(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20241024BHJP
G06Q 30/0645 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
G06Q30/02 450
G06Q30/0645
(21)【出願番号】P 2020199472
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】599115217
【氏名又は名称】株式会社 ディー・エヌ・エー
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】二見 徹
(72)【発明者】
【氏名】左向 貴代
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 千絵
(72)【発明者】
【氏名】直井 和美
(72)【発明者】
【氏名】田村 百奈美
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025948(JP,A)
【文献】特開2020-102161(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002292(WO,A1)
【文献】特開2014-123393(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーで駆動する車両を識別するための車両識別情報を含み、所定の期間において前記車両を所定の使用環境下で使用した後の前記車両の価値である残価値の問い合わせを受け付ける受付部と、
前記車両識別情報で特定される前記車両に搭載されている前記バッテリーの状態を特定する状態特定部と、
前記バッテリーの状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記バッテリーの劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記残価値を示すための情報を出力する出力部と、
前記車両ごとに、前記車両が使用された使用済期間と、前記車両が使用された使用済環境と、前記使用済期間の開始時点における前記車両の価値から前記使用済期間の終了時点における前記車両の価値を差し引いた減算価値とを関連付けて記憶する記憶部と、
を有
し、
前記受付部は、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記車両のリース価格を算出するための算出情報の問い合わせを受け付け、
前記算出部は、前記所定の期間に対応する前記使用済期間と、前記所定の使用環境に対応する前記使用済環境とに関連付けて前記記憶部に記憶されている各車両の前記減算価値の統計値を算出し、
前記出力部は、前記減算価値の統計値を、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記車両のリース価格を算出するための算出情報として出力する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記状態特定部は、前記車両を構成する部品であって、前記バッテリー以外の構成部品の状態をさらに特定し、
前記算出部は、前記バッテリーの劣化度合いに加えて、前記構成部品の状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記構成部品の劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記所定の使用環境として、前記バッテリーの使用パターンに基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記受付部は、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用する使用者を識別するための使用者識別情報をさらに含む前記問い合わせを受け付け、
前記使用者識別情報に基づいて、前記使用者による車両の使用履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部をさらに有し、
前記算出部は、前記履歴情報に基づく前記バッテリーの使用パターンに基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記状態特定部は、前記所定の期間の前である第1時点において前記車両の状態を特定し、前記所定の期間を経過した後である第2時点において前記車両の状態を特定し、
前記算出部は、前記第1時点の前記車両の状態に基づいて推定した前記バッテリーの劣化度合いと、前記第2時点の前記車両の状態によって示される前記バッテリーの劣化度合いとの差に基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定するための情報を更新する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記車両ごとに、前記車両が加入した車両保険の契約期間と、前記車両保険の契約期間において使用された使用済環境と、前記車両保険を利用して前記車両を修理した利用回数と、前記車両保険の契約期間が満了したときの前記車両の価値とを関連付けて
さらに記憶
し、
前記受付部は、前記所定の期間において適用する前記車両の車両保険の価格を算出するための算出情報の問い合わせを受け付け、
前記算出部は、前記所定の期間に対応する前記車両保険の契約期間と、前記所定の使用環境に対応する前記使用済環境と、前記残価値に対応する前記車両の価値とに関連付けて前記記憶部に記憶されている各車両の前記利用回数の統計値を算出し、
前記出力部は、
前記利用回数の統計値を、
前記所定の期間において適用する前記車両の車両保険の価格を算出するための算出情報として出力する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
バッテリーで駆動する車両ごとに、前記車両が使用された使用済期間と、前記車両が使用された使用済環境と、前記使用済期間の開始時点における前記車両の価値から前記使用済期間の終了時点における前記車両の価値を差し引いた減算価値とを関連付けて記憶する記憶部を有するコンピュータが実行する、
前記車両を識別するための車両識別情報を含み、所定の期間において前記車両を所定の使用環境下で使用した後の前記車両の価値である残価値の問い合わせを受け付けるステップと、
前記車両識別情報で特定される車両に搭載されている前記バッテリーの状態を特定するステップと、
前記バッテリーの状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記バッテリーの劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出するステップと、
算出した前記残価値を示すための情報を出力するステップと、
前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記車両のリース価格を算出するための算出情報の問い合わせを受け付けるステップと、
前記所定の期間に対応する前記使用済期間と、前記所定の使用環境に対応する前記使用済環境とに関連付けて前記記憶部に記憶されている各車両の前記減算価値の統計値を算出するステップと、
前記減算価値の統計値を、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記車両のリース価格を算出するための算出情報として出力するステップと、
を有する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の価値を算出する情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の価格を提示するシステムが知られている。特許文献1には、車両に関する現在の情報に基づいて未来の車両の査定相場を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、未来の車両の価値は、車両が使用される環境及び車両の使われ方等に応じて変動し得る。特に、バッテリーで駆動する電気自動車においては、未来のバッテリーの状態に応じて価値が大きく変動し得る。そのため、従来の技術を用いて表示された未来の車両の査定相場では、実際に使用された後の車両の価値との差が大きくなり得るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、一例として、未来の車両の価値を算出する精度を向上させることができる情報処理装置及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様にかかる情報処理装置は、バッテリーで駆動する車両を識別するための車両識別情報を含み、所定の期間において前記車両を所定の使用環境下で使用した後の前記車両の価値である残価値の問い合わせを受け付ける受付部と、前記車両識別情報で特定される前記車両に搭載されている前記バッテリーの状態を特定する状態特定部と、前記バッテリーの状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記バッテリーの劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記残価値を示すための情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記状態特定部は、前記車両を構成する部品であって、前記バッテリー以外の構成部品の状態をさらに特定してもよいし、前記算出部は、前記バッテリーの劣化度合いに加えて、前記構成部品の状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記構成部品の劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出してもよい。
【0008】
前記算出部は、前記所定の使用環境として、前記バッテリーの使用パターンに基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定してもよい。
【0009】
前記受付部は、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用する使用者を識別するための使用者識別情報をさらに含む前記問い合わせを受け付けてもよいし、前記情報処理装置は、前記使用者識別情報に基づいて、前記使用者による車両の使用履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部をさらに有してもよいし、前記算出部は、前記履歴情報に基づく前記バッテリーの使用パターンに基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定してもよい。
【0010】
前記状態特定部は、前記所定の期間の前である第1時点において前記車両の状態を特定し、前記所定の期間を経過した後である第2時点において前記車両の状態を特定してもよいし、前記算出部は、前記第1時点の前記車両の状態に基づいて推定した前記バッテリーの劣化度合いと、前記第2時点の前記車両の状態によって示される前記バッテリーの劣化度合いとの差に基づいて、前記バッテリーの劣化度合いを推定するための情報を更新してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記車両ごとに、前記車両が使用された使用済期間と、前記車両が使用された使用済環境と、前記使用済期間の開始時点における前記車両の価値から前記使用済期間の終了時点における前記車両の価値を差し引いた減算価値とを関連付けて記憶する記憶部をさらに有してもよいし、前記受付部は、前記所定の期間において前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記車両のリース価格を算出するための算出情報の問い合わせを受け付けてもよいし、前記算出部は、前記所定の期間に対応する前記使用済期間と、前記所定の使用環境に対応する前記使用済環境とに関連付けて前記記憶部に記憶されている各車両の前記減算価値の統計値を算出してもよいし、前記出力部は、前記統計値を、前記算出情報として出力してもよい。
【0012】
前記情報処理装置は、前記車両ごとに、前記車両が加入した車両保険の契約期間と、前記車両保険の契約期間において使用された使用済環境と、前記車両保険を利用して前記車両を修理した利用回数と、前記車両保険の契約期間が満了したときの前記車両の価値とを関連付けて記憶する記憶部をさらに有してもよいし、前記受付部は、前記所定の期間において適用する前記車両の車両保険の価格を算出するための算出情報の問い合わせを受け付けてもよいし、前記算出部は、前記所定の期間に対応する前記車両保険の契約期間と、前記所定の使用環境に対応する前記使用済環境と、前記残価値に対応する前記車両の価値とに関連付けて前記記憶部に記憶されている各車両の前記利用回数の統計値を算出してもよいし、前記出力部は、前記統計値を、前記算出情報として出力してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様にかかる情報処理方法は、コンピュータが実行する、バッテリーで駆動する車両を識別するための車両識別情報を含み、所定の期間において前記車両を所定の使用環境下で使用した後の前記車両の価値である残価値の問い合わせを受け付けるステップと、前記車両識別情報で特定される車両に搭載されている前記バッテリーの状態を特定するステップと、前記バッテリーの状態から前記車両を前記所定の使用環境下で使用した場合における前記バッテリーの劣化度合いに基づいて、前記残価値を算出するステップと、算出した前記残価値を示すための情報を出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一例として、未来の車両の価値を算出する精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】情報処理システムの概要を説明するための図である。
【
図3】記憶部に記憶しているデータベースの構成の一例を示す図である。
【
図4】バッテリーの状態を模式的に表した図である。
【
図5】情報処理システムの流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの概要を説明するための図である。情報処理システムSは、車両Vの残価値を示すための情報をユーザに提供するために用いられるシステムである。ユーザは、例えば、車両Vをリースするリース会社の社員、又は車両Vに適用可能な保険(例えば、車両保険)を運用する保険会社の社員等である。
【0017】
車両Vは、リチウムイオン電池をはじめとするバッテリーBで駆動する電気自動車である。また、車両Vは、各種のセンサー(バッテリーBの残量を測定するための電流センサー、及びブレーキパッドの摩耗を検知するためのブレーキパッドセンサー等)と、ネットワークNに接続するための通信部とを有し、通信部を介して各種のセンサーが測定又は検出した情報を外部に送信する。
【0018】
車両Vの残価値は、所定の期間において車両Vを所定の使用環境下で使用した後の車両Vの価値である。車両Vの残価値は、例えば、金額又は予め定められた指標によって示される。所定の使用環境は、車両Vが使用される環境、及び車両Vの用途を含む。車両Vが使用される環境は、例えば地域であるが、これに限らず、気温(例えば、年間にバッテリーBの許容範囲を超える気温に達した日数、又は地形(例えば、平野部、山間部)等であってもよい。車両Vの用途は、例えば、一般家庭用、法人における営業用、又は法人における送迎用等である。車両Vの用途は、走行距離ごと(例えば、5,000km以下、55,001kmから10,000km等)に細分化されてもよい。
【0019】
情報処理システムSは、情報処理装置1と、情報端末2とを有する。情報処理装置1は、車両Vの残価値を出力するコンピュータである。車両Vには、車両Vを識別するための車両識別情報が設けられており、情報処理装置1は、複数の車両Vそれぞれの車両識別情報を管理している。
【0020】
情報端末2は、ユーザが使用する端末であり、情報処理装置1によって出力された情報を表示するコンピュータである。情報端末2は、例えばスマートフォン、タブレット端末等の携帯端末、又はパーソナルコンピュータである。情報端末2は、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部を有する。
【0021】
情報処理装置1が車両V1の残価値を出力するための処理の概要を以下に説明する。ユーザが、情報端末2において、車両V1に対応する車両識別情報と、所定の期間として車両V1を使用する使用期間を示す情報と、所定の使用環境を示すための情報とを含み、車両V1の残価値を問い合わせるための情報を入力すると、情報処理装置1は、車両V1の残価値の問い合わせを情報端末2から受け付ける。
【0022】
電気自動車である車両Vの残価値は、搭載するバッテリーBの状態に大きく依存する。所定の期間に使用されたバッテリーBの状態は、一般に使用環境によって大きく変化し得るが、その使用環境を特定すれば、使用後のバッテリーBの状態の推定精度を上げることができる。そこで、情報処理装置1は、上記問い合わせを受け付けると、車両V1のバッテリーBの状態を特定する。情報処理装置1は、特定したバッテリーBの状態から車両V1を所定の使用環境下で使用した場合におけるバッテリーBの劣化度合いに基づいて、車両V1の残価値を算出する。そして、情報処理装置1は、算出した車両V1の残価値を示すための情報を出力する。
【0023】
このようにすることで、情報処理システムSは、未来の車両Vの価値をユーザに提示することができる。これにより、情報処理システムSは、算出した車両Vの残価値と、実際に所定の期間において所定の環境下で使用された後の車両の価値との差を小さくすることができる。その結果、情報処理システムSは、未来の車両の価値を算出する精度を向上させることができる。
以下、情報処理装置1の構成について説明する。
【0024】
[情報処理装置1の構成]
図2は、情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。通信部11は、ネットワークNに接続するためのインターフェイスであり、例えばLAN(Local Area Network)コントローラを含んで構成されている。
【0025】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。記憶部12は、車両Vに関する情報を記憶している。車両Vに関する情報は、例えば、当該車両Vに対応する車両識別情報と、車両Vに搭載されているバッテリーBの最大容量と、新品時の車両Vの価値とを含む。また、記憶部12は、車両Vの残価値を算出するための情報を管理する算出情報データベースと、バッテリーBの劣化度合いを推定するための情報を管理する推定情報データベースとを記憶している。
【0026】
図3は、記憶部12に記憶しているデータベースの構成の一例を示す図である。
図3(a)に示す算出情報データベースには、バッテリーBの満充電容量と、当該満充電容量における車両Vの価値とが関連付けて記憶されている。算出情報データベースに記憶されている満充電容量は、バッテリーBの最大容量に対する容量率を示す。算出情報データベースに記憶されている価値は、新品時のバッテリーBの価値に対する残価率を示す。
【0027】
図3(b)に示す推定情報データベースには、バッテリーBの使用パターン(走行距離、充電回数等)と、低下率とが関連付けて記憶されている。推定情報データベースに記憶されている低下率は、例えば、予め定められた期間(例えば1年間)において、関連付けられている使用パターンで車両Vが使用された場合におけるバッテリーBの満充電容量の低下の割合を示す。
【0028】
図2に戻り、制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、受付部131、状態特定部132、算出部133、履歴情報取得部134及び出力部135として機能する。
【0029】
受付部131は、車両識別情報を含み、所定の期間において車両Vを所定の使用環境下で使用した後の車両Vの価値である残価値の問い合わせを受け付ける。具体的には、まず、情報端末2は、ユーザが、特定の車両Vの残価値を問い合わせるための問合情報を入力すると、当該問合情報を情報処理装置1に送信する。問合情報には、車両識別情報と、所定の期間を示す情報と、所定の使用環境を示すための情報とが含まれる。所定の期間は、例えば、ユーザが指定した期間であり、6か月、1年、又は5年等である。そして、受付部131は、通信部11を介して、情報端末2から問合情報を取得することにより、車両Vの残価値の問い合わせを受け付ける。なお、情報処理装置1は、不図示の操作部を有し、当該操作部で入力された問合情報を受け付けてもよい。
【0030】
状態特定部132は、車両識別情報で特定される車両Vに搭載されているバッテリーBの状態を特定する。バッテリーBの状態は、例えば、現在のバッテリーBの満充電容量(SOH:State of Health)である。状態特定部132は、例えば、車両識別情報で特定される車両VからSOHを示す情報を取得することにより、バッテリーBの状態を特定する。
【0031】
状態特定部132は、車両識別情報で特定される車両VからSOHを算出するための情報を取得し、取得した情報に基づいてSOHを算出してもよい。例えば、まず、状態特定部132は、車両Vから、最後にフル充電した時のバッテリーBの残容量を示す情報を取得する。そして、状態特定部132は、バッテリーBの残容量と、バッテリーBの最大容量とを用いてSOHを算出する。状態特定部132は、公知の技術を用いてSOHを算出することができる。
【0032】
算出部133は、バッテリーBの状態から車両Vを所定の使用環境下で使用した場合におけるバッテリーBの劣化度合いに基づいて、車両Vの残価値を算出する。具体的には、まず、算出部133は、状態特定部132が特定した第1時点(現在)におけるバッテリーBの状態と、所定の期間と、所定の使用環境とに基づいて、所定の期間を経過した第2時点におけるバッテリーBの状態を推定することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する。
【0033】
そして、算出部133は、推定したバッテリーBの劣化度合いに基づいて、車両Vの残価値を算出する。算出部133は、例えば、新品時の車両Vの価値に対して、推定した第2時点におけるバッテリーBの状態(満充電容量)に関連付けて算出情報データベースに記憶されている価値が示す数値を乗算することにより、車両Vの残価値を算出する。
【0034】
例えば、記憶部12には、使用環境ごと(例えば、車両Vが使用される環境及び車両Vの用途の組み合わせごと)に定められたバッテリーBの満充電容量の低下率(例えば、年間における低下率)が記憶されている。この場合において、算出部133は、第1時点におけるバッテリーBの満充電容量(最大容量に対する容量率)に対して、受付部131が受け付けた所定の使用環境に関連付けて記憶部12に記憶されている低下率と、所定の期間に対応する数値とを乗算した乗算値を差し引いた第2時点におけるバッテリーBの満充電容量を算出することにより、バッテリーBの劣化度合いを算出する。所定の期間に対応する数値は、例えば、所定の期間が3年である場合、「3」である。
【0035】
算出部133は、所定の使用環境として、バッテリーBの使用パターンに基づいて、バッテリーBの劣化度合いを推定してもよい。具体的には、まず、受付部131は、走行距離及び充電回数等のバッテリーBの使用パターンを示す情報をさらに含むユーザによる問い合わせを受け付ける。そして、算出部133は、第1時点におけるバッテリーBの満充電容量に対して、上記使用パターンに関連付けて推定情報データベースに記憶されている低下率と、所定の期間に対応する数値とを乗算した乗算値を差し引いた第2時点におけるバッテリーBの満充電容量を算出することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する。このようにすることで、情報処理装置1は、バッテリーBの劣化度合いを推定する精度を向上させることができる。
【0036】
算出部133は、所定の期間において車両Vを所定の使用環境下で使用する使用者の履歴情報を所定の使用環境を示すための情報として、バッテリーBの劣化度合いを推定してもよい。使用者は、個人であってもよいし、法人であってもよい。
【0037】
履歴情報は、使用者による使用車両の使用履歴を示す情報であり、所定の使用環境を示すための情報である。履歴情報は、例えば、日ごと、月ごと又は年ごとにおける走行距離(一般道の走行距離、高速道路の走行距離、日中の走行距離、夜間の走行距離等)、放電及び充電のサイクル数、電装負荷時間(例えば、エアコンの使用時間等)、普通充電の回数、及び急速充電の回数等(以下、「走行距離等」という)を含む。使用車両は、車両Vとは異なる電気自動車である。使用車両は、情報処理装置1が管理する車両Vであってもよいし、情報処理装置1が管理していない車両であってもよい。
【0038】
具体的には、まず、受付部131は、使用者を識別するための使用者識別情報をさらに含む問い合わせを受け付ける。履歴情報取得部134は、使用者識別情報に基づいて、使用者の履歴情報を取得する。例えば、記憶部12には、使用者識別情報と履歴情報とが関連付けて記憶されており、履歴情報取得部134は、使用者識別情報に関連付けて記憶部12に記憶されている履歴情報を取得する。
【0039】
使用車両のメーカが管理する不図示の管理装置が、使用者識別情報と使用車両の履歴情報とを関連付けて管理しており、履歴情報取得部134は、通信部11を介して、使用者識別情報と関連付けて管理されている履歴情報を管理装置から取得してもよい。使用者が法人である場合、履歴情報取得部134は、通信部11を介して、当該法人が車両の使用を管理する不図示の管理台帳システムから履歴情報を取得してもよい。
【0040】
そして、算出部133は、履歴情報取得部134が取得した履歴情報に基づくバッテリーBの使用パターンに基づいて、バッテリーBの劣化度合いを推定する。算出部133は、履歴情報に基づいてバッテリーBの使用パターンを特定し、特定したバッテリーBの使用パターンに基づいてバッテリーBの劣化度合いを推定する。
【0041】
例えば、まず、算出部133は、履歴情報に含まれる各年の走行距離等を平均した平均走行距離等を算出する。そして、算出部133は、第1時点におけるバッテリーBの満充電容量に対して、算出した平均走行距離等に該当する使用パターンに関連付けて推定情報データベースに記憶されている低下率と、所定の期間に対応する数値とを乗算した乗算値を差し引いた第2時点におけるバッテリーBの満充電容量を算出することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する。
【0042】
算出部133は、所定の機械学習モデルを用いてバッテリーBの劣化度合いを推定してもよい。所定の機械学習モデルは、車両Vが使用された使用期間と、使用期間の前の時点におけるバッテリーBの満充電容量と、使用期間の後の時点におけるバッテリーBの満充電容量と、使用期間における使用履歴を示す履歴情報とを含む教師データを用いて学習された機械学習モデルである。
【0043】
算出部133は、第1時点におけるバッテリーBの満充電容量を示す情報と、所定の期間を示す情報と、使用者の履歴情報とを所定の機械学習モデルに入力し、当該所定の機械学習モデルが出力した第2時点におけるバッテリーBの満充電容量を示す情報を取得することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する。このように、情報処理装置1は、使用者の履歴情報を用いてバッテリーBの劣化度合いを推定することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する精度を向上させることができる。
【0044】
算出部133は、バッテリーBの劣化度合いを推定するための情報を更新してもよい。具体的には、まず、状態特定部132は、所定の期間の前である第1時点において車両Vの状態を特定し、所定の期間を経過した後である第2時点において車両Vの状態を特定する。そして、算出部133は、第1時点の車両Vの状態に基づいて推定したバッテリーBの劣化度合いと、第2時点の車両Vの状態によって示されるバッテリーBの劣化度合いとの差に基づいて、バッテリーBの劣化度合いを推定するための情報を更新する。
【0045】
バッテリーBの劣化度合いを推定するための情報は、例えば、推定情報データベースに記憶されている情報、又は所定の機械学習モデルに設定されているパラメータ等である。算出部133は、例えば、第1時点の車両Vの状態に基づいて推定した満充電容量(以下、「第1満充電容量」という)と、第2時点の車両Vの状態によって示される満充電容量(以下、「第2満充電容量」という)との差が、予め定められた閾値を超える場合に、バッテリーBの劣化度合いを推定するための情報を更新する。
【0046】
図4は、バッテリーBの状態を模式的に表した図である。
図4に示す位置G1は、算出部133が第1時点の車両Vの状態に基づいて推定したバッテリーBの劣化度合いを示す。
図4に示す位置G2は、状態特定部132が特定した第2時点の車両Vの状態を示す。
図4に示す例においては、第1満充電容量より第2満充電容量の方が少なくなっており、その差が閾値を超えているとする。この場合において、算出部133は、位置G1から位置G2までの範囲において低下率が位置G1より小さくなるように、第1満充電容量を推定するために用いた情報を更新する。このようにすることで、情報処理装置1は、バッテリーBの劣化度合いを推定する精度を向上させることができる。
【0047】
算出部133は、バッテリーBの劣化度合いに加えて、バッテリーB以外の構成部品の劣化度合いに基づいて、車両Vの残価値を算出してもよい。構成部品は、車体、駆動部(モータ)、シャシー、消耗部品(例えば、ブレーキパッド及びヘッドライト等)等のように、車両Vを構成する部品である。
【0048】
具体的には、まず、状態特定部132は、バッテリーB以外の構成部品の状態をさらに特定する。状態特定部132は、車両Vの各種のセンサーが測定した情報に基づいて構成部品の状態を特定してもよいし、メーカの管理装置が管理している構成部品の状態を示す情報を取得することにより、当該構成部品の状態を特定してもよい。そして、算出部133は、バッテリーBの劣化度合いに加えて、構成部品の状態から車両Vを所定の使用環境下で使用した場合における構成部品の劣化度合いに基づいて、車両Vの残価値を算出する。
【0049】
例えば、記憶部12には、使用環境ごとに、各構成部品の劣化度合いを示す各構成部品の劣化率が記憶されており、算出部133は、バッテリーBの満充電容量の低下率に基づいてバッテリーBの劣化度合いを推定し、所定の使用環境に関連付けて記憶部12に記憶されている各構成部品の劣化率に基づいて各構成部品の劣化度合いを推定する。そして、算出部133は、推定したバッテリーBの劣化度合いと、各構成部品の劣化度合いとに基づいて、車両Vの残価値を算出する。このようにすることで、情報処理装置1は、車両Vの残価値を算出する精度を向上させることができる。
【0050】
出力部135は、算出部133が算出した車両Vの残価値を示すための情報を出力する。出力部135は、例えば、通信部11を介して、算出部133が算出した車両Vの残価値を示すための情報を情報端末2に送信する。
【0051】
出力部135は、車両Vの残価値を示すための情報の他に、様々な情報を出力してもよい。例えば、出力部135は、所定の期間において車両Vを所定の使用環境下で使用した場合における車両Vのリース価格を算出するための算出情報を出力してもよい。この場合における所定の期間は、ユーザが指定した予定のリース期間である。例えば、記憶部12には、車両Vごとに、車両Vが使用された使用済期間と、車両Vが使用された使用済環境と、減算価値とが関連付けて記憶されている。減算価値は、使用済期間の開始時点における車両Vの価値から使用済期間の終了時点における車両Vの価値を差し引いた価値である。
【0052】
この場合において、まず、受付部131は、予定のリース期間を示す情報と、所定の使用環境を示す情報とを含む算出情報の問い合わせを受け付ける。算出部133は、予定のリース期間に対応する使用済期間と、所定の使用環境に対応する使用済環境とに関連付けて記憶部12に記憶されている各車両Vの減算価値の統計値を算出する。予定のリース期間に対応する使用済期間は、例えば、予定のリース期間に等しい期間の使用済期間、又は予定のリース期間に近似する期間の使用済期間である。所定の使用環境に対応する使用済環境は、例えば、車両Vが使用される地域及び車両Vの用途が一致する使用済環境、又は車両Vが使用される地域及び車両Vの用途が近似する使用済環境である。統計値は、例えば、平均値、中央値、又は最頻値等である。
【0053】
そして、出力部135は、算出部133が算出した統計値を、算出情報として出力する。このようにすることで、ユーザ(リース会社の社員)は、リース期間において所定の使用環境下で使用された場合に消費される統計的な価値を把握することができる。
【0054】
例えば、出力部135は、所定の期間において適用する車両Vの車両保険の価格を算出するための算出情報を出力してもよい。この場合における所定の期間は、ユーザが指定した予定の契約期間である。例えば、記憶部12には、車両Vごとに、車両Vが加入した車両保険の契約期間と、車両保険の契約期間において使用された使用済環境と、車両保険を利用して車両Vを修理した利用回数と、車両保険の契約期間が満了したときの車両Vの価値とが関連付けて記憶されている。
【0055】
この場合において、まず、受付部131は、予定の契約期間を示す情報と、所定の使用環境を示す情報とを含む算出情報の問い合わせを受け付ける。算出部133は、予定の契約期間に対応する車両保険の契約期間と、所定の使用環境に対応する使用済環境と、算出した車両Vの残価値に対応する車両Vの価値とに関連付けて記憶部12に記憶されている各車両Vの利用回数の統計値を算出する。予定の契約期間に対応する車両保険の契約期間は、例えば、予定の契約期間に等しい期間の契約期間、又は予定の契約期間に近似する期間の契約期間である。車両Vの残価値に対応する車両Vの価値は、例えば、車両Vの残価値と一致する車両Vの価値、又は車両Vの残価値に近似する車両Vの価値である。
【0056】
そして、出力部135は、統計値を、算出情報として出力する。このようにすることで、ユーザ(保険会社の社員)は、契約期間において所定の使用環境下で使用された場合に車両保険が利用される統計的な回数を把握することができる。
【0057】
[情報処理システムSの処理]
続いて、情報処理システムSの処理の流れについて説明する。
図5は、情報処理システムSの流れを示すシーケンス図である。本処理は、情報端末2が、ユーザによって入力された問合情報を情報処理装置1に送信したことを契機として開始する(S1)。
【0058】
受付部131が問合情報を取得すると、状態特定部132は、当該問合情報に含まれる車両識別情報で特定される車両Vに搭載されているバッテリーBの状態を特定する(S2)。算出部133は、状態特定部132が特定した第1時点におけるバッテリーBの状態と、所定の期間と、所定の使用環境とに基づいて、所定の期間を経過した第2時点におけるバッテリーBの状態を推定することにより、バッテリーBの劣化度合いを推定する(S3)。
【0059】
算出部133は、推定したバッテリーBの劣化度合いに基づいて、車両Vの残価値を算出する(S4)。そして、出力部135は、通信部11を介して、算出部133が算出した車両Vの残価値を示すための情報を情報端末2に送信する(S5)。
【0060】
[本実施の形態における効果]
以上説明したとおり、情報処理装置1は、車両Vの残価値の問い合わせに応じて、車両Vに搭載されているバッテリーBの状態を特定する。そして、情報処理装置1は、特定したバッテリーBの状態から車両Vを所定の使用環境下で使用した場合におけるバッテリーBの劣化度合いに基づいて算出した車両Vの残価値を示すための情報を出力する。このようにすることで、情報処理装置1は、未来の車両Vの価値をユーザに提示することができる。これにより、情報処理装置1は、算出した車両Vの残価値と、所定の期間において所定の環境下で使用された後の車両の価値との差を小さくすることができる。その結果、情報処理装置1は、未来の車両の価値を算出する精度を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 受付部
132 状態特定部
133 算出部
134 履歴情報取得部
135 出力部
2 情報端末
B バッテリー
S 情報処理システム
V 車両