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▶ イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】抗LAG-3抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241024BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241024BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 121
A61P1/00
A61P17/00
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020535990
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2018124315
(87)【国際公開番号】W WO2019129137
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】201711449486.7
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811561512.X
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、シャオニウ
(72)【発明者】
【氏名】フ、ホアチン
(72)【発明者】
【氏名】ツン、アンディー
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンジャン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、シャオリン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/198741(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/062888(WO,A1)
【文献】特表2012-500006(JP,A)
【文献】特表2016-531849(JP,A)
【文献】国際公開第2017/106129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、LAG-3と結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
前記重鎖可変領域は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、
前記軽鎖可変領域は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(i)配列番号30で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は
(ii)配列番号30で表されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる、重鎖を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(i)配列番号34で表されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、又は
(ii)配列番号34で表されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる軽鎖を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号30で表されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる重鎖、及び
配列番号34で表されるアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる軽鎖を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
IgG4形態の抗体又はその抗原結合断片であり且つ/又はκ軽鎖定常領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記κ軽鎖定常領域がヒトκ軽鎖定常領域である、請求項5に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体がヒト抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、(Fab’)断片、ダイアボディ(dAb)及び線形抗体から選択される抗体断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
二重特異性抗体又は多重特異性抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記二重特異性抗体はLAG-3及びPD-1と結合するか、LAG-3及びPD-L1と結合するか、又はLAG-3及びPD-L2と結合し、又は、前記多重特異性抗体は、LAG-3に対する第1結合特異性と、PD-1、TIM-3、CEACAM-1、CEACAM-5、PD-L1及びPD-L2から選択される1種以上の分子に対する第2及び第3結合特異性とを含む、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含み、且つ、発現ベクターである、ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸又は請求項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片の製造方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸の発現に適する条件において、請求項14に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、他の物質とを含む、免疫複合体。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項16に記載の免疫複合体と、医薬品添加物とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項16に記載の免疫複合体と、他の治療剤と、医薬品添加物とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項16に記載の免疫複合体又は請求項17もしくは18に記載の医薬組成物を含む、対象又は個体における腫瘍又は感染性疾患の治療用組成物であって、前記腫瘍はLAG-3を発現するがんであり、前記感染性疾患は慢性感染である、組成物。
【請求項20】
前記腫瘍が、消化管がん又は皮膚がんである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記腫瘍が結腸がんである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
1以上の他の療法と組み合わせて使用するための、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記療法が治療方式又は他の治療剤の使用を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記治療剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体である、請求項18または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗PD-1抗体がヒト化された抗ヒトPD-1抗体であり、前記抗PD-L1抗体がヒト化された抗ヒトPD-L1抗体であり、前記抗PD-L2抗体がヒト化された抗ヒトPD-L2抗体である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗PD-L1抗体が、
(i)配列番号57に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR)、及
(ii)配列番号58に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
前記抗PD-L1抗体が重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(i)前記VHが、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記HCDR1は配列番号51のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記HCDR2が配列番号52のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記HCDR3が配列番号53のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、且つ、
(ii)前記VLが、相補性決定領域(CDR)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記LCDR1は配列番号54のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記LCDR2が配列番号55のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記LCDR3が配列番号56のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項28】
前記抗PD-L1抗体が、
(i)配列番号57のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、
(ii)配列番号58のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
を含む、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項29】
対象又は個体における腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療用薬物の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項16に記載の免疫複合体又は請求項17もしくは18に記載の医薬組成物の有効量の使用であって、前記腫瘍はLAG-3を発現するがんであり、前記感染性疾患は慢性感染である、使用。
【請求項30】
対象又は個体における腫瘍又は感染性疾患の治療用薬物の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又は請求項16に記載の免疫複合体又は請求項17もしくは18に記載の医薬組成物の有効量と、PD-1軸結合拮抗剤又は該PD-1軸結合拮抗剤を含む活性化剤の使用であって、前記PD-1軸結合拮抗剤は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体であり、前記腫瘍はLAG-3及びPD-L1を発現するがんであり、前記感染性疾患は慢性感染である、使用。
【請求項31】
前記腫瘍が、消化管がん又は皮膚がんである、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
前記腫瘍が結腸がんである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記抗PD-1抗体がヒト化された抗ヒトPD-1抗体であり、前記抗PD-L1抗体がヒト化された抗ヒトPD-L1抗体であり、前記抗PD-L2抗体がヒト化された抗ヒトPD-L2抗体である、請求項30に記載の使用。
【請求項34】
前記抗PD-L1抗体が、
(i)配列番号57に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR)、及
(ii)配列番号58に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項30又は33に記載の使用。
【請求項35】
前記抗PD-L1抗体が重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(i)前記VHが、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記HCDR1は配列番号51のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記HCDR2が配列番号52のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記HCDR3が配列番号53のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、且つ、
(ii)前記VLが、相補性決定領域(CDR)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記LCDR1は配列番号54のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記LCDR2が配列番号55のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなり、前記LCDR3が配列番号56のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる、請求項30又は33に記載の使用。
【請求項36】
前記抗PD-L1抗体が、
(i)配列番号57のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、
(ii)配列番号58のアミノ酸配列を含むかもしくは該アミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
を含む、請求項30又は33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LAG-3と特異的に結合する新規な抗体、抗体断片、前記抗体又は抗体断片を含有する組成物に関する。また、本発明は、前記抗体又はその抗体断片をコードする核酸、前記核酸を含む宿主細胞、関連の使用に関する。また、本発明は、これらの抗体及び抗体断片の治療・診断のための使用に関する。特に、本発明は、これらの抗体及び抗体断片と、他の療法、例えば、治療方式又は抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などの治療剤とによる併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、CD223とも呼ばれ、LAG3遺伝子が人体においてコードするI型膜貫通タンパク質である。LAG-3の分子特性、生物学的機能については、例えば、Sierro et al.,Expert Opin Ther Targets(2011)15(1):91-101に記載されるとおり、すでに十分な特性評価と説明が行われている。LAG-3は1種のCD4様タンパク質であり、T細胞(特に、活性化されたT細胞)、ナチュラルキラー細胞、B細胞、形質細胞様樹状細胞の表面に発現されている。LAG-3が負の共刺激受容体、即ち抑制性受容体であることが既に判明している。
【0003】
LAG-3はMHCクラスII分子と結合し(Baixeras et al.(1992)J.Exp.Med.176:327-337;Huard et al.(1996)Eur.J.Immunol,26:1180-1186)、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞の表面に分子ファミリーを高レベルに構成的発現する。LAG-3の機能はMHCクラスII分子との結合とその細胞質ドメインによるシグナル伝達に依存している。なお、LAG-3とMHCクラスII分子の直接的な結合はCD4+ Tリンパ球の抗原依存性刺激の下方調節において役割を果たすことが報告されている(Huard et al.(1994)Eur.J.Immunol.24:3216-3221)。さらに、LAG3とMHCクラスII分子の間の相互作用は樹状細胞の機能調節において役割を果たすと考えられる(Andreae et al.,J Immunol 168:3874-3880,2002)。最近の前臨床研究において、CD8 T-細胞の疲弊に対するLAG-3の役割が記録されている(Blackburn et al.,Nat Immunol 10:29-37,2009)。
【0004】
関連の研究により、慢性ウイルス感染により疲弊したCD8+T細胞が複数種の抑制性受容体(例えば、PD-1、CD160、2B4)を発現することが判明している。LCMV感染後にLAG-3が高レベルで発現され、PD-1/PD-L1経路の遮断とLAG-3の遮断により慢性感染マウスにおけるウイルス量が顕著に低減することが示されている(Blackburn et al.,Nat Immunol(2009)10:29-37)。さらに、PD-1/PD-L1経路の遮断とLAG-3遮断剤による共同抑制により、抗腫瘍効果がもたらされることも示されている(Jing et al.,Journal for ImmunoTherapy of Cancer(2015)3:2)。
【0005】
LAG-3が上記の重要な役割を有することから、その活性を調節する新規な抗LAG-3抗体、特にヒト化抗体又はヒト抗体を開発する必要がある。かかる抗体は、腫瘍及び感染などの他の疾患の治療により効果的に利用できる。さらに、他の療法(例えば、抗PD-1又抗体は抗PD-L1抗体などの治療剤)と併用して腫瘍、特に転移性腫瘍もしくは難治性腫瘍の治療、又は慢性感染などの感染の治療に用いる新規な抗LAG-3抗体を得ることも望まれる。また、生体内における抗体の生理活性を研究するために、マウスモデルに用いられる抗マウスLAG-3抗体が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、LAG-3と結合する抗体分子、例えば、完全ヒト抗体分子又はヒト化抗体分子を開示する。さらに、前記抗体又はその抗体断片をコードする核酸、及び、抗体分子を生成する発現ベクター、宿主細胞と方法を提供する。さらに、抗LAG-3抗体分子を含む免疫複合体、多重特異性抗体分子又は二重特異性抗体分子、及び医薬組成物を提供する。本発明に係る抗LAG-3抗体分子は、単独で、又は他の療法、例えば、治療剤(例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体)又は治療方式と併用して、腫瘍疾患及び感染性疾患の治療、予防及び/又は診断に用いることができる。さらに、本発明は、LAG-3を検出する組成物と方法、及び抗LAG-3抗体分子による複数種の疾患(腫瘍及び/又は感染性疾患を含む)の治療方法を開示する。
【0007】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片はLAG-3と(特異的に)結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片はヒトLAG-3又はマウスLAG-3と(特異的に)結合する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)と高い親和性で結合し、例えば、約100nM未満、好ましくは約50nM以下、より好ましくは約20nM以下、さらに好ましくは約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下又は約2nM以下、最も好ましくは約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下又は約0.7nM以下の平衡解離定数(K)でLAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、0.1-20nM、好ましくは0.5-20nM、より好ましくは0.5-10nM、0.5-8nM、0.5-5nM、最も好ましくは0.5-1nM、0.5-0.8nM、0.5-0.7nM、0.6-0.7nMのKでLAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、LAG-3はヒトLAG-3である。いくつかの実施形態において、LAG-3はマウスLAG-3である。いくつかの実施形態において、抗体の結合親和性が光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性計測)の測定手法により測定される。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、例えば、約3.3nM、約3nM以下、約2nM以下、約1.5nM以下、約1.4nM以下、約1.3nM以下、約1.2nM以下、約1.1nM以下、約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下、約0.7nM以下、約0.6nM以下又は約0.5nM以下のEC50でヒトLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、ヒトLAG-3を発現する細胞は、ヒトLAG-3を発現する293細胞(例えば、HEK293細胞)である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、例えば、約15000nM以下、約14000nM以下又は約13000nM以下のEC50で、マウスLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、約50nM以下のEC50で、例えば、約40-50nMのEC50、約40-45nMのEC50又は約42nMのEC50で、マウスLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、マウスLAG-3を発現する細胞は、マウスLAG-3を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、例えば、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下又は約5nM以下のIC50で、好ましくは約1-6nM、約1-5nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約5.1nM、約5.2nM、約5.3nM、約5.4nM、約5.5nM、約5.6nM、約5.7nM、約5.8nM、約5.9nM又は6nMのIC50でLAG-3の関連の活性を抑制する。いくつかの実施形態において、LAG-3の関連の活性は、MHCクラスII分子とLAG-3の結合である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下又は5nM以下のIC50で、好ましくは約1-6nM、約1-5nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約5.1nM、約5.2nM、約5.3nM、約5.4nM、約5.5nM、約5.6nM、約5.7nM、約5.8nM、約5.9nM又は6nMのIC50でLAG-3と、MHCクラスII分子を発現する細胞におけるMHCクラスII分子との結合を抑制する。いくつかの実施形態において、MHCクラスII分子はHLA-DRである。いくつかの実施形態において、前記細胞はCHO細胞である。いくつかの実施形態において、LAG-3の関連の活性に対する本発明の前記抗体又はその断片の抑制がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、例えば、約35pM以下、約30pMnM以下、約25pM以下、約20pM以下、約15pM以下、約14pM以下又は約13pM以下のEC50で、好ましくは約1-20pM、約5-20pM、約5-15pM、約10-15pM、約11-13pM、約10pM、約11pM、約12pM又は約13pMのEC50で、活性化されたCD4+及び/又はCD8+ T細胞の表面における内因性LAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、活性化された前記CD4+ T細胞は、活性化されたヒトCD4+ T細胞である。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、フローサイトメトリーがAccuri C6システムにおいて行われる。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、例えば、CD4+ Tリンパ球の抗原依存性刺激の増加、T細胞の増殖増加、活性化抗原(例えば、CD25)の発現増加、サイトカイン(例えば、インターフェロン-インターフェロンの増加、サイトカイン、インターロイキン-2(IL-2)又はインターロイキン-4(IL-4))の発現増加、ケモカイン(例えば、CCL3、CCL4又はCCL5)の発現増加、Treg細胞の阻害活性低減、T細胞のホメオスタシス向上、腫瘍浸潤リンパ球の増加、又はがん細胞の免疫回避低減の1種以上が生じるように、LAG-3の1種以上の活性を抑制する。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、抗体依存性細胞が介在する細胞傷害(ADCC)を誘発できる。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、単独で、又は他の療法(例えば、治療方式及び/又は治療剤)と組み合わせて腫瘍(例えば、がん)又は感染性疾患(例えば、慢性感染)を効果的に治療できる。好ましくは、本発明の抗LAG-3抗体は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体と併用して、腫瘍、特に転移性腫瘍又は難治性腫瘍を治療できる。いくつかの実施形態において、前記腫瘍はがんである。いくつかの実施形態において、前記腫瘍は消化器がんである。いくつかの実施形態において、前記がんは結腸がんである。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片の重鎖及び/又は軽鎖は、シグナルペプチド配列、例えば、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号48)をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、抗LAG-3抗体のアミノ酸配列の変異体、及び、上記の任意の抗LAG-3抗体又はその断片と同じエピトープを結合する抗体をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、LAG-3又はその断片と結合する抗体又は抗体断片(好ましくは、抗原結合断片)を提供し、前記抗体又は抗体断片はLAG-3内のエピトープと結合する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD又はIgEの形態の抗体である。いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、IgEの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域、より具体的には、IgG1、IgG2又はIgG4の重鎖定常領域、例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4の重鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG4の重鎖定常領域である。1つの実施形態において、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG4の重鎖定常領域である。別の実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、例えば、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域、好ましくはκ(例えば、ヒトκ)軽鎖定常領域を有する。
【0020】
別の実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、IgG4(例えば、ヒトIgG4)の重鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG4は、EU番号の位置228における置換(例えば、SerからProへの置換)を含む。別の実施形態において、ヒトIgG4は、第114-115位(EU番号)においてAAに突然変異されている(Armour KL1,Clark MR,Hadley AG,Williamson LM,Eur J Immunol.1999 Aug;29(8):2613-24,Recombinant human IgG molecules lacking Fcgamma receptor I binding and monocyte triggering activities)。1つの実施形態において、重鎖定常領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%以上の同一性を有する配列を含み、又は前記配列より構成される。
【0021】
別の実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、κ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ軽鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、軽鎖定常領域は、配列番号47のアミノ酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%以上の同一性を有する配列を含み、又は前記配列より構成される。
【0022】
別の実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、IgG4の重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG4の重鎖定常領域)、κ軽鎖定常領域(例えば、ヒトκ軽鎖定常領域)を含む。1つの実施形態において、定常領域は突然変異されているIgG4、例えば、突然変異されているヒトIgG4である(例えば、EU番号の位置228における突然変異(例えば、S228P突然変異)を有する)。いくつかの実施形態において、ヒトIgG4の重鎖定常領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%以上の同一性を有する配列を含み、又は前記配列より構成される。1つの実施形態において、ヒトκ軽鎖定常領域は、配列番号47のアミノ酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%以上の同一性を有する配列を含み、又は前記配列より構成される。
【0023】
1つの実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、単離されたもの、又は組換えにより得たものである。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体は、モノクローナル抗体又は単一特異性を有する抗体である。また、抗LAG-3抗体分子は、ヒト化された抗体分子、キメラ抗体分子、ラクダ科(camelid)由来の抗体分子、サメ由来の抗体分子又はインビトロにおいて生成された抗体分子であってもよい。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体はヒト化されたものである。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体はヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトに共有するフレームワーク配列である。1つの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、その抗体断片、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)又は(Fab’)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)又は線形抗体から選択される抗体断片をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、二重特異性抗体分子の形態、又は多重特異性抗体分子の形態である。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、LAG-3に対する第1結合特異性と、PD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1及び/又はCEACAM-5)、PD-L1又はPD-L2に対する第2結合特異性とを有する。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子はLAG-3及びPD-1と結合する。別の実施形態において、二重特異性抗体分子はLAG-3及びPD-L1と結合する。別の実施形態において、二重特異性抗体分子はLAG-3及びPD-L2と結合する。多重特異性抗体分子において、前記分子の任意の組み合わせを生成できる。多重特異性抗体分子、例えば、三重特異性抗体分子は、LAG-3に対する第1結合特異性と、PD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1又はCEACAM-5)、PD-L1又はPD-L2の1種以上の分子に対する第2結合特異性及び第3結合特異性とを含む。
【0026】
他の実施形態において、抗LAG-3抗体分子はPD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1又はCEACAM-5)、PD-L1又はPD-L2の1種以上を含む二重特異性分子と組み合わせて使用される。
【0027】
本発明の別の態様において、上記の任意の抗LAG-3抗体又はその断片をコードする核酸を提供する。1つの実施形態において、前記核酸を含むベクターを提供する。1つの実施形態において、前記ベクターは発現ベクターである。1つの実施形態において、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。1つの実施形態において、前記宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、前記宿主細胞は、酵母細胞、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)又は抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適する他の細胞から選択される。別の実施形態において、前記宿主細胞は原核細胞であり、例えば、大腸菌細胞である。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、抗LAG-3抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)の製造方法を提供する。前記方法は、前記抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)をコードする核酸の発現に適する条件において前記宿主細胞を培養することを含み、好ましくは、前記抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)を単離することをさらに含む。1つの実施形態において、前記方法は、前記宿主細胞から抗LAG-3抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)を回収することをさらに含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る任意の抗LAG-3抗体と、細胞傷害剤又は標識などの他の物質とを含む免疫複合体を提供する。いくつかの実施形態において、前記免疫複合体は、腫瘍(例えば、がん)又は感染性疾患の予防又は治療に用いられる。好ましくは、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。好ましくは、前記感染性疾患は、慢性感染である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る任意の抗LAG-3抗体もしくはその断片(好ましくは、その抗原結合断片)又はその免疫複合体を含む組成物を提供する。好ましくは、前記組成物は医薬組成物である。1つの実施形態において、前記組成物は、医薬品添加物をさらに含む。1つの実施形態において、前記組成物、例えば、医薬組成物は、本発明の抗LAG-3抗体もしくはその断片又はその免疫複合体と、1種以上の他の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症剤又は免疫調節剤(例えば、共刺激分子の作動剤もしくは免疫チェックポイント分子の抑制剤)、好ましくは抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体)の組み合わせとを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、腫瘍(例えば、がん)又は感染の予防又は治療に用いられる。好ましくは、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。好ましくは、前記感染性疾患は、慢性感染である。
【0032】
別の態様において、本発明は、対象又は個体における腫瘍(例えば、がん)又は感染性疾患の予防又は治療の方法に関する。前記方法は、有効量の本発明に係る任意の抗LAG-3抗体もしくはその断片、医薬組成物又は免疫複合体を前記対象に投与することを含む。1つの実施形態において、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。1つの実施形態において、前記感染性疾患は、慢性感染である。本発明の別の態様において、対象における腫瘍(例えば、がん)又は感染の治療薬物を製造するための、本発明に係る任意の抗LAG-3抗体又はその断片の用途に関する。1つの実施形態において、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。1つの実施形態において、前記感染性疾患は、慢性感染である。
【0033】
本発明の別の態様において、対象又は個体における腫瘍(例えば、がん)又は感染性疾患の予防又は治療の方法に関する。前記方法は、有効量の本発明に係る任意の抗LAG-3抗体もしくはその断片、医薬組成物又は免疫複合体と、PD-1軸結合拮抗剤又は前記PD-1軸結合拮抗剤を含む薬物もしくは活性化剤とを併用して対象に投与することを含む。1つの実施形態において、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。1つの実施形態において、前記感染性疾患は、慢性感染である。本発明の別の態様において、対象における腫瘍(例えば、がん)又は感染性疾患の治療薬物を製造するための、本発明に係る任意の抗LAG-3抗体もしくはその断片とPD-1軸結合拮抗剤の組み合わせの用途に関する。1つの実施形態において、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんである。1つの実施形態において、前記感染性疾患は、慢性感染である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記PD-1軸結合拮抗剤は、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体を含む。
【0035】
さらに、いくつかの実施形態において、本発明に係る予防又は治療方法は、対象又は個体に1種以上の療法(例えば、治療方式及び/又は他の治療剤)を適用することを含む。いくつかの実施形態において、前記治療方式は、手術治療及び/又は放射線治療を含む。いくつかの実施形態において、前記他の治療剤は、化学療法剤、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症剤又は免疫調節剤(例えば、共刺激分子の作動剤又は免疫チェックポイント分子の抑制剤)から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、対象又は個体は、ヒト以外の動物である。いくつかの実施形態において、対象又は個体は、哺乳類であり、好ましくは、ヒトである。
【0037】
本発明の別の態様において、サンプル中のLAG-3の検出方法に関する。前記方法は、(a)サンプルを本発明に係る任意の抗LAG-3抗体又はその断片と接触させることと、(b)抗LAG-3抗体又はその断片とLAG-3における複合物の形成を検出することとを含む。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体は、検出可能に標識される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る任意の抗LAG-3抗体又はその断片を含む試薬キット又は製品に関する。いくつかの実施形態において、前記試薬キット又は前記製品は、本発明に係る抗LAG-3抗体又はその断片を含み、好ましくは医薬品添加物をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記試薬キット又は前記製品は、薬物の投与による腫瘍又は感染の治療に関する取扱説明書をさらに含む。
【0039】
本発明は、本明細書に記載のいずれの実施形態の任意の組み合わせをさらに含む。本発明に係る任意の実施形態又はその任意の組み合わせは、本発明に係る全ての抗LAG-3抗体又はその断片、方法及び用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【0040】

図1図1は、フローサイトメトリーにより検出された細胞表面のhLAG-3に対する親抗体の結合能を示す。
図2図2は、フローサイトメトリーにより検出された細胞表面のhLAG-3に対する親和性が成熟している抗体の結合能を示す。
図3図3は、フローサイトメトリーにより検出されたヒトMHC II(HLA-DR)とLAG-3の相互作用に対する抗LAG-3抗体の遮断を示す。
図4図4は、フローサイトメトリーにより検出された活性化されたヒトCD4+ T細胞に対する抗LAG-3抗体の結合能を示す。
図5図5は、フローサイトメトリーにより検出された細胞表面のマウスLAG-3に対する抗LAG-3抗体の結合能を示す。
図6図6は、CT26移植腫瘍モデルにおける抗LAG-3抗体と抗PD-1抗体の併用の腫瘍に対する抑制効果を示す。
図7図7は、NOGモデルにおける抗LAG-3抗体と抗PD-1抗体又はPD-L1との併用の腫瘍に対する抑制効果を示す。
図8図8は、IL-2標準曲線を示す。
図9図9は、活性化されたヒトCD4+ T細胞によるIL-2の分泌に対する抗体又は抗体の組み合わせの影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
略号
別途説明が行われる場合を除き、本明細書に出現する略号は以下の意味を有する。
以下の略号を使用する。
ADCC 抗体依存性細胞が介在する細胞毒性
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR 免疫グロブリンの可変領域における相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
EC50 50%効果又は結合を示すときの濃度
平衡解離定数
ELISA 酵素結合免疫吸着測定
FR 抗体フレームワーク領域
IC50 50%抑制を示すときの濃度
Ig 免疫グロブリン
Kabat Elvin A.Kabat((1991)Sequences of Proteins of Immun ological Interest,5th edition,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により作成された免疫グロブリン比較・番号付けシステム
mAb又はMab又はMAb モノクローナル抗体
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
IFN インターフェロン
VL 軽鎖可変領域
VH 重鎖可変領域
LC 軽鎖
HC 重鎖
HCDR 重鎖の相補性決定領域
LCDR 軽鎖の相補性決定領域
【0042】
定義
本発明の詳細な説明を行う前に、本明細書で説明されている特定の方法、方式又は試薬に変更がある可能性があるため、本発明はこれらに限定されるものではないことが理解されたい。なお、本発明で使用されている用語は特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれらによって限定されることは意図されず、特許請求の範囲によって限定される。別途定義が行われる場合を除き、本発明で使用されている技術用語又は科学用語はそのいずれも当業者の通常の理解と同じ意味を有する。
【0043】
本明細書で解釈のために以下の定義を使用する。しかも矛盾がなければ、単数形で使用される用語は複数の場合をも含む。逆の場合については同様である。なお、本発明で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を加えるものではない。
【0044】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0045】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合対象(例えば、抗原)の間における全ての非共有相互作用の和の強度を指す。別途説明が行われる場合を除き、本明細書で使用される用語「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1の相互作用の内部における結合親和性を表すものである。分子Xのその結合対象Yに対する親和性は、一般に平衡解離定数(K)で表すことができる。既存の技術として知られる方法や本明細書で説明されている方法を含む本分野の周知の方法により、親和性を計測できる。
【0046】
用語「リンパ球活性化遺伝子-3」又は「LAG-3」は、全てのアイソタイプ、哺乳類(例えば、ヒト)のLAG-3、ヒトLAG-3の生物種的相同体、LAG-3の少なくとも1つの共有するエピトープを含む類似体を含む。LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列は本分野の周知の内容であり、例えば、Triebel et al.,(1990)J.Exp.Med.171:1393-1405を参照できる。
【0047】
いくつかの実施形態において、用語「ヒトLAG-3」とは、例えば、Genbank登録番号NP_002277のヒトLAG-3の完全なアミノ酸配列などのヒト配列LAG-3を指す。いくつかの実施形態において、用語「マウスLAG-3」とは、例えば、Genbank登録番号NP_032505のマウスLAG-3の完全なアミノ酸配列などのマウス配列LAG-3を指す。既存の技術で、LAG-3はCD223などとも呼ばれる。ヒトLAG-3配列は、例えば、保存的な突然変異又は非保存的な領域における突然変異を有することで、Genbank登録番号NP_002277のヒトLAG-3とは異なるものであってもよく、当該LAG-3はGenbank登録番号NP_002277のヒトLAG-3とほぼ同じ生理機能を有する。例えば、ヒトLAG-3の生理機能はLAG-3の細胞外ドメインにエピトープを有し、それが本発明の抗体によって特異的に結合されることであり、又はヒトLAG-3の生理機能はMHCクラスII分子と結合することである。
【0048】
本発明で使用される用語「抗LAG-3抗体」、「抗LAG-3」、「LAG-3抗体」又は「LAG-3と結合する抗体」とは、十分な親和性でLAG-3タンパク質又はその断片と結合する抗体を指す。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体の非LAG-3タンパク質と結合する程度は、例えば、放射免疫測定(RIA)又は光干渉による生体測定法又はMSD測定により測定された結果、前記抗体のLAG-3と結合する程度の約10%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満、約50%未満、約60%未満、約70%未満、約80%未満、又は約90%以上未満である。
【0049】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」、「mAb」又は「Mab」とは、例えば、真核生物、原核生物又はファージクローンのシングルコピーもしくはクローンに由来する抗体を指し、その生成方法を意味しない。モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、CDRグラフトなどの合成技術、もしくは類似の技術、又は本分野で既知の他の技術の組み合わせにより生成できる。
【0050】
「天然抗体」とは、異なる構造を有しており天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体とは、約15万ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、二硫化物により化学結合された2本の同一の軽鎖と2本の同一の重鎖により構成される。N末端からC末端にかけて、各重鎖が1つの可変領域(VH)を有し、当該可変領域は可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる。それに続くのは3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)である。同様に、N末端からC末端にかけて、各軽鎖が1つの可変領域(VL)を有し、当該可変領域は可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる。それに続くのは1つの定常軽(CL)ドメインである。抗体軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列によって、カッパ(κ)とラムダ(λ)のいずれかのタイプに分類することができる。「天然配列のFc領域」は自然界に発見したFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1のFc領域(非AとAのアロタイプ)、天然配列のヒトIgG2のFc領域、天然配列のヒトIgG3のFc領域、天然配列のヒトIgG4のFc領域、天然に存在するその変異体を含む。
【0051】
「抗体断片」とは、完全抗体の一部を含み且つ完全抗体によって結合された抗原と結合する、完全抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の非限定的な例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価抗体もしくは二重特異性抗体もしくはその断片、ラクダ科由来の抗体、抗体断片により形成された二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体を含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、抗原(例えば、ヒトLAG-3)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。当該部分(本明細書でエピトープ決定基と呼ばれる)は一般に、アミノ酸側鎖もしくは糖側鎖又はこれらを構成する部分などの構成要素を含む。本分野で既知の方法又は本明細書で開示されている方法(例えば、結晶学的方法又は水素-重水素交換法)によりエピトープ決定基を限定することができる。抗体分子におけるエピトープ決定基と特異的に相互作用する少なくとも1つ以上の部分は一般にCDR内に位置する。一般に、エピトープは特定の三次元的構造特徴を有する。一般に、エピトープは特定の電荷上の特徴を有する。エピトープには、線形エピトープと立体配座エピトープがある。
【0053】
参照抗体と「同一の又は重複するエピトープと結合する抗体」とは、競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を遮断する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の当該抗体とその抗原の結合を遮断する。
【0054】
参照抗体に対してその抗原と競合的に結合する抗体とは、競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を遮断する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が競合測定において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の当該抗体とその抗原の結合を遮断する。1種の抗体が別の抗体と競合関係にあるかどうかを決定するためには様々な競合的結合測定を用いることができる。これらの測定の例としては、固相直接放射免疫測定又は間接放射免疫測定(RIA)、固相直接酵素免疫測定又は間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合測定(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 9:242-253)が挙げられる。
【0055】
参照抗体とその抗原の結合を抑制(例えば、競合的抑制)する抗体とは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の前記参照抗体とその抗原の結合を抑制する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の当該抗体とその抗原の結合を抑制する。抗体とその抗原の結合は親和性(例えば、平衡解離定数)として計測できる。親和性の測定方法は、本分野で既知の内容である。
【0056】
参照抗体と同じ又は類似の結合親和性及び/又は特異性を示す抗体とは、参照抗体の少なくとも50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の結合親和性及び/又は特異性を有する抗体を指す。これに関しては、本分野の既知の任意の結合親和性及び/又は特異性の測定方法で測定できる。
【0057】
「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」は、抗体可変ドメインでは、配列において超可変であり且つ構造上に形成された所定のループ(「超可変ループ」)及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合する役割を果たす。重鎖及び軽鎖のCDRは、通常、CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれ、N-末端から順次番号を付けられる。抗体の重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。1つの特定の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRにおけるアミノ酸配列の境界は、公知の各種の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1種又はその組み合わせにより正確に決定できる。前記割り当てシステムの例は、抗体の三次元的構造とCDRリングのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883,Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際的ImMunoGeneTics database(IMGT)(www.imgt.cines.fr/にて利用可能)、大量の晶体構造が利用されるアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0058】
例えば、CDRの決定方式によって、各CDRの残基はそれぞれ以下に記載のとおりである。
【表1-1】
【0059】
また、参照CDR配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか)と同じKabat番号位置を有することでCDRを決定することもできる。
【0060】
別途説明が行われる場合を除き、本発明で用語「CDR」又は「CDR配列」は、上記のいずれかの方式で決定されるCDR配列を含む。
【0061】
別途説明が行われる場合を除き、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域の残基及び軽鎖可変領域の残基を含む)が言及される場合は、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に基づく番号位置を指す。
【0062】
1つの実施形態において、Kabat規則により本発明の抗体のCDRの境界が決定され、又はIMGT規則、AbM規則、もしくはこれらの規則の組み合わせにより決定される。例えば、その配列は表1に示されるとおりである。
【0063】
ただし、異なる割り当てシステムから得られた同一抗体の可変領域のCDRの境界には、差異がある可能性があることを認識すべきである。即ち、異なる割り当てシステムで定義された同一抗体の可変領域のCDR配列には違いがある。したがって、本発明で定義された具体的なCDR配列により抗体が限定される場合、前記抗体の範囲には、可変領域配列が前記した具体的なCDR配列を含むが、異なる手段(例えば、異なる割り当てシステムのルール又は組み合わせ)が使用されることにより、かかるCDR境界が本発明で定義された具体的なCDR境界と異なるような抗体も含まれる。
【0064】
異なる特異性を有する(即ち、異なる抗原の異なる結合部位を対象とする)抗体は、(同一の割り当てシステムにおいて)異なるCDRを有する。しかしながら、抗体によってCDRに違いがあるものの、CDR内において抗原結合に直接関与するアミノ酸位置の数量が限定的である。Kabat、Chothia、AbM、Contact及びNorth方法のうちの少なくとも2種を用いて、最小重複領域を決定し、それによって抗原結合用の「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であってもよい。当業者にとって自明なように、抗体の構造及びタンパク質の折りたたみによって、CDR配列の残り部分の残基が特定され得る。したがって、本発明では、本出願に記載の任意のCDRの変異体も考えられる。例えば、1つのCDRの変異体では、最小結合単位のアミノ酸残基は一定に維持できるが、Kabat又はChothiaで定義される残りのCDR残基は保存的アミノ酸残基により置換されてもよい。
【0065】
本分野において主に、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5つのクラスの抗体が知られる。なお、これらの抗体のいくつかは、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgAのように、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けることができる。重鎖定常ドメインは、その対応する免疫グロブリンのクラスによって、それぞれα、δ、ε、γ、μと呼ばれる。
【0066】
「IgG形態の抗体」とは、抗体の重鎖定常領域がIgG形態を有することを指す。全ての同一のアイソタイプの抗体はその重鎖定常領域が同じであり、異なるアイソタイプの抗体において、その重鎖定常領域が異なる。例えば、IgG4形態の抗体とは、その重鎖定常領域のIgドメインがIgG4のIgドメインであることを指す。
【0067】
用語「PD-1軸結合拮抗剤」とは、PD-1軸結合対象の1種以上のその結合対象との相互作用を抑制することによって、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達によるT細胞機能障害を解消し、その結果として例えば、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン生成、標的細胞の殺傷)が回復又は増強されるという分子を指す。本明細書で使用されるPD-1軸結合拮抗剤は、PD-1結合拮抗剤(例えば、抗PD-1抗体)、PD-L1結合拮抗剤(例えば、抗PD-L1抗体)、PD-L2結合拮抗剤(例えば、抗PD-L2抗体)を含む。
【0068】
用語「PD-1結合拮抗剤」とは、PD-1と1種以上のその結合対象(例えば、PD-L1、PD-L2)の相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する分子を指す。いくつかの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は、PD-1と1種以上のその結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-1結合拮抗剤は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2の結合を抑制する。例えば、PD-1結合拮抗剤は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2の相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、他の分子を含む。1つの実施形態において、PD-1結合拮抗剤が、Tリンパ球に発現された細胞表面タンパク質が介在する又は細胞表面タンパク質を介して介在される負の共刺激信号を低減する(PD-1を介してシグナル伝達を介在する)ことによって、機能障害性T細胞が機能障害性を示さなくなる(例えば、抗原を認識するエフェクターへの応答が増強される)。いくつかの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は抗PD-1抗体である。具体的に1つの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は、世界特許WO2015/095423に開示されているMDX-1106(nivolumab)、MK-3475(pembrolizumab)、CT-011(pidilizumab)又はAMP-224である。具体的に1つの実施形態において、前記抗PD-1抗体は、世界特許WO2017/133540に開示されている「Antibody C」である。具体的に別の実施形態において、前記抗PD-1抗体は、世界特許WO2017/025016に開示されている「Antibody D」である。
【0069】
用語「PD-L1結合拮抗剤」とは、PD-L1と1種以上のその結合対象(例えば、PD-1、B7-1)との相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する分子を指す。いくつかの実施形態において、前記PD-L1結合拮抗剤は、PD-L1とその結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-L1結合拮抗剤は、PD-L1とPD-1及び/又はB7-1の結合を抑制する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合拮抗剤は、PD-L1と1種以上のその結合対象(例えば、PD-1、B7-1)の相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、他の分子を含む。1つの実施形態において、PD-L1結合拮抗剤が、Tリンパ球に発現された細胞表面タンパク質が介在する又は細胞表面タンパク質を介して介在される負の共刺激信号を低減する(PD-L1を介してシグナル伝達を介在する)ことによって、機能障害性T細胞が機能障害性を示さなくなる(例えば、抗原を認識するエフェクターへの応答が増強される)。いくつかの実施形態において、前記PD-L1結合拮抗剤は、抗PD-L1抗体である。1つの特定の態様において、前記抗PD-L1抗体は、世界特許WO2015/095423に開示されているYW243.55.S70、MDX-1105、MPDL3280A又はMEDI4736である。
【0070】
用語「PD-L2結合拮抗剤」とは、PD-L2と1種以上のその結合対象(例えば、PD-1)との相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する分子を指す。いくつかの実施形態において、前記PD-L2結合拮抗剤は、PD-L2と1種以上のその結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-L2結合拮抗剤は、PD-L2とPD-1の結合を抑制する。いくつかの実施形態において、前記PD-L2拮抗剤は、PD-L2と1種以上のその結合対象(例えば、PD-1)の相互作用によるシグナル伝達を低減、遮断、抑制、解消又は干渉する抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、他の分子を含む。1つの実施形態において、前記PD-L2結合拮抗剤が、Tリンパ球に発現された細胞表面タンパク質が介在する又は細胞表面タンパク質を介して介在される負の共刺激信号を低減する(PD-L2を介してシグナル伝達を介在する)ことによって、機能障害性T細胞が機能障害性を示さなくなる(例えば、抗原を認識するエフェクターへの応答が増強される)。いくつかの実施形態において、前記PD-L2結合拮抗剤はイムノアドヘシンである。
【0071】
「抗体依存性細胞が介在する細胞傷害」又は「ADCC」とは、一部の細胞傷害細胞(例えば、NK細胞、好中球、マクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)における分泌型免疫グロブリンと結合することによって、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原を携帯する標的細胞と特異的に結合して、細胞毒素で標的細胞を死滅させるという細胞傷害の形態を指す。ADCCを介在する細胞は主に、FcγRIIIだけを発現するNK細胞である。一方、単核細胞はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。Ravetch&Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991).p464の表3には、造血細胞におけるFcRの発現がまとめられている。目的分子のADCC活性を評価するために、例えば、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号又は同第6,737,056号(Presta)に記載のとおり、インビトロ的なADCC測定手法を採用できる。かかる測定手法が適用されるエフェクター細胞は、PBMC、NK細胞を含む。好ましくは/さらに、例えば、Clynes et al.,PNAS(USA)95:652-656(1998)に記載のとおり、動物モデルにおいて、インビボ的に目的分子のADCC活性を評価してもよい。
【0072】
本明細書で使用される用語「細胞傷害剤」又は「細胞傷害因子」とは、細胞機能を抑制又は阻止し且つ/又は細胞死又は破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤の例に関しては、世界特許WO2015/153513、WO2016/028672又はWO2015/138920の開示が参照される。
本発明で使用される用語「治療剤」は、腫瘍(例えば、がん)と感染(例えば、慢性感染)の予防又は治療に効果的な任意の物質を含み、例えば、世界特許WO2016/028672又はWO2015/138920に開示されている抗LAG-3抗体と併用できる任意の物質など、化学療法剤、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症剤又は免疫調節剤を含む。
【0073】
「化学療法剤」は、がんの治療に効果的な化合物を含む。化学療法剤の例に関しては、世界特許WO2015/153513、WO2016/028672又はWO2015/138920の開示が参照される。
【0074】
用語「サイトカイン」は、細胞集団から放出されて、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質の通称である。当該サイトカインの例として、リンホカイン、モノカインと、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15などのインターロイキン(IL)と、TNF-α、TNF-βなどの腫瘍壊死因子と、LIF、kitリガンド(KL)、γ-インターフェロンを含む他のポリペプチド性サイトカインが挙げられる。本出願に使用される用語であるサイトカインは、天然由来又は組換え細胞培養物由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物学的活性を有する同等物を含み、この同等物には、人工合成による小分子実体、及びその薬学的に許容される誘導体及び塩が含まれる。
【0075】
用語「共刺激分子」とは、T細胞における共刺激リガンドと特異的に結合することによって、T細胞が共刺激反応(例えば、増殖)を介在することに関連する結合対象を指す。共刺激分子は効率的な免疫応答に求められる抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子の非限定的な例は、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球の活性化分子(SLAMタンパク質)、NK細胞活性化受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンドを含む。
【0076】
用語「作動剤」又は「アゴニスト」は、対象分子(例えば、共刺激分子)のいくつかのパラメータ(例えば、活性)を増加させる物質を含む。例えば、当該用語は、対象分子の活性(例えば、共刺激活性)を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%又は少なくとも75%以上増加させる物質を含む。
【0077】
用語「免疫チェックポイント分子」とは、CD4 T細胞とCD8 T細胞の細胞表面における1群の分子を指す。これらの分子は、抗腫瘍免疫応答を下方調節又は抑制する「ブレーキ」として効果的に役割を果たすことができる。免疫チェックポイント分子の非限定的な例は、プログラム細胞死1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、B7H1、B7H4、OX-40、CD137、CD40、LAG-3を含み、これらが免疫細胞に対して直接的に抑制する。
【0078】
用語「抑制剤」又は「拮抗剤」は、対象分子(例えば、免疫チェックポイント抑制タンパク質)のいくつかのパラメータ(例えば、活性)を低減させる物質を含む。例えば、当該用語は、対象分子の活性(例えば、PD-1活性又はPD-L1活性)の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は少なくとも40%以上を抑制する物質を含む。したがって、抑制効果は必ずしも100%とは限らない。
【0079】
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指す。前記断片は同一のポリペプチド鎖(VH-VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結されている重鎖可変ドメイン(VH)を含む。長さが極めて短いため同一の鎖における2つのドメインの間にペアリングできないリンカーを利用して、前記ドメインを別の鎖の相補性ドメインと強制的にペアリングさせることによって、2つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい。ダイアボディのより詳細な説明に関しては、例えば、欧州特許EP404,097、世界特許WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、Hollinger et al.,米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)90:6444-6448(1993)が参照される。トリアボディ、トラボディに関してはHudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に同様な説明が行われている。
【0080】
「機能性Fc領域」は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節などを含む。かかるエフェクター機能には一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)の関連が求められ、それに例えば、本発明に開示されている複数種の測定手法を用いて評価できる。
【0081】
「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域に属し且つ抗体のアイソタイプによって変化する生理活性を指す。抗体のエフェクター機能の例は、C1q結合と補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞が介在する細胞傷害(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、B細胞活性化を含む。
【0082】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1種以上のFcRを発現しエフェクター機能を行使する白血球を指す。いくつかの実施形態において、当該細胞は少なくともFcエフェクターを発現しADCCエフェクター機能を行使する。ADCCを介在するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単核細胞、細胞傷害性T細胞、好中球を含む。エフェクター細胞は、天然由来のものであってもよい。例えば、血液から単離される。
【0083】
用語「有効量」とは、本発明の抗体もしくは断片又は複合体又は組成物の1回分又は複数回分の量を患者に投与した後、治療又は予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量又は投与量を指す。有効量は、当業者である主治医が、例えば、哺乳類の生物種、投与対象の大きさ、年齢、健康状態と、適用される疾患、疾患の程度又は重症度、個体患者における応答、投与される抗体、投与方式、投与製剤の生物学的利用能の特徴、選択される投与計画、併用療法の適用の複数種の要因を考慮して容易に決定することができる。
【0084】
「治療的有効量」とは、必要な期間に亘って必要な用量で所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗体もしくは抗体断片又はその複合体又は組成物の治療有効量は、例えば、疾患の状態、個体の年齢、性別、重量、抗体又は抗体の部分が個体に所望の反応を起こす能力の複数種の要因によって変化する可能性がある。また治療有効量は、抗体もしくは抗体断片又はその複合体又は組成物の任意の毒性又は有害作用が有益な治療効果に及ばないという量であってもよい。治療を受けていない対象に比べて、「治療有効量」により計測可能なパラメータ(例えば、腫瘍増殖(成長)速度)の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%又は少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約80%が抑制されることが好ましい。ヒト腫瘍における効能を示す動物モデルシステムにおいて、計測可能なパラメータ(例えば、がん)に対する化合物の抑制能力を評価できる。好ましくは、化合物の抑制能力を検証することによって組成物の当該特性を評価できる。前記抑制は関連技術に熟練した業者が知っている測定手法によりインビトロにおいて測定される。
【0085】
「予防的有効量」は、必要な期間に亘って必要な用量で所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。一般に、予防目的の投与量は対象における疾患の早期段階よりも前に又は疾患の早期段階に適用されるため、予防有効量が治療有効量を下回る。
【0086】
本発明に適用される「抗体及びその抗原結合断片」の非限定的な例は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、ヘテロ複合体抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、ヘテロ抗体、ヘテロ接合抗体、キメラ抗体、ヒト化(特にCDRがグラフトされている)抗体、脱免疫抗体、もしくはヒト由来の抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーによって生成された断片、Fd、Fv、二硫化物によって連結されているFv(dsFv)、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ダイアボディもしくはトラボディ(Holliger P.et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90(14),6444-6448)、ナノボディ(nanobody)(単一ドメイン抗体とも呼ばれる)、抗イディオタイプ抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、上記のいずれか1種のエピトープ結合断片を含む。
【0087】
「Fab」断片は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとを含み、且つ、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の第1定常ドメイン(CH1)とをさらに含む。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ基末端にいくつかの残基(抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含む)が追加されているため、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が1つの遊離チオール基を携帯しているFab’に対する呼称である。F(ab’)抗体断片は、最初に1対のFab’断片として生成され、Fab’断片の間にヒンジシステインがある。抗体断片の他の化学的カップリングも、既知の内容である。
【0088】
本明細書で使用される用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義しており、前記領域は少なくとも一部の定常領域を含む。該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。いくつかの実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域がCys226又はPro230から重鎖のカルボニル基末端に延長している。一方、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。別途説明が行われる場合を除き、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号が、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載のEU番号付けシステム(別称EUインデックス)に準じる。
【0089】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体と抗原の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは一般に、各ドメインが4つの保存的なフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域(CDR)とを含むように、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6thed.,W.H.Freeman and Co.p91(2007)が参照される)。単一のVHドメイン又はVLドメインでも、抗原結合特異性を付与することができる。また、特定の抗原と結合する抗体に由来するVHドメイン又はVLドメインを利用して前記抗原と結合する抗体を単離することによって、相補性のVLドメイン又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)が参照される。
【0090】
「フレームワーク」又は「FR」とは、相補性決定領域(CDR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、FR1、FR2、FR3、FR4の4つのFRドメインより構成される。したがって、CDR配列及びFR配列は一般に、重鎖可変ドメイン(VH)(又は軽鎖可変ドメイン(VL))における配列FR1-HCDR1(LCDR1)-FR2-HCDR2(LCDR2)-FR3-HCDR3(LCDR3)-FR4に出現する。
【0091】
別途説明が行われる場合を除き、抗体の各ドメインにおける残基の番号が、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載のEU番号付けシステム(別称EUインデックス)に準じる。
【0092】
用語「全長抗体」、「完全な抗体」、「完全抗体」は、構造的に天然抗体とほぼ同じであるか、又は本明細書で定義されているFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すように本明細書で入れ替えて使用される。
【0093】
用語「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。1つの実施形態において、二本鎖Fvの形態は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが非共有的に緊密に結合している二量体より構成される。一本鎖Fv(scFv)の形態において、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインがフレキシブルペプチドリンカーを介して共有連結されることによって、軽鎖と重鎖は二本鎖Fvの形態の「二量体」構造のように結合される。かかる配置において、各可変ドメインの3つのCDRの作用より、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位が限定される。つまり、6つのCDRにより抗体に抗原結合特異性が付与される。一方で、単一の可変ドメイン(又は抗原特異的な3つのCDRの半分だけを含むFv)でも、完全な結合部位よりも親和性が低いものの、抗原を認識してそれと結合する能力を有する。scFvの概要に関しては、例えば、Pluckthun:The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol 113,edited by Rosenburg&Moore,(Springer-Verlag,New York,1994),p269-315が参照される。
【0094】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、「宿主細胞培養物」は、外因性核酸が導入された細胞、かかる細胞の子孫を指すように入れ替えて使用される。宿主細胞は、「形質転換体」、「形質転換細胞」を含み、初代形質転換細胞、及び継代数に関係なくそれに由来する子孫を含む。子孫は、突然変異が含まれる可能性があるため、核酸の内容において親細胞と同じではない。本発明では、初代の形質転換細胞からスクリーニング又は選択された同じ機能又は生理活性を有する突然変異体子孫が含まれる。
【0095】
「ヒト抗体」とは、ヒト又はヒト細胞より生成された又はヒト以外に由来するものであって、ヒト抗体ライブラリー又はヒト抗体をコードする他の配列を利用する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものを指す。ヒト抗体に対する当該定義において、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0096】
「ヒトに共有するフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンのVL又はVHフレームワーク配列を選択するに当たり最も頻繁に出現するアミノ酸残基を示すフレームワークを指す。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL又はVH配列に対する選択は、可変ドメイン配列のサブタイプに対する選択である。一般に、当該配列のサブタイプは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vol 1-3に開示されているサブタイプである。1つの実施形態において、VLにおいて、当該サブタイプはKabat et al.(上記の内容参照)におけるサブタイプκIである。1つの実施形態において、VHにおいて、当該サブタイプはKabat et al.(上記の内容参照)におけるサブタイプIIIである。
【0097】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ほぼ全ての可変ドメインの少なくとも1つ、一般に2つを含む。なお、全ての又はほぼ全てのCDR(例えば、CDR)が非ヒト抗体に由来する部分に対応し、全ての又はほぼ全てのFRがヒト抗体に由来する部分に対応する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含むことが好ましい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化形態」とは、ヒト化が行われている抗体を指す。
【0098】
用語「がん」及び「がん性」は、通常、細胞の生長が調節不能になることを特徴とする哺乳動物の生理障害を指す又は説明する。がんの例には、がん、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫や白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、それらに制限されない。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮がん(例えば、上皮系扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、及び肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(胃腸がん及び消化管間質がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿道がん、肝臓がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄性白血病、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、及びファコマトーシス(phakomatoses)、水腫(脳腫瘍に関連するものなど)及びメーグス(Meigs)症候群に関連する異常な血管増殖、脳腫瘍及び脳がん、ならびに頭頸部がん、及び関連する転移がんが含まれるが、それらに制限されない。
【0099】
用語「細胞増殖性疾患」と「増殖性疾患」とは、ある程度の異常な細胞増殖に関連する疾患を指す。1つの実施形態において、前記細胞増殖性疾患はがんを指す。
【0100】
用語「腫瘍」は、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性(neoplastic)の細胞の成長及び増殖、すべての前がん(pre-cancerous)及びがん性の細胞や組織を含む。本明細書で言及される用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、「腫瘍」は、互いに矛盾が生じない。
【0101】
用語「感染性疾患」とは、病原体による疾患を指す。例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、又は寄生虫などの原生動物感染を含む。
【0102】
用語「慢性感染」とは、感染源(例えば、ウイルス、細菌、寄生虫などの原生動物、真菌などの病原体)がそれに感染した宿主において免疫応答を誘導しているが、急性感染の場合のように宿主から解消又は解除されている状態ではないことを指す。慢性感染は、持続性もしくは潜伏性を有しており、又は緩慢的である。急性感染は一般に、数日間又は数週間(例えば、インフルエンザ)のうちに免疫系によって解消されるが、持続性の感染の場合は、比較的弱いレベルで数か月、数年、数十年又は生涯にわたって持続する可能性がある(例えば、B型肝炎)。これに対して、潜伏性の感染は、長期的において特に症状がないものの、時には急激に強くなる高度の感染と病原体の数量増加が生じることを特徴とする(例えば、単純ヘルペス)。なお、緩慢的な感染は、疾患症状の漸次増加又は連続的な増加を特徴とする。例えば、長期の潜伏期間を経て、臨床症状が生じた後に症状の延長と進行が開始する。潜伏性の感染と持続性の感染とは違って、慢性感染はウイルス増殖の急性期より開始しない場合がある(例えば、ピコナウイルス科感染(picornaviruses infection)、ビスナウイルス(visna virus)、スクレイピー(scrapie)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakobdisease))。慢性感染を誘発する感染源の例は、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルスI型及びII型、ヒト免疫不全ウイルス1型及び2型、ヒトパピローマウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス1型及び2型、水痘-帯状疱疹ウイルスなど)、細菌(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、リステリア属菌(Listeria spp.)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ボレリア属菌(Borrelia spp.)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)など)、寄生虫などの原生動物(例えば、リーシュマニア属菌(Leishmania spp.)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、住血吸虫属(Schistosoma spp.)、トキソプラズマ属(Toxoplasma spp.)、トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、Taenia carssiceps(タエニア・クラッシケプス)など)、真菌(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)など)を含む。他の感染源は、プリオン又はミスリフォールディングされたタンパク質を含み、それは組織の中でタンパク質のミスリフォールディングを一層拡散させることによって脳又はニューロンの構造に影響を与え、(細胞死、組織損傷、最終的に死亡を起こす)アミロイドプラークを形成する。プリオン感染による疾患の例は、クロイツフェルト・ヤコブ病とその変異型(Creutzfeldt-Jakob disease and its varieties)、Gerstmann-Straussler-Scheinker syndrome(GSS)(ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群)、致死性家族性不眠症(fatal familial insomnia(sFI))、クールー病(kuru)、スクレイピー(scrapie)、牛海綿状脳症(BSE)(別名「狂牛病」)(Bovine spongiform encephalopathy(BSE)in cattle(aka「mad cow」disease))、動物に生じる他の各種の脳症[例えば、ミンクにおける伝達性海綿状脳症(transmissible mink encephalopathy(TME))、オジロジカ(white-tailed deer)、シフゾウ(elk)、ミュールジカ(mule deer)における慢性消耗性疾患(chronicwasting disease(CWD))、猫海綿状脳症(feline spongiform encephalopathy)、ニアラ(nyala)、オリックス(oryx)、クーズー(greater kudu)におけるエキゾチックな有蹄類脳症(exoticungulate encephalopathy(EUE)、ダチョウにおける海綿状脳症(spongiform encephalopathy of the ostrich)]を含む。
【0103】
「免疫複合体」は、1種以上の他の物質(その非限定的な例は細胞傷害剤又は標識を含む)と複合した抗体である。
【0104】
本明細書で使用される用語「標識」とは、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブもしくは抗体)に直接的又は間接的に複合又は融合され、且つ、複合又は融合の対象試薬による検出を促進する化合物又は組成物を指す。前記標識はそれ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)であるか、又は、酵素触媒によって標識されると検出可能な基質化合物又は組成物の化学的改変を触媒できる。当該用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリング(即ち、物理的連結)させることによってプローブもしくは抗体を直接標識すること、直接標識されている別の試薬との反応によりプローブもしくは抗体を間接的に標識することを含む。間接的な標識の例は、蛍光標識されている二次抗体による一次抗体の検出、蛍光標識されているストレプトアビジンで検出可能な、ビオチンを有するDNAプローブの末端標識の使用を含む。
【0105】
「個体」又は「対象」は、哺乳類を含む。哺乳類の非限定的な例は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ(ヒツジ)、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)を含む。いくつかの実施形態において、前記個体又は前記対象はヒトである。
【0106】
「単離された」抗体とは、その存在する自然環境の成分と単離している抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される純度が95%以上又は99%以上であるように精製される。抗体純度の評価方法の概要は、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)が参照される。
【0107】
「単離された」核酸とは、その存在する自然環境の成分と単離している核酸分子を指す。単離された核酸は、一般に当該核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子を含む。ただし、当該核酸分子は染色体外又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0108】
「単離された抗LAG-3抗体又はその断片をコードする核酸」とは、抗体重鎖又は軽鎖(又はその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクター又は別々のベクター内における当該核酸分子、宿主細胞内の1つの以上の位置に存在する当該核酸分子を含む。
【0109】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」は入れ替えて使用される。これらは、ポリマーの形態の任意の長さのヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド)又はその類似体を指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖であってもよいし、又は二本鎖であってもよい。一本鎖である場合は、コード鎖又は非コード(鋳型)鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドなどの修飾されたヌクレオチド、ヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド成分が介在してもよい。重合後に、標識成分との複合などによりポリヌクレオチドをさらに修飾してもよい。核酸は、組換えポリヌクレオチドであってもよいし、又は自然界に存在しないポリヌクレオチドもしくは別のポリヌクレオチドと非自然状態の配置で連結されているゲノム由来のポリヌクレオチド、cDNA由来のポリヌクレオチド、半合成されたポリヌクレオチド又は合成されたポリヌクレオチドであってもよい。
【0110】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」(一本鎖である場合)は、本明細書で、任意の長さのアミノ酸のポリマーを意味して入れ替えて使用される。当該ポリマーは、線状であってもよいし、又は分岐状であってもよく、修飾されたアミノ酸を含み、且つ、非アミノ酸が介在してもよい。当該用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分との複合など任意の他の操作により修飾されているアミノ酸ポリマーを含む。ポリペプチドは、天然由来のものから単離されてもよいし、組換え技術により真核宿主又は原核宿主から生成されてもよく、且つ、合成による生成物であってもよい。
【0111】
以下のとおりに配列間の配列同一性を算出する。
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列における同一性パーセンテージを決定するために、前記配列を最適化した上で比較を行ってもよい(例えば、比較の最適化のために第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列又は核酸配列のいずれかもしくは両者にギャップを導入するか、又は比較の便宜上、非相同配列を捨ててもよい)。1つの好ましい実施形態において、比較の便宜上、比較配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%である。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1配列の対象位置は第2配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占有されている場合、当該分子は当該位置において同一である。
【0112】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列間において配列比較と同一性パーセンテージの算出を実現できる。1つの好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されているNeedlema&Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comにて利用可能)に、Blossum 62行列もしくはPAM250行列、ギャップ重み16、14、12、10、8、6もしくは4と長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて決定される。別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム(http://www.gcg.comにて利用可能)に、NWSgapdna.CMP行列、ギャップ重み40、50、60、70もしくは80、長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて決定される。特に好ましくは、パラメータセット(別途説明が行われる場合を除き、1つのパラメータセットを使用する)には、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリング行列を採用する。
【0113】
また、2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージは、ALIGNプログラム(2.0版)に統合されているE.MeyersとW.Millerによるアルゴリズム((1989)CABIOS,4:11-17)にPAM120加重残基表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて決定されてもよい。
【0114】
より好ましくは、さらに例えば、本発明に記載の核酸配列とタンパク質配列を「参照配列」としてパブリックデータベースにおいて検索を実行することによって、他のメンバー配列又は関連の配列を同定することもできる。例えば、Altschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-10によるNBLASTプログラムとXBLASTプログラムを利用して前記検索を実行してもよい。BLASTヌクレオチド検索において、得点=100、長さ=12のNBLASTプログラムを実行することによって、本発明の核酸分子と同一のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索において、得点=50、長さ=3のXBLASTプログラムを実行することによって、本発明のタンパク質分子と同一のアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためのギャップ付比較結果を得るために、例えば、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載のように、ギャップBLASTを用いることができる。BLASTプログラムとギャップBLASTプログラムを用いるとき、そのプログラム(例えば、XBLAST、NBLAST)のデフォルトのパラメータを用いてもよい。これに関しては、http://www.ncbi.nlm.nih.govが参照される。
【0115】
本明細書で使用される用語「低いストリンジェンシー条件、中等度のストリンジェンシー条件、高いストリンジェンシー条件、又は極めて高いストリンジェンシー条件におけるハイブリダイゼーション」は、ハイブリダイゼーションと洗浄の条件を説明している。ハイブリダイゼーション反応の実行に関する手引きは、援用の形で組み込まれたCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に記載されている。参考文献には、含水の方法と非含水の方法が説明されており、いずれの方法も利用できる。本明細書で言及される特異性ハイブリダイゼーションの条件は以下のとおりである。1)低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件は約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)において、次に少なくとも50℃(低いストリンジェンシー条件では、洗浄温度を55℃に上げることができる)で0.2X SSC、0.1%SDSにおいて2回洗浄することである。2)中等度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件は約45℃で6X SSCにおいて、次に60℃で0.2X SSC、0.1%SDSにおいて複数回洗浄することである。3)高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件は約45℃で6X SSCにおいて、次に65℃で0.2X SSC、0.1%SDSにおいて1回以上洗浄することである。好ましくは、4)極めて高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件であり、それは65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSにおいて、次に65℃で0.2X SSC、0.1%SDSにおいて1回以上洗浄することである。極めて高いストリンジェンシー条件(4)は好ましい条件であり、別途説明が行われる場合を除き、当該条件が適用される。
【0116】
用語「医薬組成物」とは、それに含まれる活性成分の生理活性が有効な形態で存在し、しかも前記組成物が投与される対象に許容されない毒性がある別の成分を含まない組成物を指す。
【0117】
用語「医薬品添加物」とは、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全もしくは不完全))、ベクター、賦形剤又は安定剤などを指す。
【0118】
本明細書で使用される用語「治療」とは、出現している症状、病的状態、病状又は疾患の進行又は重症度に対する軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、又は逆転を指す。
【0119】
本明細書で使用される用語「予防」は、疾患、病的状態、特定の疾患もしくは病的状態に係る症状の発生又は進行に対する抑制を含む。いくつかの実施形態において、がん家族歴がある対象は、予防性計画対象の候補である。一般に、がんが言及される文脈では、用語「予防」はがんに係る病的状態又は症状が生じる前に、特に、がんに罹患するリスクのある対象にがんが生じる前の薬物投与を指す。
【0120】
用語「抗感染症剤」は、その投与濃度と投与間隔において、宿主の命に危険を及ぼすことなく微生物の成長を特異的に抑制又は解消する任意の分子を含む。前記微生物は、例えばウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫などの原生動物を含む。本明細書で使用される用語「抗感染症剤」は、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤を含む。1つの具体的な態様において、前記抗感染症剤は、その投与濃度と投与間隔において宿主に毒性がない。
【0121】
抗細菌用の抗感染症剤又は抗菌剤は、殺菌用(即ち、直接死滅)又は静菌用(即ち、分裂阻止)に大別することができる。抗細菌用の抗感染症剤は狭域抗菌剤(即ち、影響を受けるのはグラム陰性菌など少数の種類の細菌サブタイプだけ)、広域抗菌剤(即ち、幅広い種類に影響を与える)にさらに分類することができる。その例は、アミカシン、ゲンタマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ムピロシン、ニトロフラントイン、ピラジナミド、キヌプリスチン・ダルホプリスチン、リファンピシン、リファンピン・イソニアジド・ピラジナミド合剤又はチニダゾールなどを含む。
【0122】
用語「抗ウイルス剤」は、ウイルスの成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。その例は、アシクロビル、シドフォビル、ジドブジン、ジダノシン(ddI、VIDEX)、ザルシタビン(ddC、HIVID)、スタブジン(d4T、ZERIT)、ラミブジン(3TC、EPIVIR)、アバカビル(ZIAGEN)、エムトリシタビン(EMTRIVA)などを含む。
【0123】
用語「抗真菌剤」は、真菌の成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。その例は、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンディシン、パチョリ(patchouli)、ニームシードオイル(neem seed oil)、ココナッツオイル(Coconut Oil)などを含む。
【0124】
用語「抗原生動物剤」は、原生動物種(例えば、寄生虫)の成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。抗原生動物剤の例は、キニーネ、キニジンなどの抗マラリア薬を含む。
【0125】
例示的な抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤は、例えば、世界特許WO2010/077634などが参照される。抗感染症剤の例としては、世界特許WO2014/008218、WO2016/028672、又はWO2015/138920も参照される。
【0126】
本明細書で使用される用語「ベクター」とは、それに連結された別の核酸を増殖させる核酸分子を指す。当該用語は、核酸の自己複製が可能な構造としてのベクター、それを導入していた宿主細胞のゲノムに結合されたベクターを含む。一部のベクターは、それに操作可能に連結された核酸の発現をガイドすることができる。本明細書で、かかるベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0127】
「対象/患者サンプル」とは、患者又は対象より得た細胞又は液体の集まりである。組織又は細胞サンプルの由来としては、新鮮な、冷凍された及び/又は保存された器官、組織サンプル、生検サンプルもしくは穿刺サンプルなどの固形組織、血液もしくは任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹腔内液(腹水)もしくは間質液などの体液、対象における妊娠もしくは発育の任意の段階に由来する細胞が挙げられる。組織サンプルは、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などの自然界に存在する組織に溶けない化合物を含んでもよい。本明細書に言及される腫瘍サンプルの非限定的な例は、腫瘍生検サンプル、吸引物、気管支肺胞洗浄液、胸膜腔内液(胸水)、痰、尿、手術標本、遊走する腫瘍細胞、血清、血漿、遊走する血漿タンパク質、腹水、腫瘍から誘導されたもしくは腫瘍様の特性を示す初代細胞培養物又は細胞株、又はホルマリンで固定されたもしくはパラフィンで包埋された腫瘍サンプルもしくは冷凍された腫瘍サンプルなどの保存された腫瘍サンプルを含む。
【0128】
用語「包装付加頁」とは、一般に治療用途の商品の包装とともに提供された、特定の治療製品の用途に適する適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症及び/又は注意事項などの情報を含む取扱説明書。
【0129】
本発明の抗体
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片はLAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、ヒトLAG-3又はマウスLAG-3などの哺乳類由来のLAG3と結合する。例えば、抗体分子はLAG-3におけるエピトープ(例えば、線形エピトープ又は立体配座エピトープ)と特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体分子はLAG-3の1つ以上の細胞外Ig様ドメイン(例えば、LAG-3の第1、第2、第3又は第4の細胞外Ig様ドメイン)と結合する。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は以下の1種以上の特性を有する。
(1)本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)と高い親和性で結合し、例えば、約100nM未満、好ましくは約50nM以下、より好ましくは約20nM以下、さらに好ましくは約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下又は約2nM以下、最も好ましくは約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下又は約0.7nM以下の平衡解離定数(K)でLAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、0.1-20nM、好ましくは0.5-20nM、より好ましくは0.5-10nM、0.5-8nM、0.5-5nM、最も好ましくは0.5-1nM、0.5-0.8nM、0.5-0.7nM、0.6-0.7nMのKでLAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、LAG-3はヒトLAG-3である。いくつかの実施形態において、LAG-3はマウスLAG-3である。いくつかの実施形態において、抗体の結合親和性が光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性計測)の測定手法により測定される。
【0131】
(2)本発明の抗体又はその断片は、例えば、約3.3nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1.5nM以下、約1.4nM以下、約1.3nM以下、約1.2nM以下、約1.1nM以下、約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下、約0.7nM以下、約0.6nM以下又は約0.5nM以下のEC50でヒトLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、ヒトLAG-3を発現する細胞は、ヒトLAG-3を発現する293細胞(例えば、HEK293細胞)である。
【0132】
(3)本発明の抗体又はその断片は、例えば、約15000nM以下、約14000nM以下又は約13000nM以下のEC50で、マウスLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、約50nM以下のEC50で、例えば、約40-50nMのEC50、約40-45nMのEC50又は約42nMのEC50で、マウスLAG-3を発現する細胞と結合する。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、マウスLAG-3を発現する細胞は、マウスLAG-3を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0133】
(4)本発明の抗体又はその断片は、例えば、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM又は約5nM以下のIC50で、好ましくは約1-6nM、約1-5nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約5.1nM、約5.2nM、約5.3nM、約5.4nM、約5.5nM、約5.6nM、約5.7nM、約5.8nM、約5.9nM又は約6nMのIC50でLAG-3の関連の活性を抑制する。いくつかの実施形態において、LAG-3の関連の活性は、MHCクラスII分子とLAG-3の結合である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM又は約5nM以下のIC50で、好ましくは約1-6nM、約1-5nM、約4nM、約4.5nM、約5nM、約5.1nM、約5.2nM、約5.3nM、約5.4nM、約5.5nM、約5.6nM、約5.7nM、約5.8nM、約5.9nM又は約6nMのIC50でLAG-3と、MHCクラスII分子を発現する細胞におけるMHCクラスII分子との結合を抑制する。いくつかの実施形態において、MHCクラスII分子はHLA-DRである。いくつかの実施形態において、前記細胞はCHO細胞である。いくつかの実施形態において、LAG-3の関連の活性に対する本発明の前記抗体又はその断片の抑制がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。
【0134】
(5)本発明の抗体又はその断片は、例えば、約35pM以下、約30pMnM以下、約25pM以下、約20pM以下、約15pM以下、約14pM又は13pMのEC50で、好ましくは約1-20pM、約5-20pM、約5-15pM、約10-15pM、約11-13pM、約10pM、約11pM、約12pM又は約13pMのEC50で、活性化されたCD4+及び/又はCD8+ T細胞の表面における内因性LAG-3と結合する。いくつかの実施形態において、活性化された前記CD4+ T細胞は、活性化されたヒトCD4+ T細胞である。いくつかの実施形態において、前記結合がフローサイトメトリー(例えば、FACS)により測定される。いくつかの実施形態において、フローサイトメトリーがAccuri C6システムにおいて行われる。
【0135】
(6)本発明の抗体又はその断片は、例えば、CD4+ Tリンパ球の抗原依存性刺激の増加、T細胞の増殖増加、活性化抗原(例えば、CD25)の発現増加、サイトカイン(例えば、インターフェロン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)又はインターロイキン-4(IL-4))の発現増加、ケモカイン(例えば、CCL3、CCL4又はCCL5)の発現増加、Treg細胞の阻害活性低減、T細胞ホメオスタシスの向上、腫瘍浸潤リンパ球の増加、又はがん細胞の免疫回避低減の1種以上が生じるように、LAG-3の1種以上の活性を抑制する。
【0136】
(7)本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、抗体依存性細胞が介在する細胞傷害(ADCC)を誘発できる。
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、以下の1つ以上の特性を有する。
(i)LAG-3に対して、本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)と同一又は類似の結合親和性及び/又は特異性を示す。
(ii)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)とLAG-3の結合を抑制(例えば、競合的に抑制)する。
(iii)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)と同一の又は重複するエピトープと結合する。
(iv)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)に対して競合的にLAG-3と結合する。
(v)本発明の抗体(例えば、表3に示されるいずれかの抗体)の1つ以上の生物学的特性を有する。
【0137】
例示的な抗体
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)を含む。前記VHは、
(i)表Bに示されるいずれかの抗体のVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)、又は
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた配列を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(VL)を含む。前記VLは、
(i)表Bに示されるいずれかの抗体のVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)、又は
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた配列を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(a)前記VHは、
(i)表Bに示されるいずれかの抗体のVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)、又は
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた配列を含み、且つ/又は
(b)前記VLは、
(i)表Bに示されるいずれかの抗体のVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)、又は
(ii)、(i)の配列に対して、前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた配列を含む。
好ましい実施形態において、VHは、配列番号22、23、24又は25に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含み、又は前記アミノ酸配列より構成される。
好ましい実施形態において、VLは、配列番号26、27、28又は29に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含み、又は前記アミノ酸配列より構成される。
好ましい実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号22、23、24又は25に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR)と、配列番号26、27、28又は29に示される軽鎖可変領域の3つ相補性決定領域(LCDR)とを含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含む。前記HCDR1は配列番号1、2、3、4もしくは17のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記HCDR1は配列番号1、2、3、4もしくは17のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つの、2つのもしくは3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。前記HCDR2は配列番号5、6、7もしくは18のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記HCDR2は配列番号5、6、7もしくは18のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つの、2つのもしくは3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。前記HCDR3は配列番号8、9、10もしくは19のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記HCDR3は配列番号8、9、10もしくは19のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つの、2つのもしくは3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。
且つ/又は、
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記LCDR1は配列番号11、12もしくは20のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記LCDR1は配列番号11、12もしくは20のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つの、2つの又は3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。前記LCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含むかもしくは含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記LCDR2は配列番号13のアミノ酸配列に対して、1つの、2つの又は3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。前記LCDR3は配列番号14、15、16又は21のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、又は前記LCDR3は配列番号14、15、16もしくは21のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つの、2つのもしくは3つの改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0139】
好ましい実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(a)前記VHは、
(i)表Aに示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3の組み合わせ、又は
(ii)前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた(i)のHCDRの組み合わせの変異体を含む。
且つ/又は、
(ii)前記VLは、
(i)表Aに示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3の組み合わせ、又は
(ii)前記3つのCDR領域に合計で少なくとも1つ、かつ、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的な置換)が含まれた(i)のLCDRの組み合わせの変異体を含む。
【0140】
好ましい実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)とを含む。前記VHは相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ、前記VLは(CDR)のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記抗体又はその抗原結合断片に含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2とLCDR3の組み合わせは下表(表A)に示されるとおりである。
【0141】
【表A】
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(a)重鎖可変領域(VH)は、
(i)配列番号22、23、24もしくは25のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(ii)配列番号22、23、24もしくは25のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号22、23、24もしくは25のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つ以上の(好ましくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変はCDR領域に生じない。
且つ/又は、
(b)軽鎖可変領域(VL)は、
(i)配列番号26、27、28もしくは29のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくはは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号26、27、28もしくは29のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号26、27、28もしくは29から選択されるアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変はCDR領域に生じない。
【0143】
好ましい実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)とを含む。前記抗体又はその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の組み合わせは、下表(表B)に示されるとおりである。
【表B】
【0144】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖及び/又は軽鎖を含む。
(a)重鎖は、
(i)配列番号30、31、32もしくは33のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号30、31、32もしくは33のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号30、31、32もしくは33のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは20個以下又は10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変は重鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸改変は重鎖可変領域に生じない。
且つ/又は、
(b)軽鎖は、
(i)配列番号34、35、36もしくは37のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号34、35、36もしくは37のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号34、35、36もしくは37のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは20個以下もしくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変は軽鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸改変は軽鎖可変領域に生じない。
【0145】
好ましい実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖と、軽鎖とを含む。前記抗体又はその抗原結合断片に含まれる重鎖と軽鎖の組み合わせは下表(表C)に示されるとおりである。
【0146】
【表C】
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片の重鎖及び/又は軽鎖は、シグナルペプチド配列、例えば、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号48)をさらに含む。
【0148】
本発明の1つの実施形態において、前記アミノ酸改変は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含む。好ましくは、本発明において前記アミノ酸改変はアミノ酸置換であり、保存的な置換であることが好ましい。
【0149】
好ましい実施形態において、本発明において前記アミノ酸改変はCDR外の領域(例えば、FR)に生じる。より好ましくは、本発明において前記アミノ酸改変は重鎖可変領域外及び/又は軽鎖可変領域外の領域に生じる。
【0150】
好ましくは、本発明の抗LAG-3抗体は軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖又は重鎖に対する翻訳後修飾を含む。例示的な翻訳後修飾としては、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分複合による任意の他の操作が挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、前記置換は保存的な置換である。前記保存的な置換とは、1つのアミノ酸が同種の別のアミノ酸によって置換されたことを指す。例えば、1つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸によって置換されたこと、1つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸によって置換されたこと、又は1つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸によって置換されたことを指す。例示的な置換は次の表Dに示されるとおりである。
【0152】
【表D】
【0153】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、抗体のグリコシル化の程度が増大又は低減するように改変される。抗体のグリコシル化部位の追加又は欠失は、アミノ酸配列を改変させて1つ以上のグリコシル化部位を生成又は除去することによって容易に実現できる。
【0154】
例えば、1種以上のアミノ酸置換を行って1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を解消することによって、当該部位のグリコシル化を解消することができる。このような脱グリコシル化により抗原に対する抗体の親和性を増加させることができる。これに関しては例えば、米国特許第5,714,350号、第6,350,861号が参照される。改変を加えたグリコシル化抗体、例えば、フコシル残基の量を減少した低フコシル化抗体又はバイセクティングGlcNac構造を追加した抗体を製造することができる。かかる改変を加えたグリコシル化の形態において、抗体のADCC能力の向上が示されている。例えば、改変を加えたグリコシル化系の宿主細胞において、抗体を発現させることによって当該糖鎖修飾を実現できる。改変を加えたグリコシル化系の細胞は本分野で既知の内容であり、且つ、本発明の抗体を発現させることによって改変を加えたグリコシル化抗体を生成する宿主細胞として用いることができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、Ms709にフコース転移酵素遺伝子FUT8(α(1,6)-フコース転移酵素)が欠失しているため、Ms704、Ms705、Ms709細胞株において発現された抗体はその糖類にフコースが欠失している。2種の代替的なベクターを使用してCHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的破壊を行うことによってMs704、Ms705、Ms709のFUT8-/-細胞株を作成することができる(米国特許公開第20040110704号、Yamane-Ohnuki et al.(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22が参照される)。欧州特許EP1,176,195では、機能が破壊されたフコース転移酵素をコードするFUT8遺伝子を有する細胞株が説明されており、かかる細胞株において発現された抗体でα-1,6結合に関連する酵素に対する低減又は解消により低フコシル化が示される。欧州特許EP1,176,195ではさらに、抗体Fc領域と結合するN-アセチルグルコサミンにフコースが追加された低酵素活性の又は当該酵素活性を有しない細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)が説明されている。世界特許公開第WO03/035835号では、CHO細胞株Lec13細胞の変異体が説明されており、フコースのAsn(297)-連結糖類への付加能力を低減させることによって、当該宿主細胞において発現された抗体に低フコシル化が実現される(Shields et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照される)。グリコシル化の修飾を有する抗体は、例えば、世界特許公開第WO06/089231号に記載のとおり、卵において生成することもできる。好ましくは、グリコシル化の修飾を有する抗体は、植物細胞(例えば、アオウキクサ属(Lemna))において生成することができる。植物系による抗体の生成方法は、法律事務所Alston&Bird LLPによる代理番号040989/314911の2006年8月11日に提出された米国特許出願に開示されている。世界特許公開第WO99/54342号では、人工操作により糖タンパク質修飾糖転移酵素(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII))を発現する細胞株が説明されている。当該人工細胞株において発現された抗体には、抗体のADCC活性の増加を引き起こす追加のバイセクティングGlcNac構造が出現する(Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-180も参照される)。好ましくは、フコシダーゼを利用して抗体のフコシル残基を切除してもよい。例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼを利用して抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0155】
本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体又は断片が人工改変を経た酵母N-を連結したプロテオグリカン又はCHO N-を連結したプロテオグリカンによりグリコシル化される。
【0156】
本発明は、本発明の抗体又はその断片に対する別種の修飾としてペグ化(pegylation)を含む。抗体にペグ化を行って、例えば、生体内(例えば、血清)の抗体の半減期を延長することができる。抗体のペグ化は、一般に、抗体又はその断片とポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEGによる反応性のエステル又は反応性のアルデヒド誘導体)を、1つ以上のPEG官能基が抗体又は抗体断片に付加できる条件において反応させるように行われる。好ましくは、反応性のPEG分子(又は類似の反応性の水溶性ポリマー)を利用して、アシル化反応又はアルキル化反応を行ってペグ化を実施する。本明細書で使用される用語「ポリエチレングリコール」には、他のタンパク質への誘導に使用されるPEG的のいずれかの形態、例えば、モノ(C1-C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドを含むことが意図される。いくつかの実施形態において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。本分野で、タンパク質のペグ化の方法が既知の内容であり、例えば、欧州特許EP0154316、EP0401384に記載のとおり、それを本発明の抗体に用いることができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸修飾を導入してFc領域の変異体を生成することによって、がん又は細胞増殖性疾患の治療における抗体の有効性などを増強させることができる。本発明の抗LAG-3抗体とその抗原結合断片は、改変されたエフェクター機能を提供できるように修飾された(又はブロッキングされた)Fc領域を有する抗体と断片をさらに含む。これに関しては、例えば、米国特許第5,624,821号、世界特許WO2003/086310、WO2005/120571、WO2006/0057702が参照される。かかる修飾を利用して、免疫系の各種の反応を増強又は抑制することができ、これによって診断と治療に有益な効果を得ることができる。Fc領域に対する修飾は、アミノ酸変更(置換、欠失、挿入)、グリコシル化と脱グリコシル化、複数のFcの追加を含む。Fcに対する修飾により治療抗体における抗体の半減期を改変させることもでき、これによってより低い頻度の投与、利便性の向上と材料使用の低減を実現できる。これに関しては、Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731,p734-735が参照される。
【0158】
1つの実施形態において、抗体のシステイン残基の数量を改変させて抗体の特性を修飾することができる。例えば、CH1のヒンジ領域に修飾を行って、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数量を変更(例えば、増加又は減少)させる。当該手法に関する詳細な説明は、米国特許第5,677,425号に記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数量を変更することによって、軽鎖及び重鎖の組み立てを促進し又は抗体の安定性を向上もしくは低減させることができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、本分野で既知の事項として容易に得られる他の非タンパク質の部分を含有するように修飾されてもよい。抗体の誘導作用に適する部分の非限定的な例は、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、デキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコール、これらの混合物を含む。ポリマーは、任意の分子量を有してもよく、しかも分岐のものであってもよいし、又は非分岐のものであってもよい。抗体に連結しているポリマーの数量が一定ではなく変更されてもよい。1つ以上のポリマーを連結した場合は、同一の分子であってもよいし、又は異なる分子であってもよい。一般には、誘導用のポリマーの数量及び/又はその種類が、非限定的ではあるが、改善したい抗体の特定の特性又は機能、抗体の誘導体が確定した条件において療法に使用されるかどうかなどの要因に基づいて決定されてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗LAG-3抗体の断片を含む。抗体断片の非限定的な例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH,F(ab’)、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、及び抗体断片より形成された多重特異性抗体を含む。
【0161】
例えば、抗体分子は、重鎖(HC)可変ドメイン配列と、軽鎖(LC)可変ドメイン配列とを含んでもよい。1つの実施形態において、抗体分子は、1本の重鎖と、1本の軽鎖とを含み(本発明において半抗体と呼ばれる)、又はそれによって構成される。別の例において、抗体分子は、2つの重鎖可変ドメイン配列と、2つの軽鎖可変ドメイン配列とを含み、これによってFab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fd、Fd’、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価又は二重特異性)、キメラ(例えば、ヒト化)抗体のように2つの抗原結合部位が形成されてもよい。これらの抗体分子は、完全抗体の修飾により生成されてもよいし、又はDNA組換え技術を利用して最初から合成されてもよい。これらの機能性抗体断片には、それに対応する抗原又は受容体と選択的に結合する能力が保持されている。抗体と抗体断片は任意の種類の抗体に由来してもよく、その非限定的な例として、任意の抗体のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)を含むIgG、IgA、IgM、IgD、IgEが挙げられる。抗体分子はモノクローナルとして製造されてもよいし、又はポリクローナルとして製造されてもよい。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、又はインビトロで生成された抗体であってもよい。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有してもよい。抗体は、κ又はλのいずれかの軽鎖をさらに有してもよい。
【0162】
本発明の抗体は、単一ドメイン抗体であってもよい。当該単一ドメイン抗体は、相補性決定領域が単一ドメインのポリペプチドの構成要素である抗体を含んでもよい。その非限定的な例は、重鎖抗体、天然的に軽鎖が欠失している抗体、通常の4本鎖抗体から誘導された単一ドメイン抗体又は人工抗体を含む。当該単一ドメイン抗体は、既存の技術による任意の抗体であってもよいし、又は将来に開発される任意の単一ドメイン抗体であってもよい。当該単一ドメイン抗体は、非限定的ではあるが、例えば、マウス、ヒト、ラクダ、アルパカ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む任意の生物種において誘導されてもよい。本発明の別の態様において、当該単一ドメイン抗体は、天然に存在する単一ドメイン抗体であり、軽鎖欠失重鎖抗体と呼ばれる。当該単一ドメイン抗体としては、例えば、世界特許WO94/04678に記載の抗体が挙げられる。当該単一ドメイン抗体又はナノボディは、ラクダ科(Camelidae)の生物種(例えば、ラクダ、アルパカ、ヒトコブラクダ、リャマ、グアナコ)において生成された抗体であってもよい。ラクダ以外の他の生物種において、天然的に軽鎖が欠失している重鎖抗体を生成することができ、かかる単一ドメイン抗体は本発明の範囲に含まれる。
【0163】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体はヒト化抗体である。抗体のヒト化のための各種の方法は、例えば、Almagro&Franssonに記載の当該方法の概要は当業者が知っている内容であり、当該内容の全体が本発明に組み込まれる(Almagro JC&Fransson J,(2008)Frontiers in Bioscience 13:1619-1633)。Almagro&Franssonでは、定量的アプローチと経験的アプローチに区別されている。定量的アプローチは、少量の人工抗体の変異体を生成しその結合又は任意の他の対象特性を評価することを特徴とする。設計された変異体に所望の効果が得られない場合は、再度の設計と結合評価を行う。定量的アプローチは、CDRグラフト、リサーフェイシング(Resurfacing)、超ヒト化(Superhumanization)、ヒト文字列内容の最適化(Human String Content Optimization)を含む。これに対して、経験的アプローチは、大量のヒト化変異体ライブラリーを生成し富化技術又はハイスループットスクリーニングを利用して最適なクローンを選択することに基づく。したがって、経験的アプローチは、大量の抗体変異体に対する検索が可能な、確実な選択及び/又はスクリーニングシステムに基づく。例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイなどのインビトロディスプレイ技術は、上記の要件を満たしており、当業者が知っている内容でもある。経験的アプローチは、FRライブラリー、案内選択(Guided selection)、フレームワークシャッフリング(Framework-shuffling)、ヒューマニア化(Humaneering)を含む。
【0164】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体はヒト抗体である。本分野で既知の様々な技術を利用してヒト抗体を製造できる。当該ヒト抗体に関しては、一般にvan Dijk&van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol 5:368-74(2001)、Lonberg,Curr.Opin.Immunol 20:450-459(2008)の説明が参照される。例えば、マウス系の免疫グロブリン遺伝子ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を携帯している遺伝子組換えマウスを利用して、ヒトモノクローナル抗体を生成できる(例えば、Wood et al.,世界特許出願第WO91/00906号、Kucherlapati et al.,世界特許公開第WO91/10741号、Lonberg et al.,世界特許出願第WO92/03918号、Kay et al.,世界特許出願第92/03917号、Lonberg,N. et al.,1994 Nature 368:856-859、Green,L.L. et al.,1994 Nature Genet.7:13-21、Morrison,S.L. et al.,1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855、Bruggeman et al.,1993 Year Immunol 7:33-40、Tuaillon et al.,1993 PNAS 90:3720-3724、Bruggeman et al.,1991 Eur J Immunol 21:1323-1326が参照される)。
【0165】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、非ヒト抗体、例えば、げっ歯類(マウス又はラット)に由来する抗体、ヤギに由来する抗体、霊長類(例えば、サル)に由来する抗体、ラクダに由来する抗体である。好ましくは、前記非ヒト抗体はげっ歯類(マウス又はラット)に由来する抗体である。げっ歯類に由来する抗体の生成方法は、本分野で既知の内容である。
【0166】
組み合わせライブラリーにおいて、所望の活性を有する抗体をスクリーニングすることによって本発明の抗体を単離することができる。例えば、本分野において、ファージディスプレイライブラリーを生成しこれらのライブラリーにおいて所望の結合特性を有する抗体をスクリーニングする方法として、いくつかが知られている。これらの方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(edited by O′Brien et al.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載の内容が参照され、その更なる説明として、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackso et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks&Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(edited by Lo,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、Lee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)が参照される。
【0167】
1つの実施形態において、抗体分子は単一特異性抗体分子であり、且つ、単一のエピトープと結合する。例えば、単一特異性抗体分子は、それぞれ同一のエピトープと結合する複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を有する。
【0168】
1つの実施形態において、抗体分子は多重特異性抗体分子であり、例えば、それは複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列の第1免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1エピトープに対する結合特異性を有し、且つ、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列の第2免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2エピトープに対する結合特異性を有する。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは、同一の抗原(例えば、同一のタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット))に位置する。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは重複する。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは重複しない。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは、異なる抗原(例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット))に位置する。1つの実施形態において、多重特異性抗体分子は、第3、第4又は第5免疫グロブリン可変ドメインを含む。1つの実施形態において、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子又は四重特異性抗体分子である。
【0169】
1つの実施形態において、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2種類以内の抗原に対して特異性を有する。二重特異性抗体分子は、第1エピトープに対して結合特異性を有する第1免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2エピトープに対して結合特異性を有する第2免疫グロブリン可変ドメイン配列とを特徴とする。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは、同一の抗原(例えば、同一のタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット))に位置する。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは重複する。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは重複しない。1つの実施形態において、第1エピトープと第2エピトープは、異なる抗原(例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット))に位置する。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1エピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列、軽鎖可変ドメイン配列と、第2エピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列、軽鎖可変ドメイン配列とを含む。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1エピトープに対して結合特異性を有する半抗体と、第2エピトープに対して結合特異性を有する半抗体とを含む。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1エピトープに対して結合特異性を有する半抗体又はその断片と、第2エピトープに対して結合特異性を有する半抗体又はその断片とを含む。1つの実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1エピトープに対して結合特異性を有するscFv又はその断片と、第2エピトープに対して結合特異性を有するscFv又はその断片とを含む。1つの実施形態において、第1エピトープはLAG-3に位置し、且つ、第2エピトープはPD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1及び/又はCEACAM-5)、PD-L1又はPD-L2に位置する。好ましい実施形態において、第2エピトープはPD-1に位置する。
【0170】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体(例えば、ヒト定常ドメイン/マウス可変ドメイン)であってもよい。本明細書で使用される「キメラ抗体」とは、第1抗体に由来する可変ドメインと、第2抗体に由来する定常ドメインとを有する抗体である。前記第1抗体と前記第2抗体は、異なる生物種に由来する(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855)。一般に、前記可変ドメインは実験動物(例えば、げっ歯類)に由来する抗体(「親抗体」)より得られるものであり、且つ、前記定常ドメイン配列はヒト抗体より得られ、このように得たキメラ抗体は親(例えば、マウス)抗体に比べて、ヒト対象に不良な免疫応答を引き起こす可能性が低い。
【0171】
いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、細胞傷害剤もしくは免疫調節剤などの治療用組成物又はマーカーなどの他の物質と複合された抗LAG-3モノクローナル抗体(「免疫複合体」)をさらに含む。前記細胞傷害剤は、細胞に対して傷害性を有する任意の薬剤を含む。免疫複合体の生成に適する前記細胞傷害剤(例えば、化学療法剤)としては、例えば、世界特許WO05/103081又はWO2015/138920又は中国特許第CN107001470A号が参照され、本分野で既知の内容である。例えば、前記細胞傷害剤の非限定的な例は、放射性同位体(例えば、ヨウ素(131I又は125I)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジム、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Bi又は213Bi)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、ロジウム(188Rh)、硫黄(35S)、炭素(14C)、三重水素(3H)、クロム(51Cr)、塩素(36Cl)、コバルト(57Co又は58Co)、鉄(59Fe)、セレン(75Se)、ガリウム(67Ga))を含む。前記細胞傷害剤の例は、化学療法剤又は他の治療薬物、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エミジン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド(maytansinoid)、例えば、マイタンシノール(米国特許第5,208,020号参照)、CC-1065(米国特許第5,475,092号、第5,585,499号、第5,846,545号参照)及びその類似体又は相同体をさらに含む。前記細胞傷害剤は、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、窒素マスタード、チオクロラムブシル、CC-1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)とロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCとシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン系(例えば、ダウノマイシン(旧称ダウノルビシン)とドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(dactinomycin)(旧称アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、メイタンシノイド))、成長阻害剤、酵素とその断片(例えば、ヌクレアーゼ)、抗生物質、毒素(例えば、低分子毒素、又は細菌、真菌、植物もしくは動物に由来する酵素触媒活性毒素、その断片及び/又は変異体を含む)、従来の各種の抗腫瘍又は抗がん剤をさらに含む。
【0172】
本発明の核酸とそれを含む宿主細胞
本発明の別の態様において、上記の任意の抗LAG-3抗体又はその断片をコードする核酸を提供する。前記核酸は、抗体の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含むアミノ酸配列、又は抗体の軽鎖及び/又は重鎖を含むアミノ酸配列をコードすることができる。
【0173】
例えば、本発明の例示的な核酸は、配列番号38、39、40、41、42、43、44もしくは45の核酸配列から選択される核酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含み、又は配列番号38、39、40、41、42、43、44、45の核酸配列から選択される核酸配列を含む。例えば、本発明の核酸は、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする核酸、又は配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0174】
本発明は、配列番号38、39、40、41、42、43、44、45の核酸配列から選択される核酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸、又は配列番号38、39、40、41、42、43、44、45の核酸配列から選択される核酸配列を含む核酸、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸、又は配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸と、ストリンジェンシー条件においてハイブリダイゼーションされた、又は、前記核酸に対して1つ以上の置換(例えば、保存的な置換)、欠失もしくは挿入を有する核酸をさらに含む。
【0175】
1つの実施形態において、前記核酸を含む1つ以上のベクターを提供する。1つの実施形態において、前記ベクターは発現ベクターで、例えば、真核発現ベクターである。ベクターの非限定的な例は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージ又は酵母人工染色体(YAC)を含む。様々なベクター系を使用できる。例えば、1種のベクターでは、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTVもしくはMOMLV)又はSV40ウイルスなどの動物ウイルスから誘導されたDNA構成要素が利用される。他種のベクターでは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、フラビウイルスなどのRNAウイルスから誘導されたRNA構成要素が利用される。本発明の好ましい実施形態において、前記発現ベクターはpTT5発現ベクターである。
【0176】
また、トランスフェクションされた宿主細胞に対する選択が可能な1つ以上のマーカーを導入することによって、染色体にDNAが安定的に導入された細胞を選択することができる。前記マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性、殺生物剤(例えば、抗生物質)耐性又は重金属(例えば、銅)耐性などを付与することができる。選択可能な標識遺伝子は発現されるDNA配列と直接連結することによって、又は同時形質転換により同一の細胞に導入することができる。mRNA合成の最適化のために、他に構成要素を必要とする場合がある。これらの構成要素は、スプライシングシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、終結シグナルを含んでもよい。
【0177】
発現用の発現ベクター又はDNA配列の用意が完了すると、適切な宿主細胞に発現ベクターをトランスフェクション又は導入することができる。上記の目的を達成するためには、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、パーティクルガン、脂質ベースのトランスフェクション又は他の通常技術など様々な技術を利用できる。プロトプラスト融合を利用する場合、培地において細胞を培養し適切な活性に対してスクリーニングする。生成されたトランスフェクション細胞の培養と生成された抗体分子の回収のための方法と条件は、当業者が知っている内容であり、本明細書に記載の方法と既存の技術により、使用された特定の発現ベクターと哺乳類宿主細胞によって改変又は最適化を行うことができる。
【0178】
1つの実施形態において、本発明の抗体分子をコードする核酸又は本発明に係るベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体をコードする核酸又はベクターをクローニング又は発現するための適切な宿主細胞は、本明細書で説明されている原核又は真核細胞を含む。例えば、抗体が細菌において生成され、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が不要な場合はそうである。細菌における抗体断片とポリペプチドの発現に関しては、例えば、米国特許第5,648,237号,第5,789,199号、第5,840,523号、及びCharlton,Methods in Molecular Biology,vol 248(edited by B.K.C.Lo,Humana Press,Totowa,NJ,2003),p245-254,大腸菌における抗体断片の発現)が参照される。抗体が発現された後、可溶性画分における細菌細胞のペースト状物からそれを単離して、さらに精製することができる。1つの実施形態において、前記宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0179】
1つの実施形態において、前記宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、前記宿主細胞は、酵母細胞、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)、昆虫細胞、植物細胞又は抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適する他の細胞から選択される。例えば、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに適するクローン又は発現宿主であり、グリコシル化経路の「ヒト化」により部分又は完全のヒトグリコシル化の形態を有する抗体を生成する真菌と酵母菌株を含む。これに関しては、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、Li et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)が参照される。グリコシル化抗体の発現に適する宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物、脊椎動物)から誘導されてもよい。脊椎動物の細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁化成長に適するように改変された哺乳類由来の細胞株を使用できる。使用可能な哺乳類由来の宿主細胞株の他の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓由来CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(293HEKもしくは293細胞、例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)の説明)などが挙げられる。使用可能な他の哺乳類由来の宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:216(1980))などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞や、Y0、NS0、Sp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体の生成に適する一部の哺乳類由来の宿主細胞株は、例えば、Yazaki&Wu,Methods in Molecular Biology,vol 248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),p255-268(2003)で概略的に説明されている。他に使用可能な宿主細胞の更なる非限定的な例は、Vero細胞、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、MDCKII細胞、PerC6細胞株(例えば、Crucell由来のPERC6細胞)、卵母細胞、遺伝子組換え動物由来の細胞、例えば、乳腺上皮細胞を含む。適切な昆虫細胞の非限定的な例はSf9細胞を含む。
【0180】
本発明の抗体及びその抗原結合断片の製造方法
組換えにより本発明の抗LAG-3抗体を製造できる。本分野において、組換え抗体の製造方法はいくつかある。組換えによる抗体の製造方法の1つの例は、米国特許第4,816,567号に開示されている。
【0181】
1つの実施形態において、抗LAG-3抗体の製造方法を提供する。前記方法は、抗体の発現に適する条件において、前述したように、前記抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、好ましくは前記宿主細胞(又は宿主細胞培地)から前記抗体を回収することとを含む。組換えにより抗LAG-3抗体を生成するために、抗体(例えば、上記の抗体)をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるクローニング及び/又は発現のために、それを1つ以上のベクターに挿入する。かかる核酸は、通常のプロセスにより単離しシークエンシングすることが可能である(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって行う)。
【0182】
1つの実施形態において、前記宿主細胞は、抗体のVLのアミノ酸配列をコードする核酸と、抗体のVHのアミノ酸配列をコードする核酸とを含有するベクターを含む。1つの実施形態において、前記宿主細胞は、抗体のVLのアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第1ベクターと、抗体のVHのアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第2ベクターとを含む。
【0183】
測定手法
本分野において既知の様々な測定手法を利用して、本発明の抗LAG-3抗体に対して同定、スクリーニング、又はその物理的/化学的特性及び/又は生理活性の特性評価を行うことができる。また、本発明の抗体に対する抗原結合活性の測定は、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、抗体分子複合磁気ビーズなどの既知の方法により行われる。本分野において既知の方法を利用してLAG-3の結合を測定でき、本明細書にはその方法が例示的に開示されている。いくつかの実施形態において、光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性計測)、MSD測定手法又はフローサイトメトリーが利用される。
【0184】
また、競合測定手法を利用して、本明細書で開示されている任意の抗LAG-3抗体に対して競合的にLAG-3と結合する抗体を同定することができる。いくつかの実施形態において、かかる競合的結合において抗体は、本明細書で開示されている任意の抗LAG-3抗体が結合するエピトープと同一のエピトープ(例えば、線形エピトープ又は立体配座エピトープ)と結合する。抗体が結合するエピトープの特定のための例示的な方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」,Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)で詳細に記載されている。
【0185】
本発明は、上記の1種以上の特性を有する抗LAG-3抗体を同定するための測定手法をさらに提供する。インビボ及び/又はインビトロにおいて、上記の生理活性を有する抗体をさらに提供する。
【0186】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体に対して上記の1種以上の特性を測定する。
任意の上記インビトロ測定手法に使用される細胞は、天然的にLAG-3を発現しもしくはLAG-3を発現するように改変された細胞又は細胞株を含む。LAG-3がいくつかの種類の細胞において発現される。例えば、LAG-3が活性化されたCD4+ T細胞とCD8+T細胞、Treg細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、形質細胞様樹状細胞(DC)において発現される。LAG-3が腫瘍浸潤リンパ球(例えば、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の浸潤リンパ球)において発現される。LAG-3が高度に抑制性の誘導型Treg、天然型Tregにおいて発現される。例えば、黒色腫又は結腸・直腸がんにおいて高度に抑制性のFoxP3+ nTreg、FoxP3-iTregはLAG-3陽性である(Camisaschi et al.,(2010)J.Immunol.184(11):6545-6551、Scurr et al.,(2014)Mucosal.Immunol.7(2):428-439)。かかる細胞は、LAG-3を発現する細胞株、通常の状態においてLAG-3が発現されないがLAG-3をコードする核酸によりトランスフェクションされた細胞株をさらに含む。
【0187】
なお、本発明の免疫複合体を利用して抗LAG-3抗体を置き換え又はそれを補足して、任意の上記の測定手法を実現できる。
なお、抗LAG-3抗体と他の治療剤を利用して、任意の上記の測定手法を実現できる。
【0188】
医薬組成物と薬物製剤
本発明は、抗LAG-3抗体もしくはその断片又はその免疫複合体を含む組成物(医薬組成物又は薬物製剤を含む)、抗LAG-3抗体又はその断片をコードする核酸を含む組成物をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記組成物は、LAG-3と結合する1種以上の抗体、その断片もしくはその免疫複合体、又はLAG-3と結合する1種以上の抗体もしくはその断片をコードする1種以上の核酸を含む。これらの組成物は、本分野で既知の薬用ベクター、緩衝剤を含む賦形剤などの適切な医薬品添加物をさらに含んでもよい。
【0189】
本発明に適する薬用ベクターは、石油、動物もしくは植物に由来する又は合成された、ピーナッツオイル、大豆油、鉱油、ごま油など、水、油などの滅菌液体であってもよい。医薬組成物を静脉内に投与する場合、水は担体として好ましい。さらに、生理塩水溶液、水性デキストロースとグリセリン溶液を液体担体として、注射溶液に用いることができる。
【0190】
適切な賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、ジオール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用とその用途に関しては、「Handbook of PharmaceuticalExcipients」,5th editon,R.C.Rowe,P.J.Seskey、S.C.Owen,PharmaceuticalPress,London,Chicagoが参照される。
【0191】
必要があれば、前記組成物は湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝剤をさらに少量に含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、徐放剤などの製剤形態を採用できる。経口製剤は、薬用マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的な担体及び/又は賦形剤を含んでもよい。
【0192】
所定の純度を有する本発明の抗LAG-3抗体を1種以上の好ましい医薬品添加物(Remington′s Pharmaceutical Sciences,16th edition,edited by Osol,A.(1980))と混合することによって、本発明の抗LAG-3抗体を含む薬物製剤、好ましくは凍結乾燥製剤又は水性製剤を製造できる。
【0193】
例示的な凍結乾燥抗体製剤に関する説明は、米国特許第6,267,958号が参照される。水性抗体製剤に関しては、米国特許第6,171,586号、世界特許WO2006/044908が参照される。当該製剤はヒスチジン-アセテート緩衝剤を含む。
【0194】
本発明の医薬組成物又は製剤は、1種以上の活性成分をさらに含んでもよい。前記活性成分は、特定の適応症の治療に必要であり、好ましくは互いにマイナスの影響を与えない活性的に相補な活性成分を含む。例えば、好ましくは、化学療法剤及び/又はPD-1軸結合拮抗剤(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体)などの他の抗がん活性成分をさらに提供する。前記活性成分は、目的用途において有効な量で適切に組み合わせた形で存在する。前記活性成分は、化学療法剤、抗体、他の治療剤などの抗LAG-3抗体と組み合わせることが可能な本分野で既知の任意の物質であってもよい。これらの活性成分の例としては、世界特許WO2016/028672、WO2015/042246、WO2015/138920などが参照される。
【0195】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体は、抗ヒトPD-1抗体、抗ヒトPD-L1抗体又は抗ヒトPD-L2抗体である。例えば、ヒト化された抗ヒトPD-1抗体、抗ヒトPD-L1抗体又は抗ヒトPD-L2抗体である。
【0196】
持続性放出製剤として製造できる。持続性放出製剤の適切な例は、抗体を含有する疎水性固体ポリマーによる半透性マトリックスを含む。前記マトリックスは、フィルム又はマイクロカプセルなどのように一定の形態を有する。
【0197】
抗体の用途
本発明の別の態様において、対象における免疫反応の調節方法に関する。当該方法は、対象における免疫反応が調節されるように、有効量の本発明の抗体分子(例えば、抗LAG-3抗体)、医薬組成物又は免疫複合体を対象に投与することを含む。1つの実施形態において、本発明の抗体分子(例えば、治療有効量の抗LAG-3抗体分子)、医薬組成物又は免疫複合体が対象における免疫反応を回復、増強、刺激又は増加させる。
【0198】
本発明の別の態様において、対象における腫瘍(例えば、がん)の予防又は治療の方法に関する。前記方法は、有効量の本発明の抗体分子(例えば、抗LAG-3抗体)、医薬組成物又は免疫複合体を前記対象に投与することを含む。1つの実施形態において、前記腫瘍は、消化器がん(例えば、がん)、例えば、結腸がんなどである。
【0199】
本発明の別の態様において、対象における感染性疾患の予防又は治療の方法に関する。前記方法は、有効量の本発明の抗体分子(例えば、抗LAG-3抗体)、医薬組成物又は免疫複合体を前記対象に投与することを含む。1つの実施形態において、前記感染性疾患は、慢性感染である。
【0200】
本発明の別の態様において、対象に抗体依存性細胞が介在する細胞傷害を引き起こす方法に関する。前記方法は、有効量の本発明の抗体分子(例えば、抗LAG-3抗体)、医薬組成物又は免疫複合体を前記対象に投与することを含む。
【0201】
前記対象は、霊長類などの哺乳類であってもよい。好ましくは、人間(例えば、本明細書に記載の疾患に罹患している又は本明細書に記載の疾患に罹患するリスクのある患者)などの高等霊長類である。1つの実施形態において、前記対象において、免疫反応を増強させる必要がある。いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体分子が対象における抗原特異性T細胞反応、例えば、抗原特異性T細胞反応におけるインターロイキン-2(IL-2)又はインターフェロン-γ(IFN-γ)の生成を回復、増強又は刺激させる。いくつかの実施形態において、前記免疫反応は抗腫瘍反応である。1つの実施形態において、前記対象は本明細書に記載の疾患(例えば、本明細書に記載の腫瘍又は感染性疾患)に罹患しており、又は本明細書に記載の疾患に罹患するリスクがある。いくつかの実施形態において、前記対象は免疫不全であり、又は免疫不全になるリスクがある。例えば、前記対象は化学療法治療及び/又は放射線治療を受けるか、又は既に前記治療を受けている。好ましくは、前記対象には感染により免疫不全が生じ、又は感染により免疫不全になるリスクがある。
【0202】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の腫瘍、例えば、がんの非限定的な例は、固形腫瘍、血液系がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)及びその転移性病巣を含む。1つの実施形態において、前記がんは固形腫瘍である。固形腫瘍の例は、悪性腫瘍を含み、例えば、肺、乳腺、リンパ、消化器系又は結腸・直腸、生殖器系と泌尿器系(例えば、腎細胞、膀胱細胞、膀胱細胞)、咽頭、中枢神経系(例えば、脳細胞、神経細胞又は神経膠細胞)、皮膚(例えば、黒色腫)、頭部と頸部(例えば、頭頸部扁平上皮がん(HNCC))と膵臓を侵襲する複数の器官系における肉腫とがん(例えば、腺がん)を含む。例えば、黒色腫、結腸がん、胃がん、直腸がん、腎細胞がん、乳がん(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体又はHer2/neuの1種、2種又は全てが発現されない乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(例えば、扁平上皮NSCLC及び/又は非扁平上皮NSCLC)又は小細胞性肝がん)、前立腺がん、頭頸部がん(例えば、HPV+扁平上皮がん)、小腸がんと食道がんが挙げられる。血液系がんの非限定的な例は、白血病(例えば、骨髄性白血病、リンパ性白血病又は慢性リンパ性白血病(CLL))、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫又はマントル細胞リンパ腫(MCL))、多発性骨髄腫などの骨髄腫を含む。がんは、早期、中期又は進行期にあるがん又は転移性がんであってもよい。
【0203】
いくつかの実施形態において、前記がんは、結腸・直腸がん(例えば、CRC)、末期黒色腫(例えば、II-IV級黒色腫)もしくはHLA-A2陽性-黒色腫などの黒色腫、末期膵臓がんなどの膵臓がん、転移性乳がんもしくはトリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、頭頸部がん(例えば、HNSCC)、食道がん、腎淡明細胞がん(ccRCC)もしくは転移性腎細胞がん(MRCC)などの腎細胞がん(RCC)、肺がん(例えば、NSCLC)、子宮頸がん、膀胱がん、又は、白血病(例えば、リンパ球白血病)もしくはリンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)もしくは再発性又は難治性の慢性リンパ性白血病などのCLL)などの血液系悪性疾患から選択される。
【0204】
本発明の方法と組成物は、前記がんに関連する転移性病巣の治療に用いることができる。
いくつかの実施形態において、前記がんは、LAG-3を発現するがんであり、特に転移性がんである。いくつかの実施形態において、前記がんは、PD-L1を発現するがんである。いくつかの実施形態において、前記がんは、LAG-3とPD-L1を発現するがんである。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のがんは、結腸がんとその転移性病巣である。
いくつかの実施形態において、前記感染は、急性感染又は慢性感染である。いくつかの実施形態において、前記慢性感染は、持続性、潜伏性を有しており、又は緩慢的である。いくつかの実施形態において、前記慢性感染は、細菌、ウイルス、真菌、原生動物から選択される病原体により生じる。
いくつかの実施形態において、前記感染性疾患は、ウイルス感染によって引き起こされる。病原性ウイルスのいくつかの例は、(A型、B型及びC型)肝炎ウイルス、(A型、B型及びC型)インフルエンザウイルス、HIV、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、CMV、エプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルス、アデノウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、乳頭腫、伝染性軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、アルボウイルスを含む。
【0205】
いくつかの実施形態において、前記感染は細菌感染である。感染を引き起こす病原菌のいくつかの例は、梅毒トレポネーマ、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、髄膜炎菌、淋菌(conococci)、クレブシエラ、変形菌、セラチア菌、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア菌、サルモネラ、バシラス属、コレラ菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト菌、レプトスピラ、ボレリア・ブルグドルフェリを含む。
【0206】
いくつかの実施形態において、前記感染は真菌感染である。病原性真菌のいくつかの例は、カンジダ(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)など)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)など)、ケカビ目(Mucorales)(ケカビ(mucor)、ユミケカビ(bsidia)、クモノスカビ(rhizophus))、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。
【0207】
いくつかの実施形態において、前記感染は、寄生虫などの原生動物による感染である。前記寄生虫のいくつかの例は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba sp.)、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondi)、ブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0208】
1つの実施形態において、前記感染性疾患は肝炎(例えば、B型肝炎感染)である。抗LAG-3抗体分子(単独又は抗PD-1もしくは抗PD-L1などのPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせ)は、治療上のその利点によりB型肝炎感染の通常の治療と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体分子はB型肝炎抗原(例えば、Engerix B)又はワクチンと組み合わせて投与され、好ましくは含アルミニウムアジュバントと組み合わせて投与される。
【0209】
別の実施形態において、前記感染性疾患はインフルエンザである。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体分子はインフルエンザ抗原又はワクチンと組み合わせて投与される。
【0210】
本発明の抗LAG-3抗体もしくはその断片で予防又は治療される疾患に関しては、さらに、世界特許WO2015/138920、WO2016/028672、WO2015/042246などが参照される。
【0211】
本発明の他の態様において、薬物を生産又は製造するための、抗LAG-3抗体もしくはその断片又はその免疫複合体の用途を提供する。前記薬物は、上記の関連の疾患又は病的状態の治療に用いられる。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体もしくは抗体断片又は免疫複合体は、病的状態及び/又は病的状態に関連する症状の出現を遅延することができる。
【0212】
併用療法
本発明のいくつかの実施形態において、前記予防又は治療方法は、本発明の抗体分子(例えば、抗LAG-3抗体)もしくは医薬組成物又は免疫複合体と、PD-1軸結合拮抗剤もしくは前記PD-1軸結合拮抗剤を含む薬物又は免疫複合体を併用して前記対象又は個体に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記PD-1軸結合拮抗剤は、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体を含む。
【0213】
いくつかの実施形態において、前記PD-1軸結合拮抗剤の非限定的な例は、PD-1結合拮抗剤、PD-L1結合拮抗剤、PD-L2結合拮抗剤を含む。「PD-1」の名称候補は、CD279、SLEB2を含む。「PD-L1」の名称候補は、B7-H1、B7-4、CD274、B7-Hを含む。「PD-L2」の名称候補は、B7-DC、Btdc、CD273を含む。いくつかの実施形態において、PD-1、PD-L1、PD-L2は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、ヒトPD-L2である。いくつかの実施形態において、PD-1結合拮抗剤は、PD-1とそのリガンド結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-1のリガンド結合対象は、PD-L1及び/又はPD-L2である。別の実施形態において、前記PD-L1結合拮抗剤は、PD-L1とその結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-L1の結合対象は、PD-1及び/又はB7.1である。別の実施形態において、前記PD-L2結合拮抗剤は、PD-L2とその結合対象の結合を抑制する分子である。1つの特定の態様において、前記PD-L2の結合対象はPD-1である。拮抗剤は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質又はオリゴペプチドであってもよい。いくつかの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、前記抗PD-1抗体は、MDX-1106(nivolumab、OPDIVO)、Merck 3475(MK-3475、pembrolizumab、KEYTRUDA)、CT-011(Pidilizumab)から選択される。いくつかの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は、イムノアドヘシンである(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)、PD-L1もしくはPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分に融合されたイムノアドヘシンを含む)。いくつかの実施形態において、前記PD-1結合拮抗剤は、AMP-224である。いくつかの実施形態において、前記PD-L1結合拮抗剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、前記抗PD-Ll結合拮抗剤は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI4736、MDX-1105から選択される。MDX-1105は、BMS-936559とも呼ばれ、世界特許WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70(重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列をそれぞれ配列番号20、21に示される)は、世界特許WO2010/077634(A1)に記載されている抗PD-L1である。MDX-1106は、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558又はnivolumabとも呼ばれ、世界特許WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。Merck 3475は、MK-3475、SCH-900475又はpembrolizumabとも呼ばれ、世界特許WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT、hBAT-1又はpidilizumabとも呼ばれ、世界特許WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとも呼ばれ、世界特許WO2010/027827、WO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。いくつかの実施形態において、前記抗PD-1抗体はMDX-1106である。「MDX-1106」の名称候補は、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558又はnivolumabを含む。いくつかの実施形態において、前記抗PD-1抗体は、nivolumab(CAS登録番号946414-94-4)である。好ましい実施形態において、前記抗PD-1抗体は、本明細書に記載の「Antibody C」又はAntibody Dである。
【0214】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体は、抗PD-L1抗体と併用して治療に用いることもできる。
【0215】
いくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体は、抗ヒトPD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体は、IgG1形態の抗体、IgG2形態の抗体又はIgG4形態の抗体である。いくつかの実施形態において、前記抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、前記抗PD-L1抗体はヒト化された抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトに共有するフレームワーク配列である。1つの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体は、その抗体断片、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)もしくは(Fab’)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)又は線形抗体から選択される抗体断片をさらに含む。
具体的にいくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号57に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(HCDR)、及び/又は
(ii)配列番号58に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域(LCDR)を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記HCDR1は配列番号51のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、前記HCDR2は配列番号52のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、前記HCDR3は配列番号53のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、
且つ/又は
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、前記LCDR1は配列番号54のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、前記LCDR2は配列番号55のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成され、前記LCDR3は配列番号56のアミノ酸配列を含むかもしくは前記アミノ酸配列より構成される。
いくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
(a)重鎖可変領域(VH)は、
(i)配列番号57のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(ii)配列番号57のアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号57のアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変はCDR領域に生じない。
且つ/又は、
(b)軽鎖可変領域(VL)は、
(i)配列番号58のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号58のアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号58のアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変はCDR領域に生じない。
【0216】
いくつかの実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、重鎖及び/又は軽鎖を含む。
(a)重鎖は、
(i)配列番号59のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号59のアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号59のアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは20個以下もしくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変は重鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸改変は重鎖可変領域に生じない。
且つ/又は、
(b)軽鎖は、
(i)配列番号60のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれによって構成され、
(ii)配列番号60のアミノ酸配列を含むかもしくはそれによって構成され、又は
(iii)配列番号60のアミノ酸配列に対して、1つ以上(好ましくは20個以下もしくは10個以下、より好ましくは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸改変(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記アミノ酸改変は軽鎖のCDR領域に生じず、より好ましくは、前記アミノ酸改変は軽鎖可変領域に生じない。
【0217】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体に対する修飾は抗PD-L1抗体にも適する。
【0218】
さらに、いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、1種以上の他の療法、例えば、治療方式及び/又は他の治療剤と組み合わせて投与することができる。
【0219】
いくつかの実施形態において、前記治療方式は、外科的手術(例えば、腫瘍切除)、放射線治療(例えば、照射領域が設定された三次元原体放射線治療などの外部粒子ビーム療法)、局所照射(例えば、所定の標的もしくは器官に対する照射、又は集中的照射)などを含む。前記集中的照射は、定位放射線手術、分割定位放射線手術、強度変調放射線治療から選ばれてもよい。前記集中的照射は、例えば、世界特許WO2012/177624に説明されているとおり、粒子ビーム(プロトン)、コバルト-60(フォトン)、線形加速器(X線)から選択される放射線源を有してもよい。
【0220】
前記放射線治療は、非限定的ではあるが、外部粒子ビーム療法、内部照射療法、インプラント照射、定位放射線手術、全身照射療法、放射線治療、永久の又は短期の間質性近接照射療法のいずれかの方法で、又はこれらの方法の組み合わせとして行うことができる。用語「近接照射療法」とは、一定の空間範囲に限定された放射性物質によって行われる放射線治療を指す。前記放射性物質は、腫瘍もしくは他の増殖性組織である疾患部位に、又はその近傍より体内に投与される。当該用語は、放射性同位体(例えば、At-211、I-131、I-125、Y-90、Re-186、Re-188、Sm-153、Bi-212、P-32、Luなどの放射性同位体)への曝露を含むが、これに限定されない。適切な放射線源は、固体、液体を含む。前記放射線源の非限定的な例としては、I-125、I-131、Yb-169、Ir-192など、I-125などの固体放射線源としての放射性同位体、又はフォトン、β粒子、γ線もしくは他の治療用放射線を発射する他の放射性同位体が挙げられる。放射性物質は、任意の放射性同位体の溶液から、例えば、I-125又はI-131の溶液から調製された液体から、又は放射性同位体(例えば、Au-198、Y-90)の固体粒子を含有する適切な液体である懸濁液から放射性液体を生成してもよい。また、放射性同位体はゲル又は放射性ミクロスフェアに含まれてもよい。
【0221】
いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、抗感染症剤又は免疫調節剤(例えば、共刺激分子の活性化剤又は免疫チェックポイント分子の抑制剤)から選択される。
細胞傷害剤の非限定的な例は、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ抑制剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、アントラサイクリン系、ビンブラスチン系アルカロイド、インターカレーション、シグナル伝達経路に干渉できる活性化剤、アポトーシス誘導剤、プロテアソーム抑制剤、照射(例えば、局所照射又は全身照射(例えば、γ線)を含む。
【0222】
他の抗体の非限定的な例は、免疫チェックポイント抑制剤(例えば、抗CTLA-4、抗TIM-3、抗CEACAM)、免疫細胞刺激抗体(例えば、GITRアゴニスト抗体又はCD137抗体)、抗がん抗体(例えば、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)又はMabThera(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、エプラツズマブ(Lymphocide(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))などを含む。
【0223】
化学療法剤の非限定的な例は、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、ブレオマイシン硫酸塩(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射剤(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標)、N4-ペンチルオキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン)、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)又はNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射剤(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(dactinomycin)(アクチノマイシンD、Cosmegan)、ダウノマイシン塩酸塩(Cerubidine(登録商標))、ダウノマイシンクエン酸塩リポソーム化注射剤(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、フルダラビンリン酸塩(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、tezacitibine、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダマイシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ホリン酸カルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(ミトキサントロン)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(mylotarg)、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、phoenix(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、ポリフェプロサン20担持カルムスチンインプラント(Gliadel(登録商標))、タモキシフェンクエン酸塩(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、ビノレルビン(ビノレルビン)、イブルチニブ、イデラリシブ(idelalisib)和ブレンツキシマブ・ベドチン(brentuximab vedotin)を含む。
【0224】
ワクチンの非限定的な例はがんワクチンを含む。前記ワクチンとしては、DNAによるワクチン、RNAによるワクチン又はウイルス形質導入によるワクチンが挙げられる。前記がんワクチンは、予防用であってもよいし、又は治療用であってもよい。いくつかの実施形態において、前記がんワクチンは、がんペプチドワクチンである。また、いくつかの実施形態において、個別化ペプチドワクチンである。いくつかの実施形態において、前記がんペプチドワクチンは多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチド混合物、ハイブリッドペプチド、又はペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci,104:14-21,2013が参照される)。
【0225】
抗感染症剤の非限定的な例は、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤、抗菌剤、例えば、上記のヌクレオシド類似体のジドブジン(AST)、ガンシクロビル、ホスカルネット又はcidovirなどを含む。
【0226】
免疫調節剤は、免疫チェックポイント分子の抑制剤、共刺激型分子活性化剤を含む。
いくつかの実施形態において、前記免疫チェックポイント分子の抑制剤は、CTLA-4、TIM-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CEACAM(例えば、CEACAM-1及び/又はCEACAM-5)及び/又はTGFRの抑制剤である。分子に対する抑制は、DNA、RNA又はタンパク質のレベルにおいて行われてもよい。いくつかの実施形態において、抑制性の核酸(例えば、dsRNA、siRNA又はshRNA)は、免疫チェックポイント分子の発現を抑制するために用いることができる。他の実施形態において、免疫チェックポイント分子の抑制剤は、免疫チェックポイント分子と結合するポリペプチドである。例えば、可溶性リガンド、抗体又は抗体断片である。TIM-3抗体分子の非限定的な例は、MBG220、MBG227、MBG219を含む。
【0227】
他の実施形態において、免疫調節剤は、CTLA4の可溶性リガンド(例えば、CTLA-4-Ig又はTIM-3-Ig)、その抗体又は抗体断片である。例えば、抗LAG-3抗体分子(単独又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせ)は、CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)と組み合わせて投与できる。例示的な抗CTLA4抗体は、トレメリムマブ(tremelimumab)(ファイザー提供のIgG2モノクローナル抗体、旧称ticilimumab、CP-675、206)、イピリムマブ(CTLA-4抗体、別名MDX-010、CAS登録番号477202-00-9)を含む。
【0228】
いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、共刺激分子の活性化剤又はアゴニストである。1つの実施形態において、共刺激分子のアゴニストは、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3又はCD83リガンドから選択される分子のアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体もしくはその抗原結合断片、又は可溶性融合物)である。別の実施形態において、抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、CD28、CD27、ICOS、GITRの共刺激ドメインを含む共刺激分子(例えば、フォワードシグナルに関連するアゴニスト)と組み合わせて投与される。例示的なGITRアゴニストは、GITR融合タンパク質、抗GITR抗体(例えば、二価の抗GITR抗体)、例えば、米国特許第6,111,090号、欧州特許第090505B1号、米国特許第8,586,023号、世界特許公開第WO2010/003118号、第2011/090754号に説明されているGITR融合タンパク質を含む。抗GITR抗体の一例は、TRX518である。
【0229】
さらに、いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、チロシンキナーゼ抑制剤(例えば、受容体チロシンキナーゼ(RTK)抑制剤)と組み合わせて投与されてもよい。チロシンキナーゼ抑制剤の非限定的な例は、上皮成長因子(EGF)経路抑制剤(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)抑制剤)、血管内皮増殖因子(VEGF)経路抑制剤(例えば、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)抑制剤(例えば、VEGFR-1抑制剤、VEGFR-2抑制剤、VEGFR-3抑制剤)、血小板由来成長因子(PDGF)経路抑制剤(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)抑制剤(例えば、PDGFR-β抑制剤))、RAF-1抑制剤、KIT抑制剤、RET抑制剤を含む。
【0230】
いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、PI3K抑制剤、mTOR抑制剤、BRAF抑制剤、MEK抑制剤及び/又はJAK2抑制剤などと組み合わせて投与されてもよい。
【0231】
本発明の任意の方法に係るいくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせ投与と、腫瘍抗原の投与とを組み合わせる。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌由来抗原、又は病原体由来抗原である。いくつかの実施形態において、前記腫瘍抗原はタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、前記腫瘍抗原は核酸を含む。いくつかの実施形態において、前記腫瘍抗原は腫瘍細胞である。
【0232】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、養子移入によりキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞又はCTL)を含む治療と併用して投与されてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、抗腫瘍剤と併用して投与されてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、腫瘍溶解性ウイルスと併用して投与されてもよい。
【0233】
いくつかの実施形態において、本発明の抗LAG-3抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、サイトカインと併用して投与されてもよい。サイトカインは抗LAG-3抗体分子との融合分子として投与されてもよいし、又は単独の組成物として投与されてもよい。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体は、1種、2種、又は3種以上のサイトカイン(例えば、融合分子として、又は単独の組成物として)と組み合わせて投与される。1つの実施形態において、前記サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-12、IL-12、IL-15又はIL-21の1種、2種、又は3種以上から選択されるインターロイキン(IL)である。
【0234】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、本分野の通常の抗がん療法と組み合わせることができる。通常の抗がん療法の非限定的な例は、(i)放射線治療(例えば、放射線治療、X線療法、照射)又は電離放射線によるがん細胞の死滅と腫瘍の縮小であって、放射線治療は外部照射療法(EBRT)又は内部近接照射療法として行われる抗がん療法、(ii)化学療法、又は細胞毒性薬の使用であって、一般に迅速に分裂する細胞に影響を与える抗がん療法、(iii)標的療法、又はがん細胞タンパク質が脱調節するように特異的な影響を与える薬剤(例えば、チロシンキナーゼ抑制剤イマチニブ(imatinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、モノクローナル抗体、光線力学療法)、(iv)免疫療法、又は宿主免疫応答の増強(例えば、ワクチン)、(v)ホルモン療法、又はホルモン系遮断薬(例えば、ホルモン感受性の腫瘍に対して)、(vi)血管新生抑制剤、又は血管の形成と成長の遮断、(vii)緩和ケア、又はより強烈な治療計画が実施できるように、ケアの質の改善により、痛み、悪心、嘔吐、下痢、出血を軽減する治療であって、痛みを軽減する薬物としてモルヒネ(morphine)、オキシコドン(oxycodone)、制吐薬・催吐薬としてオンダンセトロン(ondansetron)、アプレピタント(aprepitant)が挙げられる抗がん療法を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその断片は、単独で又はPD-1軸結合拮抗剤との組み合わせとして、宿主の免疫機能を増強するための通常の方法と組み合わせることができる。前記通常の方法の非限定的な例は、(i)APC強化、例えば(a)異種MHCの同種異系抗原をコードするDNAの腫瘍への注射、又は(b)免疫抗原が認識される確率が高くなるように関連の遺伝子(例えば、免疫刺激サイトカイン、GM-CSF、共刺激分子B7.1、B7.2)の生検腫瘍細胞へのトランスフェクション、(iii)養子細胞免疫療法、又は活性化された腫瘍特異性T細胞による治療を含む。前記養子細胞免疫療法は、例えば、IL-2もしくは腫瘍又は両者の刺激によりインビトロにおいて増幅させることによって、腫瘍が浸潤する宿主Tリンパ球を単離することを含む。また、単離された機能障害性のT細胞は、インビトロにおいて本発明の抗体を用いて活性化することができ、これにより、活性化されたT細胞は宿主に戻すことができる。
【0236】
上記の各種の療法の組み合わせは、治療に際しさらに組み合わせることができる。
抗LAG-3抗体と他の治療方式又は治療剤の組み合わせの更なる例は、世界特許WO2015/138920、WO2016/028672、WO2015/042246などが参照される。
【0237】
このような療法の組み合わせは、併用投与(2種以上の治療剤が同一の製剤に含まれ、又は別々の製剤に含まれる)、別々の投与を含む。後者の場合は、本発明の抗体の投与は、別の療法、例えば、治療方式及び/又は治療剤の前に、それと同時に、及び/又はその後に行われる。抗体分子の投与及び/又は他の療法、例えば、治療剤の投与又は治療方式は、活動性疾患の活動期、寛解期、又は活動性が低い非活動期のいずれかにおいて行われる。抗体分子は、他の治療の前に、他の治療と同時に、他の治療後に、又は疾患の寛解期に投与されてもよい。
【0238】
1つの実施形態において、抗LAG-3抗体の投与と他の療法(例えば、治療方式又は治療剤の投与)は約1か月間以内、又は約1週間以内、2週間以内もしくは3週間以内、又は約1日間以内、2日間以内、3日間以内、4日間以内、5日間以内、もしくは6日間以内に行われる。
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されている抗体の組み合わせは、別々に投与されてもよい。例えば、単独の抗体としてそれぞれ投与され、又は連結させた後に(例えば、二重特異性の又は三重特異性の抗体分子として)投与される。
なお、本発明の免疫複合体で抗LAG-3抗体を置き換え又はそれを補足して任意の治療を行うことができる。
【0239】
投与経路と投与量
本発明の抗体(及びそれを含む医薬組成物又は免疫複合体、任意の他の治療剤)は、非経口投与、肺内投与、鼻腔内投与を含む任意の適切な方法により投与されてもよく、且つ、局所治療の場合は、病巣内に投与されてもよい。前記非経口注入は、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与を含む。なお、投与期間の長さによって、例えば、静脈内注射投与又は皮下注射投与などの注射を含む任意の適切な経路にすることができる。本発明において、非限定的ではあるが、単回投与又は複数の時刻での複数回投与、ボーラス投与、パルス療法などの様々な頻度の投与が含まれる。
【0240】
本発明の抗体は、疾患の予防又は治療に用いられる場合、その適切な投与量(単独で投与される場合又は1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与される場合)が、治療対象疾患の種類、抗体のタイプ、疾患の重症度とその経過、前記抗体の投与が予防目的であるか治療目であるか、これまでの治療歴、患者の臨床病歴、前記抗体に対する応答、主治医の判断によって決定される。前記抗体は、単回の治療として、又は一連の治療において患者に適切に投与される。
【0241】
いくつかの実施形態において、所望の反応(例えば、治療反応)が得られるように、投与計画を調整する。例えば、ボーラス投与してもよいし、治療の段階によって異なる投与量で投与されてもよいし、又は疾患の重症度によって、投与量を適宜減少又は増加してもよい。特に、投与量と投与の一様性が保証しやすいように、1回投与量分の形態で非経口組成物として製造されることが好ましい。本明細書で使用される「1回投与量分の形態」とは、治療対象に対する1回の投与量分として適する物理的に分離しているユニットを指す。各ユニットは、所定の量の活性化合物を含有し、前記所定の量は、所定の薬用ベクターと結合すると所望の治療効果が得られるように算出される。本発明における1回投与量分の形態は、その仕様が(a)活性化合物の特性と達成したい特定の治療効果、(b)感受性の個体における当該活性化合物の混合による治療に関する特定の制限によって決定される。
【0242】
いくつかの実施形態において、抗体分子の治療有効量又は予防有効量の非限定的な範囲は、0.1-30mg/kgであり、好ましくは1-25mg/kgであり、より好ましくは5-15mg/kgである。抗LAG-3抗体分子の投与量と投与計画は、当業者が決定してもよい。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、約1-40mg/kg、例えば、1-30mg/kg、例えば、約5-25mg/kg、約10-20mg/kg、約1-5mg/kg、1-10mg/kg、5-15mg/kg、10-20mg/kg、15-25mg/kg又は約3mg/kgの投与量で、注射(例えば、皮下又は静脈内)投与される。投与計画は、例えば、週に1回から2週に1回、3週に1回又は4週に1回に変更してもよい。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体分子が約10-20mg/kgの投与量で2週間ごとに投与される。抗体分子は投与量が約35-440mg/m2、好ましくは約70-310mg/m2、より好ましくは約110-130mg/m2になるよう、20mg/min以上、例えば、20-40mg/min、好ましくは40mg/min以上の速度で静脈内注入により投与されてもよい。1つの実施形態において、約3mg/kgの投与量になるよう、約110-130mg/m2の速度で注入される。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体分子が約3-800mg(例えば、約3mg、20mg、80mg、240mg又は800mg)の投与量で投与(例えば、静脈内投与)される。いくつかの実施形態において、抗LAG-3抗体分子が約20-800mg(例えば、約3mg、20mg、80mg、240mg又は800mg)の投与量で、単独で投与される。他の実施形態において、抗LAG-3抗体分子が約3-240mg(例えば、約3mg、20mg、80mg又は240mg)の投与量で、第2活性化剤又は治療方式(例えば、本明細書に記載の第2活性化剤又は治療方式)と組み合わせて投与される。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体分子が8週間のサイクルごとに、例えば、最大96週間にわたり2週間ごとに(例えば、1週目、3週目、5週目、7週目)に投与される。
【0243】
いくつかの実施形態において、抗体分子は投与量が約35-440mg/m2、好ましくは約70-310mg/m2、より好ましくは約110-130mg/m2になるよう、20mg/min以上、例えば、20-40mg/min、好ましくは40mg/min以上の速度で静脈内注入により投与される。1つの実施形態において、約3mg/kgの投与量になるよう、約110-130mg/m2の速度で注入される。他の実施形態において、抗体分子は投与量が約1-100mg/m2、例えば、約5-50mg/m2、約7-25mg/m2、より好ましくは、約10mg/m2になるよう、10mg/min未満、例えば、5mg/min以下の速度で静脈内注入により投与される。いくつかの実施形態において、抗体が約30minで注入される。
【0244】
別の実施形態において、抗LAG-3抗体分子が抗PD-1抗体分子と組み合わせて投与される。適切な投与量としては、例えば、約1-10mg/kg(例えば、3mg/kg)の抗PD-1抗体分子が挙げられる。抗LAG-3抗体分子が約20-800mg、例えば、約20mg、80mg、240mg又は800mgの投与量で併用して投与されてもよい。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体分子は、8週間のサイクルごとに(例えば、最大96週間にわたり)、2週間ごとに(例えば、1週目に、3週目に、5週目に、7週目に)投与される。
【0245】
診断方法、検出方法と組成物
いくつかの実施形態において、本発明の任意の抗LAG-3抗体又はその抗原結合断片は、生体サンプルにおけるLAG-3の存在を検出するために用いることができる。本明細書で使用される用語「検出」は、定量的検出又は定性的検出を含む。例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISA測定、PCR技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記生体サンプルは血、血清又は生体に由来する他の液体サンプルである。いくつかの実施形態において、前記生体サンプルは細胞又は組織を含む。いくつかの実施形態において、前記生体サンプルは過剰増殖性の病巣又はがん性病巣に由来する。
【0246】
1つの実施形態において、診断又は検出方法に用いる抗LAG-3抗体を提供する。別の態様において、生体サンプルにおけるLAG-3の存在を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記方法は、生体サンプルにおけるLAG-3タンパク質の存在の検出を含む。いくつかの実施形態において、前記LAG-3はヒトLAG-3である。いくつかの実施形態において、前記方法は、生体サンプルを本発明の抗LAG-3抗体と、抗LAG-3抗体とLAG-3が結合できる条件において接触させることと、抗LAG-3抗体とLAG-3が複合物を形成しているかどうかを検出することとを含む。複合物を形成している場合は、LAG-3の存在が示される。当該方法は、インビトロで行われてもよいし、又はインビボで行われてもよい。1つの実施形態において、抗LAG-3抗体が抗LAG-3抗体による治療に適する対象の選択に用いられる。例えば、LAG-3は前記対象を選択するバイオマーカーである。
【0247】
1つの実施形態において、本発明の抗体を利用してがん又は腫瘍の診断を行い、例えば、対象における本明細書に記載の疾患(例えば、過剰増殖性の疾患又はがん性疾患)の治療又は進行、その診断及び/又は病期の評価(例えば、監視)を行うことができる。
【0248】
いくつかの実施形態において、標識された抗LAG-3抗体を提供する。前記標識の非限定的な例は、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識)と、酵素触媒反応又は分子間の相互作用などにより間接的に検出される部分(例えば、酵素又はリガンド)とを含む。前記標識の非限定的な例は、放射性同位体、例えば、32P、14C、125I、3H、131Iなど、フルオロフォア、例えば、希土類キレートもしくはフルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル(dansyl)、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ルシフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタル由来ルシフェラーゼ、細菌由来ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、フルオレセイン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、炭水化物オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環オキシダーゼ、例えば、尿酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、過酸化水素染料前駆体からなる酵素、例えば、HR、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定的なフリーラジカルなどを含む。
【0249】
本明細書に記載の任意の発明のいくつかの実施形態において、サンプルが抗LAG-3抗体による治療前に取得される。いくつかの実施形態において、前記サンプルは抗がん薬による治療前に取得される。いくつかの実施形態において、前記サンプルはがんの転移後に取得される。いくつかの実施形態において、前記サンプルはホルマリンで固定され、パラフィン包埋(FFPE)されている。いくつかの実施形態において、前記サンプルは生検(例えば、コア生検)検体、手術標本(例えば、手術切除による標本)、又は吸引物である。
いくつかの実施形態において、治療前に、例えば、治療の開始前に又は治療間隔後の治療前にLAG-3を検出する。
【0250】
いくつかの実施形態において、腫瘍又は感染の治療方法を提供する。前記方法は、対象(例えば、サンプル、例えば、がん細胞を有する対象のサンプル)にLAG-3の存在を検出することによって、LAG-3値を決定することと、LAG-3値を対照値と比較し、LAG-3値が対照値を上回る場合、対象に対し、治療有効量の、好ましくは1種以上の他の療法と組み合わせて、抗LAG-3抗体(例えば、本明細書に記載の抗LAG-3抗体)を単独で又はPD-1軸結合拮抗剤と組み合わせて投与することによって、腫瘍又は感染を治療することとを含む。
【0251】
本発明の例示的な抗LAG-3抗体の配列
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
本発明に係る上記の態様、他の態様及び実施形態は、図面(図面の簡単な説明が添えられる)、本発明の詳細な記載の部分において説明されており、次の実施例においてその例が挙げられる。本発明の上述した特徴、本明細書で説明されているいずれの特徴又は全ての特徴は本発明の様々な実施形態において組み合わせることができる。次に、実施例を用いて本発明のさらなる説明を行うが、これらの実施例は説明目的のものに過ぎず、限定を加えるためのものではない。したがって、当業者は適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0252】
実施例1:酵母ディスプレイ技術による抗LAG-3完全ヒト抗体のスクリーニング
従来の方法(世界特許WO2009036379、WO2010105256、W02012009568)を用いて、酵母ベースの抗体ディスプレイ(yeast-based antibody presentation)ライブラリーに対して、各ライブラリーの多様性が1×10になるよう増幅させる。簡単に説明すると、最初の2回のスクリーニングにおいて、Miltenyi社のMACSシステムを利用して磁気活性化による細胞選別を行う。最初に、FACS洗浄緩衝液(リン酸塩緩衝液、0.1%ウシ血清アルブミン含有)において、ライブラリーの酵母細胞(最大1×1010個の細胞/ライブラリー)をそれぞれ室温で15minインキュベートする。緩衝液が100nMのビオチンで標識されたヒトLAG-3抗原(ArcoBiosystems)を含有する。予め冷却されたFACS洗浄緩衝液50mlで洗浄し、次に同洗浄緩衝液40mlで細胞を再懸濁し、ストレプトマイシンビーズ(Miltenyi LS)500μlを加えて4℃で15minインキュベートする。1000rpmで5min遠心分離して上清を捨て、FACS洗浄緩衝液5mlで細胞を再懸濁し、細胞溶液をMiltenyi LSカラムに加える。サンプルをロードした後、カラムを3回洗浄し、各回にFACS洗浄緩衝液3mlを使用する。磁気領域からMiltenyi LSカラムを取り外し、成長培地5mlで溶出し、溶出された酵母細胞を回収し、37℃で一晩成長させる。
【0253】
フローサイトメーターを利用して、次回の選別を行う。具体的には、MACSシステムによってスクリーニングされた約1×10の酵母細胞に対してFACS緩衝液で3回洗浄し、室温で低濃度のビオチン(100-1nM)標識を含有するヒトLAG-3抗原において培養する。培養液を捨て、FACS洗浄緩衝液で細胞を2回洗浄した後、細胞をLC-FITC(FITCによって標識されたヤギ抗ヒト免疫グロブリンのF(ab’)κ鎖抗体、Southern Biotech)(1:100希釈)と混合し、SA-633(ストレプトアビジン-633、Molecular Probes)(1:500希釈)又はSA-PE(ストレプトアビジン-フィコエリスリン、Sigma)(1:50希釈)試薬と混合し、4℃で15min培養する。予め冷却されたFACS洗浄緩衝液で2回溶出し、緩衝液0.4mlに再懸濁し、フィルターを備える分離管に細胞を移す。FACS ARIA(BD Biosciences)を用いて細胞を選別する。
30℃で、スクリーニングして得られた抗ヒトLAG-3抗体を発現する酵母細胞を振とうし48時間誘導することによって、抗ヒトLAG-3抗体を発現する。誘導完了後、1300rpmで10min遠心分離して酵母細胞を除去し、上清液を得る。上清液における抗ヒトLAG-3抗体に対して、Protein Aを用いて精製し、pH2.0の酢酸溶液で溶出して、抗ヒトLAG-3抗体を得る。抗体純度は95%を上回る。
当該スクリーニングにより、抗体ADI-26789、抗体ADI-26869を得る。
【0254】
実施例2:抗ヒトLAG-3抗体の親和性の最適化
親和性がより高い抗ヒトLAG-3抗体を得るために、次の方法により抗体ADI-26789、ADI-26869に対し最適化を行う。
【0255】
VHmutスクリーニング
当該方法は、通常のミスマッチPCR方法により抗体重鎖領域に突然変異を導入することである。PCRを行う過程で、1μMの高頻度突然変異の塩基類似体dPTPと8-oxo-dGTPを利用して、塩基ミスマッチの概率を約0.01bpに上げる。
【0256】
得られたミスマッチPCR生成物に対し、相同組換えの方法により重鎖定常領域を含有するベクターに導入する。当該方法により、LAG-3抗原価を含み、非標識抗原による競合と親抗体競合を用いるスクリーニング条件において、ライブラリーの容量が1×10の二次ライブラリーを得る。FACS方法により3回のスクリーニングに成功している。
【0257】
CDRH1/CDRH2スクリーニング
VHmut方法により得られた子孫抗体のCDRH3遺伝子を、多様性が1×10のCDRH1/CDRH2遺伝子プールに導入し、それに対し3回のスクリーニングを行う。1回目でMACS方法を用い、2回目、3回目ではFACS方法を用いて、抗体抗原結合物に対し厳格なスクリーニング条件を用いて、親和性が最大の抗体を得る。
上述したように親和性を成熟させることで、親和性がより高い抗ヒトLAG-3モノクローナル抗体のADI-31851とADI-31853を得る。
【0258】
実施例3:HEK293細胞における発現と精製
本発明の例示的な4つの抗体(ADI-26789、ADI-26869、ADI-31851、ADI-31853)のCDR領域、軽鎖可変領域と重鎖可変領域、軽鎖と重鎖のアミノ酸配列、対応する核酸配列とその番号を本明細書の表1-表4に示している。
本分野の通常の方法を利用して、各抗LAG-3抗体の軽鎖アミノ酸配列と重鎖アミノ酸配列をコードするcDNAをそれぞれ発現ベクターpTT5にクローニングする。
メーカーが提供する方法に従って、目的抗体遺伝子を含有する上記発現ベクターとトランスフェクション試薬PEI(Polysciences)を培養されたヒト胎児腎293細胞(Invitrogen)に一過性トランスフェクションし、トランスフェクション完了後、培地を捨て、新鮮なEXPI293培地(Gibco)で4×10の細胞を/mlに希釈する。37℃、5%COの条件において、細胞を7日間培養し、48時間ごとに新鮮な培地を流加する。7日後に、1300rpmで20min遠心分離する。上清液を採取し、抗体の純度が95%を上回るように、Protein Aで上清液を精製する。
【0259】
また、HEK293細胞において、実施例に使用される下記の対照抗体を発現し精製する。
【表6】
25F7は、HEK293細胞において一過性発現されたヒトLAG-3抗体である。その配列は米国特許US20170137514A1に記載の抗体「25F7」の配列と同じである。BAP050は、HEK293細胞において一過性発現された抗ヒトLAG-3抗体である。その其配列は世界特許WO2015/138920(A1)に記載の抗体「BAP050」の配列と同じである。
【0260】
実施例4:本発明の抗LAG-3抗体の親和性計測
光干渉による生体測定法(ForteBio)の測定手法を用いて、ヒトLAG-3(hLAG-3)に対する本発明の上記4つの例示的な抗体の結合の平衡解離定数(KD)を測定する。
ForteBio親和性計測は従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8)で行う。簡単に説明すると、分析緩衝液においてオフラインでセンサを30min平衡化し、次にオンラインで60秒間検出して基線を作成し、オンラインで上述したように精製された抗体をAHQセンサ(ForteBio)にロードしてForteBio親和性計測を行う。抗体がロードされたセンサを100nMのヒトLAG-3抗原(ArcoBiosystems)に曝露させて5min作用させた後、センサを分析緩衝液に移して5min解離させることで解離速度を計測する。1:1結合モデルを利用して反応速度論的分析を行う。
上記測定手法により実施された実験において、ADI-26789、ADI-26869、ADI-31851、ADI-31853及び対照抗体25F7とBAP050の親和性は表6に示されるとおりである。
【0261】
【表7】
以上から分かるように、本発明の上記の4つの例示的な抗体はいずれも極めて高い親和性を示している。ADI-31851とADI-31853は25F7より高く、BAP050と類似の親和性を有する。
【0262】
実施例5:本発明の抗LAG-3抗体とヒトLAG-3との結合
フローサイトメトリーに基づく測定手法で本発明の上記4つの例示的な抗体とヒトLAG-3との結合を計測する。
マルチクローニングサイト(MCS)にクローニングしているヒトLAG-3 cDNA(Sino Biological)を持つpCHO1.0ベクター(Invitrogen)をヒト胎児腎293細胞(Invitrogen)にトランスフェクションすることによって、ヒトLAG-3を過発現する293細胞(293-hLAG-3細胞)を生成する。
【0263】
293-hLAG-3細胞(0.2×10個の細胞)を上述したように調製された異なる濃度の実験抗体(ADI-26789、ADI-26869及び対照抗体25F7)と混合する(抗体の希釈方法は、最大抗体濃度500nMから、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSにおいて3倍希釈し、合計で8つの濃度で測定することである)。氷上において30minインキュベートする。次に細胞を少なくとも2回洗浄して、1:100に希釈された二次抗体(PEで標識されたヤギ抗ヒトIgG抗体、SouthernBiotech、最終濃度5μg/ml)を加え、氷上(遮光)において30minインキュベートする。細胞を少なくとも2回洗浄しフローサイトメトリーにより分析する。Accuri C6システム(BD Biosciences)においてフローサイトメトリーにより検出し、GraphPadを用いてそのMFIから濃度依存性曲線を当てはめする。
【0264】
上記の測定方法で行われる実験において、ADI-26789及びADI-26869がHEK293細胞で過発現されたhLAG-3と結合し、EC50値はそれぞれ2.137nM、2.909nMで、対照抗体25F9のHEK293細胞で過発現されたhLAG-3との結合能よりも高い(対照抗体25F9のEC50値は3.339nM)(図1参照)。
【0265】
親和性が最適化された抗hLAG-3抗体ADI-31851及びADI-31853がHEK293細胞で過発現されたhLAG-3と結合し、EC50値はそれぞれ0.501nM、0.4332nMで、対照抗体25F7とBAP050のHEK293細胞で過発現されたhLAG-3との結合能よりも高い(EC50値はそれぞれ2.593nM、1.409nM)(図2参照)。
【0266】
実施例6:ヒトLAG-3リガンドMHC IIとLAG-3の相互作用に対する本発明の抗LAG-3抗体の遮断
フローサイトメトリーにより、ヒトLAG-3と細胞表面のMHC II(HLA)との結合に対するADI-31851、ADI-31853の遮断能力を計測する。
下記配列を有するHLA-DR-α、HLA-DRβ1の2つのDNA断片をpCHO1.0ベクター(Invitrogen)に同時に導入し、CHO-S細胞(Invitrogen、ExpiCHO(商標) Expression System Kit、製品番号:A29133)にトランスフェクションして表面でヒトHLA-DRを過発現するCHO細胞(CHO-DR細胞)を生成する。
【0267】
HLA-DRβ1
atggtgtgtctgaagctccctggaggctcctgcatgacagcgctgacagtgacactgatggtgctgagctccccactggctttgtctggggacacccgaccacgtttcctgtggcagcctaagagggagtgtcatttcttcaatgggacggagcgggtgcggttcctggacagatacttctataaccaggaggagtccgtgcgcttcgacagcgacgtgggggagttccgggcggtgacggagctggggcggcctgacgctgagtactggaacagccagaaggacatcctggagcaggcgcgggccgcggtggacacctactgcagacacaactacggggttgtggagagcttcacagtgcagcggcgagtccaacctaaggtgactgtatatccttcaaagacccagcccctgcagcaccacaacctcctggtctgctctgtgagtggtttctatccaggcagcattgaagtcaggtggttcctgaacggccaggaagagaaggctgggatggtgtccacaggcctgatccagaatggagactggaccttccagaccctggtgatgctggaaacagttcctcgaagtggagaggtttacacctgccaagtggagcacccaagcgtgacaagccctctcacagtggaatggagagcacggtctgaatctgcacagagcaagatgctgagtggagtcgggggctttgtgctgggcctgctcttccttggggccgggctgttcatctacttcaggaatcagaaaggacactctggacttcagccaacaggattcctgagctga(SEQ ID NO:49)
【0268】
HLA-DR-N
atggccataagtggagtccctgtgctaggatttttcatcatagctgtgctgatgagcgctcaggaatcatgggctatcaaagaagaacatgtgatcatccaggccgagttctatctgaatcctgaccaatcaggcgagtttatgtttgactttgatggtgatgagattttccatgtggatatggcaaagaaggagacggtctggcggcttgaagaatttggacgatttgccagctttgaggctcaaggtgcattggccaacatagctgtggacaaagccaacctggaaatcatgacaaagcgctccaactatactccgatcaccaatgtacctccagaggtaactgtgctcacaaacagccctgtggaactgagagagcccaacgtcctcatctgtttcatagacaagttcaccccaccagtggtcaatgtcacgtggcttcgaaatggaaaacctgtcaccacaggagtgtcagagacagtcttcctgcccagggaagaccaccttttccgcaagttccactatctccccttcctgccctcaactgaggacgtttacgactgcagggtggagcactggggcttggatgagcctcttctcaagcactgggagtttgatgctccaagccctctcccagagactacagagaacgtggtgtgtgccctgggcctgactgtgggtctggtgggcatcattattgggaccatcttcatcatcaagggattgcgcaaaagcaatgcagcagaacgcagggggcctctgtaa (SEQ ID NO:50)
【0269】
抗原rhLAG3タンパク質(huFc)(Sino Biological)を40nMに希釈し、1ウェルあたり50μlを加える。上述したように調製された抗体(ADI-31851、ADI-31853及び対照抗体25F9)に対し最大濃度80nMより3倍に勾配希釈し、合計で8つの希釈勾配として、1ウェルあたり50μlを加える。PBSにおいて氷上で30minインキュベートし、抗原の最終濃度は20nMで、抗体の最大最終濃度は40nMである。CHO-DR細胞を3×10細胞/ウェルに調整し、1ウェルあたり100μlを加える。細胞を300gで5min遠心分離し、上清を捨て、抗原抗体混合液に再懸濁する。氷上において30minインキュベートし、100μl/ウェルでPBSを加え、300gで5min遠心分離し、PBSで洗浄し、1ウェルあたり1:100に希釈されたヤギ抗ヒトIgG-PE 100μl(SouthernBiotech)を加え、20min氷浴して、1ウェルあたりPBS 100μlを加え、300gで5min遠心分離し、PBSで洗浄する。PBS 100μlで再懸濁して、フローサイトメーター(BD Biosciences)で細胞蛍光シグナルの強度値を検出する。
【0270】
実験結果から、ADI-31851とADI-31853がいずれもLAG-3とそのリガンドMHC II(HLA-DR)との結合を効果的に遮断でき、その遮断能力は対照抗体25F9と一致することが示されている。具体的には、ヒトLAG-3とMHC II(HLA-DR)との結合に対するADI-31851及びADI-31853の遮断のIC50はそれぞれ5.85nM、4.533nMである。ヒトLAG-3とMHCII(HLA-DR)との結合に対する対照抗体25F9の遮断のIC50は5.14nMである(図3参照)。
【0271】
実施例7:抗体と活性化されたT細胞の結合実験
活性化されたヒトCD4+ T細胞はその表面にLAG-3タンパク質が発現され、本実験ではフローサイトメトリーによりADI-31851、ADI-31853と活性化されたヒトCD4+ T細胞との結合能を計測する。
【0272】
PBMCの分離:ドナーの新鮮な血液50mlに2.5倍のPBSを加え、FiColl(Thermo)に添加し、4つの管に分け、1管あたり12.5mlとして、400gで30min遠心分離し、速度が0に低減すると停止する。中間の白色の部分を吸い取りPBSに移し、PBSで2回洗浄する。
【0273】
CD4+ T細胞の分離:「Untouched CD4+ T cell isolation」試薬キット(11346D、Invitrogen)の取扱説明書の記載に従って、当該試薬キットで操作する。PBMCを静置して2時間培養し、細胞懸濁液を吸い取り15ml遠心分離管に加え、200gで10min遠心分離し、沈殿物に分離液500μl、AB型血清100μl、精製抗体100μlを加えて再懸濁し、4℃で20minインキュベートし、分離液で洗浄して、ビーズバッファ(Bead Buffer、Invitrogen)500μlを加えて15minインキュベートし、磁場によってビーズを除去し、T細胞培地を洗浄し、培地8mlで再懸濁して、37℃、6%COにおいて培養する。
【0274】
磁気ビーズ:CD4+ T細胞=1:1の比率で、CD4+ T細胞に抗CD3/CD28磁気ビーズ(Gibco)を加えて3日間刺激し、細胞密度を1×10個/mlに調整し、1列目のウェルに150μl/ウェル、残りの列に100μl/ウェルで分注し、1列目のウェルにおいて、上述したように調製された抗体ADI-31851、ADI-31853及び対照抗体25F7をそれぞれ加え、最終濃度は10nMとする。均一に混合して、50μlを吸い取り次の列のウェルに加え、このように繰り返す。各サンプルに対し3つの平行ウェルを設ける。30min氷浴し、400gで5min遠心分離し、PBSで2回洗浄して、1:100に希釈されたPE-抗ヒトFc抗体(Southern Biotech)50μlを追加し、30min氷浴し、400gで5min遠心分離し、PBSで2回洗浄し、PBS 60μlで再懸濁して、フローサイトメトリーにより分析する。Accuri C6システム(BD Biosciences)においてフローサイトメトリーを実施し、GraphPadを用いてそのMFIから濃度依存性曲線を当てはめする。
実験結果から、ADI-31851、ADI-31853が活性化されたヒトCD4+ T細胞と結合でき、EC50値はそれぞれ0.013nM、0.011nMであり、対照抗体25F7よりも結合能が高い(対照抗体のEC50値は0.036nM)ことが示されている(図4参照)。
【0275】
実施例8:本発明の抗LAG-3抗体とマウスLAG-3との結合
フローサイトメトリーに基づく測定手法で、本発明の2つの例示的な抗体ADI-31851、ADI-31853とマウスLAG-3との結合を計測する。
マルチクローニングサイトにクローニングしているマウスLAG-3 cDNA(Sino Biological)を持つpCHO1.0ベクター(Invitrogen)をCHO-S細胞(Invitrogen、ExpiCHO(商標)Expression System Kit、製品番号:A29133)にトランスフェクションすることによって、マウスLAG-3を過発現するCHO細胞(CHO-mLAG-3細胞)を生成する。
【0276】
CHO-mLAG-3細胞(0.2×10個の細胞)と、上述したように調製された異なる濃度の実験抗体(ADI-31851、ADI-31853及び対照抗体25F7、BAP050)と混合する(抗体の希釈方法は、最大抗体濃度500nMから、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSにおいて3倍希釈し、合計で8つの濃度で測定することである)。氷上において30minインキュベートする。次に細胞を少なくとも2回洗浄して、1:100に希釈された二次抗体(PEで標識されたヤギ抗ヒトIgG抗体、SouthernBiotech、最終濃度5μg/ml)を加え、氷上(遮光)において30minインキュベートする。細胞を少なくとも2回洗浄しフローサイトメトリーにより分析する。Accuri C6システム(BD Biosciences)においてフローサイトメトリーにより検出し、GraphPadを用いてそのMFIから濃度依存性曲線を当てはめする。
【0277】
上記の測定方法で行われる実験において、親和性が最適化された抗hLAG-3抗体ADI-31851及びADI-31853がCHO細胞で過発現されたマウスLAG-3と結合でき、ADI31853は結合能が比較的高く(EC50=42.33nM)、ADI-31851は結合能が比較的低い。対照抗体25F7、BAP050はいずれもCHO細胞で過発現されたマウスLAG-3と結合できない(図5参照)。
【0278】
実施例9:本発明の抗LAG-3抗体の抗腫瘍活性
本実験では、CT26移植腫瘍マウスモデルを用いて抗ヒトLAG-3抗体ADI-31853の単独投与及び抗マウスPD-1抗体「Antibody C」(世界特許WO2017/133540)との併用投与による抗腫瘍活性について研究する。
マウス:
雌性BALB/cマウス(約8週齢)、北京維通利華実験動物技術有限公司より購入。マウスを受け入れた後、実験開始前に7日間飼育して順応させる。
細胞:
ATCCより購入されたマウス結腸がん細胞CT26(ATCC#CRL-2638)を使用し、ATCCの操作ガイドを厳格に遵守して後続のインビボ実験に備え通常の継代培養を行う。遠心分離により細胞を回収し、滅菌PBSにおいて細胞を再懸濁し、細胞密度を5×10個/mlに調整する。0日目に細胞懸濁液0.2mlをBALB/cマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司提供)の右腹部に皮下接種することによって担腫瘍マウスモデルを作成する。
投与:
マウスを4群に分け(1群あたり8匹)、各群に対し下記の投与量でそれぞれ抗体を皮下注射する。
(1)マウスIgG(equitech-Bio) 10mg/kg、
(2)PD-1(Antibody C) 1mg/kg、
(3)LAG-3(ADI-31853) 10mg/kg、
(4)LAG-3(ADI-31853) 10mg/kg、PBS+PD-1(Antibody C) 1mg/kg。
試薬注射:
接種後から7日目に、実験基準に合致するマウスに対し、1群あたり8匹でランダムに群分けする。7日目、10日目、14日目と17日目に、上記の4種の試薬をそれぞれ各群のマウスに対し上記の投与量で投与する。
分析:
実験期間にわたり、週に2回腫瘍、体重を計測する。腫瘍が端点まで成長すると(腫瘍体積が2500mmを上回る)、又はマウスに20%以上の体重減少が認められると、マウスに安楽死を実施する。ノギスを用いて腫瘍の長径(L)と短径(W)を測定し、V=L×W/2により腫瘍体積を算出する。各群のマウスに対し腫瘍サイズと時間のグラフを作成する。分散分析(ANOVA)により統計的有意性を判定する。P値<0.05である場合は、分析に統計的有意性がある。前記分析はPrism 5データ処理ソフトウェア(GraphPadソフトウェア社)において行われる。
図6の実験結果から、本発明の抗LAG-3モノクローナル抗体ADI-31853と抗PD-1モノクローナル抗体「Antibody C」の併用投与はIgG対照(equitech-Bio)、当該2つの抗体のそれぞれの単独投与に比べて、腫瘍の成長が明らかに抑制されることが示されている。
【0279】
実施例10:本発明の抗LAG-3抗体と他の抗体との併用による抗腫瘍活性
本実験では、ヒト化マウスモデルを用いて抗ヒトLAG-3抗体ADI-31853と、抗PD-1抗体「Antibody D」(IBI308、世界特許WO2017/025016)又は抗PD-L1抗体(HZ3266-IgG1N297A)との併用投与による抗腫瘍活性について研究する。
【0280】
本実験では、A375(ATCC提供)ヒト皮膚がん細胞を用いてNOGマウスにおいて抗LAG-3抗体の抗腫瘍活性を測定する。予めヒト由来PBMCを静脉注射し(2×10個の細胞/マウス)(AllCells)、次に皮下接種の方式でA375担腫瘍マウスモデル(NOGモデル)を作成する。腫瘍が出現すると群分けをし、異なる抗体を投与して治療し、投与期間に各群マウスの腫瘍体積と体重の変化を監視する。投与頻度は週に2回で、2週間にわたり、合計で5回投与する。監視頻度はいずれも週に2回であり、4週間にわたり連続的に監視する。投与量と投与方式は表2に示されるとおりである。投与終了後に、相対腫瘍抑制率(TGI%)を算出する。
抗PD-L1抗体(HZ3266-IgG1N297A)
【0281】
本分野の通常の方法で、抗PD-L1抗体HZ3266-IgG1N297Aの軽鎖アミノ酸配列と重鎖アミノ酸配列(表3)をコードするcDNAをそれぞれ発現ベクターのpMD20-Tベクター(Clontech)にクローニングすることによって、トランスフェクション用のプラスミドを得る。
所定のトランスフェクション体積の293F細胞(Invitrogen)を継代培養し、トランスフェクションの前日に細胞密度を1.5×10個の細胞/mlに調整しておく。トランスフェクション当日、細胞密度は約3×10個の細胞/mlである。最終体積の1/10のF17培地(Gibco、A13835-01)をトランスフェクション緩衝液として使用し、適切なプラスミドを加えて、均一に混合する。プラスミドに適量のポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、23966)を加え(293F細胞におけるプラスミドとPEIの比率は1:3)、均一に混合してから室温で10minインキュベートすることによって、DNA/PEI混合物を得る。DNA/PEI混合物で細胞を再懸濁して、36.5℃、8%COにおいて培養する。24時間後にトランスフェクション体積の2%でフィード培地(FEED)(Sigma)を追加し、36.5℃、120rpmと8%COの条件において培養する。6日目に連続培養し又は細胞活性が60%以下になると、細胞上清を回収し精製する。
【0282】
精製に使用される重力式カラムに対し0.5M NaOHで一晩処理し、ガラス瓶などは蒸留水で洗浄後に180℃で4時間乾燥させて、精製カラムを得る。精製前に、回収された培地に対し4500rpmで30min遠心分離して、細胞を捨てる。次に上清に対し0.22μlフィルターで濾過する。1管あたりProtein A 1mlを充填し、結合緩衝液10ml(リン酸ナトリウム20mM・NaCl 150mM、pH7.0)で平衡化させる。濾過後の上清を精製カラムに加えて結合緩衝液15mlで再度平衡化させる。溶出緩衝液5ml(クエン酸+クエン酸ナトリウム0.1M、pH3.5)を加えて溶出液を回収し、溶出液1mlあたりTris-HCl 80μlを加える。回収した抗体に対し限外濾過により濃縮させて、PBS(Gibco、70011-044)に交換して濃度を検出する。
【0283】
光干渉による生体測定法(ForteBio)で抗PD-L1抗体(HZ3266-IgG1N297A)とヒトPD-L1との結合の平衡解離定数(KD)を測定する。従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p270-8)でForteBio親和性計測を行う。
実験開始より半時間前に、サンプルの数量分に応じて、適切な数量のAMQ(Pall、1506091)(サンプル検出用)センサ又はAHQ(Pall、1502051)(陽性対照検出用)センサを用意し、SDバッファ(PBS 1×、BSA 0.1%、ポリソルベート20 0.05%)に浸漬する。
【0284】
SD緩衝液、抗体、抗原(ヒトPD-L1含有、いずれもAcrobiosystemsより購入)各100μlをそれぞれ96ウェルのブラックポリスチレン半量マイクロプレート(Greiner、675076)に加える。サンプルの位置に対応するようにプレートを配置し、センサの位置を決定する。次のように機器パラメータを設定する。ステップBaseline、Loading~1nm、Baseline、Association、Dissociationを実行し、サンプルの結合と解離の速度で各ステップの実行時間を決定し、回転数は400rpmで、温度は30℃である。ForteBio分析ソフトウェアを用いてKD値を分析する。Kの測定値は0.724nMである。
【0285】
マウス:NOGマウス、雌性、7-8週齢(腫瘍細胞接種時のマウス週齢)、体重17.6-24.2g、北京維通利華実験動物技術有限公司より購入。マウスを受け入れた後、実験開始前に7日間飼育して順応させる。
【0286】
細胞:ATCCより購入されたヒト皮膚がん細胞A375(ATCC#CRL-1619)を使用し、ATCCの操作ガイドを厳格に遵守して後続のインビボ実験に備え通常の継代培養を行う。遠心分離により細胞を回収し、滅菌PBSにおいて細胞を再懸濁し、細胞密度を30×10個/mlに調整する。NOGマウスにヒト由来PBMCを静脉注射した後、右背部を剃毛し、0.2ml/匹でA375細胞を皮下注射する。腫瘍細胞接種後から7日目に、各マウスの腫瘍体積を検出し、腫瘍の平均体積が70-71mmの範囲にあるマウスを選択し腫瘍体積によってランダムに群分けする。
投与:各群に対しそれぞれ下記の投与量で抗体を皮下注射する。
(1)ヒトIgG(equitech-Bio) 20mg/kg、
(2)PD-1(Antibody D、IBI308) 10mg/kg、
(3)LAG-3(ADI-31853) 10mg/kg、
(4)LAG-3(ADI-31853) 10mg/kg+PD-1(Antibody D、IBI308) 10mg/kg、
(5)PD-L1(HZ3266-IgG1N297A) 10mg/kg、
(6)LAG-3(ADI-31853) 10mg/kg+PD-L1(HZ3266-IgG1N297A) 10mg/kg。
【0287】
接種後から7日目に、腫瘍の平均体積基準に合致するマウスに対し、1群あたり8匹でランダムに群分けする。7日目、10日目、14日目と17日目に、上記の6種の試薬をそれぞれ各群マウスに対し上記の投与量で投与する。
分析:実験期間にわたり週に2回腫瘍、体重を計測する。腫瘍が端点まで成長すると、又はマウスに20%以上の体重減少が認められると、マウスに安楽死を実施する。ノギスを用いて腫瘍の長径(L)と短径(W)を測定し、V=L×W/2により腫瘍体積を算出する。各群のマウスに対し腫瘍サイズと時間のグラフを作成する。分散分析(ANOVA)により統計的有意性を判定する。P値<0.05である場合は、分析に統計的有意性がある。
【0288】
図7A、Bの実験結果から、本発明の抗LAG-3モノクローナル抗体ADI-31853(31853)と、抗PD-1モノクローナル抗体「Antibody D」(IBI308)又は抗PD-L1モノクローナル抗体HZ3266-IgG1N297A(HZ3266)との併用投与はIgG対照(equitech-Bio)(hIgG)、当該2つの抗体のそれぞれの単独投与に比べて、腫瘍の成長が明らかに抑制されることが示されている。
【0289】
実施例11:抗LAG-3抗体と抗PD-L1抗体との組み合わせによるヒトCD4T細胞の活性化効果に関する研究
本実験ではヒトCD4+ T細胞活性化の方法によりヒトT細胞に対するADI-31853の活性化効果を検出する。(例えば、実施例7のように)ビーズ刺激によって活性化されたヒトCD4+ T細胞、成熟DC及び異なる濃度のADI-31853、25F7単独溶液、PD-L1抗体(上述したように調製されたHZ3266-IgG1N297A)単独溶液、及びその組み合わせを、96ウェルU底プレートにおいて3日間インキュベートする。最後に上清中のIL-2濃度を検出し、ADI-31853、25F7単独、及びPD-L1抗体(HZ3266-IgG1N297A、上述したように調製)のT細胞に対する活性化効果を比較する。
【0290】
実験ステップ:
DC細胞の調製:
液体窒素タンクからヒト由来PBMC細胞(例えば、実施例7のように調製)を取り出し、37℃の水浴鍋で急速に解凍させて、20mlヒトT細胞培地(1‰デオキシリボヌクレアーゼ含有(Sigma))に移し、400gで10min遠心分離する。ヒトT細胞培地(1‰デオキシリボヌクレアーゼ含有)20mlで再懸濁してT75培養瓶に移し、37℃、5%CO2の細胞インキュベーターにおいて24時間培養する。
【0291】
DC細胞分離:細胞懸濁液を捨て、残りの細胞はDC培地9mlを加え、2日間培養してからDC培地3mlを加え、次にさらに5日間培養した後、rTNFa(1000U/ml)、IL-1b(5ng/ml)、IL-6(10ng/ml)、1μM PGE2(Tocris)を加え2日間培養して、リンパ球混合培養反応(MLR)用のDC細胞を得る。
T細胞培地、DC細胞培地はいずれもCTS AIM V SFMであり、DC培地には1000U/mlのIL-4と1000U/mlのGM-CSFが追加されている。製品番号とバッチ番号は以下のとおりである。
【0292】
【表8】
【0293】
ヒトCD4+ T細胞の精製
液体窒素タンクからヒト由来PBMC細胞(例えば、実施例7のように調製)を取り出し、37℃の水浴鍋で急速に解凍させて、次に上述したようにヒトT細胞培地(1‰デオキシリボヌクレアーゼ含有)に移し、400gで10min遠心分離する。実施例7のUntouched CD4+ T cell isolation試薬キットでヒトCD4+ T細胞の分離と精製を行い、Dynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28 for T Cell Expansion and ActivationでヒトCD4+ T細胞を活性化させ、37℃、5%COの細胞インキュベーターにおいて3日間培養する。
サンプルローディング:
【0294】
成熟したDC細胞をCD4+細胞と混合し、1ウェルあたり体積200μl、DC細胞10000個、CD4+細胞100000個として、抗体(200nM、4倍シリーズ希釈、SEE(Toxin technology)1ng/ml)、DC細胞、CD4+細胞、混合細胞を加え陰性対照として、混合して3日間培養する。
使用される抗体濃度は以下のとおりである。
抗LAG-3 ADI-31853:200nMより4倍希釈し、合計で10の濃度とする。
抗PD-L1:200nMより4倍希釈し、合計で10の濃度とする。
25F7:200nMより4倍希釈し、合計で10の濃度とする。
抗LAG-3(200nMより4倍希釈し、合計で10の濃度とする)+抗PD-L1(12.5nM)
25F7(200nMより4倍希釈し、合計で10の濃度とする)+抗PD-L1(12.5nM)
IL-2検出:
Cisbio Human IL-2 kitで培地に対しIL-2の濃度を検出する。
(1) 検出液の調製(試薬はいずれもCisbio Human IL2 1000 tests試薬キットより)
Human IL-2 d2 antibody 30μl(由来)を検出緩衝液 570μl(由来)に、Human IL-2 cryptate antibody 30μl(由来)を検出緩衝液570μlにそれぞれ加えて、1:1で混合する。
(2) 標準溶液の勾配希釈:
【0295】
【表9】
【0296】
(3)検出:
培地上清と標準品の勾配溶液(10μl)を96ウェルマイクロプレートに加え、1ウェルあたり検出液10μlを加え、400gで1min遠心分離し、遮光条件において、室温で2時間インキュベートする。
多目的マイクロプレートリーダーを使用し、616nmと665nmにOD値を読み取り、データを分析する。
【数1】
【0297】
実験結果:
標準品の勾配濃度のΔRatioを横軸に、IL-2レベルを縦軸にして、IL-2標準曲線を作成する。図8に示されるように、標準曲線より、各群のヒトCD4+ T細胞のIL-2レベルを算出する。図9に示されるように、対照(25F7)又は抗LAG-3抗体ADI31853単独に比べて、本発明の抗LAG-3抗体(ADI-31853)と抗PD-L1抗体(HZ3266)の組み合わせがより明らかにヒトCD4+ T細胞を活性化させている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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