(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法および太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20241024BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2020218895
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】石橋 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158977(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111834470(CN,A)
【文献】国際公開第2016/147566(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056378(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/060437(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0224306(US,A1)
【文献】国際公開第2020/195570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記一方主面側における前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に、一連の透明電極層材料膜を形成する透明電極層材料膜形成工程と、
前記透明電極層材料膜の上に、一連の金属電極層材料膜であって、銅を含む前記金属電極層材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、
前記第1領域における前記金属電極層材料膜を第1非絶縁領域を除いて全体的に覆う第1絶縁層、および、前記第2領域における前記金属電極層材料膜を第2非絶縁領域を除いて全体的に覆う第2絶縁層であって、互いに離間する前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をマスクとするエッチング法を用いて、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間における、および前記第1非絶縁領域および前記第2非絶縁領域における、前記金属電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1金属電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2金属電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去せずに残す金属電極層形成工程と、
前記第1非絶縁領域における前記透明電極層材料膜の上に、前記第1金属電極層の側面および前記第1絶縁層の側面と接するように第1コンタクト電極を形成し、前記第2非絶縁領域における前記透明電極層材料膜の上に、前記第2金属電極層の側面および前記第2絶縁層の側面と接するように第2コンタクト電極を形成するコンタクト電極形成工程と、
前記第1絶縁層および前記第1コンタクト電極、および前記第2絶縁層および前記第2コンタクト電極をマスクとするエッチング法を用いて、前記透明電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1透明電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2透明電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去せずに残す透明電極層形成工程と、
を含む、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記コンタクト電極形成工程では、粒子状の金属材料、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させることにより、前記第1コンタクト電極および前記第2コンタクト電極を形成する、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記印刷材料は、粒子状の銀材料を含む銀ペーストである、請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記金属電極層形成工程では、エッチング溶液として酸化剤と塩酸との混合溶液を用い、
前記透明電極層形成工程では、エッチング溶液として塩酸を用いる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池であって、
前記第1金属電極層を第1非絶縁領域を除いて全体的に覆うように前記第1領域に形成された第1絶縁層と、
前記第2金属電極層を第2非絶縁領域を除いて全体的に覆うように前記第2領域に形成された第2絶縁層と、
前記第1非絶縁領域に形成された第1コンタクト電極と、
前記第2非絶縁領域に形成された第2コンタクト電極と、
を備え、
前記第1金属電極層および前記第2金属電極層は、銅を含み、
前記第1非絶縁領域には、前記第1透明電極層が形成されており、前記第1金属電極層が形成されておらず、
前記第2非絶縁領域には、前記第2透明電極層が形成されており、前記第2金属電極層が形成されておらず、
前記第1コンタクト電極は、前記第1透明電極層の主面、前記第1金属電極層の側面および前記第1絶縁層の側面と接しており、
前記第2コンタクト電極は、前記第2透明電極層の主面、前記第2金属電極層の側面および前記第2絶縁層の側面と接している、
太陽電池。
【請求項6】
前記第1コンタクト電極および前記第2コンタクト電極は、粒子状の銀を含む、請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記一方主面側における前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に、一連の透明電極層材料膜を形成する透明電極層材料膜形成工程と、
前記透明電極層材料膜の上に、一連の金属電極層材料膜であって、銅を含む前記金属電極層材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、
前記第1領域における前記金属電極層材料膜を全体的に覆う第1絶縁層、および、前記第2領域における前記金属電極層材料膜を全体的に覆う第2絶縁層であって、互いに離間する前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をマスクとするエッチング法を用いて、前記金属電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1金属電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2金属電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去する金属電極層形成工程と、
前記第1金属電極層の上に、第1コンタクト電極層を形成し、前記第2金属電極層の上に、第2コンタクト電極層を形成するコンタクト電極層形成工程と、
前記第1コンタクト電極層および前記第1金属電極層、および前記第2コンタクト電極層および前記第2金属電極層をマスクとするエッチング法を用いて、前記透明電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1透明電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、
を含む、太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記コンタクト電極層形成工程では、粒子状の金属材料、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させることにより、前記第1コンタクト電極層および前記第2コンタクト電極層を形成する、請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記印刷材料は、粒子状の銀材料を含む銀ペーストである、請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記金属電極層形成工程では、エッチング溶液として酸化剤と塩酸との混合溶液を用い、
前記透明電極層形成工程では、エッチング溶液として塩酸を用いる、
請求項7~9のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法、および裏面電極型の太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、裏面電極型の太陽電池における2つの極性の電極と配線部材との接続に関する技術が開示されている。特許文献1および2には、裏面電極型の太陽電池において、
・第1電極および第2電極に交差する第1配線および第2配線を有し、
・第1配線は、第1電極と交差する点で第1電極と接続され、第2電極と交差する点で絶縁層によって第2電極と絶縁され、
・第2配線は、第2電極と交差する点で第2電極と接続され、第1電極と交差する点で絶縁層によって第1電極と絶縁される、
ことが記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、裏面電極型の太陽電池セルにおいて、
・p電極およびn電極に交差するp電極用配線およびn電極用配線を有し、
・裏面に絶縁樹脂が形成され、
・p電極用配線は、p電極と交差する点で絶縁樹脂の孔部の導電部材によってp電極と接続され、n電極と交差する点で絶縁樹脂によってn電極と絶縁され、
・n電極用配線は、n電極と交差する点で絶縁樹脂の孔部の導電部材によってn電極と接続され、p電極と交差する点で絶縁樹脂によってp電極と絶縁される、
ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133567号公報
【文献】特開2015-159286号公報
【文献】特開2014-127550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者(ら)は、このような太陽電池の低コスト化の目的で、金属電極層の材料として、比較的に高価な公知のAgペーストに代えて、比較的に安価な金属、例えばCu(例えば、スパッタリング等のPVD法またはめっき法を用いて製膜後、ウエットエッチング)を用いることを考案している。なお、配線部材とのコンタクトを行う部分のみに、Agペーストからなるコンタクト電極を用いる。
【0006】
また、本願発明者(ら)は、このような太陽電池の製造プロセスの簡略化の目的で、配線部材との絶縁およびコンタクトを確保するための絶縁層およびコンタクト電極(Agペースト)を、金属電極層(例えばCu)および透明電極層のウエットエッチングのレジストとして兼用することを考案している。
【0007】
しかし、本願発明者(ら)の知見によれば、このような太陽電池およびその製造方法では、太陽電池の性能が低下してしまうことがある。これは以下のように考察される。
【0008】
金属電極層および透明電極層のウエットエッチングの際に、エッチング溶液がAgペーストからなるコンタクト電極に浸入する。その後、アニールまたは使用環境下において加熱されると、コンタクト電極に浸入したエッチング溶液が、Cuからなる金属電極層および透明電極層を溶かす。すると、Cuが、何らかの要因により半導体層を介して(例えば局所的な欠陥等を介して)、半導体基板に拡散する。これにより、半導体基板にダメージが生じ、太陽電池の性能が低下してしまうことが考えられる(信頼性)。
【0009】
本発明は、太陽電池の低コスト化を図っても、太陽電池の性能低下の抑制が可能な太陽電池の製造方法および太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記一方主面側における前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に、一連の透明電極層材料膜を形成する透明電極層材料膜形成工程と、前記透明電極層材料膜の上に、一連の金属電極層材料膜であって、銅を含む前記金属電極層材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、前記第1領域における前記金属電極層材料膜を第1非絶縁領域を除いて全体的に覆う第1絶縁層、および、前記第2領域における前記金属電極層材料膜を第2非絶縁領域を除いて全体的に覆う第2絶縁層であって、互いに離間する前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をマスクとするエッチング法を用いて、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間における、および前記第1非絶縁領域および前記第2非絶縁領域における、前記金属電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1金属電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2金属電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去せずに残す金属電極層形成工程と、前記第1非絶縁領域における前記透明電極層材料膜の上に、前記第1金属電極層の側面および前記第1絶縁層の側面と接するように第1コンタクト電極を形成し、前記第2非絶縁領域における前記透明電極層材料膜の上に、前記第2金属電極層の側面および前記第2絶縁層の側面と接するように第2コンタクト電極を形成するコンタクト電極形成工程と、前記第1絶縁層および前記第1コンタクト電極、および前記第2絶縁層および前記第2コンタクト電極をマスクとするエッチング法を用いて、前記透明電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1透明電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2透明電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去せずに残す透明電極層形成工程と、を含む。
【0011】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池であって、前記第1金属電極層を第1非絶縁領域を除いて全体的に覆うように前記第1領域に形成された第1絶縁層と、前記第2金属電極層を第2非絶縁領域を除いて全体的に覆うように前記第2領域に形成された第2絶縁層と、前記第1非絶縁領域に形成された第1コンタクト電極と、前記第2非絶縁領域に形成された第2コンタクト電極と、を備える。前記第1金属電極層および前記第2金属電極層は、銅を含み、前記第1非絶縁領域には、前記第1透明電極層が形成されており、前記第1金属電極層が形成されておらず、前記第2非絶縁領域には、前記第2透明電極層が形成されており、前記第2金属電極層が形成されておらず、前記第1コンタクト電極は、前記第1透明電極層の主面、前記第1金属電極層の側面および前記第1絶縁層の側面と接しており、前記第2コンタクト電極は、前記第2透明電極層の主面、前記第2金属電極層の側面および前記第2絶縁層の側面と接している。
【0012】
本発明に係る別の太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記一方主面側における前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の上に、一連の透明電極層材料膜を形成する透明電極層材料膜形成工程と、前記透明電極層材料膜の上に、一連の金属電極層材料膜であって、銅を含む前記金属電極層材料膜を形成する金属電極層材料膜形成工程と、前記第1領域における前記金属電極層材料膜を全体的に覆う第1絶縁層、および、前記第2領域における前記金属電極層材料膜を全体的に覆う第2絶縁層であって、互いに離間する前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層をマスクとするエッチング法を用いて、前記金属電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1金属電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2金属電極層を形成し、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去する金属電極層形成工程と、前記第1金属電極層の上に、第1コンタクト電極層を形成し、前記第2金属電極層の上に、第2コンタクト電極層を形成するコンタクト電極層形成工程と、前記第1コンタクト電極層および前記第1金属電極層、および前記第2コンタクト電極層および前記第2金属電極層をマスクとするエッチング法を用いて、前記透明電極層材料膜の露出部分を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1透明電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2透明電極層を形成する透明電極層形成工程と、を含む。
【0013】
本発明に係る別の太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1導電型半導体層、第1透明電極層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2導電型半導体層、第2透明電極層および第2金属電極層を備える裏面電極型の太陽電池であって、前記第1金属電極層の上に積層された第1コンタクト電極層と、前記第2金属電極層の上に積層された第2コンタクト電極層と、を備える。前記第1金属電極層および前記第2金属電極層は、銅を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽電池の低コスト化を図っても、太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
【
図2A】
図1の太陽電池におけるIIA-IIA線断面図である。
【
図2B】
図1の太陽電池におけるIIB-IIB線断面図である。
【
図3A】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
【
図3B】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層材料膜形成工程、すなわち透明電極層材料膜形成工程および金属電極層材料膜形成工程を示す図である。
【
図3C】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層形成工程を示す図である。
【
図3D】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
【
図3E】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極形成工程を示す図である。
【
図3F】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
【
図4A】比較例1に係る太陽電池の断面図であって、
図1におけるIIA-IIA線相当の断面図である。
【
図4B】比較例1に係る太陽電池の断面図であって、
図1におけるIIB-IIB線相当の断面図である。
【
図5A】比較例1に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程、金属電極層材料膜形成工程および絶縁層形成工程を示す図である。
【
図5B】比較例1に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極形成工程を示す図である。
【
図5C】比較例1に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程、すなわち透明電極層形成工程および金属電極層形成工程を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
【
図7】
図6の太陽電池におけるVII-VII線断面図である。
【
図8A】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
【
図8B】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層材料膜形成工程、すなわち透明電極層材料膜形成工程および金属電極層材料膜形成工程を示す図である。
【
図8C】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層形成工程を示す図である。
【
図8D】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
【
図8E】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層除去形成工程を示す図である。
【
図8F】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極層形成工程を示す図である。
【
図8G】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
【
図9】比較例2に係る太陽電池の断面図であって、
図6におけるVII-VII線相当の断面図である。
【
図10A】比較例2に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程、金属電極層材料膜形成工程およびコンタクト電極層形成工程を示す図である。
【
図10B】比較例2に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程、すなわち透明電極層形成工程および金属電極層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0017】
(第1実施形態の太陽電池)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2Aは、
図1の太陽電池におけるIIA-IIA線断面図であり、
図2Bは、
図1の太陽電池におけるIIB-IIB線断面図である。
図1、
図2Aおよび
図2Bに示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。
【0018】
太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面(一方主面)を裏面とする。
【0019】
第1領域7は、帯状の形状をなし、Y方向(第2方向)に延在する。同様に、第2領域8は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1領域7と第2領域8とは、Y方向に交差するX方向(第1方向)に交互に設けられている。
【0020】
図2Aおよび
図2Bに示すように、太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25、第1電極層27および第1絶縁層41を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35、第2電極層37および第2絶縁層42を備える。また、太陽電池1は、第1電極層27に対応する第1コンタクト電極51と、第2電極層37に対応する第2コンタクト電極52とを備える。
【0021】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0022】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0023】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料を主成分とする材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0024】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0025】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。一方、第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とは、X方向に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35の一部は、隣接する第1導電型半導体層25の一部の上に重なっていてもよい(図示省略)。
【0026】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0027】
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0028】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。一方、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1電極層27および第2電極層37は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1電極層27と第2電極層37とは、X方向に交互に設けられている。
【0029】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された第1透明電極層28および第1金属電極層29を有する。一方、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された第2透明電極層38および第2金属電極層39を有する。
【0030】
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0031】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属材料として、公知のAg粉末を含有する導電性ペースト材料と比較して安価なCuを含む。例えば、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法を用いて形成される。
【0032】
第1絶縁層41は、第1金属電極層29上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2絶縁層42は、第2金属電極層39上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1絶縁層41および第2絶縁層42は、
図1に示すように、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1絶縁層41と第2絶縁層42とは、X方向に交互に設けられている。
【0033】
第1絶縁層41は、第1非絶縁領域41aを除いて、第1金属電極層29を全体的に覆う。同様に、第2絶縁層42は、第2非絶縁領域42aを除いて、第2金属電極層39を全体的に覆う。
【0034】
第1非絶縁領域41aには、第1絶縁層41および第1金属電極層29が形成されていない。すなわち、第1非絶縁領域41aは、第1透明電極層28の表面および第1金属電極層29の側面を露出する開孔で構成される。第1非絶縁領域41aは、X方向(第1方向)に延在する第1直線X1上に配置されている。
【0035】
同様に、第2非絶縁領域42aには、第2絶縁層42および第2金属電極層39が形成されていない。すなわち、第2非絶縁領域42aは、第2透明電極層38の表面および第2金属電極層39の側面を露出する開孔で構成される。第2非絶縁領域42aは、X方向(第1方向)に延在する第1直線X1と異なる第2直線X2上に配置されている。
【0036】
第1直線X1および第2直線X2は、第1電極層27および第2電極層37と交差し、Y方向(第2方向)に交互に並んでいる。
【0037】
第1絶縁層41および第2絶縁層42の材料としては、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等が挙げられる。また、例えばスクリーン印刷によって塗布し、焼成することができるエポキシ樹脂系またはレジンエステル系などの熱硬化性樹脂を用いることもできる。これらの樹脂に対して、印刷性向上または耐薬品性向上の目的で、シリカまたはタルクなどの無機系の粒子を混合してもよい。
【0038】
第1絶縁層41の第1非絶縁領域41aには、第1コンタクト電極51が形成されており、第2絶縁層42の第2非絶縁領域42aには、第2コンタクト電極52が形成されている。すなわち、第1コンタクト電極51は、第1直線X1上に配置されており、第2コンタクト電極52は、第2直線X2上に配置されている。
【0039】
第1コンタクト電極51は、第1透明電極層28の表面、第1金属電極層29の側面および第1絶縁層41の側面と接触している。一方、第2コンタクト電極52は、第2透明電極層38の表面、第2金属電極層39の側面および第2絶縁層42の側面と接触している。
【0040】
第1コンタクト電極51および第2コンタクト電極52は、Cu、Ag、Al等の粒子状の金属材料、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させてなる。これらの中でも、印刷材料としては、配線部材との接続のための半田とのコンタクト性の観点で、Agペースト材料が好ましい。
【0041】
第1絶縁層41の第1非絶縁領域41aのY方向(第2方向)の幅、すなわち第1コンタクト電極51のY方向(第2方向)の幅は、第1配線部材91の幅よりも大きい。同様に、第2非絶縁領域42aのY方向(第2方向)の幅、すなわち第2コンタクト電極52のY方向(第2方向)の幅は、第2配線部材92の幅よりも大きい。例えば、第1非絶縁領域41aおよび第2非絶縁領域42aの幅、すなわち第1コンタクト電極51および第2コンタクト電極52の幅は、1mm以上50mm以下である。これによれば、配線部材接続時のアライメントのクリアランスを確保することができる。
【0042】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、第1電極層27と第2電極層37とは、第1領域7と第2領域8との境界において分離している。すなわち、第1透明電極層28と第2透明電極層38とは離間しており、第1金属電極層29と第2金属電極層39とは離間している。また、第1絶縁層41と第2絶縁層42とは分離している。
【0043】
第1透明電極層28と第2透明電極層38との間の領域、すなわち第1金属電極層29と第2金属電極層39との間の領域は、第1絶縁層41および第2絶縁層42で覆われていない。
【0044】
第1金属電極層29では、第1透明電極層28と接する主面と反対側の主面は第1絶縁層41で覆われている。同様に、第2金属電極層39では、第2透明電極層38と接する主面と反対側の主面は第2絶縁層42で覆われている。
【0045】
一方、第1金属電極層29の側面および第1透明電極層28の側面は第1絶縁層41で覆われていない。同様に、第2金属電極層39の側面および第2透明電極層38の側面は第2絶縁層42で覆われていない。
【0046】
図1に示すように、第1配線部材91は、第1直線X1に沿ってX方向(第1方向)に延在する。同様に、第2配線部材92は、第2直線X2に沿ってX方向(第1方向)に延在する。すなわち、第1配線部材91および第2配線部材92は、第1電極層27および第2電極層37と交差し、Y方向(第2方向)に交互に並んでいる。
【0047】
第1配線部材91は、第1絶縁層41の第1非絶縁領域41aにおける第1コンタクト電極51によって第1電極層27に電気的に接続され、第2絶縁層42によって第2電極層37と電気的に絶縁される。同様に、第2配線部材92は、第2絶縁層42の第2非絶縁領域42aにおける第2コンタクト電極52によって第2電極層37に電気的に接続され、第1絶縁層41によって第1電極層27と電気的に絶縁される。
【0048】
第1配線部材91と第2配線部材92とのY方向の中心間隔(ピッチ)は、第1電極層27と第2電極層37とのX方向の中心間隔(ピッチ)よりも大きい。例えば、第1配線部材91と第2配線部材92との中心間隔(ピッチ)は、5mm以上50mm以下である。これによれば、電極層を流れる電流経路を短くすることができ、電極抵抗に起因する出力ロスを低減することができ、太陽電池の発電効率を向上することができる。
【0049】
第1配線部材91および第2配線部材92としては、公知のタブ線等が挙げられる。
【0050】
ここで、本願発明者(ら)は、このような太陽電池の低コスト化の目的で、金属電極層29,39の材料として、比較的に高価な公知のAgペーストに代えて、比較的に安価な金属、例えばCu(例えば、スパッタリング等のPVD法またはめっき法を用いて製膜後、ウエットエッチング)を用いることを考案している。なお、配線部材91,92とのコンタクトを行う部分のみに、Agペーストからなるコンタクト電極51,52を用いる。
【0051】
また、本願発明者(ら)は、このような太陽電池の製造プロセルの簡略化の目的で、配線部材91,92との絶縁およびコンタクトを確保するための絶縁層41,42およびコンタクト電極51,52(Agペースト)を、金属電極層29,39(例えばCu)および透明電極層28,38のウエットエッチングのレジストとして兼用することを考案している。以下に、このような本願発明者(ら)の考案の太陽電池およびその製造方法について、比較例1として説明する。
【0052】
(比較例1の太陽電池)
図4Aは、比較例1に係る太陽電池の断面図であって、
図1におけるIIA-IIA線相当の断面図であり、
図4Bは、比較例1に係る太陽電池の断面図であって、
図1におけるIIB-IIB線相当の断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示す比較例1の太陽電池1Xは、
図2Aおよび
図2Bに示す太陽電池1と比較して、主に、第1絶縁層41Xの第1非絶縁領域41aにも、第1電極層27X、すなわち第1透明電極層28Xおよび第1金属電極層29X、が形成されており、第1コンタクト電極51Xが第1非絶縁領域41aにおける第1電極層27Xの第1金属電極層29X上に形成されている点、および第2絶縁層42Xの第2非絶縁領域42aにも、第2電極層37X、すなわち第2透明電極層38Xおよび第2金属電極層39X、が形成されており、第2コンタクト電極52Xが第2非絶縁領域42aにおける第2電極層37Xの第2金属電極層39X上に形成されている点で、第1実施形態と異なる。
【0053】
(比較例1の太陽電池の製造方法)
以下では、
図5A~
図5Cを参照して、比較例1の太陽電池の製造方法における電極層27X,37Xの製造プロセスについて主に説明する。比較例1の電極層27X,37Xの製造プロセスでは、絶縁層41X,42Xを形成した後に、コンタクト電極51X,52Xを形成し、その後、絶縁層41X,42Xおよびコンタクト電極51X,52Xをマスクとして、電極層27X,37X、すなわち金属電極層29X,39Xおよび透明電極層28X,38X、の同時パターニングを行う。
【0054】
図5Aは、比較例1に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程、金属電極層材料膜形成工程および絶縁層形成工程を示す図であり、
図5Bは、比較例1に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極形成工程を示す図である。また、
図5Cは、比較例1に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程、すなわち透明電極層形成工程および金属電極層形成工程を示す図である。
図5A~
図5Cでは、半導体基板11の裏面側を示し、半導体基板11の表面側を省略する。
【0055】
まず、
図5Aに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って一連の透明電極層材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。次に、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法を用いて、透明電極層材料膜28Z上に、すなわち第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35に跨って一連の金属電極層材料膜29Zを形成する(金属電極層材料膜形成工程)。
【0056】
次に、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第1導電型半導体層25上に、すなわち第1領域7に、第1非絶縁領域41aを除いて第1絶縁層41Xを形成する。また、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第2導電型半導体層35上に、すなわち第2領域8に、第2非絶縁領域42aを除いて第2絶縁層42Xを形成する(絶縁層形成工程)。なお、第1絶縁層41Xと第2絶縁層42Xとは、互いに離間するように形成される。
【0057】
例えば、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法を用いて、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1絶縁層41Xおよび第2絶縁層42Xを形成する。
【0058】
次に、
図5Bに示すように、第1絶縁層41Xの第1非絶縁領域41aに第1コンタクト電極51Xを形成し、第2絶縁層42Xの第2非絶縁領域42aに第2コンタクト電極52Xを形成する(コンタクト電極形成工程)。例えば、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法を用いて、Ag粒子、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料、すなわちAgペースト材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1コンタクト電極51Xおよび第2コンタクト電極52Xを形成する。
【0059】
次に、
図5Cに示すように、第1絶縁層41Xおよび第1コンタクト電極51X、および第2絶縁層42Xおよび第2コンタクト電極52Xをマスクとするエッチング法を用いて、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zを同時にパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28Xおよび第2透明電極層38X、および、互いに分離された第1金属電極層29Xおよび第2金属電極層39Xを形成する(電極層形成工程)。これにより、第1電極層27Xおよび第2電極層37Xが形成される。このとき、第1絶縁層41Xおよび第2絶縁層42Xを除去せずに残す。
【0060】
金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zの同時エッチングのエッチング溶液としては、過硫酸アンモニウム(過硫安)等の酸化剤と塩酸(HCl)との混合溶液が挙げられる。
【0061】
本願発明者(ら)の知見によれば、この比較例1の太陽電池1Xの製造方法では、太陽電池1Xの性能が低下してしまうことがある。これは以下のように考察される。
【0062】
第一に、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zのウエットエッチングの際に、エッチング溶液がAgペーストからなるコンタクト電極51X,52Xに浸入する。その後、アニールまたは使用環境下において加熱されると、コンタクト電極51X,52Xに浸入したエッチング溶液が、Cuからなる金属電極層29X,39Xおよび透明電極層28X,38Xを溶かす。すると、Cuが、何らかの要因により半導体層25,23,35,33を介して(例えば局所的な欠陥等を介して)、半導体基板11に拡散する。これにより、半導体基板11にダメージが生じ、太陽電池1Xの性能が低下してしまうことが考えられる(信頼性)。
【0063】
第二に、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zのエッチング溶液として酸化剤と塩酸との混合溶液が用いられるが、このエッチング溶液において、酸化剤の還元反応により塩酸から塩素が生成される。すると、この塩素によりAgペーストからなるコンタクト電極51X,52Xが塩化銀に変性される。これにより、配線部材に対するコンタクト電極51X,52Xのコンタクト性が低下し、太陽電池1Xの性能が低下してしまうことが考えられる(コンタクト性)。
【0064】
この点に関し、本願発明者(ら)は、酸化剤と塩酸との混合溶液を用いる必要がある、Cuからなる金属電極層のエッチングを行った後に、Agからなるコンタクト電極を形成し、その後、塩酸のみを用いて透明電極層のエッチングを行うことを考案する。
【0065】
(第1実施形態の太陽電池の製造方法)
以下では、
図3A~
図3Fを参照して、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。
図3Aは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、
図3Bは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程および金属電極層材料膜形成工程(電極層材料膜形成工程)を示す図である。また、
図3Cは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層形成工程を示す図であり、
図3Dは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。また、
図3Eは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極形成工程を示す図であり、
図3Fは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
図3A~
図3Fでは、半導体基板11の裏面側を示し、半導体基板11の表面側を省略する。
【0066】
まず、
図3Aに示すように、半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。例えば、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション層材料膜および第1導電型半導体層材料膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術または印刷技術を用いて生成するレジスト、またはメタルマスク、を利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25をパターニングしてもよい。
【0067】
なお、p型半導体層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸、または硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0068】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第1導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0069】
次に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。例えば、上述同様に、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション層材料膜および第2導電型半導体層材料膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術または印刷技術を用いて生成するレジスト、またはメタルマスク、を利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0070】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第2導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0071】
なお、この半導体層形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい(図示省略)。
【0072】
次に、
図3Bに示すように、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って一連の透明電極層材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。透明電極層材料膜28Zの形成方法としては、例えばCVD法またはPVD法等が用いられる。
【0073】
次に、透明電極層材料膜28Z上に、すなわち第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35に跨って一連の金属電極層材料膜29Z(例えばCu)を形成する(金属電極層材料膜形成工程)。金属電極層材料膜29Zの形成方法としては、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法が用いられる。
【0074】
次に、
図3Cに示すように、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第1導電型半導体層25上に、すなわち第1領域7に、第1非絶縁領域41aを除いて第1絶縁層41を形成する。また、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第2導電型半導体層35上に、すなわち第2領域8に、第2非絶縁領域42aを除いて第2絶縁層42を形成する(絶縁層形成工程)。なお、第1絶縁層41と第2絶縁層42とは、互いに離間するように形成される。
【0075】
第1絶縁層41および第2絶縁層42の形成方法としては、PVD法、CVD法、スクリーン印刷法、インクジェット法、グラビアコーティング法、またはディスペンサー法等が挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法を用いて、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1絶縁層41および第2絶縁層42を形成するとよい。
【0076】
次に、
図3Dに示すように、第1絶縁層41および第2絶縁層42をマスクとするエッチング法を用いて、第1絶縁層41と第2絶縁層42との間における、および第1非絶縁領域41aおよび第2非絶縁領域42aにおける、金属電極層材料膜29Zの露出部分を除去することにより、第1領域7にパターン化された第1金属電極層29を形成し、第2領域8にパターン化された第2金属電極層39を形成する(金属電極層形成工程:電極層形成工程)。
【0077】
金属電極層材料膜29Zのエッチングのエッチング溶液としては、過硫酸アンモニウム(過硫安)等の酸化剤と塩酸(HCl)との混合溶液が挙げられる。このとき、Agからなるコンタクト電極が形成されていないため、コンタクト電極にエッチング溶液が含まれることがない。また、コンタクト電極が変性することがない。
【0078】
次に、
図3Eに示すように、第1絶縁層41の第1非絶縁領域41aに第1コンタクト電極51を形成し、第2絶縁層42の第2非絶縁領域42aに第2コンタクト電極52を形成する(コンタクト電極形成工程)。これにより、第1コンタクト電極51は、第1透明電極層28の表面、第1金属電極層29の側面および第1絶縁層41の側面と接触する。また、第2コンタクト電極52は、第2透明電極層38の表面、第2金属電極層39の側面および第2絶縁層の側面と接触する。
【0079】
第1コンタクト電極51および第2コンタクト電極52の形成方法としては、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法が挙げられる。パターン印刷法では、Ag粒子、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料、すなわちAgペースト材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1コンタクト電極51および第2コンタクト電極52を形成する。
【0080】
次に、
図3Fに示すように、第1絶縁層41および第1コンタクト電極51、および第2絶縁層42および第2コンタクト電極52をマスクとするエッチング法を用いて、第1絶縁層41と第2絶縁層42との間における透明電極層材料膜28Zの露出部分を除去することにより、第1領域7にパターン化された第1透明電極層28を形成し、第2領域8にパターン化された第2透明電極層38を形成する(電極層形成工程:透明電極層形成工程)。これにより、第1電極層27および第2電極層37が形成される。このとき、第1絶縁層41および第2絶縁層42を除去せずに残す。
【0081】
透明電極層材料膜28Zのエッチング溶液としては、塩酸(HCl)が挙げられる。このとき、酸化剤と塩酸との混合溶液が用いられないため、Cuからなる金属電極層29,39を溶かすことがなく、Cuが、何らかの要因により半導体層25,23,35,33を介して(例えば局所的な欠陥等を介して)、半導体基板11に拡散することがない。そのため、半導体基板11にダメージが生じることがない。また、コンタクト電極51,52が変性することがない。
【0082】
その後、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成する(図示省略)。以上の工程により、
図1、
図2Aおよび
図2Bに示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、金属電極層29,39の材料として、比較的に高価な公知のAgペーストに代えて、比較的に安価な金属、例えばCu(例えば、スパッタリング等のPVD法またはめっき法を用いて製膜後、ウエットエッチング)を用いる。これにより、太陽電池1の低コスト化が可能である。
【0084】
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、配線部材91,92との絶縁およびコンタクトを確保するための絶縁層41,42およびコンタクト電極51,52(Agペースト)を、金属電極層29,39(例えばCu)および透明電極層28,38のウエットエッチングのレジストとして兼用する。これにより、金属電極層29,39および透明電極層28,38のウエットエッチングのレジストの形成および除去の工程を削減することができ、太陽電池の製造プロセルの簡略化が可能である。
【0085】
更に、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、酸化剤と塩酸との混合溶液を用いる必要がある、Cuからなる金属電極層29,39のエッチングを行った後に、Agからなるコンタクト電極51,52を形成し、その後、塩酸のみを用いて透明電極層28,38のエッチングを行う。これにより、以下に詳説するように、太陽電池1の性能の低下を抑制することができる。
【0086】
第一に、金属電極層29,39のウエットエッチングのための酸化剤と塩酸との混合溶液に、Agペーストからなるコンタクト電極51,52が触れることがない。その結果、上述した比較例1のように、Agペーストからなるコンタクト電極51,52に浸入するエッチング溶液に起因する、Cuの半導体基板11への拡散がない。これにより、Cuに起因する半導体基板11のダメージが生じず、これに起因する太陽電池1の性能の低下を抑制することができる(信頼性)。
【0087】
第二に、Agからなるコンタクト電極51,52が、酸化剤と塩酸との混合溶液に触れることがなく、変性することがない。これにより、Agからなるコンタクト電極51,52の変性に起因する、配線部材に対するコンタクト電極51,52のコンタクト性の低下がなく、これに起因する太陽電池1の性能の低下を抑制することができる(コンタクト性)。
【0088】
このように、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、製造プロセスの簡略化および太陽電池の低コスト化を図っても、太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0089】
(第2実施形態の太陽電池)
第1実施形態では、太陽電池の裏面上に配線部材が配置される形態について説明した。第2実施形態では、太陽電池の裏面上に配線部材が配置されない形態、すなわち太陽電池の裏面に絶縁層を配置せずともよい形態について説明する。
【0090】
図6は、第2実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、
図7は、
図6の太陽電池におけるVII-VII線断面図である。
図6および
図7に示す太陽電池1Aも、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。
【0091】
太陽電池1Aは、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面(受光面および裏面)において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0092】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0093】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
【0094】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
【0095】
図7に示すように、太陽電池1Aは、半導体基板11の受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1Aは、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27Aを備える。また、太陽電池1Aは、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37Aを備える。また、太陽電池1Aは、第1電極層27Aに対応する第1コンタクト電極層51Aと、第2電極層37Aに対応する第2コンタクト電極層52Aとを備える。
【0096】
第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー部とを有する。バスバー部は、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部は、バスバー部から、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0097】
第1電極層27Aは、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。一方、第2電極層37Aは、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1電極層27Aおよび第2電極層37Aは、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー部とを有する。バスバー部は、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部は、バスバー部から、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0098】
第1電極層27Aは、第1導電型半導体層25上に順に積層された第1透明電極層28Aおよび第1金属電極層29Aを有する。一方、第2電極層37Aは、第2導電型半導体層35上に順に積層された第2透明電極層38Aおよび第2金属電極層39Aを有する。
【0099】
第1透明電極層28Aおよび第2透明電極層38Aは、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0100】
第1金属電極層29Aおよび第2金属電極層39Aは、金属材料として、公知のAg粉末を含有する導電性ペースト材料と比較して安価なCuを含む。例えば、第1金属電極層29Aおよび第2金属電極層39Aは、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法を用いて形成される。
【0101】
第1コンタクト電極層51Aは、第1金属電極層29A上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2コンタクト電極層52Aは、第2金属電極層39A上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1コンタクト電極層51Aおよび第2コンタクト電極層52Aは、
図6に示すように、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー部とを有する。バスバー部は、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部は、バスバー部から、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0102】
第1コンタクト電極層51Aおよび第2コンタクト電極層52Aは、Cu、Ag、Al等の粒子状の金属材料、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して硬化させてなる。これらの中でも、印刷材料としては、配線部材との接続のための半田とのコンタクト性の観点で、Agペースト材料が好ましい。
【0103】
図6に示すように、第1配線部材91は、第1コンタクト電極層51Aを介して第1電極層27Aのバスバー部に電気的に接続される。一方、第2配線部材92は、第2コンタクト電極層52Aを介して第2電極層37Aのバスバー部に電気的に接続される。
【0104】
ここで、本願発明者(ら)は、このような太陽電池の低コスト化の目的で、金属電極層29A,39Aの材料として、比較的に高価な公知のAgペーストに代えて、比較的に安価な金属、例えばCu(例えば、スパッタリング等のPVD法またはめっき法を用いて製膜後、ウエットエッチング)を用いることを考案している。なお、配線部材91,92とのコンタクト性を考慮し、金属電極層29A,39A上に、Agペーストからなるコンタクト電極層51A,52Aを用いる。
【0105】
また、本願発明者(ら)は、このような太陽電池の製造プロセルの簡略化の目的で、配線部材91,92とのコンタクトを確保するためのコンタクト電極層51A,52A(Agペースト)を、金属電極層29A,39A(例えばCu)および透明電極層28A,38Aのウエットエッチングのレジストとして兼用することを考案している。以下に、このような本願発明者(ら)の考案の太陽電池およびその製造方法について、比較例2として説明する。
【0106】
(比較例2の太陽電池)
図9は、比較例2に係る太陽電池の断面図であって、
図6におけるVII-VII線相当の断面図である。
図9に示す比較例2の太陽電池1Yは、
図7に示す太陽電池1Aと比較して、主に、第1電極層27Yの幅、すなわち第1金属電極層29Yおよび第1透明電極層28Yの幅が、第1コンタクト電極層51Yの幅と同一または狭い点、および、第2電極層37Yの幅、すなわち第2金属電極層39Yおよび第2透明電極層38Yの幅が、第2コンタクト電極層52Yの幅と同一または狭い点で、第2実施形態と異なる。
【0107】
(比較例2の太陽電池の製造方法)
以下では、
図10A~
図10Bを参照して、比較例2の太陽電池の製造方法における電極層27Y,37Yの製造プロセスについて主に説明する。比較例2の電極層27Y,37Yの製造プロセスでは、コンタクト電極層51Y,52Yを形成し、その後、コンタクト電極層51Y,52Yをマスクとして、電極層27Y,37Y、すなわち金属電極層29Y,39Yおよび透明電極層28Y,38Y、の同時パターニングを行う。
【0108】
図10Aは、比較例2に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程、金属電極層材料膜形成工程およびコンタクト電極層形成工程を示す図であり、
図10Bは、比較例2に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程、すなわち透明電極層形成工程および金属電極層形成工程を示す図である。
図10A~
図10Bでは、半導体基板11の裏面側を示し、半導体基板11の表面側を省略する。
【0109】
まず、
図10Aに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って一連の透明電極層材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。次に、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法を用いて、透明電極層材料膜28Z上に、すなわち第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35に跨って一連の金属電極層材料膜29Zを形成する(金属電極層材料膜形成工程)。
【0110】
次に、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第1導電型半導体層25上に、すなわち第1領域7に、第1コンタクト電極層51Yを形成する。また、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第2導電型半導体層35上に、すなわち第2領域8に、第2コンタクト電極層52Yを形成する(コンタクト電極層形成工程)。なお、第1コンタクト電極層51Yと第2コンタクト電極層52Yとは、互いに離間するように形成される。
【0111】
例えば、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法を用いて、Ag粒子、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料、すなわちAgペースト材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1コンタクト電極層51Yおよび第2コンタクト電極層52Yを形成する。
【0112】
次に、
図10Bに示すように、第1コンタクト電極層51Yおよび第2コンタクト電極層52Yをマスクとするエッチング法を用いて、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zを同時にパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28Yおよび第2透明電極層38Y、および、互いに分離された第1金属電極層29Yおよび第2金属電極層39Yを形成する(透明電極層形成工程、金属電極層形成工程)。これにより、第1電極層27Yおよび第2電極層37Yが形成される。
【0113】
金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zの同時エッチングのエッチング溶液としては、過硫酸アンモニウム(過硫安)等の酸化剤と塩酸(HCl)との混合溶液が挙げられる。
【0114】
本願発明者(ら)の知見によれば、この比較例2の太陽電池1Yの製造方法でも、太陽電池1Xの性能が低下してしまうことがある。これは以下のように考察される。
【0115】
第一に、比較例1と同様に、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zのウエットエッチングの際に、エッチング溶液がAgペーストからなるコンタクト電極層51Y,52Yに浸入する。その後、アニールまたは使用環境下において加熱されると、コンタクト電極層51Y,52Yに浸入したエッチング溶液が、Cuからなる金属電極層29Y,39Yおよび透明電極層28Y,38Yを溶かす。すると、Cuが、何らかの要因により半導体層25,23,35,33を介して(例えば局所的な欠陥等を介して)、半導体基板11に拡散する。これにより、半導体基板11にダメージが生じ、太陽電池1Yの性能が低下してしまうことが考えられる(信頼性)。
【0116】
第二に、比較例1と同様に、金属電極層材料膜29Zおよび透明電極層材料膜28Zのエッチング溶液として酸化剤と塩酸との混合溶液が用いられるが、このエッチング溶液において、酸化剤の還元反応により塩酸から塩素が生成される。すると、この塩素によりAgペーストからなるコンタクト電極層51Y,52Yが塩化銀に変性される。これにより、配線部材に対するコンタクト電極層51Y,52Yのコンタクト性が低下し、太陽電池1Yの性能が低下してしまうことが考えられる(コンタクト性)。
【0117】
この点に関し、本願発明者(ら)は、酸化剤と塩酸との混合溶液を用いる必要がある、Cuからなる金属電極層のエッチングを行った後に、Agからなるコンタクト電極層を形成し、その後、塩酸のみを用いて透明電極層のエッチングを行うことを考案する。
【0118】
(第2実施形態の太陽電池の製造方法)
以下では、
図8A~
図8Gを参照して、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。
図8Aは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、
図8Bは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程および金属電極層材料膜形成工程(電極層材料膜形成工程)を示す図である。また、
図8Cは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層形成工程を示す図であり、
図8Dは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図であり、
図8Eは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における絶縁層除去工程を示す図である。また、
図8Fは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるコンタクト電極層形成工程を示す図であり、
図8Gは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程(電極層形成工程)を示す図である。
図8A~
図8Gでも、半導体基板11の裏面側を示し、半導体基板11の表面側を省略する。
【0119】
まず、
図8Aに示すように、上述同様に、半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。次に、上述同様に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。なお、この半導体層形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい(図示省略)。
【0120】
次に、
図8Bに示すように、上述同様に、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って一連の透明電極層材料膜28Zを形成する(透明電極層材料膜形成工程)。透明電極層材料膜28Zの形成方法としては、例えばCVD法またはPVD法等が用いられる。
【0121】
次に、上述同様に、透明電極層材料膜28Z上に、すなわち第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35に跨って一連の金属電極層材料膜29Z(例えばCu)を形成する(金属電極層材料膜形成工程)。金属電極層材料膜29Zの形成方法としては、例えばスパッタリング等のPVD法、またはめっき法が用いられる。
【0122】
次に、
図8Cに示すように、上述同様に、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第1導電型半導体層25上に、すなわち第1領域7に、第1絶縁層41Aを形成する。また、透明電極層材料膜28Zおよび金属電極層材料膜29Zを介して第2導電型半導体層35上に、すなわち第2領域8に、第2絶縁層42Aを形成する(絶縁層形成工程)。なお、第1絶縁層41Aと第2絶縁層42Aとは、互いに離間するように形成される。
【0123】
第1絶縁層41Aおよび第2絶縁層42Aの形成方法としては、PVD法、CVD法、スクリーン印刷法、インクジェット法、グラビアコーティング法、またはディスペンサー法等が挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法を用いて、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1絶縁層41Aおよび第2絶縁層42Aを形成するとよい。
【0124】
次に、
図8Dに示すように、第1絶縁層41Aおよび第2絶縁層42Aをマスクとするエッチング法を用いて、第1絶縁層41Aと第2絶縁層42Aとの間における金属電極層材料膜29Zの露出部分を除去することにより、第1領域7にパターン化された第1金属電極層29Aを形成し、第2領域8にパターン化された第2金属電極層39Aを形成する(金属電極層形成工程:電極層形成工程)。
【0125】
金属電極層材料膜29Zのエッチングのエッチング溶液としては、過硫酸アンモニウム(過硫安)等の酸化剤と塩酸(HCl)との混合溶液が挙げられる。このとき、Agからなるコンタクト電極層が形成されていないため、コンタクト電極層にエッチング溶液が含まれることがない。また、コンタクト電極層が変性することがない。
【0126】
次に、
図8Eに示すように、第1絶縁層41Aおよび第2絶縁層42Aを除去する。除去溶液としては、アセトンなどの有機溶剤または水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ溶液が挙げられる。
【0127】
次に、
図8Fに示すように、第1絶縁層41A上に第1コンタクト電極層51Aを形成し、第2絶縁層42A上に第2コンタクト電極層52Aを形成する(コンタクト電極層形成工程)。
【0128】
第1コンタクト電極層51Aおよび第2コンタクト電極層52Aの形成方法としては、スクリーン印刷またはグラビア印刷のようなプレス印刷、またはインクジェット印刷のような吐出印刷等のパターン印刷法が挙げられる。パターン印刷法では、Ag粒子、樹脂材料および溶媒を含む印刷材料、すなわちAgペースト材料を印刷して焼成(硬化)することにより、第1コンタクト電極層51Aおよび第2コンタクト電極層52Aを形成する。
【0129】
次に、
図8Gに示すように、第1コンタクト電極層51Aおよび第1金属電極層29A、および第2コンタクト電極層52Aおよび第2金属電極層39Aをマスクとするエッチング法を用いて、第1金属電極層29Aと第2金属電極層39Aとの間における透明電極層材料膜28Zの露出部分を除去することにより、第1領域7にパターン化された第1透明電極層28Aを形成し、第2領域8にパターン化された第2透明電極層38Aを形成する(透明電極層形成工程:電極層形成工程)。これにより、第1電極層27Aおよび第2電極層37Aが形成される。
【0130】
透明電極層材料膜28Zのエッチング溶液としては、塩酸(HCl)が挙げられる。このとき、酸化剤と塩酸との混合溶液が用いられないため、Cuからなる金属電極層29A,39Aを溶かすことがなく、Cuが、何らかの要因により半導体層25,23,35,33を介して(例えば局所的な欠陥等を介して)、半導体基板11に拡散することがない。そのため、半導体基板11にダメージが生じることがない。また、コンタクト電極層51A,52Aが変性することがない。
【0131】
その後、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を形成する(図示省略)。以上の工程により、
図6および
図7に示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1Aが得られる。
【0132】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池の製造方法でも、金属電極層29A,39Aの材料として、比較的に高価な公知のAgペーストに代えて、比較的に安価な金属、例えばCu(例えば、スパッタリング等のPVD法またはめっき法を用いて製膜後、ウエットエッチング)を用いる。これにより、太陽電池1Aの低コスト化が可能である。
【0133】
更に、本実施形態の太陽電池の製造方法でも、酸化剤と塩酸との混合溶液を用いる必要がある、Cuからなる金属電極層29A,39Aのエッチングを行った後に、Agからなるコンタクト電極層51A,52Aを形成し、その後、塩酸のみを用いて透明電極層28A,38Aのエッチングを行う。これにより、以下に詳説するように、太陽電池1Aの性能の低下を抑制することができる。
【0134】
第一に、金属電極層29A,39Aのウエットエッチングのための酸化剤と塩酸との混合溶液に、Agペーストからなるコンタクト電極層51A,52Aが触れることがない。その結果、上述した比較例2のように、Agペーストからなるコンタクト電極層51A,52Aに浸入するエッチング溶液に起因する、Cuの半導体基板11への拡散がない。これにより、Cuに起因する半導体基板11のダメージが生じず、これに起因する太陽電池1Aの性能の低下を抑制することができる(信頼性)。
【0135】
第二に、Agからなるコンタクト電極層51A,52Aが、酸化剤と塩酸との混合溶液に触れることがなく、変性することがない。これにより、Agからなるコンタクト電極層51A,52Aの変性に起因する、配線部材に対するコンタクト電極層51A,52Aのコンタクト性の低下がなく、これに起因する太陽電池1Aの性能の低下を抑制することができる(コンタクト性)。
【0136】
このように、本実施形態の太陽電池の製造方法でも、太陽電池の低コスト化を図っても、太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、結晶シリコン系材料を用いた太陽電池1,1Aの製造方法について例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、ガリウムヒ素(GaAs)等の種々の材料を用いた太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0138】
また、上述した実施形態では、ヘテロ接合型の太陽電池1,1Aの製造方法について例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
1,1A,1X,1Y 太陽電池
7 第1領域
8 第2領域
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
15 光学調整層
25 第1導電型半導体層
27,27A,27X,27Y 第1電極層
28,28A,28X,28Y 第1透明電極層
28Z 透明電極層材料膜
29,29A,29X,29Y 第1金属電極層
29Z 金属電極層材料膜
35 第2導電型半導体層
37,37A,37X,37Y 第2電極層
38,38A,38X,38Y 第2透明電極層
39,39,39X,39Y 第2金属電極層
41,41A,41X 第1絶縁層
41a 第1非絶縁領域
42,42A,42X 第2絶縁層
42a 第2非絶縁領域
51,51A,51X,51Y 第1コンタクト電極
51A,51Y 第1コンタクト電極層
52,52A,52X,52Y 第2コンタクト電極
52A,52Y 第2コンタクト電極層
91,91A 第1配線部材
92,92A 第2配線部材
X1 第1直線
X2 第2直線