0031】
動的インセンティブ設定テーブル1002は、各事業者にとって好適な状況(例えば、各事業者が好適であると想定する利用者数や混雑度)と現状との差分を基に、事業者間で取引可能なインセンティブのコストを特定するテーブルである。
【0032】
この動的インセンティブ設定テーブル1002は、ダイナミックチケット定義I/F1
001を介して事業者システム2000から取得した、設定情報(インセンティブの情報)の格納先となる。また、動的インセンティブ設定テーブル1002は、ダイナミックチケットエンジン1100に接続し、インセンティブに関する取引に用いる上述の設定情報の提供元となる。
【0033】
このような動的インセンティブ設定テーブル1002の情報は、各事業者における事業方針にかかわるセンシティブな情報ともとらえられる。そのため、他事業者に公開せず事業者内での秘匿情報とすれば好適である。
【0034】
また、混雑入力I/F1003は、事業者システム2000から、個々の事業者における閑散・混雑状況の情報を受け取り、混雑状況テーブル1004を更新するためのI/Fである。
【0035】
また、混雑状況テーブル1004は、上述の混雑入力I/F1003と接続し、各事業者の事業者システム2000から得た混雑情報の格納先となる。また、混雑状況テーブル1004は、ダイナミックチケットエンジン1100が動作するための情報を提供する。なお、混雑状況テーブル1004は、ダイナミックチケットエンジン1100から得られる混雑状況に関する更新情報に基づき更新される。
【0036】
利用者調整I/F1005は、ダイナミックチケットエンジン1100、利用者嗜好情報1008と接続しており、事業者間の取引により決定されたインセンティブと権利に関する更新情報を、利用者アクセス端末5000に対して提供するI/Fである。
【0037】
また、利用者調整I/F1005は、利用者アクセス端末5000から得られた、利用者の選択に関する情報を受け取り、ダイナミックチケットエンジン1100に渡すI/Fである。なお、この「選択」は、上述のオファーのインセンティブに基づく行動変化すなわち権利情報変更に関する、利用者の選択結果である。より具体的には、オファーの受諾可否の結果である。
【0038】
このことで、上述の利用者の行動変化の選択結果を、権利情報1007において、当該利用者の権利情報の追加・変更の形で反映できる。なお、こうしたオファーの受諾状況の情報は、利用者嗜好情報1008における当該利用者の情報として保存されることとなる。
【0039】
また、利用者権利アクセスI/F1006は、権利情報1007と接続し、購入端末3000や利用端末4000から、チケッティングに伴い発生する権利情報の登録・更新・参照のリクエストを受け、権利情報1007に関する対応処理を行う。
【0040】
権利情報1007は、利用者権利アクセスI/F1006、利用者嗜好情報1008、ダイナミックチケットエンジン1100と接続し、利用者に紐づく権利情報を保持するテーブルである。
【0041】
この権利情報1007は、利用者権利アクセスI/F1006を通して購入端末3000に接続し、利用者(ないし窓口係員)によるチケット購入処理に伴い発生した権利情報が格納・登録されたものである。また、権利情報1007は、購入端末3000やダイナミックチケットエンジン1100からの参照、変更、取消等の処理要求に従い、対応する情報の抽出、更新がなされる。
【0042】
また、利用者嗜好情報1008は、権利情報1007とダイナミックチケットエンジン1100と接続し、各利用者の嗜好情報を保持する。利用者嗜好情報1008は、利用者
がどのようなインセンティブを受けて行動変化を起こしたかといった情報である。この利用者嗜好情報1008は、利用者がオファーを受諾したことにより権利情報1007が変化した場合の、履歴情報とも言える。
【0043】
また、事業者連携I/F1009は、複数の事業者間の利用者サービスシステム1000を接続するI/Fである。この事業者連携I/F1009は、複数の事業者間でダイナミックチケットエンジン1100を連携させるための情報授受を可能とする。
【0044】
また、ダイナミックチケットエンジン1100は、混雑状況テーブル1004、動的インセンティブ設定テーブル1002、権利情報1007、利用者嗜好情報1008、及び事業者間連携I/F1009を用いて、事業者間で利用者に与えるインセンティブ情報の組合せを決定し、利用者調整I/F1005を経由して利用者アクセス端末5000へのインセンティブのオファーを行う。
【0045】
また、ダイナミックチケットエンジン1100は、上述のオファー受諾時における、権利情報1007の更新、および混雑情報テーブル1004へのフィードバックを行うものである。
【0046】
こうしたダイナミックチケットエンジン1100は、インセンティブ取引設定テーブル1101、ダイナミックチケット実行機能1102を含む。
【0047】
このうちインセンティブ取引設定テーブル1101は、事業者間で共有保持する情報であり、インセンティブ取引に関する事業者間の取り決めを保持するテーブルである。より具体的には、事業者間のインセンティブ取引情報を規定したテーブルである。
【0048】
また、ダイナミックチケット実行機能1102は、接続するテーブル等の各種情報から、利用者に対するインセンティブの決定、当該インセンティブの情報を提示するオファーの対象者の絞り込み、当該利用者によるオファー受諾に伴う権利情報1007の変更及び混雑状況テーブル1004と利用者嗜好情報1008のアップデートを行う。
<ハードウェア構成>
また、本実施形態の利用者サービスシステム1000のハードウェア構成は、
図2にて示すものとなる。利用者サービスシステム1000は、中央処理装置102、主記憶装置103、内部バス104、バスI/F105、外部バス106、画面出力装置I/F107、ユーザ入力装置I/F108、大容量記憶装置109、通信装置I/F110、及び入出力装置I/F111から構成される。
【0049】
このうち中央処理装置102は、プログラム実行等の演算を行うための装置であり、プログラム実行により、ダイナミックチケットエンジン1100の機能を実装する演算装置となる。
【0050】
主記憶装置103は、上述の中央処理装置102によるプログラム実行時の処理領域および、データの一時格納領域として使用される記憶装置である。この主記憶装置103は、例えばOS(Operating system)などの基本プログラムや、ダイナミックチケットエンジン1100が持つプログラムや一時情報といったそれぞれの機器における処理を実現するためのプログラム・一時情報を一時的に格納する。
【0051】
なお、中央処理装置102と主記憶装置103は、内部バス104により接続されている。また、内部バス104は、バスI/F105を介して外部バス106に接続されている。
【0052】
外部バス106は、画面出力装置I/F107、ユーザ入力装置I/F108、大容量記憶装置I/F2009、通信装置I/F110、及び入出力装置I/F111と接続され、これらのI/Fと中央演算処理装置102や主記憶装置103とのデータ入出力をバスI/F105、内部バス104を用いて媒介する。
【0053】
また、画面出力装置I/F107は、ディスプレイ150と接続するためのI/Fであり、外部バス106を通じて得た情報をディスプレイ150に出力する。ディスプレイ150は、例えばダイナミックチケット定義設定機能2001の設定画面や処理状況等を表示可能な装置である。また、ディスプレイ150は、そのほかにも基本プログラムを操作するための情報等が表示できる。
【0054】
ユーザ入力装置I/F108は、ユーザ入力装置151と接続するためのI/Fであり、外部バス106にユーザ入力装置から入力された情報を出力する。ユーザ入力装置は、例えば、キーボード、マウスなど、ユーザからの入力を受け取るための装置を想定する。こうしたユーザ入力装置から入力された情報は、ユーザ入力装置I/F108に出力される。
【0055】
また、大容量記憶装置I/F109は、大容量記憶装置152と接続するためのI/Fであり、大容量記憶装置152からのデータ入出力を外部バス106に仲介する。大容量記憶装置152は、例えばHDD(Hard Disk Drive)といった装置を想定する。
【0056】
この大容量記憶装置152は、利用者サービスシステム1000の機能を実現するための基本プログラムやプログラム実行時処理結果の一時保管情報、インセンティブ取引設定テーブル1001、動的インセンティブテーブル1002、混雑状況テーブル1004、権利情報1007、利用者嗜好情報1008といった情報を、装置の電源を切った状態やプログラム非実行時に保管する。なお、各種処理実行の際には、中央処理装置102が主記憶装置103にこれらのプログラムやデータを読み出してプログラムを実行する。
【0057】
通信装置I/F110は、通信装置153と接続するためのI/Fであり、通信装置153からのデータ入出力を外部バス106に仲介する。通信装置153は、例えばEthernet(登録商標)を介して外部サーバ装置などと接続するための装置であり、利用者サービスシステム1000と他のシステム・端末との通信を行える。
【0058】
入出力装置I/F111は、入出力装置154と接続するためのI/Fであり、入出力装置154からのデータ入出力を外部バス106に仲介する。入出力装置154は、外部媒体に読み書き可能なドライブ装置やユーザ認証を行うための入力装置などである。
<データ構造例>
続いて、本実施形態の利用者サービスシステム1000が用いるテーブル類について説明する。
図3Aおよび
図3Bに、本実施形態における混雑状況テーブル1004の構成例を示す。
【0059】
このうち
図3Aでは、飲食業事業者の混雑状況テーブル3001の構成例を示す。また、
図3Bでは、モビリティ事業者(交通事業者)の混雑状況テーブル3002の構成例を示す。勿論、事業者ごとでなく、事業部門毎のテーブルを保持するとしてもよい。
【0060】
また、これらテーブルは各事業者が保持する別個の利用者サービスシステム1000に配置することも可能である。そのような配置を行った場合には、各事業者の混雑情報は、他事業者に対して秘匿される。
【0061】
図3Aに例示する飲食業事業者の混雑状況テーブル3001は、ダイナミックチケットエンジン1100が動的に事業者間でのインセンティブの組合せを生成するためのテーブルであり、飲食事業者の混雑状況の情報が記載されている。
【0062】
混雑の情報としては、例えば理想の混雑状況、現状の混雑状況、現状から一定時間後の予想混雑情報、及び混雑評価の各値が記されている。このうち理想の混雑状況は、各事業者の各店舗や拠点における理想の混雑状況であって、各事業者が規定するものとなる。また、現状の混雑状況は、各事業者によって更新される現状の混雑状況を示すものとなる。
【0063】
また、予想混雑情報は、現状から一定時間後の混雑情報であって、例えば、利用者に対してオファーを提示してそれを受諾した場合の行動変化(例えば、ある時間帯における所定数の利用者が、A路線B駅の利用予定をX路線Y駅の利用に変更)に基づき算出される値となる。
【0064】
また、混雑評価は、上述の理想の混雑状況に対する予想混雑情報との差分である。混雑評価は、正と負の値を持つことができ、正の場合には理想に対して混雑度が高いことを示し、負の場合には閑散の度合いを示す。
【0065】
また、事業者はX地域、Y地域といった所在が異なる関連店舗等についても、その混雑状況の情報を混雑状況テーブルに記載できる。
【0066】
また、モビリティ事業者の混雑状況テーブル3002は、上述の飲食業事業者の混雑状況テーブル3001の構成要素に加え、各拠点間の移動時間を保持するとしてもよい。この情報により、当該拠点間の移動にかかるコストが規定される。
【0067】
続いて
図4に、本実施形態の動的インセンティブ設定テーブル1002の構成例を示す。このうち
図4Aでは、例えば飲食業事業者の動的インセンティブ設定テーブル4001を示す。また、
図4Bでは、モビリティ事業者の動的インセンティブ設定テーブル4002を示す。
【0068】
このうち飲食業事業者の動的インセンティブ設定テーブル4001は、店舗等における混雑評価が低く閑散状況にあるケースから、逆に、混雑評価が高く混雑状況にあるケースまで、それぞれ段階的に、利用者を呼び込むため/回避するためのインセンティブとして無料券やクーポン等が規定されたテーブルである。
【0069】
こうした動的インセンティブ設定テーブル4001においては、各事業者・事業部門の所在や地域の店舗毎にインセンティブを設定可能であり、各店舗について混雑状況テーブル1004の混雑評価毎の提供インセンティブを設定できる。
【0070】
また、モビリティ事業者の動的インセンティブ設定テーブル4002は、構成としては上述の動的インセンティブ設定テーブル4001と同様であるが、主に移動の無料化や事業者で利用可能なポイント等のインセンティブを規定するものとなる。
【0071】
続いて
図5に、本実施形態のインセンティブ取引設定テーブル1101の構成例を示す。インセンティブ取引設定テーブル1101は、複数の事業者間でそれぞれ提供するインセンティブの組合せ情報を定義するテーブルとなる。
【0072】
こうしたインセンティブ取引設定テーブル1101は、各地域の各事業者が、その時点で提供可能なインセンティブの情報のうち、混雑情報テーブル1004および動的インセンティブ設定テーブル1002の情報に基づき特定されたものを規定したテーブルである
。このテーブルで規定されたインセンティブの組合せは、複数事業者間でコスト負担して利用者に提供するインセンティブの組み合わせであって、利用者に対して行動変化すなわち権利情報の変更をオファーする情報のソースとなる。
【0073】
図5の例において、例えば、「モビリティX地域A駅」のインセンティブ提供内容は"
なし"であって、これに対し、「飲食業X地域A店舗」のインセンティブ提供内容が"無料券30枚(自店舗誘致)"であるとき、「モビリティX地域A駅」の利用者に提供するイン
センティブは"X地域A店舗無料券30枚"となる。
【0074】
また、「モビリティY地域B駅」のインセンティブ提供内容が"5分以内の他駅移動無
料"であって、「飲食業Y地域B店舗」のインセンティブ提供内容が"他店無料券30枚(
他店舗誘致)"であるとき、利用者に提供するインセンティブは"Y地域→X地域移動無料
+他店無料券30枚(X地域を含む)"となる。このとき、"5分以内の他駅移動無料"がX
地域A店舗の無料券と組み合わせられるかは、"5分以内の他駅"(の担当者)による検証で、無料移動可能な範囲を確認の上、設定されることになる。
【0075】
続いて、
図6に本実施形態の権利情報1007の構成例を示す。本実施形態における権利情報1007は、各利用者が保持するチケット情報等の権利情報を格納するテーブルである。
【0076】
こうした権利情報1007は、利用者を一意に特定する利用者IDをキーに、チケット発券者である権利提供事業者、及び権利内容である所持サービス権利、といった情報を規定したレコードの集合体である。
【0077】
図6の例では、利用者ID“Aa11”の利用者は、モビリティ事業者の提供する、"
X地域A駅を含むモビリティチケット"を権利として保持している。よって、この情報に
アクセスすることで、個々の利用者がどのサービスを受けられるか確認可能である。また、利用者ID“Bb22”の利用者は、モビリティ事業者が提供する"Y地域B駅含むモ
ビリティチケット"とインセンティブ受諾によって付与された、"Y地域→X地域移動無料"を所持サービス権利として保持している。これにより、Y地域B駅への移動に加えて、
X地域への移動、およびX地域での飲食業事業者による無料券が利用可能となっている。
【0078】
続いて、
図7に本実施形態の利用者嗜好情報1008の構成例を示す。本実施形態の利用者嗜好情報1008は、利用者におけるチケットの利用状況やオファーの受諾傾向などの各種情報を保持するテーブルである。
【0079】
こうした利用者嗜好情報1008は、利用者を一意に特定する利用者IDをキーに、当該利用者における現在ステータス、滞在中地域、インセンティブ受諾率、混雑敏感性、及び、その他嗜好といった情報を含むレコードの集合体である。
【0080】
このうち現在ステータスは、チケット等の権利の利用時刻・タイミング(例:駅務機器である利用端末4000から取得)や利用者アクセス端末5000からの当該利用者の活動情報(例:移動/静止の情報)に基づくもので、当該チケットが実際に使用されているか否か、すなわちアクティブ/非アクティブを規定する。インセンティブのオファーはこの情報を用いて送付の要否を定める。
【0081】
また、滞在中地域は、直近で購入端末3000や利用者アクセス端末5000から得た位置情報が示す最後に権利利用があった場所や当該利用者の活動情報に基づき特定される、当該利用者の現時点での滞在地域である。インセンティブのオファーの送付対象となる利用者は、この情報を用いて限定する。
【0082】
また、インセンティブ受諾率は、当該利用者が今までオファーに対してどの程度受諾したかを示す情報である。この受諾率に応じて、オファーの優先配信先の決定に利用する。
【0083】
また、混雑敏感性は、当該利用者が受諾したオファーの内、混雑に起因したインセンティブに関するものがどの程度あったかを示す値である。特に混雑状況が発生した場合のオファーに関しては、この情報を参照して提示先として優先すべき利用者の選定に使用する。
【0084】
また、その他嗜好は、その他の特定状況において、オファーの優先度を定める場合に用いる情報である。例えば、お得重視(無料か高割引のインセンティブを好む)やゆったり重視(料金や移動速度の高低よりも、混雑しない環境を重視)といった、当該利用者の抽象化した性質や具体的な好み等の情報を想定する。これに合致するか否かをオファー優先度の決定に用いる。
<フロー例:電子チケット管理方法>
以下、本実施形態における電子チケット管理方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する電子チケット管理方法に対応する各種動作は、電子チケット管理システムである利用者サービスシステム1000がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0085】
図8は、本実施形態における電子チケット管理方法のフロー例を示す図であり、具体的には、ダイナミックチケットエンジン1100におけるダイナミックチケット実行機能1102の動作フローとなる。なお、ステップ8001~ステップ8008の間の処理を必要に応じて繰り返すループ構造のフローを想定している。
【0086】
まず、ステップ8002において、ダイナミックチケット実行機能1102は、動的インセンティブ設定テーブル1002に、各事業者の混雑評価の値を照合することで、当該事業者の当該拠点(駅や店舗)に関してインセンティブの内容を決定する。なお、混雑評価の値は、混雑状況テーブル1004における当該事業者のレコードの「混雑評価」欄の値から抽出する。
【0087】
続いて、ステップ8003において、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述のステップ8002で各事業者らについて決定したインセンティブに基づき、インセンティブ取引設定テーブル1101における組合せ、すなわち事業者間でのインセンティブの組合せを特定する。このインセンティブの組合せは、各事業者が設定したインセンティブ提供内容を組み合わせたオファーであり、当該事業者の利用者に行動変化を促す情報となる。
【0088】
こうしたステップ8003におけるダイナミックチケット実行機能1102は、例えば、ステップ8002で得た各事業者及びそのインセンティブの情報に基づき、特定地域で事業展開している事業者群、及び当該特定地域の周辺地域で事業展開している事業者群、をそれぞれ特定する。
【0089】
また、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述の各事業者群を構成する各事業者の混雑評価とインセンティブに基づき、同じ地域内で一方の事業者Aから他方の事業者Bに利用者を送客することで、事業者Aの混雑が緩和され事業者Bの閑散が回避出来る関係性を特定する。
【0090】
ダイナミックチケット実行機能1102は、上述のように特定した関係性に基づき、イ
ンセンティブ取引設定テーブル1101の1レコード、すなわち、特定地域内の事業者間でインセンティブのコストを負担しあう(一方的なケース含め)組合せの情報を生成する。
図5の例であれば、“モビリティX地域A駅”は混雑評価が-24%~+25%で混雑も閑散もしておらず、利用者へのインセンティブ提供なし、一方、“飲食業X地域A店舗”は、混雑評価が-49%~-25%でやや閑散状況であるため、上述の“モビリティX地域A駅”の利用者に対して来店を促すためのインセンティブ“X地域A店舗無料券30枚”を提供する組み合わせ、といった具体的な例を想定できる。
【0091】
上述のような組合せの生成は、上述の特定地域の事業者群と周辺地域の事業者群との間についても当然実行する。
図5の例であれば、“モビリティX地域A駅”は混雑評価が-24%~+25%で混雑も閑散もしておらず、利用者へのインセンティブ提供なし、一方、“飲食業Y地域B店舗”は、混雑評価が+51%~+75%で混雑状況であるため、上述の“モビリティX地域A駅”の利用者に対して来店回避を促すためのインセンティブ“他店舗無料券30枚”を提供する組み合わせ、といった具体的な例を想定できる。
【0092】
他にも、
図5の例であれば、“モビリティY地域B駅”は混雑評価が+264%~+50%でやや混雑しており、他駅の移動を促すインセンティブ“5分以内の他駅移動無料”を提供し、“飲食業X地域A店舗”は、混雑評価が-49%~-25%でやや閑散状況であるため、上述の“モビリティY地域B駅”の利用者に対して来店を促すためのインセンティブ“X地域A店舗無料券30枚”を提供する組み合わせ、といった具体的な例を想定できる。
【0093】
ダイナミックチケット実行機能1102は、こうした交通機関の駅間の移動と特定場所でのサービスを組合せた行動変化の提案内容にて、利用者に対するオファー内容を生成する。もちろん、ダイナミックチケット実行機能1102は、
図5に示すようなインセンティブ取引設定テーブル1101で可能な全ての組合せそれぞれを、1つのオファーとして生成してもよいし、予め得ている事業者の要望や指定、または、当該事業者の拠点における利用者数が多いもの(すなわち行動変化の対象者数が多いもの)、といった所定の基準に基づき、上述の組合せのうち1つ乃至限定数(例:利用者数の上位)のみ生成するとしてもよい。
【0094】
続いて、ステップ8004において、ダイナミックチケット実行機能1102は、オファー先となる利用者の優先度を決定する。この場合、ダイナミックチケット実行機能1102は、利用者嗜好情報1008、及びインセンティブ取引設定テーブル1101の情報を用いて、オファー先の優先度を判断する。
【0095】
ここでダイナミックチケット実行機能1102は、まず、インセンティブ取引設定テーブル1101において、対象となる地域(上述の場合、X地域ないしY地域)を確認し、当該地域に滞在中で、対象チケットの現在ステータスがアクティブの利用者を、利用者嗜好情報1008にて検索する。
【0096】
また、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述の検索で特定した各利用者のレコードから、例えば、インセンティブ受諾率及び混雑敏感性の各値を抽出し、相対的に他利用者よりもインセンティブ受諾率が高く、混雑がオファーの受諾要因である利用者を、例えばインセンティブ受諾率上位の所定範囲だけ特定する。
【0097】
なお、本実施形態では交通機関や店舗の混雑/閑散の事象に着目した説明を行っているため、上述のように混雑がオファーの受諾要因であるか考慮している。しかしこれに限定するものではなく、インセンティブを提供しても改善したい事象、の敏感性が高いかを考慮する運用であればいずれのものでも採用してよい。
【0098】
続いて、ステップ8005において、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述のオファー(
図10の画面G1000参照)を、ステップ8004で特定した該当利用者の利用者アクセス端末5000に送信する。
【0099】
利用者は、このオファーを閲覧し、自身の行動を変化させてインセンティブを獲得するか、すなわちオファーを受諾するか否か検討する。その結果は、受諾ボタンG1001や拒否ボタンG1002の押下をもって、利用者アクセス端末5000からダイナミックチケット実行機能1102に通知される。ここでは、当該利用者がオファーを受諾したものとして説明を続ける。
【0100】
続いて、ステップ8006において、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述の利用者のオファー受諾により、権利情報1007における当該利用者の権利内容の更新を行う。具体的には、ダイナミックチケット実行機能1102は、受諾されたオファー内容が示す情報、すなわち利用駅の変更や立ち寄り店舗の無料チケット獲得などの受諾内容を、権利情報1007における当該利用者のレコードとして書き込む。
【0101】
続いて、ステップ8007において、ダイナミックチケット実行機能1102は、上述のオファー受諾に伴う行動変化を踏まえた、事業者の交通機関や店舗における混雑率を再計算する。
【0102】
この場合、ダイナミックチケット実行機能1102は、各事業者の事業者システム2000が、混雑入力I/F1003を通じて通知してきた、オファー受諾以降の最新の混雑状況の情報を取得し、この情報によって、当該事業者の混雑状況テーブル1004における現状混雑の値を更新する。また、ダイナミックチケット実行機能1102は、例えば、今次オファーに対する受諾率の状況から、予測混雑の情報を更新する(オファーの受諾をして別拠点に移動する利用者数が○○人のため、現状の利用者数が○○人抑制され混雑率○○%などと算定可)。
【0103】
その後、ダイナミックチケット実行機能1102は、例えば、事業者システム2000などの適宜なシステムないし端末から処理終了の指示を受けるか、或いは、所定時刻の到来を感知してステップ8008でループ終了とし、本フローを完了する。
【0104】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0105】
こうした本実施形態によれば、例えば、利用者の少ない閑散状況のため利用者を呼び込みたい、あるいは、サービス低下を招く混雑状況を回避したい、といった各事業者の意図を事業者間で共有し、利用者へのインセンティブを踏まえた、混雑や閑散の効率的な回避策を提案可能である。これにより、モビリティ事業者や店舗経営事業者において、利用者へのインセンティブオファーを通してお互いの閑散、混雑状況を平準化することで、事業者の業務・事業効率の改善を図ると共に、快適なサービス環境を利用者に提供しうることとなる。
【0106】
すなわち、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益を適宜に図ることが可能となる。
【0107】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態の電子チケット管理システムにおいて、前記記憶装置は、前記利用者における、過去のオファーに対する受諾率または前記状況に対する忌避性の少なくともいずれかを含む嗜好情
報をさらに保持し、前記演算装置は、前記オファーの通知対象となる前記利用者が複数存在する場合、前記嗜好情報が示す前記受諾率または前記忌避性が他利用者よりも相対的に高い者から順に、当該オファーの通知対象とするものである、としてもよい。
【0108】
これによれば、チケットの利用者における行動変化を効率的に達成し、当該利用者の行動範囲における各事業者の過度な混雑や遅延等の不適切な状況をより効率的に改善可能となる。ひいては、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益をさらに適宜に図ることが可能となる。
【0109】
また、本実施形態の電子チケット管理システムにおいて、前記演算装置は、前記テーブルで保持する情報に関して、当該情報の提供元であるステークホルダーのみアクセス可能とするアクセス管理を実行し、前記特定したインセンティブの組合せの情報に関して、少なくとも当該情報における組合せ対象のステークホルダーがアクセス可能とするアクセス管理を実行する、としてもよい。
【0110】
これによれば、各事業者の機微情報とも言える、他者へのインセンティブ情報をセキュアに管理する一方、事業者間で共有すべきインセンティブの組合せ情報(インセンティブ取引設定テーブル)については該当者に公開するといった柔軟な運用が可能となる。ひいては、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益をさらに適宜に図ることが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の電子チケット管理システムにおいて、前記演算装置は、前記オファーの受諾結果に応じて、前記権利情報における前記利用者のチケットの内容を、前記オファーが示す前記行動変更の内容に対応したものに更新する処理と、前記利用者における前記行動変更の内容を、前記状況に関する情報に反映させて当該状況を更新し、当該更新を経た前記状況が、当該ステークホルダーにおける許容範囲であるか判定する処理と、をさらに実行するものである、としてもよい。
【0112】
これによれば、オファーに伴う行動変化によって、各事業者の混雑等の不適切な状況が改善された結果を現状にフィードバックし、それを以降のオファー生成に至る処理に反映させることができる。ひいては、チケッティング対象の状況に応じ、当該チケッティング対象に関係しうるステークホルダーそれぞれの利益をさらに適宜に図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0113】
102 中央処理装置(演算装置)
103 主記憶装置
104 内部バス104
105 バスI/F
106 外部バス
107 画面出力装置I/F
108 ユーザ入力装置I/F
109 大容量記憶装置I/F
110 通信装置I/F
111 入出力装置I/F
150 ディスプレイ
151 ユーザ入力装置
152 大容量記憶装置
153 通信装置
154 入出力装置
1000 利用者サービスシステム(電子チケット管理システム)
1001 ダイナミックチケット定義I/F
1002 動的インセンティブ設定テーブル
1003 混雑入力I/F
1004 混雑状況テーブル
1005 利用者調整I/F
1006 利用者権利アクセスI/F
1007 権利情報
1008 利用者嗜好情報
1009 事業者連携I/F
1110 ダイナミックチケットエンジン
1101 インセンティブ取引設定テーブル
1102 ダイナミックチケット実行機能
2000 事業者システム
2001 ダイナミックチケット定義設定機能
2002 混雑入力機能
3000 購入端末
4000 利用端末
5000 利用者アクセス端末