(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマーのための発泡剤ブレンド
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20241024BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20241024BHJP
B29C 48/86 20190101ALI20241024BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08J9/12 CET
B29C48/00
B29C48/86
B29C44/00 E
(21)【出願番号】P 2021576506
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020039053
(87)【国際公開番号】W WO2020263775
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514450(JP,A)
【文献】特表2019-515112(JP,A)
【文献】国際公開第2019/075040(WO,A1)
【文献】特表2010-526171(JP,A)
【文献】国際公開第2018/057571(WO,A1)
【文献】特開2012-177052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 48/00
B29C 48/86
B29C 67/20
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスであって、
(a)熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む発泡性組成物を提供する工程であって、前記発泡剤が、30重量%~85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び10重量%~40重量%のギ酸メチルを含
み、前記熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される、工程と、
(b)前記発泡性組成物を膨張させて前記熱可塑性ポリマー発泡体を製造する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ポリマー中の前記発泡剤の溶解度が、前記ポリマー中の前記Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン単独の溶解度よりも大きい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記発泡剤が75重量%~85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記発泡剤が15重量%~25重量%のギ酸メチルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記発泡剤がZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルから本質的になる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記発泡剤が、HFC-152aを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリマー中の前記発泡剤の溶解度が、前記ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとHFC-152aとの混合物の溶解度よりも大きい、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記発泡剤が、30重量%~45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記発泡剤が、15重量%~35重量%のギ酸メチルを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記発泡剤が、30重量%~45重量%のHFC-152aを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
689.5kPa(100psi)~3447.4kPa(5000psi)の発泡直前の圧力で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーを押出して、前記熱可塑性ポリマー発泡体を形成する工程を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記押出が、100℃~150℃のダイ温度で行われる、
請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ポリマー発泡体が、独立気泡ポリマー発泡体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリマーが少なくとも70%の独立気泡を含む、
請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ポリマー発泡体が、滑らかなスキンポリマー発泡体である、
請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ポリマー発泡体が、ブローホールを実質的に含まない、
請求項14に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ポリマーが、ポリスチレンホモポリマーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記発泡性組成物が、造核剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記造核剤が、タルク、グラファイト、及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される、
請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記発泡性組成物が、難燃剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記難燃剤が、ポリマー難燃剤又はハロゲン化難燃剤を含む、
請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記難燃剤が、臭素化難燃剤又は塩素化難燃剤である、
請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記難燃剤が、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーである、
請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記発泡性組成物が、赤外線減衰剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
前記発泡剤が、ポリマー100質量部当たり1質量部~25質量部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
前記発泡剤が、ポリマー100質量部当たり7質量部~18質量部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)30重量%~85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び10重量%~40重量%のギ酸メチルを含む発泡剤と、を含む、熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項29】
前記発泡剤が、HFC-152aを更に含む、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項30】
前記発泡体が、ISO法845-85に従って64kg/m
3未満の密度を有する、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項31】
前記発泡体が少なくとも70%の独立気泡を含む、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項32】
前記発泡体の平均気泡サイズが10μm~5,000μmである、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項33】
前記発泡体がポリスチレン発泡体である、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項34】
前記発泡体がスチレン/アクリロニトリルコポリマー発泡体である、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項35】
前記発泡体が40kg/m
3以下の密度を有する、
請求項28に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリスチレン)の発泡剤としての、HFO-1336mzz-Z、ギ酸メチル、及び任意にHFC-152aを含むブレンドの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の発泡体の製造においては、発泡剤として、クロロフルオロカーボン(すなわち、CFC)がこれまで使用されてきた。概して、CFCがもたらす発泡体は、断熱性が良好で、可燃性が低く、寸法安定性に優れたものである。しかしながら、上記の利点にもかかわらず、CFCは、成層圏オゾン層の破壊に関与しているという点、及び地球温暖化への寄与に関与しているという点によって、これまでその評価は芳しいものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ODP(ozone depletion potential、オゾン層破壊係数)及びGWP(global warming potential、地球温暖化係数)の両方が低い発泡剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、とりわけ、熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスを提供するものであり、このプロセスは、
(a)熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む発泡性組成物を提供する工程であって、発泡剤が、約30重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約10重量%~約40重量%のギ酸メチルを含む、工程と、
(b)発泡性組成物を膨張させて熱可塑性ポリマー発泡体を製造する工程と、を含む。
【0005】
本出願は、熱可塑性ポリマー発泡体を更に提供するものであり、この熱可塑性ポリマー発泡体は、
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)30重量%~85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び10重量%~40重量%のギ酸メチルを含む発泡剤と、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される熱可塑性ポリマー発泡体は、本明細書に記載されるプロセスのうちの1つ以上に従って調製される。
【0007】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が本明細書に記載されており、また、当該技術分野において既知の他の好適な方法及び材料を使用してもよい。材料、方法、及び実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、シーケンス、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】176℃で5.00gr/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、ポリスチレン中の、20重量%のギ酸メチルを含有するHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度を、ポリスチレン中のニートHFO-1336mzz-Zの溶解度と比較したものである。
【
図2】176℃で5.00gr/10分のMFIを有するHFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチルブレンドの、ポリスチレンホモポリマー中の溶解度を、HFO-1336mzz-Z/HFC-152a(50重量%/50重量%)ブレンドの溶解度と比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
熱可塑性発泡体、例えば、押出ポリスチレン発泡体(XPS)(extruded polystyrene foam)を膨張させるための、高い地球温暖化係数(GWP)を有する現用剤は、規制による圧力を受けている。Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z)は、原理上、ポリスチレン(又は他の熱可塑性ポリマー)を、高い断熱能を有する発泡体に膨張させるための低GWP剤として使用することができる。しかし、HFO-1336mzz-Zは、現用押出プロセスの動作条件下で、軟化ポリスチレン中の溶解度が低い。結果として、これらは、最適以下の発泡体特性(例えば、望ましい発泡体密度よりも高い)をもたらす。
【0010】
熱可塑性発泡体(例えば、ポリスチレン発泡体)を膨張させるための発泡剤は、発泡体の膨張及び冷却段階中に、気泡を形成し、効果的な発泡体密度を目標値まで低下させるのに適切な量の発泡剤が利用できるように、発泡体形成条件下で溶融した熱可塑性ポリマー(例えば、ポリスチレン樹脂)に十分に可溶性である必要がある。その溶解度を超えて存在する膨張剤は、発泡体の欠陥につながる可能性がある。
【0011】
本明細書に記載するように、予想外にも、HFO-1336mzz-Zとギ酸メチルとのブレンドは、同一条件でのニートHFO-1336mzz-Zの溶解度を大幅に超える軟化ポリスチレン中の溶解度を示すことができることが見出された。例えば、179℃、1,682psiaでのメルトフローインデックス(MFI)が5.0gr/10分の軟化ポリスチレンホモポリマーへのニートHFO-1336mzz-Zの溶解度は、ポリスチレン100gr当たり5.82gr(すなわち、樹脂100質量部当たり5.82質量部の溶質、又は5.82phr)と測定される。一方で、ギ酸メチルを20重量%含有するHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度は、同一温度及び圧力で、同一ポリスチレン中でポリスチレン100g当たり13.14grの溶解度、すなわちニートHFO-1336mzz-Zの溶解度よりも125.7%高い。
【0012】
また、予想外にも、HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチルの三元ブレンド(それぞれ40重量%/40重量%/20重量%)は、同一条件でHFO-1336mzz-Z/HFC-152aの二元ブレンド(50重量%/50重量%)の溶解度を大幅に超える、軟化ポリスチレン中の溶解度を示すことも見出された。例えば、179℃、1,336psiaでのメルトフローインデックス(MFI)が5.0gr/10分の軟化ポリスチレンホモポリマー中のHFC-152aを50重量%含むHFO-1336mzz-Z/HFC-152aブレンドの溶解度は、ポリスチレン100gr当たり9.58gr(すなわち、9.58phr)と測定される。一方で、三元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチル(それぞれ40重量%/40重量%/20重量%)のブレンドの溶解度は、同一ポリスチレン中の溶解度が、同一温度、同一圧力(1,336psia)下で、ポリスチレン100g当たり約12.80gである(すなわち、二元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a(50/50重量%)ブレンドの溶解度よりも33.61%高い)。また、三元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチル(33.33/33.33/33.33重量%)のブレンドの溶解度は、同一ポリスチレン中の溶解度が、同一温度、同一圧力(1,336psia)下で、ポリスチレン100g当たり約16.25gである(すなわち、二元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a(50/50重量%)ブレンドの溶解度よりも69.62%高い)ことも見出された。
【0013】
したがって、本明細書で提供され、及び任意に本明細書で提供される少なくとも1つの追加化合物(例えば、HFO、HCFO、HFC、HFE、HCFC、CFC、CO2、N2、オレフィン、ヒドロクロロオレフィン、塩素化炭化水素、有機酸、アルコール、炭化水素、エーテル、アルデヒド、ケトン、水、ギ酸エチル、ギ酸、及びtrans-1,2-ジクロロエチレン(DCE))を更に含むブレンドは、押出ポリスチレン発泡体を含む熱可塑性発泡体の膨張のための低又は中程度のGWPを有する発泡剤として有用であり得る。
【0014】
定義及び略語
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0015】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0016】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、実験誤差による変動(例えば、示された値のプラスマイナス約10%)を考慮することを意味する。本明細書で報告される全ての測定値は、特に明記しない限り、「約」という用語が明示的に使用されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されているものと理解される。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「からなる」は、指定されていない、いかなる要素、工程、又は成分も除外する。特許請求の範囲においては、材料に通常付随する不純物を除き、そのような語句は、列挙された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を限ることになる。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の条項内に現れている場合、その条項に記載されている要素のみを限定するものであり、その他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0018】
本明細書で使用するとき、「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場をとる。
【0019】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲、又は好ましい上方値及び/若しくは好ましい下方値のリストのいずれかとして与えられている場合に、これらは、範囲が別個に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限値又は好ましい上方値及び任意の範囲下限値又は好ましい下方値の任意の対から形成される全ての範囲を、具体的に開示するものとして、理解されるものとする。本明細書に数値範囲が記述されている場合、特に指示しない限り、この範囲は、その端点を包含し、かつその範囲内の全ての整数及び分数を包含することが意図される。
【0020】
地球温暖化係数(global warming potential、GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較して、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の影響を示す。100年間を対象期間とするGWPが、通常は参照される値である。
【0021】
本明細書で使用するとき、「オゾン層破壊係数(ODP)」という用語は、「The Scientific Assessment of Ozone Depletion,2002,A report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」のセクション1.4.4、ページ1.28~1.31で定義されている(このセクションの最初の段落を参照)。ODPは、フルオロトリクロロメタン(CFC-11)に対して質量対質量基準で、化合物から予想される成層圏オゾン層破壊の度合いを表す。
【0022】
以下の略語を本明細書で使用することができる。
CFC:クロロフルオロカーボン
GWP:地球温暖化係数
HCFC:ヒドロクロロフルオロカーボン
HCFO:ヒドロクロロフルオロオレフィン
HFC:ヒドロフルオロカーボン
HFE:ヒドロフルオロエーテル
HFO:ヒドロフルオロオレフィン
HFC-152a:1,1-ジフルオロエタン
HFO-1336mzz-Z又は1336mzz-Z:Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン
MFI:メルトフローインデックス
ODP:オゾン層破壊係数
PS:ポリスチレン
重量%:重量パーセント又は重量百分率
【0023】
本発明のプロセス及び発泡体
本出願は、熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるプロセスは、
(a)熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む発泡性組成物を提供する工程であって、発泡剤が、約95重量%~約1重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1重量%~約95重量%のギ酸メチルを含む、工程と、
(b)発泡性組成物を膨張させて熱可塑性ポリマー発泡体を製造する工程と、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポリマー中の発泡剤の溶解度は、ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン単独の溶解度よりも大きい。
【0026】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約90重量%~約5重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、例えば、約90重量%~約10重量%、約90重量%~約30重量%、約90重量%~約50重量%、約90重量%~約70重量%、約70重量%~約5重量%、約70重量%~約10重量%、約70重量%~約30重量%、約70重量%~約50重量%、約50重量%~約5重量%、約50重量%~約10重量%、約50重量%~約30重量%、約30重量%~約5重量%、約30重量%~約10重量%、又は約10重量%~約5重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約75重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約35重量%~約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約35重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約10重量%~約95重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約20重量%~約60重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約25重量%~約55重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約33重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約1重量%~約90重量%のギ酸メチル、例えば、約1重量%~約70重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約10重量%、約10重量%~約90重量%、約10重量%~約70重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約30重量%、約30重量%~約90重量%、約30重量%~約70重量%、約30重量%~約50重量%、約50重量%~約90重量%、約50重量%~約70重量%、又は約70重量%~約90重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約5重量%~約45重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約5重量%~約40重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約10重量%~約40重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約10重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約5重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約15重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約20重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約15重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約20重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約15重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約18重量%~約22重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約20重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約33重量%のギ酸メチルを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、最大で約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、例えば、最大で約70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、又は10重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、最大で約35重量%のギ酸メチルを含み、例えば、最大で約33%、25%、20%、15%、10%、5%、又は1重量%のギ酸メチルを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、最大で約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び最大で約33重量%のギ酸メチルを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、最大で約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び最大で約20重量%のギ酸メチルを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルから本質的になる。いくつかの実施形態では、発泡剤は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルからなる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される発泡剤は、HFC-152aを更に含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマー中のHFC-152aを含む発泡剤の溶解度は、ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン単独の溶解度よりも大きい。いくつかの実施形態では、ポリマー中のHFC-152aを含む発泡剤の溶解度は、ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとHFC-152aとの混合物(すなわち、ギ酸メチルが存在しない状態)の溶解度よりも大きい。
【0035】
いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約5重量%~約60重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、例えば、約5重量%~約40重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約40重量%約10重量%~約20重量%、約20重量%~約60重量%、約20重量%~約40重量%、又は約40重量%~約60重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約20重量%~80重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~70重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~約45重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~40重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約40重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約30重量%~35重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、発泡剤は、約33重量%のHFC-152aを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約1重量%~約25重量%のギ酸メチル、例えば、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約1重量%~約20重量%のギ酸メチルを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約5重量%~約95重量%のHFC-152a、例えば、約5重量%~約80重量%、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約95重量%、約10重量%~約80重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約25重量%、約25重量%~約95重量%、約25重量%~約80重量%、約25重量%~約50重量%、約50重量%~約95重量%、約50重量%~約80重量%、又は約80重量%~約95重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約20重量%~約80重量%のHFC-152aを含む。いくつかの実施形態では、HFC-152aを含む発泡剤は、約50重量%~約70重量%のHFC-152aを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及びHFC-152aから本質的になる。いくつかの実施形態では、発泡剤は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及びHFC-152aからなる。
【0039】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約75重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約15重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約10重量%~約95重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約5重量%~約40重量%のギ酸メチルを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約30重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約10重量%~約40重量%のギ酸メチルを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約20重量%~約60重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約5重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約20重量%~約55重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約5重量%~約45重量%のギ酸メチルを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約20重量%~約55重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、及び
約10重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約20重量%~約55重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン。
【0046】
約5重量%~約45重量%のギ酸メチル、及び
約30重量%~約70重量%のHFC-152aを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約20重量%~約55重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、
約10重量%~約25重量%のギ酸メチル、及び
約30重量%~約70重量%のHFC-152aを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約20重量%のギ酸メチルを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約30重量%~約45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、
約15重量%~約35重量%のギ酸メチル、及び
約30重量%~約45重量%のHFC-152aを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約30重量%~約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、
約20重量%~約35重量%のギ酸メチル、及び
約30重量%~約40重量%のHFC-152aを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約35重量%~約45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、
約15重量%~約25重量%のギ酸メチル、及び
約35重量%~約45重量%のHFC-152aを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、
約30重量%~約35重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、
約30重量%~約35重量%のギ酸メチル、及び
約30重量%~約35重量%のHFC-152aを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、約20重量%のギ酸メチル、及び約40重量%のHFC-152aを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約33重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、約33重量%のギ酸メチル、及び約33重量%のHFC-152aを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、1つ以上の添加剤の存在下でポリマー及び発泡剤を加熱する工程、を更に含む。例示的な添加剤としては、所望の効果が得られる量の、造核剤、気泡安定剤、界面活性剤、防腐剤着色剤、酸化防止剤、補強剤、充填剤、帯電防止剤、IR減衰剤、押出助剤、可塑剤、及び粘度調整剤、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される発泡剤は、添加剤を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される発泡剤は、1つ以上の添加剤(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの添加剤)を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、造核剤の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、造核剤は、タルク、グラファイト、及びケイ酸マグネシウムから選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、発泡性組成物は、難燃剤を更に含む。いくつかの実施形態では、難燃剤は、ポリマー難燃剤又はハロゲン化難燃剤を含む。いくつかの実施形態では、難燃剤は、臭素化難燃剤又は塩素化難燃剤である。いくつかの実施形態では、難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーの一例が、PolyFRとして市販されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、発泡性組成物は、赤外線減衰剤を更に含む。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「溶融組成物」は、発泡性組成物を指す。溶融組成物中の発泡剤の量は、発泡剤以外の添加剤の量、及び発泡生成物において望まれる密度に依存する。いくつかの実施形態では、発泡性組成物中の発泡剤の量は、約5重量%~約20重量%である。いくつかの実施形態では、発泡性組成物中の発泡剤の量は、発泡性組成物の重量に基づいて約5重量%~約15重量%である。発泡性組成物中の発泡剤の重量%は、発泡体の所望の密度、及び発泡剤中の成分の比率に基づいて調整することができることが理解される。
【0061】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、ポリマー100質量部当たり約5質量部~約25質量部、例えば、ポリマー100質量部当たり約5質量部~約20質量部、約5質量部~約15質量部、約5質量部~約10質量部、約10質量部~約25質量部、約10質量部~約20質量部、約10質量部~約15質量部、約15質量部~約25質量部、約15質量部~約20質量部、又は約20質量部~約25質量部である。いくつかの実施形態では、発泡剤は、ポリマー100質量部当たり約7質量部~約18質量部である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される熱可塑性ポリマーは、アルケニル芳香族ポリマーである。本明細書で使用するとき、用語「アルケニル芳香族ポリマー」は、アルケニル-芳香族モノマー単位から形成されるポリマーを指す。いくつかの実施形態では、アルケニル-芳香族モノマー単位は、C2~6アルケニル-C6~10アリールモノマー単位である。いくつかの実施形態では、アルケニル-芳香族モノマー単位は、C2~6アルケニル-フェニルモノマー単位であり、当該フェニルは、任意に置換されている。いくつかの実施形態では、アルケニル芳香族ポリマーはポリスチレンである。
【0063】
ポリスチレンはスチレンホモポリマーであってもよく、又はスチレン以外の共重合モノマーを含有していてもよい(すなわち、ポリスチレンコポリマー)。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンと追加の熱可塑性ポリマーとのブレンドを含む。いくつかの実施形態では、追加の熱可塑性ポリマーは、スチレンとスチレン以外のモノマー(例えば、アクリロニトリル)とのコポリマーである。
【0064】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、及びそれらのブレンドから選択される。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選択される。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーである。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンである。
【0065】
発泡している熱可塑性ポリマーがポリスチレンであろうと、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドであろうと、好ましくは、スチレンが、発泡している熱可塑性ポリマーにおける主な重合モノマー(単位)である。いくつかの実施形態では、スチレンの重合単位は、熱可塑性ポリマーの重合モノマー単位の少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、又は少なくとも100モル%を構成する。
【0066】
熱可塑性ポリマーがスチレンコポリマーを含有する場合、スチレンと共重合する追加のモノマーの量は、当該コポリマーの総モル数(すなわち、100%)に基づいて、当該コポリマーのスチレン含有量が当該コポリマーの少なくとも60モル%、当該コポリマーの少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%になるような量である。これらの比は、スチレンコポリマーが熱可塑性ポリマー中の唯一のスチレン含有ポリマーであろうと、又は他の熱可塑性ポリマーとのブレンド、例えばスチレンホモポリマー若しくは他のスチレンコポリマーであろうと、当てはまることが理解される。
【0067】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、スチレンホモポリマー(すなわち、すなわちポリスチレンホモポリマー)を含む。熱可塑性ポリマーが上記のようなポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドであるとき、このブレンドのポリスチレン成分は、好ましくは、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの合計重量の少なくとも80重量%を構成するスチレンホモポリマーである。
【0068】
発泡しているポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーの分子量は、発泡体の用途の要件に必要な強度を提供するのに十分に高い。強度の要件が、発泡生成物の最低密度を決定する。また、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーの高い分子量は、発泡生成物の強度にも寄与する。分子量の指標は、規定の荷重下で規定のオリフィスを通って溶融ポリマーが流れる速度である。流速が遅くなるほど、分子量が高くなる。メルトフローレートの測定値は、ASTM D 1238に従って200℃で、また溶融ポリマーに対して5kgの荷重を使用して求められる。規定の期間の時間にオリフィスを通って流れる溶融ポリマーの重量によって、メルトフローレートをg/10分で報告することが可能になる。好ましくは、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーのメルトフローレートは、20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。驚くべきことに、分子量が高くなる(メルトフローレートが低くなる)ほど、発泡生成物上で滑らかな皮膜(滑らかなスキン)がなおも得られると同時に、特に低密度発泡生成物の獲得可能性に関して、発泡結果がより良好になる。好ましくは、本明細書に開示される全てのメルトフローレートの最低メルトフローレートは、少なくとも1g/10分であり、それによって、本明細書に開示されるメルトフローレート範囲としては、1~25、1~20、1~15、及び1~10g/10分が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、メルトフローレートは、溶融ポリマーに対して5kgの重りを使用して、200℃でASTM D 1238の手順に従って求めたとき、約25g/10分以下である。
【0069】
ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーへの言及は、ポリスチレン自体にも適用される。したがって、例えば、前述の段落におけるポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーについての開示を、本開示のポリスチレンに置き換えることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、熱可塑性ポリマーを押出して、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及び任意にHFC-152aを含む熱可塑性ポリマー発泡体を形成する工程を更に含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、押出は、約100℃~約150℃、例えば、約100℃~約140℃、約100℃~約130℃、約100℃~約120℃、約100℃~約110℃、約110℃~約150℃、約110℃~約140℃、約110℃~約130℃,約110℃~約120℃、約120℃~約150℃、約120℃~約140℃、約120℃~約130℃、約130℃~約150℃、約130℃~約140℃、又は約140℃~約150℃のダイ温度で行われる。いくつかの実施形態では、押出は、約110℃~約140℃のダイ温度で行われる。いくつかの実施形態では、押出は、約120℃~約130℃のダイ温度で行われる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、1)発泡性組成物を所望の形態に形成し、2)発泡性組成物を押出して、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及び、任意にHFC-152aを含む熱可塑性ポリマー発泡体を形成するために押出機内で行われる。
【0073】
本発明のプロセスが押出機内で行われるとき、熱可塑性ポリマーは、押出機への供給原料を形成する。発泡剤及び共発泡剤は、好ましくは、押出機の供給端と押出端との中間の位置で押出機に供給され、典型的には、押出スクリューが供給原料を押出機の長さに沿って前進させるときに作製される発泡性組成物に供給される。追加の添加剤は、適宜、添加剤の状態として記述され得るように添加されてよい。例えば、固体添加剤は、押出機の供給端部に、場合によっては粒子状形態のポリマー供給原料との混合物として押出機に便利に添加することができる。押出機内で得られた発泡性組成物をダイに通して押出し、それによって、発泡性組成物を所望の形状(例えば、シート、板、ロッド、又はチューブ)の発泡生成物に膨張させ、その後冷却する。
【0074】
組成物が溶融して溶融組成物が形成される押出機内の領域では、この溶融は熱を加えることによって生じ、その熱は溶融物を形成する混合プロセスで発生し、これが溶融混合領域とみなされる。一実施形態では、温度は、少なくとも185℃、より好ましくは少なくとも190℃、又は少なくとも200℃、又は少なくとも210℃である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される全ての溶融混合温度についての最高温度は、250℃である。本明細書に開示される溶融混合温度は、混合時の混合ゾーンにおける溶融物の温度である。いくつかの実施形態では、溶融混合が実施される圧力は、少なくとも3000psi(207バール)、より好ましくは少なくとも3500psi(241バール)、より好ましくは少なくとも4000psi(276バール)である。いくつかの実施形態では、溶融混合が実施される開示された全ての最低圧力についての最高値は、5000psi(345バール)以下である。本明細書に開示される圧力は、ゲージ圧である。
【0075】
溶融組成物が押出される押出機内の領域では、押出が実施される温度が好ましくは少なくとも105℃、より好ましくは110℃、より好ましくは少なくとも125℃になるように溶融組成物が冷却される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される全ての最低押出温度についての最高値は、好ましくは140℃以下である。本明細書に開示される押出温度は、押出時の溶融物の温度である。
【0076】
いくつかの実施形態では、押出は、好ましくは、少なくとも1500psi(103バール)、より好ましくは少なくとも1600psi(110バール)の圧力で実施される。本明細書に開示される最低押出圧力についての最高値は、好ましくは2000psi(138バール)以下である。押出圧力は、押出ダイ内部の圧力である。
【0077】
いくつかの実施形態では、プロセスは、約100psi~約5000psi、例えば、約100psi~約4000psi、約100psi~約3000psi、約100psi~約2000psi、約100psi~約1000psi、約1000psi~約5000psi、約1000psi~約4000psi、約1000psi~約3000psi、約1000psi~約2000psi、約2000psi~約5000psi、約2000psi~約4000psi、約2000psi~約3000psi、約3000psi~約5000psi、約3000psi~約4000psi、又は約4000psi~約5000psiの発泡直前の圧力で実施される。いくつかの実施形態では、プロセスは、約500psi~約4000psiの発泡直前の圧力で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、約800psi~約3000psiの発泡直前の圧力で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、約1000psi~約2500psiの発泡直前の圧力で行われる。
【0078】
上記のメルトフローレート、温度、及び圧力についての複数の範囲の開示は、所望の特定の発泡構造を得るために、本発明の実施において任意の組み合わせで使用することができる。例えば、泡密度の低い発泡生成物を得るためには3000~5000psi(207~345バール)の溶融混合圧力が好ましく、本明細書に開示される滑らかなスキンの独立気泡発泡生成物密度のいずれかを形成するためには、この温度範囲は溶融混合及び押出の温度範囲のいずれかで使用することができる。溶融混合のための3000~5000psi(207~345バール)の圧力範囲と共に、1500~2000psi(103~138バール)の溶融押出圧力範囲についても同じことが当てはまる。最も好ましくは、溶融混合(207~345バール)及び押出(103~138バール)のための2つの好ましい圧力範囲が共に使用される。25、20、15、及び10以下、かつ最低少なくとも1(全ての値はg/10分である)の発泡するポリマーについてのメルトフローレートは、発泡生成物の所望の結果に応じて、これらの圧力及び温度の組み合わせのいずれかと共に使用することができる。
【0079】
本発明のプロセスが押出機内で行われるとき、押出が行われる温度が、好ましくは少なくとも125℃、より好ましくは少なくとも130℃になるように、熱可塑性ポリマー(すなわち、発泡性組成物)を冷却する。いくつかの実施形態では、押出が行われる温度は、本発明のプロセスの第1の温度よりも低い温度である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される全ての最低押出温度についての最高値は、約150℃以下である。いくつかの実施形態では、押出は、約100℃~約150℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、押出は、約110℃~約140℃の温度で行われる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される押出温度は、押出時のポリマー溶融物の温度である。
【0081】
本発明のプロセスが押出機内で行われるとき、押出は、好ましくは少なくとも1500psi(103バール)、より好ましくは少なくとも1600psi(110バール)の圧力で行われる。本明細書に開示される最低押出圧力についての最高値は、好ましくは2000psi(138バール)以下である。いくつかの実施形態では、押出は、約1500psi~約2000psiの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される押出圧力は、押出ダイ内部の圧力である。
【0082】
いくつかの実施形態では、押出は、約100psi~約5000psi、例えば、約100psi~約4000psi、約100psi~約2000psi、約100psi~約1000psi、約1000psi~約5000psi、約1000psi~約4000psi、約1000psi~約2000psi、約2000psi~約5000psi、約2000psi~約4000psi、又は約4000psi~約5000psiの圧力で行われる。
【0083】
いくつかの実施形態では、押出は、約500psi~約4000psiの圧力で行われる。
【0084】
いくつかの実施形態では、押出は、約750psia~約3000psiaの圧力で行われる。
【0085】
いくつかの実施形態では、押出は、約900psia~約2750psiaの圧力で行われる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載されるプロセスのうちの1つ以上に従って調製された発泡生成物(例えば、熱可塑性ポリマー発泡体)を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、発泡体は、
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)本明細書に提供される発泡剤(すなわち、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及び任意にHFC-152aを含む発泡剤)と、を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、発泡体は、
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)本明細書で提供されるZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルを含む発泡剤と、を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、発泡体は、
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)本明細書で提供されるZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及びHFC-152aを含む発泡剤と、を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される発泡体は、本明細書に記載される1つ以上の添加剤を更に含む。
【0091】
所望の特定の発泡構造を得るために、本明細書に記載の発泡剤ブレンド、添加剤、メルトフローレート、温度、圧力、及び他のプロセスパラメータを本発明の実施において任意の組み合わせで使用してよいことが理解される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される熱可塑性ポリマー発泡体は、以下の特性のうちの1つ以上を含む:
・独立気泡-少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%。独立気泡含有量は、ASTM法D6226-05に従って測定することができる。
・平均気泡サイズ:約0.005mm~約5mm(すなわち、5μm~約5000μm)、例えば、約0.01mm~約5mm、約0.05mm~約5mm、約0.05mm~約0.5mm。いくつかの実施形態では、平均気泡サイズは、約0.01mm~約1mmである。いくつかの実施形態では、平均気泡サイズは約0.02mm~約0.5mmである。いくつかの実施形態では、平均気泡サイズは、約0.1mm~約0.3mmである。
・約40kg/m3以下、約35kg/m3以下、又は約23kg/m3以下の密度であること。密度は、ISO法845 85に従って測定することができる。
・滑らかなスキン。
・ブローホールを実質的に含まない。
【実施例】
【0093】
本発明を、具体的な実施例によって、より詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的のために提供され、いかなる意味でも、本発明を限定することを意図するものではない。
【0094】
実施例1.軟化ポリスチレンホモポリマー中のHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度
この実施例は、軟化ポリスチレン中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z)/ギ酸メチルブレンドの溶解度が、軟化ポリスチレン中のニートHFO-1336mzz-Zの溶解度と比較して向上していることを示すものである。
【0095】
軟化ポリスチレン中の、HFO-1336mzz-Z及び20重量%のギ酸メチルを含有するHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度は、以下の手順によって求めた。約78grのポリスチレンをステンレス鋼Parr(著作権)反応器に充填した。反応器を計量し、入口/出口配管に取り付け、油浴に浸し、排気した。HIP圧力発生器(High Pressure Equipment Company製)を使用して、予想される溶解度を超える一定量の発泡剤を排気された反応器に充填した。油浴を加熱し、179℃の温度で30分間維持してから、最終圧力を記録した。Parr(著作権)反応器を油浴から取り出し、室温まで冷却した。過剰な(ポリスチレン中に溶解していない)発泡剤を排出又は放出した後、反応器(内部に再固化したポリスチレンを含む)を計量した。重量増加は、以下の式に従って溶解度として記録した。
式1.
溶解度(phr)=(樹脂重量増加÷78)X100。
【0096】
図1に示すように、予想外にも、HFO-1336mzz-Zとギ酸メチルとのブレンドは、同一条件でのニートHFO-1336mzz-Zの溶解度を大幅に超える軟化ポリスチレン中の溶解度を示すことが見出された。例えば、軟化ポリスチレンホモポリマー中の、179℃及び1,682psiaで5.0gr/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するニートHFO-1336mzz-Zの溶解度は、ポリスチレン100g当たり5.82gr(すなわち、5.82phr)と測定される。一方で、ギ酸メチルを20重量%含有するHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度は、同一温度及び圧力で、ポリスチレン100g当たり13.14gr、すなわちニートHFO-1336mzz-Zの溶解度と比較して125.7%高い同一ポリスチレン中の溶解度を示した。
【0097】
実施例2.軟化ポリスチレンホモポリマー中のHFO-1336mzz-Z/ギ酸メチルブレンドの溶解度
この実施例は、軟化ポリスチレン中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(すなわち、HFO-1336mzz-Z)/HFC-152a/ギ酸メチルのブレンドの溶解度が、軟化ポリスチレンホモポリマー中のHFO-1336mzz-Z/HFC-152aのブレンドの溶解度よりも向上していることを示すものである。溶解度分析は、実施例1に記載した全般的な手順に従って行った。
【0098】
図2に示すように、予想外にも、HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチルの三元ブレンド(例えば、40重量%/40重量%/20重量%、及び(それぞれ33.33重量%/33.33重量%/33.33重量%)は、同一条件でHFO-1336mzz-Z/HFC-152aの二元ブレンド(50重量%/50重量%)の溶解度を大幅に超える、軟化ポリスチレン中の溶解度を示す。
【0099】
例えば、179℃、1,336psiaでのメルトフローインデックス(MFI)が5.0gr/10分の軟化ポリスチレンホモポリマー中の50重量%/50重量%HFO-1336mzz-Z/HFC-152aブレンドの溶解度は、ポリスチレン100gr当たり9.58gr(すなわち9.58phr)と測定される。一方で、三元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチル(それぞれ40重量%/40重量%/20重量%)の溶解度は、同一温度、同一圧力下で、ポリスチレン100g当たり約12.80gr、すなわち、二元HFO-1336mzz-Z/HFC-152aブレンドの溶解度よりも33.61%高い同一ポリスチレン中の溶解度を示した。三元HFO-1336mzz-Z/HFC-152a/ギ酸メチル(33.33重量%/33.33重量%/33.33重量%)のブレンドの溶解度は、同一温度、同一圧力の下で、ポリスチレン100g当たり約16.25g、すなわち、二元HFO-1336mzz-Z/HFC-152aのブレンドの溶解度よりも69.62%高い同一ポリスチレン中の溶解度を示した。
【0100】
他の実施形態
1.いくつかの実施形態において、本出願は、熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスを提供するものであり、このプロセスは、
(a)熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む発泡性組成物を提供する工程であって、発泡剤が、約95重量%~約1重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1重量%~約95重量%のギ酸メチルを含む、工程と、
(b)発泡性組成物を膨張させて熱可塑性ポリマー発泡体を製造する工程と、を含む。
【0101】
2.ポリマー中の発泡剤の溶解度が、ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン単独の溶解度よりも大きい、実施形態1に記載のプロセス。
【0102】
3.発泡剤が、約75重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
【0103】
4.発泡剤が、約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
【0104】
5.発泡剤が、約15重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
【0105】
6.発泡剤が、約20重量%のギ酸メチルを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
【0106】
7.発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルから本質的になる、実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
【0107】
8.発泡剤が、HFC-152aを更に含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
【0108】
9.ポリマー中の発泡剤の溶解度が、ポリマー中のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとHFC-152aとの混合物の溶解度よりも大きい、実施形態8に記載のプロセス。
【0109】
10.発泡剤が、約30重量%~約45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態8又は9に記載のプロセス。
【0110】
11.発泡剤が、約30重量%~約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態8又は9に記載のプロセス。
【0111】
12.発泡剤が、約15重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む、実施形態8~11のいずれか1つに記載のプロセス。
【0112】
13.発泡剤が、約20重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む、実施形態8~11のいずれか1つに記載のプロセス。
【0113】
14.発泡剤が、約30重量%~約45重量%のHFC-152aを含む、実施形態8~13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0114】
15.発泡剤が、約30重量%~約40重量%のHFC-152aを含む、実施形態8~13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0115】
16.発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及びHFC-152aから本質的になる、実施形態8~15のいずれか1つに記載のプロセス。
【0116】
17.熱可塑性ポリマーがアルケニル芳香族ポリマーである、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0117】
18.熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、及びスチレンアクリロニトリルコポリマー、並びにそれらのブレンドからなる群から選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0118】
19.熱可塑性ポリマーが、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、及びこれらのブレンドからなる群から選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0119】
20.約100psi~約5000psiの発泡直前の圧力で行われる、実施形態1~19のいずれか1つに記載のプロセス。
【0120】
21.約750psi~約2500psiの発泡直前の圧力で行われる、実施形態1~19のいずれか1つに記載のプロセス。
【0121】
22.熱可塑性ポリマーを押出して熱可塑性ポリマー発泡体を形成する工程を更に含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載のプロセス。
【0122】
23.押出が、約100℃~約150℃のダイ温度で行われる、実施形態21に記載のプロセス。
【0123】
24.押出が、約110℃~約140℃のダイ温度で行われる、実施形態21に記載のプロセス。
【0124】
25.押出が、約120℃~約130℃のダイ温度で行われる、実施形態21に記載のプロセス。
【0125】
26.ポリマー発泡体が、独立気泡ポリマー発泡体である、実施形態1~25のいずれか1つに記載のプロセス。
【0126】
27.ポリマーが少なくとも70%の独立気泡を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載のプロセス。
【0127】
28.ポリマー発泡体が、滑らかなスキンポリマー発泡体である、実施形態1~27のいずれか1つに記載のプロセス。
【0128】
29.ポリマー発泡体が、ブローホールを実質的に含まない、実施形態1~28のいずれか1つに記載のプロセス。
【0129】
30.ポリマーがポリスチレンホモポリマーである、実施形態1~29のいずれか1つに記載のプロセス。
【0130】
31.発泡性組成物が、造核剤を更に含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載のプロセス。
【0131】
32.造核剤が、タルク、グラファイト、及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される、実施形態31に記載のプロセス。
【0132】
33.発泡性組成物が、難燃剤を更に含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載のプロセス。
【0133】
34.難燃剤が、ポリマー難燃剤又はハロゲン化難燃剤を含む、実施形態33に記載のプロセス。
【0134】
35.難燃剤が、臭素化難燃剤又は塩素化難燃剤である、実施形態33に記載のプロセス。
【0135】
36.難燃剤が、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーである、実施形態33に記載のプロセス。
【0136】
37.発泡性組成物が、赤外線減衰剤を更に含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載のプロセス。
【0137】
38.発泡剤が、ポリマー100質量部当たり約1質量部~約25質量部である、実施形態1~37のいずれか1つに記載のプロセス。
【0138】
39.発泡剤が、ポリマー100質量部当たり約7質量部~約18質量部である、実施形態1~37のいずれか1つに記載のプロセス。
【0139】
40.いくつかの実施形態では、本出願は、熱可塑性ポリマー発泡体を提供するものであり、この熱可塑性ポリマー発泡体は、
(a)ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又はそれらのブレンドからなる群から選択される熱可塑性ポリマーと、
(b)約95重量%~約1重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1重量%~約95重量%のギ酸メチルを含む発泡剤と、を含む。
【0140】
41.発泡剤が、約75重量%~約85重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態40に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0141】
42.発泡剤が、約80重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態40に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0142】
43.発泡剤が、約15重量%~約25重量%のギ酸メチルを含む、実施形態40~42のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0143】
44.発泡剤が、約20重量%のギ酸メチルを含む、実施形態40~42のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0144】
45.発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びギ酸メチルから本質的になる、実施形態40~44のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0145】
46.発泡剤が、HFC-152aを更に含む、実施形態40に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0146】
47.発泡剤が、約30重量%~約45重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態46に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0147】
48.発泡剤が、約30重量%~約40重量%のZ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含む、実施形態46に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0148】
49.発泡剤が、約15重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む、実施形態46~48のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0149】
50.発泡剤が、約20重量%~約35重量%のギ酸メチルを含む、実施形態46~48のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0150】
51.発泡剤が、約30重量%~約45重量%のHFC-152aを含む、実施形態46~50のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0151】
52.発泡剤が、約30重量%~約40重量%のHFC-152aを含む、実施形態46~50のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0152】
53.発泡剤が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、ギ酸メチル、及びHFC-152aから本質的になる、実施形態46~52のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0153】
54.発泡体が、ISO法845-85に従って約64kg/m3未満の密度を有する、実施形態40~53のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0154】
55.発泡体が、ISO法845-85に従って約30kg/m3未満の密度を有する、実施形態40~53のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0155】
56.ポリマーが、約25g/10分未満のメルトフローレートを有する、実施形態40~55のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0156】
57.独立気泡ポリマー発泡体である、実施形態40~56のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0157】
58.滑らかなスキンポリマー発泡体である、実施形態40~57のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0158】
59.ポリマー発泡体が実質的にブローホールを含まない、実施形態40~58のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0159】
60.発泡体が少なくとも70%の独立気泡を含む、実施形態40~59のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0160】
61.発泡体の平均気泡サイズが約1μm~約5,000μmである、実施形態40~60のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0161】
62.発泡体の平均気泡サイズが約10μm~約5,000μmである、実施形態40~60のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0162】
63.発泡体の平均気泡サイズが約100μm~約300μmである、実施形態40~62のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0163】
64.発泡体がポリスチレン発泡体である、実施形態40~63のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0164】
65.発泡体がスチレン/アクリロニトリルコポリマー発泡体である、実施形態40~63のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0165】
66.発泡体が約40kg/m3以下の密度を有する、実施形態40~65のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【0166】
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。本発明が、本発明の任意の特定の態様及び/又は実施形態に関して本明細書に記載される特徴のいずれも、本明細書に記載される本発明の任意の他の態様及び/又は実施形態の他の特徴のいずれかのうちの1つ以上と組み合わせることができ、組み合わせの適合性を確実にするために適宜変更することができることが、本発明に関連する当業者により理解されるべきである。そのような組み合わせは、本開示により企図される本発明の一部であるとみなされる。