(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】複合物体内のプライの不整合を検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20241024BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020208157
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-12-13
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コスラバニ, シャハリアル
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5602486(US,A)
【文献】特開2001-221819(JP,A)
【文献】特開2005-150461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる繊維配向のプライ(103)の抵抗を測定するために位置合わせされた2つの容量性プレート(124-138,610-620,716-738)を各々が備える、少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)を含む複数のプレートペア(112,604-608,704-714)と、
前記複数のプレートペア(112)が取り付けられるベース(102,602,702)と
を備える、装置。
【請求項2】
前記複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第1のプレートペア(116)と、
45度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第2のプレートペア(118)と、
90度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第3のプレートペア(120)と、
-45度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第4のプレートペア(122)と
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第1のプレートペア(604)と、
60度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第2のプレートペア(606)と、
-60度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第3のプレートペア(608)と
を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第1のプレートペア(704)と、
30度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第2のプレートペア(706)と、
60度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第3のプレートペア(708)と、
90度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第4のプレートペア(710)と、
-60度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第5のプレートペア(712)と、
-30度の繊維配向における前記抵抗を測定するための第6のプレートペア(714)と
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のプレートペア(112)が、前記複数のプレートペア(112)に対して中央に位置する試験エリアを画定する対称な八角形構成で配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のプレートペア(112)の各々の前記2つの容量性プレートが、同じ距離で分離されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
複数の分岐(404-406,504-514)を含む回路(400)
を更に備え、
前記複数の分岐のうちの1つの分岐(406,508-514)が、前記複数のプレートペア(112)のうちの1つのプレートペアを含み、
前記プレートペアが、特定の繊維配向のために設計されており、
前記特定の繊維配向に対する前記抵抗が、前記分岐からの電圧出力(409)を使用して測定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記回路(400)が、
予想される実効直列抵抗を有する少なくとも1つの基準抵抗器(534,546,558,570)を含む基準分岐(404,506)
を更に備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ベース(102,602,702)がプリント回路基板であり、前記ベース及び前記複数のプレートペア(112)が試験デバイス(100,600,700)を形成し、前記試験デバイス(100,600,700)が、
前記ベース(102)に取り付けられたハウジング(106)を更に備え、前記ハウジング(106)が、前記プリント回路基板に接続された回路機構を保持する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
複合物体(101)を試験するための方法であって、
少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)を含む複数のプレートペア(112)を、前記複合物体(101)の表面(110)の上に位置付けること(802)と、
前記複合物体(101)の複数のプライ(103)の抵抗を、前記少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)のうちの対応する1つを介して各々が測定される少なくとも3つの異なる繊維配向で測定すること(804)ことと
を含む、方法。
【請求項11】
前記抵抗を測定すること(804)が、
前記複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(116)によって0度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(118)によって45度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(120)によって-45度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第4のプレートペア(122)によって90度の繊維配向における前記抵抗を測定することと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抵抗を測定すること(804)が、
前記複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(604)によって0度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(606)によって60度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(608)によって-60度の繊維配向における前記抵抗を測定することと
を含む、、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記抵抗を測定すること(804)が、
前記複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(704)によって0度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(706)によって30度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(708)によって-30度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第4のプレートペア(710)によって60度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第5のプレートペア(712)によって-60度の繊維配向における前記抵抗を測定することと、
前記複数のプレートペア(112)内の第6のプレートペア(714)によって90度の繊維配向における前記抵抗を測定することと
を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のプレートペア(112)を含む試験デバイス(100,600,700)を、前記複合物体(101)の前記表面(110)に沿ってラスタパターンで移動させること(906)
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抵抗を測定すること(804)が、
前記複合物体(101)の前記表面(110)に沿った複数の位置の各々において、前記少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)の各々に対して電圧測定値を生成すること(908)
を含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、複合物体を試験することに関し、更に具体的には、容量性プレートのペアを使用して、複合物体内のプライを侵襲的に試験するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化ポリマー(CFRP)は、1つの種類の複合材料の例である。炭素繊維強化ポリマー内の炭素繊維は、機械的強度及び導電性の両方を提供する。複合部品は、炭素繊維強化ポリマーの複数のプライで形成されうる。非破壊検査(NDI)試験は、そのような複合部品のプライを試験するために使用されうる。しかし、超音波伝搬を伴う技術など、従来の、現在利用可能な非破壊検査試験技術は、プライの層間剥離の領域のみを明らかにする。これらの試験技術は、プライ内の炭素繊維の不連続性についての情報を提供できないことがある。例えば、これらの試験技術は、複合物体内の繊維導電性又は繊維連続性についての情報を提供するのに十分に敏感でないこともある。
【0003】
複合物体内の炭素繊維の連続性は、複合物体の機械的な引張強度に関連する。例えば、破壊された又は不連続の炭素繊維は、複合物体の機械的引張強度を低下させることがある。更に、破壊された又は不連続の炭素繊維は、電流(例えば、雷)を流すための複合物体の能力を低下させることがある。したがって、複合体の製造及び修理の間に、複合物体内の炭素繊維の不連続性を検出する方法を有することは不可能である。したがって、上記問題の少なくともいくつかを考慮した方法及び装置を提供することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0004】
1つの例示的な実施例では、装置は、複数のプレートペアと、複数のプレートペアが取り付けられるベースとを備える。複数のプレートペアは、異なる繊維配向の複数のプライの抵抗を測定するように位置合わせされた2つの容量性プレートを各々が備える、少なくとも3つのプレートペアを含む。
【0005】
別の例示的実施例では、複合物体を試験するための方法が提供される。少なくとも3つのプレートペアを含む複数のプレートペアは、複合物体の表面上に位置付けられる。複合物体内の複数のプライの抵抗が、少なくとも3つの異なる繊維配向において測定される。少なくとも3つの異なる繊維配向の各々が、少なくとも3つのプレートペアの対応する1つを介して測定される。
【0006】
更に別の例示的実施例では、試験デバイスは、ベースと、ベースに取り付けられた複数のプレートペアとを備える。各プレートペアは、異なる繊維配向について複合物体内のプライの抵抗を測定するように位置合わせされた2つの容量性プレートを含む。複数のプレートペア間のエリアは、ターゲットエリアを画定する。複数のプレートペアが複合物体の表面上に位置付けられると、表面上の複数の異なる位置の各々で生成された電圧測定値が、複合物体内に繊維の不連続性が存在するかどうかの表示を提供する。
【0007】
これらの特性及び機能は、本開示の様々な実施形態で独立して実現することができ、以下の説明及び図面に関連して更なる詳細を理解することができる、更に別の実施形態において組み合わされてもよい。
【0008】
例示的な実施形態の特性と考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に明記される。しかしながら、例示的な実施形態と、好ましい使用モードと、その更なる目的と特徴とは、添付図面と共に、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な実施形態による試験デバイスの図である。
【
図2】例示的な実施形態による
図1の複合物体の表面上のプレートペアの上面図である。
【
図3】例示的な実施形態による、複合物体上に位置付けられた試験デバイスの上面図である。
【
図6】例示的な実施形態による試験デバイスの上面図である。
【
図7】例示的な実施形態による試験デバイスの上面図である。
【
図8】例示的な実施形態による複合物体を試験するためのプロセスのフローチャートである。
【
図9】例示的な実施形態による複合物体を試験するためのプロセスのフローチャートである。
【
図10】例示的な実施形態による電圧測定値を処理するためのフローチャートである。
【
図11】例示的な実施形態による2次元マップセットの例である。
【
図12】例示的な実施形態による、2次元標準偏差マップセットの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載する例示的な実施形態は、特定の種類のプライの不整合を容易かつ効率的に検出するための方法、装置、及びシステムを提供する。特に、例示的実施形態は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)からなる複合物体内の繊維の不連続性を検出するための方法、装置、及びシステムを提供する。繊維抵抗は、容量結合と交流(AC)の印加を使用して測定される。これらの測定値は、繊維の不連続性の領域の2次元マップ又はマップセットを作成するために使用されうる。この種のマップ又はマップセットは、複合体の製造と修理に非常に役立ちうる。
【0011】
1つ又は複数の実施例では、複合物体は、様々な方向に向かう繊維のプライを有しうる。1つ又は複数の実施例では、ペアのプレートは、複合物体の表面上に容量結合されており、各ペアは、異なる繊維配向について等価直列抵抗を測定するために使用される。特に、基準分岐と少なくとも3つの測定分岐の各々との間の電圧差が測定される。これらの測定分岐の各々は、特定の繊維配向に対応する複合物体に容量結合された1つのペアのプレートを含みうる。電圧差は、繊維配向毎の等価直列抵抗を示し、プライの不整合(例えば、繊維の不連続性)を潜在的に含む複合物体のエリアを識別するために使用されうる。
【0012】
複合物体を非侵襲的に試験するための、この種のシステム及び方法により、プライの不整合の容易、迅速、かつ効率的な識別が可能になる。特に、上記のシステム及び方法に類似のシステム及び方法は、複合物体が、所望の機械的強度(例えば、機械的引張強度)及び所望の導電性(例えば、伝導し、それによって雷電流を放散するのを助ける能力)を確実に有するのを支援しうる。
【0013】
ここで図面を参照すると、
図1は、例示的な実施形態による試験デバイスの図である。試験デバイス100は、複合物体101などの複合物体を試験するために使用されうる。場合によっては、試験デバイス100は、試験システム又は非侵襲的な試験デバイス若しくはシステムと呼ばれることがある。複合物体101は、複合材料の複数のプライ103を含む。特に、プライ103は、炭素繊維からなりうる。例えば、複合材料の各プライは、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)のプライでありうる。
【0014】
試験デバイス100は、望ましくないプライの不整合を有する複合物体101のエリアを検出するために使用される。望ましくないプライの不整合は、例えば、限定されないが、繊維の不連続性又はいくつかの他の種類のプライ欠陥でありうる。1つ又は複数の例示的実施例では、複合物体101は、航空機の複合構造でありうる。例えば、複合物体101は、複合胴体パネル、複合翼パネル、又はいくつかの他の種類の複合構造でありうる。
【0015】
試験デバイス100は、ベース102、プレートシステム104、制御ボックス106、及びハンドル108を含む。この例示的実施例では、プレートシステム104と制御ボックス106の両方がベース102に取り付けられ、ハンドル108が制御ボックス106に取り付けられている。ベース102は開口部109を有している。場合によっては、開口部109はターゲットエリアに対応する。1つ又は複数の例示的実施例では、ベース102は、制御ボックス106内部の回路機構と通信しているか又はその回路機構に接続されている回路機構を有するプリント回路基板である。例えば、ベース102及び制御ボックス106の各々は、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、スイッチ、他の種類の電気部品、又はこれらの組み合わせなどの任意の数の電気部品を含みうる。いくつかの実施例では、制御ボックス106はまた、ハウジングと呼ばれることもある。
【0016】
ハンドル108は、複合物体101表面110といった、物体の表面の上で試験デバイス100を移動させるために、オペレータによって使用されうる。オペレータは、作業人員であってもロボットオペレータ(例えば、ロボットアーム若しくはエンドエフェクタ)であってもよい。
【0017】
この例示的実施例では、プレートシステム104は、複数のプレートペア112を含む。プレートペア112は、開口部109を通って中心軸114に対して対称に位置合わせされうる。例えば、プレートペア112の各々は、互いに向かい合うよう位置合わせされた2つのプレートを含みうる。言い換えると、プレートペア112の各々は、ベース102の反対側に位置付けられる2つのプレートを含みうる。この例では、プレートペア112の各々は、開口部109の反対側に位置付けられた2つのプレートを含む。プレートペア112の各々のプレートは、容量性プレートであり、同じ距離分離されうる。
【0018】
プレートペア112は、少なくとも3つのプレートペアを含む。この例示的実施例では、プレートペア112は、4つのプレートペアを含む。特に、プレートペア112は、第1のプレートペア116、第2のプレートペア118、第3のプレートペア120、及び第4のプレートペア122を含む。他の例では、プレートペア112は、例えば、3つのプレートペア又は6つのプレートペアなど、いくつかの他の数のプレートペアを含みうる。
【0019】
第1のプレートペア116は、プレート124及びプレート126を含む。第2のプレートペア118は、プレート128及びプレート130を含む。第3のプレートペア120は、プレート132及びプレート134を含む。第4のプレートペア122は、プレート136及びプレート138を含む。プレート124、126、128、130、132、134、136、及び138は、容量性プレートでありうる。これらの例示的実施例では、プレート124、126、128、130、132、134、136、及び138の各々が、金属層及び絶縁層を含む。他の例示的実施例では、各プレートは、金属層のみを含みうる。
【0020】
上述のように、プレートペア112は、開口部109周囲で対称に位置合わせされる。この例示的実施例では、プレートペア112は、中心軸114に対して対称な八角形構成で配置される。特に繊維配向(即ち、繊維方向)の抵抗の測定値を提供するために、プレートペア112の位置合わせが使用できるように、試験デバイス100は、複合物体101上に位置付けられうる。より具体的には、プレートペア112の各々は、異なる繊維配向の抵抗を測定する際に使用するよう位置合わせされる。この抵抗は、その繊維配向の等価直列抵抗(ESR)でありうる。
【0021】
1つの例示的な実施例として、第1のプレートペア116は、0度の繊維配向での抵抗を測定するために使用される。第2のプレートペア118は、45度の繊維配向での抵抗を測定するために使用される。第3のプレートペア120は、90度の繊維配向での抵抗を測定するために使用される。第4のプレートペア122は、45度の繊維配向での抵抗を測定するために使用される。
【0022】
いくつかの例示的実施例では、試験デバイス100によって生成された測定値は、コンピュータシステム140によって処理されうる。試験デバイス100は、これらの実施例では、コンピュータシステム140と無線通信する。しかしながら、他の例では、試験デバイス100は、1つ又は複数の有線通信リンク、無線通信リンク、光通信リンク、又はそれらの組み合わせを介して、コンピュータシステム140と通信しうる。
【0023】
図2は、例示的な実施形態による、
図1の複合物体101の表面110上の試験デバイス100の上面図である。プレートペア112のプレート間のエリア200は、測定値が取られうるエリアである。複合物体101上に試験デバイス100が載置されると、エリア200は、複合物体101の対応するエリア又は表面領域と重なる。エリア140は、第1の測定エリア202、第2の測定エリア204、第3の測定エリア206、及び第4の測定エリア208を含む。
【0024】
第1の測定エリア202、第2の測定エリア204、第3の測定エリア206、及び第4の測定エリア208は、第1のプレートペア116、第2のプレートペア118、第3のプレートペア120、及び第4のプレートペア122にそれぞれ対応する。より具体的には、第1の測定エリア202は、プレートペア116に対応する配向の繊維(例えば、0度の繊維配向)に最も敏感であろう複合物体101上のエリアを示す。第2の測定エリア204は、プレートペア118に対応する配向の繊維(例えば、45度の繊維配向)に最も敏感であろう複合物体101上のエリアを示す。第3の測定エリア206は、プレートペア120に対応する配向の繊維(例えば、90度の繊維配向)に最も敏感であろう複合物体101上のエリアを示す。第4の測定エリア208は、プレートペア122に対応する配向の繊維(例えば、-45度の繊維配向)に最も敏感であろう複合物体101上のエリアを示す。
【0025】
4つすべての測定エリア(即ち、第1の測定エリア202、第2の測定エリア204、第3の測定エリア206、及び第4の測定エリア208)が重なるエリアが、ターゲットエリア210を画定する。ターゲットエリア210は、複数のプレートペア112に対して中央に位置する。ターゲットエリア210は、異なる繊維配向のすべてについて、複合物体101などの複合物体の抵抗(例えば、等価直列抵抗)を決定するための最善の測定値を提供するエリア200の一部である。ターゲットエリア210はまた、ターゲット試験エリア、検出エリア、又はターゲット検出エリアとも呼ばれることがある。
【0026】
図3は、例示的な実施形態による、複合物体上に位置付けられた
図1の試験デバイス100の上面図である。
図3において、試験デバイス100は、複合物体300を試験するために使用される。
図1の複合物体101に類似して、複合物体300は、各々が炭素繊維(例えば、CFRP)からなる複数のプライを含む。
【0027】
これらのプライは、4つの異なる方向に向かう繊維を含むプライを含みうる。例えば、プライは、0度の繊維配向を有する繊維を含む1つ又は複数のプライ、45度の繊維配向を有する繊維を含む1つ又は複数のプライ、90度の繊維配向を有する繊維を含む1つ又は複数のプライ、及び-45度の繊維配向を有する繊維を含む1つ又は複数のプライを含みうる。
【0028】
この例では、試験デバイス100は、複合物体300の表面302上に位置し、かつ表面302に接触する。先ほど上で検討されたように、試験デバイス100は、複合物体300について異なるすべての繊維配向の複合物体の抵抗を決定するための最善の測定値を提供するターゲットエリア210を有している。
【0029】
試験デバイス100は、複合物体300を試験するために、複数の異なるパターンのいずれかで、複合物体300の表面302上を移動しうる。この例示的実施例では、試験デバイス100は、ラスタパターンに従うように、表面302上で矢印304の方向に移動する。ラスタパターンは、エリアが上から下まで線で左右に走査される(これらの方向の表示は相対的です)走査パターンである。これらの例示的実施例では、これらの走査線の間の垂直な「ステップ」は、ターゲットエリア210の直径として設定され、試験デバイス100が表面302上を移動する際に、ある点で、表面302のすべての部分が試験デバイス100のターゲットエリア210と確実に重なる。
【0030】
図4は、例示的な実施形態による回路図である。回路400は、複合物体を非侵襲的に試験するために使用されうるシステムの例を表す。回路400は、電子部品と及び物理部品又は構造の組み合わせを示す構成要素を含む。
【0031】
この例示的実施例では、回路400は、接地401と、周波数が共振周波数に設定された交流(AC)電圧源402とを含む。
【0032】
回路400はまた、基準分岐404と、分岐406(回路分岐又は測定分岐とも呼ばれることもある)と、電圧出力408と、電圧出力409とを含む。基準分岐404は、インダクタ410と、コンデンサ412と、抵抗器414と、コンデンサ416と、抵抗器418とを含む。分岐406は、インダクタ420と、コンデンサ422と、抵抗器424と、コンデンサ426と、抵抗器428とを含む。
【0033】
回路400において、交流電圧源402と、インダクタ410と、コンデンサ412と、抵抗器414と、コンデンサ416と、抵抗器418と、インダクタ420と、抵抗器428は、電子部品を表す。コンデンサ422及びコンデンサ426は、物理容量性部品を表す。例えば、コンデンサ422及びコンデンサ426の各々は、容量性プレートを表すことがある。特に、コンデンサ422及びコンデンサ426は、1つの配向の繊維の、等価直列抵抗でありうる抵抗を測定するために、複合物体上に位置付けられ位置合わせされるだろう容量性プレートを表す。抵抗器424は、試験されている複合物体の物理繊維の等価直列抵抗を表す。
【0034】
この例示的実施例では、抵抗器414、抵抗器418、及び抵抗器428は、複合物体に対して予想される等価直列抵抗に基づく抵抗値に設定される。予想される等価直列抵抗に対する値は、複合物体内のプライの数、プライの各々の厚さ、及びプライ密度に基づく。これらの例示的実施例では、プライ密度は、プライについての異なる繊維配向の各々におけるプライのパーセンテージを指す。例えば、プライ密度は、プライの何パーセントが第1の配向の繊維を有しているか、プライの何パーセントが第2の配向の繊維を有しているか、プライの何パーセントが第3の配向の繊維を有しているか、などを示しうる。電圧出力408と電圧出力409との差(即ち、電圧差)は、複合物体の等価直列抵抗と予想される等価直列抵抗との間の差を示す。選択した許容誤差外の電圧差は、繊維の不連続性の表示でありうる。
【0035】
よって、回路400は、単一方向に向かう繊維を含む複合物体を試験するための構築ブロックを表す。この構築ブロックは、異なる方向に向かう繊維を含む複合物体を試験可能にするために構築されうる。例えば、分岐406などの複数の分岐は、デイジーチェーンスイッチングシステムを介して、まとめてデイジーチェーン結合され(daisy-chained together)、様々な繊維の方向又は配向を測定可能にする。
【0036】
図5は、例示的な実施形態による、
図1-3の試験デバイス100に含まれる回路機構を示す回路図である。この例示的実施例では、回路500は、
図1-3の複合物体101などの複合物体を試験可能にする試験デバイス100の電子部品及び物理構造を表す。回路500は、接地502と、交流電圧源504と、基準分岐506と、第1の分岐508と、第2の分岐510と、第3の分岐512と、第4の分岐514とを含む。第1の分岐508と、第2の分岐510と、第3の分岐512と、第4の分岐514はまた、測定分岐と呼ばれることもある。
【0037】
基準分岐506は、インダクタ515と、コンデンサ516と、抵抗器518と、コンデンサ520と、抵抗器522とを含む。基準分岐の部品は、例えば、
図1の制御ボックス106内に存在しうる電子部品を表す。抵抗器518及び抵抗器522は、複合物体101内のプライ103の数、プライ103の各々の厚さ、及びプライ103のプライ密度に基づき、選択した許容誤差内の、複合物体101に予想される等価直列抵抗に設定される。
【0038】
第1の分岐508、第2の分岐510、第3の分岐512、及び第4の分岐514は、第1のプレートペア116、第2のプレートペア118、第3のプレートペア120、及び第4のプレートペア122それぞれを使用する、測定値を取る際に含まれる試験デバイス100の回路機構の一部を表す。第1の分岐508は、スイッチ524と、インダクタ526と、コンデンサ528と、抵抗器530と、コンデンサ532と、抵抗器534とを含む。第2の分岐510は、スイッチ536と、インダクタ538と、コンデンサ540と、抵抗器542と、コンデンサ544と、抵抗器546とを含む。第3の分岐512は、スイッチ548と、インダクタ550と、コンデンサ552と、抵抗器554と、コンデンサ556と、抵抗器558とを含む。第4の分岐514は、スイッチ560と、インダクタ562と、コンデンサ564と、抵抗器566と、コンデンサ568と、抵抗器570とを含む。
【0039】
コンデンサ528及びコンデンサ532は、
図1の第1のプレートペア116を表す。抵抗器530は、第1のプレートペア116に対応する繊維方向(即ち、0度の繊維配向)に沿った等価直列抵抗を表す。抵抗器534は、第1のプレートペア116に対応する繊維方向(即ち、0度の繊維配向)に予想される基準抵抗を表す。これらの例では、この基準抵抗(例えば、予想される等価直列抵抗)は、選択した許容誤差内の、抵抗器518及び抵抗器522と同じ値に設定される。
【0040】
コンデンサ540及びコンデンサ544は、
図1の第2のプレートペア118を表す。抵抗器542は、第2のプレートペア118に対応する繊維方向(即ち、45度の繊維配向)に沿った等価直列抵抗を表す。抵抗器546は、第2のプレートペア118に対応する繊維方向(即ち、45度の繊維配向)に予想される基準抵抗を表す。これらの例では、この基準抵抗(例えば、予想される等価直列抵抗)は、選択した許容誤差内の、抵抗器518及び抵抗器522と同じ値に設定される。
【0041】
コンデンサ552及びコンデンサ556は、
図1の第3のプレートペア120を表す。抵抗器554は、第3のプレートペア120に対応する繊維方向(即ち、90度の繊維配向)に沿った等価直列抵抗を表す。抵抗器558は、第3のプレートペア120に対応する繊維方向(即ち、90度の繊維配向)に予想される基準抵抗を表す。これらの例では、この基準抵抗(例えば、予想される等価直列抵抗)は、選択した許容誤差内の、抵抗器518及び抵抗器522と同じ値に設定される。
【0042】
コンデンサ564及びコンデンサ568は、
図1の第4のプレートペア122を表す。抵抗器566は、第4のプレートペア122に対応する繊維方向(即ち、-45度の繊維配向)に沿った等価直列抵抗を表す。抵抗器570は、第4のプレートペア122に対応する繊維方向(即ち、-45度の繊維配向)に予想される基準抵抗を表す。これらの例では、この基準抵抗(例えば、予想される等価直列抵抗)は、選択した許容誤差内の、抵抗器518及び抵抗器522と同じ値に設定される。
【0043】
回路500は、基準分岐506の電圧出力571、第1の分岐508の電圧出力572、第2の分岐510の電圧出力574、第3の分岐512の電圧出力576、及び第4の分岐514の電圧出力578を含む。スイッチ524、536、548、及び560は、基準分岐506と様々な測定分岐との間の電圧差を測定可能にするデイジーチェーンネットワークを形成する。
【0044】
例えば、電圧出力572と電圧出力571との間の差は、0度の繊維配向の繊維の等価直列抵抗と、その繊維配向に予想される等価直列抵抗との間に差があるかどうかを示すために使用される。電圧出力574と電圧出力571との間の差は、45度の繊維配向の繊維の等価直列抵抗とその配向に予想される等価直列抵抗との間に差があるかどうかを示すために使用される。電圧出力576と電圧出力571との間の差は、90度の繊維配向の繊維の等価直列抵抗とその配向に予想される等価直列抵抗との間に差があるかどうかを示すために使用される。電圧出力578と電圧出力571との間の差は、-45度の繊維配向の繊維の等価直列抵抗とその配向に予想される等価直列抵抗との間に差があるかどうかを示すために使用される。これらの測定値は、複合物体を完全に試験するために、複合物体上の複数の位置で生成されうる。
【0045】
いくつかの例示的実施例では、電圧出力572、電圧出力574、電圧出力576、及び電圧出力578は、複合物体のプライ密度を決定するために使用されうる。例えば、複合物体は、以下のプライ密度を有する4つの繊維配向を有しうる。0度配向のプライの40パーセント、45度配向のプライの20パーセント、-45度配向のプライの20パーセント、90度配向のプライの10パーセント。基準抵抗器(抵抗器534、抵抗器546、抵抗器558、及び抵抗器570、並びにオプションで、抵抗器518及び抵抗器522)がゼロに設定されると、電圧出力572、電圧出力574、電圧出力576、及び電圧出力578の互いに対する比率は、複合物体のプライ密度の表示を提供しうる。
【0046】
図6は、例示的な実施形態による、別の試験デバイスの図である。試験デバイス600は、ベース602と、第1のプレートペア604、第2のプレートペア606、及び第3のプレートペア608とを含む。この例には示されないが、試験デバイス600はまた、
図1の制御ボックス106に類似の制御ボックス、
図1のハンドル108に類似のハンドル、又はその両方を含みうる。
【0047】
第1のプレートペア604は、プレート610及びプレート612を含む。第2のプレートペア606は、プレート614及びプレート616を含む。第3のプレートペア608は、プレート618及びプレート620を含む。第1のプレートペア604、第2のプレートペア606、及び第3のプレートペア608は、ターゲットエリア622周囲に対称に位置合わせされる。特に、これら3つのプレートペアは、対称な六角形構成を有している。第1のプレートペア604は、0度の繊維配向における抵抗(例えば、等価直列抵抗)を測定するために使用されうる。第2のプレートペア606は、60度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。第3のプレートペア608は、-60度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。
【0048】
図7は、例示的な実施形態による、更に別の試験デバイスの図である。試験デバイス700は、ベース702と、第1のプレートペア704、第2のプレートペア706、第3のプレートペア708、第4のプレートペア710、第5のプレートペア712、及び第6のプレートペア714とを含む。この例には示されないが、試験デバイス700はまた、
図1の制御ボックス106に類似の制御ボックス、
図1のハンドル108に類似のハンドル、又はその両方を含みうる。
【0049】
第1のプレートペア704は、プレート716及びプレート718を含む。第2のプレートペア706は、プレート720及びプレート722を含む。第3のプレートペア708は、プレート724及びプレート726を含む。第4のプレートペア710は、プレート728及びプレート730を含む。第5のプレートペア712は、プレート732及びプレート734を含む。第6のプレートペア714は、プレート736及びプレート738を含む。
【0050】
第1のプレートペア704、第2のプレートペア706、第3のプレートペア708、第4のプレートペア710、第5のプレートペア712、及び第6のプレートペア714は、ターゲットエリア740周囲に対称に位置合わせされる。特に、これら6つのプレートペアは、対称な十二角形構成を有している。第1のプレートペア704は、0度の繊維配向で抵抗(例えば、等価直列抵抗)を測定するために使用されうる。第2のプレートペア706は、30度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。第3のプレートペア708は、60度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。第4のプレートペア710は、90度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。第5のプレートペア712は、-60度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。第6のプレートペア714は、-30度の繊維配向における抵抗を測定するために使用されうる。
【0051】
図1-7の図は、例示的な実施形態が実装されうる方法に対する物理的又は構造的な制限を示唆することを意図していない。図示された構成要素に加えて又はそれらに代えて、他の構成要素も使用されうる。いくつかの構成要素はオプションでありうる。
【0052】
図8は、例示的な実施形態による、複合物体を試験するためのプロセスのフローチャートである。
図8のプロセス800は、
図1-2の複合物体101又は
図3の複合物体300などの複合物体を試験するために使用されうる。更に、プロセス800は、例えば、
図1-3に記載の試験デバイス100、
図6の試験デバイス600、
図7の試験デバイス700、又はいくつかの別の種類の同様に実施される試験デバイスなどの試験デバイスを使用して実行されうる。
【0053】
プロセス800は、少なくとも3つのプレートペアを含む複数のプレートペアを複合物体の表面上に位置付けること(工程802)によって開始しうる。これらのプレートペアの各々が、複合物体との容量結合で使用する2つの容量性プレートを含む。
【0054】
少なくとも3つの異なる繊維配向の複合物体の複数のプライの抵抗が測定され、少なくとも3つの異なる繊維配向の各々が、少なくとも3つのプレートペアのうちの対応する1つを介して測定される(工程804)。測定される抵抗は、等価直列抵抗でありうる。1つ又は複数の実施例では、工程804において、繊維配向の抵抗は、その繊維配向を測定するように設計されたプレートペアを含む回路分岐から電圧出力を測定することにより測定される。したがって、工程804において、抵抗の測定値は、実際には、抵抗を示す電圧の測定値でありうる。
【0055】
次いで、測定値に基づき、複合物体にプライの不整合が存在するか否かが決定され(工程806)、その後、プロセスは終了する。工程806は、例えば、1つ又は複数の数学的分析ツール又はコンピュータプリグラムを使用して、測定値を処理することにより、実行されうる。
【0056】
図9は、例示的な実施形態による、複合物体を試験するためのプロセスのフローチャートである。
図9のプロセス900は、
図1-2の複合物体101又は
図3の複合物体300などの複合物体を試験するために使用されうる。更に、プロセス900は、例えば、
図1-3に記載の試験デバイス100、
図6の試験デバイス600、
図7の試験デバイス700、又はいくつかの別の種類の同様に実施される試験デバイスなどの試験デバイスを使用して実行されうる。
【0057】
プロセス900は、少なくとも3つの異なる配向の繊維を有する複数のプライを含む複合物体を試験するための走査パターンを識別する(工程902)ことにより開始しうる。例えば、複合物体は、第1の繊維配向の繊維を有する第1の複数のプライ、第2の繊維配向の繊維を有する第2の複数のプライ、第3の繊維配向の繊維を有する第3の複数のプライ、及び第4の繊維配向の繊維を有する第4の複数のプライを有しうる。これらの繊維配向の1つは、一次繊維配向と見なされる0度の繊維配向である。いくつかの実施例では、工程902で識別される走査パターンは、ラスタパターンでありうる。
【0058】
次いで、一次プレートペアを複合物体の一次繊維配向に位置合わせするために、複数のプレートペアを含む試験デバイスが複合物体に対して配向される(工程904)。例えば、試験デバイスは、複合物体の第1の複数のプライ、第2の複数のプライ、第3の複数のプライ、第4の複数のプライ毎のプレートペアを含みうる。1つの例示的な実施例では、一次プレートペアは、0度の繊維配向である一次繊維配向と位置合わせするように設計されたプレートペアでありうる。
【0059】
その後、試験デバイスは、複合物体の表面上で、識別された走査パターンに基づき決定される初期位置まで移動される(工程906)。電圧測定値は、試験デバイスの現在位置において、複数のプレートペアのプレートペア毎に収集される(工程908)。プレートペア毎に、工程908は、回路の測定分岐から電圧出力を生成することを含み、この測定分岐は、少なくともプレートペア、複合物体(これにより、プレートペアに対応する繊維配向のプライの等価直列抵抗)、及び基準抵抗器を含む。
【0060】
いくつかの例示的実施例では、工程908は、オプションで、回路の基準分岐についての電圧測定値を生成することを含み、この基準分岐は、複合物体の予想される等価直列抵抗に設定された少なくとも2つの抵抗器を含む様々な電子部品を含む。先ほど上記で検討されたように、予想される等価直列抵抗は、複合物体内のプライ数、プライの各々の厚さ(及び/又は複合物体の厚さ)、並びにプライ密度に基づいている。他の例示的実施例では、工程908でプレートペアのために生成された電圧測定値は、プレートペアに対応する測定分岐からの第1の電圧出力と基準分岐からの第2の電圧出力との間の差である電圧差である。
【0061】
その後、走査パターンに従って試験される次の位置があるかどうか決定される(工程910)。次の位置がある場合、試験デバイスが次の位置まで移動される(工程912)。次いで、収集された電圧測定値が処理され、複合物体内にプライの不整合が存在するかどうかが決定されて(工程914)、その後、プロセスが終了する。再び工程910を参照すると、走査すべき次の位置が存在しない場合、プロセス900は、上記の工程914に直接進む。
【0062】
図10は、例示的な実施形態による電圧測定値を処理するためのフローチャートである。プロセス1000は、
図9の工程914が実施されうる1つの方法の実施例でありうる。プロセス1000は、
図1のコンピュータシステム140などのコンピュータシステム又はいくつかの他の種類のプロセッサを使用して、実施されうる。
【0063】
プロセス1000は、2次元マップセット内の繊維配向ごとに収集された電圧測定値をプロットすること(工程1002)によって開始しうる。2次元マップセットは、例えば、異なる繊維配向毎に2次元マップを含みうる。1つ又は複数の実施例では、所与の繊維配向の2次元マップは、その繊維配向のプライ内にプライの不整合が検出されるかどうかの視覚的表示を提供する等高線図である。
【0064】
場合によっては、プロセス1000は、電圧測定値の標準偏差を2次元標準偏差マップセット内にプロットすること(工程1004)を更に含み、その後、プロセスは終了する。2次元標準偏差マップセットは、繊維配向毎に2次元標準偏差マップを含む。所与の繊維配向の2次元標準偏差マップは、プライの不整合の検出がどのように信頼性があり正確であるかを示す。
【0065】
図示している種々の実施形態におけるフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態における装置及び方法の、いくつかの可能な実施態様のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示している。そのため、フローチャート又はブロック図内の各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び/又は動作若しくはステップの一部を表しうる。
【0066】
図示している種々の実施形態におけるフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態における装置及び方法の、いくつかの可能な実施形態のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示している。例えば、場合によっては、連続して示されている2つのブロックが、関連機能に応じて、実質的に同時に実行されること、また時には、逆順に実施されることがありうる。また、フローチャート又はブロック図に示されているブロックに加えて、他のブロックが追加されることもある
【0067】
図11は、例示的な実施形態による2次元マップセットの例である。2次元マップセット1100は、
図10の工程1002で生成される2次元マップセットの1つの実施態様の例である。
【0068】
2次元マップセット1100は、各々が複合物体の異なる繊維配向に対する2次元マップである、マップ1102、マップ1104、マップ1106、及びマップ1108を含む。特に、これらのマップの各々が、複合物体に対して収集された電圧測定値の等高線図である。これらの電圧測定値は、電圧差である。更に、これらのマップの各々は、複合物体の表面の座標系と一致するM-N座標系を有する。
【0069】
マップ1102は、0度の繊維配向の繊維を有する複合物体のプライの2次元マップである。マップ1102は、電圧測定値のプロット1110を含む。この例示的実施例では、プライの不整合は、位置1112で視覚的に示される(又は検出される)。マップ1104は、45度の繊維配向の繊維を有する複合物体のプライの2次元マップである。マップ1104は、電圧測定値のプロット1114を含む。この例示的実施例では、プライの不整合は、位置1116で視覚的に示される(又は検出される)。
【0070】
マップ1106は、45度の繊維配向の繊維を有する複合物体のプライの2次元マップである。マップ1106は、電圧測定値のプロット1118を含む。この例では、プライの不整合は、位置1120で視覚的に示される(又は検出される)。マップ1108は、90度の繊維配向の繊維を有する複合物体のプライの2次元マップである。マップ1108は、電圧測定値のプロット1122を含む。この例では、プライの不整合は、位置1124で視覚的に示される(又は検出される)。
【0071】
プロット1110、1114、1118、及び1122が、パターン化された線で
図11に示される。プロット1110、1114、1118、及び1122の異なるパターン化された線の各々は、異なる電圧測定値を表す。例えば、特定の値のある範囲内の電圧測定値が、あるパターンを使用してプロット化され、その一方で、異なる値のある範囲内の電圧測定値は、別のパターンを使用してプロット化されうる。他の例示的実施例では、プロット1110、1114、1118、及び1122は、異なる線のパターンの代わりに、異なる色を使用してもよい。
【0072】
図12は、例示的な実施形態による、2次元標準偏差マップセットの例である。2次元標準偏差マップセット1200は、
図10の工程1004で生成された2次元標準偏差マップセットの1つの実施態様の例である。
【0073】
2次元標準偏差マップセット1200は、
図12の2次元マップセット1200に提供される電圧測定値データの標準偏差をとることによって生成される。2次元標準偏差マップセット1200は、マップ1202、1204、1206、及び1208を含む。これらのマップの各々は、2次元標準偏差マップである。特に、これらのマップの各々は、標準偏差の等高線図である。
【0074】
マップ1202は、
図12のマップ1202の電圧測定値の標準偏差についての等高線図であるプロット1210を含む。プロット1210は、位置1212におけるプライの不整合の検出に加え、0度の繊維配向の電圧測定値データに多少のノイズが存在することを示す。マップ1204は、
図12のマップ1204の電圧測定値の標準偏差についての等高線図であるプロット1214を含む。プロット1214は、位置1214でのプライの不整合の検出以外に、45度配向の電圧測定値データに最小のノイズが存在することを示す。
【0075】
マップ1206は、
図12のマップ1206の電圧測定値の標準偏差についての等高線図であるプロット1218を含む。プロット1218は、位置1220でのプライの不整合の検出以外に、-45度配向の電圧測定値データに最小のノイズが存在することを示す。マップ1208は、
図12のマップ1208の電圧測定値の標準偏差についての等高線図であるプロット1222を含む。プロット1220は、位置1224でのプライの不整合の検出以外に、90度配向の電圧測定値データに最小のノイズが存在することを示す。
【0076】
したがって、上記の様々な例示的実施形態は、繊維の不連続性などのプライの不整合を容易、迅速、かつ効率的に検出するために、複合物体を非侵襲的に試験するシステム及び方法を提供する。例えば、
図1-3に記載の試験デバイス100は、これらの複合物体が所望の機械的強度及び所望の導電性を確実に有するように、製造及び修理の間、繊維の不連続性について複合物体を試験するために使用されうる。
【0077】
更に、本開示は下記の条項による実施形態を含む。
【0078】
条項1.
異なる繊維配向のプライ(103)の抵抗を測定するために位置合わせされた2つの容量性プレート(124-138,610-620,716-738)を各々が備える、少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)を含む複数のプレートペア(112,604-608,704-714)と、
複数のプレートペア(112)が取り付けられるベース(102,602,702)と
を備える、装置。
【0079】
条項2.複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における抵抗を測定するための第1のプレートペア(116)と、
45度の繊維配向における抵抗を測定するための第2のプレートペア(118)と、
90度の繊維配向における抵抗を測定するための第3のプレートペア(120)と、
-45度の繊維配向における抵抗を測定するための第4のプレートペア(122)と
を含む、条項1に記載の装置。
【0080】
条項3.複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における抵抗を測定するための第1のプレートペア(604)と、
60度の繊維配向における抵抗を測定するための第2のプレートペア(606)と、
-60度の繊維配向における抵抗を測定するための第3のプレートペア(608)と
を含む、条項1に記載の装置。
【0081】
条項4.複数のプレートペア(112)が、
0度の繊維配向における抵抗を測定するための第1のプレートペア(704)と、
30度の繊維配向における抵抗を測定するための第2のプレートペア(706)と、
60度の繊維配向における抵抗を測定するための第3のプレートペア(708)と、
90度の繊維配向における抵抗を測定するための第4のプレートペア(710)と、
-60度の繊維配向における抵抗を測定するための第5のプレートペア(712)と、
-30度の繊維配向における抵抗を測定するための第6のプレートペア(714)と
を含む、条項1に記載の装置。
【0082】
条項5.複数のプレートペア(112)が、複数のプレートペア(112)に対して中央に位置する試験エリアを画定する対称な八角形構成で配置される、条項1に記載の装置。
【0083】
条項6.複数のプレートペア(112)の各々の2つの容量性プレートが、同じ距離で分離されている、条項1に記載の装置。
【0084】
条項7.
複数の分岐(404-406,504-514)を含む回路(400)
を更に備え、
複数の分岐のうちの1つの分岐(406,508-514)が、複数のプレートペア(112)のうちの1つのプレートペアを含み、
プレートペアが、特定の繊維配向のために設計されており、
特定の繊維配向に対する抵抗が、分岐からの電圧出力(409)を使用して測定される、条項1に記載の装置。
【0085】
条項8.回路(400)が、
予想される等価直列抵抗を有する少なくとも1つの基準抵抗器(534,546,558,570)を含む基準分岐(404,506)
を更に備える、条項7に記載の装置。
【0086】
条項9.ベース(102,602,702)がプリント回路基板である、条項1に記載の装置。
【0087】
条項10.ベース及び複数のプレートペア(112)が試験デバイス(100,600,700)を形成し、試験デバイス(100,600,700)が、
ベース(102)に取り付けられたハウジング(106)を更に備え、ハウジング(106)が、プリント回路基板に接続された回路機構を保持する、条項9に記載の装置。
【0088】
条項11.試験デバイス(100,600,700)が、
ハウジング(106)に取り付けられたハンドル(108)
を更に備え、ハンドル(108)により、オペレータが、試験デバイス(100,600,700)を複合物体(101)の表面(110)に沿って移動できるようにする、条項10に記載の装置。
【0089】
条項12.2つの容量性プレートのうちの1つの容量性プレートが、
金属層
を備える、条項1に記載の装置。
【0090】
条項13.容量性プレートが、
絶縁層
を更に備える、条項1に記載の装置。
【0091】
条項14.複合物体(101)を試験するための方法であって、
少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)を含む複数のプレートペア(112)を、複合物体(101)の表面(110)の上に位置付けること(802)と、
複合物体(101)の複数のプライ(103)の抵抗を、少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)のうちの対応する1つを介して各々が測定される少なくとも3つの異なる繊維配向で測定すること(804)ことと
を含む、方法。
【0092】
条項15.抵抗を測定すること(802)が、
複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(116)によって0度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(118)によって45度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(120)によって-45度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第4のプレートペア(122)によって90度の繊維配向における抵抗を測定することと
を含む、条項14に記載の方法。
【0093】
条項16.抵抗を測定すること(802)が、
複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(604)によって0度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(606)によって60度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(608)によって-60度の繊維配向における抵抗を測定することと
を含む、条項14に記載の方法。
【0094】
条項17.抵抗を測定すること(802)が、
複数のプレートペア(112)内の第1のプレートペア(704)によって0度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第2のプレートペア(706)によって30度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第3のプレートペア(708)によって-30度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第4のプレートペア(710)によって60度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第5のプレートペア(712)によって-60度の繊維配向における抵抗を測定することと、
複数のプレートペア(112)内の第6のプレートペア(714)によって90度の繊維配向における抵抗を測定することと
を含む、条項14に記載の方法。
【0095】
条項18.
複数のプレートペア(112)を含む試験デバイス(100,600,700)を、複合物体(101)の表面(110)に沿ってラスタパターンで移動させること(906)
を更に含む、条項17に記載の方法。
【0096】
条項19.抵抗を測定すること(802)が、
複合物体(101)の表面(110)に沿った複数の位置の各々において、少なくとも3つのプレートペア(116-122,604-608,704-714)の各々に対して電圧測定値を生成すること(908)
を含む、条項14に記載の方法。
【0097】
条項20.
ベース(102,602,702)と、
ベース(102,602,702)に取り付けられた複数のプレートペア(112)と
を備え、
各プレートペアが、異なる繊維配向について複合物体(101)内のプライ(103)の抵抗を測定するように位置合わせされた2つの容量性プレート(124-138,610-620,716-738)を含み、
複数のプレートペア(112)間のエリアがターゲットエリア(210,622,740)を画定し、
複数のプレートペア(112)が複合物体(101)の表面(110)上に位置付けられると、表面(110)上の複数の異なる位置の各々で生成された電圧測定値が、複合物体(101)内に繊維の不連続性が存在するかどうかの表示を提供する、試験デバイス(100,600,700)。
【0098】
種々の例示的な実施形態についての説明は、例示及び説明を目的として提示されており、網羅的であること、又は開示された形態の実施形態に限定することを意図するものではない。当業者には、多数の改変例及び変形例が自明となろう。更に、種々の例示的な実施形態は、他の望ましい実施形態と比較して、異なる特徴を提供しうる。選択された1つ又は複数の実施形態は、実施形態の原理や実際の用途の最善な説明を提供するために、かつ、他の当業者が、想定される特定の用途に適する様々な修正例を伴う様々な実施形態の開示内容を理解することを可能にするために、選択及び説明されている。