(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/11 20060101AFI20241024BHJP
A62C 31/02 20060101ALI20241024BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A62C35/11
A62C31/02
A62C3/00 H
(21)【出願番号】P 2021001906
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 涼平
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181872(JP,A)
【文献】特開2002-291923(JP,A)
【文献】特開2019-166320(JP,A)
【文献】特開2016-168340(JP,A)
【文献】特開2002-233588(JP,A)
【文献】特開2018-175276(JP,A)
【文献】特開2010-005217(JP,A)
【文献】特開平10-076023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/11
A62C 31/02
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度を求めて前記旋回手段を制御すると共に該求められた旋回角度に基づいて前記切り替え手段を制御する制御部とを備えたことを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ノズルから火源方向に向けて消火剤を放出する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火災検出情報に基づいて火災発生箇所(火源位置)を特定し、火災発生箇所に向けて消火剤を放出する放水銃を用いた自動消火装置が、例えば特許文献1に記載されている。
また、特許文献1には、消火剤として水の他、泡消火薬剤も例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放水銃が消火剤を放出する防火エリアが工場の場合には、工場内に例えば工作機械のように油等を使用する機械設置エリアと、事務作業を行う事務所エリアがある。
工場内であっても機械設置エリアでの火災には消火剤として水よりも泡消火剤が適切である。他方、事務所エリアでの火災には、水による消火で対応することができる。
【0005】
このように、一つの放水銃による防火エリアにおいて適切な消火剤が2種類あった場合、消火という観点からはどちらの火災も消火できる消火剤が選択される。例えば、上記のような工場の場合、事務所エリアの火災は水でも泡消火剤でも消火できるが、機械設置エリアでの火災の場合には水では不十分で泡消火剤での消火が適切であるから、この場合には、どちらのエリアでの火災も消火できる泡消火剤が選択される。
【0006】
しかし、泡消火剤を放出すると消火後の泡薬剤の処理に手間と費用がかかるため、水による消火が可能なエリア、例えば上記の事務所エリアについては極力水による消火で済ませたいという要請がある。
【0007】
本発明はかかる要請に応えるためになされたものであり、一つの放水ノズルの防火エリア内において、火災発生箇所に応じて消火剤を選択して放出できる消火設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る消火設備は、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えたものであって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度を求めて前記旋回手段を制御すると共に該求められた旋回角度に基づいて前記切り替え手段を制御する制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記ノズルを俯仰させる俯仰手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度及び前記俯仰手段の俯仰角度を求め、該求められた旋回角度及び俯仰角度に基づいて前記旋回手段及び前記俯仰手段を制御すると共に該求められた俯仰角度に基づいて前記切り替え手段を制御することを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記ノズルを俯仰させる俯仰手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度及び前記俯仰手段の俯仰角度を求め、該求められた旋回角度及び俯仰角度に基づいて前記旋回手段及び前記俯仰手段を制御すると共に該求められた旋回角度及び俯仰角度に基づいて前記切り替え手段を制御することを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記ノズルから放射する消火剤の放射距離を調整する放射距離調整手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度及び前記放射距離調整手段の調整量を求め、該求められた旋回角度及び調整量に基づいて前記旋回手段及び前記放射距離調整手段を制御すると共に該求められた調整量に基づいて前記切り替え手段を制御することを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記ノズルから放射する消火剤の放射距離を調整する放射距離調整手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記旋回手段の旋回角度及び前記放射距離調整手段の調整量を求め、該求められた旋回角度及び調整量に基づいて前記旋回手段及び前記放射距離調整手段を制御すると共に該求められた旋回角度及び調整量に基づいて前記切り替え手段を制御することを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、火源方向に向けて消火剤を放出するノズルと該ノズルに消火剤を供給する消火剤供給ラインを備えた消火設備であって、
前記ノズルを旋回させる旋回手段と、前記消火剤供給ラインに水のみを供給するか水以外の消火剤を供給するかを切り替える切り替え手段と、火源位置を特定する火源位置特定手段と、該火源位置特定手段によって特定された火源位置に基づいて前記切り替え手段を制御する制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防火エリア内において、火災が発生した場所に応じて消火剤を選択できるので、消火という観点および後処理という観点の2つの観点からより適切な消火剤を選択して消火することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る消火設備の説明図である。
【
図2】実施の形態1の動作を説明する説明図である。
【
図3】実施の形態2、3の動作を説明する説明図である。
【
図4】フロアが異なる防火エリアの例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態に係る消火設備1は、
図1に示すように、火源方向に向けて消火剤を放出するノズル3とノズル3に消火剤を供給する消火剤供給ライン5を備えた消火設備1であって、ノズル3を旋回させる旋回手段7と、消火剤供給ライン5に水のみを供給するか水以外の消火剤である泡水溶液を供給するかを切り替える切り替え手段としての泡原液タンク加圧元弁9と、火源位置を特定する火源位置特定手段11と、火源位置特定手段11によって特定された火源位置に基づいて旋回手段7の旋回角度を求めて旋回手段7を制御すると共に該求められた旋回角度に基づいて泡原液タンク加圧元弁9を制御する制御部13とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0017】
<ノズル>
ノズル3は、旋回して火源方向に向けて消火剤を放出するものであり、いわゆる放水銃等が挙げられる。もっとも、本発明におけるノズル3は、水や泡水溶液等の消火剤を放出できるものであればよく、その形式は特に限定されるものではない。
なお、水以外の消火剤とは水に何等かの添加剤を添加したものであり、本実施の形態では泡消火剤を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第3種浸潤剤入り水であってもよい。
【0018】
<消火剤供給ライン>
消火剤供給ライン5は、消火剤をノズル3に供給するための配管及び配管に設置される機器類を含む。
消火剤供給ライン5に含まれる配管としては、
図1に示すように、消火用水又は泡水溶液を送水する送水本管15、送水本管15から分岐する分岐管17がある。そして、送水本管15には、消火用水を加圧して送水する送水ポンプ19、混合器元弁21、消火用水と泡原液を混合する混合器23が設けられ、分岐管17には泡原液タンク加圧元弁9、泡原液タンク25、泡原液吐出元弁27、逆止弁29が設けられている。泡原液タンク加圧元弁9が本発明の切り替え手段として機能する。
【0019】
<旋回手段>
旋回手段7は制御部13によって制御されてノズル3を火源方向に向かって旋回させるものであり、旋回モータやエンコーダによって構成されている。
【0020】
<泡原液タンク加圧元弁>
泡原液タンク加圧元弁9は切り替え手段の一態様であり、消火剤供給ライン5に水のみを供給するか水以外の消火剤である泡水溶液を供給するかを切り替えるためのものである。
泡原液タンク加圧元弁9は、制御部13によって開閉が制御される。制御タイミングについては、後述の制御部13の説明において説明する。
【0021】
<火源位置特定手段>
火源位置特定手段11は、火災が発生した位置である火源位置を特定するものであり、例えば熱源を探査する可動式赤外線リニアセンサと、可動式赤外線リニアセンサによって探査された熱源位置まで旋回して火源確認する可動式炎検知器との組み合わせからなるものが挙げられる。
もっとも、本発明の火源位置特定手段11は、火源位置を特定できればよく、その構成等は特に限定されるものではない。
【0022】
<制御部>
制御部13は火源位置特定手段11によって特定された火源位置に基づいて旋回手段7の旋回角度を求めて旋回手段7を制御すると共に該求められた旋回角度に基づいて泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御する。
制御部13は旋回角度に基づいて泡原液タンク加圧元弁9を開閉するため、予め旋回角度と泡原液タンク加圧元弁9の開閉とが関連付けられている。
例えば、旋回角度が0度~45度の場合には泡原液タンク加圧元弁9を開とし、旋回角度が45度超の場合には泡原液タンク加圧元弁9を閉とするというような関連付けである。
【0023】
以上のように構成された本実施の形態の動作を
図1及び
図2に基づいて説明する。
図2は、消火設備1が設定された工場内を平面視したものであり、ノズル3の旋回方向で機械設置エリアAと事務所エリアBに2分されている。
機械設置エリアAでの火災の消火には泡消火剤が適しており、事務所エリアBでの火災の消火には水が適している。そして、ノズル3の旋回角度とエリアとの関係では、例えば旋回角度(
図2のα参照)が0度~135度では機械設置アリアAへの放射となり、旋回角度が135度超えでは事務所エリアBへの放射となる。そのため、制御部13は、旋回角度が0度~135度であれば泡原液タンク加圧元弁9を開とし、旋回角度が135度超えでは泡原液タンク加圧元弁9を閉とするように設定されている。
【0024】
図2に示すX位置(旋回角度:100度)で火災が発生した場合、火源位置特定手段11が火源位置を特定し、制御部13は当該位置の旋回角度を100度と算出する。制御部13は算出した旋回角度に基づいて旋回手段7を制御し、旋回手段7は旋回角度100度までノズル3を旋回させる。また、制御部13は旋回角度が100度の場合には、泡原液タンク加圧元弁9を開とする。これによって、消火水が送水本管15と分岐管17に流れ、混合器23で泡原液と消火水が混合されて泡水溶液となってノズル3に供給されて泡消火剤による消火が行われる。
【0025】
また、
図2に示すY位置(旋回角度:170度)で火災が発生した場合、火源位置特定手段11が火源位置を特定し、制御部13は当該位置の旋回角度を170度と算出する。制御部13は算出した旋回角度に基づいて旋回手段7を制御し、旋回手段7はノズル3を旋回させて旋回角度170度まで旋回する。また、制御部13は旋回角度が170度の場合には、泡原液タンク加圧元弁9を閉とする。これによって、消火水が送水本管15のみに流れ、ノズル3に消火水が供給されて水消火が行われる。
【0026】
以上のように本実施の形態によれば、一つの消火ノズル3の防火エリア内において、火災が発生した場所に応じて消火剤を選択できるので、消火という観点および後処理という観点の2つの観点からより適切な消火を実現できる。
消火剤を選択するために例えば燃焼物をセンサ等で判定して、その判定に基づいて消火剤を選択することも考えられるが、燃焼物をセンサ等で判定することは、様々な要因(煙の色、燃え方等)から判断する必要があり困難である。
この点、本実施の形態によれば、防火対象物を置く位置(エリア)を決めておき、その位置と旋回角度との関連付けをし、この旋回角度に基づいて消火剤を選択できるので、複雑な燃焼物の判断が不要となり、安価に適切な消火剤の選択ができる。
【0027】
なお、上記の説明では防火エリアが旋回方向で2分されているものを例示したが、分割数は特に限定されるものではなく、3分されるものやそれ以上であってもよい。この場合には各エリア毎に旋回角度と泡原液タンク加圧元弁9の開閉との関連付けをしておけばよい。
【0028】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、防火エリア内において機械設置エリアAと事務所エリアBがノズル3の旋回方向で2分されている場合であったが、機械設置エリアAと事務所エリアBがノズル3に対して遠近で2分されている場合もある。
本実施の形態の消火設備1はこのような場合に好適なものであり、その具体的な構成は、実施の形態1の構成に加えて、ノズル3を俯仰させる(上下方向に首振りさせる)俯仰手段をさらに有している。
そして、制御部13は、火源位置特定手段11によって特定された火源位置に基づいて旋回手段7の旋回角度及び俯仰手段の俯仰角度を求め、該求められた旋回角度及び俯仰角度に基づいて旋回手段7及び俯仰手段を制御すると共に該求められた俯仰角度に基づいて切り替え手段としての泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御する。
【0029】
以上のように構成された本実施の形態の動作を
図1及び
図3に基づいて説明する。
図3は、
図2と同様に消火設備1が設定された工場内を平面視したものであり、ノズル3に対して遠近で機械設置エリアAと事務所エリアBに2分されている。
機械設置エリアAでの火災の消火には泡消火剤が適しており、事務所エリアでの火災の消火には水が適している点は実施の形態1と同様である。
【0030】
ノズル3の俯仰角度との関係では、例えば俯仰角度が-10度~0度では事務所エリアBへの放射となり、俯仰角度が0度超えでは機械設置エリアAへの放射となる。そのため、制御部13は、俯仰角度が-10度~0度であれば泡原液タンク加圧元弁9を閉とし、俯仰角度が0度超えでは泡原液タンク加圧元弁9を開とするように設定されている。
【0031】
なお、ノズル3は円弧状に旋回するため、例えば俯仰角度が0度となった場合の消火可能なエリアは
図3において事務所エリアB内に描いた半円のエリアとなり、矩形状の事務所エリアBとは重ならない部分が生ずる。
【0032】
図3に示すX位置(旋回角度:90度、俯仰角度:20度)で火災が発生した場合、火源位置特定手段11が火源位置を特定し、制御部13は当該位置の旋回角度を90度、俯仰角度を20度と算出する。制御部13は算出した俯仰角度及び旋回角度に基づいて俯仰手段及び旋回手段7を制御する。制御部13の制御により旋回手段7は旋回角度90度までノズル3を旋回させ、俯仰手段は俯仰角度が20度になるようにノズル3を俯仰させる。
また、制御部13は俯仰角度が20度の場合には、泡原液タンク加圧元弁9を開とする。これによって、消火水が送水本管15と分岐管17に流れ、混合器23で泡原液と消火水が混合されて泡水溶液となってノズル3に供給されて泡消火剤による消火が行われる。
【0033】
また、
図3に示すY位置(旋回角度:135度、俯仰角度:-5度)で火災が発生した場合、火源位置特定手段11が火源位置を特定し、制御部13は当該位置の旋回角度を135度、俯仰角度を-5度と算出する。制御部13は算出した旋回角度及び俯仰角度に基づいて旋回手段及び俯仰手段7を制御する。制御部13の制御により旋回手段7は旋回角度135度までノズル3を旋回させ、俯仰手段7は俯仰角-5度になるようにノズル3を俯仰させる。
また、制御部13は俯仰角度が-5度の場合には、泡原液タンク加圧元弁9を閉とする。これによって、消火水が送水本管15のみに流れ、ノズル3に消火水が供給されて水による消火が行われる。
【0034】
以上のように本実施の形態によれば、一つの消火ノズル3の防火エリア内において、火災が発生した場所がノズル3に対して遠近で2分されているような場合であっても、火災が発生した場所に応じて消火剤を選択できるので、消火という観点および後処理という観点の2つの観点からより適切な消火を実現できる。
また、本実施の形態によれば、防火対象物を置く位置(エリア)を決めておき、その位置と俯仰角度との関連付けをし、この俯仰角度に基づいて消火剤を選択できるので、複雑な燃焼物の判断が不要となり、安価に適切な消火剤の選択ができる。
【0035】
[実施の形態3]
図3におけるZの位置で火災が発生した場合、Zの位置は事務所エリアB内であるため、本来であれば水による消火が好ましい。
しかし、実施の形態2のように、俯仰角度のみで泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御しようとすると、Zを通る円弧(
図3の破線の円弧)内が全て水による消火エリアとなる。この場合、
図3に示されるように、破線の円弧内には機械設置エリアAも含まれるため、このような制御をすると例えばPの位置で火災が発生した場合にも水での消火となり適切でないため、Zを通る円弧上は、泡による消火エリアとしている。
【0036】
そこで、本実施の形態では、防火エリアが遠近で2分されており、その2分される境界線が円弧でないような場合であっても、適切に消火剤を選択できるようにしたものである。
その具体的な構成は、実施の形態2では制御部13が俯仰角度のみに基づいて泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御していたのを、本実施の形態では制御部13が俯仰角度及び旋回角度に基づいて泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御するようにしたものである。
この場合、制御部13は旋回角度及び俯仰角度と泡原液タンク加圧元弁9の開閉との関係が関連付けられている。
【0037】
例えば、
図3のPの位置(旋回角度:175度、俯仰角度:5度)で火災が発生したときには、このような旋回角度及び俯仰角度の位置は機械設置エリアAであると関連付けられており、制御部13は泡原液タンク加圧元弁9を開とする。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、防火エリア内で2分される境界線が円弧状でなくても、火災が発生した場所に応じた適切な消火が可能となる。
また、本実施の形態によれば、防火対象物を置く位置(エリア)を決めておき、その位置と旋回角度及び俯仰角度との関連付けをし、この旋回角度及び俯仰角度に基づいて消火剤を選択できるので、複雑な燃焼物の判断が不要となり、安価に適切な消火剤の選択ができる。
【0039】
なお、
図3に示す例は、機械設置エリアAと事務所エリアBが同一フロアにある場合であったが、本実施の形態の消火設備1はこのような場合のみならず、機械設置エリアAと事務所エリアBのフロアが異なる場合であっても適用できる。このような防火エリアの例を
図4に示す。
図4(a)は防火エリアの平面図、
図4(b)は防火エリアの側面図である。この例では、1階が機械設置エリアAであり、1階の一部が吹き抜けとなっており、吹き抜け以外の部分に2階部分が設けられ、この2階部分が事務所エリアBとなっている。
【0040】
図4に示す例では、例えば俯仰角度が-10度~0度のときには1階の機械設置エリアAへの放射(泡消火剤)となり、俯仰角度が10度~20度のときには2階の事務所エリアへの放射(水)となる。
【0041】
また、上記の実施の形態3、4の消火設備1は、旋回手段7に加えて俯仰手段を備えたものであり、この俯仰手段はノズル3の俯仰角度を調整することで消火剤の放射距離を調整するものである。そして、消火剤の放射距離を調整する手段としては、ノズル3の俯仰角度を調整するものの他、放水圧力の調整、放水流量の調整、デフレクターの調整(デフレクターの角度調整やデフレクターに消火剤を当てる当てないの調整を含む)等があり、これらの調整を行うものを放射距離調整手段とすれば、実施の形態2、3の俯仰手段に代えて放射距離調整手段を用いることができる。
【0042】
具体的には、実施の形態2の俯仰手段に代えて放射距離調整手段を用いた場合には、制御部13は、火源位置特定手段11によって特定された火源位置に基づいて旋回手段7の旋回角度及び放射距離調整手段による調整量を求める。調整量とは、放水圧力、放水流量、あるいはデフレクターの調整である。
そして、制御手段13は、求められた旋回角度及び前記調整量に基づいて旋回手段7及び放射距離調整手段を制御すると共に該求められた調整量に基づいて切り替え手段としての泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御する。
【0043】
また、実施の形態3の俯仰手段に代えて放射距離調整手段を用いた場合には、制御部13は、求められた旋回角度及び前記調整量に基づいて旋回手段7及び放射距離調整手段を制御すると共に該求められた旋回角度及び調整量に基づいて切り替え手段としての泡原液タンク加圧元弁9の開閉を制御する。
【0044】
[実施の形態4]
実施の形態1~3の消火設備1における制御部13は、泡原液タンク加圧元弁9の開閉制御を、ノズル3の旋回角度(実施の形態1)、俯仰角度(実施の形態2)、旋回角度と俯仰角度(実施の形態3)に基づいて行っていたが、本実施の形態の消火設備1の制御部13は、火源位置特定手段11によって特定された火源位置に基づいて切り替え手段である泡原液タンク加圧元弁9を制御するようにしたものである。
この場合、防火エリア内を例えば碁盤の目のように細分化して各位置と泡原液タンク加圧元弁9の開閉を関連づけるようにしておき、制御部13はこの関連付けに基づいて泡原液タンク加圧元弁9の開閉制御を行うようにすればよい。
【0045】
本実施の形態によれば、好適な消火剤が異なるエリアが複雑に配置されるような場合であっても適切な消火剤による消火が可能となる。
また、本実施の形態によれば、防火対象物を置く位置(エリア)を決めておき、その位置と火源特定位置との関連付けをし、この火源特定位置に基づいて消火剤を選択できるので、複雑な燃焼物の判断が不要となり、安価に適切な消火剤の選択ができる。
【0046】
上記の実施の形態1~4の消火設備1は、
図1に示すように、ノズル3に供給する消火剤を消火用水と泡消火剤のいずれにするかを泡原液タンク加圧元弁9の開閉で切り替えるようにしたものであり、泡原液タンク加圧元弁9を本発明の切り替え手段として機能させたものであったが、本発明の消火剤の切り替えのための構成や切り替え手段はこれに限られず、以下のような態様のものであってもよい。
消火用水の貯留槽とは別に予め水と泡消火剤を適切な混合比に混合した泡水溶液を貯留する泡水溶液貯留槽を設け、消火用水供給ラインと泡水溶液供給ラインを下流側で連結して消火剤供給ラインとし、この消火剤供給ラインの先端に
図1で示した旋回手段7、ノズル3を設ける。また、貯留槽の消火用水を消火用水供給ラインに供給する消火用水用ポンプと、泡水溶液貯留槽の泡水溶液を泡水溶液供給ラインに供給する泡水溶液用ポンプと、消火用水用ポンプと泡水溶液用ポンプのいずれを起動させるかを切り換える切替装置とを設け、制御部13(
図1参照)がこの切替装置を制御するようにする。
このようにすることで切替装置によって泡水溶液用ポンプが起動すればノズル3には泡水溶液が供給され泡消火となり、消火用水用ポンプが起動すればノズル3に消火用水が供給され水消火となる。この方法は例えば消火剤に第3種浸潤剤入り水のように、使用時に水と混合しない消火剤を使用する場合に用いることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 消火設備
3 ノズル
5 消火剤供給ライン
7 旋回手段(俯仰手段)(旋回手段及び俯仰手段)
9 泡原液タンク加圧元弁(切り替え手段)
11 火源位置特定手段
13 制御部
15 送水本管
17 分岐管
19 送水ポンプ
21 混合器元弁
23 混合器
25 泡原液タンク
27 泡原液吐出元弁
29 逆止弁