(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ガス供給装置、射出成形機および発泡成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20241024BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20241024BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C45/00
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2020201506
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-06-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】内藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】油布 拓也
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/184486(WO,A1)
【文献】特開2019-018522(JP,A)
【文献】特開2003-039473(JP,A)
【文献】特開2002-067116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0118432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 45/00
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内で駆動可能に設けられているスクリュと、を備えた射出装置に設けられ、
ガス供給源と、
前記ガス供給源からのガスの圧力を調整して前記ガス注入口に供給するガス圧力調整部と、を備え、
前記ガス圧力調整部は前記射出装置において実施される成形サイクルにおいて
ガスを継続的に供給しながら前記ガス注入口におけるガス圧力を能動的に変化させるようになっており、前記成形サイクルを構成する工程であって前記スクリュを回転して樹脂を計量する計量工程に対し該計量工程と少なくとも一部が重複するように昇圧期間を設定してガス圧力を昇圧するようになって
おり、前記計量工程完了後の規定時間後にガス圧力を降圧するようになっている、ガス供給装置。
【請求項2】
前記ガス圧力調整部は成形サイクルの計量工程の完了の規定時間前、完了時、あるいは完了から規定時間後にガス圧力を降圧する、請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記ガス圧力調整部は成形サイクルにおいてガス圧力を2段階以上に切り替える、請求項1または2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス供給源は1本または複数本のガスボンベからなる、請求項1~3のいずれかの項に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記ガス注入口は前記加熱シリンダに2個以上設けられている、請求項1~4のいずれかの項に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記ガス圧力調整部は1個または複数個の減圧弁を備えている、請求項1~5のいずれかの項に記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記ガス圧力調整部は少なくともガス圧力を高圧に調整する高圧調整部と、低圧に調整する低圧調整部とを備えている、請求項1~6のいずれかの項に記載のガス供給装置。
【請求項8】
前記高圧調整部は、バッファを備えている、請求項7に記載のガス供給装置。
【請求項9】
前記ガス圧力調整部は、ガス圧力を昇圧する昇圧機構を備えている、請求項1~8のいずれかの項に記載のガス供給装置。
【請求項10】
金型を型締する型締装置と、
樹脂を射出する射出装置と、を備え、
前記射出装置は、ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内で駆動可能に設けられているスクリュと、
ガス供給源と、
前記ガス供給源からのガスの圧力を調整して前記ガス注入口に供給するガス圧力調整部と、を備え、
前記ガス圧力調整部は前記射出装置において実施される成形サイクルにおいて
ガスを継続的に供給しながら前記ガス注入口におけるガス圧力を能動的に変化させるようになっており、前記成形サイクルを構成する工程であって前記スクリュを回転して樹脂を計量する計量工程に対し該計量工程と少なくとも一部が重複するように昇圧期間を設定してガス圧力を昇圧するようになって
おり、前記計量工程完了後の規定時間後にガス圧力を降圧するようになっている、射出成形機。
【請求項11】
前記ガス圧力調整部は成形サイクルの計量工程の完了の規定時間前、完了時、あるいは完了から規定時間後にガス圧力を降圧する、請求項10に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記ガス圧力調整部は成形サイクルにおいてガス圧力を2段階以上に切り替える、請求項10または11に記載の射出成形機。
【請求項13】
前記ガス供給源は1本または複数本のガスボンベからなる、請求項10~12のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項14】
前記ガス注入口は前記加熱シリンダに2個以上設けられている、請求項10~13のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項15】
前記ガス圧力調整部は1個または複数個の減圧弁を備えている、請求項10~14のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項16】
前記ガス圧力調整部は少なくともガス圧力を高圧に調整する高圧調整部と、低圧に調整する低圧調整部とを備えている、請求項10~15のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項17】
前記高圧調整部は、バッファを備えている、請求項16に記載の射出成形機。
【請求項18】
前記ガス圧力調整部は、ガス圧力を昇圧する昇圧機構を備えている、請求項10~17のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項19】
ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内で駆動可能に設けられているスクリュと、
ガス供給源と、を備えた射出成形機において発泡成形品を得る発泡成形方法であって、
前記ガス供給源からのガスはガス圧力調整処理によって圧力を調整して前記ガス注入口から前記加熱シリンダに供給するようにし、
前記ガス圧力調整処理は前記射出成形機において実施される成形サイクルにおいて
ガスを継続的に供給しながら前記ガス注入口におけるガス圧力を能動的に変化させるようにし、前記成形サイクルを構成する工程であって前記スクリュを回転して樹脂を計量する計量工程に対し該計量工程と少なくとも一部が重複するように昇圧期間を設定してガス圧力を昇圧するように
し、前記計量工程完了後の規定時間後にガス圧力を降圧するようにする、発泡成形方法。
【請求項20】
前記ガス圧力調整処理は成形サイクルの計量工程の完了の規定時間前、完了時、あるいは完了から規定時間後にガス圧力を降圧する、請求項19に記載の発泡成形方法。
【請求項21】
前記ガス圧力調整処理は成形サイクルにおいてガス圧力を2段階以上に切り替える、請求項19または20に記載の発泡成形方法。
【請求項22】
前記ガス供給源は1本または複数本のガスボンベからなる、請求項19~21のいずれかの項に記載の発泡成形方法。
【請求項23】
前記ガス注入口は前記加熱シリンダに2個以上設けられている、請求項19~22のいずれかの項に記載の発泡成形方法。
【請求項24】
前記ガス圧力調整処理は1個または複数個の減圧弁によりガス圧力を調整する、請求項19~23のいずれかの項に記載の発泡成形方法。
【請求項25】
前記ガス圧力調整処理は少なくともガス圧力を高圧に調整する高圧調整処理と、低圧に調整する低圧調整処理とを備えている、請求項19~24のいずれかの項に記載の発泡成形方法。
【請求項26】
前記ガス圧力調整処理は、ガス圧力を昇圧する昇圧処理を備えている、請求項19~25のいずれかの項に記載の発泡成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出材料に二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気あるいはメタンやブタンなどの炭化水素等のガスを注入して発泡成形品を成形する射出成形機において、ガスを供給するガス供給装置、ガス供給装置を備えた射出成形機、および発泡成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物理発泡剤つまり高圧のガスを利用して発泡成形品を得る発泡成形方法は、ガス供給装置を備えた射出成形機によって実施する。射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、加熱シリンダとスクリュとから構成され、加熱シリンダ内はスクリュの形状に応じて複数の区間に区分されている。すなわち、上流から下流に向かって、第1の圧縮区間、飢餓区間、第2の圧縮区間を備えている。加熱シリンダには飢餓区間に対応するようにガス注入口が設けられている。ガス供給装置は、このガス注入口に接続されている。
【0003】
樹脂は加熱シリンダ内をスクリュによって上流から下流に送られて溶融され、第1の圧縮区間で混錬される。ついで飢餓区間において樹脂の圧力が低下する。ガス供給装置から供給されるガスがガス注入口経由で飢餓区間に注入される。ガスが注入された樹脂は第2の圧縮区間で混錬・圧縮され、ガスが樹脂に溶解する。このような樹脂がスクリュの先端に送られ、計量される。スクリュを駆動して樹脂を金型に射出する。樹脂に溶解しているガスが金型内で発泡して発泡成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡成形方法を実施する場合、十分な量のガスを樹脂に溶解させることが好ましい。ガスが十分に溶解した樹脂を射出すると金型内で発生する気泡の数が増加し、気泡が緻密で微細な品質の高い発泡成形品が得られるからである。十分な量のガスを効率よく樹脂に溶解させるには、比較的高圧のガスをガス注入口から注入する必要がある。しかしながら、ガスを高圧で供給すると第1の圧縮区間における樹脂のシ-ルが破られてガスが加熱シリンダ内を上流側から漏れる逆流が発生し易くなる問題がある。
【0006】
本開示において、発泡成形において十分な量のガスを効率よく樹脂に溶解させ、ガスの逆流が発生しにくいガス供給装置、射出成形機および発泡成形方法を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、発泡成形用の射出成形機に設けるガス供給装置を対象とする。射出成形機の射出装置は、ガス注入口が設けられている加熱シリンダと、スクリュとからなり、ガス供給装置はこのガス注入口に接続されている。ガス供給装置はガス供給源と、ガス圧力調整部とから構成する。ガス圧力調整部は、ガス供給源からのガスをガス注入口に注入するとき、ガス圧力を調整して供給するようにする。ガス圧力調整部は、成形サイクルにおいてガス注入口におけるガス圧力を能動的に変えるようにし、ガス圧力を昇圧する昇圧期間は少なくともその一部が計量工程と重複するようにする。そして計量工程完了後の規定時間後にガス圧力を降圧するようにする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、ガス供給装置のガス圧力調整部によってガス圧力が変化するようになっており、ガス圧力が昇圧する昇圧期間が計量工程と重複するようになっている。したがって、計量工程で樹脂が上流から下流に送られているときに高圧のガスが樹脂に供給されるので効率よくガスが樹脂に溶解する。そしてこのときには樹脂が上流から下流に流れるので、ガスの逆流は発生しにくいという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
【
図2】本実施の第1の形態に係るガス供給装置を備えた射出装置の正面断面図である。
【
図3】本実施の第2の形態に係るガス供給装置を備えた射出装置の正面断面図である。
【
図4】本実施の第3の形態に係るガス供給装置を備えた射出装置の正面断面図である。
【
図5】本実施の第4の形態に係るガス供給装置を備えた射出装置の正面断面図である。
【
図6】従来のガス供給装置を備えた射出装置の正面断面図である。
【
図7】本実施の形態に係る発泡成形方法を実施したときの、ガス圧力、スクリュ回転数、スクリュ位置、ガス必要量のそれぞれの成形サイクル内における変化を示すグラフである。
【
図8】本実施の他の形態に係る発泡成形方法を実施したときの、ガス圧力、スクリュ回転数、スクリュ位置、ガス必要量のそれぞれの成形サイクル内における変化を示すグラフである。
【
図9】従来の発泡成形方法を実施したときの、ガス圧力、スクリュ回転数、スクリュ位置、ガス必要量のそれぞれの成形サイクル内における変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドBに設けられている型締装置2と射出装置3とガス供給装置5とから概略構成されている。ガス供給装置5は本実施の形態において特徴的な装置であり、後で詳しく説明する。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は直圧式から構成することもでき、型開閉する機構についてその種類は限定されない。本実施の形態に係る型締装置2はトグル式からなる。すなわち、型締装置2は、固定盤7と、可動盤8と、型締ハウジング9と、型締ハウジング9と固定盤7とを連結しているタイバ-10、10、…と、トグル機構11とから構成され、金型13、14が固定盤7と可動盤8とに設けられている。トグル機構11を駆動すると金型13、14が型締めされるようになっている。
【0014】
<射出装置>
本実施の形態に係る射出装置3は物理発泡剤つまりガスを使用した発泡成形用の射出装置になっており、
図1にはその外観が簡略的に、そして
図2には断面図で示されている。射出装置3は加熱シリンダ18と、この加熱シリンダ18に入れられているスクリュ19とから構成されている。スクリュ19は、上流側から下流側に向かってフライトの溝深さが変化しており、加熱シリンダ18内が複数の区間に区分されている。すなわち上流側から、樹脂が供給され溶融する供給区間22、溶融した樹脂が圧縮される第1の圧縮区間23、溝深さが深く樹脂の圧力が低下する飢餓区間24、そして第2の圧縮区間25に区分されている。加熱シリンダ18には上流にホッパ27が、そして先端には射出ノズル29が設けられ、飢餓区間24に対応する位置には内部にガスを注入するガス注入口30が設けられている。
【0015】
射出成形機1には
図1に示されているようにコントロ-ラ31が設けられ、型締装置2、射出装置3、および後で詳しく説明する本実施の形態に係るガス供給装置5は、コントロ-ラ31に接続され、コントロ-ラ31によって制御されるようになっている。
【0016】
<従来のガス供給装置>
本実施に形態に係るガス供給装置5を説明する前に、従来のガス供給装置101について説明する。従来のガス供給装置101は、
図6に示されているように、ガス供給源つまりガスボンベ102と、このガスボンベ102から供給される高圧のガスを低圧の2次圧力に減圧する減圧弁103と、2次圧力が供給される管路に必要に応じて設けられる逆止弁104と、同様に必要に応じて設けられる開閉弁106とから構成されている。2次圧力にされたガスがガス注入口30から加熱シリンダ18内に注入されるようになっている。
【0017】
従来のガス供給装置101によってガスを供給して発泡成形の成形サイクルを実施するときの様子が、
図9のグラフに示されている。成形サイクルの計量工程110において、スクリュ回転数111は所定の回転数で回転し、樹脂が計量されてスクリュ位置112は計量工程110において実質的に直線状に後退する。計量工程110が完了するとスクリュ回転数111は0になり、スクリュ位置112は一定になる。
【0018】
ところで計量工程110において樹脂は上流から送られてきて飢餓区間24においてガスが供給され、下流に送られる。計量工程では、上流から流れてきた樹脂にガスが徐々に溶解しながら下流側に送られるため、ガスは一時的に大量に消費されることになり、ガス圧力114は計量工程110において一時的に低下する。ガスボンベ102から供給されるガスは、減圧弁103で減圧されて一定圧力の2次圧力に制御されているはずである。しかしながら、一時的に大量に消費されたガスを補うようガスが高速で配管を流れることにより、圧力の損失が発生するので、それによってガス圧力114が一時的に低下することになる。樹脂が必要とするガス量がグラフ115に示されており、計量工程110において大量に必要としている。計量工程110において一時的に低下する圧力は、例えば0.2~0.3MPaとなり、その分だけ樹脂に溶融するガスの量が少なくなってしまう。大型の成形機ではガス消費量が多いため、ガス圧力の低下は、さらに大きくなる可能性もある。本実施の形態に係るガス供給装置5は、この現象を防止するように構成されている。
【0019】
<本実施の第1の形態に係るガス供給装置>
本発明に係るガス供給装置5は色々な実施の形態を採ることができるが、最初に、
図2に示されている、第1の実施の形態に係るガス供給装置5Aを説明する。ガス供給装置5Aは、ガス供給源としてのガスボンベ33、33と、ガス供給源から供給されるガスの圧力を調整するガス圧力調整部34とから構成されている。ガス圧力調整部34には、従来のガス供給装置101にはない構成が設けられている。すなわちガス圧力を高圧に調整する高圧調整部36と、低圧に調整する低圧調整部37である。
【0020】
高圧調整部36は、ガスボンベ33から供給される高圧のガス圧力である供給源圧力を減圧する高圧減圧弁38を備えている。この高圧減圧弁38の下流の管路は分岐しており、分岐した部分が低圧調整部37になっている。この低圧調整部37には低圧減圧弁39が設けられている。供給源圧力で供給されるガスは高圧減圧弁38によって減圧され、さらに低圧減圧弁39によって減圧される。高圧減圧弁38によって減圧される圧力は供給源圧力より低いが、低圧減圧弁39によって減圧される圧力である低圧より高いので、本明細書ではこのガス圧力を高圧と表現している。
【0021】
高圧調整部36においては高圧減圧弁38の下流の管路に高圧側逆止弁41と高圧側開閉弁44とが設けられている。低圧調整部37においても低圧減圧弁39の下流の管路に低圧側逆止弁42と低圧側開閉弁45とが設けられている。なお、
図2には示されていないが、これらの開閉弁44、45はコントロ-ラ31(
図1参照)によって操作されるようになっている。高圧側開閉弁44と低圧側開閉弁45のそれぞれの下流の管路は、合流してガス注入口30に接続されている。
【0022】
第1の実施の形態に係るガス供給装置5Aにおいて、ガスボンベ33、33が接続されている配管にはガスの供給源圧力を検出する供給源圧力計47が、高圧調整部36には高圧のガスを検出する高圧圧力計48が、低圧調整部37には低圧のガスを検出する低圧圧力計49が、それぞれ設けられている。またガス注入口30に接続されている管路には注入されるガスの圧力を検出する注入圧圧力計51が設けられている。
【0023】
このような第1の実施の形態に係るガス供給装置5Aにおいて、予め高圧減圧弁38、低圧減圧弁39は、それぞれが調整する高圧、低圧のガス圧力が所望の圧力になるように設定してある。したがって、ガス注入口30から加熱シリンダ18内に供給されるガスのガス圧力は、低圧側開閉弁45を閉じて高圧側開閉弁44を開くと高圧になり、低圧側開閉弁45を開いて高圧側開閉弁44を閉じると低圧になる。なお、この実施の形態において低圧側開閉弁45は必ずしも必須ではない。これは、低圧側逆止弁42が設けられているので、高圧のガスが低圧側調整部37に逆流することはないからである。つまり、本実施の形態では、低圧側開閉弁45あるいは逆止弁45のどちらか一方があれば良いことになる。これは、高圧調整部36と低圧調整部37を含む場合は、以降の実施形態でも同様である。
【0024】
<本実施の形態に係る発泡成形方法>
本実施の第1の形態に係るガス供給装置5Aを備えた本実施の形態に係る射出成形機1によって実施する発泡成形方法は、端的に言うと成形サイクルにおいて能動的にガス圧力を変化させる方法である。具体的には、計量工程においてガス圧力を昇圧し、他の工程において降圧する。計量工程では樹脂が加熱シリンダ18内を上流から下流に流れるため、ガスが加熱シリンダ18内を逆流するおそれがない。この計量工程でガスを昇圧して高圧にするので、効率よく大量のガスを樹脂に溶解させることができる。計量工程が完了すると加熱シリンダ18内における樹脂の流れが停止するのでガスが逆流する可能性がある。このときにガスを降圧して低圧にするので逆流を防止できる。発泡成形方法について、
図2及び
図7を参照しながらさらに説明する。
【0025】
図7には成形サイクルにおける、各種デ-タの変化が示されている。まずスクリュ回転数62は、成形サイクルの計量工程61において一定の回転数で回転し、他の工程においては0になる。スクリュ位置63は射出工程65において急激に低下し、その後ほぼ一定に推移し、計量工程61において緩やかに増加し、計量工程61の完了後に一定になる。
【0026】
ところでガスはガス注入口30から注入される。つまり飢餓区間24において樹脂に注入される。ガスの溶解量が0あるいは少ない樹脂に対してガスは大量に溶解し、ガスが十分に溶解した樹脂にはわずかしか溶解しない。計量工程61においてはガスが溶解していない新しい樹脂が加熱シリンダ18内の上流から連続的に流れてくるので、ガスの消費量は大きい。一方、加熱シリンダ18内を樹脂が流れない他の工程においてはガスの消費量は減少する。つまりガスの必要量は変化する。符号67のグラフは、成形サイクルにおけるガスの必要量の変化を示している。
【0027】
本実施の形態に係る発泡成形方法は、ガスの必要量67が、大きいときガスを高圧で供給し、小さいとき低圧で供給するようになっている。符号68のグラフはガス圧力の変化を示している。計量工程61以外の工程では、第1の実施の形態に係るガス供給装置5Aにおいて低圧側開閉弁45を開くと共に高圧側開閉弁44を閉じて、低圧のガスを供給する。計量工程61の開始に先立って、符号69のタイミングで低圧側開閉弁45を閉じると共に高圧側開閉弁44を開いて高圧のガスを供給する。ガス圧力68は速やかに高圧に変化する。すなわちガス圧力は昇圧する。これにより、大量のガスを効率よく樹脂に注入することができる。ガス溶解量およびガス溶解速度は、ガス圧力に比例するためである。つまり、ガス溶解量はガス圧力により制御される。
【0028】
計量工程61の完了後、所定の規定時間後に低圧側開閉弁45を開くと共に高圧側開閉弁44を閉じて、低圧のガスの供給に切り替える。このタイミングが符号70で示されている。すなわちガス圧力を降圧する。ガスの圧力は緩やかに低下する。その後、ガス圧力は低圧で安定する。これにより、ガスの逆流が防止される。また、圧力が低下しすぎると、昇圧期間71中に樹脂に溶解したガスは樹脂から分離して発泡し始めるが、ガス圧力を低圧に維持することで加熱シリンダ18内での発泡を防止できる。なお、この実施の形態に係る発泡成形方法では、ガスの圧力が高圧になる期間、つまり昇圧期間71は、計量工程61を含んでそれより若干長めになっている。
【0029】
本実施の形態はこれに限定されない。例えば、ハイサイクル成形などで計量時間が極端に短い場合、低圧のガスに切り替える代りに、ガス供給を停止しても良い。サイクルが短いため、実質的に圧力降下が少なく、低圧に切替えるのと同様の効果を得られるためである。この場合、低圧調整部37は必ずしも必要なく、高圧調整部36だけでガス供給装置5を構成しても良い。
【0030】
<本実施の第2の形態に係るガス供給装置>
ガス供給装置5は色々な変形が可能である。
図3には第2の実施の形態に係るガス供給装置5Bが示されている。第1の実施の形態と同様の部材、部品には同じ符号を付して説明を省略する。この実施の形態に係る射出装置3‘には、2個のガス注入口、つまり第1、2のガス注入口30a、30bが設けられている。第2の実施の形態に係るガス供給装置5Bは、これら第1、2のガス注入口30a、30bにガスを注入するようになっている。
【0031】
第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態に係るガス供給装置5Bにも高圧調整部36と低圧調整部37が設けられているが、これらは上流側から完全に2系統に分離している。つまり、それぞれに対応してガスボンベ33a、33bが別々に設けられ、それぞれの供給源圧力計47a、47bが設けられている。このような高圧調整部36からの管路と、低圧調整部37からの管路は、それぞれ第1のガス注入口30aと、第2のガス注入口30bとに接続されている。
【0032】
ただし、高圧調整部36からの管路と低圧調整部37からの管路には、途中にバイパス管52が設けられ、このバイパス管52にはバイパス開閉弁53が設けられている。そして、高圧調整部36からの管路で、バイパス管52より下流側には、第1の開閉弁54が、低圧調整部37からの管路で、バイパス管52より下流側には、第2の開閉弁55がそれぞれ設けられている。
【0033】
第2の実施の形態に係るガス供給装置5Bは色々な方法で運転が可能になっている。成形サイクルにおいてバイパス開閉弁53を常に閉状態にして運転する場合、高圧のガスは常に第1のガス注入口30aからのみ、低圧のガスは常に第2のガス注入口30bからのみ加熱シリンダ18内に注入されることになる。計量工程61においては、高圧側開閉弁44と第1の開閉弁54とを開いて高圧のガスを供給し、他の工程においてはこれらの開閉弁44、54を閉じて、低圧側開閉弁45と第2の開閉弁55とを開いて低圧のガスを供給するようにする。
【0034】
バイパス開閉弁53を常に開状態にして運転する場合、第1、2のガス注入口30a、30bのいずれにも高圧のガスと低圧のガスとを供給できる。つまり、高圧側開閉弁44を開いて低圧側開閉弁45を閉じると高圧のガスが供給され、高圧側開閉弁44を閉じて低圧側開閉弁45を開くと低圧のガスが供給される。なお、第1、2の開閉弁54、55の開閉状態によって、第1、2のガス注入口30a、30bの両方に同時にガスを注入することもできるし、いずれか一方だけにガスを注入することもできる。射出成形機1では計量工程中にスクリュ19は軸方向に移動するため、スクリュ19の構成と位置、そしてガス注入口30a、30bの配置によっては、ガス注入口30a、30bが飢餓区間24から外れる可能性がある。そのような場合でも、ガス注入口30a、30bを軸方向に離間した配置にして、スクリュ位置に応じて第1、2の開閉弁54、55の一方の開く方を選択することで、飢餓区間24の適切な位置にガスを供給し続けることができる。
【0035】
本実施の形態においては、様々な変形例が可能である。バイパス開閉弁53を常に開放して使用する代わりに、バイパス開閉弁53をなくしてバイパス管52としてしても良いし、バイパス開閉弁53を常に閉じて使用する代わりに、バイパス管52をなくしても良い。バイパス管52をなくした場合は、第1、2の開閉弁54、55はなくしても良い。
【0036】
<本実施の第3の形態に係るガス供給装置>
図4には第3の実施の形態に係るガス供給装置5C が示されている。第1の実施の形態と同様の部材、部品には同じ符号を付して説明を省略する。この第3の実施の形態に係るガス供給装置5Cは、高圧調整部36は高圧ピストンによって駆動されるシリンジ56からなり、低圧調整部37の下流に接続されている。このシリンジ56は十分な量の低圧のガスを貯留することができ、ピストンを駆動するとこれが圧縮されて高圧のガスを供給できるようになっている。つまりガスを昇圧する昇圧機構になっている。そのため、計量工程61において低圧側開閉弁45を閉じた後、シリンジ56を駆動してガスを昇圧して高圧のガスを供給すればよい。
【0037】
昇圧機構のガスの圧力制御手段は特に限定されないが、例えば、ピストンの駆動力とピストンの断面積から圧力を求めて制御しても良いし、ピストンの下流側に圧力計をつけて圧力をフィ-ドバック制御しても良い。
【0038】
<本実施の第4の形態に係るガス供給装置>
図5には第4の実施の形態に係るガス供給装置5D が示されている。第1の実施の形態と同様の部材、部品には同じ符号を付して説明を省略する。この第4の実施の形態に係るガス供給装置5Dは、ガス供給源が窒素ガス発生装置80とガスを圧縮するブ-スタ-ポンプ81とから構成されている。このガス供給源からの管路には、自動圧力調整機能付き減圧弁83が設けられている。この減圧弁83はコントロ-ラ31(
図1参照)からの指令によって設定圧力を変更することができる。この減圧弁83の下流には圧力計84、逆止弁85、開閉弁86が設けられガス注入口30に接続されている。計量工程においては自動圧力調整機能付き減圧弁83においてガスを高圧にして供給し、他の工程においては低圧にして供給する。
【0039】
<他の実施の形態に係る発泡成形方法>
第3の実施の形態に係るガス供給装置5C、あるいは第4の実施の形態に係るガス供給装置5Dによって運転する場合、ガスの圧力を高圧、中圧、低圧等のように3段階以上にして供給することもできる。
図8には、3段階にガスの圧力を変化させて供給する発泡成形方法における各デ-タの変化が示されている。すなわち、昇圧期間は、ガス圧力68が中圧の昇圧期間71aと、ガス圧力68が高圧の昇圧期間71bと、からなる。ガス圧力68は、計量工程61に先立って符号69aのタイミングで低圧から中圧に切り替える。ついで計量工程61が開始された後に符号69bのタイミングでガスの圧力を中圧から高圧に切り替える。計量工程61が完了するより若干前に符号70のタイミングで高圧から低圧に切り替えると、その後ガス圧力68は緩やかに低圧に変化する。さらに、ガス圧力68の昇圧、降圧は滑らかに実施してもよい。すなわち昇圧工程61中に除々に圧力を上げていっても良い。また、第1、2の実施の形態において昇圧機構を高圧調整部36に設け、昇圧工程61中に3段階あるいはそれ以上に分けて圧力を調整するなどの変形例も可能である。
【0040】
<他の変形例>
本実施の形態に係る射出成形機1、および本実施の形態に係る発泡成形方法は他にも色々な変形が可能である。例えばガス注入口30にはガス供給装置5からの管路が直接接続されているように説明したが、ガス注入口30の近傍に小容積のバッファを設けてもよい。このバッファがクッションになってガス圧力の急激な変化を抑制できる。しかし、本発明で最大の効果を得るためには、バッファは高圧調整部36の高圧側逆止弁42と高圧側開閉弁45との間に設ける方が望ましい。高圧側開閉弁45より下流側、つまりガス注入口30付近にバッファを設けると、圧力を高圧あるいは低圧に切替えた際に、バッファの緩衝作用により圧力の切替に時間を要するためである。一方で、高圧調整部36にバッファを設けると、高圧側開閉弁44を開いて圧力を低圧から高圧に切替えた直後の高圧調整部36の圧力低下を抑制し、加熱シリンダ18内の昇圧を速く行うことができる。
【0041】
また、例えば第1の実施の形態に係るガス供給装置5Aにおいて、すでに説明したように低圧側逆止弁42を省略してもよいし、あるいは低圧側逆止弁42を省略する代わりに逆止弁41、42を省略することもできる。
【0042】
また、
図2に示されているガス供給装置5Aや、
図4に示されているガス供給装置5Cを、
図3に示されている、ガス注入口が2つ設けられた構成の射出装置3‘に組み合わせることもできる。このようにする場合、ガス供給装置を出た配管を、2つに分岐させて、2つのガス注入口のそれぞれに至るようにする。また、
図3に示すガス供給装置5Bで、バイパス開閉弁53が設けられていない構成であってもよい。
【0043】
発泡成形方法については、計量工程61に先立ってガスの圧力を高圧に昇圧するように説明したが、計量工程61の開始と同時あるいは計量工程61の開始より遅らせて昇圧するようにしてもよい。成形サイクルにおいてガスを昇圧する昇圧期間71は、計量工程61と、少なくとも一部が重複するようにすればよい。また計量工程61以外の工程において、ガスは低圧にする、つまり降圧すると説明したが、ガスの供給を停止してもよい。ただし、圧力が下がり過ぎると加熱シリンダ18内で昇圧期間71中に樹脂に溶解したガスが分離して発泡し始めるため、発泡が発生しない程度に、ガスの圧力が維持されている必要はある。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 ガス供給装置
18 加熱シリンダ 19 スクリュ
22 供給区間 23 第1の圧縮区間
24 飢餓区間 25 第2の圧縮区間
30 ガス注入口 31 コントロ-ラ
33 ガスボンベ 34 ガス圧力調整部
36 高圧調整部 37 低圧調整部
38 高圧減圧弁 39 低圧減圧弁
41 高圧側逆止弁 42 低圧側逆止弁
44 高圧側開閉弁 45 低圧側開閉弁
47 供給源圧力計 48 高圧圧力計
49 低圧圧力計 51 注入圧圧力計
61 計量工程 62 スクリュ回転数
63 スクリュ位置 65 射出工程
67 ガスの必要量 68 ガス圧力
71 昇圧期間