(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】処理された塩化マグネシウム成分を有するチーグラー-ナッタ触媒系
(51)【国際特許分類】
C08F 4/658 20060101AFI20241024BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08F4/658
C08F10/02
(21)【出願番号】P 2020564642
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 US2019034305
(87)【国際公開番号】W WO2019231991
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ハシュコーン、カート、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】デミラーズ、メフメット
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-020510(JP,A)
【文献】特開平03-074341(JP,A)
【文献】特開平04-234408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00 - 4/82
C08F 10/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロ触媒であって、
100m
2
/g~800m
2
/gの表面積を有する予め形成された塩化マグネシウム触媒担体と、
チタン含有成分と、
塩素化剤と、
5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を含み、
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、プロ触媒。
【請求項2】
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、5+以上の酸化状態を有する脂肪族炭化水素可溶性遷移金属化合物である、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項3】
前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体が、
150m
2
/g~800m
2
/gの表面積を有する、請求項1および2のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項4】
前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体が、炭化水素溶媒中のMgCl
2スラリーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項5】
前記MgCl
2スラリーが、炭化水素溶媒中のアルキルマグネシウム化合物溶液と、前記炭化水素溶媒を分離しない塩化物源と、の反応生成物である、請求項4に記載のプロ触媒。
【請求項6】
前記チタン含有成分が、塩化チタンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項7】
前記チタン含有成分が、TiCl
4(OR)
4-xであり、式中、Rは、C
1~C
21ヒドロカルビル、またはこれらの組み合わせであり、x=0、1、2、3、または4である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項8】
前記塩素化剤が、アルキルアルミニウムクロリドである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項9】
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物中に存在する遷移金属対前記チタン含有成分中に存在するチタンのモル比が、0.1~10.0である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項10】
前記塩素化剤対前記チタン含有成分中に存在するチタンのモル比が、0.5~100.0である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項11】
前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体対前記チタン含有成分中に存在するチタンのモル比が、1.0~100.0である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項12】
触媒であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロ触媒と、
アルキルアルミニウム助触媒と、を含む、触媒。
【請求項13】
エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスであって、請求項12に記載の触媒の存在下で、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを接触させることを含む、プロセス。
【請求項14】
前記重合プロセスが、溶液重合プロセスである、請求項13に記載のエチレン系ポリマーを重合するためのプロセス。
【請求項15】
請求項1に記載のプロ触媒を調製するための方法であって、
100m
2
/g~800m
2
/gの表面積を有する前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体に、(A)前記チタン含有成分と、(B)前記塩素化剤と、(C)前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を混合することを含み、
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない、方法。
【請求項16】
(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つが、(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つの他のものから時間的に分離されて前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体に添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロ触媒の存在下で調製されたエチレン系ポリマーであって、前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーの高密度画分よりも少なくとも5%大きい高密度画分を有する、エチレン系ポリマー。
【請求項18】
前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーの高密度画分よりも少なくとも10%大きい高密度画分を有する、請求項17に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項19】
前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーのMwよりも少なくとも5%大きいMwを有する、請求項17または18に記載のエチレン系ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月1日に出願された米国仮出願第62/679,279号の優先権を主張し、これは参照によってその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、エチレン系ポリマーを生成するために使用され得る高酸化状態遷移金属化合物を含むプロ触媒に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、バナジウムを除いて、高密度画分が増加したエチレン系ポリマーを生成するために使用され得る、高酸化状態遷移金属化合物を含むプロ触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
エチレン系ポリマーは、ポリマーの構造に応じて、様々な用途で一般的に使用されている。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)は、ボトル、配管、ジオメンブレン、プラスチック製材などとして使用され得る。毎年約3,000万メートルトンのHDPEが生成されていると推定されている。
【0004】
HDPEは、大きな強度対密度比を有する。HDPEの密度は低密度ポリエチレン(LDPE)の密度よりわずかに高いだけだが、HDPEは分岐がほとんどなく、それはLDPEよりも強い分子間力および引張強度を与える。強度の違いは密度の違いを上回り、HDPEにより高い比強度を与える。また、より硬く、より不透明で、やや高い温度(例えば、120℃/248°Fで短時間)に耐えることができる。分岐の欠如は、触媒および反応条件の適切な選択によって保証され得る。
【0005】
チーグラー-ナッタ触媒は、HDPEを含む様々なポリエチレンの生成に長年使用されてきた。これらの触媒は、一般に、ハロゲン化マグネシウム担体および少なくとも1つの触媒化合物を含む。
【発明の概要】
【0006】
チーグラー-ナッタ触媒は効果的だが、通常の重合条件下で非常に高いポリマー密度または非常に低いポリマー密度を有するエチレン系ポリマーを作製するなど、差別化されたポリマーを生成する能力が一般に制限されている。したがって、新しい、差別化されたHDPEポリマーを生成するためのプロ触媒、触媒、およびプロセスに対する継続的な必要性がある。特に、高密度画分(HDF)が増加したエチレン系ポリマーを生成するためのプロ触媒、触媒、およびプロセスに対する継続的な必要性がある。本開示は、プロ触媒、触媒、およびこれらのプロ触媒および触媒を利用して、HDFが増加したエチレン系ポリマーを生成するプロセスに関する。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、プロ触媒は、100m2/g以上の表面積を有する予め形成された塩化マグネシウム触媒担体と、チタン含有成分と、塩素化剤と、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を含み、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない。
【0008】
別の実施形態によれば、触媒は、100m2/g以上の表面積を有する塩化マグネシウム触媒担体と、チタン含有成分と、塩素化剤と、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、アルキルアルミニウム助触媒と、を含み、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない。
【0009】
別の実施形態によれば、プロ触媒を調製するための方法は、100m2/g以上の表面積を有する塩化マグネシウム触媒担体に、(A)チタン含有成分と、(B)塩素化剤と、(C)5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を添加することを含み、(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つは、(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つの他のものから時間的に分離されて塩化マグネシウム触媒担体に添加され、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない。
【0010】
追加の特徴および有益性は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の「発明を実施するための形態」、および特許請求の範囲を含む本明細書に記載される実施形態を実践することによって認識されるであろう。上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、ならびに2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0012】
「エチレン系ポリマー」とは、50重量%超のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味する。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導される単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のエチレン系ポリマーの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(Ultra Low Density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(Very Low Density)ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度樹脂と実質的に直鎖状の低密度樹脂との両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」とは、溶液重合を実施する容器であり、エチレンモノマーが、任意選択的にコモノマーと、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解された後に、重合または共重合する。熱は、反応器を熱交換器に結合することにより、溶液重合反応器から除去または溶液重合反応器に追加され得る。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、全ての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0014】
チーグラー-ナッタ触媒は、エチレンを重合するプロセスでエチレン系ポリマーを生成するために一般的に使用され、任意選択的に、1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーを生成する。典型的なチーグラー-ナッタ触媒を含むこれらの重合プロセスでは、ポリマーの平均分子量は、重合温度が上昇するにつれて急速に減少する。しかしながら、溶液重合プロセスでの高い重合温度は、生成スループットを向上させ、優れた光学系およびダーツ/引裂きバランスなどの望ましい特性を備えたエチレン系ポリマーを生成する。チーグラー-ナッタ触媒の分子量能力を高めると、新製品を作製する能力が拡大し、より高い重合温度での操作が可能になる可能性がある。
【0015】
本開示は、増加した分子量能力を示し、エチレン系ポリマーのHDFを増加させる能力を示す、チーグラー-ナッタ型のプロ触媒およびプロ触媒を含む触媒に向けられている。本明細書で使用される「プロ触媒」は、助触媒と接触する前は基本的に触媒的に不活性であり、助触媒と接触すると触媒的に活性になる触媒組成物である。本明細書に開示されたプロ触媒は、実施形態では、100m2/g以上の表面積を有する塩化マグネシウム触媒担体と、チタン含有成分と、塩素化剤と、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を含み、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない、プロ触媒を含む。実施形態はまた、プロ触媒およびアルキルアルミニウム助触媒を含む触媒を含み、プロ触媒および/または触媒を含む重合プロセスを含む。
【0016】
MgCl2成分は、有機マグネシウム化合物または有機マグネシウム化合物を含む複合体を選択し、MgCl2成分を作製するのに適した条件下で、有機マグネシウム化合物を金属または非金属塩化物などの塩化物化合物と反応させることによって調製され得る。有機マグネシウム化合物および/または複合体の例は、これらに限定されないが、C2~C8アルキルおよびアリールマグネシウム、マグネシウムアルコキシドおよびアリールオキシド、カルボキシル化マグネシウムアルコキシド、およびカルボキシル化マグネシウムアリールオキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、C2~C8アルキルマグネシウム、マグネシウムC1~C4アルコキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、ブチルエチルマグネシウムであり得る。
【0017】
1つ以上の実施形態では、MgCl2成分は、例えば、塩化物源と炭化水素可溶性炭化水素マグネシウム化合物または化合物の混合物との反応生成物を含む。例示的な有機マグネシウム化合物は、ジ(C1~C20)アルキルマグネシウムまたはジ(C6~C20)アリールマグネシウム化合物、特にジ(n-ブチル)マグネシウム、ジ(sec-ブチル)マグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシルマグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム、およびこれらの組み合わせを含む。例示的な適切なジアリールマグネシウムは、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムを含む。有機マグネシウム化合物は、溶解性を改善する、溶液の粘度を低下させる、または溶解性を改善し、かつ溶液の粘度を低下させるために、任意選択的に有機アルミニウム化合物で処理され得る。置換フェノール化合物に由来するものを含む安定剤も存在し得る。追加の適切な有機マグネシウム化合物は、アルキルマグネシウムおよびアリールマグネシウムアルコキシド、アリールオキシドおよび塩化物、ならびに前述の混合物を含む。非常に好ましい有機マグネシウム化合物は、ハロゲンを含まない有機マグネシウム化合物である。
【0018】
本明細書で使用するためのMgCl2成分の調製に使用され得る塩化物源の中には、金属塩化物および有機塩化物および塩化水素を含む非金属塩化物が含まれる。本明細書で使用することができる適切な金属塩化物は、MRy-aClaに従う式を含み、式中、Mは、元素周期表の第13、14、または15族の金属であり、Rは、一価の有機ラジカルであり、yは、Mの価数に対応する値を有し、aは、1~yの値を有する。
【0019】
1つ以上の実施形態では、金属塩化物は、式:AlR3-aClaを有するアルキルアルミニウム塩化物から選択され得、式中、各Rは、独立して(C1~C10)ヒドロカルビル、好ましくは(C1~C6)アルキルであり、およびaは、1~3までの数である。アルキルアルミニウムクロリドは、これらに限定されないが、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、およびエチルアルミニウムジクロリドを含み得、エチルアルミニウムジクロリドが特に好ましい。あるいは、三塩化アルミニウムなどの金属塩化物、または三塩化アルミニウムとアルキルアルミニウムクロリドとの組み合わせまたはトリアルキルアルミニウム化合物が適切に使用され得る。
【0020】
適切な非金属塩化物および有機塩素化合物は、式R’Clrによって表され、式中、R’は、水素または(C1~C10)ヒドロカルビルまたはSi、GaまたはGeなどの非金属であり、下付き文字rは、1~6の整数である。特に適切な塩化物源は、例えば、塩化水素およびt-アルキルクロリド、sec-アルキルクロリド、アリルクロリド、およびベンジルクロリドおよびヒドロカルビルが本明細書で前述したとおりである他の活性ヒドロカルビルクロリドなどの活性有機塩化物を含む。活性有機塩化物とは、少なくともsec-ブチルクロリドの塩化物と同じくらい活性である、好ましくはt-ブチルクロリドと同じくらい活性な、すなわち別の化合物に容易に失われる不安定な塩化物を含有するヒドロカルビル塩化物を意味する。有機一塩化物に加えて、前に本明細書で定義されたように活性である有機二塩化物、三塩化物および他の多塩化物も適切に使用されることが理解される。好ましい塩化物源の例は、塩化水素、t-ブチルクロリド、t-アミルクロリド、塩化アリル、塩化ベンジル、塩化クロチル、およびジフェニルメチルクロリドを含む。最も好ましいのは、塩化水素、t-ブチルクロリド、塩化アリル、および塩化ベンジルである。
【0021】
有機マグネシウムハライドは、有機マグネシウム化合物および塩化物源から予め形成して後で使用するために保存することができ、またはその場で予め形成することができ、その場合、プロ触媒は、好ましくは、適切な溶媒または反応媒体中で、(1)有機マグネシウム成分および(2)塩化物源、続いて他のプロ触媒成分を混合することによって調製される。
【0022】
実施形態では、有機マグネシウム化合物または複合体は、不活性炭化水素希釈剤などの炭化水素希釈剤に可溶であり得る。炭化水素希釈剤の例は、これらに限定されないが、液化エタン、プロパン、イソブタン、n-ブタン、n-ヘキサン、様々な異性体ヘキサン、イソオクタン、5~30個の炭素原子を有するアルカンのパラフィン混合物、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、ドデカン、ケロセン、ナフタなどの飽和または芳香族炭化水素から構成される工業用溶媒、およびこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤は、アルキン、ジエン、アレン、および1個以上のヘテロ原子を含む任意の化合物を含む、任意の不純物を実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、成分を「実質的に含まない」という用語は、組成物が0.1重量%未満の成分(例えば、不純物、化合物、元素など)を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤は、約-50℃~約200℃の範囲の沸点を有し得る。炭化水素希釈剤は、実施形態では、イソパラフィン溶媒を含み得る。イソパラフィン溶媒の例は、これらに限定されないが、ExxonMobileから入手可能なISOPAR(商標)合成パラフィン溶媒(例えば、ISOPAR(商標)Eパラフィン溶媒)、およびShell Chemicalsによる特殊沸点(SBP)溶媒(例えば、SBP 100/140高純度脱芳香族炭化水素溶媒)を含み得る。炭化水素希釈剤の他の例は、メチルシクロペンタン、エチルベンゼン、クメン、デカリン、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0023】
有機マグネシウム化合物を炭化水素希釈剤に分散させてスラリーを形成し得る。塩化物化合物は、有機マグネシウム化合物を塩化物化合物と接触させてMgCl2を生成するようにスラリーに添加され得る。塩化物化合物は、金属または非金属の塩化物であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、塩化物化合物は、塩酸塩ガスであり得る。実施形態では、有機マグネシウム化合物および塩化物化合物は、-25℃~100℃、または0℃~50℃の温度で接触させ得る。いくつかの実施形態では、設定された反応温度を±3℃などの±5℃以内に制御するために熱除去が必要である。いくつかの実施形態では、塩化物源の量は、結果として得られるMgCl2においてCl対Mgの目標モル比を達成するために制御される。例えば、Cl対Mgのモル比は、塩化物が不足しているMgCl2担体の場合は1.8~2.0、塩化物が豊富なMgCl2担体の場合は2.0~2.2であり得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物と金属または非金属塩化物とのスラリーは、1時間~12時間、または4時間~6時間の時間接触され得る。スラリー中の有機マグネシウム化合物の濃度(すなわち、塩化物化合物がスラリーに添加される前)は、塩化物化合物がスラリーに添加されるときに、得られる組成物が0.005モル/リットル(モル/L)~1.000モル/Lのマグネシウム濃度を含み得るように十分であり得る。
【0024】
有機マグネシウム化合物と金属または非金属塩化物との反応は、MgCl2成分を生成し、これは、炭化水素希釈剤中に分散したMgCl2粒子を含むMgCl2スラリー中に存在し得る。いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、他のプロ触媒成分で処理される前に調製され、本明細書では「予め形成されたMgCl2スラリー」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、0.005モル/L~10.00モル/L、または0.05モル/L~1.00モル/LのMgCl2の濃度を有し得る。
【0025】
実施形態では、MgCl2成分は、非金属塩化物を用いた炭化水素可溶性アルキルマグネシウム前駆体の溶液沈殿によって形成され得る。アルキルマグネシウム前駆体は、いくつかの実施形態では、C2~C8アルキルマグネシウム前駆体であり得る。非金属塩化物は、いくつかの実施形態では、塩酸塩ガスであり得る。炭化水素可溶性アルキルマグネシウム前駆体および非金属塩化物は、例えば、本開示に記載されている炭化水素希釈剤などの炭化水素希釈剤に添加される。この沈殿プロセスの条件は、有機マグネシウム化合物を形成するために以前に開示されたものと同じである。
【0026】
MgCl2成分は、実施形態では、150m2/g以上、または200m2/g以上、300m2/g以上、400m2/g以上の表面積など、100平方メートル/グラム(m2/g)以上の表面積を有する。いくつかの実施形態では、MgCl2成分の表面積の上限は、800m2/gである。
【0027】
MgCl2成分の調製に続いて、そのMgCl2成分を塩素化剤と接触させ得る。塩素化剤は、構造式A(Cl)x(R1)3-xまたはSi(Cl)y(R1)4-yを有し得、式中、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3であり、およびyは、1、2、3、または4である。いくつかの実施形態では、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり得る。塩素化剤の例は、これらに限定されないが、三塩化アルミニウム、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、三塩化ホウ素、二塩化フェニルホウ素、塩化ジシクロヘキシルホウ素、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロトリメチルシラン、エチルトリクロロシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン、n-プロピルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-プロピル)シラン、クロロトリ(n-プロピル)シラン、イソプロピルトリクロロシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、n-ブチルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-ブチル)シラン、クロロトリ(n-ブチル)シラン、イソブチルトリクロロシラン、ジクロロジイソブチルシラン、クロロトリイソブチルシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、ジシクロペンチルジクロロシラン、n-ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロジシクロヘキシルシラン、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、塩素化剤は、アルキルアルミニウムクロリドである。
【0028】
MgCl2成分は、MgCl2成分を調整するのに十分な条件下で塩素化剤と接触させ得る。実施形態では、MgCl2成分は、0℃~35℃、25℃~50℃、または25℃~35℃など、0℃~50℃の温度で塩素化剤と接触させ得る。MgCl2成分は、4時間~12時間、6時間~24時間、または6時間~12時間など、4時間~24時間の時間塩素化剤と接触させ得る。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではなく、MgCl2成分を塩素化剤と接触させることによってMgCl2成分を調整することは、例えばチタン種などの追加の金属のMgCl2成分への吸着を促進または増強し得ると考えられる。いくつかの実施形態では、プロ触媒は、3:40~20:40、または20:40~40:40など、3:40~40:40の不均一なプロ触媒における塩素化剤対MgCl2成分のモル比を含み得る。
【0029】
MgCl2成分は、チタン含有成分とさらに接触させ得る。チタン含有成分は、任意のチタン化合物または複合体であり得る。いくつかの実施形態では、チタン含有成分は、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。例えば、実施形態では、チタン含有成分は、これらに限定されないが、四塩化チタン(TiCl4)、チタンイソプロポキシド(TiPT)、他のハロゲン化チタンまたはチタンアルコキシド、Ti(OR)4(Rは、C1~C21)ヒドロカルビル、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0030】
MgCl2成分を、チタン含有成分の少なくとも一部がMgCl2成分に吸着されるような条件下でチタン含有成分と接触させ得る。例えば、実施形態では、MgCl2成分を、0℃~35℃、25℃~50℃、または25℃~35℃など、0℃~150℃の温度でチタン含有成分と接触させ得る。いくつかの実施形態では、MgCl2成分を、そのような温度で、3時間~12時間、6時間~24時間、または6時間~12時間など、3時間~24時間の時間チタン含有成分と接触させ得る。いくつかの実施形態では、MgCl2成分が塩素化剤によって調整された後、MgCl2成分をチタン含有成分と接触させる。他の実施形態では、MgCl2成分を、MgCl2成分を塩素化剤と接触させる前に、チタン含有成分と接触させる。さらに他の実施形態では、MgCl2成分を、塩素化剤およびチタン含有成分を同時にMgCl2スラリーに添加することによって、塩素化剤およびチタン含有成分と同時に接触させ得る。塩素化剤は、実施形態では、チタン含有成分ならびにMgCl2成分と反応し得る。例えば、塩素化剤は、チタン含有成分中のチタンと反応して、例えば、TiCl3、またはTiCl4などの塩化チタンを形成し得る。
【0031】
実施形態のプロ触媒はまた、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物を含み、遷移金属化合物が、バナジウムを含まない(以下、「遷移金属化合物」と呼ぶ)。例えば、遷移金属化合物は、MgCl2成分、および任意選択的に、炭化水素希釈剤に分散されているチタン含有成分および塩素化剤の一方または両方と組み合わせられ得る。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、金属-配位子複合体であり得、構造式(L)nM(XR2)bを有し得、式中、Mは、バナジウムを除く、5+以上の酸化状態にある遷移金属であり、各Lは、中性配位子または(=O)であり、各XR2は、陰イオン配位子であり、Xは、ヘテロ原子であり、R2は、(C1~C20)ヒドロカルビルまたは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビルであり、nは、0(ゼロ)、1、または2であり、bは、1、2、3、または4である。金属-配位子複合体は、全体的に電荷が中性であり得る。実施形態では、金属-配位子複合体は、本開示で前述した炭化水素希釈剤などの炭化水素溶媒に可溶である。いくつかの実施形態では、1つまたは2つ以上のLは、中性配位子であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは2つ以上のLは、例えば、アンモニア、ニトリル、ピリジン、アミン、ホスフィン、またはこれらの組み合わせなどの窒素含有またはリン含有化合物を含む中性配位子を含み得る。中性配位子の例は、これらに限定されないが、アセトニトリル、ピリジン、アンモニア、エチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、他の中性配位子、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは2つ以上のLは、オキソ基(=O)であり得る。いくつかの実施形態では、Xは、酸素であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、金属-配位子複合体は、金属アルコキシド、金属オキシアルコキシド、金属ハロゲン化物、または金属オキシハロゲン化物であり得る。実施形態では、金属-配位子複合体は、構造式MXn-b(OR2)bを有する金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物であり得、式中、Mは、5+以上の酸化状態「n」を有する遷移金属(バナジウムを含まない)であり、Xは、ハロゲンであり、bは、0~nであり得、R2は、(C1~C20)ヒドロカルビルまたは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビルである。他の実施形態では、金属配位子複合体は、構造式M(=O)Xn-b(OR2)bを有する金属オキシアルコキシドであり得、式中、Mは、5+以上の酸化状態nを有する遷移金属(バナジウムを含まない)であり、Xは、ハロゲンであり、bは、0~n-2であり得、およびR2は、(C1~C20)ヒドロカルビルまたは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビルである。
【0033】
いくつかの実施形態では、前述の金属配位子中のMなどの遷移金属化合物は、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属であり得、各々が5+以上の酸化状態を有する。遷移金属化合物は、バナジウムを含まない。
【0034】
実施形態では、遷移金属化合物は、チタン含有成分および塩素化剤のいずれかがMgCl2成分を含むスラリー中に分散される前または後に、MgCl2成分を含むスラリーと組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、MgCl2成分を含むスラリー(任意選択的にチタン含有成分および/または塩素化剤を含む)と組み合わせて、30分~12時間などの0.5分~24時間の期間混合され得る。
【0035】
本開示で論じられるように、プロ触媒は、(A)チタン含有成分と、(B)塩素化剤と、(C)バナジウムを除く、5+以上の酸化状態を有する遷移金属化合物と、(D)100m2/g以上の表面積を有するMgCl2成分と、の4つの成分を含む。実施形態では、成分(A)、(B)、および(C)は、別々におよび任意の順序で成分(D)に添加され得る。他の実施形態では、成分(A)、(B)、および(C)は、例えば、(A)、(B)、および(C)から(D)の成分の添加シーケンスが、(B)を添加し、次に(C)を添加し、次に(A)を添加するか、または(B)を添加し、次に(A)を添加し、次に(C)を添加するなど、任意の組み合わせおよび任意の順序で成分(D)に添加され得る。成分(A)、(B)、および(C)は、様々な他の時間的組み合わせで成分(D)に添加され得ることを理解されたい。したがって、実施形態では、成分(A)、(B)、および(C)のうちの少なくとも1つは、成分(A)、(B)、および(C)のうちの少なくとも1つの他のものから時間的に分離されて成分(D)に添加され得る。
【0036】
成分(A)、(B)、(C)、および(D)は、様々な比率でプロ触媒中に存在し得る。実施形態では、遷移金属化合物中に存在する遷移金属対チタン含有化合物中に存在するチタンのモル比(すなわち、遷移金属(モル)/Ti(モル))は、0.2~5.0、または0.5~3.0など、0.1~10.0である。実施形態では、塩素化剤対チタン含有成分中に存在するチタンのモル比(すなわち、塩素化剤(モル)/Ti(モル))は、2.0から50.0、または5.0から20.0など、0.5~100.0である。実施形態では、MgCl2成分対チタン含有成分中に存在するチタンのモル比(すなわち、MgCl2(モル)/Ti(モル))は、8.0~80.0、または15.0~50.0など、1.0~100.0である。
【0037】
実施形態では、助触媒を本明細書に開示されたプロ触媒と組み合わせて、触媒系を生成し得る。助触媒は、アルミニウムのアルキルまたはハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、アルカリ金属水素化アルミニウム、アルカリ金属水素化ホウ素、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ土類金属水素化物などの少なくとも1つの有機金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、助触媒は、アルミニウムのアルキルである。プロ触媒および助触媒の反応からの触媒系の形成は、その場で(適所で)、または重合反応器に入る直前に実施され得る。したがって、プロ触媒および助触媒の組み合わせは、多種多様な条件下で起こり得る。そのような条件は、例えば、窒素、アルゴン、または他の不活性ガスなどの不活性雰囲気下で、0℃~200℃、15℃~250℃、または15℃~200℃など、0℃~250℃の温度で、プロ触媒および助触媒を接触させることを含み得る。触媒反応生成物(すなわち、触媒系)の調製では、炭化水素可溶性成分を炭化水素不溶性成分から分離する必要はない。いくつかの実施形態では、プロ触媒および助触媒は、反応器に同時に導入され、反応器内で互いに接触し得る。いくつかの実施形態では、触媒系は、3:1~15:1、3:1~10:1、3:1~8:1、5:1~20:1、5:1~15:1、5:1~10:1、8:1~20:1、または8:1~15:1など、3:1~20:1のプロ触媒のチタン含有成分中の助触媒対チタン種のモル比を有し得る。
【0038】
プロ触媒および助触媒を含む触媒系が調製されると、触媒系は、オレフィンを重合するための重合または共重合プロセスで使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系を重合または共重合プロセスで利用して、例えば、HDPEおよび線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレン系ポリマーを作製し得る。いくつかの実施形態では、重合または共重合プロセスは、エチレンモノマーおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンコモノマーを、プロ触媒および任意選択的に助触媒を含む触媒系と接触させてエチレン系ポリマーを形成することを含み得る。オレフィン重合/共重合反応は、反応媒体中で実行され得る。反応媒体は、イソパラフィン、脂肪族炭化水素などの炭化水素希釈剤、または本開示で以前に開示された他の炭化水素希釈剤のいずれかであり得る。オレフィンの重合/共重合プロセスは、プロ触媒組成物および任意選択的に助触媒を含む触媒系の存在下で、オレフィンまたはオレフィンの組み合わせを反応媒体と接触させることを含み得る。重合の条件は適切なものであってよく、例えば水素などの分子量調節剤も反応容器内に存在して、望ましくない高分子量ポリマーの形成を抑制し得る。
【0039】
任意のエチレン重合または共重合反応プロセスを、本明細書に開示された触媒とともに使用して、エチレン系ポリマーを生成し得る。そのようなエチレン重合または共重合反応プロセスは、これらに限定されないが、スラリー相重合プロセス、溶液相重合プロセス、気相プロセス、およびこれらの組み合わせを含み得る。重合または共重合プロセスは、1つ以上の従来の反応器内で実施され得、その例は、これらに限定されないが、ループ反応器、撹拌槽型反応器、並列もしくは直列のバッチ反応器、および/またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、直列、並列、またはこれらの組み合わせの2つ以上の反応器で実施され得る。他の実施形態では、重合プロセスは、単一の反応器で実行され得る。重合プロセスは、バッチ重合プロセスまたは連続重合プロセスであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合プロセスは、撹拌槽型反応器で実行され得るバッチ重合プロセスであり得る。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、連続溶液重合反応器で実行される重合反応など、連続的であり得る。他の実施形態では、重合プロセスは、2つ以上の重合工程を含み得る。これらの実施形態では、本明細書に開示されたプロ触媒を含む触媒系は、任意の1つまたは複数の重合工程に使用され得る。
【0040】
本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒を利用する重合/共重合プロセスから生成されたポリマーは、エチレン、プロピレン、または4-メチル-1-ペンテンなどのC2~C20α-オレフィンのホモポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下で形成されるポリマーは、エチレンまたはプロピレンと少なくとも1つ以上のα-オレフィンコモノマー、C2~C20アセチレン不飽和コモノマー、および/またはC4~C18ジオレフィンコモノマーとのインターポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、エチレンと、他の不飽和コモノマーと組み合わせた上記のC3~C20α-オレフィン、ジオレフィン、および/またはアセチレン不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つとのインターポリマーなどのエチレン系ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、コモノマーは、20個以下の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、α-オレフィンコモノマーは、3~20個の炭素原子、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーは、これらに限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンを含み得る。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択されるα-オレフィンコモノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒系の存在下で生成されたエチレン系ポリマーは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの組み合わせから選択されるエチレンモノマー単位およびコモノマー単位のインターポリマーであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、溶液重合/共重合プロセスが使用される。重合は、触媒量のプロ触媒および/または触媒を、選択されたα-オレフィンモノマー(例えば、エチレンおよび/または1つ以上のα-オレフィンコモノマー)を含む重合反応器に添加すること、またはその逆によって行われる。重合反応器は、60℃~300℃の温度に維持され得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合反応器は、150℃~200℃、180℃~300℃、180℃~230℃、180℃~200℃など、150℃~230℃の温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、反応物、触媒系、またはその両方は、重合反応器内で5分~20分の滞留時間を有し得る。いくつかの実施形態では、滞留時間は、30分~4時間であり得る。あるいは、より長いまたはより短い滞留時間が、代替的に用いられ得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、150~3,000psig(1.0~20.7MPa)、例えば、250~1,000psig(1.7~6.9MPa)、または450~800psig(3.1~5.5MPa)の圧力などの比較的低い圧力で実行され得る。しかしながら、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下での重合/共重合は、大気圧から重合装置の能力(例えば、圧力定格)によって決定される圧力までの圧力で実行され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、不活性有機希釈剤、過剰のモノマー、またはその両方であり得る担体を含み得る。ポリマーによる担体の過飽和は、一般に、重合/共重合プロセス中に回避され得る。触媒系が枯渇する前にポリマーによる担体のそのような飽和が起こる場合、触媒系の完全な効率が実現され得ない。いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、担体/希釈剤中のポリマーの量を、ポリマーの過飽和濃度よりも低い濃度に維持するのに十分な条件で操作され得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、反応混合物の総重量に基づいて、担体/希釈剤中のポリマーの量を30重量パーセント(重量%)未満に維持するのに十分な条件で操作され得る。いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、温度制御を維持し、重合ゾーン全体にわたる重合反応の均一性を高めるために、反応混合物を混合または撹拌することを含み得る。比較的活性な触媒とのより迅速な反応などのいくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、希釈剤が含まれる場合、還流モノマーおよび希釈剤を含み得、それにより、反応熱の少なくとも一部を除去する。いくつかの実施形態では、熱伝達装置(例えば、熱交換器、冷却ジャケット、または他の熱伝達手段)は、重合の発熱の少なくとも一部を除去するために提供され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスに添加される反応混合物は、反応器の安定性を維持し、触媒効率を高めるのに十分な量のエチレンモノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1:2~1:5、1:3~1:8、または1.3~1.5など、1:2~1:8の希釈剤対エチレンモノマーのモル比を有し得る。いくつかの実施形態では、過剰のエチレンモノマーの一部を重合プロセスから排出して、反応器内のエチレンモノマーの濃度を維持し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、反応中に水素ガスを反応混合物と接触させることを含み得る。水素ガスは、エチレン系ポリマーの超高分子量分子の形成を低減するように操作可能であり得る。いくつかの実施形態では、反応混合物中の水素ガスの濃度は、モノマー1モル当たり0.001~1.000モルの水素に維持され得、ここで、モノマーは、エチレンモノマーおよび任意の任意選択的なα-オレフィンコモノマーを含む。水素は、モノマーストリームとともに、別個の水素供給ストリームとして、またはその両方で重合反応器に添加され得る。水素は、モノマーを重合反応器に添加する前、最中、および/または後に重合反応器に添加され得る。いくつかの実施形態では、水素は、触媒系の添加前または添加中に添加され得る。
【0046】
結果として得られるエチレン系ポリマーは、未反応のモノマー、コモノマー、希釈剤、またはこれらの組み合わせを追い出すことによって、重合混合物から回収され得る。いくつかの実施形態では、不純物のさらなる除去は必要とされ得ない。得られるエチレン系ポリマーは、少量の触媒残留物を含み得る。結果として得られるエチレン系ポリマーは、さらに溶融スクリーニングされ得る。例えば、エチレン系ポリマーは、押出機内で溶融され、次いで、直列に配置された1つ以上のアクティブスクリーンを通過し得、各アクティブスクリーンは、2マイクロメートル(μm)~約300μm、または2μm~約70μmなど、2μm~約400μmのミクロン保持サイズを有する。溶融スクリーニング中、エチレン系ポリマーの質量流量は、5~約100ポンド/時/in2(1.0~約20.0kg/秒/m2)であり得る。
【0047】
本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒で生成された結果として得られるエチレン系ポリマーは、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下で調製されなかったエチレン系ポリマーと比較して増加したHDFを示し得る。HDF含量は、本開示に開示された試験方法に従って決定され得る。本明細書で使用される場合、「比較ポリマー」という用語は、エチレン系ポリマーが比較触媒系の存在下で重合される比較重合プロセスによって調製されたポリマーを指す。比較触媒系は、本明細書に開示されたプロ触媒の代わりに、5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物を含まないことを除いて、比較プロ触媒組成物を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下で生成されたエチレン系ポリマーは、比較ポリマー(HFD変化)のHDFよりも少なくとも25%大きい、本明細書に開示された試験方法に従って決定されるHDFを有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された触媒系を含むプロセスによって生成されたエチレン系ポリマーは、比較ポリマーのHDFよりも少なくとも35%大きいなど、比較ポリマー(HFD変化)のHDFよりも少なくとも30%大きいHDFを有し得る。
【0049】
エチレン系ポリマーを生成する際の触媒の効率は、実施形態では、175kgポリマー/gTi~425kgポリマー/gTi、200kgポリマー/gTi~400kgポリマー/gTi、225kgポリマー/gTi~375kgポリマー/gTi、または250kgポリマー/gTi~350kgポリマー/gTiなど、100kgポリマー/gTi~1500kgポリマー/gTiである。
【0050】
実施形態に従って生成されたエチレン系ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下で生成されたエチレン系ポリマーは、本明細書に開示された試験方法に従って決定された、比較ポリマーのMw(Mw変更)よりも少なくとも2%、または少なくとも5%、または少なくとも7%大きいMwを有し得る。
【0051】
本明細書に開示されたプロ触媒および/または触媒の存在下で生成されたエチレン系ポリマーは、他のポリマーおよび/または添加剤などの追加の成分をさらに含み得る。添加剤の例は、これらに限定されないが、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、充填剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、Ciba Geigyから入手可能なIRGAFOS(商標)168およびIRGANOX(商標)1010などの酸化防止剤は、エチレン系ポリマー組成物を熱的および/または酸化的劣化から保護するために使用され得る。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、そのような添加剤を含むエチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて0.0重量%~7.0重量%、0.0重量%~5.0重量%、0.0重量%~3.0重量%、0.0重量%~2.0重量%、0.0重量%~1.0重量%、または0.0重量%~0.5重量%など、0.0重量%~10.0重量%の添加剤を含み得る。
【0052】
本明細書に開示された触媒系の存在下で生成されたエチレン系ポリマーは、実施形態では、LLDPEだけでなく、高密度ポリエチレン(HDPE)、プラストマー、中密度ポリエチレン、およびポリプロピレンコポリマーを含む多種多様な製品に含まれ得る。これらおよび他の用途のために、エチレン系ポリマーの平均分子量および高密度画分の増加により、全体的な品質が向上することを示す物品が調製され得る。ポリマーの有用な形成操作としては、フィルム、シート、管および繊維の押出および共押出を挙げることができるが、これらに限定されず、ならびにブロー成形、射出成形、および回転成形が実行され得る。フィルムは、共押出または積層によって形成されたインフレーションまたはキャストフィルムを含み得、収縮フィルム、クリングフィルム、延伸フィルム、封止フィルム、配向フィルム、軽食包装、重包装袋、食料品袋、焼成および冷凍食品包装、医療用包装、工業用ライナー、農業用フィルム用途および例えば、食品接触および非食品接触用途における膜として有用であり得る。繊維は、フィルタ、おむつ布地、医療用衣類、およびジオテキスタイルを作製するための織布および不織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸、およびメルトブロー繊維操作を含み得る。押出物品は、医療用チューブ、ワイヤーおよびケーブルのコーティング、ジオメンブレン、および池用ライナーを含み得る。成形物品は、ボトル、タンク、大型中空物品、硬質食品容器、および玩具の形態の単層および多層構造を含み得る。
【0053】
試験方法
密度
密度はASTM D792に従って測定され、グラム/立方センチメートル(g/ccまたはg/cm3)で報告される。
【0054】
メルトインデックス
メルトインデックス(I2)は、ASTM D1238に従って、190℃および2.16kgの負荷の条件下で測定される。メルトフローインデックス(I2)は、CEAST 7026またはInstron MF20機器を使用して取得された。機器は、ASTM D1238、メソッドEおよびNに従った。メルトインデックス(I2)は、10分あたりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。メルトインデックスI2は、ポリマーの特性評価のために使用された。より高いI2値は、一般に、より低いMwと相関し得る。
【0055】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
エチレン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPCで測定される。ポリマー試料を1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に10mg/mLの濃度で添加し、混合物を160℃で120分間加熱することにより、ポリマー試料を溶解する。この溶液は、溶液を安定させるために300重量百万分率(ppmw)のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。次に、試料の250マイクロリットル(μL)アリコートを注入する直前に、各試料を1ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)に希釈した。クロマトグラフには、2つのPolymer Labs PLgel 10μm MIXED-Bカラム(300ミリメートル(mm)×10mm)が装備されており、2.0mL/分の流量と160℃の温度で操作される。試料検出は、濃度モードのPolymerChar IR4検出器を使用して実施される。この温度で、TCB中のポリスチレン(PS)およびホモポリエチレン(PE)の既知のMark-Houwink係数を使用して、PEに調整された見かけの単位を用いて、光散乱較正用(narrow)PS基準物質の従来の較正を利用した。
【0056】
高密度画分(HDF)
改善されたコモノマー含量分布(iCCD)分析は、IR-5検出器(PolymerChar、Spain)と二角光散乱検出器(例えば、Precision Detectors、現在はAgilent TechnologiesからのModel 2040検出器)を備えたCrystallization Elution Fractionation(CEF)機器(PolymerChar、Spain)を使用して実施された。検出器オーブン内のIR-5検出器の直前に、10センチメートル(cm)(長さ)×1/4インチ(6.35mm)の内径(ID)のステンレスカラムに詰められた20~27ミクロンのガラス(MoSci Corporation、USA)を含むガードカラムが取り付けられる。オルトジクロロベンゼン(oDCB、99%無水グレードまたはテクニカルグレード)は、使用前に蒸留される。シリカゲル40(Aldrich、高純度グレード、35~70メッシュ)は、oDCBのさらなる乾燥のために使用される。シリカゲルは、使用前に160℃の真空オーブンで約2時間乾燥される。シリカゲル40は、3つの300mm×7.5mmのGPCサイズのステンレス鋼カラムに詰められる。シリカゲル40カラムは、CEF機器のポンプの入口に取り付けられる。CEF機器には、N2パージ能力を備えたオートサンプラーが装備される。oDBCは、使用前に少なくとも1時間、継続的に乾燥窒素(N2)でスパージする。
【0057】
試料調製は、160℃で2時間振盪しながら、オートサンプラーを3.6mg/mlで用いて(特に指定のない限り)行う。注入体積は、300μLである。iCCDの温度プロファイルは、105℃での安定化、3℃/分の冷却速度で105℃~30℃での結晶化、30℃で3分間の熱平衡(2分間に設定された可溶性画分溶出時間を含む)、3℃/分の加熱速度で30℃~140℃での溶出、である。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は、0.50mL/分である。データは、1つのデータ点/秒で収集する。iCCDカラムには、参考文献(Cong et al.、US78203、2015)に従って、15cm(長さ)×1/4インチ(6.35mm)IDのステンレスチューブにBright 7GNM8-NiS(Bright 7GNM8-NiS)が詰め込まれている。カラム温度の較正は、oDCB中の標準物質の線形ホモポリマーポリエチレン38-4(1.0mg/ml)およびエイコサン(2mg/ml)の混合物によって行われる。ポリマーの分子量およびポリマー画分の分子量は、LS検出器(90度の角度)およびRayleigh-Gans-Debye近似(Striegel and Yau、Modern Size Exclusion Liquid Chromatogram、Page 242 and Page 263)に従って、フォームファクターを1、全てのビリアル係数をゼロに等しいと仮定した濃度検出器(IR-5)から直接決定された。ベースラインは、LSおよび濃度検出器のクロマトグラムから差し引かれる。樹脂全体について、積分ウィンドウは、23.0℃~120℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で全てのクロマトグラムを積分するように設定される。樹脂の高密度部分(HDF)の重量パーセントは、次の式1(EQU.1)で定義される。
【数1】
【0058】
触媒効率は、プロ触媒組成物中に使用されるTi1g当たりの重合中に消費されるエチレンの量(g/gTi)に基づいて計算される。
【実施例】
【0059】
本開示の実施形態は、以下の実施例によってさらに明確化される。
【0060】
プロ触媒の調製
MgCl2スラリーは、WO2018/005821A1の「ハロゲン化マグネシウム担体」セクションの記載に従って調製される。
【0061】
全てのプロ触媒の調製は、窒素パージされたグローブボックス内で実行された。調製は、ヘキサン(0.25M)中のプロ触媒成分のストック溶液のMgCl2スラリー(Isopar-E中0.2M)への連続的な室温添加(撹拌あり)を含んだ。プロ触媒成分は、Et2AlCl、遷移金属成分試薬X(存在する場合)、およびTi化合物(TiCl4またはTiPt)の順でMgCl2に添加された。各反応工程の反応時間は、約12時間である。例えば、実施例2のプロ触媒(12Al;1Ti;2Zn)は、EtAlCl2をMgCl2スラリーに添加することによって調製された。室温で12時間撹拌した後、STREM Chemical,Inc.から入手した2-エチルヘキサノエート亜鉛(Zn(EHA)2;ミネラルスピリット中約80%)のヘキサン溶液を添加した。反応を室温でさらに12時間撹拌しながら進行させた後、TiCl4溶液を混合物に導入し、内容物を室温で一晩撹拌して、プロ触媒を得た。個々の試薬のモル比(Mgの40当量に対する)は、次の表に示される。
【0062】
エチレン/オクテンのバッチ重合
溶液バッチエチレン/1-オクテンの重合は、250gの1-オクテン(C
8)および1330gのIsopar-Eが充填された撹拌された1ガロン反応器中で実行された。反応器を190℃に加熱し、次に水素(40mmol)の存在下、エチレン(450psig)で飽和させた。触媒プレミックスと助触媒(トリエチルアルミニウム、TEA、表1ではTEA/Ti=15、表2ではTEA/Ti=10)をオーバーヘッドショットタンクで短時間(1~5分)混合してから、反応器に注入した。重合を10分間進行させ、その間、オンデマンドのエチレン供給を介してエチレン圧力を維持した。その後、下部バルブを開き、内容物をガラスケトルに移し、酸化防止剤溶液(0.1gのIRGAFOS 168(BASF Corporation製)および0.05gのIRGANOX 1010(BASF Corporation製)を含む1mL)と混合した。内容物をマイラーで裏打ちされた鍋に注ぎ、冷却し、フード内に一晩放置した。次に、樹脂を真空オーブン内で、60℃で48時間乾燥させた。触媒の負荷は、典型的には、1~3マイクロモルのTiの範囲であった。
【表1】
【0063】
上記の表1に示すように、4+以下の酸化状態を有する多くの遷移金属化合物により、ポリマーの分子量およびHDF含量が減少した(比較例1対比較例2~7を参照)。対照的に、酸化状態が5以上の化合物、すなわち、Mo(OEt)
5、Nb(O
nBu)
5およびTa(O
nBu)
5は、ポリマーの分子量およびHDF含量を増加させた(実施例1~3および比較例1を参照)。
【表2】
【0064】
表2に示すように、WCl6はポリマーの分子量およびHDFを増加させ、高酸化状態の遷移金属化合物の効果は、実施例1~3に示すようにTiCl4の代わりにTi(OiPr)4をTi源として使用したプロ触媒配合でも実証された。
【0065】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正および変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
プロ触媒であって、
100m2/g以上の表面積を有する予め形成された塩化マグネシウム触媒担体と、
チタン含有成分と、
塩素化剤と、
5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を含む、プロ触媒。
項2.
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、5+以上の酸化状態を有する脂肪族炭化水素可溶性遷移金属化合物である、項1に記載のプロ触媒。
項3.
前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体が、150m2/g以上の表面積を有する、項1および2のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項4.
前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体が、炭化水素溶媒中のMgCl2スラリーである、項1~3のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項5.
前記MgCl2スラリーが、炭化水素溶媒中のアルキルマグネシウム化合物溶液と、前記炭化水素溶媒を分離しない塩化物源と、の反応生成物である、項4に記載のプロ触媒。
項6.
前記チタン含有成分が、塩化チタンである、項1~5のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項7.
前記チタン含有成分が、TiCl4(OR)x-4であり、式中、Rは、C1~C21ヒドロカルビル、またはこれらの組み合わせであり、x=0、1、2、3、または4である、項1~6のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項8.
前記塩素化剤が、アルキルアルミニウムクロリドである、項1~7のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項9.
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、項1~8のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項10.
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物中に存在する遷移金属対前記チタン含有化合物中に存在するチタンのモル比が、0.1~10.0である、項1~9のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項11.
前記塩素化剤対前記チタン含有成分中に存在するチタンのモル比が、0.5~100.0である、項1~10のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項12.
100m2/g以上の表面積を有する予め形成された塩化マグネシウム触媒担体対前記チタン含有成分中に存在するチタンのモル比が、1.0~100.0である、項1~11のいずれか一項に記載のプロ触媒。
項13.
触媒であって、
項1~12のいずれか一項に記載のプロ触媒と、
アルキルアルミニウム助触媒と、を含む、触媒。
項14.
エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスであって、項13に記載の触媒の存在下で、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを接触させることを含む、プロセス。
項15.
前記重合プロセスが、溶液重合プロセスである、項14に記載のエチレン系ポリマーを重合するためのプロセス。
項16.
項1に記載のプロ触媒を調製するための方法であって、100m2/g以上の表面積を有する前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体に、(A)前記チタン含有成分と、(B)前記塩素化剤と、(C)前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物と、を混合することを含み、
前記5+以上の酸化状態を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物が、バナジウムを含まない、方法。
項17.
(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つが、(A)、(B)、または(C)のうちの少なくとも1つの他のものから時間的に分離されて前記予め形成された塩化マグネシウム触媒担体に添加される、項16に記載の方法。
項18.
項1~12のいずれか一項に記載のプロ触媒の存在下で調製されたエチレン系ポリマーであって、前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーの高密度画分よりも少なくとも5%大きい高密度画分を有する、エチレン系ポリマー。
項19.
前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーの高密度画分よりも少なくとも10%大きい高密度画分を有する、項18に記載のエチレン系ポリマー。
項20.
前記エチレン系ポリマーが、比較ポリマーのMwよりも少なくとも5%大きいMwを有する、項18または19に記載のエチレン系ポリマー。