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特許7576490電子部品の製造方法、及び、電子部品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、及び、電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/16 20060101AFI20241024BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20241024BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20241024BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C25D17/16 Z
C25D17/08 H
C25D21/12 J
C25D21/00 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021033579
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134453
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】油川 祐基
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智紀
(72)【発明者】
【氏名】金子 多
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-131296(JP,A)
【文献】特開2002-030492(JP,A)
【文献】特開2001-355097(JP,A)
【文献】特開平11-131297(JP,A)
【文献】特開平11-140695(JP,A)
【文献】特開平11-131299(JP,A)
【文献】特開平09-053197(JP,A)
【文献】特開平02-101189(JP,A)
【文献】特開平01-119699(JP,A)
【文献】特開平05-239698(JP,A)
【文献】特開平07-239698(JP,A)
【文献】米国特許第06228230(US,B1)
【文献】特表2013-524011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/16
C25D 17/08
C25D 21/12
C25D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を介して少なくとも一つのアノードと複数のカソードとの間に電流を流す回路において、互いに離間している複数のめっき対象物の各々に、前記複数のカソードのうち対応するカソードを接触させることと、
各前記カソードに接している前記めっき対象物に対してめっき処理を行うことと、を有し、
前記めっき処理において、前記各カソードを流れる電流の値に関するパラメータが、前記各カソードの位置、前記各カソードに電流が流れている時間、及び、前記各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定されている状態において、前記各カソードに電流を流
各前記めっき対象物は、互いに離間する第一及び第二被めっき部を有しており、
前記複数のカソードは、前記第一被めっき部に接触する第一カソードと、前記第二被めっき部に接触する第二カソードとを含んでおり、
前記第一カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータと、前記第二カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータとは、それぞれ設定される、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記複数のめっき対象物は、第一領域に位置する第一めっき対象物と、前記第一領域に囲まれた第二領域に位置する第二めっき対象物とを含んでおり、
前記第一めっき対象物に接触する前記カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータと、前記第二めっき対象物に接触する前記カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータとは、それぞれ設定される、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記パラメータは、前記各カソードに電流を流す回路の抵抗値を含んでいる、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記複数のめっき対象物は、前記めっき処理において、第一領域に位置する第一めっき対象物と、前記第一領域に囲まれた第二領域に位置する第二めっき対象物とを含んでおり、
前記パラメータは、前記第一めっき対象物に接触する前記カソードに電流を流す回路の抵抗値が、前記第二めっき対象物に接触する前記カソードに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるように設定される、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記パラメータは、同一の前記めっき対象物に接触する前記カソードごとに設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記複数のめっき対象物は、前記めっき処理において、行列状に配列されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記パラメータは、前記複数のめっき対象物の配列の行単位、又は、列単位で設定される、請求項6に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのアノードは、互いに対向するように配置された一対のアノードを含んでおり、
前記複数のカソードは、前記めっき処理において、前記一対のアノードの対向方向に直交する方向から見て、前記一対のアノードの間に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記めっき処理は、
前記めっき対象物の第1箇所に、前記対応するカソードを接触させることと、
前記めっき対象物と前記対応するカソードとの相対移動を行うことによって、前記第1箇所と前記対応するカソードとが互いに離間していると共に前記めっき対象物のうち前記第1箇所と異なる第2箇所と前記対応するカソードとが互いに接触している状態を形成することと、を含んでいる、請求項1からのいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
複数のめっき対象物が互いに離間している状態で各前記めっき対象物を保持する保持部材と、
めっき処理において前記複数のめっき対象物のうち対応するめっき対象物に接触する複数のカソードと、
めっき液を介して各前記カソードへ電流を流す少なくとも一つのアノードと、
前記各カソードを流れる前記電流の値に関するパラメータを、前記各カソードの位置、前記各カソードに電流が流れている時間、及び、前記各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定するパラメータ設定部と、を備え、
前記複数のカソードは、前記めっき対象物の第一被めっき部に接触する第一カソードと、前記第一被めっき部と離間する前記めっき対象物の第二被めっき部に接触する第二カソードとを含んでおり、
前記パラメータ設定部は、前記第一カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータと、前記第二カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータとをそれぞれ設定する、電子部品の製造装置。
【請求項11】
前記パラメータ設定部は、電気的に、前記少なくとも一つのアノード及び前記複数のカソードに電気的に接続される外部電源と前記各カソードとの間に配置される、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項12】
前記保持部材は、前記複数のめっき対象物のうち第一めっき対象物を第一領域に保持し、前記複数のめっき対象物のうち第二めっき対象物を前記第一領域に囲まれた第二領域に保持し、
前記パラメータ設定部は、前記第一めっき対象物に接触する前記カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータと、前記第二めっき対象物に接触する前記カソードを流れる電流の値に関する前記パラメータとをそれぞれ設定する、請求項10又は11に記載の電子部品の製造装置。
【請求項13】
前記パラメータ設定部は、前記第一めっき対象物に接触する前記カソードに電流を流す回路の抵抗値が、前記第二めっき対象物に接触する前記カソードに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるように前記パラメータを設定する、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項14】
前記パラメータ設定部は、同一の前記めっき対象物に接触する前記カソードごとに前記パラメータを設定する、請求項1から1のいずれか一項に記載の電子部品の製造装置。
【請求項15】
前記保持部材は、前記複数のめっき対象物が行列状に配列された状態で前記各めっき対象物を保持している、請求項1から1のいずれか一項に記載の電子部品の製造装置。
【請求項16】
前記パラメータ設定部は、前記複数のめっき対象物の配列の行単位、又は、列単位で、前記パラメータを設定する、請求項1に記載の電子部品の製造装置
【請求項17】
前記少なくとも一つのアノードは、互いに対向するように配置された一対のアノードを含んでおり、
前記複数のカソードは、前記一対のアノードの対向方向に直交する方向から見て、前記一対のアノードの間に配置されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の電子部品の製造装置。
【請求項18】
前記めっき対象物と前記めっき対象物に対応する前記カソードとが予め決められた位置関係となるように、前記めっき対象物と前記カソードとの相対移動を行う駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記相対移動によって、前記めっき対象物の第1箇所と前記カソードとが互いに接する状態と、前記第1箇所と前記カソードとが互いに離間すると共に前記めっき対象物のうち前記第1箇所と異なる第2箇所と前記カソードとが互いに接する状態とを切り替える、請求項1ら17のいずれか一項に記載の電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、及び、電子部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造において、めっき対象物にめっき処理を行うことが知られている(たとえば、特許文献1)。たとえば、めっき対象物に電流を流すことによって、めっき処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-354378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、複数のめっき対象物と複数のめっきメディアとをバレルに入れて、バレルを回転させながらめっき処理を行う技術が知られている。複数のめっき対象物は、たとえば、めっき処理前の電子部品である。このような電解バレルめっき法では、バレル内において、複数のめっき対象物同士の衝突、又は、めっきメディアとめっき対象物との衝突によって、一部のめっき対象物にクラックが生じる。外観にクラックが表れていなかったとしても、内部にクラックが生じている場合がある。このようなクラックが生じた電子部品を生産ラインにおいて除外することは、容易ではない。めっき対象物だけでなく、めっきメディアにもめっきが付与してしまうため、電力消費及び材料消費の低減を図り難い。
【0005】
このため、治具によって複数のめっき対象物を配列した状態において、各めっき対象物の所定箇所に電極を接触させて、めっき処理を行うことが考えられる。この場合、様々な要因によって、めっき対象物に接しているカソードにおいて、電流が過剰に流れるおそれがある。電流が過剰に流れれば、発熱によって治具の劣化が早まる。
【0006】
たとえば、めっき処理における経時変化によって、めっき対象物だけでなくカソードにもめっき膜が堆積する。このため、時間の経過に応じて、各カソードの抵抗値が低下する。カソードの抵抗値が低下すれば、このカソードにおいて、電流が過剰に流れるおそれがある。また、めっき処理においては、めっき液を介して、各めっき対象物と離間したアノードから各めっき対象物及びめっき対象物に接触させるカソードに向かって電流が流れる。めっき対象物を流れる電流の値は、アノードに対するめっき対象物の位置に応じて変化する。したがって、複数のめっき対象物が配列されている場合には、めっき対象物の配置に応じて、異なる値の電流がめっき対象物を流れるおそれがある。たとえば、複数のめっき対象物の各々へのカソードの接触によって、めっき対象物のそれぞれに対して互いに同一の抵抗値の回路が形成される場合、めっき対象物の配置の違いに応じて、異なる電流値の電流がめっき対象物を流れる。この場合には、一部のめっき対象物に接しているカソードにおいて、電流が過剰に流れるおそれがある。
【0007】
本発明の一つの態様は、製造装置に対して、電流が過剰に流れることが抑制され得る電子部品の製造方法を提供することを目的とする。本発明の別の態様は、電流が過剰に流れることが抑制され得る電子部品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様における電子部品の製造方法において、めっき液を介して少なくとも一つのアノードと複数のカソードとの間に電流を流す回路において、複数のめっき対象物の各々に、複数のカソードのうち対応するカソードを接触させる。複数のめっき対象物は、互いに離間している。各カソードに接しているめっき対象物に対してめっき処理が行われる。めっき処理において、各カソードを流れる電流の値に関するパラメータが、各カソードの位置、各カソードに電流が流れている時間、及び、各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定されている状態において、各カソードに電流を流す。
【0009】
この電子部品の製造方法において、めっき処理は、めっき対象物が対応するカソードに接した状態において行われる。各カソードを流れる電流の値に関するパラメータは、カソードの位置、各カソードに電流が流れている時間、及び、各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定されている。このため、めっき対象物の配置の違い、及び、カソードの抵抗値の経時的な変化等に応じて異なる電流値の電流がめっき対象物を流れることが、抑制され得る。したがって、製造装置に対して、電流が過剰に流れることが抑制され得る。
【0010】
上記一つの態様において、複数のめっき対象物は、第一めっき対象物と第二めっき対象物とを含んでいてもよい。第一めっき対象物は、第一領域に位置していてもよい。第二めっき対象物は、第一領域に囲まれた第二領域に位置していてもよい。第一めっき対象物に接触するカソードを流れる電流の値に関するパラメータと、第二めっき対象物に接触するカソードを流れる電流の値に関するパラメータとは、それぞれ設定されてもよい。この場合、第一領域に位置する第一めっき対象物に流れる電流の値と、第二領域に位置する第二めっき対象物に流れる電流の値とが、均一に制御され得る。
【0011】
上記一つの態様において、パラメータは、各カソードに電流を流す回路の抵抗値を含んでいてもよい。
【0012】
上記一つの態様において、複数のめっき対象物は、第一めっき対象物と第二めっき対象物とを含んでいてもよい。第一めっき対象物は、第一領域に位置していてもよい。第二めっき対象物は、第一領域に囲まれた第二領域に位置していてもよい。パラメータは、第一めっき対象物に接触するカソードに電流を流す回路の抵抗値が、第二めっき対象物に接触するカソードに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるように設定されてもよい。この場合、第一領域に位置する第一めっき対象物に流れる電流の値と、第二領域に位置する第二めっき対象物に流れる電流の値とが、均一に制御され得る。
【0013】
上記一つの態様において、パラメータは、同一のめっき対象物に接触するカソードごとに設定されてもよい。この場合、各めっき対象物に流れる電流の値がより細かく制御される。したがって、製造装置に対して、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0014】
上記一つの態様において、複数のめっき対象物は、めっき処理において、行列状に配列されていてもよい。この場合、より多くのめっき対象物に同時にめっき処理を施すことができる。
【0015】
上記一つの態様において、パラメータは、複数のめっき対象物の配列の行単位、又は、列単位で設定されてもよい。この場合、各カソードに流れる電流の値をより簡易に設定することができる。
【0016】
上記一つの態様において、各めっき対象物は、互いに離間する第一及び第二被めっき部を有していてもよい。複数のカソードは、第一カソードと第二カソードとを含んでいてもよい。第一カソードは、第一被めっき部に接触する。第二カソードは、第二被めっき部に接触する。この場合、第一及び第二被めっき部を同時にめっき処理する構成においても、各カソードに流れる電流の値をより簡易に設定することができる。
【0017】
上記一つの態様において、第一カソードを流れる電流の値に関するパラメータと、第二カソードを流れる電流の値に関するパラメータとは、それぞれ設定されてもよい。この場合、各めっき対象物に流れる電流の値がより細かく制御される。したがって、製造装置に対して、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0018】
上記一つの態様において、少なくとも一つのアノードは、互いに対向するように配置された一対のアノードを含んでいてもよい。複数のカソードは、めっき処理において、一対のアノードの対向方向に直交する方向から見て、一対のアノードの間に配置されてもよい。この場合、めっき処理の時間が短縮される。
【0019】
上記一つの態様において、めっき処理は、めっき対象物の第1箇所に、対応するカソードを接触させることと、めっき対象物と対応するカソードとの相対移動を行うことによって、第1箇所と対応するカソードとが互いに離間していると共にめっき対象物のうち第2箇所と対応するカソードとが互いに接触している状態を形成することと、を含んでいてもよい。第2箇所は、第1箇所と異なる。この場合、第1箇所と第2箇所とにおいて、均一の厚さにめっき処理が施され得る。
【0020】
本発明の別の態様における電子部品の製造装置は、保持部材と、複数のカソードと、少なくとも一つのアノードと、パラメータ設定部とを備えている。保持部材は、複数のめっき対象物が互いに離間している状態で各めっき対象物を保持する。複数のカソードは、めっき処理において複数のめっき対象物のうち対応するめっき対象物に接触する。少なくとも一つのアノードは、めっき液を介して各カソードへ電流を流す。パラメータ設定部は、各カソードを流れる電流の値に関するパラメータを、各カソードの位置、各カソードに電流が流れている時間、及び、各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定する。
【0021】
上記別の態様において、複数のカソードは、めっき処理において複数のめっき対象物のうち対応するめっき対象物に接触する。パラメータ設定部は、各カソードを流れる電流の値に関するパラメータを、各カソードの位置、各カソードに電流が流れている時間、及び、各カソードを流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定する。このため、めっき対象物の配置の違い、及び、カソードの抵抗値の経時的な変化等に応じて異なる電流値の電流がめっき対象物を流れることが、抑制され得る。したがって、電流が過剰に流れることが抑制され得る。
【0022】
上記別の態様において、パラメータ設定部は、電気的に、少なくとも一つのアノード及び複数のカソードに電気的に接続される外部電源と各カソードとの間に配置されてもよい。
【0023】
上記別の態様において、保持部材は、複数のめっき対象物のうち第一めっき対象物を第一領域に保持し、複数のめっき対象物のうち第二めっき対象物を第二領域に保持してもよい。第二領域は、第一領域に囲まれている。パラメータ設定部は、第一めっき対象物に接触するカソードを流れる電流の値に関するパラメータと、第二めっき対象物に接触するカソードを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定してもよい。この場合、第一領域に位置する第一めっき対象物に流れる電流の値と、第二領域に位置する第二めっき対象物に流れる電流の値とが、均一に制御され得る。
【0024】
上記別の態様において、保持部材は、複数のめっき対象物のうち第一めっき対象物を第一領域に保持し、複数のめっき対象物のうち第二めっき対象物を第二領域に保持してもよい。第二領域は、第一領域に囲まれている。パラメータ設定部は、第一めっき対象物に接触するカソードに電流を流す回路の抵抗値が、第二めっき対象物に接触するカソードに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるように上記パラメータを設定してもよい。この場合、第一領域に位置する第一めっき対象物に流れる電流の値と、第二領域に位置する第二めっき対象物に流れる電流の値とが、均一に制御され得る。
【0025】
上記別の態様において、パラメータ設定部は、同一のめっき対象物に接触するカソードごとにパラメータを設定してもよい。この場合、この場合、各カソードに流れる電流の値がより細かく設定され得る。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0026】
上記別の態様において、保持部材は、複数のめっき対象物が行列状に配列された状態で各めっき対象物を保持していてもよい。この場合、より多くのめっき対象物に同時にめっき処理を施すことができる。
【0027】
上記別の態様において、パラメータ設定部は、複数のめっき対象物の配列の行単位、又は、列単位で、上記パラメータを設定してもよい。この場合、各カソードに流れる電流の値がより細かく設定され得る。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0028】
上記別の態様において、保持部材は、各めっき対象物において互いに離間している第一及び第二被めっき部が露出するように各めっき対象物を保持していてもよい。複数のカソードは、第一カソードと第二カソードとを含んでいてもよい。第一カソードは、第一被めっき部に接触する。第二カソードは、第二被めっき部に接触する。この場合、各カソードに流れる電流の値をより細かく設定され得る。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0029】
上記別の態様において、パラメータ設定部は、第一カソードを流れる電流の値に関するパラメータと、第二カソードを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定してもよい。この場合、各めっき対象物に流れる電流の値がより細かく制御される。したがって、製造装置に対して、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0030】
上記別の態様において、少なくとも一つのアノードは、互いに対向するように配置された一対のアノードを含んでいてもよい。複数のカソードは、一対のアノードの対向方向に直交する方向から見て、一対のアノードの間に配置されていてもよい。この場合、めっき処理の時間が短縮される。
【0031】
上記別の態様において、製造装置は、駆動部をさらに備えていてもよい。駆動部は、めっき対象物とめっき対象物に対応するカソードとが予め決められた位置関係となるように、めっき対象物とカソードとの相対移動を行ってもよい。駆動部は、上記相対移動によって、めっき対象物の第1箇所とカソードとが互いに接する状態と、第1箇所とカソードとが互いに離間すると共にめっき対象物のうち第2箇所とカソードとが互いに接する状態とを切り替えてもよい。第2箇所は、第1箇所と異なる。この場合、第1箇所と第2箇所とにおいて、均一の厚さにめっき処理が施され得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一つの態様は、製造装置に対して、電流が過剰に流れることが抑制され得る電子部品の製造方法を提供する。本発明の別の態様は、電流が過剰に流れることが抑制され得る電子部品の製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態における電子部品の製造装置のブロック図である。
図2】チップ部品の一例を示す図である。
図3】めっき処理部の概略図である。
図4】めっき処理部の概略図である。
図5】治具の斜視図である。
図6】(a)から(d)は、チップ部品と保持部材との位置関係を示す図である。
図7】(a)はS1-S1線における保持部材の断面を示す図であり、(b)はS2-S2線における保持部材の端面を示す図である。
図8】保持部材と外枠との位置関係を示す図である。
図9】(a)及び(b)は、カソードと電極枠との位置関係を示す図である。
図10】(a)及び(b)は、保持部材と電極枠との位置関係を示す図である。
図11】本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
図12】(a)及び(b)は、保持部材が外枠に収容される工程を説明するための図である。
図13】(a)及び(b)は、保持部材と電極枠との相対移動を説明するための平面図である。
図14】(a)から(c)は、保持部材と電極枠との相対移動を説明するための部分拡大図である。
図15】本実施形態の変形例における電極枠の斜視図である。
図16】本実施形態の変形例におけるカソードと電極枠との位置関係を示す図である。
図17】本実施形態の変形例におけるカソードと電極枠との位置関係を示す図である。
図18】本実施形態の変形例におけるカソードと電極枠との位置関係を示す図である。
図19】本実施形態の変形例におけるカソードと電極枠とチップ部品との位置関係を示す図である。
図20】本実施形態の変形例におけるカソードとチップ部品との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0035】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態における電子部品の製造装置の概要を説明する。図1は、本実施形態における電子部品の製造装置のブロック図である。製造装置1は、めっき対象物にめっき処理を行う。製造装置1は、めっき処理部10と、駆動制御部20と、電源部30と、電流制御部40と、を備えている。
【0036】
製造装置1は、めっき処理部10において、めっき対象物をめっき液に浸した状態で、めっき対象物に対するめっき処理を行う。めっき対象物にめっき処理を施すことによって、電子部品が形成される。以下、本明細書において、「めっき処理」は、めっき対象物に対するめっき処理を意味する。めっき対象物をめっき処理することによって形成される電子部品は、たとえば、コンデンサ部品である。めっき対象物は、たとえば、めっき処理を施す前のチップ部品である。チップ部品は、たとえば、素体と焼結電極とを含んでいる。たとえば、上記めっき処理によって、焼結電極にめっきが付与される。以下、「めっき対象物」を「チップ部品」と呼ぶ。
【0037】
図2は、チップ部品の一例を示している。図2に示されているチップ部品5は、互いに対向する一対の端面6と、一対の端面6の間に位置している側面7とを有している。図2に示されている例において、チップ部品5は、直方体形状を呈している。図2において、方向D1は一対の端面6が対向する方向であり、方向D2は方向D1と交差する方向であり、方向D3は方向D1及び方向D2と交差する方向である。
【0038】
側面7は、方向D2において互いに対向する一対の側面7a,7bと、方向D3において互いに対向する一対の側面7c,7dとを含んでいる。換言すれば、一対の端面6は、方向D1において互いに反対側に位置している。一対の側面7a,7bは、方向D2において互いに反対側に位置している。一対の側面7c,7dは、方向D3において互いに反対側に位置している。図2においてに示されている例において、方向D1と方向D2と方向D3とは、互いに直交している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含んでいる。
【0039】
チップ部品5は、互いに離間している複数の被めっき部8a,8bを有している。チップ部品5は、一対の端面6に互いに離間している一対の被めっき部8a,8bを有している。各被めっき部8a,8bは、焼結電極を含んでいる。各被めっき部8a,8bは、対応する端面6の全体を構成しており、各側面7a,7bの一部と各側面7c,7dの一部とを構成している。各被めっき部8a,8bの焼結電極は、素体9の一部を覆っており、当該焼結電極が設けられていない部分では素体9が露出している。各被めっき部8a,8bにおける焼結電極は、材料として、たとえば、銅、銀、ニッケル、及びパラジウムの少なくとも一つを含んでいる。被めっき部8aは第一被めっき部に相当し、被めっき部8bは第二被めっき部に相当する。
【0040】
めっき処理部10は、チップ部品5の各被めっき部8a,8bに対して、めっき処理を行う。めっき処理部10は、図1に示されているように、治具11と少なくとも一つのアノード12とを有している。治具11は、保持部材13と、複数のカソード14と、駆動部15とを備えている。保持部材13は、めっき処理において、複数のチップ部品5を保持する。各カソード14は、めっき処理において、複数のチップ部品5のうち対応するチップ部品5に接触する。駆動部15は、保持部材13とカソード14との相対移動を行う。これによって、めっき処理において、チップ部品5とカソード14とが相対移動する。カソード14は、この相対移動によって、チップ部品5に接触する。たとえば、アノード12は、材料として、ニッケル及びスズから選択された少なくとも一つを含んでいる。カソード14は、たとえば、バネ性を有する。たとえば、カソード14は、材料として、鉄、クロム、ニッケル合金、ベリリウム銅合金、及び、ステンレス鋼から選択された少なくとも一つを含んでいる。アノード12及びカソード14の材料は、これらに限定されない。
【0041】
駆動制御部20は、めっき処理において、駆動部15による相対移動を制御する。治具11は、駆動制御部20による制御に応じて、保持部材13とカソード14との相対移動が行われるように駆動される。
【0042】
アノード12と、複数のカソード14と、電源部30と、電流制御部40とは、めっき液を介してアノード12と複数のカソード14との間に電流を流す回路Cを構成している。電源部30は、アノード12と各カソード14とに電気的に接続されており、回路Cに電流を流す起電力を発生する。各カソード14は、電源部30において発生した起電力に応じて、めっき処理において、対応するチップ部品5に電位を付与する。電流制御部40は、電源部30に接続されており、回路Cに流れる電流を制御する。めっき液を介してアノード12と各カソード14との間に流れる電流によって、各カソード14に接触しているチップ部品5においてめっき処理が行われる。
【0043】
次に、図3から図11を参照して、めっき処理部10の詳細な構成について説明する。図3及び図4は、めっき処理部10の概略図である。図3に示されているように、めっき処理部10は、めっき槽16をさらに有している。めっき処理において、めっき槽16内はめっき液Lによって満たされ、治具11及びアノード12が、めっき槽16内においてめっき液Lに浸される。図3に示されている構成において、めっき処理部10は、一対のアノード12を有している。一対のアノード12は、Y軸方向において互いに対向している。複数のカソード14は、一対のアノード12のX軸方向から見て、一対のアノード12の間に配置されている。一対のアノード12は、めっき液Lを介して各カソード14へ電流を流す。
【0044】
図4に示されている構成において、各アノード12は、Z軸方向及びX軸方向に延在している平板形状を呈している。Z軸方向及びX軸方向において、各アノード12の長さは、保持部材13の長さよりも大きい。図4に示されているように、めっき処理において、Y軸方向から見て、各チップ部品5は、各アノード12と重なる領域R1内に配置される。Y軸方向におけるアノード12の投射面積は、チップ部品5に接続されるカソード14が配置される領域のY軸方向における投射面積よりも大きい。
【0045】
図3から図5において、治具11の一例が示されている。治具11は、保持部材13と複数のカソード14と駆動部15とに加えて、外枠17と、一対の電極枠18と、をさらに備えている。本実施形態において、外枠17を基準にX軸、Y軸、及び、Z軸を規定する。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。図3において、治具11の断面図が示されている。図4において、治具11の正面図が示されている。図5において、治具11の斜視図が示されている。
【0046】
治具11の外枠17は、一対の電極枠18及び保持部材13を収容する。外枠17によって、治具11の全体の堅牢性が確保される。少なくともめっき処理を行う際に、外枠17はめっき液Lに浸され、外枠17の内部にめっき液Lが浸入する。外枠17は、底板部17aと、一対の側壁部17bと、一対の補強部17cとを有している。一対の側壁部17bは、X軸方向において互いに対向している。各側壁部17bは、Z軸方向に延在し、底板部17aに垂直に配置されている。各補強部17cは、X軸方向において延在し、一対の側壁部17bを連結している。各補強部17cは、一対の側壁部17bを挟んで、底板部17aと反対側に位置している。外枠17は、絶縁性を有しており、たとえば樹脂を含んでいる。
【0047】
保持部材13は、チップ部品5を保持する。図6(a)から図6(d)は、保持部材13にチップ部品5が保持された状態を示している。保持部材13は、複数のチップ部品5が互いに離間した状態で各チップ部品5を保持する。保持部材13は、被めっき部8a,8bが露出するように各チップ部品5を保持する。換言すれば、保持部材13は、被めっき部8a,8bの双方がカソード14に接触するように各チップ部品5を保持する。保持部材13において、複数のチップ部品5は行列状に配列されている。
【0048】
本実施形態において、複数のチップ部品5は、Y軸方向から見て、矩形状の領域R2に2次元配列されている。領域R2は、領域R3と領域R4とを含んでいる。領域R4は、領域R3に囲まれている。領域R3は、保持部材13の外周に沿って配置されている。領域R3は、たとえば、矩形環状を呈している。領域R3は第一領域に相当し、領域R4は第二領域に相当する。
【0049】
複数のチップ部品5が配列されてる領域R2は、矩形状に限定されない。たとえば、複数のチップ部品5は、Y軸方向から見て、円形状の領域に2次元配列されてもよい。この場合、領域R3は、たとえば、円環状を呈する。領域R4は、たとえば、円形状を呈する。
【0050】
複数のチップ部品5は、領域R3において保持されているチップ部品5aと、領域R4において保持されているチップ部品5bとを含んでいる。換言すれば、保持部材13は、複数のチップ部品5の一部を領域R3に保持し、残りを領域R4に保持している。たとえば、Y軸方向から見て、領域R3において保持された複数のチップ部品5aは、領域R4において保持された少なくとも一つのチップ部品5bを囲うように配置されている。たとえば、複数のチップ部品5aは、X軸方向における両端の列P1においてZ軸方向に配列されている。複数のチップ部品5bは、列P1に挟まれている列P2においてZ軸方向に配列されている。チップ部品5aは第一めっき対象物に相当し、チップ部品5bは第二めっき対象物に相当する。
【0051】
図6(a)に示されているように、保持部材13には、複数の孔13aが設けられている。複数の孔13aは、行列状に配列されている。複数の孔13aは、等間隔で配列されている。複数の孔13aは、領域R3及び領域R4に設けられている。たとえば、Y軸方向から見て、領域R3に位置する複数の孔13aは、領域R4に位置する少なくとも一つの孔13aを囲っている。複数の孔13aは、X軸方向における両端の列P1と、列P1に挟まれている列P2とにおいてZ軸方向に配列されている。各孔13aに、1つのチップ部品5が嵌め込まれる。各チップ部品5は、対応する孔13aに挿入され、保持部材13を貫通するように配置される。複数の孔13aは、たとえば円形である。
【0052】
各チップ部品5は、一対の端面6が対向する方向D1と保持部材13の厚さ方向とが一致するように、保持部材13に保持される。各チップ部品5は、一対の側面7a,7bが対向する方向D2と保持部材13の厚さ方向に直交する方向とX軸方向とが一致するように、保持部材13に保持される。保持部材13が外枠17に収容された状態において、保持部材13の厚さ方向は、Y軸方向に一致する。保持部材13が外枠17に収容された状態において、方向D1はY軸方向に一致し、方向D2はX軸方向に一致し、方向D3はZ軸方向に一致する。
【0053】
図7(a)及び図7(b)に示されているように、保持部材13は、たとえば、シリコーン部材51と板材52とを有している。図7(a)は、図6(a)における保持部材13のS1-S1線における断面を示している。図7(b)は、図6(a)における保持部材13のS2-S2線における断面を示している。保持部材13において、板材52は、シリコーン部材51によって覆われている。板材52によって、シリコーン部材51の形状の崩れが防止されている。シリコーン部材51は、絶縁性を有しており、シリコーンを含んでいる。各板材52は、たとえばステンレス鋼を含んでいる。
【0054】
図7(b)に示されているように、シリコーン部材51には、複数の孔13aに対応する複数の孔51aが設けられている。孔13aと孔51aとは、一対一で対応して位置している。板材52には、複数の孔51aに対応する複数の孔52aが設けられている。孔51aと孔52aとは、一対一で対応して位置している。保持部材13の厚さ方向から見て、複数の孔51a及び複数の孔52aは、行列状に配列されている。保持部材13が外枠17に収容された状態において、板材52の厚さ方向は、Y軸方向に一致する。
【0055】
各孔51aは、各孔52aよりも小さい。シリコーン部材51は、板材52の各孔52aの縁の全体を覆っている。保持部材13の各孔13aは、シリコーン部材51によって画定されている。チップ部品5は、対応する孔51aの縁と接し、孔52aの縁とは直接的に接しない。各チップ部品5は、シリコーン部材51による弾性及び摩擦によって保持される。
【0056】
図8は、保持部材13が外枠17に収容された状態を示している。図8において、電極枠18及びカソード14などは取り除かれている。保持部材13は、外枠17に収容された状態において、少なくともX軸方向及びY軸方向において固定されている。換言すれば、外枠17に収容された状態において、少なくともX軸方向及びY軸方向における保持部材13の移動が規制されている。
【0057】
図3から図5に示されているように、一対の電極枠18は、外枠17に収容されている。一対の電極枠18は、互いに対向して配置されており、保持部材13を配置する空間を形成している。めっき処理が行われる際には、一対の電極枠18の間に保持部材13が配置される。各電極枠18は、絶縁性を有しており、たとえば樹脂を含んでいる。各電極枠18には、カソード14が配置されている。図9(a)及び図9(b)は、電極枠18と複数のカソード14との位置関係を示している。各電極枠18は、複数のカソード14を位置決めする。
【0058】
図9(a)及び図9(b)は、1つの電極枠18と、当該電極枠18に対応するカソード14を示している。各電極枠18には、複数のスリット61が設けられている。各スリット61は、Z軸方向に延在する。各スリット61は、X軸方向において、互いに平行に配列されている。スリット61の縁61aに沿って、カソード14が配置されている。縁61aは、Z軸方向に延在している。電極枠18に設けられた各カソード14には、不図示の配線が接続されている。これらの配線は、電流制御部40に接続され、電流制御部40を介して電源部30と電気的に接続されている。
【0059】
一対の電極枠18は、可動式であり、駆動部15によって、外枠17及び保持部材13に対してX軸方向に移動する。一対の電極枠18は、駆動部15によって、X軸方向において往復移動する。各カソード14は、保持部材13と電極枠18との相対移動によって、チップ部品5に接触する。
【0060】
本実施形態において、カソード14は、複数のカソード14a,14bを含んでいる。一対のカソード14a,14bは、互いに離間しており、各スリット61に沿って配置されている。各スリット61に対応する一対のカソード14a,14bは、X軸方向において互いに対向している。換言すれば、一対のカソード14a,14bは、X軸方向において互いに向かい合っている。複数のカソード14a,14bは、Z軸方向に延在している。複数のカソード14a,14bの各々は、互いに平行に延在している。
【0061】
図10(a)及び図10(b)は、保持部材13と電極枠18との位置関係を示す図である。図10(b)に示されているように、カソード14は、めっき処理において、複数の被めっき部8a,8bの各々に含まれている第1箇所70aと第2箇所70bとに接触する。第1箇所70aと第2箇所70bとは、チップ部品5において予め決められた互いに異なる部分に位置する。本実施形態において、第1箇所70aは、側面7aに含まれている。第2箇所70bは、側面7bに含まれている。カソード14aは、第1箇所70aに接触し、カソード14bは、第2箇所70bに接触する。
【0062】
カソード14は、対応するチップ部品5に接触する複数のカソード14aと複数のカソード14bを含んでいる。本実施形態において、カソード14は、1つのチップ部品5に対して、2つのカソード14aと2つのカソード14bとを含んでいる。2つのカソード14aは、互いに異なる電極枠18に設けられており、Y軸方向において互いに対向している。2つのカソード14bは、互いに異なる電極枠18に設けられており、Y軸方向において互いに対向している。めっき処理において、2つのカソード14aのうち一方が被めっき部8aの第1箇所70aに接触し、他方が被めっき部8bの第1箇所70aに接触する。めっき処理において、2つのカソード14bのうち一方が被めっき部8aの第2箇所70bに接触し、他方が被めっき部8bの第2箇所70bに接触する。複数のチップ部品5は、カソード14a,14bの一方に時間的に並行して接する。被めっき部8aに接触するカソード14a,14bは第一カソードに相当し、被めっき部8bに接触するカソード14a,14bは第二カソードに相当する。
【0063】
本実施形態において、各カソード14a,14bに対して、Z軸方向に配列された複数のチップ部品5が接触する。同一の列に配列された複数のチップ部品5は、同一のカソード14a,14bに接触する。
【0064】
駆動部15は、チップ部品5とカソード14とが予め決められた位置関係となるように、保持部材13に保持された複数のチップ部品5とカソード14との相対移動を行う。駆動部15は、保持部材13及び一対の電極枠18の少なくとも一方に力を与えることによって、上記相対移動を行う。本実施形態では、駆動部15は、各電極枠18に力を加え、保持部材13に対してX軸方向に当該電極枠18を移動させる。換言すれば、駆動部15は、電極枠18を介してカソード14に力を加え、チップ部品5に対してX軸方向に当該カソード14を移動させる。
【0065】
駆動部15は、上記相対移動によって、チップ部品5の第1箇所70aとカソード14とが互いに接する状態と、第1箇所70aとカソード14とが離間すると共にチップ部品5の第2箇所70bとカソード14とが互いに接する状態とを切り替える。駆動部15は、上記相対移動によって、第1箇所70aとカソード14aとが接する状態と、第2箇所70bとカソード14bとが接する状態とを切り替える。この結果、第1箇所70a及び第2箇所70bのいずれか一方とカソード14とが接する。
【0066】
駆動部15は、たとえば、一対のレール81と動力部82を含んでいる。図5に示されているように、各レール81は、X軸方向に延在しており、対応する電極枠18に係合している。たとえば、各電極枠18は、動力部82から与えられる力によって、対応するレール81に沿ってX軸方向に移動する。動力部82は、たとえば、電極枠18に固定されており、対応するレール81に対してX軸方向に力を与える。この場合、動力部82は、たとえば、対応するレール81に当接して回転力を伝える不図示のモータを有する。
【0067】
駆動制御部20は、駆動部15を制御する。駆動制御部20は、たとえば、1又は複数のマイクロコンピュータと記憶媒体などによって構成されている。駆動制御部20は、ユーザに入力されたデータ及び予め記憶されたデータに基づいて、駆動部15を制御する。たとえば、駆動制御部20は、第2箇所70bとカソード14とが互いに離間していると共に第1箇所70aとカソード14とが接している状態が形成されるように、駆動部15を制御する。駆動制御部20は、第1箇所70aとカソード14とが互いに接している状態においてめっき処理が行われた後に、第1箇所70aとカソード14とが接している状態から第1箇所70aとカソード14とが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード14とが接している状態に切り替わるように、駆動部15を制御する。
【0068】
駆動制御部20は、さらに、第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態においてめっき処理が行われた後に、第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態から第2箇所70bとカソード14とが互いに離間していると共に第1箇所70aとカソード14とが互いに接している状態に切り替わるように、駆動部15を制御してもよい。駆動制御部20は、第1箇所70aとカソード14とが互いに接している状態において第1箇所70aにカソード14aが接し、第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態において第2箇所70bにカソード14bが接するように、駆動部15を制御する。
【0069】
電流制御部40は、上述したように、めっき液Lを介してアノード12から各カソード14に流れる電流の値を制御する。電流制御部40は、パラメータ設定部41を含んでいる。パラメータ設定部41は、各カソード14を流れる電流の値に関するパラメータを、各カソード14の位置に基づいて設定する。たとえば、上記パラメータは、カソード14ごとに設定される。各カソード14に関するパラメータに応じて、各カソード14を流れる電流の値がそれぞれ調整される。パラメータ設定部41は、複数のカソード14を流れる電流の値が等しくなるように、各カソード14を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。パラメータ設定部41は、たとえば、めっき処理の前又は回路Cに電流を流す前に、このパラメータを各カソード14の位置に基づいて設定する。このパラメータは、たとえば、各カソード14に電流を流す回路の抵抗値、アノード12及び各カソード14に付与される電位、及び、アノード12とチップ部品5又は各カソード14との位置関係などの少なくとも一つを含んでいる。アノード12とチップ部品5又は各カソード14との位置関係は、たとえば、アノード12とチップ部品5又は各カソード14との距離を含んでいる。
【0070】
パラメータ設定部41は、カソード14の位置に応じて、このカソード14を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。パラメータ設定部41は、たとえば、配線によって各カソード14に接続されている。パラメータ設定部41は、カソード14aを流れる電流の値に関するパラメータと、カソード14bを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、カソード14aを流れる電流の値に関するパラメータと、カソード14bを流れる電流の値に関するパラメータとを異ならせる。
【0071】
パラメータ設定部41は、めっき処理において、各カソード14を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。パラメータ設定部41は、めっき処理において、たとえば、複数のカソード14を流れる電流の値が等しくなるように、各カソード14を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、各カソード14を流れる電流の値、及び、各カソード14に電流が流れている時間の少なくとも一方に基づいて、パラメータを設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、めっき処理中に上記パラメータを逐次設定する。換言すれば、パラメータ設定部41は、めっき処理中にパラメータを制御する。
【0072】
たとえば、パラメータ設定部41は、カソード14を流れる電流の値に基づいて、このカソード14を流れる電流の値に関するパラメータをフィードバック制御する。たとえば、パラメータ設定部41は、各カソード14を流れる電流の値に基づいて、複数のカソード14を流れる電流の値が一定となるように、各カソード14に関する上記パラメータをフィードバック制御する。
【0073】
たとえば、パラメータ設定部41は、カソード14に電流が流れている時間に基づいて、このカソード14を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、各カソード14に電流が流れている時間が長いほど、複数のカソード14に接続されている回路の抵抗値が大きくなるように、各カソード14における上記パラメータを制御する。めっき処理における経時変化によって、カソード14にもめっき膜が堆積する。したがって、時間の経過に応じて、各カソード14の抵抗値が低下する。たとえば、パラメータ設定部41は、各カソード14へのめっき膜の堆積を考慮して、このカソード14を流れる電流の値が一定になるように、各カソード14に関する上記パラメータをフィードバック制御する。
【0074】
パラメータ設定部41は、カソード14を流れる電流の値、この電流の値の時間積分値、又は、カソード14若しくはその周辺の温度が所定の値を越えている場合に、このカソード14に電流が流れないように上記パラメータを設定してもよい。たとえば、パラメータ設定部41は、ヒューズを含んでいてもよい。たとえば、カソード14を流れる電流の値が所定の値を超えた場合に、このカソード14に電流を流す回路が開くように、ヒューズが配置されていてもよい。
【0075】
パラメータ設定部41は、たとえば、各カソード14に電流を流す回路の抵抗値をそれぞれ設定する。換言すれば、パラメータ設定部41は、たとえば、カソード14ごとの回路における抵抗値をそれぞれ設定する。パラメータ設定部41は、たとえば、同一のチップ部品5に接触するカソード14ごとの回路における抵抗値をそれぞれ設定する。たとえば、複数のカソード14が、図1に示されているようにカソード14aとカソード14bとを含んでいる場合、パラメータ設定部41は、カソード14aに接続されている抵抗の抵抗値と、カソード14aに接続されている抵抗の抵抗値とをそれぞれ設定する。
【0076】
パラメータ設定部41において、たとえば、マイクロコンピュータ等が自動でパラメータを設定してもよい。この場合、パラメータ設定部41は、マイクロコンピュータ及び記憶媒体等から構成される。
【0077】
パラメータ設定部41は、電源部30を制御する信号を出力して、パラメータを設定してもよい。たとえば、パラメータ設定部41からの信号に応じて、電源部30において、カソード14ごとの回路における抵抗値が設定されてもよい。パラメータ設定部41は、電源部30から各カソード14に電気的に付与する電位をパラメータとして、それぞれ設定してもよい。たとえば、パラメータ設定部41は、電源部30において、カソード14aに電気的に接続される端子に付与される電位とカソード14bに電気的に接続される端子に付与される電位をそれぞれ設定してもよい。
【0078】
電流制御部40は、たとえば、電流値取得部42をさらに含んでいる。電流値取得部42は、回路Cを流れる電流の値を取得する。電流値取得部42は、各カソード14を流れる電流の値を取得する。パラメータ設定部41は、たとえば、電流値取得部42において取得された電流の値に基づいて、上記パラメータを制御する。たとえば、パラメータ設定部41は、電流値取得部42において取得された電流の値に応じて、カソード14ごとの回路における抵抗値をフィードバック制御する。たとえば、パラメータ設定部41は、カソード14を流れる電流の値が大きいほど、このカソード14に対応する回路に抵抗値を上げる。
【0079】
パラメータ設定部41において、ユーザが手動でパラメータを設定してもよい。たとえば、パラメータ設定部41において、ユーザが種々の電子部品を接続又は交換し、この結果、パラメータが設定されてもよい。たとえば、パラメータ設定部41において、ユーザが種々の電子部品を接続又は交換し、この結果、カソード14ごとの回路における抵抗値が設定されてもよい。
【0080】
電源部30と電流制御部40とは、一体に構成された一つの装置であってもよいし、別体に構成された異なる装置であってもよい。電源部30は、製造装置1とは別体に構成された外部電源であってもよい。電源部30と電流制御部40とが別体に構成される場合、たとえば、電源部30とパラメータ設定部41とが配線によって電気的に接続される。換言すれば、パラメータ設定部41は、電気的に、電源部30と各カソード14との間に配置される。回路Cを流れる電流は、各カソード14、パラメータ設定部41、電源部30の順で流れる。
【0081】
複数のカソード14の各々は、Z軸方向、すなわち行方向に延在しているカソード14a,14bによって構成されている。パラメータ設定部41は、複数のチップ部品5の配列の列単位でパラメータを設定する。本実施形態の変形例として、パラメータ設定部41は、複数のチップ部品5の配列の行単位でパラメータを設定してもよい。この場合、たとえば、カソード14a,14bは、X軸方向に延在するように構成されてもよい。
【0082】
複数のチップ部品5は、上述したように、図6(a)に示されているチップ部品5a及びチップ部品5bを含んでいる。パラメータ設定部41は、領域R3に配置されているチップ部品5aを流れる電流の値に関するパラメータと、領域R4に配置されているチップ部品5bを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、領域R3に配置されているチップ部品5aを流れる電流の値に関するパラメータと、領域R4に配置されているチップ部品5bを流れる電流の値に関するパラメータとを異ならせる。たとえば、パラメータ設定部41は、領域R3に配置されているチップ部品5aに電流を流す回路の抵抗値が、領域R4に配置されているチップ部品5bに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるようにパラメータを設定する。
【0083】
たとえば、パラメータ設定部41は、X軸方向において両端の列P1に配列されているチップ部品5を流れる電流の値に関するパラメータと、列P1に挟まれている列P2に配列されているチップ部品5を流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。パラメータ設定部41は、X軸方向において両端の列P1に配列されているチップ部品5aを流れる電流の値に関するパラメータと、列P1に挟まれている列P2に配列されているチップ部品5bを流れる電流の値に関するパラメータとを異ならせる。たとえば、パラメータ設定部41は、X軸方向において両端の列P1に配列されているチップ部品5aに電流を流す回路の抵抗値が、列P1に挟まれている列P2に配列されているチップ部品5bに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるようにパラメータを設定する。本実施形態の変形例として、複数のチップ部品5は、チップ部品5が列P2の領域R2に位置しないように、保持部材13に保持されてもよい。
【0084】
たとえば、パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14a,14bを流れる電流の値に関するパラメータと、チップ部品5bに接触するカソード14a,14bを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14a,14bを流れる電流の値に関するパラメータと、チップ部品5bに接触するカソード14a,14bを流れる電流の値に関するパラメータとを異ならせる。たとえば、パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14a,14bに電流を流す回路の抵抗値が、チップ部品5bに接触するカソード14a,14bに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるようにパラメータを設定する。
【0085】
次に、図11から図14(c)を参照して、本実施形態における電子部品の製造方法を説明する。図11は、本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。図12(a)及び図12(b)は、保持部材13が外枠17に収容される工程を説明するための図である。図13(a)及び図13(b)は、保持部材13と電極枠18との相対移動を説明するための平面図である。図14(a)から図14(c)は、保持部材13と電極枠18との相対移動を説明するための部分拡大図である。図14(a)から図14(c)は、図13(a)及び図13(b)における領域R5における部分拡大図である。一点鎖線γ1,γ2は、チップ部品5を基準とした基準位置を示している。
【0086】
まず、チップ部品5を保持部材13に保持させる(工程S1)。保持部材13は、複数のチップ部品5が互いに離間した状態で保持する。工程S1において、チップ部品5は、行列状に配列される。
【0087】
次に、保持部材13を外枠17の内部に収容する(工程S2)。図12(a)及び図12(b)に示されているように、複数のチップ部品5を保持する保持部材13は、矢印α方向への移動によって、外枠17の内部に収容される。矢印αの方向は、Z軸方向と一致している。この際、保持部材13は、一対の電極枠18の間に挿入される。工程S2において、外枠17は、既にめっき液Lに浸かっている。本実施形態の変形例として、工程S2の後に、外枠17が保持部材13と共にめっき液Lに浸されてもよい。たとえば、工程S2において、複数のチップ部品5は、一対のアノード12の対向方向に直交する方向から見て、一対のアノード12の間に配置される。
【0088】
次に、パラメータ設定を設定する(工程S3)。たとえば、パラメータ設定部41が、回路Cにおいて、各カソード14を流れる電流の値に関するパラメータを各カソード14の位置に基づいて設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14に関する上記パラメータと、チップ部品5bに接触するカソード14に関する上記パラメータとをそれぞれ設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14に関する上記パラメータと、チップ部品5bに接触するカソード14に関する上記パラメータとを異ならせる。たとえば、チップ部品5aに接触するカソードに電流を流す回路の抵抗値が、チップ部品5bに接触するカソード14に電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるように、上記パラメータが設定される。上記パラメータは、たとえば、同一のチップ部品5に接触するカソード14ごとに設定される。上記パラメータは、複数のチップ部品5の配列の行単位、又は、列単位で設定されてもよい。カソード14aを流れる電流の値に関するパラメータと、カソード14bを流れる電流の値に関するパラメータとは、それぞれ設定される。
【0089】
次に、チップ部品5の第1箇所70aとカソード14とを接触させる(工程S4)。チップ部品5とカソード14との相対移動を行うことによって、第2箇所70bとカソード14とが離間されると共に第1箇所70aとカソード14とが接触される。この場合、駆動部15が、保持部材13と電極枠18とを相対的に移動させる。たとえば、駆動部15は、電極枠18及び電極枠18に設けられたカソード14に力を与えることによって、上記相対移動を行う。この結果、図13(a)及び図14(a)に示されているように、第1箇所70aとカソード14aとが互いに接している状態が形成される。
【0090】
駆動部15による電極枠18の移動によって、図14(a)に示されているように、各チップ部品5の被めっき部8a,8bにおいて、第1箇所70aとカソード14aとが離間していると共に第1箇所70aとカソード14aとが互いに接触する。したがって、カソード14は、被めっき部8aの第1箇所70aと被めっき部8bの第1箇所70aとに時間的に並列して接触する。本実施形態において、被めっき部8aの第1箇所70aと被めっき部8bの第1箇所70aとは、互いに離間した異なるカソード14aに接触する。
【0091】
次に、第1箇所70aとカソード14とが互いに接している状態において、電流を制御する(工程S5)。具体的には、第1箇所70aとカソード14とが互いに接している状態において、工程S3において設定されたパラメータの下で各カソード14に電流を流す。換言すれば、上記パラメータが各カソード14の位置に基づいて設定されている状態において、各カソード14に電流を流す。たとえば、領域R3におけるカソード14aに対応するパラメータと、領域R4におけるカソード14bに対応するパラメータとが異なる値に設定されている状態において、各カソード14に電流を流す。この結果、工程S3において設定されたパラメータに対応する電流値の電流によって、各カソード14に接しているチップ部品5に対して、めっき処理が行われる。たとえば、第2箇所70bとカソード14とが互いに離間していると共に第1箇所70aとカソード14aとが互いに接している状態において、カソード14aに電位が付与される。この結果、カソード14aを介してチップ部品5の被めっき部8a,8bに電流が流れ、被めっき部8a,8bにめっきが施される。
【0092】
工程S5において、パラメータ設定部41は、各カソード14に電流が流れている時間、及び、各カソード14を流れる電流の値の少なくとも一方に基づいて、上記パラメータを設定する。パラメータ設定部41は、めっき処理において、たとえば、複数のカソード14aを流れる電流の値が一定となるように、各カソード14aに関する上記パラメータを制御する。
【0093】
本実施形態において、工程S5における被めっき部8aと被めっき部8bとのめっき処理は、時間的に並行して行われる。被めっき部8aと被めっき部8bとには、互いに離間した異なるカソード14aによって電位が付与される。被めっき部8aと被めっき部8bと流れる電流の値は、たとえば等しい。当該めっき処理の際には、駆動部15は停止している。
【0094】
次に、チップ部品5の第2箇所70bとカソード14とを接触させる(工程S6)。チップ部品5とカソード14との相対移動を行うことによって、第1箇所70aとカソード14とが離間されると共に第2箇所70bとカソード14とが接触される。この場合、駆動部15が、保持部材13と電極枠18とを相対的に移動させる。たとえば、駆動部15は、電極枠18及び電極枠18に設けられたカソード14に力を与えることによって、上記相対移動を行う。駆動部15は、図13(a)に示されている状態から、図13(b)に示されているように電極枠18及びカソード14を矢印βの方向に移動させる。この結果、カソード14は、図14(a)に示されているように第1箇所70aに接している状態から、図14(b)に示されているように第1箇所70a及び第2箇所70bのいずれにも接していない状態を経て、図14(c)に示されているように第2箇所70bに接触する。図13(b)及び図14(c)に示されているように、第2箇所70bとカソード14bとが互いに接している状態が形成される。
【0095】
駆動部15による電極枠18の移動によって、図14(c)に示されているように、各チップ部品5の被めっき部8a,8bにおいて、第2箇所70bとカソード14bとが互いに離間し、第2箇所70bとカソード14bとが互いに接触する。したがって、カソード14は、被めっき部8aの第2箇所70bと被めっき部8bの第2箇所70bとに時間的に並列して接触する。本実施形態において、被めっき部8aの第2箇所70bと被めっき部8bの第2箇所70bとは、互いに離間した異なるカソード14bに接触する。
【0096】
次に、第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態において、電流を制御する(工程S7)。具体的には、第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態において、工程S3において設定されたパラメータの下で各カソード14に電流を流す。換言すれば、工程S3における上記パラメータが設定された状態において各カソード14に電流を流す。この結果、工程S3において設定されたパラメータに対応する電流値の電流によって、各カソード14に接しているチップ部品5に対して、めっき処理が行われる。たとえば、第1箇所70aとカソード14bとが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード14bとが互いに接している状態において、カソード14bに電位が付与される。この結果、カソード14bを介してチップ部品5の被めっき部8a,8bに電流が流れ、被めっき部8a,8bにめっきが施される。
【0097】
工程S7において、パラメータ設定部41は、各カソード14に電流が流れている時間、及び、各カソード14を流れる電流の値の少なくとも一方に基づいて、上記パラメータを設定する。パラメータ設定部41は、めっき処理において、たとえば、複数のカソード14bを流れる電流の値が一定となるように、各カソード14bに関する上記パラメータを制御する。
【0098】
本実施形態において、工程S7において被めっき部8aと被めっき部8bとのめっき処理は、時間的に並行して行われる。被めっき部8aと被めっき部8bとには、互いに離間した異なるカソード14bによって電位が付与される。被めっき部8aと被めっき部8bとに流れる電流の値は、たとえば等しい。当該めっき処理の際には、駆動部15は停止している。
【0099】
工程S4、工程S5、工程S6、及び、工程S7において、アノード12からカソード14に電流が常に流されてもよいし、工程S5及び工程S7においてのみカソード14に電流が流されてもよい。工程S4及び工程S5は、工程S6及び工程S7と逆の順序で行われてもよい。工程S3は、工程S5又は工程S7の前であればいつ行われてもよい。工程S3は、工程S5の前と工程S7の前とで2回行われてもよい。
【0100】
次に、図15から図19を参照して、本実施形態の変形例における製造装置1の電極枠及びカソードの構成について説明する。本変形例は、概ね、上述した実施形態の製造装置と類似又は同じである。本変形例は、一対の電極枠18の代わりに一対の電極枠91が用いられている点、及び、複数のカソード14の代わりに複数のカソード92が用いられている点で、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。図15は、一対の電極枠91の斜視図である。図16は、一対の電極枠91のうち一方が取り外された状態における電極枠91の斜視図である。図17は、一対の電極枠91と複数のカソード92との位置関係を示す図である。図18は、一対の電極枠91及び複数のカソード92と保持部材13との位置関係を示す図である。図19は、本変形例においてチップ部品5とカソード92とが接触している状態を示す部分拡大図である。
【0101】
一対の電極枠91は、一対の電極枠18と同様に、外枠17に収容されている。図15に示されているように、一対の電極枠91は、互いに対向して配置されており、保持部材13を配置する空間を形成している。めっき処理が行われる際には、一対の電極枠91の間に保持部材13が配置される。各電極枠91は、絶縁性を有しており、たとえば樹脂を含んでいる。図16及び図17に示されているように、各電極枠91には、複数のカソード92が配置されている。各電極枠91は、複数のカソード92を位置決めする。
【0102】
図16は、1つの電極枠91と、当該電極枠91に対応するカソード92を示している。各電極枠91には、複数の貫通孔93が設けられている。各貫通孔93は、X軸及びY軸方向に沿って、行列状に配列されている。複数のカソード92は、X軸及びY軸方向に沿って、行列状に互いに配列されている。複数のカソード92は、互いに離間している。複数のカソード92は、複数の貫通孔93に挿入されている。各カソード92は、対応する貫通孔93に配置されている。各カソード92は、一対の電極枠91の外側から、保持部材13を配置する空間に向かって挿入されている。換言すれば、各カソード92は、各貫通孔93から、保持部材13を配置する空間に突出している。たとえば、各カソード92には、一対の電極枠91の外側において不図示の配線が接続されている。これらの配線が電流制御部40に接続され、電流制御部40を介して電源部30と電気的に接続されている。各カソード92に接続される配線は、一対の電極枠91の内部において引き回されていてもよい。
【0103】
一対の電極枠91は、電極枠18と同様に、可動式であり、駆動部15によって、外枠17及び保持部材13に対してX軸方向に移動する。一対の電極枠91は、駆動部15によって、X軸方向において往復移動する。各カソード92は、保持部材13と電極枠91との相対移動によって、チップ部品5に接触する。
【0104】
カソード92は、複数対のカソード92a,92bを含んでいる。一対のカソード92aとカソード92bとは、互いに離間しており、互いに異なる貫通孔93に配置されている。一対のカソード92a,92bは、X軸方向において互いに対向している。換言すれば、一対のカソード92a,92bは、X軸方向において互いに向かい合っている。各カソード92a,92bは、Y軸方向に延在している。複数のカソード92a,92bの各々は、互いに平行にY軸方向に延在している。
【0105】
図18及び図19に示されているように、カソード92は、めっき処理において、複数の被めっき部8a,8bの各々に含まれている第1箇所70aと第2箇所70bとに接触する。カソード92aは、第1箇所70aに接触し、カソード92bは、第2箇所70bに接触する。
【0106】
カソード92は、対応するチップ部品5に接触する複数のカソード92aと複数のカソード92bを含んでいる。カソード92は、1つのチップ部品5に対して、2つのカソード92aと2つのカソード92bとを含んでいる。2つのカソード92aは、互いに異なる電極枠91に設けられており、Y軸方向において互いに対向している。2つのカソード92bは、互いに異なる電極枠91に設けられており、Y軸方向において互いに対向している。めっき処理において、2つのカソード92aのうち一方が被めっき部8aの第1箇所70aに接触し、他方が被めっき部8bの第1箇所70aに接触する。めっき処理において、2つのカソード92bのうち一方が被めっき部8aの第2箇所70bに接触し、他方が被めっき部8bの第2箇所70bに接触する。複数のチップ部品5は、カソード92a,92bの一方に時間的に並行して接する。被めっき部8aに接触するカソード92a,92bは第一カソードに相当し、被めっき部8bに接触するカソード92a,92bは第二カソードに相当する。
【0107】
駆動部15は、上記相対移動によって、チップ部品5の第1箇所70aとカソード92aとが互いに接する状態と、第1箇所70aとカソード92aとが離間すると共にチップ部品5の第2箇所70bとカソード92bとが互いに接する状態とを切り替える。この結果、第1箇所70aと第2箇所70bとのいずれか一方とカソード92とが接する。
【0108】
駆動制御部20は、第2箇所70bとカソード92aとが互いに離間していると共に第1箇所70aとカソード92bとが接している状態が形成されるように、駆動部15を制御する。駆動制御部20は、第1箇所70aとカソード92aとが互いに接している状態においてめっき処理が行われた後に、第1箇所70aとカソード92aとが接している状態から第1箇所70aとカソード92aとが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード92bとが接している状態に切り替わるように、駆動部15を制御する。
【0109】
駆動制御部20は、さらに、第2箇所70bとカソード92bとが互いに接している状態においてめっき処理が行われた後に、第2箇所70bとカソード92bとが互いに接している状態から第2箇所70bとカソード92bとが互いに離間していると共に第1箇所70aとカソード92aとが互いに接している状態に切り替わるように、駆動部15を制御してもよい。
【0110】
本変形例において、パラメータ設定部41は、各カソード92を流れる電流の値に関するパラメータを、各カソード92の位置に基づいて設定する。たとえば、パラメータは、カソード92ごとに設定される。各カソード92に関するパラメータに応じて、各カソード92を流れる電流の値がそれぞれ調整される。パラメータ設定部41は、複数のカソード92を流れる電流の値が等しくなるように、各カソード92を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。パラメータ設定部41は、たとえば、めっき処理の前又は回路Cに電流を流す前に、このパラメータを各カソード92の位置に基づいて設定する。パラメータ設定部41は、たとえば、配線によって各カソード92に接続されている。パラメータ設定部41は、たとえば、カソード92ごとにパラメータを設定する。
【0111】
本変形例においても、パラメータ設定部41は、上述した実施形態のように、めっき処理において、各カソード92を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。パラメータ設定部41は、めっき処理において、たとえば、複数のカソード92を流れる電流の値が等しくなるように、各カソード92を流れる電流の値に関するパラメータを設定する。たとえば、パラメータ設定部41は、各カソード92を流れる電流の値、及び、各カソード92に電流が流れている時間の少なくとも一方に基づいて、パラメータを制御する。
【0112】
パラメータ設定部41は、たとえば、各カソード92に電流を流す回路の抵抗値をそれぞれ設定する。換言すれば、パラメータは、たとえば、カソード92ごとの回路における抵抗値を含んでいる。パラメータ設定部41は、たとえば、これらの抵抗値をそれぞれ設定する。たとえば、複数のカソード92が、カソード92aとカソード92bとを含んでいる場合、パラメータ設定部41は、カソード92aに接続されている抵抗の抵抗値と、カソード92aに接続されている抵抗の抵抗値とをそれぞれ設定する。
【0113】
電源部30と電流制御部40とが別体に構成される場合、パラメータ設定部41は、電気的に、電源部30と各カソード92との間に配置される。回路Cを流れる電流は、各カソード92、パラメータ設定部41、電源部30の順で流れる。
【0114】
パラメータ設定部41は、たとえば、カソード92ごとにパラメータを設定する。複数のカソード92の各々は、行列状に配列されている。パラメータ設定部41は、複数のチップ部品5の配列の列単位又は行単位でパラメータを設定する。
【0115】
たとえば、パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード92a,92bを流れる電流の値に関するパラメータと、チップ部品5bに接触するカソード92a,92bを流れる電流の値に関するパラメータとを異ならせる。パラメータ設定部41は、たとえば、チップ部品5aに接触するカソード92a,92bに電流を流す回路の抵抗値が、チップ部品5bに接触するカソード92a,92bに電流を流す回路の抵抗値よりも高くなるようにパラメータを設定する。
【0116】
次に、本実施形態及び変形例における電子部品の製造方法及び製造装置による作用効果について説明する。
【0117】
図20に示されているように、めっき処理においては、たとえば、めっき液Lを介して、アノード12と保持部材13とは互いに対向して配置される。この場合、保持部材13に保持された各チップ部品5及び各チップ部品5に接触させるカソード14,92に向かってアノード12から電流が流れる。複数の矢印Eは、電極枠18,91に設けられた全てのカソード14,92が電気的に接続されている場合において電流が流れる方向を示している。矢印Eが密集しているほど、電流密度が大きい。すなわち、矢印Eが密集している部分には、大きい電流が流れる。このように、チップ部品5及びカソード14,92の配置の違いに応じて、異なる電流値の電流がめっき対象物を流れ得る。また、めっき処理における経時変化によって、チップ部品5だけでなくカソード14,92にもめっき膜が堆積する。したがって、時間の経過に応じて、各カソード14の抵抗値が低下する。
【0118】
製造装置1は、パラメータ設定部41を備えている。パラメータ設定部41は、各カソード14,92を流れる電流の値に関するパラメータを、各カソード14,92の位置、各カソード14,92に電流が流れている時間、及び、各カソード14,92を流れる電流の値の少なくとも一つに基づいて設定する。パラメータ設定部41が各カソード14,92の位置に基づいて上記パラメータを設定する場合、チップ部品5の配置に応じて異なる電流値の電流がチップ部品5を流れることが、抑制され得る。パラメータ設定部41が、めっき処理において、各カソード14,92に電流が流れている時間、及び、各カソード14,92を流れる電流の値の少なくとも一方に基づいて、パラメータを制御する場合、めっき処理中においても、電流の値が適切に調整され得る。したがって、電流が過剰に流れることが抑制され得る。
【0119】
めっき処理に要する時間を短縮するために、アノード12からカソード14,92に流れる電流の値を向上させる事が考えられる。この場合、アノード12の不導体化を回避するために、Y軸方向におけるアノード12の投射面積は、チップ部品5に接続されるカソード14が配置される領域のY軸方向における投射面積よりも大きく構成される。このような構成では、保持部材13の外周に位置するチップ部品5には、保持部材13の中央に位置するチップ部品5よりも大きな電流が流れる。すなわち、上述した領域R3において保持されているチップ部品5aには、領域R4において保持されているチップ部品5bよりも大きな電流が流れる。チップ部品5aに接触するカソード14,92には、チップ部品5bに接触するカソード14,92よりも大きな電流が流れる。したがって、チップ部品5b及びチップ部品5bに接触するカソード14,92には、電流が過剰に流れるおそれがある。
【0120】
パラメータ設定部41は、チップ部品5aに接触するカソード14,92を流れる電流の値に関するパラメータと、チップ部品5bに接触するカソード14,92を流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。この場合、領域R3に位置するチップ部品5aに流れる電流の値と、領域R4に位置するチップ部品5bに流れる電流の値とが、均一に制御され得る。
【0121】
パラメータ設定部41は、同一のチップ部品5に接触するカソード14,92ごとに設定される。この場合、各チップ部品5に流れる電流の値がより細かく制御される。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0122】
保持部材13は、複数のチップ部品5が行列状に配列された状態で各チップ部品5を保持している。この場合、より多くのチップ部品5に同時にめっき処理を施すことができる。
【0123】
パラメータ設定部41は、複数のチップ部品5の配列の行単位、又は、列単位で、上記パラメータを設定する。この場合、各カソード14,92に流れる電流の値がより細かく設定され得る。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0124】
保持部材13は、各チップ部品5において互いに離間している被めっき部8a,8bが露出するように各チップ部品5を保持している。カソード14a,92aは、被めっき部8aに接触する。カソード14b,92bは、被めっき部8bに接触する。この場合、一対の被めっき部を同時にめっき処理する構成においても、各カソード14,92に流れる電流の値をより細かく設定され得る。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0125】
パラメータ設定部41は、カソード14a,92aを流れる電流の値に関するパラメータと、カソード14b,92bを流れる電流の値に関するパラメータとをそれぞれ設定する。この場合、各チップ部品5に流れる電流の値がより細かく制御される。したがって、電流が過剰に流れることがさらに抑制され得る。
【0126】
複数のカソード14,92は、図3に示されているように、一対のアノード12の対向方向に直交する方向から見て、一対のアノード12の間に配置されている。この場合、めっき処理の時間が短縮される。
【0127】
各チップ部品5の所定箇所にカソード14,92を接触させてめっき処理を行う場合、チップ部品5とカソード14,92とが接している箇所は、カソード14,92が障害となる。カソード14,92が接していない箇所に比べて、めっきが付与され難い。したがって、所望の厚さにめっき処理を施すことは困難な場合があった。たとえば、均一の厚さにめっき処理を施すことは、困難であった。
【0128】
製造装置1は、駆動部15をさらに備えている。駆動部15は、チップ部品5とチップ部品5に対応するカソード14,92とが予め決められた位置関係となるように、チップ部品5とカソード14,92との相対移動を行う。駆動部15は、この相対移動によって、チップ部品5の第1箇所70aとカソード14a,92aとが互いに接する状態と、第1箇所70aとカソード14a,92aとが互いに離間すると共にチップ部品5のうち第2箇所70bとカソード14b,92bとが互いに接する状態とを切り替える。このため、第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接した状態におけるめっき処理においてめっきが付与され難かった第1箇所70aにも、第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接した状態におけるめっき処理において所望の厚さにめっきが付与され得る。したがって、クラックの発生が抑制されながら、めっき処理が所望の厚さに施され得る。換言すれば、第1箇所70aと第2箇所70bとにおいて、均一の厚さにめっき処理が施され得る。
【0129】
より詳細には、工程S5において第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接している状態においてチップ部品5にめっき処理が行われた後に、工程S6においてカソード14,92とチップ部品5との相対移動が行われる。その後、工程S7において第1箇所70aとカソード14,92とが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード14とが互いに接している状態において、めっき処理が行われる。このため、工程S5においてめっきが付与され難かった第1箇所70aにも、工程S7において所望の厚さにめっきが付与され得る。したがって、たとえばバレルを用いた場合に比べてクラックの発生が抑制されると共に、所望の厚さのめっき処理が施され得る。
【0130】
バレルを用いためっき処理では、複数のめっき対象物だけでなく、複数のめっきメディアもバレル内に配置される。このため、バレルを用いためっき処理は、めっき処理後に、めっきメディアを取り除く作業を要し、生産スループットが向上され難い。しかし、上述した製造方法では、バレルを用いためっき処理に比べて、生産スループットが向上する。
【0131】
上述した実施形態における製造方法は、複数のチップ部品5が互いに離間した状態において、各チップ部品5が保持部材13に保持させる工程S1を有している。工程S6において、カソード14,92と保持部材13との相対移動を行うことによって、第1箇所70aとカソード14,92とが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接触している。このため、複数のチップ部品5に対して、所望の厚さのめっき処理が施され得る。この結果、生産スループットが向上し得る。
【0132】
チップ部品5に電位を付与するカソード14は、互いに対向するカソード14a,14bを含んでいる。チップ部品5に電位を付与するカソード92は、互いに対向するカソード92a,92bを含んでいる。第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接している状態において、第1箇所70aとカソード14a,92aとが互いに接している。第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接している状態において、第2箇所70bとカソード14b,92bとが互いに接している。カソード14a,92aとカソード14b,92bとが互いに対向しているため、チップ部品5とカソード14,92とが接する位置を容易に切り替えることができる。たとえば、カソード14,92とチップ部品5とをX軸方向に移動させるだけで、チップ部品5とカソード14,92とが接する位置を容易に切り替えることができる。
【0133】
カソード14a,14bは、カソード14a,14bが互いに対向するX軸方向と交差するZ軸方向に延在している。このため、複数のチップ部品5に対して容易にめっき処理を行うことができる。たとえば、複数のチップ部品5を容易に同一のカソードに接触させることができる。この結果、めっき処理が時間的に並列して行われ、生産スループットが向上し得る。
【0134】
チップ部品5は、複数の被めっき部8a,8bを有している。複数の被めっき部8a,8bの各々は、第1箇所70a及び第2箇所70bを含んでいると共に互いに離間していている。工程S5において、各被めっき部8a,8bの第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接している状態において、カソード14,92に電位を付与することによって、チップ部品5にめっき処理が行われる。工程S6において、各被めっき部8a,8bの第1箇所70aとカソード14,92とが互いに離間していると共に各被めっき部8a,8bの第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接している状態において、カソード14,92に電位を付与することによって、めっき処理が行われる。このため、互いに離間している複数の被めっき部8a,8bに並行してめっき処理が行われる。したがって、めっき処理の時間が短縮される。
【0135】
チップ部品5は、互いに対向する一対の端面6と、一対の端面6の間に位置している側面7とを有している。第1箇所70a及び第2箇所70bは、側面7に含まれている。このため、めっきが付与されにくい端面6にカソード14,92を接触させずに、めっき処理が行われる。したがって、各端面6と側面7との間における、めっきの厚さのバラツキが低減され得る。
【0136】
工程S6において、カソード14,92に力を与えることによって相対移動が行われる。チップ部品5に力を与えずに上記相対移動が行われるため、めっき対象物に加わるダメージが低減される。
【0137】
製造装置1は、保持部材13を備えている。保持部材13は、複数のチップ部品5が互いに離間している状態において当該複数のチップ部品5を保持する。駆動部15は、カソード14,92と保持部材13との相対移動によって、チップ部品5の第1箇所70aとカソード14とが互いに接する状態と、第1箇所70aとカソード14,92が離間すると共に第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接する状態とを切り替える。このため、複数のチップ部品5に対して、所望の厚さのめっき処理が施され得る。この結果、生産スループットが向上し得る。
【0138】
駆動部15を制御する駆動制御部20を備えている。駆動制御部20は、第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接している状態においてめっき処理が行われた後に、第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接している状態から第1箇所70aとカソード14,92とが互いに離間していると共に第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接している状態に切り替わるように、駆動部15を制御する。このため、第1箇所70aとカソード14,92とが接した状態のめっき処理においてめっきが付与され難かった第1箇所70aにも、所望の厚さにめっきが付与され得る。
【0139】
駆動部15は、相対移動によって、各々が第1箇所70a及び第2箇所70bを含んでいる複数の被めっき部8a,8bにおいて、各被めっき部8a,8bにおける第1箇所70aとカソード14,92とが互いに接する状態と、各被めっき部8a,8bにおける第2箇所70bとカソード14,92とが互いに接する状態とを切り替える。複数の被めっき部8a,8bは、互いに離間してチップ部品5に含まれている。このため、互いに離間している複数の被めっき部8a,8bに並行してめっき処理が行われ得る。
【0140】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0141】
たとえば、上述した実施形態及び変形例において、チップ部品5をめっき処理することによって形成される電子部品としてコンデンサ部品を例にして説明したが、本発明はこれに限らない。たとえば、上記した製造方法及び製造装置は、積層コイル部品、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、又は積層複合部品などの他の電子部品にも適用できる。
【0142】
上述した実施形態において、チップ部品5の第1箇所70aと第2箇所70bとは、チップ部品5に電位を付与する際に、それぞれ、カソード14における異なるカソード14a,14bに接した。しかし、チップ部品5の第1箇所70aと第2箇所70bは、カソード14とチップ部品5との相対移動によって、チップ部品5に電位を付与する際に、カソード14の同一のカソードに接してもよい。
【0143】
上述した実施形態において、同一の列に配列された複数のチップ部品5は、同一のカソード14a,14bに接触した。しかし、複数のチップ部品5は、チップ部品5ごとに異なるカソード14a,14bに接触してもよい。複数のチップ部品5は、被めっき部ごとに異なるカソード14a,14bに接触してもよい。
【0144】
上述した実施形態及び変形例において、駆動部15による相対移動によって、カソード14,92は、第1箇所70aと第2箇所70bとに1回ずつ接触する例を説明した。しかし、駆動部15による相対移動を繰り返すことによって、カソード14,92は、1回のめっき処理において、第1箇所70aと第2箇所70bとに複数回ずつ接触してもよい。
【0145】
上述した実施形態及び変形例において、駆動部15は、電極枠18のみに力を与えることによって、電極枠18をX軸方向に移動させた。しかし、駆動部15は、チップ部品5及び電極枠18の少なくとも一方に力を与えることによって、当該少なくとも一方をX軸方向に移動させてもよい。駆動部15は、工程S4において、1つの方向でなく、2つの方向にチップ部品5及び電極枠18の少なくとも一方を移動させてもよい。駆動部15は、工程S4において、チップ部品5を回転させ、第1箇所70aと第2箇所70bとを同一のカソードに接触させてもよい。
【0146】
上述した実施形態及び変形例において、めっき処理は、一対のアノード12を用いて行われた。しかし、めっき処理は、1つのアノード12によって行われてもよい。1つのアノード12とチップ部品5との配置の変更によって、被めっき部8aと被めっき部8bとに対してそれぞれ異なるタイミングでめっき処理が行われてもよい。
【0147】
上述した実施形態及び変形例において、めっき処理において、チップの焼結電極にめっきが付与された。しかし、チップが焼結電極上に設けられた樹脂電極層をさらに含み、上記めっき処理において樹脂電極層にめっきが付与されてもよい。この場合、各被めっき部8a,8bは、樹脂電極層を含む。この樹脂電極層は、たとえば、金属成分としてCu、樹脂成分として例えばエポキシ系又はフェノール系等を含む熱硬化型の導電性樹脂層である。
【符号の説明】
【0148】
1…製造装置、5,5a,5b…チップ部品、8a,8b…被めっき部、12…アノード、13…保持部材、14,14a,14b,92,92a,92b…カソード、15…駆動部、41…パラメータ設定部、70a…第1箇所、70b…第2箇所、C…回路、L…めっき液、R3,R4…領域。
図1
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