(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】セメント系組成物、セメント系組成物製造方法及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20241024BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241024BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20241024BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20241024BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/06 Z
C04B40/02
B28B11/24
C04B22/10
(21)【出願番号】P 2022016650
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】神下 竜三
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】好見 一馬
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 修
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-029049(JP,A)
【文献】特開2002-012466(JP,A)
【文献】特開2015-214431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252934(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108609880(CN,A)
【文献】特開2005-320202(JP,A)
【文献】特開2000-239670(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117623(WO,A1)
【文献】特開2014-015356(JP,A)
【文献】特開2002-020144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28B 11/00-19/54
B09B 3/40
B01D 53/00
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系組成材である舗装用コンクリートを構成するため、水セメント比は37~44%であり、細骨材率は35~44%であり、前記舗装用コンクリートは1平方メートル当たり、130~150kgの水と295~405kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を混合し、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有し、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項2】
セメント系組成材である構造物用コンクリートを構成するため、その構造物用コンクリートの水セメント比は
45~60%であり、細骨材率は
40~50%であり、前記構造物
用コンクリートは1平方メートル当たり、150~170kgの水と250~378kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を混合し、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有しており、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項3】
セメント系組成材である鋼繊維補強コンクリートを構成するため、その鋼繊維補強コンクリートの水セメント比は35~45%であり、細骨材率は40~55%であり、前記鋼繊維補強コンクリートは1平方メートル当たり、160~200kgの水と356~571kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を混合し、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有しており、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項4】
セメント系組成材である早期交通開放型コンクリートを構成するため、その早期交通開放型コンクリートの水セメント比は30~41%であり、細骨材率は32~47%であり、前記早期交通開放型コンクリートは1平方メートル当たり、145~170kgの水と354~567kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を混合し、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有しており、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項5】
セメント系組成材であるセメントモルタルを構成するため、そのセメントモルタルの水セメント比は45~55%であり、1平方メートル当たり、244~261kgの水と435~610kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を含み、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有しており、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項6】
セメント系組成材であるセメントペーストを構成するため、そのセメントペーストの水セメント比は40~60%であり、1平方メートル当たり、553~648kgの水と1080~1382kgのセメントと、50~100kgの二酸化炭素を吸収する材料を含み、
前記二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、CO
2吸収性能を再生する性質を有しており、
前記二酸化炭素を吸収する材料が水と混合するまでの間に二酸化炭素を吸収するのを防止するため、前記二酸化炭素を吸収する材料は水溶性カプセルに内包され、
前記二酸化炭素を吸収する材料はナトリウムフェライトであることを特徴とするセメント系組成物の製造方法。
【請求項7】
常温常圧で二酸化炭素を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出し、二酸化炭素吸収性能を再生する性質を有して二酸化炭素を吸収する材料
はナトリウムフェライトであって、
過去においてセメント系組成材の材料に用いられていない新規な材料であるナトリウムフェライトが、固化材、骨材、水、混和剤及び/又は混和材と、製造設備で混合され、或いは、施工現場で混合される請求項1~6のいずれか1項の製造方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素を吸収する材料であるナトリウムフェライトを包含し且つ前記ナトリウムフェライトの二酸化炭素を吸収する能力を喪失し或いは二酸化炭素吸収能力が低下したセメント系組成物を加熱して
前記ナトリウムフェライトの二酸化炭素を吸収する能力を再生する
再生工程と、
前記再生工程で二酸化炭素を吸収する能力を再生した
セメント系組成材を、
過去においてセメント系組成材の材料に用いられていない新規な材料である前記ナトリウムフェライトと
、固化材と
、骨材と
、水と
、混和剤及び/又は混和材の混合物に添加する工程を有する請求項7の製造方法。
【請求項9】
二酸化炭素を吸収する能力を喪失し或いは二酸化炭素吸収能力が低下した請求項1~請求項6の何れか1項の方法で製造されたセメント系組成物を加熱し、セメント系組成物から二酸化炭素を放出させて二酸化炭素を吸収する能力を再生する再生工程と、
当該再生工程で二酸化炭素を吸収する能力を再生する際に放出された二酸化炭素を回収する回収工程を有することを特徴とする二酸化炭素吸収能力を再生し放出された二酸化炭素を回収する方法。
【請求項10】
請求項1~請求項6の何れか1項の方法で製造されたセメント系組成物を施工した領域を加熱し、施工されたセメント系組成物から二酸化炭素を放出させて二酸化炭素を吸収する能力を再生する加熱工程と、
当該加熱工程で放出された二酸化炭素を回収する回収工程を有することを特徴とする二酸化炭素吸収能力を再生し放出された二酸化炭素を回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収能力を有するコンクリート等のセメント系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等のセメント系組成物は二酸化炭素を吸収する能力を有することは従来から知られている。
近年の環境問題に対する意識の高まりから、コンクリート等のセメント系組成物の二酸化炭素吸収能力を更に向上させて、コンクリート、路面、その他の建造物により二酸化炭素を吸収させて、大気中の二酸化炭素濃度を抑制したいという要請が存在する。
しかし、二酸化炭素吸収能力を有する物質の多くは二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素吸収量が限界まで到達すると、それ以上は二酸化炭素を吸収することが出来ない。二酸化炭素吸収能力を有するコンクリートも同様であり、建造物に打設、施工された後、一定期間経過すると二酸化炭素を吸収しなくなるという問題を有している。
【0003】
近年の環境意識の高まりから、熱や圧力など何らかの外力を与えることにより吸収・放出を繰り返す二酸化炭素吸収材(たとえば特許文献1)が着目されている。ここで、セメント系組成物に、熱を与えることにより二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材が含有されていれば、加熱して二酸化炭素を放出することにより、再び二酸化炭素を吸収する能力を発揮すること(再生、回復或いは復活すること)が期待される。
従来の二酸化炭素吸収材では、二酸化炭素(CO2)を吸収した後、その吸収能力を再生(回復)するためには、600℃程度に加熱する必要がある。例えば、リチウムシリケート(Li4SiO4)は室温~700℃の温度で二酸化炭素を吸収し、700℃以上で二酸化炭素を放出する。
しかし、コンクリート等のセメント系組成物は300℃を超えると強度が著しく低下する。そのため、300℃を超えた温度で吸収した二酸化炭素を放出する材料は、二酸化炭素吸収能力を有するセメント系組成物に使用することは不都合である。さらに、コンクリート等のセメント系組成物は600℃程度まで加熱すると爆裂、劣化、変色することが知られている。
そのため、二酸化炭素吸収能力を有するセメント系組成物としては、吸収した二酸化炭素を100~300℃で放出する性質が好ましいが、その様なセメント系組成物は未だに提案されていない。
また、吸収した二酸化炭素を放出して二酸化炭素吸収能力を再び発揮する(二酸化炭素吸収能力が再生、回復或いは復活する)際に、放出された二酸化炭素が大気中に拡散されてしまうと、二酸化炭素排出量を削減するという趣旨に反してしまう。同様に、コンクリート等のセメント系組成物を再利用する際に、加熱して二酸化炭素を放出して大気中に放散してしまうのでは、二酸化炭素放出量の削減にならない。
【0004】
その他の従来技術として、製造過程で発生する二酸化炭素よりも、大幅に二酸化炭素を削減する技術が提案されている(特許文献2参照)。しかし、コンクリート等のセメント系組成物製造の過程で発生する二酸化炭素の削減を目的とする当該技術(特許文献2)は、自然環境下におけるセメント系組成物自体の二酸化炭素吸収能力を向上することは意図しておらず、二酸化炭素吸収能力を再生(回復)することや二酸化炭素吸収能力を再生(回復)する際に放出される二酸化炭素については何等考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6080122号公報
【文献】特許第5504000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、自然環境下におけるセメント系組成物自体の二酸化炭素吸収能力を向上させることや、セメント系組成物自体の二酸化炭素吸収能力を再生(回復)するセメント系組成物の提供を目的としている。
また本発明は、製造時或いは二酸化炭素吸収能力再生(回復)時において、二酸化炭素が大気中に放出されることを防止出来る技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメント系組成物は、二酸化炭素(CO2)を吸収する材料を含有しており、
二酸化炭素を吸収する材料は、常温常圧でCO2を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収したCO2を放出する性質を有することを特徴としている。
或いは本発明のセメント系組成物は、常温常圧でCO2を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収したCO2を放出し、CO2吸収性能を再生する性質を有することを特徴としている。
前記CO2を吸収する材料はアルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなど)、酸化セリウム、ナトリウムフェライトなどがあり、本発明においては、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトであるのが好ましい。
【0008】
本発明のセメント系組成物の実施に際して、前記CO2を吸収する材料が常温常圧でCO2を吸収しないように、前記CO2を吸収する材料を水溶性カプセルに内包することが出来る。或いは、前記CO2を吸収する材料をアスファルトや樹脂等で被覆させることが出来る。
【0009】
そして、本発明のセメント系組成物は、容積比で0.5~20%のCO2吸収材料を含有するのが好ましい。
また本発明において、強度物性その他の諸性状を向上させるため、繊維、混和剤(例えば減水剤)及び/又は混和材(例えば高炉スラグ微粉末)を添加することが出来る。
そして本発明において、固化材であるセメントの一部或いは全部を高炉スラグ微粉末、フライアッシュに代替することが出来る。
【0010】
本発明のセメント系組成物の製造方法は、(まだ固まらないセメント系組成物の製造過程において、)常温常圧でCO2を吸収し、100~300℃に加熱すると吸収したCO2を放出する性質を有する材料(CO2吸収材)を、固化材及び水(例えば、固化材、骨材、水、混和剤及び/又は混和材)と混合する工程を有することを特徴としている。
本発明の製造方法において、前記CO2吸収材は炭酸カリウム、ナトリウムフェライトであるのが好ましい。
【0011】
また本発明の製造方法において、CO2を吸収する能力を喪失あるいはCO2吸収能力が低下したCO2吸収材を含有するセメント系組成物(例えば解体された本発明のコンクリート)を加熱してCO2を吸収する能力を再生(回復)する工程と、CO2を吸収する能力を再生(回復)したCO2吸収材を含有するセメント系組成物(CO2吸収性能再生材)を未だに使用されていないCO2を吸収する材料(CO2を吸収する新規な材料)と固化材と骨材、水、混和剤及び/又は混和材の混合物(例えば、新規のCO2を吸収する材料と、固化材と骨材と水と混和剤及び/又は混和材の混合物)に添加する工程を有するのが好ましい。
ここで、未だに使用されていないCO2を吸収する材料(CO2を吸収する新規な材料)は、固化材、骨材、水、混和剤及び/又は混和材と、製造設備で混合することが出来る。或いは、未だに使用されていないCO2を吸収する材料(CO2を吸収する新規な材料)は、施工現場まで搬送された固化材、骨材、水、混和剤及び/又は混和材の混合物と、当該施工現場で混合することが出来る。
また、CO2を吸収する能力を喪失あるいはCO2吸収能力が低下したCO2吸収セメント系組成物(例えば解体された本発明のコンクリート)を加熱してCO2を吸収する能力を再生(回復)する工程において、放出されたCO2を回収するのが好ましい。
【0012】
本発明の二酸化炭素(CO2)を回収する方法は、
CO2を吸収する能力を喪失あるいはCO2吸収能力が低下したCO2吸収セメント系組成物(例えば解体された本発明のコンクリート)を加熱してCO2を吸収する能力を再生(回復)する再生工程と、
当該再生工程でCO2を吸収する能力を再生(回復)する際にCO2吸収材を含有したセメント系組成物から放出されたCO2を回収する回収工程を有することを特徴としている。
【0013】
また本発明のCO2を回収する方法は、
CO2を吸収する能力を有するCO2吸収セメント系組成物を施工(打設)した領域を加熱し、施工(打設)されたCO2吸収セメント系組成物からCO2を放出させる加熱工程と、
当該加熱工程で放出されたCO2を回収する回収工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成を具備する本発明のセメント系組成物には、CO2吸収材料として、セメント系組成物に対する容積比で0.5~20%の炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどが含有されている。発明者の実験によれば、本発明のセメント系組成物は、通常のセメント系組成物(炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどの様なCO2吸収材料を包含しないセメント系組成物)よりも、吸収するCO2量が約5~50%多い。そのため、セメント系組成物のCO2吸収能力を向上するという本発明の目的を達成することが出来る。
本発明のセメント系組成物はCO2吸収材料を含み、CO2吸収材料は常温常圧でCO2を吸収するため、CO2を吸収するための特別な操作を必要としない。
また、本発明のCO2吸収セメント系組成物によれば、CO2吸収材が大気中のCO2を吸収するため、本発明であるCO2吸収材を含んだコンクリート(CO2吸収コンクリート)が中性化する速度(中性化速度)はCO2吸収材料を混入していないコンクリートに比較して遅い。そのため例えば本発明のセメント系組成物を鉄筋コンクリートに打設すれば、打設後、鉄筋が腐食するまでの時間を長期化することが期待出来る。
そして、本発明のCO2吸収セメント系組成物であるCO2吸収コンクリートは、CO2吸収材料を混入していないコンクリートに比較して、硬化後の性状(圧縮や曲げなどの強度特性、収縮特性、耐摩耗性、すべり抵抗性など)が同等である。
【0015】
また本発明のCO2を回収する方法は、
CO2を吸収する能力を喪失あるいはCO2吸収性能が低下したCO2吸収セメント系組成物(例えば解体された本発明のコンクリート)を加熱してCO2を吸収する能力を再生(回復)する場合に放出されるCO2、或いは、CO2を吸収する能力を有するCO2吸収セメント系組成物を施工(打設)した領域を加熱して、施工(打設)されたCO2吸収セメント系組成物から放出されたCO2を回収する回収工程を有するので、放出されたCO2が大気中に拡散してCO2排出量が増加することを防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】新規材料のみでCO
2吸収セメント系組成物を製造する製造設備を示す説明図である。
【
図2】新規材料のみでCO
2吸収セメント系組成物を製造する製造設備であって、
図1とは異なる態様を示す説明図である。
【
図3】CO
2吸収能力が喪失あるいは低下したCO
2吸収セメント系組成物のCO
2吸収性能を復活(回復)し再利用して、CO
2吸収セメント系組成物を製造し、同時に、CO
2吸収性能を復活(回復)させる際に放出されたCO
2を回収する設備を示す説明図である。
【
図4】CO
2吸収能力を喪失あるいは低下したCO
2吸収セメント系組成物のCO
2吸収性能を復活(回復)し再利用して、CO
2吸収セメント系組成物を製造し、同時に、CO
2吸収性能を復活(回復)させる際に放出されたCO
2を回収する設備であって、
図3とは異なる態様を示す説明図である。
【
図5】ヒータ車を用いて、敷設されたCO
2吸収セメント系組成物からCO
2を放出させCO
2吸収性能を復活(回復)し、放出されたCO
2をCO
2回収車で回収する機構を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係るセメント系組成物の配合を表として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係るセメント系組成物(コンクリートやセメントペースト等)は二酸化炭素(CO2)を吸収する材料を含んでいる。
CO2を吸収する材料は、常温常圧でCO2を吸収し、100℃以上(例えば100~300℃)に加熱すると吸収したCO2を放出する性質を有する材料である。その様な材料としては、例えば、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトが存在する。
実施形態に係るセメント系組成物には、セメント系組成物に対する容積比で0.5~20%の炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどが含有されている。発明者の実験によれば、本発明の実施形態に係るセメント系組成物は、通常のセメント系組成物(炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどの様なCO2を吸収する材料を包含しないセメント系組成物)よりも、吸収するCO2量が約5~50%多い。そのため、セメント系組成物のCO2吸収能力を向上するという本発明の目的に合致している。
図示の実施形態で用いられるセメントは、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント)、混合セメント(JIS R 5211に規格されている高炉セメント、JIS R 5212に規格されているシリカセメント、JIS R 5213に規格されているフライアッシュセメント)、JIS R 5214に規格されているエコセメントが適用可能である。
【0018】
後述する様に、コンクリート等のセメント系組成物は600℃程度まで加熱すると爆裂、劣化、変色してしまう。また、300℃を超えて加熱するとコンクリートの強度が著しく低下する。そのため、CO2を吸収する材料としては、300℃を超えた温度でCO2を放出する材料は使用できない。
上述した炭酸カリウムやナトリウムフェライトなどのCO2吸収材であれば、CO2を放出する温度は100~300℃であり、300℃以下である。例えば、炭酸カリウムは110~140℃でCO2を放出(脱着)し始める。そのため、加熱してCO2を吸収する能力を復活(回復)するに際して、コンクリート等のセメント系組成物の強度を低下、爆裂、劣化、変色させること無く吸収したCO2を放出することが出来、かつ、CO2を吸収する性能を復活(回復)させることができる。
【0019】
発明者による実験では、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどのCO2を吸収する材料は、その含有量がセメント系組成物に対する容積比で0.5%未満であると、CO2を吸収する能力が通常のセメント系組成物(炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどのCO2を吸収する材料を包含しないセメント系組成物)と大差ない場合があった。一方で、その含有量がセメント系組成物に対する容積比で20%よりも多いと、CO2を吸収する材料を混入していないコンクリート等のセメント系組成物と比較して、硬化後の性状(圧縮や曲げなどの強度特性、収縮特性、耐摩耗性、すべり抵抗性など)が劣る。
それに対して、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどのCO2吸収材料の含有量がセメント系組成物に対する容積比で0.5~20%であれば、通常のセメント系組成物に対してCO2を吸収する能力が向上し、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトなどのCO2を吸収する材料の含有量が増加するのに従ってCO2を吸収する能力は向上し、且つ、硬化後の性状はCO2を吸収する材料を含有しないコンクリート等のセメント系組成物と同等であった。
【0020】
実施形態に係るセメント系組成物であるコンクリート(CO2吸収コンクリート)は、常温常圧でCO2を吸収するため,CO2を吸収させるための特別な操作は必要としない。発明者の実験によれば、CO2吸収材を混入していない通常のコンクリートに比較して、実施形態に係るCO2吸収コンクリートの中性化速度は遅かった(中性化速度が低下していた)。炭酸カリウムやナトリウムフェライトなどのCO2を吸収する材料が大気中のCO2を吸収することに起因すると考えられる。係る実験結果より、実施形態に係るCO2吸収コンクリートによれば、鉄筋腐食に至るまでの期間の長期化が期待できる。
【0021】
また、発明者による別の実験では、実施形態に係るセメント系組成物を用いたCO2吸収コンクリートは、CO2吸収材を混入していない通常のコンクリートに比較して、硬化後の性状(圧縮や曲げなどの強度特性、収縮特性、耐摩耗性、すべり抵抗性など)が同等であることが確認された。
【0022】
実施形態に係るセメント系組成物を製造するに際して、製造するより前に、CO2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)が常温常圧でCO2を吸収する恐れがある。それに対して、CO2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)を水溶性材料に内包し(例えばマイクロカプセル、オブラートに内包)、CO2吸収材料が水で混合するまでの間におけるCO2の吸収を防止し、供用後のCO2吸収能力を長期化することが出来る。
同様に、CO2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)をアスファルトや樹脂などで被覆することにより、実施形態に係るセメント系組成物を製造するより前に、CO2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)が、CO2を吸収することを防止できる。CO2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)をアスファルトにて被覆する場合には、アスファルトで被覆する際にCO2吸収材料を加熱するため、CO2吸収セメント系組成物の製造より前に吸収したCO2を放出してCO2吸収性能を復活(回復)することができる。また、ナトリウムフェライトの場合、水に浸漬することによって分解される性質があるので、アスファルトで被覆することによって分解を防止することができる。
【0023】
実施形態に係るセメント系組成物における強度物性等の諸性状を向上させるため、CO
2を吸収する材料(炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)の他に、繊維、混和剤及び/又は混和材などを添加することも可能である。
発明者の実験では、繊維としては、例えば、PVA(ビニロン)繊維、PP(ポリプロピレン)繊維、鋼繊維など、汎用的にコンクリートに使用されている繊維が適用可能であった。また、混和剤は減水剤、流動化剤等が適用可能であり、混和材は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等が適用可能であった。
また、発明者による別の実験では、固化材であるセメントの一部あるいは全部を高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等の別の固化材に代替することも可能であった。
本発明の実施形態に係るセメント系組成物の配合について、
図6に例示する。
図6(1)~(6)の各々において、第2行の数値は好適な配合例を示しており、第3行で示す数値は組成の範囲(上限値と下限値)を示している。
ここで、
図6における「W」は水、「C」はセメント、「S」は細骨材、「G」は粗骨材、「G(4005)」は粒径40~5mmの粗骨材、「CO2」はCO
2吸収材、「SF」は鋼繊維を示している。更に「セメントペースト」は、半たわみ性舗装のセメントミルク等として使用されるものを示している。
【0024】
ここで、水セメント比が大きい場合は強度が低下する可能性があり、小さい場合は施工性を確保できない可能性がある。
細骨材率及び水は、多すぎても少な過ぎても施工性が確保できない可能性がある。そして、適度なコンシステンシー(施工性)を確保するためには、
図6で示す範囲内に収めることが望ましい。
セメントについては、多い場合は硬化後の収縮やひび割れなどの破損リスクが高まり、また、経済性が悪化してしまう。一方、セメントが少ない場合は強度が確保できない可能性がある。
そしてCO
2吸収材については、多い場合は強度や施工性を確保できない可能性があることが分かった。一方、少ない場合は必要なCO
2吸収性能が得られない可能性がある。
この様な知見に基づいて、
図6の配合例は決定された。
図6の配合例は、「半たわみ性舗装」のセメントミルクとして使用することが出来る。
【0025】
次に、実施形態に係るセメント系組成物の製造について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、製造設備(製造プラント)において、新規材料(再生材料ではない材料)のみでCO
2吸収セメント系組成物を製造する場合を示している。
図1において、全体を符号10で示す製造プラントは、その内部に、新規なCO
2吸収材料を貯蔵するCO
2吸収材料貯蔵装置12と、新規な骨材を貯蔵する骨材貯蔵装置14と、新規なセメントを貯蔵するセメント貯蔵装置16と、水貯蔵装置18と、混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19、混合装置20(ミキサー)を有している。ここで、「新規な」という文言は、過去においてセメント系組成物の材料に用いられていない材料であることを意味している。
【0026】
CO2吸収材料貯蔵装置12には図示しないCO2吸収材料供給系統からCO2吸収材料(例えば炭酸カリウムやナトリウムフェライトなど)が供給され、経路L1を経由してCO2吸収材料をミキサー20に供給する。
骨材貯蔵装置14には図示しない骨材供給系統から骨材(例えば砂)が供給され、経路L2を経由して骨材をミキサー20に供給する。
セメント貯蔵装置16には図示しないセメント供給系統からセメントが供給され、経路L3を経由してセメントをミキサー20に供給する。
水貯蔵装置18には図示しない水供給系統から水(例えば水道水)が供給され、経路L4を経由して水をミキサー20に供給する。
混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19には図示しない混和剤及び/又は混和材供給系統から混和剤(例えば減水剤)及び/又は混和材(例えば高炉スラグ微粉末)が供給され、経路L7を経由して混和剤及び/又は混和材をミキサー20に供給する。
経路L1~L4、L7は、管路やコンベヤ等、公知の供給設備で構成することが出来る。
【0027】
ミキサー20において、CO2吸収材料、骨材、セメント、水、混和剤及び/又は混和材が混合され、混合物すなわち固化前のCO2吸収セメント系組成物が経路L5を介して、貯蔵装置23を有する車両22のホッパー24に投入される。
CO2吸収材料が水溶性カプセルに内包されている場合は、ミキサー20で混合した際に水溶性カプセルは溶解し、CO2吸収材料がセメント等と接触して混合される。
ここで、セメント系組成物が固化することを防止し、貯蔵装置23が常に回転してセメント系組成物を撹拌し続ける様に、車両22はいわゆる「アジテータ車」であることが望ましい。
車両22は、そのままセメント系組成物を打設するべき現場まで走行し、当該現場でセメント系組成物が打設、施工される(矢印A1)。
【0028】
ここで、製造プラント10においてCO
2吸収材料を添加してしまうと、その後、現場で施工されるまでの間に、CO
2吸収材料がCO
2を吸収してしまい、施工現場で吸収可能なCO
2量が減少する恐れがある。
その様な不都合を解消するため、
図2で示す製造プラント10Aは、骨材貯蔵装置14、セメント貯蔵装置16、水貯蔵装置18、混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19は設けられているが、
図1におけるCO
2吸収材料貯蔵装置12に相当する装置は設けられていない。
骨材貯蔵装置14で貯蔵されている骨材、セメント貯蔵装置16に貯蔵されているセメント、水貯蔵装置18に貯蔵されている水、混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19に貯蔵されている混和剤及び/又は混和材は、ミキサー20で混練され、車両22(アジテータ車)のホッパー24に投入される。アジテータ車22は、
図2において全体を符号30で示す施工現場まで走行する(矢印A2)。
図2の製造プラント10Aにおけるその他の構成及び作用効果は
図1の製造プラント10と同様であるので、説明は省略する。
【0029】
施工現場30にはCO
2吸収材料貯蔵装置12Aが設けられており、CO
2吸収材料貯蔵装置12Aは図示しないCO
2吸収材料供給系統から新規なCO
2吸収材料が供給され、経路L1Aを経由して新規なCO
2吸収材料をアジテータ車22のホッパー24に投入する。
施工現場30に到着したアジテータ車22の貯蔵装置23には、既に骨材、セメント、水、混和剤及び/又は混和材の混合物(セメント系組成物)が投入されており、CO
2吸収材料を投入してセメント系組成物と混合、撹拌することにより、貯蔵装置23の内容物はCO
2吸収セメント系組成物となる。撹拌されたCO
2吸収セメント系組成物は、施工現場30で直ちに打設、施工される(矢印A2)。
ここで、CO
2吸収材料は施工現場30においてアジテータ車22に投入されるため、CO
2吸収材料の投入からCO
2吸収セメント系組成物の打設、施工までの時間は、
図1で示す場合に比較して、少なくともアジテータ車22が製造プラント10Aから施工現場30まで走行する間だけ短縮され、施工や打設がされていないCO
2吸収材料がCO
2を吸収してしまう時間も短縮される。そのため、
図2で示す製造態様によれば、
図1の態様に比較して、施工現場で吸収可能なCO
2量が減少する可能性が小さくなる。
【0030】
図1、
図2で示す態様では、新規な材料(過去においてセメント系組成物の材料に用いられていない材料)のみを用いている。しかし、CO
2吸収セメント系組成物においても、過去に施工され、CO
2吸収性能を喪失あるいはCO
2吸収性能が低下した既設CO
2吸収セメント系組成物を再利用することが可能である。すなわち、実施形態に係るセメント系組成物を用いたCO
2吸収セメント系組成物の製造に際しては、過去に施工、打設されたCO
2吸収セメント系組成物を再利用することが出来る。
過去に施工、打設されたCO
2吸収セメント系組成物を再利用して、CO
2吸収セメント系組成物を製造する態様が、
図3、
図4で示されている。
【0031】
図3で示す態様は、
図1と同様に、CO
2吸収セメント系組成物を再利用したCO
2吸収セメント系組成物の製造が、製造設備(製造プラント)で行われる態様を示している。
図3の態様を実施するために、貯蔵設備40と、再生設備50と、CO
2吸収性能再生材貯蔵装置60と、製造設備10C(製造プラント)が設けられている。
図3において、符号22は運搬車両を示し、アジテータ車であるのが好ましい。
貯蔵設備40は、CO
2を吸収してCO
2吸収能力が喪失したあるいは低下したCO
2吸収セメント系組成物を、廃材として貯蔵する施設であり、CO
2吸収性能が喪失あるいは低下したセメント系組成物を貯蔵する第2の貯蔵装置42を有している。
第2の貯蔵装置42に貯蔵されているCO
2吸収能力が喪失したあるいは低下したCO
2吸収セメント系組成物は、経路L11を介して再生設備50の破砕装置52に供給される。
【0032】
再生設備50は、破砕装置52と、加熱装置54と、CO2回収装置56を備えており、破砕装置52は貯蔵設備40(第2の貯蔵装置42)から経路L11を介して搬送されたCO2吸収セメント系組成物(CO2吸収能力が喪失あるいはCO2吸収性能が低下したCO2吸収セメント系組成物)を破砕して、経路L12を介して加熱装置54に供給する。
加熱装置54は、破砕装置52で破砕されたCO2吸収能力が喪失あるいはCO2吸収性能が低下したCO2吸収セメント系組成物を加熱する。加熱装置54で加熱することにより、CO2吸収材料が吸着したCO2を放出させて、CO2吸収材料或いはCO2吸収セメント系組成物のCO2吸収性能を復活(回復)する(再生)。そして、CO2吸収性能を復活(回復)したCO2吸収性能再生材(破砕され加熱されたCO2吸収セメント系組成物)を、経路L13を介してCO2吸収性能再生材貯蔵装置60に供給する。
加熱装置54で加熱する際に放出されたCO2は、CO2回収装置56で回収される。
【0033】
ここで、加熱装置54でCO2吸収性能を復活(回復)したCO2吸収性能再生材は、100~300℃になるように加熱されている。実施形態で用いられるCO2吸収材料は、上述した様に、100~300℃に加熱すれば吸収したCO2を放出する(再生する)ので、セメント系組成物の強度が著しく低下する300℃を超えて加熱する必要がない。そのため、再生したCO2吸収性能再生材は強度等が低下しない。
そして、再生に必要な温度が100~300℃であるため、リチウムシリケートをCO2吸収材として用いたセメント系組成物と比較すると加熱に必要なエネルギー或いは燃料が大量に消費されることはない。
【0034】
上述した様に、加熱装置54でCO2吸収セメント系組成物を100~300℃で加熱することにより、CO2吸収能力が喪失或いはCO2吸収能力が低下したCO2吸収セメント系組成物からCO2が放出され、放出されたCO2は経路L14を介してCO2回収装置56で回収される。CO2回収装置56は公知の何れかの技術に係る装置が用いられる。
CO2回収装置56は、回収したCO2を大気中に放散することなく、図示しない経路を介して公知のCO2利用装置に供給する。これにより、CO2吸収セメント系組成物のCO2吸収性能の復活(回復)の際に発生したCO2を大気に放出することなく、有効利用することが出来る。
【0035】
製造プラント10Cでは、
図1で示す製造プラント10と同様に、新規のCO
2吸収材料を貯蔵する貯蔵装置12と、新規の骨材を貯蔵する貯蔵装置14と、新規のセメントを貯蔵する装置16と、水貯蔵装置18、混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19を備えている。そして、混合装置であるミキサー20Cを備えている。
図1の製造プラント10と同様に、
図3の製造プラント10Cにおいても、新規のCO
2吸収材料と、新規の骨材と、新規のセメントと、水と、混和剤及び/又は混和材はミキサー20Cに投入され、混練される。それに加えて
図3の製造プラント10Cでは、経路L15を介して、CO
2吸収性能再生材貯蔵装置60に貯蔵されているCO
2吸収性能を復活(回復)したCO
2吸収性能再生材(破砕され加熱されたCO
2吸収セメント系組成物)がミキサー20Cに投入される。そのため、新規のCO
2吸収材料は、再生されたCO
2吸収セメント系組成物におけるCO
2吸収材料含有量が不足している場合に、当該不足量(必要量に対する不足量)だけをミキサー20Cに供給すれば良い。
新規のCO
2吸収材料と、新規の骨材と、新規のセメントと、CO
2吸収性能再生材と、水と、混和剤及び/又は混和材がミキサー20Cに投入され、混練されることにより、CO
2吸収性能再生材を用いたCO
2吸収セメント系組成物(再生材利用CO
2吸収セメント系組成物)が製造される。
【0036】
ミキサー20Cで混練されたCO
2吸収性能再生材を用いたCO
2吸収セメント系組成物は、経路L5Cを介して運搬車両22(好ましくはアジテータ車)のホッパー24に投入され、施工現場に運搬されて、施工、打設される(矢印A3)。
図3のプラント10Cにおけるその他の構成及び作用効果は、
図1の製造プラント10と同様である。
【0037】
図3の態様では再生されたCO
2吸収性能再生材を用いるので、新規セメント、新規骨材、新規CO
2吸収材料の消費量を節減することが出来る。そして、再生されたCO
2吸収性能再生材を包含する再生材利用CO
2吸収セメント系組成物は、例えばCO
2を吸収する路盤或いはCO
2吸収セメント系組成物として再利用することができる。
発明者の別途行った実験によれば、CO
2吸収材料については、複数回再生して再利用することが出来る。
さらに、使用済のCO
2吸収セメント系組成物(CO
2吸収能力が喪失あるいはCO
2吸収能力が低下したCO
2吸収セメント系組成物)に吸収されたCO
2を回収して、回収されたCO
2を公知技術により再利用することができる。その結果、CO
2の大気への排出量を減少することが出来る。
【0038】
図2を参照して説明した様に、再生されたCO
2吸収性能再生材を用いる
図3においても、製造プラント10Cにおいて新規のCO
2吸収材料を添加しているので、その後、現場で施工されるまでの間に、新規のCO
2吸収材料がCO
2を吸収して、新規なCO
2吸収材料が施工現場で吸収出来るCO
2量が減少する恐れがある。
その様な不都合を解消するため、
図4で示す様に、骨材、セメント、水、混和剤及び/又は混和材、CO
2吸収性能再生材からなる再生されたCO
2吸収セメント系組成物に対して、新規なCO
2吸収材料を施工現場で添加する様に構成することが出来る。
【0039】
図4において、貯蔵設備40と、再生設備50と、CO
2吸収性能再生材貯蔵装置60については、
図3を参照して説明したのと同様であるので詳細な説明は省略する。
図4における製造設備10D(製造プラント)は、
図2で示す製造プラント10Aと同様であり、骨材貯蔵装置14、セメント貯蔵装置16、水貯蔵装置18は設けられているが、
図3における新規なCO
2吸収材料の貯蔵装置12に相当する装置は設けられていない。
図4において、骨材貯蔵装置14で貯蔵されている新規な骨材、セメント貯蔵装置16に貯蔵されている新規なセメント、水貯蔵装置18に貯蔵されている水、混和剤及び/又は混和材貯蔵装置19に貯蔵されている混和剤及び/又は混和材は、ミキサー20Dで混練される。それに加えて、
図4の製造プラント10Dでは、経路L15Dを介して、CO
2吸収性能再生材貯蔵装置60に貯蔵されているCO
2吸収性能を復活(回復)したCO
2吸収性能再生材(破砕加熱されたCO
2吸収セメント系組成物)がミキサー20Dに投入される。
再生されたCO
2吸収性能再生材と、新規の骨材と、新規のセメントと、水と混和剤及び/又は混和材がミキサー20Dに投入され、混練されることにより、CO
2吸収性能再生材を用いたCO
2吸収セメント系組成物(再生材利用CO
2吸収セメント系組成物)が製造される。
【0040】
ミキサー20Dで混練された再生材を用いたCO
2吸収セメント系組成物は、経路L5Dを介して運搬車両22(アジテータ車)のホッパー24に投入され、施工現場30Dに運搬される(矢印A5)。
図4の製造プラント10Dにおけるその他の構成及び作用効果は
図1の製造プラント10或いは
図2の製造プラント10Aと同様であるので、説明は省略する。
【0041】
施工現場30Dには新規なCO2吸収材料を貯蔵したCO2吸収材料貯蔵装置12Dが設けられており、CO2吸収材料貯蔵装置12Dは図示しないCO2吸収材料供給系統から新規なCO2吸収材料が供給され、経路L1Dを経由して新規なCO2吸収材料をアジテータ車22のホッパー24に投入する。
施工現場30Dに到着したアジテータ車22の貯蔵装置23には、既に再生されたCO2吸収セメント系組成物が投入されている。経路L1Dを経由して投入される新規なCO2吸収材料は、再生されたCO2吸収セメント系組成物におけるCO2吸収材料含有量が不足している場合に、当該不足量(必要量に対する不足量)だけをアジテータ車22に供給される。
【0042】
新規なCO
2吸収材料を投入して混合、撹拌されたCO
2吸収セメント系組成物は、施工現場30Dで直ちに打設、施工される(矢印A5)。ここで、新規なCO
2吸収材料は施工現場30Dにおいてアジテータ車22に投入されるため、新規なCO
2吸収材料の投入から再生材利用CO
2吸収セメント系組成物の打設、施工までの時間は、
図3で示す場合に比較して、少なくともアジテータ車22が製造プラント10Dから施工現場30D(
図3では符号及び引き出し線のみ図示する)まで走行する間だけ短縮される。そのため、施工や打設がされていないCO
2吸収材料がCO
2を吸収してしまう時間も短縮され、
図4で示す製造態様によれば
図3の態様に比較して、施工現場で吸収可能なCO
2量が減少する可能性が小さくなる。
図4において、製造プラント10Dで車両22に投入されるのはCO
2吸収性能再生材を用いたCO
2吸収セメント系組成物であるため、その固化を防止するべく、運搬車両22としてはアジテータ車が用いられるのが好ましい。
【0043】
図3、
図4ではCO
2吸収セメント系組成物の再生設備でCO
2吸収セメント系組成物(CO
2吸収能力が喪失あるいはCO
2吸収能力が低下したCO
2吸収セメント系組成物)から放出されたCO
2を回収している。
しかし、CO
2吸収能力が無くなったCO
2吸収セメント系組成物からCO
2を放出して回収する機構は、再生設備のみに設けられている訳ではない。
例えば、
図5で示す様に、敷設されたCO
2吸収セメント系組成物からCO
2を放出して回収することが可能である。
【0044】
図5において、路面等に敷設されたCO
2吸収セメント系組成物はCO
2吸収能力が喪失あるいはCO
2吸収能力が低下した状態であり、全体を符号70で示す路面CO
2吸収セメント系組成物再生車両がCO
2吸収セメント系組成物RC上を走行している。
図5において、符号Fは路面CO
2吸収セメント系組成物再生車両70の進行方向を示している。
ここで、CO
2吸収セメント系組成物RCは、本発明の実施形態に係るCO
2吸収セメント系組成物である。
路面CO
2吸収セメント系組成物再生車両70は、熱風循環式ヒータ車72とCO
2回収車74を有している。
【0045】
熱風循環式ヒータ車72は敷設されたCO2吸収セメント系組成物RCの表面温度(路面温度)が100~300℃となる様に、当該表面(路面)に熱風(矢印70A)を吹き付けて加熱する機能を有している。熱風を吹き付けて路面温度が100~300℃となる様に加熱する構造については、従来公知の構造が用いられる。
上述した様に、本発明の実施形態に係るCO2吸収コンクリートは100~300℃に加熱されると吸収したCO2を放出する。そのため、熱風70Aを路面に吹き付けることにより、CO2が放出される。
【0046】
熱風循環式ヒータ車72に続き、熱風70Aを吹き付けられた路面上をCO2回収車74が走行する。
明確には図示されていないが、CO2回収車74は、路面から放出されたCO2を吸引して回収し、回収したCO2を貯蔵する機構が内蔵されている。
熱風循環式ヒータ車72により熱風70Aを吹き付けられてCO2吸収セメント系組成物RCの路面から放出されたCO2は、CO2回収車74内の図示しない機構により矢印70Bで示す様に吸引されて、貯蔵される。
さらに熱風循環式ヒータ車72の図示しないヒータから排出されるガス中のCO2も、CO2回収車74内により回収することが出来る。
【0047】
熱風循環式ヒータ車72から熱風70Aを吹き付けられてCO2を放出したCO2吸収セメント系組成物RCは、CO2吸収能力を復活(回復)する(再生する)。
そして、CO2吸収セメント系組成物RCから放出されたCO2は、CO2回収車74内の図示しない機構により貯蔵されるので、大気中に排出されてしまうことはない。CO2回収車74内の図示しない機構により貯蔵されたCO2は、図示しない公知技術により再利用することができる。
【0048】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0049】
10、10A、10C、10D・・・製造プラント
12、12A・・・新規なCO2吸収材料貯蔵装置12
14・・・骨材貯蔵装置
16・・・セメント貯蔵装置
18・・・水貯蔵装置
19・・・混和剤及び/又は混和材貯蔵装置
20、20C、20D・・・混合装置(ミキサー)
22・・・車両
23・・・貯蔵装置
24・・・ホッパー
30、30D・・・施工現場
40・・・貯蔵設備
42・・・第2の貯蔵装置
50・・・再生設備50
52・・・破砕装置
54・・・加熱装置
56・・・CO2回収装置
60・・・CO2吸収性能再生材貯蔵装置
RC・・・路面等に敷設されたCO2吸収セメント系組成物
70・・・路面セメント系組成物再生車両
70A・・・熱風
72・・・熱風循環式ヒータ車
74・・・CO2回収車