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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】通水金具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20241024BHJP
   F16L 13/08 20060101ALI20241024BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E03C1/042 B
F16L13/08
E03C1/044
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021027010
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128666
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 光明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 建吾
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153269(JP,A)
【文献】実公昭13-010554(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16L 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞が形成された金属製の第1管部材と、
前記第1管部材に接合され、前記第1管部材内の空洞と連通する空洞が内部に形成された金属製の第2管部材と、
を備えており、
前記第1管部材及び前記第2管部材の内部には、湯水が流れる通水部が設けられており、
前記第1管部材と前記第2管部材との間には、溶かしたろう接材によって互いに接合された接合部が形成されており、
前記接合部には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対して開口する凹部が設けられており、
前記接合部における前記凹部よりも外側には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対向する対向部が設けられており、
前記接合部における接合面の面積は、前記対向部における面積よりも、前記凹部からみて前記対向部とは反対側における面積のほうが大きい、通水金具。
【請求項2】
内部に空洞が形成された金属製の第1管部材と、
前記第1管部材に接合され、前記第1管部材内の空洞と連通する空洞が内部に形成された金属製の第2管部材と、
を備えており、
前記第1管部材及び前記第2管部材の内部には、湯水が流れる通水部が設けられており、
前記第1管部材と前記第2管部材との間には、溶かしたろう接材によって互いに接合された接合部が形成されており、
前記接合部には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対して開口する凹部が設けられており、
前記凹部は、前記凹部の開口から深さ方向に離れた位置に形成された底面を有しており、
前記接合部における前記凹部よりも外側には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対向する対向部が設けられており、
前記対向部の内周面は、前記底面とともに前記凹部を区画する前記凹部の外側面である、通水金具。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれか一項に記載の通水金具の製造方法であって、
前記凹部にろう接材を収容して前記第1管部材及び前記第2管部材を組み合わせ、この状態で前記凹部内のろう接材を溶かすことによって前記接合部を形成する通水金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通水金具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の通水金具を開示している。この通水金具は、外郭部材及び継ぎ手を有している。外郭部材及び継ぎ手は、互いに連通する通水路をそれぞれの内部に形成している。外郭部材及び継ぎ手は、金属製であり、溶接によって接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-26630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように通水金具における2部材を溶接によって接合した場合、接合箇所の表面には溶接ビード等の接合跡が残る。通水金具としては、ろう接材を用いて2部材を接合したものも知られている。この場合も溶接と同様に、表面にろう垂れ等の接合跡が残る。このように、接合跡が外面に露出していると、製品の見栄えに悪影響を及ぼしてしまう。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、意匠性の向上を図ることができる通水金具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る通水金具は、内部に空洞が形成された金属製の第1管部材と、前記第1管部材に接合され、前記第1管部材内の空洞と連通する空洞が内部に形成された金属製の第2管部材と、を備えており、前記第1管部材及び前記第2管部材の内部には、湯水が流れる通水部が設けられており、前記第1管部材と前記第2管部材との間には、溶かしたろう接材によって互いに接合された接合部が形成されており、前記接合部には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対して開口する凹部が設けられており、前記接合部における前記凹部よりも外側には、前記第1管部材及び前記第2管部材の互いの対向面の少なくとも一方に形成されて他方の対向面に対向する対向部が設けられている。
【0007】
本開示の一実施形態に係る通水金具の製造方法は、上記通水金具の製造方法であって、前記凹部にろう接材を収容して前記第1管部材及び前記第2管部材を組み合わせ、この状態で前記凹部内のろう接材を溶かすことによって前記接合部を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る湯水混合水栓を示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る湯水混合水栓を示す部分断面平面図である。
図3図2における領域IIIを拡大した図である。
図4図3における領域IVを拡大した図である。
図5】実施形態1に係る水栓本体の製造方法を説明するための図である。
図6】実施形態2に係る湯水混合水栓を示す要部拡大側断面図である。
図7】実施形態2に係る水栓本体の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
図1及び図2に示す湯水混合水栓100は、水栓本体カバー10、一対の取付脚101,102、シャワーエルボ103、カラン104、温調操作部105、及び流調操作部106を備えている。水栓本体カバー10は、本開示に係る通水金具の例示であり、内部に水栓本体Vを収納する。湯水混合水栓100は、軸方向に長い円筒形状をなす水栓本体カバー10に対して、一対の取付脚101,102、シャワーエルボ103、カラン104、温調操作部105、及び流調操作部106のそれぞれが取り付けられた構成である。湯水混合水栓100は、一対の取付脚101,102において浴室等の壁面に取り付けられる。
【0010】
湯水混合水栓100は、湯水が流通する一連の通水路を内部に形成している。具体的には、湯水混合水栓100は、壁面側の図示しない給水源及び給湯源から供給される水及び湯を一対の取付脚101,102を経由して水栓本体カバー10内に導入する。湯水混合水栓100は、水栓本体カバー10の内部に導入された水と湯を混合し、シャワーエルボ103側及びカラン104側へと流出させる。湯水混合水栓100は、温調操作部105の操作によって、吐出する湯水における湯と水の混合比率を調節可能である。湯水混合水栓100は、流調操作部106の操作によって、吐出する湯水の流量を調節可能である。
【0011】
一対の取付脚101,102は、図2に示すように、水栓本体カバー10における軸方向両端部の背面にそれぞれ取り付けられている。一方の取付脚101は、取付面となる壁面側の図示しない給湯管に接続される。他方の取付脚102は、取付面となる壁面側の図示しない給水管に接続される。シャワーエルボ103は、図2に示すように、水栓本体カバー10における軸方向の中央部の背面に取り付けられている。シャワーエルボ103には、図示しないシャワーホースの一端が着脱自在に接続され、シャワーホースの他端には、図示しないシャワーヘッドが接続される。
【0012】
図1及び図2に示すように、水栓本体カバー10は、本体部20及び連結部30,40,50を備えている。本体部20、及び連結部30,40,50は、それぞれ本開示に係る第1管部材及び第2管部材の例示である。本体部20、及び連結部30,40,50は、それぞれ銅合金、ステンレス等の金属製である。本体部20は、後述する開口部20A,20B,20Cにおいて連結部30,40,50と接合されている。連結部30,40,50は、水栓本体カバー10に対して取付脚101,102及びシャワーエルボ103を連結する部分である。
【0013】
図2に示すように、本体部20は両端が開口した円筒状をなしている。本体部20の内部は空洞である。本体部20内には、温度調節弁及び流量調節弁として機能する水栓本体Vが収納されている。本体部20の両端開口は、水栓本体Vによって閉塞されている。本体部20の軸方向両端外方には温調操作部105及び流調操作部106がそれぞれ配置され、水栓本体Vに接続されている。
【0014】
本体部20内には、湯水が流通する通水路P1が形成されている。通水路P1は通水部の例示である。本実施形態の場合、通水路P1は、本体部20の内周面と水栓本体Vの外周面との間に形成される。すなわち、本体部20は、本開示に係る通水部としての通水路P1を内部に直接的に形成しているといえる。通水路P1は、上流側において、後述する通水路P2と連通している。通水路P1の下流側には、水栓本体Vの内部に形成された図示しない通水路が連通している。
【0015】
図2に示すように、本体部20は開口部20Aを形成している。開口部20Aは、円筒状をなす本体部20における周壁を背面方向に貫通した形態である。開口部20Aの周縁は、本体部20における径方向外側に突出して管状をなす枝管部21とされている。枝管部21には連結部30の一端が接合されている。枝管部21と連結部30との接合部分は、接合部Jである。枝管部21と連結部30とは、接合部Jにおいて、いわゆるインローをなして組み合わされている。
【0016】
図2に示すように、本体部20には開口部20B,20Cが形成されている。開口部20B,20Cは開口部20Aと同様の構成である。開口部20A,20B,20Cは、本体部20の軸方向に沿って、本体部20の背面側に並んで設けられている。開口部20B,20Cの周縁には、枝管部21と同様の枝管部22,23が設けられている。枝管部22,23には、連結部40,50の一端が接合されている。枝管部22,23と連結部40,50の接合部分における構成は、後述する枝管部21と連結部30との接合部分の構成と同様であり、詳説を省略する。
【0017】
図3に示すように、枝管部21は、突出方向の端面である先端面21Aが平坦な直管状をなしている。枝管部21の外周面21Bは、基端側において末広がり状に拡開しており、本体部20における周壁外周面になだらかに接続している。枝管部21の内周面21Cは、先端から基端側にかけて内径の大きさが略一定の部分が形成されている。枝管部21において、先端面21A及び内周面21Cは、連結部30との接合面である。
【0018】
図3に示すように、連結部30は、両端が開口する管状をなしている。連結部30の内部は空洞である。連結部30内の空洞は、本体部20内の空洞と連通している。連結部30内には逆止弁Cが収納されている。逆止弁Cは、取付脚101側から水栓本体カバー10側への水の流通を許容し、水栓本体カバー10側から取付脚101側への水の流通を阻止する。
【0019】
連結部30の外周面30Aは、枝管部21の外周面21Bと略面一に連なっている。連結部30の軸方向一端側には挿入部31が形成されている。挿入部31は、外周面30Aの外径よりも縮径されている。挿入部31は、枝管部21の内側に挿入されている。挿入部31の外径は、枝管部21の内径よりも僅かに(例えば、0.1mmから0.4mm程度)小さく設定されている。連結部30は、挿入部31とは反対側の端部の外周面におねじ部30Bを形成している。おねじ部30Bは、取付脚101側の袋ナット101Aによって取付脚101と連結される部分である。
【0020】
図3に示すように、連結部30は、第1対向面31A及び第2対向面31Bを有している。第1対向面31A及び第2対向面31Bは、枝管部21との接合面である。第1対向面31A及び第2対向面31Bは、それぞれ枝管部21側の接合面となる面に対向する。具体的には、第1対向面31Aは、枝管部21の内周面21Cに対向する。第2対向面31Bは、枝管部21の先端面21Aに対向する。
【0021】
第1対向面31A及び第2対向面31Bは、互いに交差する方向に拡がっている。具体的には、第1対向面31Aは、挿入部31の外周面であり、挿入部31を枝管部21に挿入する際の挿入方向(突き合わせ方向)に沿った面である。第1対向面31Aは円筒状の曲面である。第2対向面31Bは挿入方向を向いた面である。第2対向面31Bは、挿入部31の基端側において、第1対向面31Aから径方向外側に拡がる平面である。第2対向面31Bは、第1対向面31Aの周方向に沿った環状をなしている。
【0022】
図3に示すように、連結部30内には、湯水が流通する通水路P2,P3が形成されている。通水路P2,P3は、それぞれ通水部の例示である。本実施形態の場合、通水路P2は、連結部30の内周面によって直接的に区画されている部分である。すなわち、連結部30は、本開示に係る通水部としての通水路P2を直接的に構成しているといえる。通水路P3は、連結部30内に収納された逆止弁Cの内部に形成されている。すなわち、連結部30は、本開示に係る通水部としての通水路P3を形成する逆止弁Cを内部に収納した形態である。換言すると、連結部30は、他部材である逆止弁Cを介して、内部に通水路P3を間接的に形成している。通水路P2は、下流側において通水路P1に連通しており、上流側において通水路P3に連通している。
【0023】
図3及び図4に示すように、本体部20と連結部30との間には接合部Jが形成されている。接合部Jは、本体部20側の先端面21A及び内周面21Cと、これらに対向する連結部30側の第1対向面31A及び第2対向面31Bとの部分において形成されている。接合部Jは、溶かしたろう接材Bによって本体部20と連結部30とを接合している。ろう接材Bは、枝管部21の内周面21Cとこれに対向する第1対向面31Aとの間、及び枝管部21の先端面21Aとこれに対向する第2対向面31Bとの間に溶融状態で進入し、その後固化することによって、本体部20と連結部30とを接合する。ろう接材Bは、本体部20及び連結部30を形成する金属よりも低い温度で溶ける材料からなる。
【0024】
図4に示すように、接合部Jには凹部32及び対向部33が設けられている。本実施形態の場合、凹部32及び対向部33は、いずれも第2管部材としての連結部30側に形成されている。凹部32は、第2対向面31Bの一部を凹ませた形態である。凹部32は、第2対向面31Bに対向する枝管部21の先端面21Aに対して開口している。凹部32は、環状をなす第2対向面31Bに沿って環状に形成されている。凹部32は、挿入部31を枝管部21に挿入する際の挿入方向(突き合わせ方向)を向いた面である第2対向面31Bに形成されていることから、凹部32は、挿入方向に開口している。
【0025】
図4に示すように、凹部32は断面長方形状をなしている。凹部32の開口幅は、凹部32の深さよりも小さく設定されている。凹部32の内側空間は、凹部32の開口から深さ方向に離れた位置に形成された底面32Aと、底面32Aの内周端から第2対向面31Bまで立ち上がる内側面32Bと、この内側面32Bに対向して形成されるとともに底面32Aの外周端から第2対向面31Bまで立ち上がる外側面32Cと、によって区画されている。底面32Aの幅は、凹部32における開口幅と同等である。内側面32Bは、第1対向面31Aに面一に連なっている。
【0026】
図4に示すように、対向部33は、接合部Jにおける凹部32よりも外側の位置に、凹部32に隣接して設けられている。対向部33は、凹部32の外側において、環状をなす壁として形成されている。対向部33は、凹部32の外側において、凹部32を外観側(外部空間側)から視認不能に覆う形態である。「凹部の外側、内側」とは、凹部から接合部を辿っていったときに外観(外部空間)に到達する側が凹部の外側、その反対側の通水金具の内部空間に到達する側が凹部の内側である。
【0027】
対向部33の先端面33Aは、第2対向面31Bの一部を構成し、枝管部21の先端面21Aに対向している。対向部33の先端面33Aは、対向する枝管部21の先端面21Aに接触している。対向部33の幅方向(径方向)の大きさは、凹部32における開口幅よりも小さい。対向部33の内周面は、凹部32の内側空間を区画する外側面32Cであり、対向部33の外周面は、連結部30の外周面30Aである。換言すると、対向部33の先端面33Aは、内周側端縁が外側面32Cによって区画され、外周側端縁が連結部30の外周面30Aによって区画されている。
【0028】
図4に示すように、接合部Jは、対向部33における接合面の面積よりも、凹部32からみて対向部33とは反対側である第1対向面31Aと内周面21Cとの接合面の面積のほうが大きい。接合部Jは、凹部32の外側である第2対向面31Bと先端面21Aとの接合面の面積よりも、凹部32の内側である第1対向面31Aと内周面21Cとの接合面の面積のほうが大きく設定されている。
【0029】
本実施形態において、接合部Jは、凹部32の開口方向と交差する方向に拡がる接合面(第2対向面31Bと先端面21Aとの接合面)を凹部32の外側に有しており、凹部32の開口方向に沿って拡がる接合面(第1対向面31Aと内周面21Cとの接合面)を凹部32の内側に有している。
【0030】
通水金具としての上記構成の水栓本体カバー10の製造方法について説明する。水栓本体カバー10は、本体部20と連結部30とを溶かしたろう接材によって接合して製造される。本実施形態の場合、接合に用いるろう接材は、図5に示すリングろうbである。リングろうbは、溶かす前の状態において、凹部32の大きさに合わせて環状に成形されている。
【0031】
本体部20と連結部30との接合に際しては、まず、リングろうbを凹部32に収納しておく。このようにリングろうbを凹部32に収納した状態で、挿入部31を枝管部21に挿入する。これによって、枝管部21の内周面21Cと第1対向面31Aとを対向させた状態とするとともに、枝管部21の先端面21Aと第2対向面31Bとを対向させた状態とする。挿入部31を枝管部21に挿入することによって、第2対向面31Bが枝管部21の先端面21Aに接触する。これに対し、第1対向面31Aと枝管部21の内周面21Cとの間には、僅かな隙間(例えば、50μmから200μm程度の隙間)が形成される。
【0032】
その後、加熱炉等の加熱手段によって全体を加熱する。この時、凹部32の開口が鉛直下向きとなる向きで、本体部20及び連結部30を配置する。すると、加熱によってリングろうbが溶け出し、凹部32の開口に対向する枝管部21の先端面21A側に垂れる。更に、溶けたろう接材は、毛細管現象によって、枝管部21の内周面21Cと第1対向面31Aとの間、及び枝管部21の先端面21Aと第2対向面31Bとの間に浸透する。その後、加熱を終えて溶けたろう接材を固化させる。これによって、枝管部21の内周面21Cと第1対向面31Aとの間、及び枝管部21の先端面21Aと第2対向面31Bとの間に溶かしたろう接材による接合部Jが形成され、本体部20と連結部30とが接合される。
【0033】
上述のように、接合部Jは、対向部33における接合面の面積よりも、凹部32からみて対向部33とは反対側である第1対向面31Aと内周面21Cとの接合面の面積のほうが大きい。このため、溶けたろう接材は、毛細管現象による引き込み力が比較的大きく作用する第1対向面31Aと枝管部21の内周面21Cとの間に多く引き込まれる。これによって、接合部Jでは、凹部32よりも内側の第1対向面31Aと内周面21Cとの間において、溶かしたろう接材による強固な接合が実現される。接合部Jは、通水路P1,P2を取り囲んで形成されるため、水栓本体カバー10は水密性が確保される。
【0034】
これに対し、凹部32の外側に位置する対向部33の先端面33Aと枝管部21の先端面21Aとの間の接合面積は、第1対向面31Aと内周面21Cとの接合面積よりも小さい。このため、対向部33の先端面33Aと枝管部21の先端面21Aとの間に引き込まれるろう接材の量は比較的少ない。このことから、溶けたろう接材が対向部33の外周面側に漏出するのが抑制される。
【0035】
接合部Jは、枝管部21の先端面21Aと第2対向面31B(対向部33の先端面33A)とは接触させ、枝管部21の内周面21Cと第1対向面31Aとの間には僅かな隙間を形成してそれぞれ設けている。このような構成によっても、溶かしたろう接材による強固な接合を凹部32の内側において実現しながら、凹部32の外側における溶けたろう接材の漏出を抑制している。
【0036】
以上のように、実施形態1の湯水混合水栓100は、通水金具としての水栓本体カバー10を備えている。水栓本体カバー10は、第1管部材及び第2管部材としての本体部20及び連結部30を備えている。本体部20及び連結部30はそれぞれ金属製である。本体部20及び連結部30は、内部に空洞が形成されている。本体部20及び連結部30内の空洞は互いに連通している。本体部20及び連結部30の内部には、湯水が流れる通水部としての通水路P1,P2,P3が設けられている。本体部20と連結部30との間には、溶かしたろう接材Bによって互いに接合された接合部Jが形成されている。接合部Jには凹部32及び対向部33が設けられている。凹部32は、本体部20及び連結部30の互いの対向面としての枝管部21の先端面21A及び第2対向面31Bの少なくとも一方に形成され、他方に対して開口している。対向部33は、接合部Jにおける凹部32よりも外側に設けられている。対向部33は、本体部20及び連結部30の互いの対向面としての枝管部21の先端面21A及び第2対向面31Bの少なくとも一方に形成され、他方の対向面に対して対向している。
【0037】
この構成によれば、本体部20と連結部30との接合時において、凹部32にろう接材を収容した状態で接合することで溶けたろう接材が外観に漏出するのを対向部33によって抑制できる。その結果、水栓本体カバー10の外観においてろう垂れ等が生じるのを抑制でき、意匠性の向上を図ることができる。
【0038】
例えば、従来であれば、外観にろう垂れが生じることを想定し、ろう垂れ箇所を隠ぺいするためにカバー部材等を更に設けることが行われている。この場合、部品点数の増加や構造の複雑化等を招いてしまう。しかし、上記構成のように、ろう接する2部材の接合部に凹部及び対向部を設けることによって、水栓本体カバーを覆うカバー部材を別途設けることなく、外観を良くすることができる。その結果、部品点数の増加や構造の複雑化を回避することができる。
【0039】
接合部Jにおける接合面の面積は、対向部33における面積である対向部33の先端面33Aと枝管部21の先端面21Aとの接合面積よりも、凹部32からみて対向部33とは反対側における面積である第1対向面31Aと枝管部21の内周面21Cとの接合面積のほうが大きい。このため、凹部32よりも内側の部分において溶かしたろう接材による十分な強度の接合を実現しながら、外観の意匠性を向上させることができる。
【0040】
通水金具としての水栓本体カバー10は、凹部32にろう接材としてのリングろうbを収容して本体部20及び連結部30を組み合わせ、この状態で、凹部32内のリングろうbを溶かすことによって接合部Jを形成する。このため、外観においてろう垂れ等が生じるのが抑制された水栓本体カバー10を容易に製造することができる。
【0041】
<実施形態2>
実施形態2に係る通水金具は、接合部の構成の点において実施形態1と相違する。実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図6及び図7に示すように、実施形態2に係る通水金具としての水栓本体カバー210は、湯水混合水栓200に備えられる。水栓本体カバー210は、本体部220及び取付部230を備えている。本体部220及び取付部230は、それぞれ本開示に係る第1管部材及び第2管部材の例示である。本体部220及び取付部230は、それぞれ銅合金、ステンレス等の金属製であり、内部が空洞である。
【0043】
本体部220及び取付部230の内部には、それぞれ通水路P22,P23が形成されている。通水路P22,P23は、それぞれ通水部の例示である。通水路P22,P23は互いに連通している。取付部230には、水抜き栓60が取り付けられる。水抜き栓60は、通水路P23を外部空間に対して水密にシールする。水抜き栓60は、ねじ込みによって取付部230内に配置される。水抜き栓60は、緩め操作を行うことによって通水路P23と外部空間との間のシールを解除し、通水路P22内の水を通水路P23を経由して外部空間に排出することができる。
【0044】
本体部220は、実施形態1に係る本体部20と同様の構成を備える。これに加えて、本体部220は、図6に示すように、開口部220Dを形成している。開口部220Dは、本体部220における周壁を下方斜め後方に貫通した形態である。開口部220Dの周縁は、実施形態1の開口部20A等とは異なり、管状に突出する枝管部は形成されていない。開口部220Dの周縁は、筒状をなす本体部220の外周面の面形状である曲面状をなしている。
【0045】
図6に示すように、取付部230は、両端が開口する管状をなしている。取付部230は、軸方向の一端を本体部220における開口部220Dの周縁に接合させている。本体部220と取付部230との接合部分は、接合部J2である。接合部J2は、実施形態1におけるろう接材Bと同様の図示しないろう接材によって、本体部220と取付部230とを接合している。接合部J2は、本体部220側の対向面220Aと、これに対向する取付部230側の対向面230Aとの部分において形成されている。対向面220Aは、円筒状の本体部220の外周面をなす曲面を環状に切り取った形態である。対向面230Aは、対向面220Aに沿った環状の曲面をなしている。
【0046】
図6に示すように、接合部J2には凹部232及び対向部233が設けられている。本実施形態の場合、凹部232及び対向部233は、いずれも第2管部材としての取付部230側に形成されている。凹部232は、環状をなす対向面230Aに沿って環状に形成されている。凹部232は、本体部220側の対向面220Aに対して開口している。
【0047】
図6に示すように、対向部233は、接合部J2における凹部232よりも外側の位置に、凹部232に隣接して設けられている。対向部233は、凹部232の外側において、環状をなす壁部として形成されている。対向部233は、凹部232の外側において、凹部232を外観側(外部空間側)から視認不能に覆っている。対向部233の先端面233Aは、対向面220Aの一部を構成し、本体部220側の対向面220Aに対向している。対向部233の幅方向(径方向)の大きさは、凹部232における開口幅よりも小さい。接合部J2は、凹部232の外側及び内側の両側において、凹部232の開口方向と交差する方向に拡がる接合面を有する形態である。接合部J2は、実施形態1の接合部Jと同様に、対向部233における接合面(凹部よりも外側の接合面)の面積よりも、凹部232からみて対向部233とは反対側の接合面(凹部よりも内側の接合面)の面積のほうが大きい。
【0048】
通水金具としての上記構成の水栓本体カバー210の製造方法についても、実施形態1と同様である。すなわち、図7に示すように、リングろうb2を凹部232に収納し、この状態で取付部230の対向面230Aを本体部220の対向面220Aに対向させて合わせる。そして、凹部232の開口が鉛直下向きとなる向きで本体部220及び取付部230を配置して加熱し、リングろうb2を溶かして対向面220A,230A間に浸透させる。その後、ろう接材を固化させて接合部J2が形成され、本体部220と取付部230とが水密に接合される。
【0049】
上記構成の実施形態2の通水金具及びその製造方法は、上記実施形態1と同様の効果を奏するものである。
【0050】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0051】
第1管部材と第2管部材の形状、大きさ等は上記各実施形態に限定されない。例えば、第1管部材及び第2管部材は、角筒状、球状等に形成されていてもよい。第1管部材と第2管部材の形状、材質等は、同じである必要はない。
【0052】
第1管部材及び第2管部材の内部に通水部を設ける形態としては、例えば、(A)第1管部材及び第2管部材によって通水路を直接的に形成する形態、(B)第1管部材及び第2管部材とは異なる部材であって内部に通水路を形成した通水部材を第1管部材及び第2管部材内に収納する形態、(C)上記(A)及び(B)を組み合わせた形態等であることができる。
【0053】
凹部は、上記各実施形態のように第2管部材側に形成されるものに限定されない。凹部は、例えば、第1管部材側に形成されていてもよい。凹部は、例えば、第1管部材及び第2部材の両方に形成されていてもよい。
【0054】
対向部は、第2管部材側に形成されるものに限定されない。対向部は、例えば、第1管部材側に形成されていてもよい。対向部は、例えば、第1管部材及び第2管部材の両方に形成されていてもよい。対向部は、第1管部材及び第2管部材のうち、凹部が形成される部材とは異なる部材に形成されていてもよい。
【0055】
凹部は、接合部におけるいずれの部位に形成されていてもよい。例えば、凹部は、2部材の突き合わせ方向(挿入方向)に沿って拡がる面(実施形態1で例示すると、挿入部31の外周面である第1対向面31A、及び枝管部21の内周面21C)の少なくとも一方に形成されていてもよい。
【0056】
接合部における接合面は、2部材の突き合わせ方向(挿入方向)に対して傾斜していてもよい。
【0057】
接合部における接合面の面積は、対向部における面積よりも、凹部からみて対向部とは反対側における面積のほうが小さくてもよい。接合部における接合面の面積は、凹部の外側と内側において同等であってもよい。
【0058】
ろう接材の接合前の形状がリング状であることは必須でない。ろう接材は、例えば、接合前の状態において、細切れ状やペースト状等であってもよい。ろう接材の形状を凹部の形状に合わせた形状とすることは必須でない。
【0059】
本開示に係る通水金具を上記実施形態の製造方法によって製造することは必須でない。すなわち、通水金具は、ろう接材を予め凹部に収納した状態で加熱して接合部を形成することは必須でない。例えば、第1管部材及び第2管部材を突き合わせたのちに、接合部となる部分における凹部より内側(管部材の内周面側)の端部から溶かしたろう接材を浸透させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10,210…水栓本体カバー(通水金具)、20,220…本体部(第1管部材)、21A…枝管部の先端面(対向面)、21C…枝管部の内周面(対向面)、30…連結部(第2管部材)、31A…第1対向面(対向面)、31B…第2対向面(対向面)、32,232…凹部、33,233…対向部、40,50…連結部(第2管部材)、220A,230A…対向面、230…取付部(第2管部材)、B…溶かしたろう接材、J,J2…接合部、P1,P2,P3,P22,P23…通水路(通水部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7