(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電力供給回路
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H02J1/00 309R
(21)【出願番号】P 2021051794
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】三谷 学
(72)【発明者】
【氏名】篠原 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】北 章徳
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184333(JP,A)
【文献】特開2020-162353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00-1/16
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の電源を有する電源回路と、
少なくとも、第1許容電流の第1コンデンサを有する第1負荷と、前記第1許容電流よりも大きな第2許容電流の第2コンデンサを有する第2負荷とが並列に接続される負荷回路と、
前記電源から前記第1負荷及び前記第2負荷に電力を供給して前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサを充電するときのプリチャージ電流を調整するプリチャージ回路と、
前記プリチャージ回路を制御する制御部と、
を備える、電力供給回路であって、
前記制御部は、
充電時に前記第1負荷及び前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を、前記第1許容電流以下とするように前記プリチャージ回路を制御する第1プリチャージ制御と、
前記第1プリチャージ制御の後に、前記第1負荷に流れるプリチャージ電流を前記第1許容電流以下とするとともに、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を前記第2許容電流以下であって、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流の最大値を前記第1許容電流よりも大きくするように前記プリチャージ回路を制御する第2プリチャージ制御と、
を行う、電力供給回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給回路であって、
前記制御部は、前記第1プリチャージ制御の後に、前記第1負荷に流れるプリチャージ電流が前記第1許容電流に対して所定の割合以下となるとともに、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流が前記第2許容電流に対して所定の割合以下となったときに、前記第2プリチャージ制御を行う、電力供給回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれコンデンサを有する複数の負荷に電力を供給する電力供給回路に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、1つの高電圧バッテリからインバータとコンバータの2つの負荷に電力を供給する車両用電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の車両用電源装置では、バッテリ側にプリチャージ回路が設けられているため、コンデンサの充電時にそれぞれの負荷に印加される電圧は等しい。そのため、それぞれの負荷のコンデンサの容量が異なる場合、容量が小さいコンデンサの許容電流にあわせて、それぞれの負荷に印加される電圧を設定する必要があり、容量が大きなコンデンサの充電に時間を要す問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、コンデンサの充電時間の短縮化を図ることができる電力供給回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、1つ以上の電源を有する電源回路と、少なくとも、第1許容電流の第1コンデンサを有する第1負荷と、前記第1許容電流よりも大きな第2許容電流の第2コンデンサを有する第2負荷とが並列に接続される負荷回路と、前記電源から前記第1負荷及び前記第2負荷に電力を供給して前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサを充電するときのプリチャージ電流を調整するプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路を制御する制御部と、を備える、電力供給回路であって、前記制御部は、充電時に前記第1負荷及び前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を、前記第1許容電流以下とするように前記プリチャージ回路を制御する第1プリチャージ制御と、前記第1プリチャージ制御の後に、前記第1負荷に流れるプリチャージ電流を前記第1許容電流以下とするとともに、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を前記第2許容電流以下であって、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流の最大値を前記第1許容電流よりも大きくするように前記プリチャージ回路を制御する第2プリチャージ制御と、を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コンデンサの充電時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】プリチャージ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】プリチャージ制御処理中のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
[電力供給回路の構成]
図1は、本実施形態の電力供給回路10の回路図である。電力供給回路10は、電源回路12、プリチャージ回路14、送電バス16及び負荷回路18を有する。
【0010】
電源回路12は、第1バッテリ20、第2バッテリ22、第1電源側接続/遮断部24及び第2電源側接続/遮断部26を有している。本実施形態の第1バッテリ20及び第2バッテリ22のバッテリ電圧は共にE[V]である。
【0011】
第1電源側接続/遮断部24は、第1バッテリ20と送電バス16との間に設けられている。第1電源側接続/遮断部24は、正極配線上に設けられた正極スイッチ28、負極配線上に設けられた負極スイッチ30を有している。また、正極配線上に、正極スイッチ28と直列にヒューズ32が設けられている。正極スイッチ28及び負極スイッチ30の少なくとも一方がオフのときに、第1バッテリ20と送電バス16とが電気的に遮断される。正極スイッチ28及び負極スイッチ30の両方がオンのときに、第1バッテリ20と送電バス16とが電気的に接続される。
【0012】
第2電源側接続/遮断部26は、第2バッテリ22と送電バス16との間に設けられている。第2電源側接続/遮断部26は、正極配線上に設けられた正極スイッチ34、負極配線上に設けられた負極スイッチ36を有している。また、正極配線上に、正極スイッチ34と直列にヒューズ38が設けられている。正極スイッチ34及び負極スイッチ36の少なくとも一方がオフのときに、第2バッテリ22と送電バス16とが電気的に遮断される。正極スイッチ34及び負極スイッチ36の両方がオンのときに、第2バッテリ22と送電バス16とが電気的に接続される。
【0013】
プリチャージ回路14は、第1電源側接続/遮断部24の負極スイッチ30と並列に設けられた第1プリチャージスイッチ40と、第2電源側接続/遮断部26の負極スイッチ36と並列に設けられた第2プリチャージスイッチ42を有している。また、第1プリチャージスイッチ40と直列にプリチャージ抵抗44が設けられ、第2プリチャージスイッチ42と直列にプリチャージ抵抗46が設けられている。プリチャージ抵抗44及びプリチャージ抵抗46の抵抗値は共にR[Ω]である。
【0014】
第1電源側接続/遮断部24の正極スイッチ28がオンであって、第1プリチャージスイッチ40がオンであるときに、第1バッテリ20と送電バス16とが、プリチャージ回路14を経由して電気的に接続される。第2電源側接続/遮断部26の正極スイッチ34がオンであって、第2プリチャージスイッチ42がオンであるときに、第2バッテリ22と送電バス16とが、プリチャージ回路14を経由して電気的に接続される。このとき、第1電源側接続/遮断部24の負極スイッチ30、及び、第2電源側接続/遮断部26の負極スイッチ36はオフにされている。
【0015】
負荷回路18は、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50、第3負荷デバイス52、第1負荷側接続/遮断部54、第2負荷側接続/遮断部56及び第3負荷側接続/遮断部58を有している。
【0016】
第1負荷デバイス48はコンデンサ60、第2負荷デバイス50はコンデンサ62、第3負荷デバイス52はコンデンサ64を有している。第1負荷デバイス48のコンデンサ60の容量C1は、第2負荷デバイス50のコンデンサ62の容量C2、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64の容量C2よりも小さく、コンデンサ60の充電時の許容電流はImax_1[A]である。
【0017】
なお、第1負荷デバイス48は本発明の第1負荷に相当し、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52は本発明の第2負荷に相当する。また、コンデンサ60は本発明の第1コンデンサに相当し、コンデンサ62及びコンデンサ64は本発明の第2コンデンサに相当する。
【0018】
第2負荷デバイス50のコンデンサ62の容量C2と第3負荷デバイス52のコンデンサ64の容量C2は等しく、コンデンサ62及びコンデンサ64の充電時の許容電流はImax_2[A]である。
【0019】
第1負荷側接続/遮断部54は、送電バス16と第1負荷デバイス48との間に設けられている。第1負荷側接続/遮断部54は、正極配線上に設けられた正極スイッチ66と、正極スイッチ66と直列に設けられたヒューズ68を有している。第1負荷側接続/遮断部54と第1負荷デバイス48との間の正極配線上には電流計70が設けられている。正極スイッチ66がオフのときに、送電バス16と第1負荷デバイス48とが電気的に遮断される。正極スイッチ66がオンのときに、送電バス16と第1負荷デバイス48とが電気的に接続される。
【0020】
第2負荷側接続/遮断部56は、送電バス16と第2負荷デバイス50との間に設けられている。第2負荷側接続/遮断部56は、正極配線上に設けられた正極スイッチ72と、正極スイッチ72と直列に設けられたヒューズ74を有している。第2負荷側接続/遮断部56と第2負荷デバイス50との間の正極配線上には電流計76が設けられている。正極スイッチ72がオフのときに、送電バス16と第2負荷デバイス50とが電気的に遮断される。正極スイッチ72がオンのときに、送電バス16と第2負荷デバイス50とが電気的に接続される。
【0021】
第3負荷側接続/遮断部58は、送電バス16と第3負荷デバイス52との間に設けられている。第3負荷側接続/遮断部58は、正極配線上に設けられた正極スイッチ78と、正極スイッチ78と直列に設けられたヒューズ80を有している。第3負荷側接続/遮断部58と第2負荷デバイス50との間の正極配線上には電流計82が設けられている。正極スイッチ78がオフのときに、送電バス16と第3負荷デバイス52とが電気的に遮断される。正極スイッチ78がオンのときに、送電バス16と第3負荷デバイス52とが電気的に接続される。
【0022】
送電バス16は、電源回路12と負荷回路18とを電気的に接続し、電源回路12から負荷回路18に電力を供給する。送電バス16は、第1バッテリ20と第2バッテリ22と並列に接続する。また、送電バス16は、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52を並列に接続する。
【0023】
図2は、電力供給回路10のブロック図である。電力供給回路10は、制御部84を有している。制御部84は、第1電源側接続/遮断部24の正極スイッチ28及び負極スイッチ30、並びに、第2電源側接続/遮断部26の正極スイッチ34及び負極スイッチ36のオンとオフとを切り替える制御を行う。また、制御部84は、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40及び第2プリチャージスイッチ42のオンとオフとを切り替える制御を行う。さらに、制御部84は、第1負極側接続/遮断部54の正極スイッチ66、第2負極側接続/遮断部56の正極スイッチ72、及び、第3負極側接続/遮断部58の正極スイッチ78のオンとオフとを切り換える制御を行う。
【0024】
制御部84は、図示しない演算部及び判定部を有する。演算部及び判定部は、例えば処理回路によって実現され得る。
【0025】
処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成され得る。また、処理回路が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
【0026】
なお、処理回路が、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)によって構成されるようにしてもよい。この場合、不図示の記憶部に記憶されているプログラムがプロセッサによって実行されることによって処理回路が実現され得る。
【0027】
上記では、電力供給回路10が第1バッテリ20及び第2バッテリ22の2つのバッテリを有する例を示したが、バッテリの数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、上記では、電力供給回路10が第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52の3つの負荷デバイスを有する例を示したが、負荷デバイスの数は2つ以上であればよい。ただし、本実施形態のように、バッテリの数が負荷デバイスの数よりも少ない場合は、プリチャージ回路14を電源回路12側に設ける方が、電力供給回路10の軽量化の点で有効である。
【0028】
また、電力供給回路10は、第1バッテリ20及び第2バッテリ22に代えて、又は、第1バッテリ20及び第2バッテリ22に加えて、大容量コンデンサを有するようにしてもよい。また、送電バス16は、回路保護のためのヒューズやスイッチを含んでいてもよい。
【0029】
[プリチャージ制御処理]
図3は、制御部84において行われるプリチャージ制御処理の流れを示すフローチャートである。プリチャージ制御処理により、第1負荷デバイス48のコンデンサ60、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64が充電される。プリチャージ制御処理は、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52の起動時に実行される。第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52が起動される前は、第1電源側接続/遮断部24の正極スイッチ28及び負極スイッチ30、並びに、第2電源側接続/遮断部26の正極スイッチ34及び負極スイッチ36のそれぞれはオフに制御されている。また、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40及び第2プリチャージスイッチ42のそれぞれはオフに制御されている。さらに、第1負荷側接続/遮断部54の正極スイッチ66、第2負荷側接続/遮断部56の正極スイッチ72、及び、第3負荷側接続/遮断部58の正極スイッチ78のそれぞれはオフに制御されている。
【0030】
ステップS1において、制御部84は、第1電源側接続/遮断部24の正極スイッチ28、第2電源側接続/遮断部26の正極スイッチ34、第1負荷側接続/遮断部54の正極スイッチ66、第2負荷側接続/遮断部56の正極スイッチ72、及び、第3負荷側接続/遮断部58の正極スイッチ78をオンに制御して、ステップS2へ移行する。
【0031】
ステップS2において、制御部84は、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40をオンに制御して、ステップS3へ移行する。ステップS2の制御処理は、本発明の第1プリチャージ制御に相当する。
【0032】
ステップS3において、制御部84は、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40をオンに制御してから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過した場合にはステップS4へ移行し、所定時間経過していない場合にはステップS3の処理を繰り返す。
【0033】
ステップS4において、制御部84は、プリチャージ回路14の第2プリチャージスイッチ42をオンに制御して、ステップS5へ移行する。ステップS4の制御処理は、本発明の第2プリチャージ制御に相当する。
【0034】
ステップS5において、制御部84は、第1負荷デバイス48のコンデンサ60、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64の充電が完了したか否かを判定する。充電が完了した場合にはプリチャージ制御処理を終了し、充電が完了していない場合にはステップS5の処理を繰り返す。
【0035】
[プリチャージ制御処理中のタイムチャート]
図4は、プリチャージ制御処理中のタイムチャートである。
図4の上側は、各スイッチのオン、オフの制御のタイムチャートを示す。
図4の下側は、電流計70、76、82のそれぞれが検出した第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のそれぞれに流れるプリチャージ電流の時間変化を示す。
【0036】
時点t1において、制御部84は、第1電源側接続/遮断部24の正極スイッチ28、第2電源側接続/遮断部26の正極スイッチ34、第1負荷側接続/遮断部54の正極スイッチ66、第2負荷側接続/遮断部56の正極スイッチ72、及び、第3負荷側接続/遮断部58の正極スイッチ78をオンに制御する。このとき、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のそれぞれは、第1バッテリ20及び第2バッテリ22と電気的に遮断されているため、プリチャージ電流は流れない。
【0037】
時点t2において、制御部84は、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40をオンに制御する。このとき、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のそれぞれには、第1バッテリ20のバッテリ電圧からプリチャージ抵抗44で電圧降下された電圧が印加される。第1プリチャージスイッチ40がオフからオンに切り替わった直後に、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流の大きさが、第1負荷デバイス48の許容電流Imax_1[A]以下となるように、プリチャージ抵抗44の抵抗値R[Ω]が設定される。
【0038】
時点t2におけるプリチャージ電流の大きさが許容電流Imax_1[A]となるようにプリチャージ抵抗44の抵抗値R[Ω]が設定されているとすると、許容電流Imax_1[A]は次の式で表すことができる。ここで、第1バッテリ20のバッテリ電圧は前述のようにE[V]であり、電源回路12内の配線抵抗の抵抗値を0[Ω]、負荷回路18内の配線抵抗の抵抗値をr[Ω]とする。
Imax_1[A]=E/(r+3R)
【0039】
なお、負荷回路18内の配線抵抗とは、第1負荷側接続/遮断部54と電流計70と第1負荷デバイス48、第2負荷側接続/遮断部56と電流計76と第2負荷デバイス50、及び、第3負荷側接続/遮断部58と電流計82と第3負荷デバイス52のそれぞれにおける素子及び素子同士を繋ぐ配線の合成抵抗である。本実施形態では、これらの合成抵抗の抵抗値はすべてr[Ω]とする。また、抵抗値rは、プリチャージ抵抗44の抵抗値R[Ω]に対して十分小さい。
【0040】
時点t2の直後に、第1負荷デバイス48に流れるプリチャージ電流は急激に電流I1まで低下する。電流I1は次の式で表すことができる。
I1[A]≒{(3E)/(3R+r)}×{C1/(C1+2C2)}
【0041】
時点t2の直後に、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のぞれぞれに流れるプリチャージ電流は急激に電流I2まで上昇する。電流I2は次の式で表すことができる。
I2[A]≒{(3E)/(3R+r)}×{C2/(C1+2C2)}
【0042】
その後、第1負荷デバイス48のコンデンサ60、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64が充電されていき、時間の経過とともにプリチャージ電流は低下する。
【0043】
時点t2から所定時間経過後の時点t3において、制御部84は、プリチャージ回路14の第2プリチャージスイッチ42をオンに制御する。第2プリチャージスイッチ42がオフからオンに切り替わることにより、電源回路12に対して、プリチャージ抵抗44とプリチャージ抵抗46とが並列に接続された状態となる。そのため、プリチャージ抵抗44とプリチャージ抵抗46の合成抵抗の抵抗値はR/2[Ω]となる。さらに、負荷回路18内の配線抵抗の抵抗値rは、プリチャージ抵抗44の抵抗値R[Ω]に対して十分小さく、ゼロとみなすことができる。そのため、第2プリチャージスイッチ42がオフからオンに切り替えられた直後に第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のそれぞれに流れるプリチャージ電流は、第2プリチャージスイッチ42がオフからオンに切り替えられる直前のプリチャージ電流に対して2倍になる。
【0044】
前述の所定時間は、第1プリチャージスイッチ40がオンになった時点t2後に、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流が以下の条件(1)、(2)の両方を満たすように設定される。
(1)第1負荷デバイス48に流れるプリチャージ電流が許容電流Imax_1[A]の1/2以下
(2)第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流が許容電流Imax_2の1/2以下
【0045】
なお、制御部84が、プリチャージ回路14の第1プリチャージスイッチ40をオンに制御してから所定時間経過したことを判定することに代えて、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流が上記の条件(1)、(2)の両方を満たすことを判定するようにしてもよい。
【0046】
時点t4において、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52のそれぞれに流れるプリチャージ電流は略0[A]となり、第1負荷デバイス48のコンデンサ60、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64の充電が完了する。
【0047】
[作用効果]
共通のバッテリから複数の負荷に電力を供給して、それぞれの負荷のコンデンサを充電する場合、負荷側にプリチャージ回路が設けられることにより、それぞれのコンデンサの許容電流に応じたプリチャージ電流を流すことができる。
【0048】
一方、負荷の数がバッテリの数よりも多い場合には、バッテリ側にプリチャージ回路が設けられることにより、スイッチ等の数を削減することができ、電力供給回路を軽量化できる。この場合、プリチャージ回路のプリチャージ抵抗は、最も容量が小さいコンデンサの許容電流に応じて設定されるため、容量が大きいコンデンサの充電に時間を要す問題がある。
【0049】
そこで、本実施形態の電力供給回路10では、制御部84は、第1負荷デバイス48のコンデンサ60、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64の充電開始時に第1プリチャージ制御を行う。そして、制御部84は、第1プリチャージ制御開始後、所定時間経過した後に、第2プリチャージ制御を行う。
【0050】
第1プリチャージ制御では、第1負荷デバイス48、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流を、許容電流Imax_1[A]以下とするように、制御部84がプリチャージ回路14を制御する。
【0051】
第2プリチャージ制御では、第1負荷デバイス48に流れるプリチャージ電流を許容電流Imax_1[A]以下とするとともに、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流を許容電流Imax_2以下であって、最大値を許容電流Imax_1[A]よりも大きくするように、制御部84がプリチャージ回路14を制御する。
【0052】
これにより、本実施形態の電力供給回路10では、第1プリチャージ制御から第2プリチャージ制御にかけて、第1負荷デバイス48に流れるプリチャージ電流を許容電流Imax_1[A]以下に抑えることができる。さらに、第2プリチャージ制御では、第2負荷デバイス50及び第3負荷デバイス52に流れるプリチャージ電流の最大値を許容電流Imax_1[A]より大きくすることが可能となるため、第2負荷デバイス50のコンデンサ62、及び、第3負荷デバイス52のコンデンサ64の充電時間の短縮化を図ることができる。
【0053】
〔他の実施形態1〕
第1実施形態の第1負荷側接続/遮断部54は、正極配線上に設けられた正極スイッチ66と、正極スイッチ66と直列に設けられたヒューズ68を有している。第1負荷側接続/遮断部54の構成は、第1実施形態の構成以外であってもよい。
【0054】
図5A及び
図5Bは、第1負荷側接続/遮断部54の回路構成を示す図である。例えば、
図5Aに示すように、第1負荷側接続/遮断部54はヒューズ68を有しないようにしてもよい。また、
図5Bに示すように、第1負荷側接続/遮断部54は、負極配線上に設けられた負極スイッチ86を有するようにしてもよい。
【0055】
第2負荷側接続/遮断部56及び第3負荷側接続/遮断部58の構成も、第1負荷側接続/遮断部54と同様に変更してもよい。
【0056】
〔他の実施形態2〕
第1実施形態の電力供給回路10は、電源として、第1バッテリ20及び第2バッテリ22を有していた。電力供給回路10は、第1バッテリ20及び第2バッテリ22に加えて、第1ジェネレータ88及び第2ジェネレータ90を有するようにしてもよい。
【0057】
図6は、電力供給回路10の回路図である。電力供給回路10に、第1ジェネレータ88及び第2ジェネレータ90を設ける場合、さらに、第3電源側接続/遮断部92及び第4電源側接続/遮断部94を設ける必要がある。
【0058】
第3電源側接続/遮断部92は、第1ジェネレータ88と送電バス16との間に設けられている。第3電源側接続/遮断部92は、正極配線上に設けられた正極スイッチ96、負極配線上に設けられた負極スイッチ98を有している。また、正極配線上に、正極スイッチ96と直列にヒューズ100が設けられている。正極スイッチ96及び負極スイッチ98の少なくとも一方がオフのときに、第1ジェネレータ88と送電バス16とが電気的に遮断される。正極スイッチ96及び負極スイッチ98の両方がオンのときに、第1ジェネレータ88と送電バス16とが電気的に接続される。
【0059】
第4電源側接続/遮断部94は、第2ジェネレータ90と送電バス16との間に設けられている。第4電源側接続/遮断部94は、正極配線上に設けられた正極スイッチ102、負極配線上に設けられた負極スイッチ104を有している。また、正極配線上に、正極スイッチ102と直列にヒューズ106が設けられている。正極スイッチ102及び負極スイッチ104の少なくとも一方がオフのときに、第2ジェネレータ90と送電バス16とが電気的に遮断される。正極スイッチ102及び負極スイッチ104の両方がオンのときに、第2ジェネレータ90と送電バス16とが電気的に接続される。
【0060】
〔実施形態から得られる技術的思想〕
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0061】
1つ以上の電源(20、22)を有する電源回路(12)と、少なくとも、第1許容電流の第1コンデンサ(60)を有する第1負荷(48)と、前記第1許容電流よりも大きな第2許容電流の第2コンデンサ(62、64)を有する第2負荷(50、52)とが並列に接続される負荷回路(18)と、前記電源から前記第1負荷及び前記第2負荷に電力を供給して前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサを充電するときのプリチャージ電流を調整するプリチャージ回路(14)と、前記プリチャージ回路を制御する制御部(84)と、を備える、電力供給回路(10)であって、前記制御部は、充電時に前記第1負荷及び前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を、前記第1許容電流以下とするように前記プリチャージ回路を制御する第1プリチャージ制御と、前記第1プリチャージ制御の後に、前記第1負荷に流れるプリチャージ電流を前記第1許容電流以下とするとともに、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流を前記第2許容電流以下であって、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流の最大値を前記第1許容電流よりも大きくするように前記プリチャージ回路を制御する第2プリチャージ制御と、を行う。
【0062】
上記の電力供給回路であって、前記制御部は、前記第1プリチャージ制御の後に、前記第1負荷に流れるプリチャージ電流が前記第1許容電流に対して所定の割合以下となるとともに、前記第2負荷に流れるプリチャージ電流が前記第2許容電流に対して所定の割合以下となったときに、前記第2プリチャージ制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…電力供給回路 12…電源回路
14…プリチャージ回路 20…第1バッテリ(電源)
22…第2バッテリ(電源) 48…第1負荷デバイス(第1負荷)
50…第2負荷デバイス(第2負荷) 52…第3負荷デバイス(第2負荷)
60…コンデンサ(第1コンデンサ) 62、64…コンデンサ(第2コンデンサ)
84…制御部