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特許7576569宇宙用途のアレイ用の自己収容構造体のためのソーラー、電子、RFの放射装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】宇宙用途のアレイ用の自己収容構造体のためのソーラー、電子、RFの放射装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20241024BHJP
   B64G 1/44 20060101ALI20241024BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20241024BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
B64G1/44
H01Q1/28
H01Q21/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021568058
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 US2020033225
(87)【国際公開番号】W WO2020232388
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/848,317
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202030123
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(31)【優先権主張番号】202030124
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(31)【優先権主張番号】202030125
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(31)【優先権主張番号】62/977,860
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/977,864
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/978,081
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517362118
【氏名又は名称】エーエスティー アンド サイエンス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AST & Science, LLC
【住所又は居所原語表記】100 SE 2nd St,Suite 3500 Miami, Florida 33131, U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス バールセン ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス デ オサバ フェルナンデス アイトール
(72)【発明者】
【氏名】オナー ライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アヴェラン アーベル
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ フイウェン
(72)【発明者】
【氏名】ハルペリン アダム エイチ.
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-253477(JP,A)
【文献】特開2019-054515(JP,A)
【文献】特表2019-504558(JP,A)
【文献】特開平11-308019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
B64G 1/44
H01Q 1/28
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電を行うように構成された少なくとも1つの太陽電池を含むソーラー層と、
前記ソーラー層に接続され、前記ソーラー層によって太陽光発電された電力を利用する少なくとも1つのアンテナを含むアンテナ層とを有し、
前記アンテナ層は、少なくとも1つの凹部を備え、前記少なくとも1つのそれぞれの凹部は、前記アンテナ層の外向きの表面から内側に広がった前記アンテナ層の一部により規定されており、平坦なアンテナ層を構成するように、前記少なくとも1つの凹部のそれぞれが前記少なくとも1つのアンテナの少なくとも1つを収納している、アンテナアセンブリ。
【請求項2】
請求項1において、
アンテナアセンブリアレイを構成するように当該アンテナアセンブリは複数のアンテナアセンブリと接続されており、前記複数のアンテナアセンブリのそれぞれは、
太陽光発電を行うように構成された少なくとも1つの太陽電池を含む、前記複数のアンテナアセンブリのそれぞれに対応するソーラー層と、
前記複数のアンテナアセンブリのそれぞれに対応するソーラー層によって発電された電力を利用する少なくとも1つのアンテナを含む、前記複数のアンテナアセンブリのそれぞれに対応するアンテナ層とを含む、アンテナアセンブリ。
【請求項3】
請求項1において、
前記アンテナ層と前記ソーラー層との間支持構造を含む構造層をさらに有する、アンテナアセンブリ。
【請求項4】
請求項3において、
前記構造層は剛性を有する、アンテナアセンブリ。
【請求項5】
請求項において、
前記アンテナ層は平坦である、アンテナアセンブリ。
【請求項6】
請求項ないし5のいずれかにおいて、
前記アンテナ層は地球に面するように構成されている、アンテナアセンブリ。
【請求項7】
請求項3または4において、
前記構造層はハニカムパターンを有する、アンテナアセンブリ。
【請求項8】
請求項において、
前記少なくとも1つの凹部の少なくとも1つは、複数アンテナを収容するように構成されている、アンテナアセンブリ。
【請求項9】
請求項において、
前記構造層は、それぞれが前記少なくとも1つのアンテナ関連付けられた、少なくとも1つのフロントエンドモジュールをさらに有する、アンテナアセンブリ。
【請求項10】
請求項において、
前記構造層は、前記少なくとも1つのアンテナおよび前記少なくとも1つの太陽電池の動作を制御するための処理装置を、さらに有する、アンテナアセンブリ。
【請求項11】
請求項において、
前記少なくとも1つのアンテナは、妨害または干渉を受けることなく、地球上のユーザー装置と通信するように構成されている、アンテナアセンブリ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月15日に出願された米国特許出願第62/848317号、2020年2月13日に出願されたスペイン特許出願第202030124号、および2020年2月18日に出願された米国特許出願第62/977,860号の優先権を主張する。本出願はまた、2020年2月13日に出願されたスペイン特許出願第202030123号、2020年2月13日に出願されたスペイン特許出願第202030125号、2020年2月18日に出願された米国特許出願第62/977,864号、および2020年2月18日に出願された米国特許出願第62/978,081号に対する優先権を主張する。これらの出願の内容は依拠され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、2020年5月15日に出願された「Low Earth Orbit Mechanical Deployable Structure」という名称の米国特許出願第16/875,646号、および2020年5月15日に出願された「Thermal Management System for Structures in Space」という名称の米国特許出願第16/875,738号の内容を参照によりさらに組み込む。
【背景技術】
【0002】
米国特許第9,973,266号及び米国特許出願公開第2019/0238216号は、大型アレイを形成するために空間内で多数の小型衛星アンテナアセンブリを組み立てるためのシステムを示す。266号特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。266号特許に開示されているように、図1(a)、1(b)は、小型衛星302のアレイ300と、中央または制御衛星200とを有する衛星通信システム100を示す。これらの小型衛星302は、地球上のフットプリント400内のエンドユーザ500と通信し、また、制御衛星200と通信し、そして制御衛星は基地局のゲートウェイ600と通信する。小型衛星302はそれぞれ、たとえば、処理デバイス(たとえば、プロセッサまたはコントローラ)と、1つまたは複数のアンテナ素子とを含むことができる。また、制御衛星200は、処理デバイスと、1つまたは複数のアンテナまたはアンテナ要素とを含むことができる。
【発明の概要】
【0003】
アンテナアセンブリは、当該アンテナアセンブリの第1の外面を形成する平坦なアンテナ層と、当該アンテナアセンブリの第2の外面を形成する平坦なソーラー層と、アンテナ層とソーラー層との間に挟まれた平坦な支持構造を含む平坦な構造層とを有する。アンテナ層は、アンテナアセンブリの第1の外面に、1つまたは複数のアンテナを備えた平坦なアンテナプレートを有し、地球と通信する。ソーラー層は、アンテナアセンブリの第2の外面に、1つまたは複数の太陽電池(ソーラーセル)を備えた平坦なソーラープレートを有し、太陽エネルギーを受けて電力を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1(a)】図1(a)は、従来の構造アレイを示す。
図1(b)】図1(b)は、従来の構造アレイを示す。
【0005】
図2図2は、アンテナ素子のないアンテナアセンブリのRF側の斜視図である。
【0006】
図3図3は、アンテナ素子を有するアンテナアセンブリのRF側の斜視図である。
【0007】
図4図4は、アンテナアセンブリの太陽側の斜視図である。
【0008】
図5図5は、アンテナアセンブリのブロック図である。
【詳細な説明】
【0009】
図面に示された本開示の例示的で非限定的な実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が用いられる。しかしながら、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的均等物を含むことを理解されたい。本開示のいくつかの実施形態は、例示目的で説明されており、本開示は、図面に具体的に示されていない他の形態で具現化され得ることを理解されたい。
【0010】
図面を参照すると、図2図5は、本開示の例示的な一実施形態による構造アセンブリ、ここではアンテナアセンブリ(アンテナ組立体)310を示す。アンテナアセンブリ310は、図1(a)、1(b)の衛星通信システム100のような任意の衛星システムにおいて利用することができる。アンテナアセンブリ310は、また、単独で(それ自体で)別個に利用され得るか、またはアンテナもしくは通信のため以外の目的のために利用され得る。
【0011】
一実施形態では、アンテナアセンブリ310は、複数のアンテナアセンブリと組み合わせて利用されるように構成されており、宇宙空間に大きなアンテナアレイを形成できる。個々のアンテナアセンブリ310は、構造的および/または電気的に多数のものと結合できるようになっており、図1(a)、図1(b)のアレイ300のような大きな構造を宇宙空間に形成する。このアレイは、格納または保管構成と、展開または動作構成とを有する。複数のアンテナアセンブリは、格納構成で宇宙空間に輸送される。格納構成では、アンテナアセンブリ310は、コンパクトな構成(配置、アレンジ)であり、例えば、折り畳まれることにより相互に積み重ねられた状態であってもよい。宇宙空間においては、アンテナアセンブリは展開構成に移動し、そこで互いに対して展開され、互いに実質的に平面になるように外側に(外側へと)拡張する。各衛星アレイは、少なくとも1つ(1つまたは複数)のコネクタ372によって互いに機械的に接続された複数の衛星モジュールアセンブリ310を有する。複数の衛星モジュールアセンブリが宇宙空間内で接続されて、単一の軌道傾斜角および/または単一の開口を有する単一の大型位相アレイを形成することができる。
【0012】
アンテナアセンブリ310は、第1の外層320と、中間層350と、第2の外層380とを有する。第1の外側層320は、アンテナ素子を保持するアルミニウム反射体であり、本明細書ではRF(無線周波数)層またはアンテナ層と呼ばれることもある。中間層350は、軽量で剛性のハニカムなどの支持構造である。第2の外層380は、太陽から太陽エネルギーを収集する1つ以上の太陽電池を有するソーラーパネルであり、本明細書ではソーラー層と呼ばれることもある。アンテナアセンブリ310は、RF層320が地球に最も近くなるように構成され、その結果、アンテナ素子は天底に面し(地球に面し)、干渉または障害物なしに(すなわち、アンテナアセンブリによる物理的干渉がなく、アンテナアセンブリにおける他の電子デバイスからの電気的干渉がない(または低減された)状態で)、地上のユーザ装置と最良に通信できる。加えて、ソーラー層380は、天頂に面し(地球から離れた方に面し)、太陽から太陽エネルギーを収集して太陽エネルギーから電力を生成し、アンテナアセンブリ310上の電子部品(電子コンポーネント)に電力を供給するために利用できる。
【0013】
各アンテナアセンブリ310は、回路またはコンポーネントアセンブリ(部品組立体、構成要素組立体)360(図5)および構造アセンブリ(構造体)(図2図4)を有する。コンポーネントアセンブリ360は、アンテナ332と、電子回路とを含む。電子回路は、様々な1つまたは複数の電子コンポーネント(電子部品)を含むことができ、例えば、プロセッサ362などの処理デバイス、ケーブル366、FEM370、および/または1つもしくは複数のバッテリ364などの電源を含むことができる。構造アセンブリは、コンポーネントアセンブリ360を収容して支持し、例えば、外側層320、380、中間層350、および付随する構造素子を含むことができる。特定の素子が回路アセンブリの一部であり、他の素子が構造アセンブリの一部であるとして説明されているが、これらの素子は、他のアセンブリの一部、または回路アセンブリ(回路組立体)および構造アセンブリ(構造体)の両方の一部と考えることができる。
RF層320
【0014】
RF層320は、図2および図3に最もよく示されている。RF層320は本体322を有し、別の衛星、基地局、または地球上のユーザ装置と通信するために使用される複数のアンテナ332を収容する。本体322は、4つの側面(辺)324a、324b、324c、324dと、外向き表面(外面)328と、内向き表面(内面)326とを含む長方形または正方形の形状を有する。本体322は、薄い平坦な導電板として形成されており、軽量である。一例では、本体はアルミニウムで作られ、アンテナ下地(接地領域、領域)を形成する。1つ以上のアンテナ332が本体322に搭載される(取り付けられている)。本体322は、アンテナ332が本体322に取り付けられるのに十分な構造及び支持を提供するが、軽量である。RF層320は、また、熱反射体としても動作し、アンテナアセンブリ310を通して熱を分散させる。
【0015】
1つまたは複数(少なくとも1つ)の凹部またはポケット330が、RF層320の本体322に設けられる。図に示される例示的実施形態では、行および列に整列された複数のポケット330が設けられており、ここでは4×4アレイとして示される。ポケット330は、外向き表面(外面)328から内向き表面(内面)326に向かって内向きに延びている。したがって、ポケット330は、本体322の外面328上に凹部を形成し、本体の内面326からわずかに外向きに突出する。ポケット330は、図3に示されるように、8辺を有する八角形の形状を有することができ、または、正方形(図2に示されるように)、長方形、若しくは円形などの任意の好適な形状を有することができる。
【0016】
アンテナ332は、ポケット330の各々(各々の内部)に収納、搭載されており、アンテナ332のアレイ、ここでは4×4アレイの16個のアンテナ332を形成する。アンテナ332は、プリント回路基板などの基板と、基板上に実装された少なくとも1つ(1つまたは複数)のアンテナ素子とを有することができる。アンテナ素子は、アンテナアセンブリ310との間で信号、例えばRF信号を通信(送受信)する。図3の例では、各アンテナ332は、互いに相互接続された4つのアンテナ素子を有するが、用途に応じてそれよりも多いまたは少ないアンテナ素子を設けることができる。アンテナ332は、ポケット330の凹部を充填し(に収まり)、RF層320の外向き表面328と同一平面になるように(ぴったりと重なるように)位置合わせされる。したがって、アンテナ素子は、RF層320の外面328から外向きに設けられており、これはまた、アンテナアセンブリ310全体において外向きとなっている。
【0017】
外向き表面328は実質的に平面であるので、アンテナ素子も互いに平面である。複数のアンテナ332からの複数のアンテナ素子はすべて、妨害または干渉なしに地球に面する。アンテナアセンブリ310が複数のアンテナアセンブリのアレイに接続されると、アンテナ素子は互いに結合し、実質的に平面であるアンテナアセンブリアレイ全体のアンテナ素子と結合して、宇宙空間に大きなアンテナ構造を形成する。本開示の一実施形態によれば、展開構成において、アンテナアセンブリ310は、単一の連続した均一の途切れのない表面を形成するようになっており、そのため、側面324が互いに接触して、隣接するアンテナアセンブリ310間に間隙のない単一の連続した均一かつ平面的な表面を形成する。第1の層310はまた、アンテナの下地となるリフレクタ(反射器)として機能するとともに、放射器としても機能する。
ソーラー層380
【0018】
図4を参照すると、ソーラー層380は、4辺を有する長方形または正方形の本体382と、外向き表面(外面)384と、内向き表面(内面)386とを有する。本体は、薄い平坦な導電板として形成され、軽量である。一例では、本体は、アンテナの下地を形成するためにアルミニウムで作られる。少なくとも1つ(1つまたは複数)の太陽電池388が、ソーラー層380の外向き表面384に、即ち、アンテナアセンブリ310の地球から離れた方に面する側に取り付けられている。本体382は、少なくとも1つの太陽電池が本体382に取り付けられるのに十分な構造および支持を提供し、軽量である。
【0019】
太陽電池388は、太陽エネルギーを収集して太陽光発電を行い、それはアンテナアセンブリ310の回路アセンブリに給電するための主電源である。バッテリ364は、太陽電池が十分な電力を生成しない場合に二次またはバックアップ電源を形成し、太陽電池120が過剰な電力を生成するときに太陽電池120によって充電される充電式バッテリであってもよい。
【0020】
各ソーラー層380は、アンテナアセンブリ310において局所的に(アンテナアセンブリ310のそれぞれの場所で、アンテナアセンブリの領域で、アンテナアセンブリの単位で)太陽光発電を行う。複数のアンテナアセンブリ310が、それらのアンテナアセンブリ310からなるアレイにおいて利用されるとき、電力は、大量の電力、例えば、100kwを超えるDC電力および最大では数百キロワットのDC電力を生成するためにスケールアップする。アレイはモジュール式であり、より多くのアンテナアセンブリ310を追加することによって拡張可能である。アレイ内に設けられるアンテナアセンブリ310が多いほど、電力は大きくなる。加えて、アンテナアセンブリ310は、各アンテナアセンブリ310において局所的に(アンテナアセンブリそれぞれの場所において、アンテナアセンブリそれぞれの領域において)(ソーラー層380を介して)電力を生成するだけでなく、電力が生成されると、同じアンテナアセンブリ310において電力が局所的に(アンテナアセンブリそれぞれの場所において、アンテナアセンブリそれぞれの領域において)使用される。例えば、電力は、処理デバイス(処理装置)362、アンテナ332、およびフロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)370などの電子コンポーネントによって使用される。
【0021】
太陽電池(ソーラーセル)388は、地球から離れた方に面する表面上、ここでは、ソーラー層380の外向き表面384上に位置付けられることができる。太陽電池は太陽から太陽エネルギーを受け取ることができ、アンテナアセンブリ310が地球と太陽との間にあるときは特にである。したがって、RF側320は地球に面し、反対側の太陽光側380は地球から離れた方に面する。一実施形態では、アンテナアセンブリ310は、軌道において、特定の時間の間、太陽により直接的に(直に)向かうように角度を付けることができる。太陽エネルギーは、アレイ、アセンブリ310、またはアレイ推力のための電子部品に電力を供給するために利用することができる。例えば、太陽電池388は、光起電材料または太陽エネルギーを電気エネルギーに変換してソーラーパネルとして動作する他の材料から作製することができ、太陽電池388は、さらに、本開示に従って信号を送受信するためのアンテナ構造(又は衛星若しくは衛星モジュール310の他の構造)としても機能する。電気エネルギーは、衛星または衛星モジュール310に電力を供給するために使用され、または後の使用のために貯蔵される。従って、同じ構造を太陽エネルギーおよび衛星アンテナとしての動作に使用することができる。
中間層350
【0022】
図3に示されるように、中間層350は、RF層320とソーラー層380との間に配置される。中間層350は、アンテナアセンブリ310に強度および剛性を与え、RF層320においてアンテナ332を動作させる電子コンポーネントを収容する。特に、RF層320及びソーラー層380は、それぞれの本体322および382の厚みが最小となるように金属板で形成され、軽量化されている。これらの層320および380を薄くすることにより、アンテナアセンブリ310の構造を維持し、アンテナアセンブリ310が湾曲または屈曲することを防止するのに十分な強度を欠いている場合がある。しかしながら、アンテナ332およびアンテナアセンブリ310の適切な動作を可能にするために、アンテナアセンブリ310は十分に剛性であることが重要である。
【0023】
したがって、中間層350は支持構造352を有し、いくらかのフレキシビリティ(可撓性)はあるが十分な剛性を備えており、アンテナアセンブリ310が屈曲または撓曲することを抑制し、アンテナアセンブリ310を動作不能にするか、またはアンテナアセンブリ310の動作を劣化させ得ることがない程度までの剛性を備えている。したがって、支持構造352は軽量かつ剛性であり、アンテナアセンブリ310に、構造的な支持および剛性を提供できる。加えて、支持構造352は軽量であり、これは宇宙用途にとって重要であり、宇宙空間への輸送のために重量を低減するために重要である。例示的な一実施形態では、支持構造体352は任意の好適な材料および構造体であってもよく、例えば、Nomex(ノーメックス、登録商標)製のハニカム構造体などであってもよい。
【0024】
中間層350はまた、アンテナ332を動作させるコンポーネントアセンブリ(部品の組立体)360を収容する。コンポーネントアセンブリ360は、支持構造352に設けられたオープニング(開口、隙間)内に位置する。コンポーネントアセンブリ360は、例えば、処理装置362、バッテリ364、ワイヤ又はケーブル366、368、及びフロントエンドモジュール(FEM)370を含むことができる。例えば、中間層350のハニカム構造は、コンポーネントアセンブリ360の個々のコンポーネントをそれぞれ収容する別々の開口部を含むことができる。すなわち、プロセッサ362は第1の開口部に収容され、バッテリ364は第2の開口部に収容されてもよい。したがって、コンポーネントアセンブリ360の複数のコンポーネント(部品)は、外側のRF層320と外側のソーラー層380との間の、アンテナアセンブリ310の内部に収容される。コンポーネントのうちの1つまたは複数は、外層320、380のうちの1つに対して、より近くに配置されていてもよい。例えば、FEM370は、それぞれの対応するアンテナ332に隣接するようにRF層320に対してより近くに配置してもよく、また、アンテナ332との干渉を回避するためにソーラー層380に対してより近くに配置してもよい。また、プロセッサ362は、アンテナ332を加熱することを回避するためにソーラー層380に近くなるように配置することができ、またはソーラー層380からの熱を回避するためにRF層320に近くなるように配置してもよい。
【0025】
コンポーネントアセンブリ360は、また、放熱コンポーネント(放熱部品)またはヒートスプレッダ(熱放散装置)を含んでもよく、例えば、アルミニウム反射体320に沿って熱を1つの局所的なスポットから別の局所的なスポットに分散させるヒートパイプなどを含んでもよい。ヒートパイプはまた、ソーラーパネル380からの熱をアンテナアセンブリ310全体にわたって(アンテナアセンブリ310を通して)、例えば各FEM370に分配することができる。ヒートパイプは熱伝導によって動作するが、ヒートパイプ以外の任意の適切な放熱装置を設けることができ、パイプを含む必要はない。放熱コンポーネントは熱的に動作し、プロセッサ362によって制御される必要はないが、他の放熱コンポーネントを設けてもよく、プロセッサ362が、その放熱コンポーネントによって伝達される熱の量を制御してもよい。複数の放熱コンポーネントは、アンテナアセンブリ310全体に熱を分散させるが、1つのアンテナアセンブリ310から隣接するアンテナアセンブリ310に熱を分散させることもできる。
【0026】
処理デバイス(処理装置)362は、例えば、プロセッサまたはコンピューティングデバイスであってもよい。処理装置362は、アンテナアセンブリ310の動作を制御および管理する。たとえば、プロセッサ362は、アンテナ332を介して送信および/または受信される信号を制御することができる。プロセッサ362はまた、バッテリ364の動作を制御することができ、例えば、太陽エネルギーをバッテリ364に、及びバッテリ364から様々なコンポーネントに、例えばソーラーパイプを介して方向付けることができる。バッテリ364はエネルギーを貯蔵し、ソーラーパネル380によって充電されて電子機器で使用される。複数のワイヤ366は、1つのアンテナアセンブリ310を隣接するアンテナアセンブリ310に接続する高速ケーブルである。複数の高速ケーブル366は、複数のアンテナアセンブリ間の同期のため、および複数のアンテナアセンブリ310間で電力を共有するために、複数のアンテナアセンブリ310を相互接続する。
【0027】
ワイヤ368は、FEM370をプロセッサ362に接続してFEM370とプロセッサ362との間に電気通信を提供する複数のRFケーブルである。FEM370は、アンテナ332の背後の電子機器であり、例えば、送信機および/または受信機を含むことができる。FEM370は、アンテナ332と位置合わせされて配置され、第1の層320の開口部を通してアンテナ332と接続する。個別のFEM370を対応するアンテナ332のそれぞれに対して設けることができ、それによって、各FEM370は対応するアンテナ332と位置合わせされる(列になる)。あるいは、複数のアンテナ332に対して1つのFEM370を設けることができる。アンテナ332はアンテナアセンブリ310の外側に設けられており、外側のRF層320の外向き表面328に設けられている。また、FEM370はアンテナアセンブリ310の内側に設けられており、外側のRF層320と外側のソーラー層380との間の中間層350にある。
【0028】
加えて、アンテナアセンブリ310が、複数のアンテナアセンブリ310を含むアレイの一部を構成する場合、少なくとも1つのコネクタ376(図1)がアンテナアセンブリ310の少なくとも1つの側面324に設けられる。複数のコネクタ376は、支持構造352に、または、外側の層320および380の一方若しくは両方に、またはアンテナアセンブリ310の他の適切な構造に、例えば1つまたは複数の締結具または接着剤などによって接続することができる。コネクタ372は、アンテナアセンブリ310を、隣接するアンテナアセンブリ310に対し回転可能に接続するヒンジ、テープばねなどを含むことができる。したがって、アンテナアセンブリは、格納構成において、それが接続される隣接するアンテナアセンブリ上に折り畳まれ、また、展開構成において、それが隣接するアンテナアセンブリとともに展開されて平面になるようにすることができる。
アンテナアセンブリ310
【0029】
アンテナアセンブリ(アンテナ組立体、アンテナ構造体)310は、地球低軌道(LEO:Low-Earth Orbit)構造である。上述の実施形態では、アンテナアセンブリ310は、複数のアンテナ素子を備えるアンテナ332を有する。しかしながら、アンテナアセンブリ310は、任意の好適な目的のために用いられ、任意の好適な電子コンポーネント(電子部品)を含んでもよく、アンテナ332またはアンテナ素子を含まなくてもよい。アンテナアセンブリ310は、中間層350において電子コンポーネントを収容することにより、それらがRF層310の外向き表面328においてアンテナ332と干渉しないようにすることができる。ソーラー層380は、電子コンポーネントを動作させるための太陽エネルギーを提供する。さらに、アンテナアセンブリの内部で、ソーラーパネルによって受け取られた熱をとどめておく(保持する)断熱を設けてもよい。したがって、電力および処理をアレイ全体にわたって分散でき、太陽エネルギーは、各アンテナアセンブリ310において(太陽電池によって)収集され、(その同じアンテナアセンブリ310において)局所的に(その場において、その領域で)(電子コンポーネントによって)消費され、処理は、中央に位置する処理デバイスではなく各アンテナアセンブリ310において提供される。
【0030】
RF層320、中間層350、及びソーラー層380は全て、同様の形状を有する。図に示される形状は正方形であるが、長方形または三角形などの他の適切な形状を利用することができる。これらの層320、350、380は組み合わされて、RF層320によって形成された第1の外向き表面(第1の外面)328と、ソーラー層380によって形成された第2の外向き表面(第2の外面)384とを有する比較的薄い平坦な長方形または正方形構造を形成する。中間層350は、RF層320とソーラー層380との間に挟まれている。層320、350、380は、任意の好適な方法で、例えば、締結具、樹脂、または接着材料により共に(一体となるように)接続され、それらにより層320、350、380の全てを接続してもよく、隣接する層を接続してもよい。本体332、382は、それぞれのアンテナおよび太陽電池を支持することを可能とする程度の範囲で、本体332、382は可能な限り薄く作製され、その結果、それらは軽量である。しかしながら、薄いために、それら本体332、382はフレキシブル(可撓性)となる。中間層350は、必要となる剛性を提供し、アンテナアセンブリ310の望ましくない曲げおよび撓みを防止し、その一方で中間層350は軽量材料で作られる。RF層320、中間層350、及びソーラー層380は全て、互いに平行な平坦な外面を有する。
【0031】
アンテナアセンブリ310は、別個のハウジングを含まないことに留意されたい。むしろ、電子層320が中間層350に直に接続され、中間層350がソーラー層380に直に接続されることを含めて、これらの層320、350、380は互いに接続される。アンテナアセンブリ310は、1つの、単一の一体型の部材を形成する。しかしながら、アンテナアセンブリ310は、また、レドーム、ハウジングまたはフレームなどの別個の個別構造デバイスであるか、その一部であるか、またはそれに取り付けられたものであってもよい。ハウジングは、それらの層320、350、380により少なくとも部分的に覆われるか、囲まれるか(封止)されてもよい。
【0032】
複数のアンテナアセンブリ310(例えば、複数のアンテナ332またはアンテナ素子)は、例えばユーザデバイス(ユーザの装置、例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ)及び/又は地上局などの、地球上の複数の処理装置と通信する。本開示は、また、複数のアンテナアセンブリ310を利用して、地球上の複数の処理装置と通信する(すなわち、処理装置との間で信号を送受信する)方法を含む。本開示はまた、複数のアンテナアセンブリ310と通信する(すなわち、信号を送受信する)地球上の装置の処理方法を含む。加えて、アンテナアセンブリ310は、地球低軌道(LEO)若しくは他の軌道において、又は他の用途のために使用されてもよい。さらに、本開示ではアンテナアセンブリのアレイに関して説明されているが、本開示は他のアプリケーションに用いられてもよく、例えば、データセンタ、反射器、および他の構造などの他の用途に用いられてもよく、両方とも宇宙または地上で実装されてもよい。
【0033】
本開示は、2020年5月15日に出願された「Low Earth Orbit Mechanical Deployable Structure」という名称の米国特許出願第16/875,646号、および2020年5月15日に出願された「Thermal Management System For Structures in Space」という名称の米国特許出願第16/875,738号に開示されたシステムおよび方法と、別々に利用することができ、また、組み合わせて利用することもできることに更に留意されたく、これらのすべての内容は本願に参照により組み込まれる。したがって、例えば、アンテナアセンブリ310の構造は、「LEO Mechanical Deployable Structure」の出願に示され、および記載されているように自己展開可能であってもよく、および/または「Thermal Management」の出願に示され、および記載されているように熱管理を利用することもできる。
【0034】
説明および特許請求の範囲は、平面、平行、円形、面一、および平坦など、いくつかの幾何学的または関係的用語を使用することにさらに留意されたい。加えて、説明および特許請求の範囲は、上部、底部、内向き、外向き、遠位、および近位等のいくつかの方向的または位置的な用語等を使用する。これらの用語は、図面に示された実施形態に基づく説明を容易にするための便宜上のものに過ぎず、本開示を限定することを意図するものではない。したがって、本開示は、それらの幾何学的、関係的、方向的、または位置的な用語なしに、他の方法で説明され得ることを認識されたい。加えて、幾何学的又は関係的な用語は正確ではなくてもよい。例えば、アンテナアセンブリおよびアンテナアセンブリのアレイは、互いに正確に平面でなくてもよく、実質的に平面であればよく、例えば、動作において許容される程度の許容可能な曲げまたは屈曲は、動作が可能であり、依然として含まれる。また、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の好適な幾何学形状および関係が提供されることができる。
【0035】
前述の説明および図面は、本開示の原理の例示的なものに過ぎないと見なされるべきであり、本開示の原理は、様々な方法で構成され得、本明細書で説明する実施形態によって限定されることを意図するものではない。本開示の多数の用途が当業者には容易に思い浮かぶであろう。したがって、開示された特定の例または示され説明された正確な構成および動作に本開示を限定することは望ましくない。むしろ、全ての適切な改変および等価物が、本開示の範囲内に入るように用いられ得る。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5