(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】パーティション装置
(51)【国際特許分類】
A47B 13/00 20060101AFI20241024BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20241024BHJP
A47G 5/00 20060101ALI20241024BHJP
A47B 96/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
F24F9/00 A
A47G5/00 D
A47B96/04 Z
(21)【出願番号】P 2021106689
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】稲田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敬介
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-196840(JP,A)
【文献】特開2011-088127(JP,A)
【文献】特開平2-309146(JP,A)
【文献】特開平11-287488(JP,A)
【文献】米国特許第06318113(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102004032454(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/00
F24F 9/00
A47G 5/00
A47B 96/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、設置面(S)上において左右方向に立設される遮蔽板(1)と、
一端に空気を取り込む吸気口(3)が設けられ、他端に吸気口(3)から取り込んだ空気を吹き出す吹出口(5)が設けられる送給風路(6)と、
送給風路(6)に設けられ、吹出口(5)から空気を吹き出して遮蔽板(1)の前後の少なくとも一方の表面に沿ってエアカーテンを形成する送風手段(4)と、
を備えることを特徴とするパーティション装置。
【請求項2】
遮蔽板(1)に、該遮蔽板(1)を前後に貫通する独立多数の開口(32)からなる開口群(33)が形成されている請求項1に記載のパーティション装置。
【請求項3】
開口群(33)は、単位面積当たりに形成される開口(32)の合計開口面積が相対的に大きな密開口群(34)と、単位面積当たりに形成される開口(32)の合計開口面積が相対的に小さな粗開口群(35)とを有し、
密開口群(34)に対応する遮蔽板(1)の表面において形成されるエアカーテンの空気流量が、粗開口群(35)に対応する遮蔽板(1)の表面において形成されるエアカーテンの空気流量よりも大きくなるように構成されている請求項2に記載のパーティション装置。
【請求項4】
遮蔽板(1)の下方に、該遮蔽板(1)を起立保持する左右に長い箱状の保持台(2)が設けられて、該保持台(2)の内部が送給風路(6)を構成している請求項1から3のいずれかひとつに記載のパーティション装置。
【請求項5】
吸気口(3)が、保持台(2)の左右の側面の少なくとも一方に設けられている請求項4に記載のパーティション装置。
【請求項6】
吸気口(3)の周囲に、送風手段(4)の駆動状態を操作する操作部(16)が設けられている請求項5に記載のパーティション装置。
【請求項7】
保持台(2)の内部に、送風手段(4)に駆動電力を供給する電源部(21)が設けられており、
保持台(2)の内部における左右の端部の一方に送風手段(4)が配され、他方に電源部(21)が配されている請求項6に記載のパーティション装置。
【請求項8】
エアカーテンの下流側にあたる遮蔽板(1)の端部に、エアカーテンが形成される表面側において、遮蔽板(1)から遠ざかる向きにエアカーテンを変向案内するガイド体(26)が設けられている請求項1から7のいずれかひとつに記載のパーティション装置。
【請求項9】
遮蔽板(1)の上下方向に沿ってエアカーテンが形成されており、
遮蔽板(1)の左右端に、遮蔽板(1)の左右縁からそれぞれ前後方向に延設される側板(27)が上下方向にわたって設けられている請求項1から8のいずれかひとつに記載のパーティション装置。
【請求項10】
遮蔽板(1)に、エアカーテンが形成される表面側へと遮蔽板(1)が膨出する膨出部(38)が設けられている請求項1に記載のパーティション装置。
【請求項11】
膨出部(38)を含む遮蔽板(1)に、該遮蔽板(1)を前後に貫通する独立多数の開口(32)からなる開口群(33)が形成されている請求項10に記載のパーティション装置。
【請求項12】
膨出部(38)の頂部とエアカーテンの下流側にあたる膨出部(38)の端部との間の部分において遮蔽板(1)に形成される開口(32)の合計開口面積が、膨出部(38)の頂部とエアカーテンの上流側にあたる膨出部(38)の端部との間の部分において遮蔽板(1)に形成される開口(32)の合計開口面積よりも大きくなるように、開口群(33)が形成されている請求項11に記載のパーティション装置。
【請求項13】
開口(32)が、遮蔽板(1)が膨出する表面側に向かって孔径が窄まるテーパー孔で構成されている請求項11または12に記載のパーティション装置。
【請求項14】
送風手段(4)で送給されエアカーテンを形成したのちの空気を取り込む回収口(44)が設けられている請求項1から13のいずれかひとつに記載のパーティション装置。
【請求項15】
回収口(44)から取り込んだ空気を吸気口(3)へと導く循環風路(49)が設けられており、
吹出口(5)から吹き出された空気が、循環風路(49)および送給風路(6)を介して再び吹出口(5)から吹き出されるように構成されている請求項14に記載のパーティション装置。
【請求項16】
送給風路(6)に、吹出口(5)へと送給される空気に対してオゾンを供給するオゾン発生部(8)が設けられている請求項1から15のいずれかひとつに記載のパーティション装置。
【請求項17】
オゾン発生部(8)の動作を制御する制御部(15)を備えており、
送給風路(6)に、空気に含まれるオゾンの濃度を検出するオゾン濃度センサ(56)が設けられており、
オゾン濃度センサ(56)におけるオゾンの検出結果に基づいて、制御部(15)がオゾン発生部(8)の動作を制御するように構成されている請求項16に記載のパーティション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫の飛散を抑制するパーティション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパーティション装置は例えば特許文献1(発明の名称:卓上パーテーション)に開示されている。特許文献1には、透明な板材で形成される衝立パネル(遮蔽板)と、当該衝立パネルを起立保持する一対のスタンドとを備える卓上パーテーション(パーティション装置)が開示されている。同様の構成を備えるものは特許文献2にも見ることができ、そこには、四周を枠体で支持された遮蔽シート(遮蔽板)と、枠体を介して遮蔽シートを起立姿勢に保持する一対の脚部とを備える飛散防止用パーテション(パーティション装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3229988号公報
【文献】実用新案登録第3228491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2のパーティション装置を人と遮蔽板とが正対する状態でテーブル上に載置した場合には、咳やくしゃみなどで生じた飛沫を遮蔽板で堰き止めることができるので、飛沫が遮蔽板を超えて飛散することを防ぐことができる。また、向かい合わせに着席した人どうしの間を遮蔽板が横切る状態でテーブル上にパーティション装置を載置した場合には、とくに会話時における飛沫を遮蔽板で堰き止めて、飛沫が相手方へ到達することを防ぐことができる。しかし、特許文献1および特許文献2のパーティション装置では、飛沫を堰き止めた際、その一部が遮蔽板に付着することが避けられず、継続的な使用により遮蔽板の表面が飛沫で汚損されやすく、遮蔽板の衛生状態を良好に保つことができない点に問題があった。
【0005】
本発明は、継続的に使用されたときにも遮蔽板の表面が飛沫で汚損されることがなく、遮蔽体を良好な衛生状態に保つことができるパーティション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーティション装置は、透光性を有し、設置面S上において左右方向に立設される遮蔽板1と、一端に空気を取り込む吸気口3が設けられ、他端に吸気口3から取り込んだ空気を吹き出す吹出口5が設けられる送給風路6と、送給風路6に設けられ、吹出口5から空気を吹き出して遮蔽板1の前後の少なくとも一方の表面に沿ってエアカーテンを形成する送風手段4と、を備えることを特徴とする。
【0007】
遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されている。
【0008】
開口群33は、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に大きな密開口群34と、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に小さな粗開口群35とを有する。密開口群34に対応する遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量は、粗開口群35に対応する遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量よりも大きくなるように構成されている。
【0009】
遮蔽板1の下方に、該遮蔽板1を起立保持する左右に長い箱状の保持台2が設けられて、該保持台2の内部が送給風路6を構成している。
【0010】
吸気口3は、保持台2の左右の側面の少なくとも一方に設けられている。
【0011】
吸気口3の周囲に、送風手段4の駆動状態を操作する操作部16が設けられている。
【0012】
保持台2の内部に、送風手段4に駆動電力を供給する電源部21が設けられている。保持台2の内部における左右の端部の一方に送風手段4が配され、他方に電源部21が配されている。
【0013】
エアカーテンの下流側にあたる遮蔽板1の端部に、エアカーテンが形成される表面側において、遮蔽板1から遠ざかる向きにエアカーテンを変向案内するガイド体26が設けられている。
【0014】
遮蔽板1の上下方向に沿ってエアカーテンが形成されている。遮蔽板1の左右端に、遮蔽板1の左右縁からそれぞれ前後方向に延設される側板27が上下方向にわたって設けられている。
【0015】
遮蔽板1に、エアカーテンが形成される表面側へと遮蔽板1が膨出する膨出部38が設けられている。
【0016】
膨出部38を含む遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されている。
【0017】
膨出部38の頂部とエアカーテンの下流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積は、膨出部38の頂部とエアカーテンの上流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積よりも大きくなるように、開口群33が形成されている。
【0018】
開口32は、遮蔽板1が膨出する表面側に向かって孔径が窄まるテーパー孔で構成されている。
【0019】
送風手段4で送給されエアカーテンを形成したのちの空気を取り込む回収口44が設けられている。
【0020】
回収口44から取り込んだ空気を吸気口3へと導く循環風路49が設けられている。吹出口5から吹き出された空気は、循環風路49および送給風路6を介して再び吹出口5から吹き出されるように構成されている。
【0021】
送給風路6に、吹出口5へと送給される空気に対してオゾンを供給するオゾン発生部8が設けられている。
【0022】
オゾン発生部8の動作を制御する制御部15を備えている。送給風路6に、空気に含まれるオゾンの濃度を検出するオゾン濃度センサ56が設けられており、オゾン濃度センサ56におけるオゾンの検出結果に基づいて、制御部15がオゾン発生部8の動作を制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパーティション装置は、透光性を有し、設置面S上において左右方向に立設される遮蔽板1と、一端に空気を取り込む吸気口3が設けられ、他端に吸気口3から取り込んだ空気を吹き出す吹出口5が設けられる送給風路6と、送給風路6に設けられ、吹出口5から空気を吹き出して遮蔽板1の前後の少なくとも一方の表面に沿ってエアカーテンを形成する送風手段4とを備える。このように、送風手段4で遮蔽板1の前後の少なくとも一方の表面にエアカーテンを形成すると、当該エアカーテンで遮蔽板1の表面を保護して、飛沫が遮蔽板1の表面に付着することを防ぐことができるので、継続的に使用した場合でも遮蔽板1の表面が飛沫で汚損されることがなく、当該遮蔽板1を良好な衛生状態に保つことができる。なお、吹出口5から吹き出された空気は、遮蔽板1に沿って流れるため、遮蔽板1の表面に安定したエアカーテンを形成することができる。
【0024】
遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されていると、人どうしの間に遮蔽板1を挟んで会話する際にも、開口32を介して相手方に声が届きやすく、通常の声量でも支障なく会話を楽しむことができる。遮蔽板1の表面にはエアカーテンが形成されているため、空気の層で飛沫が相手方に至ることを防ぐことができる。因みに、開口32がない場合には、遮蔽板1により会話時の音声が遮られるので、より大きな声量で会話が行われる傾向があり、その分飛沫の飛散が助長されるおそれがある。
【0025】
開口群33は、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に大きな密開口群34と、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に小さな粗開口群35とを有し、密開口群34が配される遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量が、粗開口群35が配される遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量よりも大きくなるように構成する。これによれば、粗開口群35と比較して、より飛沫が通過するおそれのある密開口群34に対応する遮蔽板1の表面に形成されるエアカーテンの強度を高く設定することで、飛沫が相手方へと至ることを確実に阻止することができる。また、遮蔽板1の全体において強度の高いエアカーテンを形成する場合に比べて、送風手段4の送給能力を抑えることができ、パーティション装置の運転コストを抑えることができる。
【0026】
遮蔽板1の下方に、該遮蔽板1を起立保持する左右に長い箱状の保持台2が設けられていると、遮蔽板1を箱状の保持台2で確りと保持して、設置面S上で安定的に遮蔽板1を立設させることができる。また、パーティション装置を移動させる際にも、設置面S上に置くだけで、遮蔽板1を容易に起立保持することができる。加えて、保持台2の内部に送給風路6が構成されていると、別途送給風路6を形成する必要がない分、パーティション装置の構造を簡素化できる。
【0027】
例えば遮蔽板1の前後面が人と正対する状態でパーティション装置が使用されるとき、保持台2の側面には飛沫が飛来し難い。このため吸気口3が保持台2の側面に設けられていると、吸気口3から吸込まれる空気に飛沫が含まれることを抑えることができるので、飛沫を含まない空気を送給風路6へと取り込んでエアカーテンを形成することができる。
【0028】
吸気口3の周囲に、送風手段4の駆動状態を操作する操作部16が設けられていると、操作部16を操作する手で、吸気口3付近の空気の流れを感じることができるので、操作部16の操作によりパーティション装置の駆動が開始したかどうか、あるいは操作部16の操作によりパーティション装置の駆動が停止したかどうかを手の感覚で認識することができる。
【0029】
保持台2の内部に、送風手段4に駆動電力を供給する電源部21が設けられており、保持台2の内部における左右の端部の一方に送風手段4が配され、他方に電源部21が配されていると、パーティション装置の重量配分を左右に分配できるので、パーティション装置の全体の重量バランスが左右いずれかに偏るのを回避して、遮蔽板1をより安定的に設置面S上に立設させることができる。保持台2の内部における左右の端部の一方に送風手段4が配され、他方に電源部21が配されていると、電源部21が送給風路6内で通気抵抗となることはなく、送風手段4の電力消費を抑えることができる。
【0030】
エアカーテンの下流側にあたる遮蔽板1の端部に、エアカーテンが形成される表面側において、遮蔽板1から遠ざかる向きにエアカーテンを変向案内するガイド体26が設けられていると、遮蔽板1の表面でエアカーテンを形成したのちの空気の流れを、向かい合う相手方から離れる方向へと指向させることができるので、飛沫が相手方に至ることを抑えることができる。
【0031】
遮蔽板1の上下方向に沿ってエアカーテンが形成されており、遮蔽板1の左右端に遮蔽板1の左右縁からそれぞれ前後方向に延設される側板27が上下方向にわたって設けられていると、遮蔽板1の左右方向へエアカーテンが拡散することを防ぐことができるので、遮蔽板1の表面に的確にエアカーテンを形成できる。
【0032】
遮蔽板1に、エアカーテンが形成される表面側へと遮蔽板1が膨出する膨出部38が設けられていると、遮蔽板1の表面に形成されるエアカーテンを膨出部38の領域において増速できるので、膨出部38が形成された遮蔽板1部分においてより強度の高いエアカーテンを形成できる。したがって、最も飛沫が飛来しやすい位置に膨出部38を配することで、その表面に飛沫が付着することを確実に防ぐことができる。
【0033】
膨出部38を含む遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されていると、人どうしの間に遮蔽板1を挟んで会話する際にも、開口32を介して相手方に声が届きやすく、通常の声量でも支障なく会話を楽しむことができる。尤も、遮蔽板1の表面にはエアカーテンが形成されているため、飛沫が相手方に至ることは防ぐことができる。
【0034】
膨出部38の頂部とエアカーテンの下流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積が、膨出部38の頂部とエアカーテンの上流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積よりも大きくなるように、開口群33を形成する。これによれば、開口群33の開口面積を大きくしながら、開口32へ空気が吹き込まれることを抑えることができるので、安定的にエアカーテンを形成することができる。これは、膨出部38の頂部よりもエアカーテンの上流側の膨出部38においては、エアカーテンを形成する空気が遮蔽板1の表面に衝突して変向されるため、当該膨出部38の部分に多数の開口32が存在すると、開口32にエアカーテンを形成する空気が吹き込んで流れが乱れるおそれがあるが、本発明の構成を採ることで、上記のような現象を抑制できることに拠る。
【0035】
開口32が、遮蔽板1が膨出する側の面に向かって孔径が窄まるテーパー孔で構成されていると、開口32にエアカーテンを形成する空気が吹き込まれることをより抑えることができるので、エアカーテンを形成する空気の流れが乱れることをより確実に防ぐことができる。
【0036】
送風手段4で送給されエアカーテンを形成したのちの空気を取り込む回収口44が設けられていると、エアカーテン形成後の空気が飛沫とともに周囲に拡散されることを防ぐことができる。
【0037】
回収口44から取り込んだ空気を吸気口3へと導く循環風路49が設けられており、吹出口5から吹き出された空気が、循環風路49および送給風路6を介して再び吹出口5から吹き出されるように構成されていると、循環する空気に飛沫を封じ込めて、飛沫が周囲に拡散されることを確実に防ぐことができる。
【0038】
送給風路6に、吹出口5へと送給される空気に対してオゾンを供給するオゾン発生部8が設けられていると、エアカーテンを形成する空気や飛沫に含まれるウイルス、臭気などをオゾンの酸化還元反応で除菌、消臭処理することができる。なお、エアカーテン形成後の空気が遮蔽板1の周囲へと拡散される形態のパーティション装置の場合には、当該パーティション装置の周囲の空気に対して除菌、消臭処理を行うことができる。
【0039】
オゾン発生部8の動作を制御する制御部15を備えており、送給風路6に空気に含まれるオゾンの濃度を検出するオゾン濃度センサ56が設けられており、オゾン濃度センサ56におけるオゾンの検出結果に基づいて、制御部15がオゾン発生部8の動作を制御するように構成することができる。これによれば、エアカーテンを形成する空気のオゾン濃度を任意の濃度に調整することができるので、オゾンの濃度が過度に上昇し、あるいは低下し過ぎることなく、除菌、消臭処理に最適なオゾン濃度に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパーティション装置の部分破断側面図である。
【
図2】同パーティション装置の全体を示す斜視図である。
【
図3】同パーティション装置の縦断正面図と、要部の部分拡大図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るパーティション装置の部分破断側面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るパーティション装置の縦断側面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係るパーティション装置の縦断側面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態に係るパーティション装置の縦断正面図である。
【
図10】本発明の第6実施形態に係るパーティション装置の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
図1から
図4に本発明に係るパーティション装置の第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1から
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において、パーティション装置は、テーブルの天板などの設置面S上に設置されるものであり、設置面S上に立設される遮蔽板1を備える。遮蔽板1は、全体が透明な板体(透光性を有する板状体)で形成されて、設置面S上に左右に伸びる壁状に構成される。遮蔽板1は、その下縁が遮蔽板1の下方に設けられる保持台2で起立保持されて設置面S上に立設される。保持台2は、左右に長い四角箱状に構成されており、遮蔽板1は保持台2の上面の前後方向の中央部に固定されている。遮蔽板1は、アクリル、ABS樹脂、ポリカーボネートなどの透明度が良好な素材で形成することが望ましい。
【0042】
図2および
図3に示すように、保持台2の左側面には、保持台2の内外に連通し、該保持台2の内部に空気を取り込む前後一対の吸気口3が形成されており、各吸気口3は丸孔状に形成されその開口面はメッシュカバーで覆われている。保持台2の内部の左端には、各吸気口3と正対するように前後一対のファン(送風手段)4・4が設置されている。各ファン4は、モータを駆動源とする軸流式ファンからなる。保持台2の上壁には、遮蔽板1の前後において開口される吹出口5が形成されており、吸気口3から吹出口5に至る保持台2の内部は、空気の送給風路6とされている。ファン4を駆動すると、吸気口3から保持台2の内部に空気が取り込まれ、当該空気は送給風路6を加圧送給されたのち、吹出口5から上方に向かって吹き出される。前側の吹出口5から吹き出された空気は、遮蔽板1の前側表面に沿って下から上へと流れるエアカーテンを形成し、後側の吹出口5から吹き出された空気は、遮蔽板1の後側表面に沿って下から上へと流れるエアカーテンを形成する。
【0043】
図3に示すように、各ファン4の右隣には、前後一対のオゾン発生部8・8が設置されている。各オゾン発生部8は、針状に形成された放電電極9と、クラウン状に形成され、放電電極9と正対するように配される対向電極10と、これら両電極9・10を支持する電極ホルダー11などで構成される。前後のオゾン発生部8・8の間には、オゾン発生部8の両電極9・10間にオゾンを生成するための電圧を印加する駆動ユニット12が配されている。駆動ユニット12は、パルス発生回路、トランスを含む昇圧回路などで構成される。
【0044】
図1および
図3に示すように、一対のファン4の間には、ファン4やオゾン発生部8の動作を制御する制御部15が設置されている。制御部15はパーティション装置の駆動状態を操作する操作部16を備えており、該操作部16は、ファン4およびオゾン発生部8を駆動あるいは停止させる電源スイッチ17と、ファン4の回転数の高低を変更する風量切換スイッチ18とで構成される。これらスイッチ17・18は、保持台2の左側面に形成される一対の吸気口3の間において上下に露出しており、上側が電源スイッチ17、下側が風量切換スイッチ18である。
【0045】
両スイッチ17・18は、押込み操作されるタクトスイッチで構成されており、ファン4およびオゾン発生部8が停止している状態で、電源スイッチ17を押込み操作すると、ファン4およびオゾン発生部8の駆動が開始される。逆に、ファン4およびオゾン発生部8が駆動している状態で、電源スイッチ17を押込み操作すると、ファン4およびオゾン発生部8の駆動は停止される。ファン4は、その回転数が低速と高速の2段階に変更できるように構成されており、ファン4の起動時には低速で駆動され、風量切換スイッチ18が押込み操作される毎に、ファン4の回転数が交互に切り換えられる。ファン4の回転数を高低に切換えることで、遮蔽板1の前後面に形成されるエアカーテンの風速を大小に変更できる。
【0046】
図3に示すように、保持台2の内部の右端には、ファン4およびオゾン発生部8に駆動電力を供給する電池(電源部)21が設置されている。電池21は充電可能な二次電池からなる。
図3において符号22は、商用電源に接続された充電ケーブルのプラグが差し込まれる充電ソケットを示し、符号23は、電池21に対する充電を制御する充電回路を示す。このように、本実施形態のパーティション装置では、ファン4、オゾン発生部8、制御部15、電池21などの重量物は、保持台2の左右の端部寄りに分配して配されている。
【0047】
図1および
図2に示すように遮蔽板1は、その上端(エアカーテンの下流側の端部)に遮蔽板1の前後面に形成されるエアカーテンの流れ方向を変向案内するガイド板(ガイド体)26が設けられている。ガイド体26は、遮蔽板1の前側表面に形成されるエアカーテンを斜め上前方へ変向案内する前ガイド板26Aと、遮蔽板1の後側表面に形成されるエアカーテンを斜め上後方へ変向案内する後ガイド板26Bとで構成されている。前後のガイド板26A・26Bは、それぞれ同形の湾曲する板体からなり、その下縁が遮蔽板1の上縁と滑らかに連続するように、これら両者1・26は一体に形成されている。上記のように、前ガイド板26Aは、エアカーテンが形成される遮蔽板1の前側表面において、遮蔽板1から遠ざかる向き(前向き)にエアカーテンを変向案内し、後ガイド板26Bは、エアカーテンが形成される遮蔽板1の後側表面において、遮蔽板1から遠ざかる向き(後向き)にエアカーテンを変向案内する。
【0048】
図2および
図4に示すように、遮蔽板1の左右端には、遮蔽板1の左右縁から前後方向に延設される左右一対の側板27が、遮蔽板1およびガイド体26の上下方向にわたって設けられている。各側板27は、エアカーテンが遮蔽板1の前後表面から左右へ逸脱するのを阻止するように空気をガイドしており、吹出口5から吹き出された空気は、外側へ広がることなくガイド体26の先端(上端)までエアカーテンを形成する。
図1および
図2に示すように、ガイド体26および一対の側板27の上方には、左右の側板27の上端どうしを橋絡する天板28が固定されており、該天板28上面の中央には、パーティション装置を搬送する際に持手部として機能するコ字状の把手29が固定されている。各側板27および天板28は、遮蔽板1と同様に全体が透明な板体で形成されている。先の前ガイド板26Aの前端と後ガイド板26Bの後端とで規定される前後方向の幅寸法、側板27の前後幅寸法、および天板28の前後幅寸法は、保持台2の前後幅寸法と一致するように形成されている。
【0049】
図1および
図4に示すように遮蔽板1には、その板面を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されている。各開口32は同一直径のストレートな丸孔からなり、開口群33は、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に大きな密開口群34と、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に小さな粗開口群35とを有する。
図2および
図3に示すように、密開口群34は、遮蔽板1の左右方向の中央部分に設けられており、密開口群34における開口32は、遮蔽板1の中央を起点とする同心状の位置に等角度間隔置きに配される。また、粗開口群35は、密開口群34の左右に設けられており、粗開口群35における開口32は、5行3列のマトリクス状に配される。
【0050】
図2および
図4に示すように、保持台2に設けられる前後の各吹出口5は、密開口群34が形成された部分の遮蔽板1に臨む、中央の第1吹出口5Aと、粗開口群35が形成された部分の遮蔽板1に臨む、左右の第2吹出口5Bとで構成されている。第1および第2の吹出口5A・5Bはともに、保持台2の上壁を上下に貫通する左右に長い長方形状の開口からなり、第1吹出口5Aおよび各第2吹出口5Bはそれぞれ独立して形成されている。第1吹出口5Aを構成する開口の前後方向の開口幅寸法は、第2吹出口5Bを構成する開口の前後方向の開口幅寸法よりも大きく形成されている。また、第1吹出口5Aを構成する開口の左右方向の開口幅寸法は、第2吹出口5Bを構成する開口の左右方向の開口幅寸法よりも大きく形成されている。これにより、第1吹出口5Aから吹き出されて、遮蔽板1において密開口群34が形成された部分に形成されるエアカーテンの空気流量は、第2吹出口5Bから吹き出されて、遮蔽板1において粗開口群35が形成された部分に形成されるエアカーテンの空気流量よりも大きくなる。第1吹出口5Aと各第2吹出口5Bとの隣接間隔は可及的に小さく設定されており、両吹出口5A・5Bから吹き出された空気は、遮蔽板1の前後表面において一体的なエアカーテンを形成する。
【0051】
パーティション装置が停止しているとき、電源スイッチ17を押し込み操作すると、制御部15は、低速でファン4の駆動を開始するとともにオゾン発生部8の駆動を開始して、パーティション装置を起動する。ファン4により吸気口3から保持台2の内部に取り込まれた空気は、オゾン発生部8により生成されたオゾンを含む状態で、第1および第2の吹出口5A・5B(吹出口5)から上方へ向かって吹き出される。当該空気は、遮蔽板1の前側および後側の表面に沿ってエアカーテンを形成し、該エアカーテンにより遮蔽板1の前後の表面を保護する。このとき、より強いエアカーテンを形成したい場合には、風量切換スイッチ18を押込み操作して、ファン4の回転数を高速に切換える。
【0052】
遮蔽板1の前側を保護するエアカーテンを形成した空気は、遮蔽板1の上端に設けられた前ガイド板26Aで変向され、遮蔽板1の前方に着席した人の頭上方向へと送給され拡散する。また、遮蔽板1の後側を保護するエアカーテンを形成した空気は、遮蔽板1の上端に設けられた後ガイド板26Bで変向され、遮蔽板1の後方に着席した人の頭上方向へと送給され拡散する。駆動している状態のパーティション装置において、電源スイッチ17を押し込み操作すると、制御部15はファン4およびオゾン発生部8の駆動を停止して、パーティション装置を停止させる。
【0053】
以上のように、本実施形態のパーティション装置においては、ファン4で遮蔽板1の前後の表面にエアカーテンを形成したので、吹出口5から吹き出された空気の層で遮蔽板1の前後表面を保護できる。エアカーテンは遮蔽板1でガイドされるので、遮蔽板1の表面において安定したエアカーテンが形成される。したがって、本実施形態のパーティション装置によれば、遮蔽板1の表面に向かって飛来する飛沫をエアカーテンで遮断して、飛沫が遮蔽板1の表面に付着することを防ぐことができるので、継続的な使用においても遮蔽板1の表面が飛沫で汚損されることを抑えて、より長期に亘って遮蔽版1を良好な衛生状態に維持することができる。
【0054】
遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33を形成したので、人どうしの間に遮蔽板1を挟んで会話する際にも、開口32を介して相手方に声が届きやすく、通常の声量でも支障なく会話を楽しむことができる。遮蔽板1の表面にはエアカーテンが形成されているため、空気の層で飛沫が相手方へと至ることを防ぐことができる。因みに、開口32がない場合には、遮蔽板1により会話時の音声が遮られるので、より大きな声量で会話が行われる傾向があり、その分飛沫の飛散が助長されるおそれがあるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
【0055】
開口群33は、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に大きな密開口群34と、単位面積当たりに形成される開口32の合計開口面積が相対的に小さな粗開口群35とを有し、密開口群34が配される遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量を、粗開口群35が配される遮蔽板1の表面において形成されるエアカーテンの空気流量よりも大きくなるように構成した。これによれば、粗開口群35と比較して、より飛沫が通過するおそれのある密開口群34に対応する遮蔽板1の表面に形成されるエアカーテンの強度を高く設定することができるので、飛沫が相手方へと至ることをより確実に阻止することができる。また、遮蔽板1の全体において強度の高いエアカーテンを形成する場合に比べて、ファン4の送給能力を抑えることができ、パーティション装置の運転コストを抑えることができる。
【0056】
遮蔽板1の下方に、該遮蔽板1を起立保持する左右に長い箱状の保持台2を設けたので、遮蔽板1を箱状の保持台2で確りと保持して、設置面S上で安定的に遮蔽板1を立設させることができる。また、パーティション装置を移動させる際にも、設置面S上に置くだけで、遮蔽板1を容易に起立保持することができる。加えて、保持台2の内部を送給風路6として構成したので、別途送給風路6を形成する必要がない分、パーティション装置の構造を簡素化できる。
【0057】
遮蔽板1の前後面が人と正対する状態でパーティション装置が使用されるときには、保持台2の側面には飛沫が飛来し難い。そのうえで、本実施形態のパーティション装置のように、吸気口3が保持台2の側面(左側面)に設けられていると、吸気口3から吸込まれる空気に飛沫が含まれることを抑えることができるので、飛沫を含まない空気を送給風路6へと取り込んでエアカーテンを形成することができる。以上より、エアカーテンを形成する空気に飛沫が含まれることを防ぐことができるので、この点でもより長期に亘って遮蔽板1を良好な衛生状態に維持することができる。
【0058】
吸気口3の周囲に、ファン4の駆動状態を操作する操作部16を設けたので、操作部16を操作する手で、吸気口3付近の空気の流れを感じることができる。これにより、操作部16の操作によりパーティション装置の駆動が開始したかどうか、あるいは操作部16の操作によりパーティション装置の駆動が停止したかどうかを手の感覚で認識することができる。
【0059】
保持台2の内部に、ファン4に駆動電力を供給する電池21を設け、保持台2の内部における左右の端部の一方にファン4を配し他方に電池21を配したので、パーティション装置の重量配分を左右に分配でき、パーティション装置の全体の重量バランスが左右いずれかに偏るのを回避して、遮蔽板1をより安定的に設置面S上に立設させることができる。また、電池21が送給風路6における通気抵抗となることを回避できるので、ファン4の電力消費を抑えることができる。
【0060】
エアカーテンの下流側にあたる遮蔽板1の端部に、エアカーテンが形成される表面側において、遮蔽板1から遠ざかる向きにエアカーテンを変向案内する前後のガイド板26A・26B(ガイド体26)を設けたので、遮蔽板1の表面でエアカーテンを形成したのちの空気の流れを、向かい合う相手方から離れる方向へと指向させることができ、飛沫が相手方へと至ることをより確実に抑制することができる。
【0061】
遮蔽板1の上下方向に沿ってエアカーテンを形成し、遮蔽板1の左右端に遮蔽板1の左右縁からそれぞれ前後方向に延設される側板27を上下方向にわたって設けたので、遮蔽板1の左右方向へエアカーテンが拡散することを防いで、遮蔽板1の表面において的確にエアカーテンを形成できる。
【0062】
送給風路6に、吹出口5へと送給される空気に対してオゾンを供給するオゾン発生部8を設けたので、エアカーテンを形成する空気や飛沫に含まれるウイルス、臭気などをオゾンの酸化還元反応で除菌、消臭処理することができる。また、エアカーテン形成後の空気が遮蔽板1の周囲へと拡散されるので、当該パーティション装置の周囲の空気に対して残存するオゾンで除菌、消臭処理を行うことができる。
【0063】
また、上記のパーティション装置によれば、継続的に使用されたときにも遮蔽板1の表面が飛沫で汚損されることがなく、良好な衛生状態を長期に亘って維持することができるので、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図5に、本発明に係るパーティション装置の第2実施形態を示す。本実施形態においては、遮蔽板1は、その板体の一部が湾曲状に形成されて、上下の中央部分において、左右方向にわたって前方に膨出する膨出部38が設けられている。膨出部38における遮蔽板1の前面側には凸面39が形成され、後面側には凹面40が形成される。吹出口5は、左右に長い1個の長方形状の開口で構成されており、遮蔽板1の前側にのみ設けられている。このように遮蔽板1に膨出部38を設けた場合でも、エアカーテンは凸面39を含む遮蔽板1の前側表面に沿って形成される。したがって、遮蔽板1の前面に左右方向に均一なエアカーテンを形成することができる。また、遮蔽板1に膨出部38を設けることにより、凸面39に沿って形成されるエアカーテンの流速をフラットな面に沿って形成されるエアカーテンの流速よりも高めることができる。なお、
図5において、遮蔽板1の上部に位置するガイド体26、天板28および把手29は省略されている。
【0065】
膨出部38を含む遮蔽板1には、遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33が形成されている。各開口32は同一形状であり、遮蔽板1が膨出する側の面に向かって孔径が窄まるように構成されている。詳しくは、各開口32は、前面の孔径が小さく後面の孔径が大きいテーパー孔で構成されている。このように開口32を、エアカーテンが形成される側(前側)の孔径が相対的に小さいテーパー孔とすることで、声の通りを確保しつつ、開口32にエアカーテンを形成する空気の一部が吹き込むことを抑制できる。
【0066】
図5の拡大図に示すように、開口群33における膨出部38の頂部と膨出部38の上端部との間に形成される開口32の合計開口面積は、膨出部38の頂部と膨出部38の下端部との間に形成される開口32の合計開口面積よりも大きなものとされている。換言すれば、エアカーテンの下流側にあたる膨出部38の端部に形成される開口32の合計開口面積は、エアカーテンの上流側にあたる膨出部38の端部に形成される開口32の合計開口面積よりも大きなものとされている。より詳しくは、開口群33は、遮蔽板1の全体にマトリクス状に配された開口32で構成されており、上記前者の部分における上下に隣り合う開口32どうしの隣接ピッチは、上記後者の部分における上下に隣り合う開口32どうしの隣接ピッチよりも小さく設定されている。これにより、膨出部38の頂部と膨出部38の上端部との間の部分には、他の部分に比べてより多くの開口32が形成されている。
【0067】
膨出部38は、遮蔽板1の左右方向の全域にわたって形成される必要はなく、遮蔽板1の左右方向の中央領域にのみ形成されていてもよい。この場合には、左右に配される平板状の遮蔽板1と、前記平板状の遮蔽板1の間に配される、板体の一部が湾曲状に形成された遮蔽板1とを組み合わせて、1枚の遮蔽板1とすることができる。また、膨出部38は上下の中央部分に限らず、中央部分よりも上寄りまたは下寄りに配されていてもよい。遮蔽板1が、その板体の中央が部分球殻状に膨出して膨出部38を形成している形態であってもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態のパーティション装置においては、遮蔽板1の左右の辺部にわたって、エアカーテンが形成される表面側へと遮蔽板1が膨出する膨出部38を設けたので、遮蔽板1の表面に形成されるエアカーテンを膨出部38の領域において増速できる。これにより、膨出部38が形成された遮蔽板1部分においてより強度の高いエアカーテンを形成でき、最も飛沫が飛来しやすい高さ位置に膨出部38を配することで、その表面に飛沫が付着することを確実に防ぐことができる。
【0069】
膨出部38を含む遮蔽板1に、該遮蔽板1を前後に貫通する独立多数の開口32からなる開口群33を形成したので、人どうしの間に遮蔽板1を挟んで会話する際にも、開口32を介して相手方に声が届きやすく、通常の声量でも支障なく会話を楽しむことができる。遮蔽板1の表面にはエアカーテンが形成されているので、飛沫が相手方へ届くことを防ぐことができる。
【0070】
膨出部38の頂部とエアカーテンの下流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積が、膨出部38の頂部とエアカーテンの上流側にあたる膨出部38の端部との間の部分において遮蔽板1に形成される開口32の合計開口面積よりも大きくなるように、開口群33を形成した。これによれば、開口群33の開口面積を大きくしながらも開口32へ空気が吹き込まれることを抑制して、安定的にエアカーテンを形成することができる。これは、膨出部38の頂部よりもエアカーテンの上流側の膨出部38においては、エアカーテンを形成する空気が遮蔽板1の表面に衝突して変向されるので、当該膨出部38の部分に多数の開口32が存在すると、開口32にエアカーテンを形成する空気が吹き込んで流れが乱れるおそれがあるが、前記構成によって当該現象を抑制することができることに拠る。
【0071】
開口32を、遮蔽板1が膨出する側の面に向かって孔径が窄まるテーパー孔で構成したので、開口32にエアカーテンを形成する空気が吹き込まれることを抑えて、エアカーテンを形成する空気の流れが乱れることを防ぐことができる。
【0072】
(第3実施形態)
図6に、本発明に係るパーティション装置の第3実施形態を示す。本実施形態では、膨出部38の形態が第2実施形態と相違する。具体的には、
図6に示すように、遮蔽板1の板厚みを前方側に向かって部分的に膨張させることで、膨出部38が形成されている。膨出部38の形成箇所において、遮蔽板1の後面はフラット面であるのに対して、遮蔽板1の前面は凸面39とされている。
【0073】
(第4実施形態)
図7に、本発明に係るパーティション装置の第4実施形態を示す。本実施形態においても、膨出部38の形態が第2実施形態と相違する。
図7に示すように、本実施形態においては、遮蔽板1の板厚みを前方側だけでなく、後方側にも部分的に膨張させて膨出部38を形成している。膨出部38の形成箇所において、遮蔽板1の前面および後面の両面が凸面39とされている。本実施形態の開口32は、テーパー孔ではなくストレートな丸孔からなる。エアカーテンは、遮蔽板1の前後面に形成することができる。
【0074】
(第5実施形態)
図8および
図9に、本発明に係るパーティション装置の第5実施形態を示す。本実施形態においては、遮蔽板1を流れてエアカーテンを形成する空気を回収し、この回収した空気を再び吹出口5から吹き出すようにした。
図8および
図9に示すように、遮蔽板1の上端にはガイド体26に替えて左右方向に長い四角箱状の回収ボックス43が固定されている。かかる固定状態において、遮蔽板1の上端は回収ボックス43の前後方向の中央線と一致するようになっており、遮蔽板1に対する回収ボックス43の前後方向の突出幅は、同一寸法となるように構成されている。回収ボックス43の下壁には、遮蔽板1の前後において同ボックス43を内外に連通するように、左右に長い長方形状の回収口44が開設されている、保持台2の上壁の左右端のそれぞれには、吸気口3・3が開設されており、回収ボックス43の下壁の左右端のそれぞれには、循環口45・45が開設されている。
【0075】
図8に示すように、遮蔽板1の左右側面のそれぞれには、上下端にそれぞれ開口を有する四角箱状の循環ボックス46・46が設けられている。左側の吸気口3と循環口45とは、左側の循環ボックス46を介して連通され、右側の吸気口3と循環口45とは、右側の循環ボックス46を介して連通されている。循環ボックス46は、先の実施形態1の側板27と同様の機能を有している。回収ボックス43の内部は、回収口44から取り込んだ空気を循環口45へと導く横循環風路47とされ、循環ボックス46の内部は、循環口45に至った空気を吸気口3へと導く縦循環風路48とされており、これら横循環風路47と左右の縦循環風路48とにより循環風路49が構成されている。回収ボックス43および循環ボックス46の前後幅寸法は、保持台2の前後幅寸法と一致するように構成されている(
図9参照)。なお、回収ボックス43の上面に把手29を設けて、パーティション装置の可搬性を向上させることもできる。
【0076】
図8および
図9に示すように、保持台2の内部には、上方開口を有する左右に長い四角箱状のチャンバーボックス53が設けられている。チャンバーボックス53は、保持台2の上壁に固定されており、チャンバーボックス53と保持台2の上壁とで送給風路6の内部にチャンバー54が形成されている。チャンバーボックス53の下壁には、左右並列状に3個の通気口55が形成されており、通気口55に給気側が臨む状態でファン4が固定されている。吹出口5はチャンバー54に連通する状態で形成されている。ファン4を駆動すると、チャンバー54に向かって空気が加圧送給され、当該空気は吹出口5から吹き出されてエアカーテンを形成する。エアカーテンを形成したのちの空気は、回収口44で循環風路49へと取り込まれ、送給風路6を介して再び吹出口5から吹き出される。このように、本実施形態では空気が循環する形態でエアカーテンが形成される。
【0077】
図8に示すように、オゾン発生部8とファン4との間の送給風路6には、同風路6を流れる空気に含まれるオゾンの濃度を検出するオゾン濃度センサ56が設けられている。本実施形態では、空気を循環させてエアカーテンを形成するので、外部からの空気が取り込まれにくく、空気が循環するうちに必要以上にオゾンの濃度が高まるおそれがある。そこで、オゾン濃度センサ56で送給風路6を流れる空気に含まれるオゾンの濃度を検出して、検出されたオゾンの濃度が高濃度側の規定値を超えた場合には、制御部15がオゾン発生部8の駆動を停止させる。また、オゾン発生部8の停止後にオゾンの濃度が低下し、検出されたオゾンの濃度が低濃度側の規定値を下回った場合には、再びオゾン発生部8の駆動を開始する。このように、オゾン濃度センサ56によるオゾン濃度の検出値に基づいて、オゾン発生部8を駆動することにより、循環する空気に含まれるオゾンの濃度を規定値内に維持することができる。
【0078】
オゾン発生部8の駆動制御は、オゾンの濃度が高濃度側の規定値を超えた場合に、オゾンの濃度が低濃度側の規定値を下回るまで連続的に停止させるのではなく、オゾン発生部8を間欠駆動して単位時間当たりのオゾンの発生量を抑制して、オゾンの濃度を下方調整することができる。また、高濃度側の規定値に超えた場合に、相対的にデューティー比が小さい間欠駆動(単位時間あたりのオゾンの生成量が相対的に小さい間欠駆動)とし、低濃度側の規定値を下回った場合に、相対的にデューティー比が大きい間欠駆動(単位時間あたりのオゾンの生成量が相対的に大きな間欠駆動)として、オゾン濃度を調整することもできる。
【0079】
以上のように、本実施形態のパーティション装置においては、ファン4で送給されエアカーテンを形成したのちの空気を取り込む回収口44を設けたので、エアカーテン形成後の空気が飛沫とともに周囲に拡散されることを防ぐことができる。
【0080】
また、回収口44から取り込んだ空気を吸気口3へと導く循環風路49を設け、吹出口5から吹き出された空気を、循環風路49および送給風路6を介して再度吹出口5から吹き出されるように構成したので、循環する空気に飛沫を封じ込めて、飛沫が周囲に拡散されることを確実に防ぐことができる。
【0081】
送給風路6に、吹出口5へと送給される空気に対してオゾンを供給するオゾン発生部8を設けたので、空気とともに循環風路49および送給風路6に取り込まれた飛沫に対して除菌、消臭処理を行うことができる。
【0082】
送給風路6に空気に含まれるオゾンの濃度を検出するオゾン濃度センサ56を設け、オゾン濃度センサ56におけるオゾンの検出結果に基づいて、制御部15がオゾン発生部8の動作を制御するように構成したので、エアカーテンを形成する空気のオゾン濃度を任意の濃度に調整することができる。例えば、オゾンの濃度が過度に上昇し、あるいは低下し過ぎることなく、除菌、消臭処理に最適なオゾン濃度に調整できる。
【0083】
上記以外に、回収口44を吹出口5とし、吹出口5を回収口44としてエアカーテンを形成する空気が上から下へと流れる形態であってもよい。
【0084】
(第6実施形態)
図10に、本発明に係るパーティション装置の第6実施形態を示す。上記の第1から第5の実施形態のパーティション装置では、設置面S上に載置される可搬式のパーティション装置として構成したが、本実施形態においては、
図10に示すように、パーティション装置をテーブルなどの机60と一体的に構成している。遮蔽板1は、机60が備える天板61の前後方向の中央に立設されており、天板61の上面が設置面Sとなる。遮蔽板1には左右方向に3か所の密開口部34が設けられており、隣り合う密開口部34どうしの間に粗開口部35が設けられている。
【0085】
天板61の下面には、上方開口を有する左右に長い四角箱状のファンボックス62が固定されており、該ファンボックス62の内部が送給風路6とされている。ファンボックス62の下壁には、左右方向に3個の吸気口3が形成されており、各吸気口3に吸気側が臨む状態でファンボックス62の内部にファン4が設けられている。遮蔽板1の前後においてファンボックス62の内部と連通するように吹出口5が形成されており、該吹出口5は、密開口群34が形成された遮蔽板1に臨む第1吹出口5Aと、粗開口群35が形成された遮蔽板1に臨む第2吹出口5Bとが交互に設けられている。このように、本発明のパーティション装置は、可搬式の形態だけでなく、テーブル等に一体に組み込まれる組込み式の形態であってもよい。
【0086】
上記以外に、エアカーテンは、下から上へと空気が流れる構成のほか、上から下へ、右から左へ、左から右へはもちろん、斜め方向であってもよく、要は遮蔽板1の表面を横切るようにエアカーテンが形成されればよい。遮蔽板1はその全体が透明(透光性を有する)である必要はなく、部分的に不透明な部分があってもよい。遮蔽板1に形成した独立多数の開口32からなる開口群33は必須ではなく省略することも可能である。また、本発明は、例えば部屋を仕切るためのパーティション装置として構成することもできる。
【0087】
上記実施形態で示した遮蔽板1上の開口32の配置形態は一例であり、上記実施形態で示した配置形態以外であってもよい。送風手段4は軸流式ファン以外に、遠心式ファンで構成することができる。側板27と天板28は不透明の素材で形成することもできる。電源部21は交換可能に構成された一次電池であってもよく、この場合には充電ソケット22および充電回路23は省略できる。オゾン発生部8は、針状に形成された放電電極9と、クラウン状に形成された対向電極10とで構成したが、オゾン発生部8の構成はこれに限られない。例えば、オゾン発生部8は、針状の一対の電極がその針先が互いに向かい合うように配設された電極構造、あるいは一対の電極が棒状を成し、各電極がそれぞれガラス管で被覆されたものを平行に並べて配設された電極構造を備えるものであってもよく、他の電極構造を採用することもできる。また、これらコロナ放電方式のオゾン発生部8以外に、紫外線方式、低温プラズマ方式、電気分解方式などのオゾン発生装置であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 遮蔽板
2 保持台
3 吸気口
4 送風手段(ファン)
5 吹出口
6 送給風路
8 オゾン発生部
15 制御部
16 操作部
21 電源部
26 ガイド体
27 側板
32 開口
33 開口群
34 密開口群
35 粗開口群
38 膨出部
44 回収口
49 循環風路
56 オゾン濃度センサ
S 設置面