(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】水中油型クリーム剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20241024BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241024BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20241024BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241024BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241024BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241024BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241024BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241024BHJP
C07J 5/00 20060101ALN20241024BHJP
C07J 63/00 20060101ALN20241024BHJP
C07D 233/88 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K8/06
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/18
A61K31/135
A61P17/04
A61K8/63
A61K31/573
A61K8/41
A61K31/245
A61K31/704
A61K8/49
A61K31/4166
A61K8/81
A61K8/86
A61P25/04
A61P31/04
C07J5/00
C07J63/00
C07D233/88
(21)【出願番号】P 2021527789
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025323
(87)【国際公開番号】W WO2020262641
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019121245
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168193(WO,A1)
【文献】特開2014-094933(JP,A)
【文献】特開2006-111542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61K9/00-9/72
A61K31/00-33/44
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシビニルポリマーを含む水相へ、アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を含む油相を添加して乳化を行う工程を含
み、
更に、アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を含む油相(第1の油相)を添加する前に、第2の有効成分を含む第2の油相を水相へ添加する工程を含むことを特徴とする、水中油型クリーム剤の製造方法。
【請求項2】
有効成分が、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、消炎鎮痛剤及び殺菌剤からなる群より選ばれる1種以上の物質である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第2の有効成分が25℃で液体の物質であり、かつ、第1の油相に含まれる有効成分が25℃で固体の物質である、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項4】
第2の有効成分が、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、消炎鎮痛剤及び殺菌剤からなる群より選ばれる1種以上の物質である、請求項
1又は
3に記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ剤がアミン類である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
乳化剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度が均一な水中油型クリーム剤を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボキシビニルポリマーは、塩基性物質(アルカリ剤)により中和されて増粘性を示すことが知られている。この性質を利用して、カルボキシビニルポリマーは医薬品や化粧品等の増粘剤として使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを配合してなる水中油型クリーム剤では、粘度の均一性が商品価値上求められる。
水中油型クリーム剤の製造方法では、カルボキシビニルポリマーを中和する工程と、水相に油相を乳化させる工程が必要になるところ、従来技術では、乳化工程終了後に中和工程を実施していた(特許文献1の実施例4)。
しかし、乳化工程終了後に中和工程を行うと粘度が均一な水中油型クリーム剤の生成に時間を要することを本発明者は見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水中油型クリーム剤の生産性向上について鋭意検討した結果、本発明者は、アルカリ剤を予め配合した油相を水相に添加すると、乳化とカルボキシビニルポリマーの中和とが同時に起こり、粘度が均一な水中油型クリーム剤の生成に要する時間を短縮できることを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔6〕に関するものである。
〔1〕カルボキシビニルポリマーを含む水相へ、アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を含む油相を添加して乳化を行う工程を含むことを特徴とする、水中油型クリーム剤の製造方法。
〔2〕有効成分が、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、消炎鎮痛剤及び殺菌剤からなる群より選ばれる1種以上の物質である、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を含む油相(第1の油相)を添加する前に、第2の有効成分を含む第2の油相を水相へ添加する工程を更に含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕第2の有効成分が25℃で液体の物質であり、かつ、第1の油相に含まれる有効成分が25℃で固体の物質である、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕第2の有効成分が、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、消炎鎮痛剤及び殺菌剤からなる群より選ばれる1種以上の物質である、前記〔3〕又は〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕アルカリ剤がアミン類である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明の製造方法に従うと、粘度が均一な水中油型クリーム剤の生成に要する時間を短縮して、水中油型クリーム剤の生産性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水中油型クリーム剤の製造方法は、カルボキシビニルポリマーを含む水相へ、アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を含む油相を添加して乳化を行う工程を含むことを特徴とする。
【0009】
〔水相〕
水相は、カルボキシビニルポリマーを必須成分として含む。カルボキシビニルポリマーは、アルカリ剤により中和されることで増粘する性質により、増粘剤として配合する。
カルボキシビニルポリマーとしては、水中油型クリーム剤に配合可能なものを特に制限無く使用できるが、例えば、医薬品添加物規格2018(厚生労働省)の「カルボキシビニルポリマー」欄に記載された規格を満たすものが好ましい。
カルボキシビニルポリマーの配合量は、意図する水中油型クリーム剤の粘度に応じて適宜設定できるが、例えば、水中油型クリーム剤の総質量に対して0.1~3.0質量%、好ましくは0.5~1.5質量%である。また、水相の総質量に対しては、例えば0.3~3.0質量%、好ましくは0.5~2.0質量%である。水相を調製する際の後述のプレミックスの総質量に対しては、例えば0.5~5.0質量%、好ましくは1.0~3.0質量%である。
【0010】
カルボキシビニルポリマーを水中に分散させるために、水相に界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤としては、カルボキシビニルポリマーを分散できるものを特に制限無く使用できるが、非イオン性界面活性剤が好ましい。具体例としては、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類である。
水相にカルボキシビニルポリマーを分散させる際の界面活性剤の配合量は、カルボキシビニルポリマーの配合量や使用する界面活性剤の種類に応じて適宜設定できるが、例えば、水相の総質量に対して0.02~0.2質量%、好ましくは0.05~0.2質量%である。また、水相を調製する際の後述のプレミックスの総質量に対しては、例えば0.05~0.5質量%、好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0011】
水相を構成する水としては、水中油型クリーム剤へ配合可能なものを特に制限無く使用できる。具体例としては、精製水、純水、蒸留水やイオン交換水等が挙げられ、精製水が好ましい。
水の配合量は特に制限されず、所望の成分組成や粘度を達成するために適量を配合できる。
【0012】
水相は、前記の必須成分の他、キレート剤等の任意成分の1種以上を含んでいてもよい。
キレート剤としては、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。
【0013】
水相の各構成成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は、公知の方法で調製可能である。
【0014】
〔水相の調製方法〕
水相の調製方法は、カルボキシビニルポリマーの均一な分散状態を得られる限り特に制限されないが、下記工程(1)~(2)を含む方法が好ましい。
【0015】
工程(1):プレミックスの調製
攪拌機を備えた予備配合槽内に水(好ましくは常温の精製水)を張り、攪拌を開始する。攪拌している水へ、界面活性剤、キレート剤(任意)、カルボキシビニルポリマーの順で投入し、カルボキシビニルポリマーが分散するまで攪拌を続けてプレミックスを得る。
カルボキシビニルポリマーは、水中でダマにならないよう、分割して投入することが好ましい。
カルボキシビニルポリマーが水相中で分散したことは目視でダマの発生が見られないことにより確認できる。例えば、公称目開き1.18mmの篩に分散液を一部通過させて、篩上にダマや溶け残りがないことを目視で確認する。
【0016】
工程(2):水相の調製
(2-1):スチームジャケット、攪拌機及びホモ(又はウルトラ)ミキサーを備えた配合槽へ水(好ましくは精製水)を投入し、攪拌しながら加熱(好ましくは70~95℃)する。
スチームジャケットは、スチーム投入により配合槽内を加熱(殺菌)するために用いる。攪拌機は、配合槽の側面及び底面に付着した原料をかき取ることができる攪拌翼(掻取ミキサー)を備えたものが好ましく使用できる。ホモ(又はウルトラ)ミキサーは、水相へ添加された油相成分の液滴を微粒化するために用いる。
【0017】
(2-2):加熱した水へ、工程(1)のプレミックス(好ましくは26~30℃に調節)及び洗い水(プレミックスを調製した槽の洗浄水。好ましくは精製水。好ましくは10~30℃に調節)の順で投入し、攪拌して水相を得る。
工程(2-2)は、スチームジャケットへのスチーム投入停止後(すなわち、積極的な加熱操作なし)に行って、カルボキシビニルポリマーのゲル状凝集物の生成を防止することが好ましい。ゲル状凝集物は、水中油型クリーム剤の粘度の均一性を妨げるので好ましくない。
水相の形成は目視により確認できる。
【0018】
工程(2)を実施する配合槽は、後述の乳化工程を実施する真空乳化装置の主配合槽であることが好ましい。
【0019】
〔油相〕
油相は、アルカリ剤、有効成分及び乳化剤を必須成分として含む。アルカリ剤を含む油相を水相へ添加することで、乳化とカルボキシビニルポリマーの中和による増粘とを同時に行うことができる。
【0020】
アルカリ剤は、カルボキシビニルポリマーを中和して増粘させることができるものであれば特に制限されない。具体例としては、アミン類や、無機塩基等が挙げられ、なかでもアミン類が好ましい。
アミン類としては、トリエタノールアミンやジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、これら第3級アミンが好ましく使用できる。
無機塩基としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等が挙げられ、水酸化カリウムが好ましい。
アルカリ剤の配合量は、配合目的に応じて適宜設定できるが、例えば、水中油型クリーム剤のpHを3~10、好ましくは4~8、さらに好ましくは4~6に調整するのに必要な量である。なお、pHは、水中油型クリーム剤2.0gを脱イオン水20mLに入れ、攪拌して測定試料を調製し、液温度20~30℃でpH測定器を用いて測定した値である。
【0021】
有効成分は、水中油型クリーム剤の用途に応じて適宜選択できる。
例えば、有効成分としては、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、消炎鎮痛剤及び殺菌剤等が挙げられる。以下に具体例を列挙する。なお、物質名の後ろの括弧内の「液体」又は「固体」の表示は、25℃における状態を示す。
抗ヒスタミン剤としては、ジフェンヒドラミン(液体)、ジフェンヒドラミン塩酸塩(固体)や、クロルフェニラミンマレイン酸塩(固体)等が挙げられる。
鎮痒剤としては、クロタミトン(液体)が挙げられる。
消炎鎮痛剤としては、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(固体)、ウフェナマート(液体)、グリチルリチン酸二カリウム(固体)やイブプロフェンピコノール(液体)等が挙げられる。
殺菌剤としては、アラントイン(固体)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)(固体)や、ベンゼトニウム塩化物(固体)等が挙げられる。
これらの中でも、グリチルリチン酸二カリウム(固体)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)(固体)、ジフェンヒドラミン(液体)、ウフェナマート(液体)、イブプロフェンピコノール(液体)が好ましい。
有効成分は1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
有効成分の配合量は、水中油型クリーム剤の用途に応じて適宜設定できるが、例えば水中油型クリーム剤の総質量に対して1.0~10.0質量%、好ましくは1.5~6.0質量%である。
【0022】
乳化剤は、水相中に油相を乳化させるために配合する。
乳化剤は、有効成分の種類等に応じて適宜選択できるが、例えば、前述の水相に配合する界面活性剤が挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類が好ましく使用できる。
なお、乳化剤は、前記水相に配合する界面活性剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。
乳化剤の配合量は、有効成分の種類や配合量に応じて適宜設定できるが、例えば、前記水相に配合する界面活性剤との合計の配合量は、水中油型クリーム剤の総質量に対して0.1~2.0質量%、好ましくは0.5~1.2質量%である。
【0023】
油相は、前記の必須成分の他、基剤、香料、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤や、着色剤等の任意成分の1種以上を含んでいてもよい。
【0024】
基剤は、有効成分の溶媒として配合する。有効成分が25℃で固体の物質である場合、基剤を用いることが好ましい。基剤は有効成分の種類に応じて適宜選択できるが、例えば、2-オクチルドデカノール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
基剤は1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
基剤の配合量は、有効成分の種類や配合量に応じて適宜設定できるが、例えば、水中油型クリーム剤の総質量に対して11.0~18.5質量%、好ましくは12.0~16.0質量%である。
【0025】
油相の各構成成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は、公知の方法で調製可能である。
【0026】
〔油相の調製方法〕
油相の調製方法は、各成分が混合した状態を得られる限り特に制限されないが、例えば、撹拌装置(撹拌翼やパルセーター)を備えた配合槽へ、有効成分、香料(任意)、基剤(任意)、乳化剤、防腐剤(任意)及びアルカリ剤を投入し、各成分が溶解するまで攪拌を続けることで実施できる。なお、各成分の投入順序は前記と異なっていてもよい。
各成分の溶解を促進するため、全成分投入後の攪拌を加熱下(好ましくは80~85℃)で行うことが好ましい。
各成分の溶解は目視により確認できる。
【0027】
配合量が異なる複数種類の有効成分を用いる場合、複数種類の油相を調製してもよい。例えば、配合量が相対的に少ない有効成分をアルカリ剤及び乳化剤を含む前記油相(以下「第1の油相」ともいう)へ配合し、配合量が相対的に多い有効成分(以下「第2の有効成分」ともいう)を別の油相(以下「第2の油相」ともいう)として配合してもよい。この場合、第1の油相を添加する前に第2の油相を水相へ添加する。第2の油相を水相に添加し攪拌下、第2の油相の油相成分が分散した水相中へ、第1の油相を添加することで、第1の油相の調製が簡略化でき、全有効成分が均一に分散した水中油型クリーム剤が得られる。
なお、第1及び第2の各油相に含まれる有効成分は1種類であってもよく、複数種類であってもよい。
【0028】
〔乳化工程〕
乳化工程は、水相中に油相を乳化させて水中油型クリーム剤が得られる限り特に制限されないが、例えば、攪拌している水相へ油相を添加し、乳化物が生成するまで攪拌を続けることで実施できる。
油相と水相の配合比は、水中油型クリーム剤の組成に応じて適宜設定できる。
乳化工程は、真空乳化装置で実施することが好ましい。
得られた乳化物は水中油型クリーム剤であるが、乳化物生成後、更に冷却(例えば8~30℃)下で攪拌を行ってもよい。
【0029】
水中油型クリーム剤は、有効成分の種類に応じて医薬品(例えば、かゆみやかぶれ用医薬品、皮膚炎用医薬品など)や化粧品として使用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0031】
〔実施例1〕
下記の組成を有する水中油型クリーム剤を製造した。
実施例1では、第1及び第2の油相を用いて製造を行った。
【0032】
〔水相の調製〕
下記工程(1)~(2)を含む方法により、水相を調製した。
工程(1):プレミックスの調製
攪拌機を備えた予備配合槽中で攪拌している常温の精製水40重量部へ、界面活性剤、キレート剤及びカルボキシビニルポリマーの順で投入後、カルボキシビニルポリマーが分散するまで攪拌を続けてプレミックスを得た。分散は目視により確認した。
なお、ポリソルベート60の総使用量の10%をカルボキシビニルポリマー分散用の界面活性剤としてプレミックス調製に用い、残りは乳化剤として用いた。
カルボキシビニルポリマーの配合量は、プレミックスの総質量に対して2.4質量%であった。界面活性剤の配合量は、プレミックスの総質量に対して0.24質量%であった。
【0033】
工程(2):水相の調製
(2-1):スチームジャケット、攪拌機(掻取ミキサー)及びホモミキサーを備えた真空乳化装置の主配合槽へ精製水31重量部を投入し、攪拌しながら70~95℃に加熱した。
(2-2):加熱した水へ、26~30℃の前記工程(1)で調製したプレミックス全量及び10~30℃の精製水(洗い水)12重量部の順で投入し、攪拌して水相を得た。水相の生成は目視により確認した。工程(2-2)は、スチームジャケットへのスチーム投入停止後に実施した。
カルボキシビニルポリマーの配合量は、水相の総質量に対して1.2質量%であった。界面活性剤の配合量は、水相の総質量に対して0.12質量%であった。
【0034】
〔第1の油相の調製〕
攪拌機を備えた予備配合槽へ、第1の有効成分、第1の基剤、乳化剤、防腐剤並びにアルカリ剤を投入し、各成分が溶解するまで、80~85℃下で攪拌を続けて第1の油相を調製した。各成分の溶解は目視により確認した。
〔第2の油相の調製〕
攪拌機を備えた予備配合槽へ、第2の有効成分、香料及び第2の基剤を投入し、各成分が溶解するまで攪拌を続けて第2の油相を調製した。各成分の溶解は目視により確認した。
〔乳化〕
真空乳化装置の主配合槽中で攪拌している水相へ第2の油相を添加した後、第1の油相を添加し、乳化物が生成するまで攪拌を続けた。乳化物の生成は目視により確認した。
乳化物生成後、更に冷却(8~12℃)下で攪拌を行い、水中油型クリーム剤(pH5.0。前述の測定法により測定。実施例2及び比較例も同様)を得た。
【0035】
〔実施例2〕
下記の組成を有する水中油型クリーム剤を製造した。
実施例2では、第2の油相を用いずに製造を行った。
【0036】
〔水相の調製〕
実施例1と同様の手順で水相を調製した。プレミックスの調製には精製水を38重量部使用した。
カルボキシビニルポリマーの配合量は、プレミックスの総質量に対して2.6質量%であった。界面活性剤の配合量は、プレミックスの総質量に対して0.26質量%であった。
また、カルボキシビニルポリマーの配合量は、水相の総質量に対して1.3質量%であった。界面活性剤の配合量は、水相の総質量に対して0.13質量%であった。
【0037】
〔油相の調製〕
攪拌機を備えた予備配合槽へ、第1の有効成分、第2の有効成分、第1の基剤、第2の基剤、乳化剤、防腐剤、香料並びにアルカリ剤を投入し、各成分が溶解するまで、80~85℃下で攪拌を続けて油相を調製した。各成分の溶解は目視により確認した。
〔乳化〕
真空乳化装置の主配合槽中で攪拌している水相へ油相を添加し、乳化物が生成するまで攪拌を続けた。乳化物の生成は目視により確認した。
乳化物生成後、更に冷却(8~12℃)下で攪拌を行い、水中油型クリーム剤(pH5.0)を得た。
【0038】
〔比較例〕
アルカリ剤を配合せずに調製した油相を水相へ添加して乳化行ってから15分後に該アルカリ剤のみを添加したことを除き、実施例2と同じ手順にしたがい水中油型クリーム剤(pH5.0)を得た。
【0039】
〔粘度が均一な水中油型クリーム剤(乳化物)が生成するまで時間〕
実施例1~2及び比較例のそれぞれについて、アルカリ剤の投入から粘度が均一な乳化物(500kg)が生成するまでの時間を下記手順により測定した。まず、アルカリ剤の投入時(実施例1:第1の油相添加時。実施例2:油相添加時。比較例:アルカリ剤のみを添加した時)から5分毎に主配合槽の上部、中部及び下部の3カ所からサンプルを採取した。各サンプルの粘度を、BH粘度計(No.7ローター/20rpm/1min/20~30℃)にて測定した。3カ所から採取したサンプル間の粘度差が3Pa・s未満となったとき、粘度が均一な乳化物が生成したと判断した。測定結果を以下に示す。
〇:3カ所から採取したサンプル間の粘度差が3Pa・s未満
×:3カ所から採取したサンプル間の粘度差が3Pa・s以上
乳化物形成後にカルボキシビニルポリマーの中和を行った比較例では、粘度が均一な水中油型クリーム剤が得られるまでに25分間を要した。一方、アルカリ剤を含む油相を水相に添加して乳化とカルボキシビニルポリマーの中和とを同時に行った実施例1及び2では、15分間で粘度が均一な水中油型クリーム剤が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、医薬品及び化粧品の製造分野で利用可能である。