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  • 特許-雨水の縦走り防止補修方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】雨水の縦走り防止補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20241024BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20241024BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E04G23/02 H
E04B1/682 A
E04F13/08 X
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021054128
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151184
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390018463
【氏名又は名称】アイジー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤淳二
(72)【発明者】
【氏名】海藤真広
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-274592(JP,A)
【文献】特開2011-208425(JP,A)
【文献】特開2000-120277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0251971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E04B 1/62- 1/99
E04B 7/02
E04D 3/40
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦張りに施工した乾式壁材において、改修を行った際に発生する改修部上下の雨水漏れを補修する方法であって、
前記改修部の上部において、改修部と乾式壁材間の止水材を除去する工程と、
前記止水材を除去したのち、乾式壁材の一部に貫通孔を設ける工程と、
貫通孔を設けたのち、嵌合部間隙に止水材を注入し充填する工程と、
止水材を注入したのち、改修部上部において除去した止水材を再び施工する工程とを備えた、雨水の縦走り防止補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材に使用される乾式壁材の雨水の縦走りを防止するための補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾式壁材を施工したのちに、雨よけ又は日よけ用として庇が取り付けられたり、風除室が取り付けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-123164号
【文献】特開平10-176422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、後付けする様々な構造の庇の取付について、水密接合可能な連結手段を持つ部材を使用することで、雨水に対する防水機能や雨水を受け止める溝による排水機能を有する構造について記載されている。しかし、庇と既存外装材間の水密性を担保できたとしても、庇上部において建物本体の内部に浸入してしまった雨水が、庇下部まで伝うことまでは防ぐことができない恐れがある。
【0005】
一方、壁材に発生した隙間(クラック)に止水材を注入して、雨水の浸入を防ぐ方法としては、特許文献2のような方法がある。壁材を施工した後に発生した隙間に、多孔質体や止水材を注入し、気温変化による隙間の間隙が変動することにも対応した補修方法が記載されている。しかし、ただ止水材等を注入するだけでは、補修後、注入孔が残ってしまい、意匠性の高い外装材では施工箇所が目立ってしまう恐れがある。
【0006】
上記のような事情を鑑み、本発明では、リフォームや改修により、既存の外装材に庇や風除室等の後付け構造体を設ける際に、既存の外装材の目地における雨水の浸入及び雨水の縦走りを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明では、縦張りした既存の乾式壁材に対して、改修を行った際に発生する改修部上下における雨水の漏れを補修する方法であって、改修部の上部において、改修部と乾式壁材間の止水材を除去したのち、乾式壁材の一部に貫通孔を設け、嵌合部間隙に止水材を注入し、充填させたのち、前記改修部上部において除去した止水材を再び施工する工程とを備えた、雨水の縦走り防止補修方法(以下、補修方法と称する)を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の補修方法では、既存の外装材に施工する後付け構造体を設ける場合に、雨水の浸入を簡便な方法で補修でき、止水性を付与し、補修後に意匠性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例を示す側面図である。
図2】本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の部分拡大図である。
図3】本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の嵌合状態を示す断面図である。
図4】先付け構造体の施工例を示す斜視図である。
図5】本発明に係る補修方法に使用する後付け構造体の雨水の縦走りの例を示す斜視図である。
図6】本発明に係る補修方法の一実施例を示す断面図である。
図7】本発明に係る補修方法を施工した一実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0010】
以下、図面を用いて本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の実施例について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略している。図1は、本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の側面図である。図2の(a)は、本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の雄部の部分拡大側面図であり、図2の(b)は、本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の雌部の部分拡大側面図である。図3は、本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材の一実施例の嵌合状態を示す断面図である。図4は、先付け構造体の施工例を示す斜視図である。図5は、本発明に係る補修方法に使用する後付け構造体の雨水漏れの例を示す斜視図である。図6の(a)は、本発明に係る補修方法において貫通孔を設けた際の一実施例を示す断面図であり、図6の(b)は、本発明に係る補修方法において止水材を注入し、充填させた際の一実施例を示す断面図である。図7は、本発明に係る補修方法を施工した一実施例を示す断面図である。図中に示されている軸は、各図面の方向を示している。X軸は乾式壁材の雄側(Xi)-雌側(Xii)、Y軸は屋根側(Yi)-土台側(Yii)、Z軸は屋外側(Zi)-屋内側(Zii)をそれぞれ示している。
【0011】
図1には、本発明に係る補修方法に使用する乾式壁材1の側面図を示している。乾式壁材1は金属製表面材2と裏面材3と芯材4から成る。金属製表面材2は例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバ鋼板(登録商標)、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、合成樹脂製板材、例えば塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、等によって各種形状に成形したものである。裏面材3は、アルミニウム蒸着紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の一種、または二種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物や、前記金属鋼板等からなるものでも良い。
【0012】
芯材4は、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等の合成樹脂発泡体からなるものであり、例えばレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、金属製表面材2、または裏面材3の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成したものである。また、芯材4中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、防火性、耐火性を向上させることもできる。
【0013】
図2の(a)は、乾式壁材1の雄部5の部分拡大側面図を示している。雄部5は、固定面11と嵌合片14の間に係合溝13が設けられ、嵌合片14の屋外側には段差15でつながった目地面16が設けられ、目地面16の雌側端部には立ち上がり片17が設けられ、化粧面18へつながっている。固定面11には、固定部12が設けられている。
【0014】
図2の(b)は、乾式壁材1の雌部6の部分拡大側面図を示している。雌部6は、係合片19とカバー片21の間に嵌合溝20が設けられている。カバー片21は嵌合溝20側に内側傾斜部22と接触部23と傾斜部24が設けられ、化粧面18へつながっている。また、嵌合溝20にはパッキン25が設けられても良い。パッキン25は例えば、ポリ塩化ビニル系、クロロプレン系、クロロスルホン化ポリエチレン系、エチレンプロピレン系、アスファルト含有ポリウレタン系、EPMやEPDM等の一般的に市販されているもので構わない。
【0015】
図3は、乾式壁材1の嵌合状態の断面図を示している。乾式壁材1は固定具31を用いて、胴縁32に施工することができる。また、嵌合片14は嵌合溝20に、係合片19は係合溝13にそれぞれ係合することにより、乾式壁材1同士が連結される。連結された際に生じる嵌合部間隙33は、嵌合片14、段差15、接触部23、内側傾斜部22、パッキン25からなる。
【0016】
図4は、建物の外壁面に対する先付け構造体43の施工例の斜視図を示している。先付け構造体43は例えば、屋根材や庇などであり、建物を設計する際にあらかじめ含めるものである。先付け構造体43が屋根材である場合、図4に示すように、アスファルトルーフィング41、胴縁42、先付け構造体43を施工したのち、雨押さえ包み板44、透湿防水シート45、胴縁46、を施工し、先付け構造体43上部に乾式壁材1等を施工していく。
【0017】
図5は、後付け構造体51を施工した際の雨水縦走りの様子を示した斜視図である。後付け構造体51は庇や風除室などであり、リフォームや改修により既存の乾式壁材1の屋外側に取り付けられるものである。後付け構造体51を取り付ける際は、既存の乾式壁材1の目地面16を図4のように、X軸方向に分断することができない。そのため、図5のように、後付け構造体51の上部における目地面16から嵌合部間隙33へ、雨水47が浸入してしまった場合、後付け構造体51の下部まで伝ってしまい、後付け構造体としての機能を十分に果たせなくなる恐れがある。
【0018】
図6および図7は、本発明に係る補修方法の一実施例の断面図を示している。図6(a)は貫通孔61を設ける工程を示しており、図6(b)はシーリング62を注入し充填する工程を示しており、図7は改修部上部において除去した止水材52を止水材64によって再び施工する工程を示している。
【0019】
本発明に係る補修方法は、縦張りに施工した乾式壁材1の目地面16と、後付け構造体51の止水材52との交点における補修方法であり、以下に詳説する。カバー片21の傾斜部24側端部を中心とし、止水材52をX軸方向に約20mm程度ずつ除去し、目地面16、立ち上がり片17、カバー片21、傾斜部24を露出させる。その後、工具等を用いて、カバー片21において、金属製表面材2と芯材4と内側傾斜部22を貫通するように、貫通孔61を形成する。貫通孔61は、傾斜部24側端部から7mm程度の位置に形成するのが望ましく、深さは金属表面材2からZ軸方向に6mm程度以下が望ましい。また、貫通孔61の直径は5mm以下が望ましい。貫通孔61が接触部23に達してしまうと、乾式壁材1の段差15を傷つけてしまう恐れがあり、傾斜部24側からの漏水を招いてしまう。
【0020】
貫通孔61を設けたのち、嵌合部間隙33にシーリング62を充填する。貫通孔61の直径よりも細くしたシーリングホルダー63を嵌合部間隙33に挿入し、シーリング62を注入する。この際、止水効果を高めるため、目地面16と接触部23の隙間や貫通孔61からシーリング62がはみ出す程度まで注入した方が望ましい。しかし、意匠性を損なう恐れがあるため、はみ出したシーリング62は、嵌合部間隙33への充填が完了し次第、除去する必要がある。
【0021】
止水材52を除去した部分を塞ぐため、図7のように、新たに止水材64を施工し、補修を完了させる。
【0022】
前述のシーリング62を注入する工程において、さらに作業性を向上させるため、マスキングテープ等を用いたはみ出し防止策を講じても構わない。止水材52のY軸方向端部において、X軸方向に沿って、金属表面材2上および後付け構造体51上にマスキングテープ等を設けることにより、はみ出したシーリング62の除去や、止水材64を施工する作業を容易に行えるようになる。
【符号の説明】
【0023】
1 乾式壁材
2 金属製表面材
3 表面材
4 芯材
5 雄部
6 雌部
11 固定面
12 固定部
13 係合溝
14 嵌合片
15 段差
16 目地面
17 立ち上がり片
18 化粧面
19 係合片
20 嵌合溝
21 カバー片
22 内側傾斜部
23 接触部
24 傾斜部
25 パッキン
31 固定具
32 胴縁
33 嵌合部間隙
41 アスファルトルーフィング
42 胴縁
43 先付け構造体
44 雨押さえ包み板
45 透湿防水シート
46 胴縁
47 雨
51 後付け構造体
52 止水材
61 貫通孔
62 シーリング
63 シーリングホルダー
64 止水材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7