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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/325 20220101AFI20241024BHJP
   F24D 17/00 20220101ALI20241024BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20241024BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20241024BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20241024BHJP
   F24H 15/36 20220101ALI20241024BHJP
【FI】
F24H15/325
F24D17/00 L
F24H1/14 B
F24H15/174
F24H15/219
F24H15/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021052464
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022150050
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悠也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 篤
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-300221(JP,A)
【文献】特開2016-008776(JP,A)
【文献】特開2021-032500(JP,A)
【文献】特開平07-269947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
F24D 17/00 - 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナによって加熱される熱交換器と、熱交換器に給水する給水通路と、熱交換器に接続されて熱交換器で生成された湯が流出する出湯通路と、給水通路と出湯通路とを短絡することによって熱交換器をバイパスするバイパス通路と、バイパス通路を通過する水の流量を増減させるバイパス弁と、熱交換器で生成された湯の温度である熱交出湯温度をバイパス通路が出湯通路に合流するバイパス合流部よりも上流側の出湯通路で検出する熱交出湯温度センサと、設定された給湯設定温度の湯が得られるようにバイパス合流部における出湯通路からの熱交換器通水量とバイパス通路からのバイパス通水量との混合比率であるバイパス比を決定してバイパス弁の開度を制御する動作を実行させる制御部とを備える給湯装置であって、
前記制御部は、
前記熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定する構成を有し、前記バイパス比の決定に用いる熱交出湯温度は、熱交出湯温度センサが検出する現在の熱交出湯温度の代わりに、過去に検出した熱交出湯温度である相対熱交出湯温度に置き換えることを可能とし、
前記相対熱交出湯温度は、出湯通路を流れる湯が熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部に到達するまでに要する遡り時間だけ現在から過去に遡った過去の熱交出湯温度とし、
バーナが点火と消火を交互に繰り返しながらバーナ燃焼の号数を最低号数より低いバーナ加熱量で温度調節される場合は前記相対熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定しバイパス弁の開度を制御する動作を実行する構成とする、給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯装置において、
前記制御部は、
熱交出湯温度センサで検出する熱交出湯温度を一定時間ごとに継続して記憶値として記憶し、
熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部の位置までの出湯通路の容積に対する現在の熱交換器通水量の割合から前記遡り時間を算出し、
現在から前記遡り時間だけ前の熱交出湯温度の記憶値を前記相対熱交出湯温度として用いて前記バイパス比を算出する構成を備える、給湯装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給湯装置において、
前記制御部は、
バーナ燃焼の号数が最低号数以上のバーナ加熱量で温度調節される場合は前記熱交出湯温度センサが検出している熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定しバイパス弁の開度を制御する動作を実行する構成とする、給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水通路と出湯通路とを短絡して熱交換器をバイパスするバイパス通路を有する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の給湯装置では、設定された給湯設定温度の湯が得られるように、熱交換器の出口側に接続する出湯通路からの湯と、バイパス通路からの水との混合比率(バイパス比)を決定してバイパス弁の開度を制御するバイパスミキシング制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。従来、給湯装置のバイパスミキシング制御として、熱交換器で生成された湯の温度である熱交出湯温度と給湯設定温度との偏差に基づいてバイパス比を演算することにより再出湯時の給湯温度のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-75750号公報
【文献】特開平8-5144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱交出湯温度を検出する熱交出湯温度センサは、出湯通路における熱交換器出口付近に取り付けられ、一方、出湯通路にバイパス通路が合流するバイパス合流部は、装置の構造上等から熱交換器出口付近から離れた下流位置に設けられている。このように、熱交出湯温度センサの取り付け位置とバイパス合流部の位置とは異なり、一定の距離だけ離れている。従って、出湯通路を流れる湯が熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部に到達するまでに一定時間要するため、熱交出湯温度センサが現在検出している熱交出湯温度と、バイパス合流部における出湯通路側の湯の温度とに差が生じる場合がある。この場合、熱交出湯温度センサで検出する熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定すると、バイパス弁の開度を変更した過渡期等では、実際の給湯温度が目標の給湯設定温度からズレてしまうおそれがあった。例えば、バーナ燃焼により温度調節がバーナの点火と消火を交互に繰り返しながら最低号数より低い加熱量で行われる給湯条件下で且つ低水量の給湯が求められると、バーナの加熱量変化に応じて熱交出湯温度の変化が顕著となり、且つ熱交換器から出た湯がバイパス合流部に到達するのに要する時間も長くなる。そのため、出湯通路を流れる湯の温度が熱交出湯温度センサの位置とバイパス合流部の位置とで温度差が大きくなり、目標の給湯設定温度に対して実際の給湯温度のズレが顕著になる場合があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、熱交出湯温度センサで検出する熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定する場合でも給湯温度の安定性を高めることを可能とする給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る給湯装置は、
バーナによって加熱される熱交換器と、熱交換器に給水する給水通路と、熱交換器に接続されて熱交換器で生成された湯が流出する出湯通路と、給水通路と出湯通路とを短絡することによって熱交換器をバイパスするバイパス通路と、バイパス通路を通過する水の流量を増減させるバイパス弁と、熱交換器で生成された湯の温度である熱交出湯温度をバイパス通路が出湯通路に合流するバイパス合流部よりも上流側の出湯通路で検出する熱交出湯温度センサと、設定された給湯設定温度の湯が得られるようにバイパス合流部における出湯通路からの熱交換器通水量とバイパス通路からのバイパス通水量との混合比率であるバイパス比を決定してバイパス弁の開度を制御する動作を実行させる制御部とを備える給湯装置であって、
前記制御部は、
前記熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定する構成を有し、前記バイパス比の決定に用いる熱交出湯温度は、熱交出湯温度センサが検出する現在の熱交出湯温度の代わりに、過去に検出した熱交出湯温度である相対熱交出湯温度に置き換えることを可能とし、
前記相対熱交出湯温度は、出湯通路を流れる湯が熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部に到達するまでに要する遡り時間だけ現在から過去に遡った過去の熱交出湯温度とし、
バーナが点火と消火を交互に繰り返しながらバーナ燃焼の号数を最低号数より低いバーナ加熱量で温度調節される場合は前記相対熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定しバイパス弁の開度を制御する動作を実行する構成とするものである。
【0007】
前記構成によれば、バイパス合流部と熱交出湯温度センサの位置とが異なっていても、相対熱交出湯温度を用いることでバイパス合流部での現在(現時点)の熱交出湯温度を取得することができる。従って、バーナが点火と消火を交互に繰り返しながらバーナ燃焼の号数を最低号数より低いバーナ加熱量で温度調節される場合は相対熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定してバイパス弁の開度制御を行うことにより、実際の給湯温度が給湯設定温度からズレることを抑制して給湯を行うことができる。よって、熱交出湯温度センサで検出する熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定する場合でも相対熱交出湯温度を用いることで給湯温度の安定性を高めることが可能となる。
【0008】
前記制御部は、
熱交出湯温度センサで検出する熱交出湯温度を一定時間ごとに継続して記憶値として記憶し、
熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部の位置までの出湯通路の容積に対する現在の熱交換器通水量の割合から前記遡り時間を算出し、
現在から前記遡り時間だけ前の熱交出湯温度の記憶値を前記相対熱交出湯温度として用いて前記バイパス比を算出する構成を備えるようにすることができる。
【0009】
前記遡り時間は、熱交換器から流出して出湯通路を流れる湯が熱交出湯温度センサの位置からバイパス合流部に到達するのに要する時間に相当する。従って、現在(現時点)から前記遡り時間だけ前の熱交出湯温度の記憶値である前記相対熱交出湯温度は、今現在、バイパス合流部に到達している出湯通路側の湯の温度を示すこととなる。すなわち、前記遡り時間及び前記記憶値に基づいた相対熱交出湯温度によって、現在のバイパス合流部での正確な熱交出湯温度が分かることとなる。従って、実際の給湯温度が給湯設定温度からズレないようにバイパス比を精度よく決定することができる。よって、バイパスミキシング制御による湯の温度調節において、給湯設定温度と誤差のない給湯温度が得られるように温度調節することができ、給湯温度の安定性を高めることが可能となる。
【0010】
前記制御部は、
バーナ燃焼の号数が最低号数以上のバーナ加熱量で温度調節される場合は前記熱交出湯温度センサが検出している熱交出湯温度を用いてバイパス比を決定しバイパス弁の開度を制御する動作を実行する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態による給湯装置の内部構成を示す模式図である。
図2】実施形態による給湯装置におけるバイパスミキシング制御の処理を説明するための工程図である。
図3】バイパスミキシング処理を行ったときの給湯温度の推移を示すグラフであり、同図(a)は本発明の実施例であり、同図(b)は比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態の給湯装置1は、湯を生成する熱交換器10と、熱交換器10を加熱するバーナ12を備える燃焼室11と、配管類と、制御部50とを備えている。バーナ12には、ガス通路13を介して燃料ガスが供給されており、ガス通路13には、燃料ガスの流量を制御するガス比例弁14が設けられている。燃焼室11には、バーナ12の燃焼用空気を供給するための燃焼ファン15が接続されている。
【0014】
熱交換器10の上流側には給水通路20が接続されており、熱交換器10の下流側には出湯通路21が接続されている。給水通路20と出湯通路21とはバイパス通路22によって短絡されている。このため、給水通路20を流れる水の一部は、熱交換器10に流入する手前でバイパス通路22に分流し、残りが熱交換器10に流入して加熱された後、出湯通路21に流出する。出湯通路21に流出した湯は、出湯通路21にバイパス通路22が合流するバイパス合流部25で、バイパス通路22を流れてきた水と混合された後、出湯栓24に供給される。バイパス通路22には、バイパス弁34が設けられており、バイパス弁34の開度を調整することによってバイパス通路22を流れる水の水量が制御される。なお、本明細書では、バイパス合流部25よりも下流側の出湯通路21から延びる配管を給湯通路23と称して、バイパス合流部25よりも上流側の出湯通路21と区別することとする。従って、単に出湯通路21と表記した時は、熱交換器10の出口からバイパス合流部25までの通路を示し、給湯通路23と表記した時は、バイパス合流部25から出湯栓24までの通路を示すものとする。
【0015】
給水通路20には、給湯装置1に給水される水の温度(以下、給水温度)を検出する給水温度センサ31と、給湯装置1に給水される水の水量(以下、給水水量)を検出する流量センサ30とが設けられている。流量センサ30は、給水通路20からバイパス通路22が分岐する位置よりも上流側の位置に設けられている。このため、流量センサ30は、熱交換器10に流入する水量と、バイパス通路22側に分岐した水の水量とを合計した水量(従って、給湯通路23を流れる給湯水量)を検出していることになる。出湯通路21には、熱交換器10で生成された湯の温度(以下、熱交出湯温度)を検出する熱交出湯温度センサ32が熱交換器10の出口付近に取り付けられている。給湯通路23には、出湯通路21からの湯とバイパス通路22からの水がバイパス合流部25で混合された後の湯の温度(以下、給湯温度)を検出する給湯温度センサ33が取り付けられている。
【0016】
制御部50は、給湯する湯の温度を調節するための制御回路(バーナ12の加熱量制御、バイパス弁34の開度制御等)等の様々な制御回路、プログラムやデータ等を記憶するメモリ、時間を計測するタイマ等を備えている。制御部50には、流量センサ30、給水温度センサ31、熱交出湯温度センサ32、給湯温度センサ33が接続されている。また、制御部50には、リモコン51が接続されており、給湯装置1のユーザーは、リモコン51を操作することによって出湯栓24から給湯する湯の温度の設定、給湯運転の開始・停止等することができる。
【0017】
次に、実施形態の給湯装置1における給湯運転の動作を説明する。なお、給湯運転の動作の処理は、制御部50によって実行される。
出湯栓24が開栓されて給水通路20で作動水量の通水を流量センサ30が検出すると、燃焼ファン15を所定の回転数で作動し、ガス比例弁14を開弁してバーナ12を点火する。これにより、給湯運転が開始される。給湯運転が開始されると、給湯する湯の温度が給湯設定温度となるように温度調節される。この温度調節は、バーナ12による加熱量の制御と、バイパス弁34の開度を制御するバイパスミキシング制御とにより行われる。
【0018】
バーナ12の加熱量の制御は、給湯設定温度、熱交出湯温度、給水温度、給水水量等に基づいてバーナ12の加熱量を決定し、この決定した加熱量に従ってバーナ燃焼の号数、バーナ燃焼のオンオフ制御(バーナ12の点火と消火を交互に繰り返す制御)等の所定の運転条件でバーナ12の燃焼状態を制御する。また、バイパスミキシング制御は、バイパス合流部25における出湯通路21側の熱交換器通水量とバイパス通路22側のバイパス通水量との混合比率となるバイパス比を決定し、この決定したバイパス比となるようにバイパス弁34の開度を制御する。これらの制御により、出湯栓24から得られる湯の給湯温度が、給湯設定温度となるように温度調節される。なお、前記温度調節の際、熱交換器10の温度が高くなり過ぎて熱交換器10内で沸騰が生じたり、熱交換器10の温度が低くなってドレンが発生しやすくなる等を防止するため、熱交出湯温度を所定の温度範囲内に保持するようにすることができる。
【0019】
以下に、本実施形態におけるバイパスミキシング制御について説明する。
図2を参照して、給湯運転の開始により、制御部50は、ステップS1にて、熱交出湯温度センサ32で検出する熱交出湯温度Thexを、一定時間(例えば、0.5秒ごと)ごとに直近の任意時間分(例えば、60秒間分)だけ継続して記憶値としてメモリに記憶する。
【0020】
次いで、制御部50は、ステップS2にて、出湯通路21を流れる湯が熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25に到達するまでに要する時間である遡り時間Txを、次の式(1)により求める。
【0021】
【数1】
【0022】
式(1)において、Txは遡り時間、Nvは熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25までの出湯通路21の水容積、Winは現在の給水水量、Bpnowは現在のバイパス比、をそれぞれ示す。なお、本明細書で「現在」とは現時点を意味する。
【0023】
容積Nvは、出湯通路21の断面積と、熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25までの出湯通路21の長さとの積により求められ、予め制御部50に記憶されている。現在の給水水量Winは、流量センサ30が検出する現在の検出値に基づいて取得する。現在のバイパス比Bpnowは、制御部50により決定されたものであり、制御部50において記憶されている。なお、給湯運転の開始時点のバイパス比Bpnowは、バイパス弁34を一定の開度又は閉弁状態としてもよい。
【0024】
前記式(1)の分母の値は、現在の熱交換器通水量を示すものである。すなわち、前記式(1)より、熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25の位置までの出湯通路21の水容積Nvを、現在の熱交換器通水量で割り算することにより、出湯通路21を流れる湯が熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25に到達するまでに要する時間である遡り時間Txが求められる。なお、遡り時間Txの算出は、前記式(1)で演算する場合に限らず、前記式(1)によるデータテーブル等から読み取るようにしてもよい。
【0025】
そして、制御部50は、遡り時間Txが得られると、ステップS3にて、現在から遡り時間Txだけ前の熱交出湯温度Thexの記憶値をメモリから読み込んで、この読み込んだ記憶値を相対熱交出湯温度Thexxとして取得する。なお、給湯運転の開始当初で遡り時間Tx分の熱交出湯温度Thexの記憶値がメモリに未だ無い場合は、例えば、メモリの記憶値のうちで最古の記憶値を相対熱交出湯温度Thexxとみなす等のように、メモリの記憶値のうちの任意の記憶値、あるいは、熱交出湯温度センサ32で現在検出している熱交出湯温度Thexを相対熱交出湯温度Thexxとみなすようにすることができる。
【0026】
次いで、制御部50は、ステップS4にて、熱交出湯温度Thex、給湯設定温度Tqset及び給水温度Tinに基づいてバイパス比BFを決定する。但し、本実施形態では、バイパス比BFの決定に用いる熱交出湯温度Thexは、熱交出湯温度センサ32が検出する現在の熱交出湯温度Thexの代わりに、相対熱交出湯温度Thexxに置き換える。すなわち、バイパス弁34の開度を設定するためのバイパス比BFは、次の式(2)により求める。
【0027】
【数2】
【0028】
式(2)において、相対熱交出湯温度Thexxは、前記ステップS3により取得された過去の熱交出湯温度Thexの記憶値である。給湯設定温度Tqsetは、出湯栓24から給湯される湯の給湯温度の設定値であり、ユーザーがリモコン51を操作して制御部50に対して予め設定されている。給水温度Tinは、給水温度センサ31が検出する現在の検出値に基づいて取得する。
【0029】
前記式(2)は、バイパス合流部25において出湯通路21からの湯の放熱量とバイパス通路22からの水の吸熱量とが等しくなるという熱平衡の関係に基づいて、給湯設定温度Tqsetの湯を得るための熱交換器通水量とバイパス通水量との混合比率(バイパス通水量/熱交換器通水量)としてのバイパス比BFを算出する関係式である。前記式(2)では、バイパス比BFは、熱交換器通水量を1としたときのバイパス通水量の比率が算出される。但し、前記式(2)で算出したバイパス比BFの値が0未満(BF<0)の場合は、バイパス比BF=0とする。なお、バイパス比BFの算出は、前記式(2)で演算する場合に限らず、前記式(2)によるデータテーブル等から読み取るようにしてもよい。
【0030】
そして、制御部50は、前記ステップS4での処理により相対熱交出湯温度Thexxを用いたバイパス比BFが算出されると、ステップS5にて、このバイパス比BFに従ってバイパス弁34の開度を設定するように指示する。これにより、バイパス弁34の開度は、バイパス比BFとなる開度に設定される。
【0031】
以上説明したバイパス弁34の開度を制御する動作、すなわち、バイパスミキシング制御の動作は、給湯運転の開始当初から運転終了するまで実行される。
【0032】
以上より、本実施形態の給湯装置1によれば、バイパスミキシング制御においてバイパス比を決定するのに相対熱交出湯温度Thexxを用いるので、出湯通路21におけるバイパス合流部25と熱交出湯温度センサ32の位置とが異なっていても、バイパス合流部25での現在の熱交出湯温度(相対熱交出湯温度Thexx)を取得することができる。すなわち、遡り時間Txは、熱交換器10から流出して出湯通路21を流れる湯が熱交出湯温度センサ32の位置からバイパス合流部25に到達するのに要する時間である。相対熱交出湯温度Thexxは、過去の熱交出湯温度Thexの記憶値のうちで、現在から遡り時間Txだけ前の熱交出湯温度Thexの記憶値であり、今現在のバイパス合流部25に到達している出湯通路21側の湯の温度を示すこととなる。このように、遡り時間Tx及び熱交出湯温度Thexの記憶値に基づいた相対熱交出湯温度Thexxから、現在のバイパス合流部25での正確な熱交出湯温度が分かることとなる。
【0033】
従って、実際の給湯温度が給湯設定温度Tqsetからズレないようにバイパス比BFを精度よく決定することができる。従って、この相対熱交出湯温度Thexxを用いてバイパス比BFを決定することで、実際の給湯温度が給湯設定温度Tqsetからズレることを抑制して給湯を行うことができる。よって、バイパスミキシング制御による湯の温度調節において、給湯設定温度Tqsetと誤差のない給湯温度に温度調節することができ、給湯温度の安定性を高めることが可能となる。
【0034】
例えば、バーナ12側で点火と消火を交互に繰り返しながら温度調節がされている場合は、バーナ12の加熱量変化に応じて熱交出湯温度Thexの変化が頻繁になる。そのため、出湯通路21を流れる湯の温度が熱交出湯温度センサ32の位置とバイパス合流部25の位置とで温度差が大きくなり、目標の給湯設定温度Tqsetに対して実際の給湯温度のズレが顕著になるおそれがある。しかし、このような場合でも、バーナ12の点火、消火に伴う熱交出湯温度Thexの変化に適切なタイミングで適切なバイパス比BFによりバイパス弁34の開度を設定することができ、給湯設定温度Tqsetと誤差のない給湯温度が得られるように温度調節することができる。
【0035】
よって、熱交出湯温度センサ32で検出する熱交出湯温度Thexを用いてバイパス比BFを決定する場合でも、現在検出されている熱交出湯温度Thexに置き換えて相対熱交出湯温度Thexxを用いることにより給湯温度の安定性を高めることが可能となる。
【0036】
他の形態1
他の形態1では、制御部50は、相対熱交出湯温度Thexxを用いてバイパス比BFを決定してバイパスミキシング制御を行う動作を、要求される給湯水量が低水量(例えば、給水水量が3L/min以下)の場合に実行する構成とする。低水量以外の場合は、熱交出湯温度センサ32が検知している熱交出湯温度Thexを用いる等その他の方法でバイパス比を決定してバイパスミキシング制御を行ったり、あるいは、バイパス弁34の開度を一定開度に保持する等としてもよい。これにより、低水量のために熱交換器10から出た湯がバイパス合流部25に到達するのに比較的長く時間を要する場合でも、相対熱交出湯温度Thexxを用いてバイパス比BFを決定することにより、実際の給湯温度が給湯設定温度Tqsetからズレることを抑制して給湯を行うことができる。
【0037】
他の形態2
他の形態2では、制御部50は、相対熱交出湯温度Thexxを用いてバイパス比BFを決定してバイパスミキシング制御を行う動作を、バーナ12が点火と消火を交互に繰り返しながら最低号数より低いバーナ加熱量で温度調節される場合に実行する構成とする。バーナ12の加熱量が最低号数以上の場合は、熱交出湯温度センサ32が検知している熱交出湯温度Thexを用いる等その他の方法でバイパス比を決定してバイパスミキシング制御を行ったり、あるいは、バイパス弁34の開度を一定開度に保持する等としてもよい。これにより、バーナ12の加熱量変化に応じて熱交出湯温度Thexの変化が顕著になるような場合でも、相対熱交出湯温度Thexxを用いてバイパス比BFを決定することにより、実際の給湯温度が給湯設定温度Tqsetからズレることを抑制して給湯を行うことができる。
【0038】
次に、本発明の効果を確認するために試験を行ったので、以下に説明する。この試験は、図1に示す給湯装置1の構成に相当する給湯装置を用い、給湯設定温度Tqsetが40℃、給水温度Tinが26℃、給水水量が1.5L/minであり、バーナ12が点火と消火を交互に繰り返す条件下で、バイパスミキシング制御を行ったときの給湯温度(給湯温度センサ33の検出値)の状態を測定した。
【0039】
図3は、この試験結果を示すグラフであり、図3(a)は、本発明の実施例であり、相対熱交出湯温度Thexxを用いて算出したバイパス比によりバイパスミキシング制御を行ったときの給湯温度の状態を示し、図3(b)は、比較例であり、熱交出湯温度センサ32で現在検出する熱交出湯温度Thexを用いて算出したバイパス比によりバイパスミキシング制御を行ったときの給湯温度の状態を示す。
【0040】
比較例では、図3(b)に示すように、熱交出湯温度の上昇によりバイパス弁34の開度を増加(バイパス比増)させるようにバイパス弁34の開度制御が行われたときには給湯温度の下降が見られ、また、熱交出湯温度の下降によりバイパス弁34の開度を減少(バイパス比減)させるようにバイパス弁34の開度制御が行われたときには給湯温度の上昇が見られた。これより、バイパス弁34の開度制御のタイミングが少し早いものと考えられる。
【0041】
また、比較例の給湯温度は、最高値が40.9℃、最低値が37.9℃、平均値が38.9℃であった。すなわち、給湯温度の平均値は、給湯設定温度40℃との間で1.1℃のズレ(温度差)があり、平均値と最高値との間で2.0℃、平均値と最低値との間で1.0℃のズレがあった。このように比較例では、とりわけバイパス弁34の開度変更後の過渡期では、給湯温度の給湯設定温度からのズレが顕著になっていた。
【0042】
実施例では、図3(a)に示すように、熱交出湯温度の上昇によりバイパス弁34の開度を増加させるようにバイパス弁34の開度制御が行われたとき、また、熱交出湯温度の下降によりバイパス弁34の開度を減少させるようにバイパス弁34の開度制御が行われたときのいずれの場合も、給湯温度の上昇、下降がほとんど見られず、給湯温度は一定温度を保ち安定していることが認められた。これより、バイパス弁34の開度制御のタイミングは適時のタイミングであることが実証された。
【0043】
また、実施例の給湯温度は、最高値が40.2℃、最低値が39.1℃、平均値が39.6℃であった。すなわち、給湯温度の平均値は、給湯設定温度40℃との間で0.4℃のズレ(温度差)があり、平均値と最高値との間で0.6℃、平均値と最低値との間で0.5℃のズレがあるものの、給湯温度と給湯設定温度との温度差は、比較例と比べて極僅かであった。このように、実施例では、バイパス弁34の開度変更後の過渡期において比較例のような給湯温度と給湯設定温度との間で見られた温度のズレが解消されていることがわかる。
【0044】
以上の実施例、比較例の結果より、本発明によれば、バーナ12が点火と消火を交互に繰り返しながら温度調節されている条件下であり且つ低水量の給湯が要求される場合であっても、給湯温度の安定性が高められるという効果が実証された。
【0045】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を施す形態とすることが可能である。例えば、本発明は、バーナが点火と消火とを交互に繰り返すバーナ燃焼の条件下で且つ低水量の給湯要求がなされている場合に実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 給湯装置
10 燃焼装置
11 熱交換器
12 バーナ
13 ガス通路
14 ガス比例弁
15 燃焼ファン
20 給水通路
21 出湯通路
22 バイパス通路
23 給湯通路
24 出湯栓
25 バイパス合流部
30 流量センサ
31 給水温度センサ
32 熱交出湯温度センサ
33 給湯温度センサ
34 バイパス弁
50 制御部
51 リモコン
図1
図2
図3