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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/35 20210101AFI20241024BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M50/35 201
H01M50/342 101
H01M50/342 201
H01M50/367
H01M50/213
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021508818
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007027
(87)【国際公開番号】W WO2020195423
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019060102
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 健明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 憲作
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190302(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064096(WO,A1)
【文献】特開2018-073561(JP,A)
【文献】特開2015-118811(JP,A)
【文献】特開2005-322434(JP,A)
【文献】特表2018-527704(JP,A)
【文献】特開2015-135763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 50/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が設定圧力よりも高くなると開弁して放出ガスを噴出する排出弁を備える複数の電池と、
前記電池を収納しており、かつ前記排出弁からの放出ガスを外部に排気する排出開口(前記電池を冷却する空気を外部に排気するものを除く。)を設けてなる外装ケースと、
前記外装ケースの一部であって、前記排出開口を設けてなる排気面の内側に対向姿勢に配置してなる耐熱プレートと、
を備え、
前記外装ケースは、一対の表面プレート部の周囲を周壁で囲み、
前記電池は、
外装缶と、
前記外装缶の開口部を閉塞する封口板を有し、
前記封口板は、前記排出弁を有し、
前記電池は、前記外装缶を前記表面プレート部に沿わせ、前記封口板を前記周壁の端部壁と向き合う姿勢に配置され、
前記表面プレート部に前記排出開口を有し、
前記耐熱プレートは、
前記外装缶の側面と前記表面プレート部の間に配置され、
前記耐熱プレートの外周縁に沿って、前記外装ケースの内面との間にエネルギー減衰隙間を設けており、
前記排気面内面との間には面状の放熱隙間を設けており、
前記排出弁から噴出される放出ガスが、前記エネルギー減衰隙間と前記放熱隙間を通過して、前記排出開口から外部に排気されるようにしており、
前記エネルギー減衰隙間が、前記耐熱プレートの外周縁の全体に設けられて、
前記排出開口が、前記排気面の中央領域に設けられており、
前記排出開口が、細長い形状に開口されており、
前記排出開口が、ラベルで閉塞されており、
前記ラベルは、前記排出弁から排出された排出ガスで剥離又は溶融されるシート材で形成されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記エネルギー減衰隙間が、
前記外装ケースの内面と前記耐熱プレートの外周縁との間に設けてなるスリットであることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載する電源装置であって、
前記エネルギー減衰隙間であるスリットの隙間(d)が3mm以下であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記耐熱プレートが、
前記エネルギー減衰隙間に交差する姿勢で、
前記エネルギー減衰隙間に連結してなる複数列の連結スリットを設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記耐熱プレートと前記排気面との間隔を3mm以下として、前記放熱隙間を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記耐熱プレートが、
耐熱プラスチック又は金属板、あるいはプラスチックと金属板の積層体であることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記外装ケースが方形状で、
前記排気面が最大面積の表面プレート部であることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項に記載する電源装置であって、
前記電池が円筒形電池で、
複数の円筒形電池が、前記表面プレート部と平行な面内にあって、互いに平行姿勢に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記外装ケースの内面に突出して、
前記耐熱プレートを支持する支持リブを一体的に成形して設けてなり、
前記耐熱プレートが、
前記支持リブに載置されて外周縁に沿ってエネルギー減衰隙間を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項に記載する電源装置であって、
前記支持リブが、
前記耐熱プレートを載置して定位置に配置する段差部を有することを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排出弁のある電池を内蔵している電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する排出弁を設けた二次電池は、内圧が異常に上昇する状態で排出弁を開いて安全性を向上できる。この電池を外装ケースに内蔵する電源装置は、排出弁から排出される放出ガスを外装ケースの外部に安全に排出することが大切である。とくに、非水系の電解液を使用する二次電池は、電解液が気化した高温のガスが排出弁から電池ケースの外部に噴出される。また、同時に外装ケースの外部に火花を放出する等の弊害が発生する。これにより、外装ケースの外部に放出された高温のガスが外装ケースの外側で滞留し、かつ外装ケース外部に放出された火花により、外装ケース外部で発火する等の弊害が発生する。電池の排出弁から噴出される放出ガスを外装ケースの外部に排気する排気ダクトに、ガス冷却部と火花トラップ部を設けた電源装置は開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-117765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電源装置は、排気ダクトに、接続管部と、主管部と、ガス冷却部と、火花トラップ部と、排気口とを設けている。接続管部は、電池の排出弁を主管部に接続して、接続管部は、電池からの放出ガスを漏らさず流入できるように、高耐熱性の接着剤で電池の排出弁の開口部に密着している。主管部はガス冷却部に連結されて、接続管部から流入される放出ガスをガス冷却部に流入する。ガス冷却部は、流入された放出ガスを冷却するために、内壁面に高熱伝導材料、高比熱材料等の熱吸収剤を設けている。火花トラップ部はガス冷却部に連絡管を介して連結されて、ガス劣化部から流入する放出ガスの火花を捕集するもので、内壁面には多孔質セラミック板、ゲルシート、銅メッシュ、アルミメッシュ、SUSメッシュ、セメント板又は石膏板を設けている。この構造の排気ダクトは、電池の放出ガスを、接続管部から主管部に流入し、主管部を通過した後にガス冷却部を通過させた後、火花トラップ部から外部に排気する。
【0005】
以上の電源装置は、火花を防止するために設けた排出ダクトの構造が極めて複雑で、部品コストと製造コストの両方が高く、さらにスペースも大きくなって全体をコンパクトにするのが難しい欠点がある。
【0006】
本発明は、従来の以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、高い安全性を実現しながら、極めて簡単な構造として安価に多量生産できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る電源装置は、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁して放出ガスを噴出する排出弁を備える複数の電池1と、これらの電池1を収納しており、かつ排出弁からの放出ガスを外部に排気する排出開口26を設けてなる外装ケース2と、外装ケース2の一部であって、排出開口26を設けてなる排気面25の内側に対向姿勢に配置してなる耐熱プレート5とを備え、耐熱プレート5は、外周縁に沿って、外装ケースの内面との間にエネルギー減衰隙間6を設けており、排気面内面との間には面状の放熱隙間7を設けており、排出弁から噴出される放出ガスを、エネルギー減衰隙間6と放熱隙間7を通過させて、排出開口26から外部に排気している。
【発明の効果】
【0008】
以上の電源装置は、高い安全性を実現しながら、極めて簡単な構造として安価に多量生産できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の内部構造を示す概略垂直縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電源装置の内部構造を示す概略垂直横断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電源装置の内部構造を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電源装置の内部構造を示す概略斜視図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る電源装置の内部構造を示す概略垂直横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
本発明の第1の発明の電源装置は、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁して放出ガスを噴出する排出弁を備える複数の電池と、複数の電池を収納して、かつ排出弁からの放出ガスを外部に排気する排出開口を設けてなる外装ケースと、外装ケースの一部であって、排出開口を設けてなる排気面の内側に対向姿勢に配置してなる耐熱プレートとを備え、耐熱プレートは、外周縁に沿って、外装ケースの内面との間にエネルギー減衰隙間を設けており、排気面内面との間には面状の放熱隙間を設けており、排出弁からの噴出される放出ガスが、エネルギー減衰隙間と放熱隙間を通過して、排出開口から外部に排気されるようにしている。
【0012】
以上の電源装置は、極めて簡単な構造として、部品コストと製造コストの両方を低減して、安価に多量生産でき、さらに、排出弁から排出される高温の放出ガスの温度を低下して、外装ケース外に炎が放出されるのを抑制して、高い安全性を実現できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、電池からの放出ガスを外部に排気する排出開口を設けている外装ケースの排気面内側に対向して耐熱プレートを配置して、この耐熱プレートの外周縁には、外装ケースの内面との間にエネルギー減衰隙間を設け、さらに耐熱プレートと、外装ケースの排気面内面との間には面状の放熱隙間を設けており、排出弁から噴出される放出ガスを、耐熱プレート外周と外装ケースの間に設けたエネルギー減衰隙間に通過させた後、耐熱プレートと排気面との間に設けた放熱隙間に通過させて、排気面の排出開口から外部に排気するからである。
【0013】
以上の電源装置は、電池の排出弁から勢いよく噴出される高温・高圧の放出ガスを、耐熱プレート外周に設けた狭いエネルギー減衰隙間に通過させて放出ガスのエネルギーを吸収する。エネルギー減衰隙間は、耐熱プレートを貫通して設けた隙間でなく、耐熱プレートと外装ケースとの間に設けた隙間である。放出ガスは、耐熱プレートの外周縁と外装ケース内面との狭い隙間を通過してエネルギーを失い、通過するときに耐熱プレートと外装ケースに放熱する。エネルギー減衰隙間を通過する放出ガスは、狭い隙間を通過して運動エネルギーを失い、さらに耐熱プレートと外装ケースを加熱して熱エネルギーを失う。
【0014】
放出ガスは、耐熱プレートに設けた貫通穴に透過させてエネルギーを減衰することができるが、耐熱プレートの貫通穴を通過する放出ガスは、外装ケースに放熱することなく耐熱プレートのみに放熱するので、耐熱プレートに放熱する熱エネルギーが大きくなって、この熱エネルギーで耐熱プレートを損傷する。このため、たとえばポリカーボネート製の耐熱プレートに多数の貫通穴を設けて、放出ガスを通過させると、わずか数秒で耐熱プレートが溶融して貫通穴が大きくなり、放出ガスエネルギーのエネルギーを減衰できなくなる。
【0015】
以上の電源装置は、耐熱プレートと外装ケースとの間にエネルギー減衰隙間を設けて、ここに高温・高圧の放出ガスを通過させる。ここを通過する放出ガスは、耐熱プレートのみでなく耐熱プレートと外装ケースの両方に放熱して、熱エネルギーを失う。放出ガスの熱エネルギーが耐熱プレートのみでなく、外装ケースにも放熱されるので、放出ガスによる耐熱プレートの熱傷害を防止して、放出ガスのエネルギーを長時間にわたって減衰できる。エネルギー減衰隙間を通過してエネルギーの減衰された放出ガスは、さらに面状の放熱隙間に流入し、放熱隙間では排気面の内面に沿って流動して排出開口から外部に排出される。面状の放熱隙間を流動する放出ガスは、広い面積で排気面に接触しなから流動して、熱エネルギーを効率よく外装ケースに伝導して放熱する。さらに、放出ガスが狭い放熱隙間を通過する圧力損失で、放出ガスは運動エネルギーも減衰して排出開口から排気される。したがって、放熱隙間を流動して外装ケースに熱伝導して冷却され、さらに、放熱隙間で運動エネルギーも減衰した放出ガスが排出開口から外部に排出される。以上のように、排気面の内側にエネルギー減衰隙間と放熱隙間を設けて耐熱プレートを配置する極めて簡単な構造としながら、電源装置は外装ケース外に排気される放出ガスのエネルギーを効率よく減衰させて、ケース外での発火を効果的に防止できる特徴を実現する。
【0016】
本発明の第2の発明の電源装置は、エネルギー減衰隙間を、外装ケースの内面と耐熱プレートの外周縁との間に設けてなるスリットとしている。
以上の電源装置は、さらに、簡単な構造として、耐熱プレートの外周縁にエネルギー減衰隙間を設けることができ、しかも、このスリット状のエネルギー減衰隙間に放出ガスを通過させて、放出ガスの運動エネルギーと熱エネルギーを効率よく減衰できる特徴がある。
【0017】
本発明の第3の発明の電源装置は、エネルギー減衰隙間であるスリットの隙間(d)を3mm以下としている。
以上の電源装置は、エネルギー減衰隙間を3mm以下と狭くしているので、ここを通過する放出ガスの圧力損失を大きくして運動エネルギーを効率よく減衰でき、さらに、放出ガスを狭い隙間に高速流動して、熱エネルギーを効率よく耐熱プレートと外装ケースとに放出して熱エネルギーも効率よく減衰できる特徴がある。
【0018】
本発明の第4の発明の電源装置は、エネルギー減衰隙間を耐熱プレートの外周縁の全体
に設けて、排出開口を排気面の中央領域に設けている。
以上の電源装置は、エネルギー減衰隙間を耐熱プレート全周に設けて長くできるので、隙間を狭くして圧力損失を大きくしながら、多量の放出ガスを速やかに通過できる。狭いエネルギー減衰隙間は、特定の電池の排出弁から、すなわち特定位置から噴出される高温・高圧の放出ガスを拡散してエネルギー減衰隙間に通過できる。このため、放出ガスが強制的に集中してエネルギー減衰隙間を通過することがなく、放出ガスが均等化されたエネルギー減衰隙間を通過して、耐熱プレートの強制的な熱損傷を防止できる。また、排出開口を排気面の中央部に配置するので、耐熱プレート全周に設けたエネルギー減衰隙間と排出開口との間隔(L)を均等化して、放熱隙間に流入した放出ガスの熱エネルギーで効率よく排気面に放熱して排気できる。
【0019】
本発明の第5の発明の電源装置は、エネルギー減衰隙間を耐熱プレートの外周縁の一部に設けて、排出開口を排気面の中央領域からエネルギー減衰隙間の反対側に偏在して開口している。
以上の電源装置は、エネルギー減衰隙間から排出開口までの間隔(L)を長くできるので、エネルギー減衰隙間から放熱隙間に流入した放出ガスを排気面に沿って長く流動させて排出開口から排出できる。このため、放熱隙間を流動する放出ガスを効率よく排気面に放熱して排気できる特徴がある。
【0020】
本発明の第6の発明の電源装置は、耐熱プレートが、エネルギー減衰隙間に交差する姿勢で、エネルギー減衰隙間に連結してなる複数列の連結スリットを備えている。
以上の電源装置は、耐熱プレート外周面のエネルギー減衰隙間に加えて、耐熱プレートの連結スリットを設けているので、エネルギー減衰隙間と連結スリットの両方に放出ガスを通過させてエネルギーを減衰できる。
【0021】
本発明の第7の発明の電源装置は、耐熱プレートと排気面との間隔(h)を3mm以下として、放熱隙間を設けている。
以上の電源装置は、放熱隙間の間隔(h)を3mm以下と狭くしているので、ここを流動する放出ガスの熱エネルギーを効率よく耐熱プレートと排気面に放熱して排気できる。
【0022】
本発明の第8の発明の電源装置は、耐熱プレートを、耐熱プラスチック又は金属板、あるいはプラスチックと金属板の積層体としている。
【0023】
本発明の第9の発明の電源装置は、外装ケースが方形状で、排気面を最大面積の表面プレート部としている。
以上の電源装置は、排気面が大きいので、ここに対向して配置している耐熱プレートの面積を大きくでき、大きな耐熱プレートによってエネルギー減衰隙間を長く、放熱隙間を大面積にできる。このため、放出ガスのエネルギーを効率よくエネルギー減衰隙間で減衰して、放熱隙間で効率よく放熱して排気できる。
【0024】
本発明の第10の発明の電源装置は、電池が円筒形電池で、複数の円筒形電池を、表面プレート部と平行な面内において、互いに平行姿勢に配置している。
以上の電源装置は、外装ケース内に複数の円筒形電池を配置して、排気面を大面積にでき、大面積の排気面によって耐熱プレートを大きくでき、大きな耐熱プレートによってエネルギー減衰隙間を長くしてエネルギーを効率よく減衰し、さらに大面積の放熱隙間で放出ガスを効率よく放熱できる。したがって、円筒形電池を内蔵する電源装置の安全性を高くできる特徴がある。
【0025】
本発明の第11の発明の電源装置は、外装ケースの内面に突出して、耐熱プレートを支持する支持リブを一体的に成形して設けて、耐熱プレートを、支持リブに連結して外周縁に沿ってエネルギー減衰隙間を設けている。
以上の電源装置は、支持リブで耐熱プレートを定位置に配置しながら、エネルギー減衰隙間を通過する放出ガスを支持リブ表面に流動させることで、支持リブを介して放出ガスの熱エネルギーを効率よく外装ケースに放熱できる特徴がある。外装ケースの内面に突出して配置される支持リブが放出ガスとの接触面積を大きくできるからである。
【0026】
本発明の第12の発明の電源装置は、支持リブが、耐熱プレートを連結して定位置に配置する段差部を有している。
以上の電源装置は、段差部のある支持リブによって、放出ガスとの接触面積を更に大きくして、放出ガスの熱エネルギーをより効率よく外装ケースに放熱して、温度を低くできる特徴がある。
【0027】
(実施形態1)
図1図4に示す電源装置100は、充電できる複数の電池1と、電池1を定位置に配置している電池ホルダー4と、電池ホルダー4を内部に配置している外装ケース2と、この外装ケース2内に配置している耐熱プレート5と、電池1の保護回路などの電子部品を実装している回路基板3とを備える。
【0028】
(電池1)
電池1は円筒形電池である。ただ、本発明の電源装置は電池を円筒形電池には特定しない。電池1には充電できる角形電池等も使用できるからである。円筒形電池は、円筒状の金属ケースに電極と電解液を収納している。金属ケースは、底を閉塞している外装缶の開口部に、封口板を気密に固定している密閉構造としている。外装缶は、金属板をプレス加工して製作される。封口板は、絶縁材のパッキンを介して外装缶の開口部周縁にカシメ加工して気密に固定される。角形電池は、金属ケースの開口部を閉塞する封口板に、絶縁して正負の電極端子を設けている。
【0029】
電池1は、図示しないが、金属ケースの内圧が異常に高くなって破損するのを防止するために、封口板に排出弁を設けている。排出弁は、開口する状態で内部のガスなどを排出する開口部を封口板に設けている。ただし、電池は、外装缶の底部に排出弁とその開口部を設けることもできる。排出弁は、内圧が設定圧力、たとえば1.5MPaよりも高くなると開弁して、内圧上昇による金属ケースの破壊を防止する。排出弁は、異常な状態で開弁する。したがって、排出弁が開弁する状態では、電池1の温度も非常に高くなっている。このため、開弁する排出弁から排出される放出ガスは、ガスや電解液(噴出物)が混在して異常な高温となっている。とくに、電池1をリチウムイオン電池等の非水系電解液二次電池は、放出ガスが400℃以上の異常な高温となる。さらに、リチウムイオン電池は、非水系の電解液を充填していることから、これが高温でケース外に排出されると、空気に触れて発火して、さらに異常な高温となることがある。リチウムイオン電池に限らず、他の充電できる電池においても、開弁する排出弁から噴出される放出ガスは高温となるので、放出ガスのエネルギーを減衰してケース外に排気することは安全性を高くすることから大切である。
【0030】
(外装ケース2)
外装ケース2は、ポリカーボネート等の耐熱特性に優れた熱可塑性の樹脂製で、全体を四角形の箱形に成形して、内部には電池1と、耐熱プレート5と、回路基板3を定位置に配置している。図の外装ケース2は、一対の表面プレート部21の周囲を周壁22で囲む箱形としている。図1図2、及び図4の外装ケース2は、四角形の表面プレート部21の周囲に沿って周壁22を設けた本体ケース2Aと、本体ケース2Aの開口部を閉塞する表面プレート部21の外周に低い周壁22を設けている蓋ケース2Bとからなる。一対の表面プレート部21は、四角形、図にあっては長方形である。周壁22は、長方形の表面プレート部21の長手方向に伸びる両側の側部壁23と、この側部壁23に直交する端部壁24とからなる。図の外装ケース2は、周壁22の端部壁24と円筒形電池の封口板とが対向する姿勢で、電池1を内部に配置している。
【0031】
複数の電池1は、電池ホルダー4で定位置に配置されて電池ブロック10としている。図1及び図2の電池ブロック10は、複数の電池1を同一平面に配置して平行姿勢に並べている。この電池ブロック10は、2組の電池ユニット11からなる。電池ユニット11は、4列の電池1を同一平面で平行姿勢に配置して、電池1の両端面を同一平面に配置している。2組の電池ユニット11は、円筒形電池が直線状に並ぶように連結して、電池ブロック10としている。電池ユニット11は、プラスチック製の電池ホルダー4に設けた嵌合部に電池1を配置して定位置に並べている。
【0032】
図の電池ブロック10は、通称「18650」と呼ばれる電池、すなわち外径18mm、長さ650mmとする円筒形電池を4列に並べて電池ユニット11とし、2組の電池ユニット11を直列に配置している。この電池ブロック10は、全長を2本の円筒形電池の長さの2倍よりも長くし、横幅を円筒形電池の外径の4倍よりも広くするので、全長は6.5cmの2倍強で約15cm、横幅が1.8cmの4倍強の約10cm、厚さが直径よりも厚く、約20mm強となる。
【0033】
直方体の外装ケース2は、以上の外形の電池ブロック10を収納するので、両面の表面プレート部21の外形は、15cm×10cmよりも大きく、厚さは2cmよりも厚くなる。この電池ブロック10は、直方体の6面を、一対の表面プレート部21と、4面の周壁22で構成するが、表面プレート部21は表面の面積が最大となる。外装ケース2は、最大面積の表面プレート部21の中央領域に排出開口26を設けている。外装ケース2は、排出開口26を設けた面を排気面25として、排気面25と平行な面内に、円筒形電池を配置している。
【0034】
(耐熱プレート5)
耐熱プレート5は、排気面25の内側で、排気面25に対向して配置される。耐熱プレート5は、優れた耐熱特性の熱可塑性樹脂、たとえば耐熱性と強度に優れたポリカーボネートやポリアミドが使用できる。熱可塑性樹脂を板状に成形した耐熱プレート5は安価に多量生産できる。ただ、耐熱プレート5には、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂も使用できる。プラスチック製の耐熱プレート5は、優れた絶縁特性から、表面を絶縁処理することなく外装ケース2内に配置できる。ただし、耐熱プレート5には金属板や、金属板の表面にプラスチックを積層し、あるいは絶縁塗膜を塗布して板状に成形したものも使用できる。
【0035】
(エネルギー減衰隙間6)
耐熱プレート5の外形は、表面プレート部21の周囲に沿って設けた周壁22の内形よりも小さく、周壁22の内側に配置される。耐熱プレート5の外周縁と周壁22との間にエネルギー減衰隙間6を設けている。エネルギー減衰隙間6は、放出ガスを抵抗のある状態、すなわち圧力損失のある状態で通過させて、通過する放出ガスのエネルギーを減衰させる。図1図4における矢印は、電池1の封口板に設けた排出弁が開口し、電池1から排出された放出ガスなどが排出開口26から排出される経路を示している。図に示すエネルギー減衰隙間6は、外装ケース2の内面と耐熱プレート5の外周縁との間に設けてなるスリット状としている。エネルギー減衰隙間6は、広すぎると放出ガスの圧力損失が小さくなってエネルギーの減衰効果が小さくなるので、スリット状の隙間(d)を、たとえば3mm以下、好ましくは2mm以下として、放出ガスのエネルギーを効率よく減衰させる。ただ、エネルギー減衰隙間6が狭すぎると、通過する放出ガスの流量が少なくなって、耐熱プレート5の内側に高温の放出ガスが停滞する時間が長くなって、プラスチック等を溶融する弊害が発生するので、スリット状の隙間(d)を、たとえば0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上とする。
【0036】
エネルギー減衰隙間6は、耐熱プレート5の外周縁に沿って設けられる全長を考慮して最適値に設定される。エネルギー減衰隙間6は、耐熱プレート5の外周縁全周に設けて全長を長くできる。したがって、耐熱プレート5の外周縁の全体にエネルギー減衰隙間6を設ける構造にあっては、エネルギー減衰隙間6の隙間(d)は、前述の範囲であって狭く設定され、耐熱プレート5の一部にエネルギー減衰隙間6を設ける構造にあっては、前述の範囲で広く設定される。また、エネルギー減衰隙間6の隙間(d)は、電池1の容量も考慮して最適値に設定される。電池1の容量が大きくなると、一度に噴出される放出ガス量が多くなるので、容量の大きい電池1を内蔵する電源装置にあっては、エネルギー減衰
隙間6の隙間(d)を広くして、高温の放出ガスが耐熱プレート5の内側に停滞する時間が延長されるのを防止する。
【0037】
(連結スリット5a)
図3の概略平面図に示す耐熱プレート5は、エネルギー減衰隙間6に交差して、エネルギー減衰隙間6に連結する複数列の連結スリット5aを設けている。連結スリット5aの幅(w)は、エネルギー減衰隙間6の隙間(d)とほぼ同じとして、ここに放出ガスを通過して、エネルギーを減衰させる。連結スリット5aを通過する放出ガスは、耐熱プレート5に放熱して耐熱プレート5を加熱するので、互いに接近して配置することなく、たとえば、1mm幅の連結スリット5aを1cm間隔で配置する。図3の耐熱プレート5は、連結スリット5aを耐熱プレート5の全周に設けることなく、一部に設けて耐熱プレート5の熱損失を防止している。
【0038】
(放熱隙間7)
さらに、耐熱プレート5は、排気面25の内面との間に面状の放熱隙間7を設けている。耐熱プレート5は、排気面25と平行な姿勢に配置されて、一定の間隔(h)の放熱隙間7を設けている。放熱隙間7は、図1図4の矢印で示すように、エネルギー減衰隙間6から流入する放出ガスを排気面25と耐熱プレート5の表面に沿って流動させて、放出ガスの熱エネルギーを排気面25と耐熱プレート5に放熱して冷却する。放出ガスの熱エネルギーは、排気面25により効率よく放熱される。排気面25は、放出ガスが排出弁から噴出されたタイミングにおいて、外側表面を外気で冷却された状態にあるので、エネルギー減衰隙間6から放出ガスが流入される直前までは冷却状態にあるからである。
【0039】
エネルギー減衰隙間6から放熱隙間7に流入される放出ガスは、排気面25の表面と耐熱プレート5の表面を流動して、熱エネルギーを効率よく排気面25と耐熱プレート5に放熱する。気体と固体とが接触して両者の間で熱伝導される熱量は、気体が固体に対して相対的に流動することで増加し、さらに気体が固定表面を高速流動することで、熱伝導する熱量が急激に増加するからである。放出ガスの熱エネルギーが放熱された排気面25は、外側表面を外気に接触させて外部に放熱できる状態にあるので、放出ガスから放熱された熱エネルギー、言い換えると放出ガスから吸収した熱エネルギーを速やかに外部に放熱するので、表面を流動する放出ガスから熱エネルギーを効率よく吸収して温度を低下させる。
【0040】
放熱隙間7は、放出ガスを高速流動させて放出ガスの熱エネルギーを排気面25と耐熱プレート5に吸収し、さらに、狭い隙間を通過する放出ガスの圧力損失で運動エネルギーも減衰させる。放熱隙間7は広すぎると、エネルギーの減衰効果が少なくなるので、放熱隙間7の間隔(h)は、たとえば3mm以下、好ましくは2mm以下として、放出ガスのエネルギーを効率よく減衰させる。ただ、放熱隙間7が狭すぎると、通過する放出ガスの流量が制限されて、速やかに排気できなくなって、外装ケース2内に高温の放出ガスが停滞する時間が長くなって、電池ホルダー4や耐熱プレート5等のプラスチックを溶融する弊害が発生するので、放熱隙間7の間隔(h)は、たとえば0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上とする。
【0041】
耐熱プレート5は、外装ケース2の特定の位置に配置されて、外周縁には所定の隙間のエネルギー減衰隙間6を設け、排気面25との間には所定の放熱隙間7を設けている。耐熱プレート5を外装ケース2の特定の位置に配置するために、図1図3に示す耐熱プレート5は、外周縁に位置決め凹部5bを設けている。この位置決め凹部5bを案内する支持リブ27を外装ケース2の内面に突出して、外装ケース2と一体的に成形して設けている。図1及び図2の支持リブ27は、耐熱プレート5を連結して定位置に配置する段差部27aを設けて、この段差部27aに耐熱プレート5を当接させて定位置に配置している。段差部27aに配置される耐熱プレート5は、表面に配置される回路基板3や電池ホルダー4に押圧されて、定位置に配置される。とくに、図1図2に示す外装ケース2は、排気面25を備える蓋ケース2Bの内面に支持リブ27を設けており、支持リブ27の段差部27aによって排気面25と耐熱プレート5との間隔を所定の間隔(h)に形成できるようにしている。すなわち、支持リブ27の段差部27aの高さを放熱隙間7の間隔(h)と等しくなるように成形するとともに、耐熱プレート5を段差部27aに当接させる状態で配置することで、排気面25と耐熱プレート5との間に形成される放熱隙間の間隔(h)を簡単かつ正確に所定の間隔に形成できるようにしている。また、図3の耐熱プレート5は、4辺に対向して設けた支持リブ27に位置決め凹部5bを連結して外装ケース2の内側の定位置に配置することで、耐熱プレート5の外周縁に沿って外装ケース2の内面である周壁24との間に形成されるエネルギー減衰隙間6を所定の隙間(d)となるように形成している。
【0042】
(排出開口26)
放熱隙間7を流動した放出ガスは、排気面25の排出開口26から外部に排気される。図4の電源装置100は、排気面25の中央領域に排出開口26を設けている。中央領域の排出開口26は、長方形の耐熱プレート5の長手方向に細長い形状に開口されて、耐熱プレート5の全周に設けたエネルギー減衰隙間6から放熱隙間7に流入する放出ガスを、放熱隙間7の長い経路に流動して外部に配置する。排出開口26は、エネルギー減衰隙間6から最も離れた位置に開口されて、放出ガスが放熱隙間7を流動する距離を長くして、エネルギーを効率よく減衰して外部に排気する。このように、排出開口26を排気面25の中央部に配置する構造は、図1及び図2に示すように、耐熱プレート5の全周に設けたエネルギー減衰隙間6と排出開口26との間隔(L)を均等化して、放熱隙間7に流入した放出ガスの熱エネルギーで効率よく排気面25に放熱して排気できる。
【0043】
(実施形態2)
さらに、図5に示すように、耐熱プレート5の1辺にエネルギー減衰隙間6を設けた電源装置200は、排気面25に開口する排出開口26の位置を、エネルギー減衰隙間6の反対側に配置して、放熱隙間7を流動する放出ガスの流路を長くする。この構造は、エネルギー減衰隙間6から排出開口26までの間隔(L)を長くできるので、エネルギー減衰隙間6から放熱隙間7に流入した放出ガスを排気面25に沿って長く流動させて排出開口26から排出でき、放熱隙間7を流動する放出ガスを効率よく排気面25に放熱して排気できる。図5における矢印は、電池1の封口板に設けた排出弁が開口し、電池1から排出された放出ガスが排出開口26から排出される経路を示している。
【0044】
(ラベル8)
さらに、図1図2に示す外装ケース2は、排気面25に開口された排出開口26をラベル8で閉塞している。このラベル8は、排出弁から排出される排出ガスで剥離され、あるいは溶融されるシート材を使用する。この電源装置100は、外装ケースの排気面25に開口された排出開口26をラベル8で閉塞することで、外装ケース2の排出開口26を通過して内部に異物が侵入するのを防止できる。このラベル8は、電池1の排出弁から排出ガスが排出される際には、エネルギー減衰隙間6を通過し、放熱隙間7を通過する排出ガスの圧力により剥離し、あるいは高温の排出ガスの熱により溶融されて除去される。
【0045】
(回路基板3)
回路基板3は、電池ホルダー4に嵌合構造で連結されて定位置に配置される。回路基板3は電池1に接続されて電池1の保護回路を実現する電子部品(図示せず)を実装している。保護回路は、電池1の過充電や過放電を防止する回路、あるいは過電流を防止する回路、あるいは又温度が異常に上昇する状態で電流を遮断する回路である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は放出ガスを安全に排気する電源装置に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0047】
100、200…電源装置
1…電池
2…外装ケース
2A…本体ケース
2B…蓋ケース
3…回路基板
4…電池ホルダー
5…耐熱プレート
5a…連結スリット
5b…位置決め凹部
6…エネルギー減衰隙間
7…放熱隙間
8…ラベル
10…電池ブロック
11…電池ユニット
21…表面プレート部
22…周壁
23…側部壁
24…端部壁
25…排気面
26…排出開口
27…支持リブ
27a…段差部
図1
図2
図3
図4
図5