(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/04 20060101AFI20241024BHJP
H02P 6/26 20160101ALI20241024BHJP
H02P 6/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02P25/04
H02P6/26
H02P6/12
(21)【出願番号】P 2021020657
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】野上田 弥
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智敬
(72)【発明者】
【氏名】田端 剛
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-099206(JP,A)
【文献】特開2016-082752(JP,A)
【文献】特開2016-025776(JP,A)
【文献】特開2007-159296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P6/00-6/34
21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、
前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備え、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御とを含み、
前記制御回路は、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行い、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始
し、
前記所定の閾値電圧は、第1閾値電圧と、前記第1閾値電圧より小さい第2閾値電圧を含み、
前記制御回路は、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が前記第1閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を開始し、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記第2閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、
前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備え、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御とを含み、
前記制御回路は、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行い、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始し、
前記制御回路は、前記一方の制御の停止後に、前記一方の制御が行われているときの前記コイル電流と同一の向きに前記コイル電流を回生させる前記回生制御を行ってから前記他方の制御を開始し、前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧を超えたとき、前記他方の制御を停止して直前に行った前記回生制御を再開し、再開した前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、再開した前記回生制御を停止して前記他方の制御を再開する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、
前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備え、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御とを含み、
前記制御回路は、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行い、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始し、
前記通電制御は、前記コイル電流が流れないように、前記コイルを前記電源ラインと前記接地ラインのいずれにも接続させない前記駆動制御信号を生成する停止制御を更に含み、
前記制御回路は、前記回生制御の後に前記停止制御を行ってから次の制御を開始する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、
前記所定の閾値電圧を生成する閾値電圧生成部と、
前記電源ラインの電圧を監視し、前記電源ラインの電圧と前記閾値電圧生成部によって生成された前記所定の閾値電圧とを比較して、前記電源ラインの電圧の異常の有無を判定する電圧監視部と、
前記モータの回転状態を示す信号と前記電圧監視部の監視結果とに基づいて、前記通電制御の切り替えを行う通電制御部と、を有する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、を備える
モータユニット。
【請求項6】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備えたモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、を含み、
前記制御回路が、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が第1閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行う第1ステップと、
前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記第1閾値電圧より小さい第2閾値電圧より低下したとき、前記制御回路が、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始する第2ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【請求項7】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備えたモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、を含み、
前記制御回路が、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記一方の制御が行われているときの前記コイル電流と同一の向きに前記コイル電流を回生させるように前記回生制御を行う第1ステップと、
前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記制御回路が、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始する第2ステップと、
前記他方の制御が行われているときに前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧を超えた場合に、前記他方の制御を停止して直前に行った前記回生制御を再開する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて再開した前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、再開した前記回生制御を停止して前記他方の制御を再開する第4ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【請求項8】
駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備えたモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、前記コイル電流が流れないように、前記コイルを前記電源ラインと前記接地ラインのいずれにも接続させない前記駆動制御信号を生成する停止制御とを含み、
前記制御回路が、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行う第1ステップと、
前記制御回路が、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始する第2ステップと、
前記制御回路が、前記回生制御の後に前記停止制御を行ってから次の制御を開始する第3ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単相モータを駆動するためのモータ駆動制御装置は、モータのコイル(巻線)に接続されるインバータ回路(例えば、Hブリッジ回路)を備えている。このインバータ回路に外部電源が逆極性で接続(逆接続)された場合、大電流が流れるおそれがある。そのため、モータ駆動制御装置には、逆接続による大電流の発生を防止するための逆接続保護回路が設けられている。
【0003】
逆接続保護回路としてダイオードを使用した場合、モータの通電切り替え時、すなわち、モータのコイルに流れる電流の向きを切り替える時に、ダイオードによって外部電源に向かって電流が流れ込むことを防止できる。その一方で、電流(磁気エネルギー)の放出先が断たれるため、インバータ回路の電源ラインの電圧が上昇する(電源電圧の跳ね上がる)という問題がある。この問題は、モータのコイル(巻線)に流れる電流が遮断されたときにコイルにおいて逆起電圧が発生すること(所謂キックバック)に起因する。
【0004】
従来、モータ駆動制御装置におけるキックバックを抑制するために、例えば、電解コンデンサなどの容量が大きいコンデンサをインバータ回路に設ける方法やツェナーダイオードを設ける方法が知られている。また、上述した電源電圧の跳ね上がりを抑制するため手法として、例えば、モータの通電切り替え時に、インバータ回路およびモータのコイルを経由してグラウンドから電源ラインに流れ込む電流をグラウンドに還流させる強制回生回路を設ける技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電解コンデンサまたはツェナーダイオード等の回路部品を設ける手法では、インバータ回路の電源ラインの電圧上昇を十分に抑制できない場合がある。また、モータ駆動制御装置を構成する回路基板の小型化やコストの削減の要求により、上述した電解コンデンサまたはツェナーダイオードや上述の強制回生回路等を新たに設けることができない場合もある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、モータ駆動制御装置のコストを抑えつつ、インバータ回路の電源ラインの電圧上昇を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、駆動制御信号を生成し、単相のモータの通電制御を行う制御回路と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源から電圧が供給される電源ラインと接地ラインとの間で前記モータのコイルの接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオードと、を備え、前記通電制御は、前記コイルのコイル電流が第1方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御とを含み、前記制御回路は、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、前記一方の制御を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧を超えたとき、前記回生制御を行い、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、モータ駆動制御装置のコストを抑えつつ、インバータ回路の電源ラインの電圧上昇を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
【
図3】本実施の形態の通電制御の比較例としてのモータの通電パターンの切替手順と各通電パターンにおける各スイッチ素子のオン・オフ状態の一例を示す図である。
【
図4】
図3に示す順序で通電パターンを切り替えたときの電源電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置による通電制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る通電制御による通電パターンの切り替え手順と各通電パターンにおける各スイッチ素子のオン・オフ状態の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示す順序で通電パターンを切り替えたときの電源電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(3)は、駆動制御信号(Sd)を生成し、単相のモータ(4)の通電制御を行う制御回路(1)と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源(Vdc)から電圧が供給される電源ライン(Lvdd)と接地ライン(Lgnd)との間で前記モータのコイル(Lm)の接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路(2)と、前記駆動回路の電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオード(Dp)と、を備え、前記通電制御は、前記コイルのコイル電流(IL)が第1方向(d1)に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御(制御番号1,11)と、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向(d2)に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御(制御番号4,8)と、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御(第1回生制御(制御番号2,6)および第2回生制御(制御番号9))とを含み、前記制御回路は、前記第1通電制御および前記第2通電制御のうちの一方の制御(制御番号1)から他方の制御(制御番号4,8)に切り替える場合において、前記一方の制御(制御番号1)を停止した後に前記電源ラインの電圧が所定の閾値電圧(VTH(=Vth1))を超えたとき、前記回生制御(制御番号6)を行い、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧(VTH(=Vth2))より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御(制御番号8)を開始することを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置(3)において、前記所定の閾値電圧は、第1閾値電圧(Vth1)と、前記第1閾値電圧より小さい第2閾値電圧(Vth2)を含み、前記制御回路は、前記一方の制御(制御番号1)を停止した後に前記電源ラインの電圧が前記第1閾値電圧を超えたとき、前記回生制御(制御番号6)を開始し、前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記第2閾値電圧より低下したとき、前記回生制御を停止して前記他方の制御(制御番号8)を開始してもよい。
【0014】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記一方の制御(制御番号1)の停止後に、前記一方の制御が行われているときの前記コイル電流と同一の向き(d1)に前記コイル電流を回生させる前記回生制御(制御番号2)を行ってから前記他方の制御(制御番号4)を開始し、前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧を超えたとき、前記他方の制御(制御番号4)を停止して直前に行った前記回生制御(制御番号6)を再開し、再開した前記回生制御中に前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、再開した前記回生制御を停止して前記他方の制御(制御番号8)を再開してもよい。
【0015】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記通電制御は、前記コイル電流が流れないように、前記コイルを前記電源ラインと前記接地ラインのいずれにも接続させない前記駆動制御信号を生成する停止制御(制御番号3,5,7,10)を更に含み、前記制御回路は、前記回生制御の後に前記停止制御を行ってから次の制御を開始してもよい。
【0016】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記所定の閾値電圧を生成する閾値電圧生成部(13)と、前記電源ラインの電圧を監視し、前記電源ラインの電圧と前記閾値電圧生成部によって生成された前記所定の閾値電圧とを比較して、前記電源ラインの電圧(Vdd)の異常の有無を判定する電圧監視部(10)と、前記モータの回転状態を示す信号(Sp)と前記電圧監視部の監視結果とに基づいて、前記通電制御の切り替えを行う通電制御部(14)と、を有してもよい。
【0017】
〔6〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(100)は、上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(3)と、前記モータ(4)とを備えることを特徴とする。
【0018】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、駆動制御信号(Sd)を生成し、単相のモータ(4)の通電制御を行う制御回路(1)と、前記駆動制御信号に応じて、直流電源(Vdc)から電圧が供給される電源ライン(Lvdd)と接地ライン(Lgnd)との間で前記モータのコイル(Lm)の接続先を切り替えて、前記モータを駆動する駆動回路(2)と、前記電源ラインと前記直流電源との間に接続された逆接続保護用ダイオード(Dp)と、を備えたモータ駆動制御装置(3)による方法である。上記モータ駆動制御方法は、前記制御回路が、前記コイルのコイル電流(IL)が第1方向(d1)に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第1通電制御ステップ(ステップS1,制御番号1,11)と、前記第1通電制御ステップの後に、前記電源ラインの電圧(Vdd)が所定の閾値電圧(VTH(=Vth1))を超えたとき、前記制御回路が、前記コイル電流が前記接地ラインに回生するように、前記コイルの両端を前記接地ラインに接続させる前記駆動制御信号を生成する回生制御ステップ(ステップS13,制御番号6)と、前記回生制御ステップにおいて前記電源ラインの電圧が前記所定の閾値電圧より低下したとき、前記制御回路が、前記コイル電流が前記第1方向と反対の第2方向(d2)に流れるように、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に前記コイルを接続させる前記駆動制御信号を生成する第2通電制御ステップ(ステップS7,制御番号4,8)と、を含むことを特徴とする。
【0019】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0020】
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
【0021】
図1に示されるモータユニット100は、モータ4と、位置検出装置5と、モータ駆動制御装置3とを備えている。
【0022】
モータ4は、例えば、単相モータであり、例えば、1相のコイル(巻線)Lmを備えたブラシレスDCモータである。
【0023】
位置検出装置5は、モータ4の回転子(ロータ)の回転に応じた位置検出信号Spを生成する装置である。位置検出装置5は、例えば、ホール(HALL)素子である。例えば、モータ4のコイルLmに対応した1つのホール素子が、位置検出装置5として、モータ4のロータの周囲に配置されている。ホール素子は、ロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を生成して、出力する。ホール素子から出力されたホール信号は、位置検出信号Spとしてモータ駆動制御装置3に入力される。位置検出信号Spは、例えば、パルス信号である。
【0024】
モータ駆動制御装置3は、モータ4の駆動を制御する装置である。モータ駆動制御装置3は、位置検出装置5から出力されたホール信号に基づいて、モータ4の回転位置や回転数情報等の情報を得ることでモータ4の回転状態を検出し、モータ4の駆動を制御する。
【0025】
なお、位置検出装置5として、上述したホール素子に代えて、例えば、エンコーダやレゾルバなどを設け、それらの検出信号を位置検出信号Spとしてモータ駆動制御装置3に入力してもよい。また、モータ駆動制御装置3が位置センサレス方式に基づいてモータ4の駆動制御を行う場合には、位置検出装置5を設けなくてもよい。
【0026】
モータ駆動制御装置3は、例えば、制御回路1と、駆動回路2と、逆接続保護用ダイオードDpとを備えている。
モータ駆動制御装置3には、外部の直流電源から直流電圧Vdcが供給される。直流電圧Vdcは、逆接続保護用ダイオードDpを経由して電源ラインLvddに供給され、電源電圧として電源ラインLvddから制御回路1および駆動回路2にそれぞれ供給される。
【0027】
逆接続保護用ダイオードDpは、モータ駆動制御装置3に対して外部の直流電源が逆極性で接続された場合に、モータ駆動制御装置3に大電流が発生してモータ駆動制御装置3やモータ4が破壊されることを防止するための素子である。
【0028】
逆接続保護用ダイオードDpは、外部の直流電源(直流電圧Vdc)と電源ラインLvddとの間に接続されている。具体的には、逆接続保護用ダイオードDpのアノード電極が外部の直流電源側に接続され、逆接続保護用ダイオードDpのカソード電極が電源ラインLvddに接続されている。
【0029】
電源ラインLvddは、制御回路1に電力を供給するとともに、駆動回路2を介してモータ4を駆動するための電力を供給する電力供給経路であり、例えば、配線である。電源ラインLvddには、電源ラインLvddの電圧を安定させるための安定化容量やその他の保護回路が接続されていてもよい。以下の説明において、電源ラインLvddの電圧を「電源電圧Vdd」とも称する。
【0030】
なお、制御回路1には、電源ラインLvddの電圧が直接供給されるのではなく、例えば、レギュレータ回路によって電源ラインLvddの電圧を降圧して、電源電圧として制御回路1に供給してもよい。
【0031】
制御回路1は、モータ駆動制御装置3の動作を統括的に制御するための回路である。本実施の形態において、制御回路1は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置であって、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
【0032】
なお、制御回路1と駆動回路2とは、一つの半導体集積回路装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化された構成であってもよいし、個別の集積回路装置として夫々パッケージ化されて回路基板に実装され、回路基板上で互いに電気的に接続された構成であってもよい。
【0033】
制御回路1は、モータ4を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成して駆動回路2に与えることによりモータ4の通電制御を行う。制御回路1には、位置検出装置5から出力された位置検出信号Spが入力される。なお、制御回路1には、上述の信号の他に、例えば、上位システムからの駆動指令や、電流センサや温度センサ等の各種センサからの検出信号等が入力されてもよい。また、制御回路1は、電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)を監視する。
【0034】
制御回路1は、入力された位置検出信号Sp等と電源電圧Vddの監視結果に基づいて、各種の演算処理および信号処理を行うことにより、目標回転速度でモータ4が回転するように駆動制御信号Sdを生成し、駆動回路2に出力する。
【0035】
駆動制御信号Sdは、例えば、モータ4をPWM(Pulse Width Modulation)制御するための信号である。例えば、駆動制御信号Sdは、後述するインバータ回路20の各スイッチ素子Q1~Q4のオン/オフをさせる4種類の駆動信号H1,H2,L1,L2に夫々対応する2値信号である。
制御回路1の具体的な制御内容については、後述する。
【0036】
駆動回路2は、制御回路1から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ4を駆動する回路である。駆動回路2は、電源ラインLvddとグラウンド電位GNDに接続される接地(グラウンド)ラインLgndとの間でモータ4のコイルLmの接続先を切り替えて、モータ4を駆動する。具体的には、駆動回路2は、インバータ回路20及びプリドライブ回路21を有する。
【0037】
インバータ回路20は、電源ラインLvddと接地ラインLgndとの間に接続され、プリドライブ回路21から入力された駆動信号H1,H2,L1,L2に基づいて、モータ4を駆動する回路である。
【0038】
例えば、インバータ回路20は、第1スイッチ素子Q1、第2スイッチ素子Q2、第3スイッチ素子Q3、および第4スイッチ素子Q4と、還流ダイオードD1~D4と、第1端子P1および第2端子P2を有している。
【0039】
なお、以下の説明において、第1スイッチ素子Q1、第2スイッチ素子Q2、第3スイッチ素子Q3および第4スイッチ素子Q4を、単に「スイッチ素子Q1~Q4」と表記する場合がある。
【0040】
スイッチ素子Q1~Q4は、トランジスタである。例えば、スイッチ素子Q1,Q3は、Pチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であり、スイッチ素子Q2,Q4は、Nチャネル型のMOSFETである。なお、スイッチ素子Q1~Q4は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のパワートランジスタであってもよい。
【0041】
スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、電源ラインLvddと接地ラインLgndとの間に直列に接続されて、一つのスイッチングレグ(アーム)を構成している。同様に、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4とは、電源ラインLvddと接地ラインLgndとの間に直列に接続されて、もう一つのスイッチングレグを構成している。
【0042】
第1スイッチ素子Q1のオン・オフは、駆動信号H1によって切り替えられる。第2スイッチ素子Q2のオン・オフは、駆動信号L1によって切り替えられる。第3スイッチ素子Q3のオン・オフは、駆動信号H2によって切り替えられる。第4スイッチ素子Q4のオン・オフは、駆動信号L2によって切り替えられる。
【0043】
還流ダイオードD1~D4は、各スイッチ素子Q1~Q4に並列に接続されている。例えば、還流ダイオードD1~D4は、それぞれ、各スイッチ素子Q1~Q4が含む寄生ダイオードである。各還流ダイオードD1~D4のカソード電極が電源ラインLvdd側に接続され、各還流ダイオードD1~D4のアノード電極が接地ラインLgnd側に接続されている。なお、還流ダイオードD1~D4として、各スイッチ素子Q1~Q4の寄生ダイオードに加えて、別途、ダイオードを接続してもよい。
【0044】
第1端子P1および第2端子P2は、インバータ回路20をモータ4のコイルLmに接続するための端子である。第1端子P1には、第1スイッチ素子Q1と第2スイッチ素子Q2が接続され、第2端子P2には、第3スイッチ素子Q3と第4スイッチ素子Q4とが接続される。具体的には、スイッチ素子Q1のドレイン電極とスイッチ素子Q2のドレイン電極とが第1端子P1に接続され、スイッチ素子Q3のドレイン電極とスイッチ素子Q4のドレイン電極とが第2端子P2に接続されている。
図1に示すように、第1端子P1と第2端子P2との間に、モータ4のコイルLmの両端が接続される。
【0045】
プリドライブ回路21は、制御回路1から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、駆動信号H1,H2,L1,L2を生成する回路である。
【0046】
例えば、プリドライブ回路21は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路20のスイッチ素子Q1~Q4としての各トランジスタの制御電極(ゲート電極)を駆動するために十分な電力を供給する4種類の駆動信号H1,L1,H2,L2を生成する。
【0047】
これらの駆動信号H1,L1,H2,L2がインバータ回路20の各スイッチ素子Q1~Q4のゲート電極に入力されることにより、各スイッチ素子Q1~Q4がオン・オフ動作(スイッチング動作)を行う。例えば、スイッチ素子Q1,Q4とスイッチ素子Q2,Q3とが交互にオン・オフ動作を行うことにより、電源ラインLvddからモータ4のコイルLmに電力が供給されてコイル電流ILの向きが交互に切り替わり、モータ4が回転する。
【0048】
次に、制御回路1について詳細に説明する。
制御回路1は、モータ4を回転させるために、駆動制御信号Sdを生成してモータ4のコイルLmに流れるコイル電流ILの向きを切り替える通電制御を行う。
【0049】
具体的には、通電制御は、各スイッチ素子Q1~Q4のオン状態(PWM制御状態も含む)とオフ状態の組み合わせを切り替えることによって、モータ4のコイルLmの通電状態(以下、「通電パターン」とも称する)を切り替える制御である。
【0050】
具体的には、本実施の形態に係る制御回路1は、通電制御として、第1通電制御、第2通電制御、回生制御(第1回生制御、第2回生制御)、および停止制御を行う。以下、各制御内容について、
図2A乃至
図2Eを用いて説明する。
【0051】
第1通電制御とは、第1方向d1にコイル電流ILが流れるように、電源ラインLvddと接地ラインLgndとの間にモータ4のコイルLmを接続させる駆動制御信号Sdを生成する制御である。
【0052】
図2Aは、第1通電制御を説明するための図である。
制御回路1は、第1通電制御として、例えば、
図2Aに示すように、駆動信号H2によってスイッチ素子Q3をオフさせ、駆動信号L1によってスイッチ素子Q2をオフさせ、駆動信号L2によってスイッチ素子Q4をオンさせた上で、駆動信号H1としてのPWM信号によってスイッチ素子Q1をスイッチングする。これにより、モータ4のコイルLmには、第1端子P1から第2端子P2に向かう方向(第1方向)d1に、駆動信号H1(PWM信号)のデューティ比に応じた大きさのコイル電流ILが流れる。
【0053】
第2通電制御とは、第1方向d1と反対の第2方向d2にコイル電流ILが流れるように、電源ラインLvddと接地ラインLgndとの間にモータ4のコイルLmを接続させる駆動制御信号Sdを生成する制御である。
【0054】
図2Bは、第2通電制御を説明するための図である。
制御回路1は、第2通電制御として、例えば、
図2Bに示すように、駆動信号H1によってスイッチ素子Q1をオフさせ、駆動信号L2によってスイッチ素子Q4をオフさせ、駆動信号L1によってスイッチ素子Q2をオンさせた上で、駆動信号H2としてのPWM信号によってスイッチ素子Q3をスイッチングする。これにより、モータ4のコイルLmには、第2端子P2から第1端子P1に向かう方向(第2方向)d2に、駆動信号H2(PWM信号)のデューティ比に応じた大きさのコイル電流ILが流れる。
【0055】
回生制御とは、コイル電流ILが接地ラインLgndに回生するように、モータ4のコイルLmの両端を接地ラインLgndに接続させる駆動制御信号Sdを生成する制御である。本実施の形態では、回生制御のうち、第1方向d1のコイル電流ILを接地ラインLgndに回生させる制御を第1回生制御と称し、第2方向d2のコイル電流ILを接地ラインLgndに回生させる制御を第2回生制御と称する。
【0056】
図2Cは、第1回生制御を説明するための図である。
制御回路1は、第1回生制御として、例えば、
図2Cに示すように、駆動信号H1によってスイッチ素子Q1をオフさせ、駆動信号L1によってスイッチ素子Q2をオフさせ、駆動信号H2によってスイッチ素子Q3をオフさせ、駆動信号L2によってスイッチ素子Q4をオンさせる。これにより、第1方向d1のコイル電流ILは、グラウンド電位GNDから還流ダイオードD2およびスイッチ素子Q4を通って、グラウンド電位GNDに回生する。
【0057】
図2Dは、第2回生制御を説明するための図である。
制御回路1は、第2回生制御として、例えば、
図2Dに示すように、駆動信号H1によってスイッチ素子Q1をオフさせ、駆動信号H2によってスイッチ素子Q3をオフさせ、駆動信号L2によってスイッチ素子Q4をオフさせ、駆動信号L1によってスイッチ素子Q2をオンさせる。これにより、第2方向d2のコイル電流ILは、グラウンド電位GNDから還流ダイオードD4およびスイッチ素子Q2を通って、グラウンド電位GNDに回生する。
【0058】
停止制御は、コイル電流ILが流れないように、コイルLmを電源ラインLvddと接地ラインLgndのいずれにも接続させない駆動制御信号Sdを生成する制御である。
【0059】
図2Eは、停止制御を説明するための図である。
制御回路1は、停止制御として、例えば、
図2Eに示すように、駆動信号H1によってスイッチ素子Q1をオフさせ、駆動信号H2によってスイッチ素子Q3をオフさせ、駆動信号L1によってスイッチ素子Q2をオフさせ、駆動信号L2によってスイッチ素子Q4をオフさせる。これにより、モータ4のコイルLmの両端は開放状態となり、コイル電流ILが流れない。
【0060】
制御回路1は、モータ4の回転位置(位置検出信号Sp)および電源ラインLvddの電圧に基づいて、上述した、第1通電制御、第2通電制御、第1回生制御、第2回生制御、および停止制御を適切なタイミングで切り替えることにより、モータ4を回転させる。
【0061】
ここで、制御回路1によるモータ4の通電制御の具体的な処理手順について詳細に説明する前に、本実施の形態に係る通電制御の比較例について説明する。なお、本実施の形態の比較例としてのモータ駆動制御装置は、その制御回路が少なくとも
図1に示すような電圧監視部および閾値電圧生成部の機能を有していないという点で本実施形態に係るモータ駆動制御装置3と異なる。
【0062】
図3は、本実施の形態の通電制御の比較例としてのモータ4の通電パターンの切替手順と各通電パターンにおける各スイッチ素子のオン・オフ状態の一例を示す図である。
を示す図である。
【0063】
図4は、
図3に示す順序でモータ4の通電パターンを切り替えたときの電源電圧(電源ラインLvddの電圧)の変化の一例を示すタイミングチャートである。
図4には、
図3に示す順序で
図1に示す駆動回路2(インバータ回路20)を制御したときの駆動信号H1、L1、H2、L2および電源電圧Vddの波形がそれぞれ示されている。
図4において
図4の上方から、制御番号、駆動信号H1、L1、H2、L2、電源電圧Vddの順に波形が示されている。
【0064】
本実施の形態の比較例としての通電制御は、
図3に示す制御番号1~6の順序でモータの通電パターンを切り替えることを繰り返すことにより、モータを回転させる。具体的には、比較例の通電制御は、第1通電制御(
図2A)と第2通電制御(
図2B)との間に、第1回生制御(
図2C)または第2回生制御(
図2D)および停止制御(
図2E)を挟んだ上で、第1通電制御と第2通電制御を交互に切り替えてモータのコイル電流の向きを交互に切り替える。比較例の通電制御において、第1通電制御(制御番号1)および第2通電制御(制御番号4)が実行されるタイミングはホール信号(位置検出信号Sp)の切り替わりに応じて決定され、回生制御(第1回生制御と第2回生制御)および停止制御は、予め設定された一定の期間だけ実行される。
【0065】
図4に示すように、比較例の通電制御において、停止制御によってモータのコイル電流が停止するとき、コイルに逆起電圧(キックバック電圧)が発生する。このとき、停止制御の直前に行われた回生制御の期間にコイルのエネルギーが十分に放出できなかった場合、コイルから非常に大きな逆起電圧が発生し、
図4の時刻t2以降に示すように、電源電圧Vddが急激に上昇するおそれがある。
【0066】
そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3では、モータ4のコイルLmの通電方向を切り替えるときに電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)の上昇を検出した場合、回生制御を実行して電源電圧Vddの上昇を抑える。
【0067】
具体的には、制御回路1は、第1通電制御および第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、一方の制御を停止した後に電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)が所定の閾値電圧VTHを超えたとき、回生制御を実行し、回生制御中に電源ラインLvddの電圧が所定の閾値電圧VTHより低下したとき、回生制御を停止して他方の制御を開始する。
【0068】
また、所定の閾値電圧VTHとして第1閾値電圧Vth1と第2閾値電圧Vth2(<Vth1)が設定可能であり、制御回路1は、一方の制御を停止した後に電源電圧Vddが第1閾値電圧Vth1を超えたとき、回生制御を開始し、回生制御中に電源電圧Vddが第2閾値電圧Vth2より低下したとき、回生制御を停止して他方の制御を開始する。
【0069】
また、制御回路1は、一方の制御の停止後に、当該一方の制御が行われているときのコイル電流ILと同一の向きにコイル電流ILを回生させる回生制御を行ってから他方の制御を開始し、電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)が所定の閾値電圧VTHを超えたとき、他方の制御を停止して直前に行った回生制御を再開し、再開した回生制御中に電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)が所定の閾値電圧VTHより低下したとき、再開した回生制御を停止して他方の制御を再開する。
【0070】
また、制御回路1は、回生制御の後に、コイル電流ILが流れないようにコイルLmを電源ラインLvddと接地ラインLgndのいずれにも接続させない駆動制御信号Sdを生成する停止制御を行ってから、次の制御を開始する。
【0071】
具体的には、制御回路1は、上述した通電パターンの切り替え制御を実現するための機能部として、
図1に示すように、電圧監視部10、閾値電圧生成部13、および通電制御部14を有する。
【0072】
これらの機能部は、例えば、上述した制御回路1としてのMCUのプログラム処理によって実現される。具体的には、上述した制御回路1としてのMCUを構成するプロセッサが、メモリに格納されたプログラムにしたがって各種の演算を行って、MCUを構成する各種周辺回路を制御することにより、実現される。
【0073】
電圧監視部10は、電源ラインLvddの電圧を監視する機能部である。電圧監視部10は、電源ラインの電圧(電源電圧Vdd)を監視し、電源電圧Vddと閾値電圧生成部13から入力する所定の閾値電圧VTHとを比較して、電源電圧Vddの異常の有無を判定する。例えば、
図1に示すように、電圧監視部10は、比較部11と電圧異常判定部12を有している。
【0074】
比較部11は、電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)と所定の閾値電圧VTHとを比較し、比較結果を出力する。
【0075】
電圧異常判定部12は、比較部11の比較結果に基づいて、電源電圧Vddの異常の有無を判定し、判定結果を出力する。例えば、比較部11によって電源電圧Vddが閾値電圧VTHを超えていないと判定された場合に、電圧異常判定部12は、電源電圧Vddが正常であることを示す判定結果を出力する。一方、比較部11によって電源電圧Vddが閾値電圧VTH以上であると判定された場合に、電圧異常判定部12は、電源電圧Vddが異常であることを示す判定結果を出力する。
【0076】
閾値電圧生成部13は、電源電圧Vddの異常の有無を判定するための基準となる閾値電圧VTHを生成する機能部である。閾値電圧生成部13は、閾値電圧VTHとして、第1閾値電圧Vth1と、第1閾値電圧Vth1よりも低い第2閾値電圧Vth2の何れか一方を出力する。
【0077】
例えば、閾値電圧生成部13は、第1閾値電圧Vth1を閾値電圧VTHとして出力し、電源電圧Vddが第1閾値電圧Vth1を超えた場合に、閾値電圧VTHを第1閾値電圧Vth1から第2閾値電圧Vth2に切り替えて出力し、電源電圧Vddが第2閾値電圧Vth2より低下した場合に、閾値電圧VTHを第2閾値電圧Vth2から第1閾値電圧Vth1に切り替えて出力する。閾値電圧生成部13は、例えば、通電制御部14からの指示に応じて閾値電圧VTHを切り替える。
【0078】
通電制御部14は、モータ4の回転状態を示す信号と電圧監視部10の監視結果に基づいて、上述した通電パターンの切り替えを行う機能部である。ここで、モータ4の回転状態を示す信号とは、例えば、位置検出装置5から出力される位置検出信号(ホール信号)Spである。なお、モータ4の回転状態を示す信号は、ホール信号に限られず、モータ4の回転に応じて変化する信号であればよい。
【0079】
例えば、
図1に示すように、通電制御部14は、通電パターン生成部15と計時部16を有している。
計時部16は、モータ4のコイルLmの通電方向を切り替えた後に、電源電圧Vddに応じた回生制御を実行(再開)するか否かを判定するための判定期間を計測するための機能部である。計時部16は、通電パターン生成部15からの指示に応じて時間の計測(カウント)を開始し、予め設定された所定時間が経過した場合に、上記判定期間が満了したことを通電パターン生成部15に通知する。
【0080】
通電パターン生成部15は、電圧異常判定部12による判定結果と、位置検出装置5による位置検出信号Spと、計時部16による計時結果とに基づいて、所定の順序でモータ4の通電パターンが切り替わるように駆動制御信号Sdを生成する。
【0081】
具体的には、通電パターン生成部15は、例えば、上述した比較例と同様に、第1通電制御(
図2A)、第1回生制御(
図2C)、停止制御(
図2E)、第2通電制御(
図2B)、第2回生制御(
図2D)、停止制御(
図2E)の順(基本順序)で、通電パターンが繰り返し切り替わるように動作する。
【0082】
なお、基本順序にしたがって行われる第1回生制御、第2回生制御、および停止制御の期間は、例えば、予め長さが設定された固定期間とする。
【0083】
通電パターン生成部15は、上述した基本順序で通電パターンを切り替えているとき、電源電圧Vddが閾値電圧VTH以上になった場合に、基本順序に回生制御を割り込ませて実行し、電源電圧Vddが閾値電圧VTHより低下した場合に、基本順序に戻す。
以下、通電パターン生成部15による通電パターンの切り替え手順について、
図5乃至
図7を用いて詳細に説明する。
【0084】
図5は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3による通電制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
図6は、本実施の形態に係る通電制御による通電パターンの切り替え手順と各通電パターンにおける各スイッチ素子Q1~Q4のオン・オフ状態の一例を示す図である。
【0086】
図7は、
図6に示す順序で通電パターンを切り替えたときの電源電圧Vddの変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0087】
例えば、
図7に示す時刻t0において、外部の直流電源から直流電圧Vdcが印加され、モータ駆動制御装置3によるモータ4の通電制御が行われているものとする。この場合、先ず、通電パターン生成部15が、第1通電制御または第2通電制御を開始する(ステップS1)。ここでは、
図6および
図7に示すように、通電制御の最初のステップ(制御番号1)として、第1通電制御が実行されるものとして説明する。
【0088】
時刻t0において、通電パターン生成部15は、第1通電制御(制御番号1)として、モータ4に第1方向d1のコイル電流ILが流れるように、駆動制御信号Sdを生成する(
図2A参照)。
【0089】
次に、通電パターン生成部15は、位置検出信号(ホール信号)Spの電圧レベルが切り替わったか否かを判定する(ステップS2)。位置検出信号Spの電圧レベルが切り替わっていない場合には(ステップS2:NO)、通電パターン生成部15は、引き続き、第1通電制御を行う(ステップS1)。
【0090】
一方、位置検出信号Spの電圧レベルが切り替わった場合には(ステップS2:YES)、通電パターン生成部15は、閾値電圧生成部13を制御して、閾値電圧VTHを第1閾値電圧Vth1に設定する(ステップS3)。なお、モータ駆動制御装置3の起動直後においては、閾値電圧VTHの初期値として、第1閾値電圧Vth1が設定されていてもよい。
【0091】
また、通電パターン生成部15は、第1通電制御(制御番号1)を停止して、回生制御(制御番号2)に切り替える(ステップS4)。例えば、
図7の時刻t1において位置検出信号Spの電圧レベルが切り替わった場合、通電パターン生成部15は、第1回生制御(制御番号2)として、第1方向d1のコイル電流ILが接地ラインLgndに回生するように、駆動制御信号Sdを生成する(
図2C参照)。
【0092】
次に、通電パターン生成部15は、ステップS4の回生制御を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS4の回生制御の開始後に所定時間が経過した場合には(ステップS5:YES)、回生制御(制御番号2)を停止して停止制御(制御番号3)を開始する(ステップS6)。例えば、
図7において、回生制御を開始してから所定時間が経過した時刻t2において、通電パターン生成部15は、停止制御(制御番号3)として、インバータ回路20の各スイッチ素子Q1~Q4が全てオフするように駆動制御信号Sdを生成する(
図2E参照)。これにより、
図7の時刻t2以降に示すように、モータ4のコイルLmによって逆起電圧が発生し、電源電圧Vddが上昇し始める。
【0093】
その後、ステップS6の停止制御の開始後に所定時間が経過したとき、通電パターン生成部15は、停止制御(制御番号3)を停止して、コイルLmの通電方向を切り替える(ステップS7)。上述の例では、モータ駆動制御装置3の起動後の最初のステップS1において第1通電制御が行われたので、最初のステップS7においては、
図6に示すように、第1通電制御と反対の第2通電制御が行われる。
【0094】
例えば、
図7に示すように、停止制御(制御番号3)を開始してから所定期間が経過した時刻t3において、通電パターン生成部15は、第2通電制御(制御番号4)として、モータ4に第2方向d2のコイル電流ILが流れるように、駆動制御信号Sdを生成する(
図2B参照)。
【0095】
また、通電パターン生成部15は、第2通電制御を開始したとき、計時部16を制御して、第2通電制御を開始してからの経過時間の計測を開始する(ステップS8)。また、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddの異常の有無を判定する。
【0096】
先ず、通電パターン生成部15は、計時部16の計時結果(カウント値)に基づいて、ステップS7の第2通電制御を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS9)。
【0097】
第2通電制御を開始してから所定時間が経過してない場合(ステップS9:NO)、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddが閾値電圧VTH(=Vth1)以上である異常状態か否かを判定する(ステップS10)。具体的には、通電パターン生成部15は、電圧異常判定部12から電源電圧Vddが異常状態であることを示す判定結果が出力されているか否かを判定する。
【0098】
電源電圧Vddが異常状態でない場合(ステップS10:NO)、通電パターン生成部15は、ステップS8に戻り、第2通電制御を継続するとともに、第2通電制御の経過時間の計測を継続する。
【0099】
一方、電源電圧Vddが異常状態である場合(ステップS10:YES)、通電パターン生成部15は、第2通電制御を停止して停止制御を行う(ステップS11)。例えば、
図7に示すように、電源電圧Vddが閾値電圧VTH(=Vth1)を超えた時刻t4において、通電パターン生成部15は、停止制御(制御番号5)として、インバータ回路20の各スイッチ素子Q1~Q4がオフ状態となるように駆動制御信号Sdを生成する(
図2E参照)。
【0100】
また、このとき、通電パターン生成部15は、閾値電圧生成部13を制御して、閾値電圧VTHを第1閾値電圧Vth1から第2閾値電圧Vth2に変更する(ステップS12)。
【0101】
ステップS11において停止制御を開始してから所定期間が経過したとき、通電パターン生成部15は、停止制御から回生制御に切り替える(ステップS13)。
【0102】
例えば、
図7に示すように、停止制御(制御番号5)を開始してから所定期間が経過した時刻t5において、通電パターン生成部15は、回生制御として第1回生制御(制御番号6)を実行し、第1方向d1のコイル電流ILが接地ラインLgndに回生するように駆動制御信号Sdを生成する(
図2C参照)。
【0103】
すなわち、この場合、コイルLmの通電方向を切り替える直前に行った回生制御(この場合、第1回生制御(制御番号2))によってコイルLmのエネルギーを十分に放出できなかったため、通電パターン生成部15は、直前に行った回生制御と同様の回生制御(この場合、第1回生制御)を再開する。これにより、
図7に示すように、時刻t5以降に、電源電圧Vddの上昇が抑えられ、その後、電源電圧Vddは低下する。
【0104】
次に、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddの異常状態が解消されたか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddが閾値電圧VTH(=Vth2)より低下し、電圧異常判定部12から電源電圧Vddが異常状態でない(正常状態である)ことを示す判定結果が出力されているか否かを判定する。
【0105】
電源電圧Vddの異常状態が解消されていない場合(ステップS14:NO)、通電パターン生成部15は、ステップS13に戻り、電源電圧Vddが閾値電圧VTH(=Vth2)より低下するまで、回生制御(制御番号6)を継続する。
【0106】
一方、電源電圧Vddの異常状態が解消された場合(ステップS14:YES)、通電パターン生成部15は、ステップS6に移行し、回生制御(制御番号6)を停止して停止制御(制御番号7)を行ってから、通電制御(制御番号8)を再開するとともに、通電制御の期間の計時を再開する(ステップS6~S9)。
【0107】
例えば、
図7に示すように、電源電圧Vddが閾値電圧VTH(=Vth2)より低下した時刻t6において、通電パターン生成部15は、回生制御(制御番号6)を停止して停止制御(制御番号7)を実行する。このとき、通電パターン生成部15は、計時部16のカウント値をリセットする。そして、停止制御(制御番号7)を開始してから所定時間が経過した時刻t7において、通電パターン生成部15は、第2回生制御(制御番号8)を再開する。
【0108】
その後、ステップS7で通電制御を再開してから所定時間が経過したとき、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddが上昇するおそれがないと判定し、ステップS2に移行する。そして、通電パターン生成部15は、ホール信号の電圧の切り替わりを検出したら、閾値電圧VTHを第2閾値電圧Vth2から第1閾値電圧Vth1に変更するとともに、回生制御(第2回生制御(制御番号9))および停止制御(制御番号10)を行ってから第1通電制御(制御番号11)を開始して、コイルLmの通電方向を切り替える(ステップS2~S7)。
【0109】
その後、上記と同様の流れで処理が繰り返し実行され、第1通電制御(制御番号11)に切り替えた後に電源電圧Vddが異常状態となった場合には、通電パターン生成部15は、第1通電制御に切り替える直前に行った回生制御(制御番号9)と同様の第2回生制御を再開し、上昇した電源電圧Vddを低下させる。そして、電源電圧Vddが正常状態に戻ったとき、通電パターン生成部15は、停止制御を実行した後に第1通電制御を再開する。
【0110】
以上のように、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddの状態に応じて回生制御を適宜実行しつつ、第1通電制御と第2通電制御を交互に繰り返し実行する。
【0111】
なお、計時部16の計測時間(カウント値)をリセットするタイミングは、上述の例に限定されない。例えば、時刻t4において通電制御が一時停止されたタイミングで、計時部16のカウント値をリセットしてもよい。
【0112】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3は、第1通電制御および第2通電制御のうちの一方の制御から他方の制御に切り替える場合において、一方の制御を停止した後に電源ラインLvddの電圧(電源電圧Vdd)が閾値電圧VTHを超えたとき、回生制御を開始し、回生制御中に電源電圧Vddが閾値電圧VTHより低下したとき、回生制御を停止して他方の制御を開始する。
【0113】
これによれば、コイルLmの通電切替時に発生するコイルLmの逆起電圧によって電源電圧Vddが上昇した場合に速やかに回生制御が行われて、電源電圧Vddを低下させることができる。また、本実施の形態に係る通電制御は、制御回路1としてのMCUのプログラム処理によって実現することができるので、新たな回路素子や回路を追加する必要がないので、既存のモータ駆動制御装置の回路基板の実装面積を拡張する必要がない。
【0114】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3によれば、コストを抑えつつ、モータ駆動制御装置3におけるインバータ回路20の電源ラインLvddの電圧上昇を抑えることが可能となる。
【0115】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3は、第1通電制御および第2通電制御のうちの一方の制御(例えば、第1通電制御)を停止した後に電源電圧Vddが第1閾値電圧Vth1を超えたとき、回生制御を開始し、回生制御中に電源電圧Vddが第1閾値電圧Vth1よりも低い第2閾値電圧Vth2より低下したとき、回生制御を停止して他方の制御(例えば、第2通電制御)を開始する。
【0116】
これによれば、電源電圧Vddの異常状態を判定するための判定基準となる閾値電圧VTHがヒステリシス特性を持つことになるので、電源電圧Vddの変動によって回生制御と通電制御とが頻繁に切り替わることを防止できる。また、これによれば、電源電圧Vddを確実に低下させるのに必要十分な期間だけ回生制御が行われるので、モータの通電制御を一時的に停止してPWM駆動が制限されることによるモータの回転数の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0117】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3は、第1通電制御および第2通電制御のうちの一方の制御(例えば、第1通電制御)の停止後に、一方の制御が行われているときのコイル電流ILと同一の向きにコイル電流ILを回生させる回生制御(例えば、第1回生制御)を行ってから他方の制御(例えば、第2回生制御)を開始する。その後、電源電圧Vddが所定の閾値電圧VTHを超えたとき、モータ駆動制御装置3は、他方の制御(例えば、第2回生制御)を停止して直前に行った回生制御(例えば、第1回生制御)を再開する。更にその後、再開した回生制御中に電源電圧Vddが所定の閾値電圧VTHより低下したとき、再開した回生制御(例えば、第2回生制御)を停止して他方の制御(例えば、第1回生制御)を再開する。
【0118】
これによれば、例えば、電源電圧Vddが正常状態である時には通常の手順(基本順序)で通電パターンの切り替えが行われ、電源電圧Vddが異常状態になった場合にのみ基本順序に回生制御が割り込ませることができるので、電源電圧Vddが正常状態である場合には、スムーズな通電パターンの切り替えを実現することができる。
【0119】
更に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置3は、第1通電制御または第2通電制御を実行する際に、回生制御の後に停止制御を行ってから通電制御を開始することにより、インバータ回路20に貫通電流が流れることを防止することができる。
【0120】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0121】
例えば、
図5に示したフローチャートにおいて、コイルLmの通電方向を切り替える処理(ステップS7)の後に電源電圧Vddが異常であるか否かを判定する処理(ステップS10)を行う場合を例示したが、これに限られない。例えば、通電パターン生成部15は、電源電圧Vddを常時監視し、停止制御(ステップS6)の期間中に電源電圧Vddが閾値電圧VTHを超えた場合には、通電方向の切り替え処理(ステップS7~S9)を実行することなく、ステップS11以降の処理を開始して、速やかに回生制御を行ってもよい。これによれば、停止制御(制御番号3)の終了を待たず、速やかに、電源電圧Vddの上昇を抑えることが可能となる。
【0122】
また、上述のフローチャートは一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態において、モータ4の種類は、ブラシレスDCモータに限定されない。
【0124】
また、上記実施の形態において、第1通電制御時にスイッチ素子Q1をPWM駆動し、スイッチ素子Q2をオフする場合を例示したが(
図2A参照)、これに限られない。例えば、相補PWM制御となるように、スイッチ素子Q2をスイッチ素子Q1と反対の極性でPWM駆動してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1…制御回路、2…駆動回路、3…モータ駆動制御装置、4…モータ、5…位置検出装置、11…比較部、12…電圧異常判定部、13…閾値電圧生成部、14…通電制御部、15…通電パターン生成部、16…計時部、20…インバータ回路、21…プリドライブ回路、Dp…逆接続保護用ダイオード、D1~D4…還流ダイオード、Q1…第1スイッチ素子、Q2…第2スイッチ素子、Q3…第3スイッチ素子、Q4…第4スイッチ素子、Lvdd…電源ライン、Lgnd…接地(グラウンド)ライン、Vdc…直流電圧(直流電源)、Lm…コイル、IL…コイル電流、Vdd…電源電圧、VTH…閾値電圧、Vth1…第1閾値電圧、Vth2…第2閾値電圧、Sp…位置検出信号、Sd…駆動制御信号、H1,L1,H2,L2…駆動信号、100……モータユニット、P1…第1端子、P2…第2端子、d1…第1方向、d2…第2方向。