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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241024BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20241024BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20241024BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D21/15 C
F16F7/12
F16F15/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021073939
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168460
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 智英
(72)【発明者】
【氏名】中本 直希
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 武宏
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128998(JP,A)
【文献】特開2020-152187(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119363(WO,A1)
【文献】特開2017-136973(JP,A)
【文献】特開2015-000691(JP,A)
【文献】特開2013-032041(JP,A)
【文献】特開2019-025950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
F16F 7/00- 7/14,15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延設され、上の稜線および下の稜線を有するフロントサイドフレームと、
前記上の稜線に重ねられて、長手方向に沿うように配置される略L字断面に形成された上側スチフナと、
前記上側スチフナとの間に隙間部を有して、前記下の稜線に重ねられて、長手方向に沿うように配置される略L字断面に形成された下側スチフナと
上側スチフナおよび下側スチフナに重ねられるバルクヘッドと、を備え、
前記上側スチフナは、前記バルクヘッドを跨いで車両前後方向へ延設される前記上の稜線側部分の先端部を有し、
前記下側スチフナは、前記バルクヘッドを跨いで車両前後方向へ延設される前記下の稜線側部分の先端部を有し、
前記下の稜線側部分の先端部が前記上側スチフナの上の稜線側部分の先端部より前後方に延長されていて、
記フロントサイドフレームには、前記バルクヘッドの近傍に脆弱部が形成されている、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記バルクヘッドは、前記フロントサイドフレームのエンジン締結部に設けられた第一バルクヘッドと、前記エンジン締結部の後方に配置されるサブフレーム締結部に設けられた第二バルクヘッドと、を有し、
前記脆弱部は、上面に開口された第一ボルト挿通孔を有する中間脆弱部と、下面に開口された第二ボルト挿通孔を有する後方脆弱部とを有して、前記フロントサイドフレームの車両前方から所定間隔を設けて後方へ順次配置することにより、車両前方からの荷重入力によって水平方向に折れ曲がる折れ点を設け、
前記第一バルクヘッドは、前記第一ボルト挿通孔に臨む第一ナットを有し、前記第二バルクヘッドは、前記第二ボルト挿通孔に臨む第二ナットを有することを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロントサイドフレームは、水平方向に交互に折れ曲がる、第一折れ点と、前記エンジン締結部近傍に配置される第二折れ点と、前記サブフレーム締結部近傍に配置される第三折れ点と、を車両前後方向に順次、有している、ことを特徴とする請求項記載の車体前部構造。
【請求項4】
記フロントサイドフレームには、前記先端部の近傍に第一折れ点を有する前方脆弱部が形成されていることを特徴とする請求項1の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントサイドフレームは、車幅方向に前記上側スチフナおよび前記下側スチフナのそれぞれと前記バルクヘッドとを重ねて接合するとともに、前記上側スチフナおよび前記下側スチフナと前記バルクヘッドとの間に保持される締結ナットと、
前記フロントサイドフレームの車幅方向の外側に配置されて、前記フロントサイドフレームの折り返しフランジ部に接合されるバックプレートと、を有し、
前記バルクヘッドは、前記折り返しフランジ部および前記バックプレート間に挟持される舌片を有する、ことを特徴とする請求項1の車体前部構造。
【請求項6】
前記フロントサイドフレームの前端部に取り付けられるバンパビーム組立体を備え、
前記バンパビーム組立体は、車幅方向に延設されるバンパビームおよび前記前端部間に組付けられるバンパビームエクステンションを有し、
前記バンパビームエクステンションは、前記前端部を構成する壁面に対して前後方向に整列する延長壁面を設けた、ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長いフロントサイドフレームの金型を用いて、短いフロントサイドフレームを製造する技術が知られている(例えば特許文献1)。このようなものでは、長,短何れかのフロントサイドフレームにスチフナ(補強板)を装着して、フロントサイドフレームを製造する金型の個数を減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4783761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の車体前部構造では、フロントサイドフレームに前方から荷重が入力された際、何れの箇所を確実な折れ点とするかについては考慮されておらず、更なる改良の余地があった。
この発明は、脆弱部によって変形を確実に生じさせて衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車体前部構造は、車両前後方向に延設され、上の稜線および下の稜線を有するフロントサイドフレームと、上の稜線に重ねられて、長手方向に沿うように配置される略L字断面に形成された上側スチフナと、上側スチフナとの間に隙間部を有して、下の稜線に重ねられて、長手方向に沿うように配置される略L字断面に形成された下側スチフナと上側スチフナおよび下側スチフナに重ねられるバルクヘッドと、を備える。上側スチフナは、バルクヘッドを跨いで車両前後方向へ延設される上の稜線側部分の先端部を有し、下側スチフナは、バルクヘッドを跨いで車両前後方向へ延設される下の稜線側部分の先端部を有し、下の稜線側部分の先端部が上側スチフナの上の稜線側部分の先端部より前後方に延長されていて、フロントサイドフレームには、バルクヘッドの近傍に脆弱部が形成されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、脆弱部によって変形を確実に生じさせて衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる車体前部構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の車体前部構造で、動力室の左右両側にフロントサイドフレームが配置されている様子を示す平面図である。
図2】実施形態1の車体前部構造で、コ字状のスチフナを有する左側のフロントサイドフからバックプレートを外した構成を説明する図1中矢印II方向から見た斜視図である。
図3】実施形態1の車体前部構造で、左側のフロントサイドフレームの構成を説明し、図2中III-III線に沿った位置での断面図である。
図4】実施形態1の車体前部構造で、二点鎖線で変形モードを説明する左フロントサイドフレームを上方から見た平面図である。
図5】実施形態2の車体前部構造で、略L字状のスチフナを有する左側のフロントサイドフレームの構成を説明する側面図である。
図6】実施形態2の車体前部構造で、左側のフロントサイドフレームの構成を説明し、図5中VI-VI線に沿った位置での断面図である。
図7】実施形態2の車体前部構造で、左側のフロントサイドフレームからバックプレートを外した様子を示す斜視図である。
図8】実施形態2の車体前部構造で、左側のフロントサイドフレームを示し、図7中VIII-VIII線に沿った位置での断面図である。
図9】実施形態2の車体前部構造で、左側のフロントサイドフレームの構成を説明し、図1中IX-IX線に沿った位置での断面図である。
図10】実施形態の車体前部構造で、バンパビームエクステンションの長さを変えて、フロントバンパの位置を前,後に設定する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施形態1】
【0008】
以下、本発明の実施形態1について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。方向を説明する際には、特に示さない限り、基本的に運転者から見た前後,左右あるいは上下に基づいて説明する。また、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0009】
図1に示すように、車両10の前部11には、図示しないエンジン、モータ等の動力源を収容する動力室Eが形成されている。動力室Eの左,右両側には、車両前後方向に延設される左,右一対のフロントサイドフレーム1,1が延設されている。
なお、左右のフロントサイドフレーム1,1は、ほぼ左,右対称の形状を有している。このため、本実施形態では、左側のフロントサイドフレーム1について主に説明して右側のフロントサイドフレーム1の説明を省略する。
【0010】
フロントサイドフレーム1の前端部1aには、フロントバンパ30を架設するバンパ接合プレート3が固定されている。バンパ接合プレート3には、アッパメンバ2(図9参照)から前側下方に延設された前端部2aが固定されている。前端部2aの車幅方向の内側には、フロントサイドフレーム1の前端部1aが車両前後方向で揃えられて併設されている。
【0011】
図1に示すように、フロントサイドフレーム1の前端部1aには、バンパビーム組立体31が取り付けられている。
バンパビーム組立体31は、バンパ接合プレート3を有するバンパビームエクステンション4と、左右一対のバンパビームエクステンション4,4にそれぞれ接続されて、車幅方向に延設されるフロントバンパ30とを有している。
【0012】
フロントバンパ30は、左右一対のバンパビームエクステンション4,4およびバンパ接合プレート3,3を介して、各フロントサイドフレーム1に連結されている。
また、フロントサイドフレーム1の後端部1iは、それぞれダッシュロアパネル5に接続されている。ダッシュロアパネル5は、動力室Eと車室Rとの間を隔てるように配置されている。フロントサイドフレーム1は、ダッシュロアパネル5の傾斜面の形状に沿わせて後端部1iを後方に向かうにつれて降下させるように延設されている。
【0013】
図2に示すように、フロントサイドフレーム1は、車幅方向内側で動力室Eに面する内壁面1bと、内壁面1bの上,下側縁の長手方向に沿って設けられた上下二つの稜線1c,1d(図3参照)と、各稜線1c,1dを挟んで略直交して接続されている上壁面1e,下壁面1fとを有している。なお、図2は、バックプレート15(図3参照)を省略して描いている。
フロントサイドフレーム1は、上壁面1e,下壁面1fにそれぞれ略直交して接続される折り返しフランジ部1g,1hを後部に一部有している。そして、これらの折り返しフランジ部1g,1hを有するフロントサイドフレーム1の後部の断面形状は、略ハット状となるように構成されている。
【0014】
フロントサイドフレーム1には、二つの稜線1c,1dに重ねられて長手方向に沿うスチフナ16と、スチフナ16の外側にさらに重ねられるバルクヘッド17とが設けられている。このうち、スチフナ16は、図3に示すように、上,下縁部16b,16cを底面部16aに対して略直交させた断面略コ字状に形成されている。スチフナ16の上,下の稜線16e,16fは、フロントサイドフレーム1の稜線1c,1dの内側に重ねて配置されている。
【0015】
また、図2に示すように、バルクヘッド17は、フロントサイドフレーム1のエンジン締結部50に設けられた第一バルクヘッド8と、エンジン締結部50の後方に配置されるサブフレーム締結部60に設けられた第二バルクヘッド9とを有している。第一バルクヘッド8及び第二バルクヘッド9は、いわゆる隔壁であり、フロントサイドフレーム1の内部空間を前後方向に仕切っている。
そして、スチフナ16は、第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド9を跨いで車両前後方向へ延設されている。
【0016】
フロントサイドフレーム1は、前方から順次、脆弱部20を構成する前方脆弱部40、中間脆弱部42および後方脆弱部45を有している。スチフナ16の先端部16d近傍には前方脆弱部40が設けられている。
図4に示すように、前方脆弱部40には、フロントサイドフレーム1の車幅方向で括れて外側縁を上面視略くの字状とする第一折れ点40aが形成されている。
また、フロントサイドフレーム1は、第一バルクヘッド8または第二バルクヘッド9の近傍にそれぞれ中間脆弱部42および後方脆弱部45が設けられている。
中間脆弱部42は、フロントサイドフレーム1の内側縁を上面視略くの字状とする第二折れ点42bを有している。中間脆弱部42は、フロントサイドフレーム1の上面に開口された第一ボルト挿通孔41を形成している。
【0017】
後方脆弱部45は、下面に開口された第二ボルト挿通孔44を有している(図2参照)。また、後方脆弱部45には、フロントサイドフレーム1の外側縁を上面視略くの字状とする第三折れ点45aが形成されている。
そして、フロントサイドフレーム1の車両前方から所定間隔を設けて後方へ順次配置することにより、車両前方からの荷重入力によって水平方向にジグザグに折れ曲がる折れ点が設けられている。
【0018】
さらに、図2に示すように、第一バルクヘッド8は、第一ナット51を有し、第二バルクヘッド9は、第二ナット52を有している。第一バルクヘッド8の第一ナット51は、第一ボルト挿通孔41に臨み、第二バルクヘッド9の第二ナット52は、第二ボルト挿通孔44に臨むように構成されている。
【0019】
そして、図4中二点鎖線で示すように、フロントサイドフレーム1は、前方からの荷重入力によりそれぞれの前方脆弱部40,中間脆弱部42および後方脆弱部45にてそれぞれ折曲する。
すなわち、フロントサイドフレーム1は、水平方向に交互に折れ曲がるように、幅狭な括れを有して側縁を略くの字とする第一折れ点40aと、エンジン締結部近傍に配置される第二折れ点42aと、サブフレーム締結部近傍に配置される第三折れ点45aとが車両前後方向で順次、内側または外側へ交互に折曲される。
このため、フロントサイドフレーム1は、前後方向に離間して設けられた前方脆弱部40,中間脆弱部42および後方脆弱部45からそれぞれ起点となって折曲が生じる。よって、確実に衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
【実施形態2】
【0020】
図5図10は、本発明の実施形態2の車体前部構造を示すものである。なお、前記実施形態1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2は、実施形態1の断面コ字形状のスチフナ16に替えて、断面L字形状の複数のスチフナを備えている点で、実施形態1と異なっている。
すなわち、図5に示すように、フロントサイドフレーム1の二つの稜線1c,1dには、長手方向に沿ってそれぞれ上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28が備えられている。上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、それぞれ縦壁面および水平壁面を略直交させて略L字断面に形成されている。上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、実施形態1のスチフナ16に相当する部材である。上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28のそれぞれは、スチフナ16と比較して各上下方向寸法が幅狭に形成されている。
さらに、上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27と、下側スチフナ28と、の間には、所定の寸法離間した空間を形成して隙間部29が設けられている。隙間部29は、実施形態1のコ字状のスチフナ16にも実施形態2のL字状のスチフナ26等にも変更可能なように、各スチフナ16およびスチフナ26~28等がいずれも適合する空間形状に形成されている。
【0021】
フロントサイドフレーム1には、上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、各稜線26e,27e,28fがそれぞれ稜線1cおよび稜線1dに沿うように重ねられている。
上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28の車幅方向外側には、第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド18が前後方向に離間して重ねられている。そして、フロントサイドフレーム1とともに三枚で接合されている(図6参照)。
第一バルクヘッド8は、上側前方スチフナ26および下側スチフナ28に跨るように配置されている。第一バルクヘッド8の上下縁及び車幅内側縁は、上側前方スチフナ26および下側スチフナ28とフロントサイドフレーム1とともに三枚で接合されている。
第二バルクヘッド18は、上側後方スチフナ27および下側スチフナ28に跨るように配置されている。第二バルクヘッド18の上下縁及び車幅内側縁は上側後方スチフナ27および下側スチフナ28とフロントサイドフレーム1とともに三枚で接合されている。
このうち、上側前方スチフナ26および上側後方スチフナ27は、下側スチフナ28と比較して短尺に形成されていて、前後方向に離間して配置されている。そして、それぞれ第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド18に重ねられている。また、上側前方スチフナ26は、第一バルクヘッド8よりも前方へ先端部26aを突出させている。
【0022】
また、下側スチフナ28は、第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド18に跨るように配置されている。下側スチフナ28は、第一バルクヘッド8よりも前方へ先端部28aを突出させている。さらに、下側スチフナ28は、第二バルクヘッド18よりも後方へ後端28bを延設している。フロントサイドフレーム1の後端は、ダッシュロアパネル5(図1参照)の傾斜面から車室Rのフロア下面にわたり延設されるリヤエンド部材に接合されている。そして、フロントサイドフレーム1の後端の下降する稜線1dに沿って延設された後端28bは、車両後方に向かうにつれて降下するように形成されている。
【0023】
本実施形態2では、各上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28の板厚が同一の板厚となるように構成されている。なお、実施形態1のコ字状のスチフナ16の板厚と、各上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28の板厚とを同一の板厚としてもよい。これにより、第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド9のそれぞれを共通の部品で構成することが出来、部品の種類の増大が抑制される。また、いずれのスチフナを用いても板厚は、同一である。そして、同一形状のバルクヘッドを用いることにより、マウント部の位置を同じとすることができる。したがって、必要な強度が異なる車両間でマウント部を統一することができる。
【0024】
下側スチフナ28は、第一バルクヘッド8を跨いで車両前後方向へ延設されている。また、フロントサイドフレーム1には、前方へ延設された先端部28aの近傍に脆弱部20を構成する前方脆弱部40が配置されている。さらに、フロントサイドフレーム1には、第一バルクヘッド8または第二バルクヘッド18の近傍に脆弱部20を構成する中間脆弱部42および後方脆弱部45が形成されている。
【0025】
図5に示すように、フロントサイドフレーム1では、下の稜線1d側部分の下側スチフナ28の先端部28aが上の稜線1c側部分の上側前方スチフナ26の先端部26aより前方に延長されている。
また、フロントサイドフレーム1では、下の稜線1d側部分の下側スチフナ28の後端28bが上の稜線1c側部分の上側後方スチフナ27の後端27bより後方に延長されている。
【0026】
図7に示すように、フロントサイドフレーム1は、上側前方スチフナ26および下側スチフナ28と第一バルクヘッド8とを車幅方向かつ上下方向に重ねて接合している。なお、図7は、バックプレート15(図3参照)を省略して描いている。上側前方スチフナ26および下側スチフナ28と第一バルクヘッド8との間には、締結ナットが保持される第一ボルト挿通孔41が形成されている(図2参照)。
また、図8に示すように、フロントサイドフレーム1の車幅方向の外側には、バックプレート15が配置されている。バックプレート15の幅方向左,右側縁は、フロントサイドフレーム1の折り返しフランジ部1g,1hに接合されている。
そして、第一バルクヘッド8は、折り返しフランジ部1g,1hおよびバックプレート70間に挟持される上下一対の舌片71,72を有している。
【0027】
さらに、図1に示すように、フロントサイドフレーム1の前端部1aには、バンパ接合プレート3を介してバンパビームエクステンション4を有するバンパビーム組立体31が備えられている。
バンパビームエクステンション4は、車幅方向に延設されるフロントバンパ30のバンパビームおよび前端部1a間に組付けられる。
図9に示すように、フロントサイドフレーム1の前端部1aは、前後方向に延設された中空構造を呈し、車幅方向内側の内側壁12と、車幅方向外側でアッパメンバ2の前端部2a外側面を構成する外側壁14と、その中間で、前端部1a内空間の隔壁となる補強部材によって構成された補強壁13と、を有している。
バンパビームエクステンション4は、前後方向に延びるほぼ箱型の部材であり、車幅方向内側の延長壁面22と、車幅方向外側の延長外側壁24と、その中間の延長壁面23と、を有している。
すなわち、バンパビームエクステンション4は、前端部1aを構成する内側壁12,補強壁13,外側壁14に対して前後方向に整列する延長壁面22,23,24が設けられている。バンパビームエクステンション4は、車幅方向中間位置に設けられた上,下の壁面部材4a,4bと、左,右の延長壁面22,24と、が用いられて周囲が囲まれている。バンパビームエクステンション4の内部空間は、延長壁面22,24と平行に上,下の壁面部材4a,4bの対向部位から上下に延設される延長壁面23によって画成されている。
そして、各延長壁面22,23,24は、3つの内側壁12,補強壁13,外側壁14に対して前後方向に整列している。
【0028】
図9に示すように、バンパビームエクステンション4は、フロントサイドフレーム1の前端部1aを構成する内側壁12,補強壁13,外側壁14に対して整列する延長壁面22,23,24を有している。
図10中二点鎖線に示すように、延長壁面22,23,24の前後方向寸法を実線で示す基準となるバンパビームエクステンション4よりも長く設定することができる。これによりフロントバンパ30は、車体から所望の距離だけ離間させた位置に配置することが出来、車種対応性を向上させることができる。
他の構成および作用効果については、実施形態1の車体前部構造と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0029】
次に、本実施形態の車体前部構造の作用効果について説明する。
図1に示すように、車両10の前後方向に延設され、少なくとも二つの稜線1c,1dを有するフロントサイドフレーム1と、二つの稜線1c,1dに重ねられて長手方向に沿うスチフナ16と、スチフナ16に重ねられるバルクヘッド17と、を備えている。
スチフナ16は、バルクヘッド17を跨いで車両前後方向へ延設され、フロントサイドフレーム1には、バルクヘッド17の近傍に脆弱部20が形成されている。
【0030】
このため、確実に脆弱部20によって変形が生じて衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
詳しくは、フロントサイドフレーム1は、前方から入力した荷重によって剛性の変化の大きいバルクヘッド17近傍の脆弱部20から確実に折曲される。また、スチフナ16は、フロントサイドフレーム1の二つの稜線1c,1dとともに折れる。このため、衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
【0031】
図3に示すように、スチフナ16は、略コ字断面を有している。
略コ字断面のスチフナ16は、フロントサイドフレーム1の二つの稜線1c,1dとともに折れる。このため、衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
【0032】
図5に示すように、スチフナ16は、それぞれ縦壁面および水平壁面を略直交させて略L字断面に形成されている。スチフナ16は、フロントサイドフレーム1の上,下二つの稜線1c,1dにそれぞれ沿う上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28を有している。
略L字断面の上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、フロントサイドフレーム1の上,下二つの稜線1c,1dとともに折れる。このため、衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
【0033】
なお、図3に示す実施形態1のスチフナ16と、図6に示す実施形態2の上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28とを同一の板厚で形成することもできる。この場合、稜線1c,1dを有するフロントサイドフレーム1および第一バルクヘッド8等は、共通部品で構成できる。
また、隙間部29の形状を各スチフナ16およびスチフナ26~28等のいずれもが適合する空間形状に設定する。特に図6に示す実施形態2で上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28が装着される際、実施形態1のコ字状のスチフナ16の厚さ寸法に相当する隙間部29を形成する。これにより、実施形態1のコ字状のスチフナ16にも実施形態2のL字状のスチフナ26等にも変更可能となる。
【0034】
図5に示すように、フロントサイドフレーム1は、前方からの荷重入力によりそれぞれの中間脆弱部42および後方脆弱部45で折曲する。
このため、フロントサイドフレーム1全長にて変形量を増大させて、入力する荷重の吸収性を向上させることができる。バルクヘッド17は、フロントサイドフレーム1の少なくともエンジン締結部50に設けられた第一バルクヘッド8と、エンジン締結部50の後方に配置されるサブフレーム締結部60に設けられた第二バルクヘッド9とを有している。第一バルクヘッド8は、第一ボルト挿通孔41に臨む第一ナット51を有し、第二バルクヘッド9は、第二ボルト挿通孔44に臨む第二ナット52を有している。
前方脆弱部40は、上面に開口された第一ボルト挿通孔41を有する中間脆弱部42と、下面に開口された第二ボルト挿通孔44を有する後方脆弱部45とを有している。そして、フロントサイドフレーム1の車両前方から所定間隔を設けて後方へ順次配置することにより、車両前方からの荷重入力によって水平方向に折れ曲がる折れ点が設けられている。
【0035】
すなわち、フロントサイドフレーム1は、水平方向に交互に折れ曲がる、第一折れ点40aと、エンジン締結部近傍に配置される第二折れ点42aと、サブフレーム締結部近傍に配置される第三折れ点45aとを車両前方からこの順番に有している。
このため、第一折れ点40a、第二折れ点42a、第三折れ点45aが車両前後方向で順次、折曲して所望の変形モードを容易に設定できる。このため、入力する荷重の吸収性を向上させることができる。
【0036】
図5に示すように、上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、フロントサイドフレーム1の二つの稜線1c,1dに沿って配置されるとともに、下側スチフナ28は、第一バルクヘッド8を跨いで前方へ延設される先端部28aを有し、フロントサイドフレーム1には、先端部28aの近傍に第一折れ点40aを有する前方脆弱部40が形成されている。
【0037】
フロントサイドフレーム1は、前方から入力した荷重によって前方脆弱部40の第一折れ点40aから確実に折曲される。また、上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28は、フロントサイドフレーム1とともに二つの稜線1c,1dにて折れる。すなわち、バルクヘッドの近くに脆弱部20を設けることで、強度差が大きくなり、脆弱部から確実に折れるように構成できる。このため、フロントサイドフレーム1の全長にわたる屈曲状態では、生じるモーメントを増大させてさらに衝撃エネルギの吸収量を増大させることができる
図5に示すように、フロントサイドフレーム1では、下の稜線1d側部分の下側スチフナ28の先端部28aが上の稜線1c側部分の上側前方スチフナ26の先端部26aより前方に延長されている。
【0038】
なお、フロントサイドフレーム1は、フロア下方からダッシュロア下面に沿って傾斜し、フロアより上方で水平・前方に延びるように屈曲する形状を呈している。このため、車両前方からの入力する荷重で先端が上向きに持ち上がる変形を生じる虞がある。
しかしながら、本実施形態の下側スチフナ28は、図5に示すように先端部28aを上側前方スチフナ26の先端部26a部分より前方に延長している。これにより、フロントサイドフレーム1は、先端が上向きに持ち上がる方向に対する剛性を向上させて変形を抑制できる。したがって、所望の水平方向へ変形を促進することができる。
【0039】
また、フロントサイドフレーム1では、下の稜線1d側部分の下側スチフナ28の後端28bが上の稜線1c側部分の上側後方スチフナ27の後端27bより後方に延長されている。
【0040】
下側スチフナ28の後端28bが上の稜線1c側部分の上側後方スチフナ27の後端27bより後方に延長されている。車両前方からの荷重入力によっても、フロントサイドフレーム1の先端が上向きに持ち上がる方向に対する剛性を向上させて変形を抑制できる。したがって、所望の水平方向へ変形を促進することができる。さらに、実施形態2のフロントサイドフレーム1は、ダッシュロアパネル5(図1参照)の傾斜面の形状に沿わせて下側スチフナ28が降下するように延設されている。このため、さらに、フロントサイドフレーム1の先端が上向きに持ち上がる方向に対する剛性を向上させて変形を抑制できる。
【0041】
図7に示すように、フロントサイドフレーム1は、車幅方向に上側前方スチフナ26および下側スチフナ28と第一バルクヘッド8とを重ねて接合している。上側前方スチフナ26および下側スチフナ28と第一バルクヘッド8との間には、締結ナットが保持される第一ボルト挿通孔41が形成されている(図2参照)。
また、フロントサイドフレーム1の車幅方向の外側には、バックプレート15が配置されている。バックプレート15の幅方向左,右側縁は、フロントサイドフレーム1の折り返しフランジ部1g,1hに接合されている。
そして、第一バルクヘッド8は、折り返しフランジ部1g,1hおよびバックプレート70間に挟持される上下一対の舌片71,72を有している。
【0042】
上側前方スチフナ26および下側スチフナ28で補強されたフロントサイドフレーム1には、第一バルクヘッド8の舌片71,72がバックプレート15との間に挟持されて接合される。これにより容易に所望の位置に締結ナットを設定できる。
また、上側前方スチフナ26および下側スチフナ28で剛性を向上させた部分に締結部が設定される。
したがって、エンジンマウント、トランスミッションマウントやサブフレーム等の締結部をフロントサイドフレーム1の任意の位置に設けて、締結ボルトによりホルト締結することにより所望の取付強度を得られる。
【0043】
図1に示すように、フロントサイドフレーム1の前端部1aには、バンパ接合プレート3を介してバンパビームエクステンション4を有するバンパビーム組立体31が備えられている。
バンパビーム組立体31のうち、左,右それぞれのバンパビームエクステンション4,4は、車幅方向に延設されるフロントバンパ30の左,右両端後面側と、各前端部1a,1aに設けられたバンパ接合プレート3との間に組付けられる。
図9に示すように、バンパビームエクステンション4は、前端部1aを構成する内側壁12,補強壁13,外側壁14に対して前後方向に整列する延長壁面22,23,24が設けられている。バンパビームエクステンション4は、延長壁面22,23,24の周囲を上,下および左,右の壁面部材にて覆うことにより略箱型となるように形成されている。
【0044】
そして、バンパビームエクステンション4の前後長さは、延長壁面22,23,24の前後方向寸法を変更することにより、複数の車種に同一のバンパビームを対応させて組付けることができる。特に、バンパビームエクステンション4の延長壁面22,23,24は、フロントサイドフレーム1の前端部1aを構成する内側壁12,補強壁13,外側壁14に対して前後方向に整列して配置されている。このため、前方からの荷重入力に対応するバンパビームエクステンション4の前後長さを算出して設定することにより容易に所望の強度を得ることができる。
【0045】
上述してきたように、本実施形態の車体前部構造は、確実に脆弱部20によってフロントサイドフレーム1全体の変形を生じさせて衝撃エネルギ吸収量を増大させることができる。
また、各スチフナを同一の板厚としてもよい。この場合、いずれのスチフナを用いても共通の形状のバルクヘッドによって同じ位置にマウント部を構成することができる。このため、車重が異なる等必要な強度が異なる車種間で共通部品を用いることにより、部品点数の増大を抑制してトータルの製造コストを削減できるとともに部品点数を削減できる。
例えば、フロントサイドフレーム1は、水平な直線部分だけつくればよいので金型が安価となる。さらにフロントサイドフレーム1の一部に同じ板厚のスチフナ積層部を形成する。これにより、車種が異なっても第一ナット51の車幅方向位置を揃えて、エンジン締結部50やサブフレーム締結部60を共通化できる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0047】
本実施形態では、スチフナ16は、上側前方スチフナ26,上側後方スチフナ27および下側スチフナ28と同一の板厚で異なる形状に形成されている。しかしながら、特にこれに限らず、たとえば、剛性の異なる鋼板や、繊維素材あるいはそれらのハイブリッド素材等で構成してもよく同一の板厚とならなくてもよい。また、スチフナ16がフロントサイドフレーム1に積層されるスチフナ積層部で第一バルクヘッド8等と合わせた板厚を同一としてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、第一バルクヘッド8および第二バルクヘッド9を用いたものを示して説明してきたが特にこれに限らない。例えば、単数もしくは三つ以上の複数のバルクヘッドを用いて構成してもよい。すなわち、バルクヘッドの形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 フロントサイドフレーム
1c,1d 稜線
10 車両
16 スチフナ
17 バルクヘッド
20 脆弱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10