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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】安全弁の自動検査装置及び自動検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/00 20060101AFI20241024BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20241024BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01M3/00 K
G01M3/26 P
F16K51/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021003739
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108633
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉良 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 祐二
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-271235(JP,A)
【文献】特開2004-319208(JP,A)
【文献】特開2010-043967(JP,A)
【文献】特開平01-158297(JP,A)
【文献】特開2015-179076(JP,A)
【文献】特開2018-162999(JP,A)
【文献】特開平06-137988(JP,A)
【文献】米国特許第05856615(US,A)
【文献】中国実用新案第208902348(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G01M 13/00
F16J 12/00
F16K 17/00-17/168
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全弁からなるワークを接続した検査用流路に検査流体を流入させて安全弁の作動圧力を測定する自動検査装置であって、前記検査用流路は、前記ワークを挟んで検査流体供給用の一次側流路と前記ワークの作動圧力測定用の二次側流路とを備え、この二次側流路には、安全弁の吹始め圧力による微小流量測定用の微漏れセンサを有する微漏れ流路と、吹始め圧力よりも大きい吹出し圧力及び吹止り圧力による大流量測定用の大漏れセンサを有する大漏れ流路とが切り替え可能に分岐して設けられていることを特徴とする安全弁の自動検査装置。
【請求項2】
前記一次側流路には、検査流体の供給圧力調整用の圧力調整手段と圧力測定用の圧力測定手段とが設けられ、これら圧力調整手段と圧力測定手段とが制御用の制御部に接続された請求項1に記載の安全弁の自動検査装置。
【請求項3】
前記一次側流路には、検査流体排気用の排気流路が開閉可能に設けられた請求項1又は2に記載の安全弁の自動検査装置。
【請求項4】
安全弁からなるワークを検査用流路に設けた検査流体供給用の一次側流路と作動圧力測定用の二次側流路との間に接続し、この二次側流路に切り替え可能に分岐して設けた微小流量測定用の微漏れセンサを有する微漏れ流路と大流量測定用の大漏れセンサを有する大漏れ流路とのうち、前記微漏れ流路に切り替えた状態で前記ワークの吹始め圧力を測定し、次いで、大漏れ流路に切り替えた状態で前記ワークの吹出し圧力、吹止り圧力をそれぞれ測定するようにしたことを特徴とする安全弁の自動検査方法。
【請求項5】
吹始め圧力の測定時には、前記二次側流路を前記大漏れ流路に切り替えて昇圧速度がより速い状態で検査流体の吹始め圧力に達する直前まで昇圧した後に、前記二次側流路を前記微漏れ流路に切り替えて吹始め圧力を測定するようにした請求項4に記載の安全弁の自動検査方法。
【請求項6】
前記検査流体の吹始め圧力に達する直前の圧力が、当該ワークに要求される吹始め圧力の略90%の圧力に設定された請求項5に記載の安全弁の自動検査方法。
【請求項7】
吹止り圧力の測定後には、前記一次側流路と前記大漏れ流路を閉じ、前記一次側流路に設けた排気流路を開けて前記ワーク内と前記検査用流路内とを排気した後に、前記ワークに所定の検査圧力を加えて弁座漏れ検査をおこなうようにした請求項4乃至6の何れか1項に記載の安全弁の自動検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁の作動圧力や弁座漏れを検査するための安全弁の自動検査装置及び自動検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安全弁においては、吹始め、吹出し、吹止りなどの各作動圧力や弁座漏れ量などの規格がサイズや使用箇所等に応じて定められ、これらを満足するために市場への供給前に検査がおこなわれている。安全弁を検査するための装置としては、安全弁から漏れる検査用ガスの音を聴覚により確認したり、安全弁の流出口側に張ったせっけん水の膨らみ状態を視認したりするものがあるが、これらは何れも、装置全体や検査時の手順が複雑になるばかりか、聴覚や視覚により確認する検査であるため、作業員の熟練度によっては一度の検査で安全弁の作動良否を判断することができなかった。
【0003】
これに対し、自動制御により安全弁に供給した検査流体の圧力をセンサで測定し、その測定値から検査結果を判断することで検査の精度を高めようとする安全弁の自動検査装置が知られている。この種の検査装置として、一次側流路、二次側流路がそれぞれ一本の管路により検査用の安全弁を挟むように設けられ、一次側流路から検査流体を流し、二次側流路側に設けられた圧力センサにより圧力を測定する装置が知られる。
【0004】
一方、特許文献1に開示された安全弁の作動テスト装置においては、圧力供給用のガスボンベからヘッダーを通して検査用の流路が閉ループ状に設けられ、この流路に複数の電磁弁が接続された構成となっている。この安全弁の検査装置では、電磁弁の開閉制御により安全弁への入口側・出口側流路が切り替えられつつ、安全弁の検査がおこなわれる。
【0005】
これらの検査装置により安全弁の作動圧力を検査する場合、安全弁の作動圧力として、吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力が主要な検査項目となっており、これら各圧力を弁座漏れ量などとともに検査装置で正確かつ迅速に測定する必要がある。吹始め圧力とは、入口側の圧力が増加して、出口側で流体の微量な流出が検知されるときの入口側の圧力であり、吹出し圧力とは、ポッピング圧力とも呼ばれ、安全弁が急速開作動(ポッピング)するときの入口側の圧力であり、吹止り圧力とは、再着座圧力とも呼ばれ、弁体が弁座と再接触するか、又はリフトがゼロとなるときの入口側の静的圧力である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-137988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の一次側流路と二次側流路とがそれぞれ一本の管路で構成された検査装置の場合、吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力の測定をこの一本の管路内で実施し、最初の吹始め圧力の測定は、検査流体の吹出し(流出)がゼロの状態から流体が漏れ出すときの微量流量を検知し、続いて、吹出しから吹止りまでの圧力の測定は、流出している圧力値を検知することでおこなわれる。この場合、圧力センサとして微小流量測定用を用いると大流量の圧力測定が難しくなり、大流量測定用を用いると微小流量の測定が難しくなることから、一つの圧力センサを共通して用いる場合には、吹始め圧力から、吹出し、吹止り圧力まで(微小流量から大流量まで)を正確に測定してその判定をすることが難しい。
一方、後者の特許文献1の場合にも、検査用流路が閉ループ状の一つの流路となっているため、上記の検査装置の場合と同様に、一つの圧力測定用センサを共通して用いたときには、吹出し圧力、吹出し圧力、吹止り圧力を正確に測定することが難しくなる。
【0008】
これらの圧力検査装置は、何れも安全弁を圧力検査する際に、検査開始時の吹始め圧力までの昇圧を手動でおこなう場合には熟練を要し、たとえ熟練者であっても吹出し圧力まで迅速に昇圧して吹始め圧力を正確に測定することが困難になっている。一方、吹始め圧力までの昇圧を自動化する場合であっても、吹始めの境界圧力を正確に測定するためには、圧力を徐々に上げつつ測定をおこなわざるを得ず、吹始め圧力に達するまでに時間を要するために一つの安全弁の検査に多大な時間がかかっていた。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、安全弁の吹始め、吹出し、吹止りの各作動圧力を正確に測定でき、吹始め圧力に達するまでの時間を短縮して速やかに安全弁の圧力検査をおこなうことができる安全弁の自動検査装置及び自動検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、安全弁からなるワークを接続した検査用流路に検査流体を流入させて安全弁の作動圧力を測定する自動検査装置であって、検査用流路は、ワークを挟んで検査流体供給用の一次側流路とワークの作動圧力測定用の二次側流路とを備え、この二次側流路には、安全弁の吹始め圧力による微小流量測定用の微漏れセンサを有する微漏れ流路と、吹始め圧力よりも大きい吹出し圧力及び吹止り圧力による大流量測定用の大漏れセンサを有する大漏れ流路とが切り替え可能に分岐して設けられている安全弁の自動検査装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、一次側流路には、検査流体の供給圧力調整用の圧力調整手段と圧力測定用の圧力測定手段とが設けられ、これら圧力調整手段と圧力測定手段とが制御用の制御部に接続された安全弁の自動検査装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、一次側流路には、検査流体排気用の排気流路が開閉可能に設けられた安全弁の自動検査装置である。
【0016】
請求項に係る発明は、安全弁からなるワークを検査用流路に設けた検査流体供給用の一次側流路と作動圧力測定用の二次側流路との間に接続し、この二次側流路に切り替え可能に分岐して設けた微小流量測定用の微漏れセンサを有する微漏れ流路と大流量測定用の大漏れセンサを有する大漏れ流路とのうち、微漏れ流路に切り替えた状態でワークの吹始め圧力を測定し、次いで、大漏れ流路に切り替えた状態でワークの吹出し圧力、吹止り圧力をそれぞれ測定するようにした安全弁の自動検査方法である。
【0017】
請求項に係る発明は、吹始め圧力の測定時には、二次側流路を大漏れ流路に切り替えて昇圧速度がより速い状態で検査流体の吹始め圧力に達する直前まで昇圧した後に、二次側流路を微漏れ流路に切り替えて吹始め圧力を測定するようにした安全弁の自動検査方法である。
【0018】
請求項に係る発明は、検査流体の吹始め圧力に達する直前の圧力が、当該ワークに要求される吹始め圧力の略90%の圧力に設定された安全弁の自動検査方法である。
【0019】
請求項に係る発明は、吹止り圧力の測定後には、一次側流路と大漏れ流路を閉じ、一次側流路に設けた排気流路を開けてワーク内と検査用流路内とを排気した後に、ワークに所定の検査圧力を加えて弁座漏れ検査をおこなうようにした安全弁の自動検査方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、検査用流路において、ワークの作動圧力測定用の二次側流路に、微小流量測定用のセンサを有する微漏れ流路と、大流量測定用のセンサを有する大漏れ流路とを切り替え可能に分岐して設けていることで、微小流量である吹始め圧力を微漏れ流路で測定し、大流量である吹出し圧力、吹止り圧力を大漏れ流路で測定することにより、各圧力値に適したスケールを備えたセンサを用いてそれぞれの圧力を正確に測定できるだけでなく、特に、小流量測定用の微漏れセンサに過大な圧力が加わるおそれがないため、この微漏れセンサの破損や故障を防ぐこともできる。このように、吹始め圧力を微漏れ流路、吹出し、吹止り圧力を大漏れ流路で別々に測定することにより、微漏れ流路の吹始め圧力に達するまでの時間を調整することが可能になる。このため、自動制御により、吹始め圧力に達するまでの昇圧速度を速めて時間を短縮でき、速やかかつ簡便にワークの検査を実施可能となる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、一次側流路に圧力調整手段と圧力測定手段とを設け、これらを制御部に接続していることで、制御部を通して一次側流路からの検査流体を迅速かつ正確に圧力調整し、ワークに対して所望の吹始め、吹出し、吹止り圧力などの検査圧力を供給できる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、一次側流路に排気流路を開閉可能に設けていることで、ワークの吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力の測定後に流路内を排気することができ、これら作動圧力の検査後にワークの弁座漏れ検査を実施することも可能になる。
【0026】
請求項に係る発明によると、微小流量である吹始め圧力を微漏れ流路で測定し、次いで、大流量である吹出し圧力、吹止り圧力を大漏れ流路で測定することで、各圧力値に適したスケールを備えたセンサを用いてそれぞれの圧力を正確に測定でき、特に微小流量測定用である微漏れセンサに過大な圧力が加わるおそれもないため、この微漏れセンサの破損や故障も防げる。微漏れ流路の吹始め圧力に達するまでの時間の調整も容易になる。
【0027】
請求項に係る発明によると、吹始め圧力に達するまでの昇圧速度を速めることで時間を短縮して速やかにワークの圧力検査を実施でき、吹始め圧力の設計値に満たないワークを早期に発見することもできる。吹始め圧力に達する直前の圧力から吹始め圧力の測定に必要な微小な圧力上昇をおこなうことで、吹始め圧力を高精度に測定可能になる。
【0028】
請求項に係る発明によると、吹始め圧力を超えることなく昇圧速度を速めて検査時間を短縮し、二次側流路の作動圧力測定用のセンサの破損や故障を防ぎつつ吹始め圧力を測定できる。
【0029】
請求項に係る発明によると、吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力に加えて、ワークに対して弁座漏れ検査をおこなうことにより、弁座漏れのおそれの無い信頼性の高い安全弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の安全弁の自動検査装置の一例を示す模式図である。
図2図1の検査用流路の大漏れ流路を開にした状態を示す模式図である。
図3図2の検査用流路の微漏れ流路を開にした状態を示す模式図である。
図4図3の検査用流路の大漏れ流路を開にした状態を示す模式図である。
図5】ワーク内の排気状態を示す模式図である。
図6】弁座漏れ検査における流路の状態を示す模式図である。
図7】ワークのアンクランプ時における流路の状態を示す模式図である。
図8】安全弁(ワーク)の一例を示す中央縦断面図である。
図9】安全弁の自動検査方法の一例を示すフローチャートである。
図10図9の続きを示す安全弁の自動検査方法のフローチャートである。
図11】安全弁の昇圧過程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明における安全弁の自動検査装置を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1図7においては、本発明の安全弁の自動検査装置(以下、装置本体1という)の一例の模式図を示しており、この装置本体1には検査用流路2が設けられ、検査用流路2に検査用の安全弁(ワーク)3が接続される。
【0032】
装置本体1は、検査用流路2から検査流体を図8に示した安全弁3に流入させることで、安全弁3の作動圧力である、吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力を測定可能であり、これら圧力を、検査される当該安全弁3に応じて予め設定した比較用の設計値、すなわちその安全弁3に要求される作動圧力の設計値と比較することで、検査結果を判定可能に設けている。さらに、装置本体1は、作動圧力の検査後に弁座漏れ検査も実施するように設けている。検査に使用する検査流体としては、例えば、空気又は窒素ガスが用いられる。
【0033】
本実施形態において、前記した「吹始め圧力」、「吹出し圧力」、「吹止り圧力」の各圧力とは、JIS_B8210「安全弁」で規定されている内容、すなわち、「吹始め圧力:入口側の圧力が増加して、出口側で流体の微量な流出が検知されるときの入口側の圧力」、「吹出し圧力:安全弁が急速開作動(ポッピング)するときの入口側の圧力。ポッピング圧力ともいう。」、「吹止り圧力:弁体が弁座と再接触するか、又はリフトがゼロとなるときの入口側の静的圧力。再着座圧力ともいう。」とそれぞれ定義するものとする。
【0034】
図中、検査用流路2は、検査流体供給用の一次側流路11、ワーク3の作動圧力測定用の二次側流路12、検査流体排気用の排気流路13を有し、一次側流路11と二次側流路12とがワーク3を挟むようにして一、二次側にそれぞれ設けられ、排気流路13が一次側流路11から流路を切り替え可能に開閉自在に接続されている。
【0035】
一次側流路11には、検査流体(エア又は窒素ガス)を供給するための流体供給源20、圧力調整手段21、圧力測定手段22、流路開閉用のNC(ノーマルクローズ)型の加圧用電磁弁23が設けられている。このうち、流体供給源20はエアポンプよりなり、例えば、3.5MPa以上の元圧(供給圧)によって、検査流体であるエアを検査用流路2(一次側流路1)に供給可能になっている。
【0036】
圧力調整手段21は、検査流体の供給圧力調整用として設けられ、ステッピングモータ30と、このステッピングモータ30により開度を制御可能なレギュレータ31とを備え、制御用として設けられた制御部32により、ステッピングモータ30の回転量を制御してレギュレータ31の開度が調整可能に設けられ、このレギュレータ31を通して検査流体の圧力が調節される。そして、圧力調節された検査流体が、所望の圧力で一次側流路11からワーク3に供給可能に設けられている。
圧力測定手段22は、一般的に用いられる圧力センサよりなり、この圧力センサ22で測定した一次側流路11の圧力が、制御部32によって検出される。
【0037】
圧力調整手段21、圧力測定手段22は、制御部32に電気的に接続されている。図中、一点鎖線は、圧力調整手段21、圧力測定手段22が電気的に接続されている状態を示している。
【0038】
制御部32は、圧力調整手段21、圧力測定手段22、とさらに加圧用電磁弁23に加えて、後述する排気流路13や二次側流路12に設けられた電磁弁、センサ等の構成部品に電気的に接続され、これにより、検査用流路2の一次側流路11以外の電磁弁等の動作の制御や、センサによる測定値の検出も可能になっている。
【0039】
なお、制御部には、圧力の測定値の記録や、各ワーク3に応じて設定された吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力による作動圧力の設定値や、弁座漏れ検査用の圧力などの設定値が比較用として格納され、この設定値を測定値とを比較することで、各種検査結果を判定する機能も備えていてもよい。
【0040】
本例では、図11のとおり上記の制御部32により、検査開始から検査流体の吹始め圧力に達する直前までの昇圧速度(A区間)が、この吹始め圧力に達する直前から吹始め圧力までの昇圧速度(B区間)よりも速くなるように、圧力調整手段21の動作が制御されるように設定されている。制御部32には、図示しないモニターやキーボードなどの入力機も接続され、検査の結果等の確認や設定事項などの入力をおこなうようにしてもよい。
【0041】
加圧用電磁弁23は、圧力調整手段21、圧力測定手段22の二次側に流体加圧用として接続され、制御部32の制御により一次側流路11を開閉可能に設けられる。
【0042】
排気流路13には、圧力センサ35、排気用のNO(ノーマルオープン)型の電磁弁37が設けられる。これら圧力センサ35、排気用電磁弁37は、制御部32により制御され、圧力センサ35で流路内の圧力を測定しつつ、排気用電磁弁37を開閉して排気流路13から検査流体を排出可能になっている。
【0043】
二次側流路12は、ワークの作動圧力測定用の流路であり、ワーク3からの微小な漏れによる流体を流すための微漏れ流路40と、この微小な漏れに比較してより流量の大きい流体を流すための大漏れ流路41とが、制御部32で切り替え可能な状態で分岐して設けられる。
【0044】
微漏れ流路40には、微漏れ側電磁弁50と、吹始め圧力による微小流量を測定可能なスケールを備えた微漏れセンサ51とが備えられ、大漏れ流路41には、大漏れ側電磁弁52と、吹出し圧力及び吹止り圧力による大流量を測定可能な大漏れセンサ53とが備えられている。微漏れセンサ51、大漏れセンサ53としては、フローセンサが用いられ、特に、微漏れセンサ51は、0.01mL/min.単位で細かく圧力測定できるスケールを備えていることが望ましい。本実施例において、微漏れセンサは、FSM-H-N-005ML-6A-T(CKD製、スケール0.25~5mL/min.)、大漏れセンサは、FSM3-L005U1BH1A1N-AH(CKD製、スケール15~500mL/min.)を用いている。
微漏れ側電磁弁50、微漏れセンサ51、大漏れ側電磁弁52、大漏れセンサ53は、それぞれ制御部32で制御可能に設けられる。
【0045】
図示しないが、一次側流路11と二次側流路12との間の所定位置には、適宜のワーク取付け用治具が設けられる。この治具は、例えば、下部側の載置用ベースと上部側のクランプ板とを備えた構造であり、ベース側に一次側流路11、クランプ板側に二次側流路12がそれぞれ接続され、ベースとクランプ板との間にワーク3を挟んで検査用流路2にシール状態で接続することが可能になっている。ワーク3取付け用の治具は、ワーク3をシール状態で接続し、その作動圧力(少なくとも、吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力)を測定可能であれば、上記以外の各種の構造のものを用いることもできる。
【0046】
図8においては、上述した装置本体1によって作動圧力の測定や弁座漏れ検査が実施される検査用の安全弁(ワーク)3の一例を示している。安全弁3は、例えば容器や配管に接続され、これらの内部圧力が規定の圧力を超えて上昇することを防ぐ機能を備えており、これによって容器や配管の破損等を防止することができる。
【0047】
安全弁3は、ばねの弾発力に抗して作動する、いわゆるばね式と呼ばれる作動方式の安全弁からなり、円筒状のボデー70、キャップ71、ソケット72を備えている。ボデー70の両端側には、キャップ71、ソケット72がそれぞれ螺着され、これらキャップ71、ソケット72の中央部には、検査流体が通過する入口側貫通穴73、出口側貫通穴74がそれぞれ入口側流路、出口側流路として形成され、入口側貫通穴73の二次側(ボデー内部側)には、環状の弁座75が突出形成されている。
【0048】
ボデー70内部には、円筒状の弁体76がコイルスプリング77でキャップ71方向に弾発付勢された状態で取付けられ、弁体76のキャップ71側に装着されたシート78が、コイルスプリング77によって弁座75に着座可能に設けられている。弁体76の外周にはこの弁体の移動方向に沿って切欠き溝79が複数箇所に設けられ、この切欠き溝79が弁開時における流路の機能を果たしている。
【0049】
安全弁3は、通常時においては、コイルスプリング77の弾発付勢力で弁体76のシート78が弁座75に着座することで弁閉状態が維持される。一方、入口側貫通穴73から所定の流体圧が加わったときには、その圧力により弁体76がコイルスプリング77の弾発付勢力に抗して移動して弁開状態となり、入口側貫通穴73からの圧力が切欠き溝79を通して出口側貫通穴74から流出されて圧力を開放可能になっている。
【0050】
本例の安全弁としては、例えば、口径サイズが10A~65A程度のものが用いられ、容器や配管への取付け側であるキャップ71に取付け用のフランジ71aが形成されたフランジ式からなっているが、このようなフランジ式に限らず、キャップにおねじが設けられたねじ込み式による取付け構造などであってもよい。また、安全弁3の作動方式は、ばね式に限らず、てこ式やおもり式、ばね平衡式などであってもよい。これらのように取付け構造や作動方式が異なる安全弁の検査をおこなう場合には、装置本体の取付け用治具を適宜変更することで容易に対応できる。
【0051】
次いで、上述した装置本体1による安全弁3の自動検査方法の一例を図9図10に示したフローチャートに基づいて詳細に説明する。図1図7の検査時における模式図において、実線は、検査用流路2に検査流体が流れることが可能な状態、破線は、検査用流路2に検査流体が流れていない状態を示している。
【0052】
先ず、装置本体1に設けられた図示しないスタートボタンをオフの状態にし、図1において検査用流路2に検査流体が流れていない状態で、制御部32から安全弁(ワーク)3に応じた吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力の各作動圧力、弁座漏れ検査用の圧力、安全弁の品番や製造番号などの各種の入力事項を設定(入力)する。
【0053】
続いて、検査をおこなう新規のワーク(安全弁)3を、入口側貫通穴73を下方に向けた状態で、キャップ71を治具のベースにセット(載置)する。これにより、ワーク3を治具の所定位置に配置した状態とする。
【0054】
スタートボタンをオンにすることで装置本体1による安全弁3の自動検査が開始され、これ以降の電磁弁やセンサなどの各機器の制御が、制御部32によっておこなわれる。
【0055】
スタートボタンのオンでクランプ板が下降し、このクランプ板とベースとの間にワーク3がクランプされる。これにより、一次側流路11と入口側貫通穴73、二次側流路12と出口側貫通穴74とが、それぞれシールされて外部漏れが防がれた状態でワーク3が装置本体1の所定位置に接続される。
【0056】
図2において、吹始め圧力の測定開始時には、一次側流路11が開状態、大漏れ流路41が開状態、微漏れ流路40が閉状態、排気流路13が閉状態となるようにそれぞれの電磁弁が制御され、二次側流路12の流路が大漏れ流路41に切り替えられる。
【0057】
この状態でステッピングモータ30の回転制御によりレギュレータ31が開かれ、一次側流路11からワーク2に供給される検査流体の圧力が、当該ワーク3に要求される吹始め圧力の略50%程度に設定される。このときの検査流体の昇圧速度(図11のC区間)は、後述の吹始め圧力測定時の検査流体の供給時に比較して速くなるように、レギュレータ31が高速で開かれるようになっている。
【0058】
ステッピングモータ30によりレギュレータ31がさらに開かれ、ワーク3への検査流体が、当該ワーク3に要求される吹始め圧力の略90%程度の圧力まで昇圧するように調整される。このときの検査流体の昇圧速度(図11のD区間)は、ワーク3の吹始め圧力を測定するときの昇圧速度よりも昇圧速度がより速い状態で、検査流体の吹始め圧力に達する直前の圧力である略90%の圧力まで昇圧される。
【0059】
この場合、大漏れセンサ53によりワーク3からの漏れが確認されたときには、このワーク3を不良品として判定し、ワーク3を治具からアンクランプし、続けて新規のもしくは作動方式に合わせて調整した検査用ワーク3を治具に取付けて圧力検査を実施すればよい。大漏れセンサ53により漏れが確認されないときには、続けて昇圧が続けられる。
【0060】
上述のように、一次側流路11からワーク3に供給される検査流体の圧力をワーク3に要求される吹始め圧力の略50%まで昇圧した後に、この吹始め圧力の略90%に昇圧する理由としては、検査開始から吹始め圧力直前まで急速に昇圧させると、例えば安全弁が昇圧開始直後に吹出した場合はどの検査圧力の値で吹始めたかが判定できないため、安全弁の作動をどれくらい調整すればよいのか判断できない恐れがある一方、検査開始から吹始め圧力まで昇圧速度を小さくしてしまうと検査時間が非常に長くなってしまうため、一次側流路11からワーク3に供給される検査流体の圧力をワーク3に要求される吹始め圧力の略50%まで昇圧した後に、この吹始め圧力の略90%に昇圧させるといった二段階で検査流体の昇圧を実施しているのである。なお、ここでいう略50%及び略90%については値を適宜変更してもよい。また、二段階で検査流体の昇圧を実施しているが、三段階以上の検査流体の昇圧を実施しても良い。
【0061】
検査流体の吹始め圧力に達する直前の圧力、すなわち、圧力センサ35による圧力の測定値が、当該ワーク3に要求される吹始め圧力の略90%の圧力に達した後には、図3に示すように、大漏れ流路41が閉状態、微漏れ流路40が状態となるように各電磁弁が制御される。これにより、二次側流路12が微漏れ流路40に切り替えられた状態で吹始め圧力が測定される。
【0062】
吹始め圧力の測定時には、ステッピングモータ30によりレギュレータ31の開速度が下げられ、この状態から例えば0.002MPa/sec程度の昇圧速度により、吹始め圧力までの略50%や略90%に昇圧させる場合(図11のE区間)に比較して、検査流体の圧力がごくわずかずつ上昇するように制御される。この昇圧時において、微漏れセンサ51による検査流体の漏れ量が、所定のしきい値(例えば、0.3mL/min.)をまたいだとき(超えたとき)の圧力測定手段22で測定した圧力が吹始め圧力として判定され、この測定した圧力の値が制御部32に記録される。
【0063】
次いで、図4に示すように、大漏れ流路41が開状態、微漏れ流路40が閉状態となるように各電磁弁が制御され、二次側流路12が大漏れ流路41に切り替えられ、この状態で吹出し圧力、吹止り圧力がそれぞれ測定される。
【0064】
吹出し圧力の測定時には、上述の吹始め圧力の測定時よりも昇圧速度が速められることで、検査流体の圧力が急速に上昇する。ワーク3の弁開時の排出能力が限界に達すると、それ以上の排出が難しくなって圧力値がピークに達した状態となる。この圧力がピークに達したときの圧力測定手段22が測定した圧力がワーク3の吹出し圧力として判定され、この測定した圧力の値が制御部32に記録される。
【0065】
吹出し圧力の測定後には、ステッピングモータ30を逆転させるようにし、これによってレギュレータ31が徐々に絞られる方向に制御されて検査流体の圧力が漸次下降する。これに伴って圧力測定手段22が測定した圧力の測定値も低下する。この圧力の測定値がほぼゼロとなったときに、その圧力がワーク3の吹止り圧力として判定され、その値が制御部32に記録される。
【0066】
吹止り圧力の測定後には、図5に示すように、一次側流路11、二次側流路12が閉じられた状態で、排気流路13が連通した状態に制御される。これにより、排気流路13からワーク3内と検査用流路2内の検査流体が排気され、圧力が低下した状態となる。
【0067】
その後、図6において、二次側流路12の微漏れ流路40が開状態、大漏れ流路41が閉状態、一次側流路11が閉状態、排気流路13が閉状態となるように制御される。この状態でレギュレータ31が開かれて、一次側流路11内が弁座漏れ検査に適した供給圧力に設定される。
【0068】
一次側流路11が開状態に制御され、ワーク3に所定の検査圧力が加えられて弁座漏れ検査がおこなわれる。この場合、微漏れセンサ51の圧力が所定のしきい値(例えば、0.3mL/min.)以下であることを確認し、このしきい値以下であれば弁座漏れ検査に合格したものとして判定されてその判定結果が制御部32に記録される。
【0069】
最後に、図7に示すように、微漏れ流路40が閉状態、大漏れ流路41が閉状態、一次側流路11が閉状態、排気流路13が開状態となるように各電磁弁が制御されて排気流路に切り替えられることで、排気流路13からワーク3内と検査用流路2内の検査流体が排気される。
排気後には、治具からワーク3をアンクランプして検査が完了となり、続けて別のワーク3を検査することができる。
【0070】
なお、前述した安全弁の自動検査装置は、あくまでも一例を示したものであり、必要に応じて、流路の構成や、流路に接続されているセンサやバルブなどの仕様や数、流路への取付位置などを適宜変更することもできる。また、安全弁の自動検査方法についても、必ずしも前述したフローにこだわることなく、昇圧の手順や圧力設定など適宜変更することも可能である。
【0071】
次に、本発明の安全弁の自動操作装置及び自動検査方法の上記実施形態における作用・効果を述べる。
装置本体1は、二次側流路12に微漏れ流路40と大漏れ流路41とを分岐するように備え、これら微漏れ流路40と大漏れ流路41への流路を加圧用電磁弁23で切り替え可能に設けているので、ワーク3の作動圧力を測定するときに、吹き始め圧力を微漏れ流路40の微漏れセンサ51によって測定し、さらに、吹出し、吹止り圧力を大漏れ流路41の大漏れセンサ53によって測定できる。このため、微漏れセンサ51として微細な圧力の測定用スケールを有するセンサ、大漏れセンサ53として大圧力の測定用スケールを有するセンサを用いて、吹始め、吹出し、吹止りの各圧力の測定や弁座漏れ検査における圧力の測定を精度におこなうことができ、測定した値を制御部32の設計値と比較することにより、ワーク3の合否を容易に判定可能となる。また、小流量測定用センサである微漏れセンサ51に過大な圧力が加わるおそれがないため、小流量測定用センサの破損や故障も防ぐことができる。
しかも、上記の微漏れ流路40、大漏れ流路41は、二次側流路12から単に分岐しただけの分岐流路であるため、流路の複雑化も防いでいる。
【0072】
また、一次側流路11においては、圧力調整手段21としてレギュレータ31及びステッピングモータ30、圧力測定手段22として圧力センサを設け、制御部32により、吹始め圧力に達する直前までの昇圧速度を、この吹始め圧力に達する直前から吹始め圧力までの昇圧速度よりも速くなるように設定しているので、吹始め圧力に達するまでの時間を短縮できる。これらのレギュレータ31、ステッピングモータ30、圧力センサ22を用いることで、一次側流路11の簡素化を図りつつ、圧力調整と圧力測定とを迅速かつ正確におこなうことができる。
【0073】
しかも、ステッピングモータ30でレギュレータ31の開度を制御しているので、ステッピングモータ30の精細な回転制御により、検査流体の圧力を0.002MPa/secのごく微小な昇圧速度で上昇させ、この微小な昇圧速度により吹始め圧力を正確に測定可能となる。
【0074】
吹始め圧力の測定時において、大漏れ流路41に切り替えたときに、ワーク3に要求される吹始め圧力の略90%の圧力まで昇圧速度を速めるようにしているため、吹始め圧力を超過することなく迅速に昇圧でき、吹始め圧力が設計値から略10%程度に大きく外れたワーク3を、その後の作動圧力(吹始め圧力、吹出し圧力、吹止り圧力)の測定や弁座漏れ検査をおこなうことなく、不良品として早期に発見することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 装置本体
2 検査用流路
3 ワーク(安全弁)
11 一次側流路
12 二次側流路
13 排気流路
21 圧力調整手段
22 圧力センサ(圧力測定手段)
30 ステッピングモータ
31 レギュレータ
32 制御部
40 微漏れ流路
41 大漏れ流路
51 微漏れセンサ
53 大漏れセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11