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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/79 20180101AFI20241024BHJP
   F24F 1/02 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F1/02 441C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020203421
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090860
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 舟哉
(72)【発明者】
【氏名】細沢 貴史
(72)【発明者】
【氏名】金本 薫希
(72)【発明者】
【氏名】谷下 智花
(72)【発明者】
【氏名】松田 芳輝
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196879(JP,A)
【文献】特開平05-240462(JP,A)
【文献】特開2002-147793(JP,A)
【文献】特開2000-234781(JP,A)
【文献】特開2018-194199(JP,A)
【文献】特開2010-243090(JP,A)
【文献】特開2015-230137(JP,A)
【文献】特開2000-329393(JP,A)
【文献】特開平01-107041(JP,A)
【文献】特開平10-220807(JP,A)
【文献】米国特許第04331066(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106352462(CN,A)
【文献】特開2013-195047(JP,A)
【文献】特開平09-203558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に窓内空間が形成されたダブルスキン構造の窓部を介して屋外と区画された居室において、前記窓部側に設置されて前記窓内空間へ空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を備え、前記窓内空間が前記居室に対して区画されている空調システムであって、
前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を、前記窓内空間側と前記居室側との間で切り替え可能な吹出先切替手段を備え
前記ペリメータ空調装置とは別に、前記居室の空調を行うインテリア空調装置を備え、
前記インテリア空調装置の起動運転時において前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を前記吹出先切替手段により前記居室に設定し、当該起動運転後の通常運転時において前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を前記吹出先切替手段により前記窓内空間に設定する形態で、前記吹出先切替手段の作動を制御する運転制御手段を備えた空調システム。
【請求項2】
前記インテリア空調装置が、熱放射式の空調装置である請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
内部に窓内空間が形成されたダブルスキン構造の窓部を介して屋外と区画された居室において、前記窓部側に設置されて前記窓内空間へ空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を備え、前記窓内空間が前記居室に対して区画されている空調システムであって、
前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を、前記窓内空間側と前記居室側との間で切り替え可能な吹出先切替手段を備え、
前記ペリメータ空調装置が、屋外から外気を前記空調空気に取り込みながら前記居室から取り込んだ室内空気を屋外へ排出する外気取込空調運転を実行可能なウォールスルー型空調装置である空調システム。
【請求項4】
居室に臨む天井面を構成する天井パネルの上方には天井空間が形成されており、前記窓内空間の上端部が前記天井空間に開放されており、
前記天井空間には、前記居室に空調空気を供給して前記居室の空調を行うインテリア空調装置が設けられている請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記ペリメータ空調装置には、前記空調空気を吹き出す空調空気吹出口が設けられており、
前記窓内空間に開口する窓内空間側吹出口と、
前記居室に開口する居室側吹出口と、を備え、
前記吹出先切替手段が、前記空調空気吹出口から供給された空調空気を前記窓内空間側吹出口側に供給して当該窓内空間側吹出口から前記窓内空間に吹き出させる窓内空間吹出状態と、前記空調空気吹出口から供給された空調空気を前記居室側吹出口側に供給して当該居室側吹出口から居室に吹き出させる居室吹出状態とを切替可能に構成されている請求項1~4の何れか1項に記載の空調システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に窓内空間が形成されたダブルスキン構造の窓部を介して屋外と区画された居室において、前記窓部側に設置されて前記窓内空間へ空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調システムとして、ペリメータゾーンに設置したペリメータ空調装置からダブルスキン構造の窓部の窓内空間へ空調空気を供給するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1記載の空調システムにおいて、窓部(6)は、内外二重に配置したガラス間に通気可能な窓内空間(7)が形成されたダブルスキン構造に構成されている。この窓部(6)の居室側の下方には、窓内空間(7)と居室側とを連通させる下面通気穴(31)が開口されている。そして、ペリメータ空調装置(100)が窓部(6)際に床置きされており、そのペリメータ空調装置(100)からの空調空気の吹出先は、窓内空間(7)に通じる下面通気穴(31)近傍の居室側とされている。このような構成により、下面通気穴(31)から居室側へ吹き出された空調空気の一部が、下面通気穴(31)を通じて窓内空間(7)に供給されることになる。
【0004】
このような空調システムでは、ダブルスキン構造の窓部の窓内空間に空調空気が通流するので、屋外から窓内空間に伝達される熱を当該空調空気により処理することができる。よって、特に夏期や冬期などのように空調負荷が高くなる場合には、屋外から窓部を通じたペリメータゾーンへの伝熱を抑制して、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-240462号公報(主に、段落0003、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の空調システムでは、常に窓内空間に空調空気が通流する構成を採用しているので、夏期や冬期などのように空調負荷が高くなる場合には、有効な空調を行うことができるものの、中間期などのように空調負荷が低く抑えられる場合には、ペリメータ空調装置による空調の有効性が低くなり、ペリメータ空調装置の合理的な利用ができなくなるという問題がある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、居室においてダブルスキン構造の窓部側のペリメータゾーンに設置されて窓内空間に空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を設置した空調システムにおいて、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上しながら、ペリメータ空調装置を合理的且つ有効に利用可能な技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、内部に窓内空間が形成されたダブルスキン構造の窓部を介して屋外と区画された居室において、前記窓部側に設置されて前記窓内空間へ空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を備え、前記窓内空間が前記居室に対して区画されている空調システムであって、
前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を、前記窓内空間側と前記居室側との間で切り替え可能な吹出先切替手段を備え
前記ペリメータ空調装置とは別に、前記居室の空調を行うインテリア空調装置を備え、
前記インテリア空調装置の起動運転時において前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を前記吹出先切替手段により前記居室に設定し、当該起動運転後の通常運転時において前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を前記吹出先切替手段により前記窓内空間に設定する形態で、前記吹出先切替手段の作動を制御する運転制御手段を備えた点にある。
【0009】
本構成によれば、上記吹出先切替手段によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を窓内空間側として、当該空調空気をダブルスキン構造の窓部の内部に形成された窓内空間に直接吹き出す状態とすれば、夏期や冬期などのように空調負荷が比較的高くなる場合であっても、屋外から窓内空間に伝達される熱を空調空気により処理して、屋外から窓部を通じたペリメータゾーンへの伝熱を抑制し、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上することができる。
一方、上記吹出先切替手段によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を居室側として、当該空調空気を居室へ直接吹き出す状態とすれば、中間期などのように空調負荷が低く抑えられる場合であっても、ペリメータ空調装置の空調空気を居室の空調に有効に利用することができる。
従って、本発明により、居室においてダブルスキン構造の窓部側のペリメータゾーンに設置されて窓内空間に空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を設置した空調システムにおいて、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上しながら、ペリメータ空調装置を合理的且つ有効に利用可能な技術を提供することができる。
更に、本構成によれば、居室の空調負荷が比較的大きいインテリア空調装置の起動運転時には、吹出先切替手段の作動制御によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先が居室に設定されて、当該ペリメータ空調装置の空調空気が居室へ直接吹き出される。よって、起動運転時における比較的大きな居室の空調負荷をインテリア空調装置とペリメータ空調装置との両方で処理して、居室環境を迅速に快適な状態とすることができる。特に、インテリア空調装置が、単独運転では居室の大きな空調負荷の迅速な処理が困難である熱放射式の空調装置等であっても、起動運転時において、ペリメータ空調装置の空調空気の居室への吹き出しを行うことによって、居室環境が快適となるまでの立ち上がり時間をインテリア空調装置の単独での起動運転時よりも短縮することができる。
そして、居室環境が快適なものとなった起動運転後の通常運転時には、吹出先切替手段の作動制御によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先が窓内空間に設定されて、当該ペリメータ空調装置の空調空気が窓内空間へ直接吹き出される。よって、屋外から窓部を通じたペリメータゾーンへの伝熱を抑制して居室の快適性を維持しながら、インテリア空調装置が賄う居室の空調負荷を軽減して省エネルギー性を向上することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記インテリア空調装置が、熱放射式の空調装置である点にある。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、内部に窓内空間が形成されたダブルスキン構造の窓部を介して屋外と区画された居室において、前記窓部側に設置されて前記窓内空間へ空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を備え、前記窓内空間が前記居室に対して区画されている空調システムであって、
前記ペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を、前記窓内空間側と前記居室側との間で切り替え可能な吹出先切替手段を備え、
前記ペリメータ空調装置が、屋外から外気を前記空調空気に取り込みながら前記居室から取り込んだ室内空気を屋外へ排出する外気取込空調運転を実行可能なウォールスルー型空調装置である点にある。
【0013】
本構成によれば、上記吹出先切替手段によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を窓内空間側として、当該空調空気をダブルスキン構造の窓部の内部に形成された窓内空間に直接吹き出す状態とすれば、夏期や冬期などのように空調負荷が比較的高くなる場合であっても、屋外から窓内空間に伝達される熱を空調空気により処理して、屋外から窓部を通じたペリメータゾーンへの伝熱を抑制し、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上することができる。
一方、上記吹出先切替手段によりペリメータ空調装置の空調空気の吹出先を居室側として、当該空調空気を居室へ直接吹き出す状態とすれば、中間期などのように空調負荷が低く抑えられる場合であっても、ペリメータ空調装置の空調空気を居室の空調に有効に利用することができる。
従って、本発明により、居室においてダブルスキン構造の窓部側のペリメータゾーンに設置されて窓内空間に空調空気を供給可能なペリメータ空調装置を設置した空調システムにおいて、省エネルギー性及びペリメータゾーンの快適性を向上しながら、ペリメータ空調装置を合理的且つ有効に利用可能な技術を提供することができる。
更に、本構成によれば、ペリメータ空調装置として上記ウォールスルー型空調装置を設置し、当該ウォールスルー型空調装置に上記外気取込空調運転を実行させることで、居室の換気を増強することができる。また、このようなウォールスルー型空調装置は、室内ユニットと室外ユニットとが一体的に構成されており、外壁を介して直接取り込んだ外気を熱源として空調空気を冷却又は加熱する空冷ヒートポンプエアコンであることから、別の室外機や冷媒配管などの設置工事が不要となって合理的で無駄のないシステム構成を実現することができる。
本発明の第4特徴構成は、居室に臨む天井面を構成する天井パネルの上方には天井空間が形成されており、前記窓内空間の上端部が前記天井空間に開放されており、
前記天井空間には、前記居室に空調空気を供給して前記居室の空調を行うインテリア空調装置が設けられている点にある。
本発明の第5特徴構成は、前記ペリメータ空調装置には、前記空調空気を吹き出す空調空気吹出口が設けられており、
前記窓内空間に開口する窓内空間側吹出口と、
前記居室に開口する居室側吹出口と、を備え、
前記吹出先切替手段が、前記空調空気吹出口から供給された空調空気を前記窓内空間側吹出口側に供給して当該窓内空間側吹出口から前記窓内空間に吹き出させる窓内空間吹出状態と、前記空調空気吹出口から供給された空調空気を前記居室側吹出口側に供給して当該居室側吹出口から居室に吹き出させる居室吹出状態とを切替可能に構成されている点にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の空調システムの概略構成及び窓内空間吹出状態での空調空気の吹出状態を示す図
図2】本実施形態の空調システムの概略構成及び居室吹出状態での空調空気の吹出状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る空調システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、本実施形態の空調システム(以下「本空調システム」と呼ぶ。)の空調対象となる居室Rは、窓部50により屋外Oと区画されている。その窓部50は、インナーガラス52とアウターガラス51とを互いに間隔をあけて内外二重に配置してそれらの間に窓内空間55が形成されたダブルスキン構造を有する。また、この窓内空間55には、居室Rへ差し込む太陽光(日射)の遮光量を調整可能なブラインド53を収容することができる。更に、この窓部50の下方の腰壁部40内には、後述するペリメータ空調装置30が設置される窓部下空間C3が形成されている。
【0016】
居室Rに臨む天井面を構成する天井パネル1の上方には天井空間C1が形成されており、上記窓内空間55の上端部がこの天井空間C1に開放されている。天井パネル1には多数の天井面制気口2が穿設されている。更に、天井空間C1には、これらの天井面制気口2を覆う形態で設けられた天井チャンバ12と、当該天井チャンバ12に対して空調空気SAを供給可能なインテリア空調装置10が設けられている。
【0017】
インテリア空調装置10は、天井チャンバ12内の空気を還気RAとして取り込んで温調し、その温調後の空気を空調空気SAとして天井チャンバ12内に供給する。すると、居室Rでは、天井パネル1に設けられた多数の天井面制気口2から空調空気SAが吹き出されるのと同時に、天井チャンバ12内の空調空気SAとの熱交換により温調された天井パネル1からの熱放射により、空調が行われることになる。即ち、インテリア空調装置10は、天井パネル1からの熱放射を利用して居室Rの空調を行う熱放射式の空調装置として構成されている。
【0018】
居室Rに臨む床面を構成する床パネル4の下方には床下空間C2が形成されており、上記窓部下空間C3がこの床下空間C2に開放されている。床パネル4には多数の床面制気口5が穿設されている。
窓部50側のペリメータゾーンRpには、窓部下空間C3に収容される形態で、窓部50の内部に形成された窓内空間55等へ空調空気SAを供給可能なペリメータ空調装置30が設けられている。ペリメータ空調装置30から窓内空間55の底部側に供給された空調空気SAは、当該窓内空間55を上昇した後に天井空間C1に流入し、その後還気RAとしてインテリア空調装置10に取り込まれることになる。
【0019】
ペリメータ空調装置30は、床置きタイプのウォールスルー型空調装置として構成されている。この種のウォールスルー型空調装置は、室内ユニットと室外ユニットとが一体的に構成されており、直接取り込んだ外気OAを熱源として空調空気SAを冷却又は加熱する空冷ヒートポンプエアコンとして構成されている。このようにペリメータ空調装置30としてこのようなウォールスルー型空調装置を採用することで、別の室外機や冷媒配管などの設置工事が不要となって合理的で無駄のないシステム構成が実現されている。
また、本空調システムには、インテリア空調装置10及びペリメータ空調装置30の作動を制御する運転制御装置60が設けられている。
【0020】
ペリメータ空調装置30には、外壁7を貫通して屋外Oに開放された外気取込口37及び排気口38と、床下空間C2に開放された還気取込口39とが設けられている。そして、このペリメータ空調装置30は、通常空調運転に加えて外気取込空調運転を実行可能に構成されている。
即ち、通常空調運転では、居室Rから床面制気口5を通じて床下空間C2に流入した室内空気が還気取込口39を通じて還気RAとして取り込まれて温調され、当該温調後の還気RAが空調空気SAとして空調空気吹出口31から窓内空間55等へ吹き出される。
一方、外気取込空調運転では、屋外Oの外気OAが外気取込口37を通じて取り込まれて温調され、当該温調後の外気OAが空調空気SAとして空調空気吹出口31から窓内空間55等に吹き出されると共に、還気取込口39を通じて還気RAとして取り込まれた還気RAの少なくとも一部が排気EAとして排気口38を通じて屋外Oへ排出される。そして、ペリメータ空調装置30にこのような外気取込空調運転を実行させることにより、居室Rに対する換気を増強することができる。
【0021】
本空調システムには、省エネルギー性及びペリメータゾーンRpの快適性を向上しながら、ペリメータ空調装置30を合理的且つ有効に利用するための構成が採用されており、その詳細について以下に説明を加える。
【0022】
ペリメータ空調装置30の空調空気SAの吹出先を、窓内空間55側と居室R側との間で切り替え可能な吹出先切替弁35(吹出先切替手段の一例)が設けられている。
即ち、ペリメータ空調装置30には、温調後の空調空気SAを吹き出す空調空気吹出口31が設けられている。窓部50の下端が位置する腰壁部40の天面には、窓内空間55に開口する窓内空間側吹出口32と、居室RのペリメータゾーンRpに開口する居室側吹出口33とが形成されている。
そして、吹出先切替弁35は、空調空気吹出口31と窓内空間側吹出口32と居室側吹出口33との間に介装された三方切替弁として構成されており、後述する窓内空間吹出状態(図1に示す状態)と居室吹出状態(図2に示す状態)とを切替可能に構成されている。
即ち、吹出先切替弁35を窓内空間吹出状態(図1に示す状態)に切り替えることで、空調空気吹出口31から供給された空調空気SAを窓内空間側吹出口32側に供給して当該窓内空間側吹出口32から窓内空間55に吹き出させることができる。また、吹出先切替弁35を居室吹出状態(図2に示す状態)に切り替えることで、空調空気吹出口31から供給された空調空気SAを居室側吹出口33側に供給して当該居室側吹出口33から居室RのペリメータゾーンRpに吹き出させることができる。
尚、吹出先切替弁35は、本実施形態のように一の三方切替弁で構成することができるが、空調空気吹出口31からの空調空気SAの供給先を窓内空間側吹出口32と居室側吹出口33との間で切り替え可能なものであればよく、例えば空調空気吹出口31から窓内空間側吹出口32への空調空気の供給を断続可能な二方切替弁と空調空気吹出口31から居室側吹出口33への空調空気の供給を断続可能な二方切替弁とで構成することもできる。
【0023】
例えば、図1に示すように、吹出先切替弁35を窓内空間吹出状態に切り替えて、ペリメータ空調装置30から供給された空調空気SAが窓内空間55に直接吹き出されると、夏期や冬期などのように空調負荷が比較的高くなる場合であっても、屋外Oから窓内空間55に伝達される熱が空調空気SAにより処理される。よって、屋外Oから窓部50を通じたペリメータゾーンRpへの伝熱が抑制されて、省エネルギー性及びペリメータゾーンRpの快適性が向上されることになる。
【0024】
一方、図2に示すように、吹出先切替弁35を居室吹出状態に切り替えて、ペリメータ空調装置30から供給された空調空気SAが居室Rに直接吹き出されると、中間期などのように空調負荷が低く抑えられる場合であっても、ペリメータ空調装置30の空調空気SAが居室Rの空調に有効に利用されることになる。
【0025】
尚、吹出先切替弁35は、利用者により手動で切り替えることができるが、本空調システムでは、運転制御装置60により自動的に切り替えることができる。
そして、運転制御装置60は、インテリア空調装置10及びペリメータ空調装置30の運転状態に基づいて吹出先切替弁35の作動を制御する運転制御手段として機能するように構成されている。
【0026】
即ち、運転制御装置60は、インテリア空調装置10の起動運転時においては、吹出先切替弁35の作動制御によりペリメータ空調装置30の空調空気SAの吹出先を居室Rに設定して上記居室吹出状態(図2に示す状態)とする。すると、ペリメータ空調装置30の空調空気SAが居室Rへ直接吹き出されて、起動運転時における比較的大きな居室Rの空調負荷が、インテリア空調装置10とペリメータ空調装置30との両方で処理されることになる。このことで、居室Rの環境が迅速に快適なものとなる。特に、インテリア空調装置10が、単独運転では居室Rの大きな空調負荷の迅速な処理が困難である熱放射式の空調装置等であっても、起動運転時において、ペリメータ空調装置30の空調空気SAの居室Rへの吹き出しが行われることによって、居室Rの環境が快適となるまでの立ち上がり時間がインテリア空調装置10の単独での起動運転時よりも短縮されることになる。
【0027】
そして、運転制御装置60は、居室Rの環境が快適なものとなった起動運転後の通常運転時においては、吹出先切替弁35の作動制御によりペリメータ空調装置30の空調空気SAの吹出先を窓内空間55に設定して、上記窓内空間吹出状態(図1に示す状態)とする。すると、ペリメータ空調装置30の空調空気SAが窓内空間55へ直接吹き出されて、屋外Oから窓部50を通じたペリメータゾーンRpへの伝熱が抑制されることになる。このことで、居室Rの快適性が維持されながら、インテリア空調装置10が賄う居室Rの空調負荷が軽減されて、省エネルギー性が向上されることになる。
更に、運転制御装置60は、居室Rの温湿度の状態や屋外Oの温湿度や花粉濃度の状態等に基づいて適切な条件で適宜ペリメータ空調装置30による外気取込空調運転の実行及び停止を切り替えることによって、省エネルギー性の更なる向上を図ることができる。
【0028】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0029】
(1)上記実施形態では、ペリメータ空調装置30とは別に、居室Rの空調を行う熱放射式のインテリア空調装置10を設けた例を説明したが、インテリア空調装置10の居室Rに対する空調方式は熱放射式に限らず適宜変更可能である。また、インテリア空調装置10は、適宜省略しても構わない。
【0030】
(2)上記実施形態では、インテリア空調装置10の起動運転から通常運転への移行時に、運転制御装置60により自動的に吹出先切替弁35の作動状態を居室吹出状態(図2に示す状態)から窓内空間吹出状態(図1に示す状態)に切り替えたが、この吹出先切替弁35の作動状態の切り替えタイミングについては、適宜調整又は変更しても構わない。
【0031】
(3)上記実施形態では、ペリメータ空調装置30を、床置きタイプのウォールスルー型空調装置として構成したが、天吊タイプのウォールスルー型空調装置や別の形式の空調装置として構成しても構わない。また、天吊タイプのペリメータ空調装置を採用する場合には、窓部上方の壁部内の空間にペリメータ空調装置を設置し、当該ペリメータ空調装置から窓内空間の天部側に空調空気を供給するように構成することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 インテリア空調装置
30 ペリメータ空調装置
35 吹出先切替弁(吹出先切替手段)
50 窓部
55 窓内空間
60 運転制御装置(運転制御手段)
O 屋外
R 居室
OA 外気
SA 空調空気

図1
図2