(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】フィルム、多層電子装備及びフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241024BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241024BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241024BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B7/023
B32B27/34
B32B7/027
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152873
(22)【出願日】2022-09-26
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182855
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2020-0021263(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0047285(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0039893(KR,A)
【文献】国際公開第2016/084662(WO,A1)
【文献】特表2021-521305(JP,A)
【文献】特表2019-528368(JP,A)
【文献】特表2020-505488(JP,A)
【文献】特開2018-172562(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172331(WO,A1)
【文献】特開2020-139039(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016561(WO,A1)
【文献】特表2020-506081(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159060(WO,A1)
【文献】特開2019-65180(JP,A)
【文献】特表2012-503701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン化合物残基及び芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含有するポリイミド層を含み、
前記ポリイミド層は、50μmの厚さを基準とするループスティフネス値が3~4.5m/Nであり、
前記ポリイミド層は、黄色度が5.3以下であ
り、
前記ポリイミド層は、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基及びピロメリット酸ジアンヒドリド残基を含み、
前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基の含量が15~50モル%である、フィルム。
【請求項2】
前記ポリイミド層は、下記式1による耐熱安定性指数(HS index)が5~15℃
2/ppm・MPaである、請求項1に記載のフィルム。
[式1]
式1において、
前記HS indexは、耐熱安定性指数(℃
2/ppm・MPa)であり、
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)であり、
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値であり、
前記RSは、前記ポリイミド層の残留応力(MPa)の値である。
【請求項3】
前記ポリイミド層は、付着力が200gf/inch以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミド層は、下記式2で表される総合指数が2℃
2/ppm以上である、請求項1に記載のフィルム。
[式2]
式2において、
前記T Indexは、総合指数であり、
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)であり、
前記YIは、前記ポリイミド層の10μmの厚さでの黄色度の値であり、
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値である。
【請求項5】
前記ポリイミド層は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基全体を100モルと見たとき、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基を5~45モルで含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基が60モル%未満である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
基材層と、
前記基材層上に配置される発光機能層とを含み、
前記基材層はフィルムを含み、
前記フィルムは、請求項1に記載のフィルムである、多層電子装備。
【請求項8】
芳香族ジアミン化合物と芳香族ジアンヒドリド化合物を含む原料組成物を撹拌して、25℃で測定した粘度が1,000~8,000cpsである重合体溶液を製造する重合体溶液製造ステップと、
前記重合体溶液をシート状に塗布した後、熱風乾燥してシートを製造するシート製造ステップと、
前記シートを360~480℃で熱処理してポリイミド層を製造するフィルム製造ステップとを含み、
前記原料組成物または前記重合体溶液はレベリング安定剤をさらに含み、
フィルムは前記ポリイミド層を含み、
前記ポリイミド層は、黄色度が5.3以下であり、
前記ポリイミド層は、前記芳香族ジアミン化合物残基及び前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含有し、 前記ポリイミド層は、50μmの厚さを基準とするループスティフネス値が3~4.5m/Nである、フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、ポリイミド層を有するので耐熱性、光学特性、付着力などが全て優れ、フォルダブルディスプレイの支持層などとして活用度が優れたフィルム、それを含む多層電子装備及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、優れた耐熱性及び機械的物性を有するので、コーティング材料、複合材料などの広範囲な用途を有している。このようなポリイミドフィルムは、一般に、芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドを溶液重合した組成物をフィルム状に塗布及び高温乾燥し、脱水を通じて閉環(ring closure)させることによって製造されている。
【0003】
ポリイミドフィルムは、高い芳香族環の密度により黄色を帯びるので、可視光線領域での透過度が低く、光学材料として使用しにくいという問題があった。しかし、最近は、無色透明なポリイミドフィルムが製造され、光学材料などとして適用するために様々な試みがなされている。
【0004】
関連する先行技術としては、大韓民国公開特許第10-2007-0017001号、大韓民国登録特許第10-1992525号などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具現例の目的は、フォルダブル又はローラブルディスプレイに適用するのに優れた剛性を示し、耐熱特性と光学特性が同時に向上したフィルム、及びこれを適用した多層電子装備などを提供することである。具現例の他の目的は、耐熱特性、光学特性、付着力特性、残留応力特性などが全て優れたポリイミド層を含むフィルムなどを提供することである。具現例の更に他の目的は、前記フィルムなどの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、一具現例に係るフィルムは、芳香族ジアミン化合物残基及び芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含有するポリイミド層を含み、前記ポリイミド層は、50μmの厚さを基準とするループスティフネス値が3~4.5m/Nである。
【0007】
前記ポリイミド層は、下記式1による耐熱安定性指数(HS index)が5~15℃2/ppm・MPaであってもよい。
【0008】
【0009】
式1において、
前記HS indexは、耐熱安定性指数(℃2/ppm・MPa)である。
【0010】
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)である。
【0011】
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値である。
【0012】
前記RSは、前記ポリイミド層の残留応力(MPa)の値である。
【0013】
前記ポリイミド層は、付着力が200gf/inch以上であってもよい。
【0014】
前記ポリイミド層は、黄色度が5.3以下であってもよい。
【0015】
前記ポリイミド層は、下記式2で表される総合指数が2℃2/ppm以上であってもよい。
【0016】
【0017】
式2において、
前記T Indexは、総合指数である。
【0018】
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)である。
【0019】
前記YIは、前記ポリイミド層の10μmの厚さでの黄色度の値である。
【0020】
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値である。
【0021】
前記ポリイミド層は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基全体を100モルと見たとき、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基を5~45モルで含むことができる。
【0022】
前記ポリイミド層は、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基及びピロメリット酸ジアンヒドリド残基を含むことができる。
【0023】
前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基の含量が15~50モル%であってもよい。
【0024】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基が60モル%未満であってもよい。
【0025】
上記目的を達成するために、他の具現例に係る多層電子装備は、基材層と;前記基材層上に配置される発光機能層と;を含み、前記基材層はフィルムを含み、前記フィルムは、上述したフィルムである。
【0026】
上記目的を達成するために、更に他の具現例に係るフィルムの製造方法は、芳香族ジアミン化合物と芳香族ジアンヒドリド化合物を含む原料組成物を撹拌して、25℃で測定した粘度が1,000~8,000cpsである重合体溶液を製造する重合体溶液製造ステップと;前記重合体溶液をシート状に塗布した後、熱風乾燥してシートを製造するシート製造ステップと;前記シートを360~480℃で熱処理してポリイミド層を製造するフィルム製造ステップと;を含む。
【0027】
前記フィルムは前記ポリイミド層を含み、前記ポリイミド層は、前記芳香族ジアミン化合物残基及び前記芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含有し、前記ポリイミド層は、50μmの厚さを基準とするループスティフネス値が3~4.5m/Nである。
【0028】
前記原料組成物または前記重合体溶液はレベリング安定剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
具現例のフィルム、それを含む多層電子装備及びフィルムの製造方法は、折り曲げ復元力に優れるのでフォルダブル又はローラブルディスプレイなどに活用するのにさらに有利なフィルムなどを提供する。また、耐熱性、光学特性、付着力などが全て優れ、フォルダブルディスプレイの支持層などとして活用度が優れたフィルムなどを提供する。具現例は、耐熱特性と光学特性が同時に向上したポリイミド層を含む耐熱特性のフィルムなどを提供することで、より一層薄くかつ軽くなると同時に、光学的特性などが向上した多層電子装備を提供することができる。併せて、信頼性のある製造方法を提供することで、作業性が向上したフィルムの製造方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】一具現例に係るフィルムの層構造を断面で説明する概念図である。
【
図2】一具現例に係るフィルムの層構造を断面で説明する概念図である。
【
図3】一具現例に係る多層電子装備の層構造を断面で説明する概念図である。
【
図4】一具現例に係る多層電子装備の層構造を断面で説明する概念図である。
【
図5】付着力テストの過程を断面で説明する概念図である。
【
図6】ループスティフネステストの過程を断面で説明する概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0032】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する
【0033】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0034】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の構成が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0035】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0036】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0037】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0038】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0039】
本明細書において、図面に表示された構成の相対的な大きさ、厚さなどは、容易な説明を目的として誇張して表示されてもよい。
【0040】
本明細書において、黄色度(Y.I.)は、分光光度計(Hunter Associates Laboratory社のUltraScan PRO)のCIE表色系を用い、ASTM E-313規格で計算された値を基準とする。
【0041】
本明細書において、特別な温度の言及なしに提示する粘度は、室温で測定した粘度を意味し、例示的に、25℃で測定された粘度をいう。
【0042】
以下、具現例をより詳細に説明する。
【0043】
ポリイミドフィルムは、耐熱性に優れたフィルムの場合、褐色に近い有色フィルムの特性を有し、透明なフィルムの場合には、耐熱性が劣るという特性を有する。すなわち、耐熱性と透明性は、互いにトレードオフ(trade off)の関係にある。
【0044】
ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムが有する絶縁特性をベースとして電子製品の絶縁層として活用されている。また、プラスチックフィルム自体が有するフォルダブル又はフレキシブルな特性、及びポリイミドフィルムの絶縁特性をベースとして、ポリイミドフィルムをフレキシブルディスプレイ又はフォルダブルディスプレイに適用しようとする試みが続けられている。
【0045】
ディスプレイの支持層として適用されるフィルムは、ディスプレイの製造過程で繰り返して高熱にさらされるなど、苛酷な環境に耐えられなければならない。また、支持層上に積層する他の層の安定した物性を確保するために、残留応力が制御され、熱膨張特性が制御されるなどの特徴も有しなければならない。
【0046】
また、ポリイミド層をフォルダブル又はローラブルディスプレイに適用するために、柔軟に折れ曲がる能力だけでなく、適切な弾性で回復する能力も必要である。発明者らは、ディスプレイの支持層などとして適用時に求められる相反する様々な特徴を適切なレベル以上に満たすポリイミド層を有するフィルムを製造し、その特徴を確認して、具現例を提示する。
【0047】
図1及び
図2は、それぞれ、一具現例に係るフィルムの層構造を断面で説明する概念図であり、
図3及び
図4は、それぞれ、一具現例に係る多層電子装備の層構造を断面で説明する概念図であり、
図5は、付着力テストの過程を断面で説明する概念図であり、
図6は、ループスティフネステストの過程を断面で説明する概念図である。
【0048】
図1乃至
図6を参照して、以下で多層電子装備800、及び基材層100として適用されるフィルムなどを具体的に説明する。
【0049】
フィルム
一具現例に係るフィルムはポリイミド層50を含む(
図1参照)。
【0050】
前記ポリイミド層50は、芳香族ジアミン化合物残基、及び芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含有する。
【0051】
ポリイミド層50は、優れたループスティフネス特性を有することができる。
【0052】
厚さ50μmのポリイミド層50は、3~4.5m/Nのループスティフネス値を有してもよい。厚さ50μmのポリイミド層50は、3.1~4.2m/Nのループスティフネス値を有してもよい。厚さ50μmのポリイミド層50は、3.2~4.1m/Nのループスティフネス値を有してもよい。
【0053】
この場合、ポリイミド層の曲げ回復力が優れ、ベンダブル又はローラブル多層電子装置に適用時に、折り曲げに対する、より一層優れた復元力を有することができる。
【0054】
ループスティフネスの測定は、ループスティフネステスター(LOOP STIFFNESS TESTER、TOYOSEIKI社)装置を活用して測定可能である。厚さ50μmのポリイミドフィルムサンプルを、固定部に幅15mm、長さ120mmで両端部を固定させ、加圧部と固定部との間の最終離隔距離Lが20mmになるまで、加圧部を用いて3.3mm/sの加圧速度でサンプルを加圧した後、センサによりサンプルのループスティフネスを測定することができる。具現例の場合、フィルムのMD方向を長手方向として測定したものを基準とする(
図6参照)。
【0055】
ポリイミド層50は、下記式1による耐熱安定性指数(HS index)が5~15℃2/ppm・MPaであってもよい。
【0056】
【0057】
式1において、
前記HS indexは、耐熱安定性指数(℃2/ppm・MPa)である。
【0058】
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)である。
【0059】
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値である。
【0060】
前記RSは、前記ポリイミド層の残留応力(MPa)の値である。
【0061】
前記ポリイミド層の耐熱安定性指数は5℃2/ppm・MPa以上であってもよい。前記耐熱安定性指数は6℃2/ppm・MPa以上であってもよい。前記耐熱安定性指数は7℃2/ppm・MPa以上であってもよい。前記耐熱安定性指数は7.3℃2/ppm・MPa以上であってもよい。前記ポリイミド層の耐熱安定性指数は15℃2/ppm・MPa以下であってもよい。前記耐熱安定性指数は13℃2/ppm・MPa以下であってもよい。
【0062】
前記ポリイミド層が前記のような耐熱安定性指数を有する場合、相対的に高いガラス転移温度を有しながらも、低い熱膨張係数、そして、低い残留応力を有するので、多層電子装置の支持層として活用するのに優れる。
【0063】
ポリイミド層50は、付着力が200gf/inch以上であってもよい。前記付着力が220gf/inch以上であってもよい。前記付着力が230gf/inch以上であってもよい。ポリイミド層50は、付着力が350gf/inch以下であってもよい。前記付着力が330gf/inch以下であってもよい。前記付着力が300gf/inch以下であってもよい。前記付着力が280gf/inch以下であってもよい。ポリイミド層が前記のような範囲の付着力を有する場合、ポリイミド層は支持層として、発光機能層などの構成と、過剰でもなく不十分でもない適切なレベルの付着力を有するので、多層電子装置の基板用として優れた特性を有することができる。
【0064】
付着力(Adhesion Force)は、ポリイミド層の付着力をテストする方法で測定できる。例示的に、付着力は、無定形シリコン(Amorphous Si)ベースのガラス基板(Glass Substrate)にポリイミド層を形成(硬化)した後、UTM万能試験機設備を用いて行う剥離試験を通じて測定することができる。具体的には、テープなどを用いてポリイミド層の一部を持ち上げて180°剥離試験(Peeling Test)を行うところ、UTM万能試験機設備を用いて付着力を測定することができる。より具体的な条件は、後述する実施例で提示した条件が適用され得る(
図5参照)。
【0065】
ポリイミド層50は、下記式2で表される総合指数が2℃2/ppm以上であってもよい。
【0066】
【0067】
式2において、
前記T Indexは、総合指数である。
【0068】
前記Tgは、ガラス転移温度(℃)である。
【0069】
前記YIは、前記ポリイミド層の10μmの厚さでの黄色度の値である。
【0070】
前記Hは、前記ポリイミド層の熱膨張係数(ppm/℃)の値である。
【0071】
前記ポリイミド層50の総合指数は2℃2/ppm以上であってもよい。前記総合指数は2.2℃2/ppm以上であってもよい。前記ポリイミド層50の総合指数は15℃2/ppm以下であってもよい。前記総合指数は10℃2/ppm以下であってもよい。前記総合指数は7℃2/ppm以下であってもよい。
【0072】
ポリイミド層50は、熱膨張係数(ppm/℃)が35以下であってもよい。前記熱膨張係数(ppm/℃)は30以下であってもよい。ポリイミド層50は、熱膨張係数(ppm/℃)が27以下であってもよい。前記熱膨張係数(ppm/℃)は25以下であってもよい。また、前記ポリイミド層50は、熱膨張係数(ppm/℃)が10以上であってもよい。前記熱膨張係数(ppm/℃)は15以上であってもよい。このような熱膨張係数の値を有する場合、高熱の変化による体積の変化が少ないので、多層電子装置の基板への適用に優れる。
【0073】
残留応力(Residual Stress)の測定は、ポリイミドフィルムの残留応力の測定方法が適用され得る。具体的には、フロンティアセミコンダクター(Frontier Semiconductor)社の500TC(FSM128)設備を用いて残留応力を測定可能である。具体的には、予め反り量を測定しておいた6インチのシリコンウエハ上にポリイミド層を形成し、反り量の差を比較して残留応力を測定する。より具体的な方法は、後述する実施例で説明した方法を基準とする。
【0074】
ポリイミド層50の残留応力は25MPa以下であってもよい。前記残留応力は22MPa以下であってもよい。前記残留応力は20MPa以下であってもよい。ポリイミド層50の残留応力は18MPa以下であってもよい。前記残留応力は16MPa以下であってもよい。ポリイミド層50の残留応力は10MPa以上であってもよい。このような残留応力の特性を有する場合、前記ポリイミド層の多層電子装置の支持層としての活用度が高い。
【0075】
多層構造の素子を積層する際に、ポリイミド層の表面と隣接する界面(interface)で物理的な不調和による応力が発生し得る。これは、積層体に亀裂、転置または層間剥離のような問題を引き起こすことがある。これは、多層電子装備の製造過程だけでなく、製品自体の信頼性に深刻な問題を引き起こすことがある。したがって、ポリイミド層が支持層であるポリイミドフィルムとして適用されるためには、350~400℃の温度に繰り返してさらされる工程でも安定した特性を有しなければならず、これを評価できるいくつかの基準の一つとして、残留応力が適用可能である。この残留応力は、ポリイミドフィルム(ポリイミド層)の製造過程で適用される高熱、支持基板との熱膨張係数の差、高分子鎖自体の強直性など、様々な要因に起因するものと考えられる。具現例は、後述する方法を適用して、他の特性を一定レベル以上に維持しながら、残留応力の発生を低減させた。
【0076】
前記ポリイミド層50は、厚さが2~100μmであってもよい。前記厚さは2~55μmであってもよい。前記厚さは2μm超40μm未満であってもよい。
【0077】
前記ポリイミド層50は、全体的に一定の厚さを有する。具体的に、前記ポリイミド層50は、前記ポリイミド層50を実質的に均等な面積を有する40個の領域に区分したとき、各領域で1点ずつ40個の地点で測定した厚さが、前記40個の地点で測定した厚さの平均値に対して-5~+5%の範囲内であって、厚さの均一性に優れる。
【0078】
ポリイミド層50は、優れた耐熱特性を有する。
【0079】
前記ポリイミド層50は、ガラス転移温度が365℃以上であってもよい。前記ガラス転移温度が370℃以上であってもよい。前記ガラス転移温度が375℃以上であってもよい。前記ポリイミド層50は、ガラス転移温度が390℃以下であってもよい。前記ガラス転移温度は、DMA測定装置を活用して測定した結果を基準とする。例示的に、DMA測定装置は、テキサスインスツルメンツ社のDMA Q800モデルを用い、測定モードはテンションモード(Tension Mode)を適用することができる。具体的に、昇温速度は3℃/minとして25~450℃まで測定し、周波数は1Hz、アンプリチュード(Amplitude)は20μmとして適用して、Tg値を得ることができる。
【0080】
ポリイミド層50は、優れた光学特性を有する。
【0081】
黄色度(Yellow Index)は、分光光度計(Hunter Associates Laboratory社のUltraScan PRO)のCIE表色系を用いて、ASTM E-313規格で測定したものを基準とする。
【0082】
ポリイミド層50は、黄色度が5.3以下であってもよい。前記黄色度が4.3以下であってもよい。前記黄色度が4.1以下であってもよい。ポリイミド層50は、黄色度が1超であってもよい。ポリイミド層の黄色度の測定は、10μmの厚さのフィルムで測定した値を基準とする。
【0083】
面内位相差値は、大塚電子(OTSUKA Electronics)社のRETS-100モデルを用いて、常温でRotate Analyzer MethodでAlpha/Thetaモードを選択して測定し、550nmでの面内位相差Re値を取ったものを基準とする。ポリイミド層の面内位相差の測定は、10μmの厚さのフィルムで測定した値を基準とする。
【0084】
ポリイミド層50は、面内位相差値(Re)が3.0以下であってもよい。前記面内位相差値(Re)が2.0以下であってもよい。前記面内位相差値(Re)が1.5以下であってもよい。前記面内位相差値(Re)が1.0以下であってもよい。前記ポリイミド層50は、面内位相差値(Re)が0.1以上であってもよい。上述した範囲に面内位相差の数値を有するポリイミド層は、ディスプレイに適用するのに優れた光学特性を有する。
【0085】
ポリイミド層50は、光透過度が85%以上であってもよい。前記光透過度が88%以上であってもよい。前記光透過度が99%以下であってもよい。前記光透過度は、10μmの厚さのフィルムで測定した可視光線透過度を基準とする。
【0086】
前記ポリイミド層50は、ヘイズが1%以下であってもよい。前記ヘイズが0.6%以下であってもよい。前記ヘイズが0.52%以下であってもよい。前記ヘイズが0.45%以下であってもよい。前記ポリイミド層50は、ヘイズが0.001%以上であってもよい。このようなヘイズ特性を有するポリイミド層は、目視でクリアに見える光学的特徴を有するので、ディスプレイなどの基材フィルムとして適用するのに優れる。前記ヘイズは、10μmの厚さのフィルムで測定した値を基準とする。
【0087】
前記ポリイミド層50は、芳香族ジアミン化合物及び芳香族ジアンヒドリド化合物を重合して形成された重合体を含む。すなわち、前記ポリイミド層は、芳香族ジアミン化合物残基及び芳香族ジアンヒドリド化合物残基を含む。
【0088】
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル(BTFDPE)、2,2-ビス(4-(4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFFAPP)、または3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド(DATF)を含むことができる。
【0089】
具体的に、前記芳香族ジアミン化合物は、下記化学式1-1で表される化合物であってもよい。
【0090】
【0091】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)、4,4'-オキシジフタル酸アンヒドリド(ODPA)、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された2種以上、好ましくは3種が適用されてもよい。
【0092】
具体的に、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2-1~2-3で表される化合物を共に適用することができる。
【0093】
【0094】
前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、1:0.95~1.05のモル比で反応して重合体を形成することができる。
【0095】
ポリイミド層50は、ジアンヒドリド残基全体を100モルと見たとき、化学式2-3のビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基を5~45モルの比率で含むことができる。ポリイミド層50は、ジアンヒドリド残基全体を100モルと見たとき、化学式2-3のビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基を8~30モルの比率で含むことができる。このような範囲で化学式2-3の化合物残基を有するポリイミド層は、耐熱特性、作業性などをより向上させることができる。
【0096】
ポリイミド層50は、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基及びピロメリット酸ジアンヒドリド残基を含み、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基の含量が15~50モル%であってもよい。ポリイミド層50は、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基及びピロメリット酸ジアンヒドリド残基を含み、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド残基の含量が18~45モル%であってもよい。このような範囲で前記残基を含む場合、製造過程で作業性が良好になるように粘度を制御することができ、しかも、互いにトレードオフ(trade off)の特性である耐熱特性と光学特性を同時に向上させることができる。
【0097】
ポリイミド層50は、前記芳香族ジアンヒドリド残基全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基が60モル%未満であってもよい。ポリイミド層50は、前記芳香族ジアンヒドリド残基全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基が55モル%以下であってもよい。このような含量の範囲で前記ピロメリット酸ジアンヒドリド残基を含む場合、粘度の制御などが相対的に有利であるので、適切な作業性を有すると共に、耐熱特性がより一層向上したポリイミド層を得ることができる。
【0098】
前記ポリイミド層は、芳香族ジアミン化合物残基100モルを基準として、前記化学式2-1の残基25~55モル比、前記化学式2-2の残基35~55モル比、及び前記化学式2-3の残基5~25モル比を含むことができる。
【0099】
このようなモル比で前記残基を含有するポリイミド層は、優れた耐熱性及び優れた光学的特性を有することができる。
【0100】
前記ポリイミド層50は、ヒドロキシ基を有する化合物を含むことができる。これは、後述する製造過程においてレベリング安定剤として適用される化合物などが残留して検出され得る。このようなレベリング安定剤などは、ポリイミド層の製造過程においてさらに均一な膜形成が容易になるように助け、これは、フィルムの耐熱特性の改善、残留応力特性の改善、付着力の向上などに寄与することができる。
【0101】
前記レベリング安定剤は、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよく、メタノールまたはイソプロパノールであってもよい。前記レベリング安定剤として前記の化合物を適用する場合、光学特性や耐熱特性が維持されながらも、より一層安定した膜形成、残留応力の改善などの効果を得ることができる。
【0102】
前記フィルムは、前記ポリイミド層の一面上に粘着層60をさらに含むことができる(
図2参照)。
【0103】
粘着層60は、光透過度及び/又は透明度に優れた光学用粘着層が適用され得る。例示的に、OCA(Optically Clear Adhesive)、PSA(Pressure Sensitive Adhesive)またはこれらの組み合わせを含む積層体が適用されてもよい。
【0104】
前記フィルムは、前記ポリイミド層の他面上に離型フィルムまたは補強フィルムをさらに含むことができる。前記離型フィルムまたは補強フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0105】
前記フィルムは、上述したポリイミド層を含むことで、耐熱特性及び光学特性を同時に満たすと共に、支持層としての役割も果たすので、基材層として活用度が優れる。また、前記フィルムを基材層として活用する場合、多層電子装備の前面に該当する発光機能層の上面だけでなく、その背面に該当する基材層も透明に製造することができる。これを通じて、フォルダブル、フレキシブル、ベンダブル装置にその活用度が優れ、耐熱性、厚さ、絶縁特性、支持特性などの全てにおいて信頼性のあるフィルムを提供することができる。
【0106】
多層電子装備
前記目的を達成するために、具現例の一実施例に係る多層電子装備800は、基材層100と;前記基材層上に配置される発光機能層300と;を含む(
図3参照)。前記多層電子装備800は、前記発光機能層300上に配置されるカバー層500;をさらに含むことができる(
図4参照)。
【0107】
前記基材層100は、上述したフィルムを含む。
【0108】
前記多層電子装備800はディスプレイ装置であってもよい。
【0109】
前記多層電子装備800は、例示的に、大面積のディスプレイ装置、フォルダブル(foldable)ディスプレイ装置、ベンダブル(bendable)ディスプレイ装置、またはフレキシブル(flexible)ディスプレイ装置であってもよい。
【0110】
前記多層電子装備800は、例示的に、ベンダブル移動通信装置(例示、携帯電話)またはベンダブルノートパソコンであってもよい。
【0111】
発光機能層300は、信号によって光を放出する素子を有する発色層(図示せず)を含む。例示的に、発光機能層は、外部の電気的な信号を発色層に伝達する信号伝達層(図示せず)と、前記信号伝達層上に配置され、与えられた信号によって発色する発色層(図示せず)と、前記発色層を保護する封止層(図示せず)とを含むことができる。信号伝達層(図示せず)は、薄膜トランジスタ(TFT)を含むことができ、例示的に、LTPS、a-SiTFT、またはOxide TFTが適用されてもよいが、これに限定されない。封止層(図示せず)は、TFE(Thin Film Encapsulation)が適用されてもよいが、これに限定されない。
【0112】
前記発色層は、自発光方式の発色層であってもよい。例示的に、前記発色層としては、QLED(Quantum dot light-emitting diodes)、OLED(Organic Light Emitting Diodes)などが適用されてもよいが、これに限定されない。
【0113】
発光機能層300はセンサ層(図示せず)を含むことができる。例示的に、タッチセンサなどが適用されてもよい。センサ層は、前記発色層の上または下に配置されてもよい。
【0114】
発光機能層300は、偏光層(図示せず)をさらに含むことができる。偏光層は、前記発色層の上または下に配置されてもよい。
【0115】
発光機能層300は、色フィルター層(図示せず)をさらに含むことができる。色フィルター層は、前記発色層の上または下に配置されてもよい。
【0116】
前記発光機能層300は基材層100上に配置され得る。
【0117】
前記発光機能層300上にはカバー層500が配置され得る。
【0118】
前記カバー層500としては、ディスプレイ装置のカバー層として適用される、プラスチックフィルム、ガラスなどが適用されてもよい。
【0119】
前記発光機能層300と前記カバー層500との間には粘着層(図示せず)がさらに適用されてもよい。
【0120】
前記カバー層500は、前記発光機能層に適用される発光素子の種類によって、電極層(図示せず)がさらに含まれてもよい。前記電極層は、前記発光機能層の一面上に配置され、前記電極層と前記発光機能層との間には光学接着層が配置されてもよく、配置されなくてもよい。前記電極層は、透明金属層であってもよく、シーリング機能を有する透明金属層が適用されることが好ましい。前記電極層は、発光機能層で発光する光を通過させながら発光機能層の発光層の駆動を誘導することができる。例示的に、前記電極層は、前記発光機能層のカソードとして適用され得る。このように発光層の他面下に信号伝達層と前記発光層の一面上に電極層を共に有する場合、構造は、OLEDのような発光機能層を適用するのに良い。
【0121】
前記基材層100は、上述したフィルムを含む。
【0122】
前記基材層100はポリイミド層50を含む。
【0123】
前記基材層100は、ポリイミド層50、及び前記ポリイミド層上に位置する粘着層60を含むことができる。
【0124】
前記粘着層60は、光透過度及び/又は透明度に優れた光学用接着層が適用され得る。例示的に、前記粘着層は、OCA(Optically Clear Adhesive)、PSA(Pressure Sensitive Adhesive)またはこれらの組み合わせを含む積層体が適用されてもよい。
【0125】
前記フィルム及び前記ポリイミド層についての具体的な説明は、上述した説明と重複するので、詳細な記載を省略する。
【0126】
必要に応じて、前記多層電子装備は、前記基材層の下に追加的な境界層(図示せず)をさらに含むか、または、ローラブルもしくはベンダブルディスプレイの支持手段(又は駆動手段)とさらに連結されてもよい。
【0127】
必要に応じて、前記多層電子装備は、前記カバー層上に追加的なローラブル又はベンダブルディスプレイの駆動手段(又は支持手段)がさらに連結されてもよい。
【0128】
前記駆動手段または支持手段は、通常のローラブル又はベンダブルディスプレイに適用されるものであれば、制限なしに適用可能である。
【0129】
前記多層電子装備800は、光透過率が85%以上であってもよい。前記光透過率が90%以上であってもよい。前記光透過率が99%以下であってもよい。光透過率の測定は、ポリイミド層の光透過率の測定と類似の方式により測定することができる。
【0130】
フィルムの製造方法
一具現例によるフィルムの製造方法は、重合体溶液製造ステップと;シート製造ステップと;フィルム製造ステップと;を含む。
【0131】
重合体溶液製造ステップは、ジアミンとジアンヒドリドを含む原料組成物を撹拌して重合体溶液を製造するステップである。前記重合体溶液製造ステップは、反応過程及び熟成過程を含むことができる。
【0132】
前記ジアミンは芳香族ジアミン化合物であってもよい。
【0133】
前記ジアミンは、芳香族ジアミン化合物が1種以上含まれてもよい。
【0134】
前記ジアンヒドリドは芳香族ジアンヒドリド化合物であってもよい。
【0135】
前記ジアンヒドリドは、芳香族ジアンヒドリド化合物を3種以上含むことができる。
【0136】
前記重合体溶液の製造に適用される原料組成物は、前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物を1:0.95~1.05のモル比で含むことができる。
【0137】
前記原料組成物は、ジアンヒドリド化合物全体を100モルと見たとき、化学式2-3のビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物を5~45モルの比率で含んでもよい。前記原料組成物は、ジアンヒドリド化合物全体を100モルと見たとき、化学式2-3のビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物を8~30モルの比率で含んでもよい。このような範囲で化学式2-3の化合物を有するポリイミド層を製造する場合、ポリイミド層の耐熱特性、作業性などをより一層向上させることができる。
【0138】
前記原料組成物は、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物及びピロメリット酸ジアンヒドリド化合物を含む。前記原料組成物は、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド化合物とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物の含量が15~50モル%であってもよい。前記原料組成物は、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物と前記ピロメリット酸ジアンヒドリド化合物とのモル数の和を全体として見たとき、前記ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド化合物の含量が18~45モル%であってもよい。このような範囲で前記化合物を含む場合、製造過程で作業性が良好になるように粘度を制御することができ、しかも、互いにトレードオフ(trade off)の特性である耐熱特性と光学特性を同時に向上させることができる。
【0139】
前記原料組成物は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド化合物が60モル%未満であってもよい。前記原料組成物は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物全体を100モルと見たとき、前記ピロメリット酸ジアンヒドリド化合物が55モル%以下であってもよい。このような含量の範囲で原料組成物が前記ピロメリット酸ジアンヒドリド化合物を含む場合、原料組成物の粘度の制御などが相対的に有利であるので、適切な作業性を有すると共に、耐熱特性がより一層向上したポリイミド層を得ることができる。
【0140】
前記原料組成物は、芳香族ジアミン化合物100モルを基準として、前記化学式2-1の化合物25~55モル比、前記化学式2-2の化合物35~55モル比、及び前記化学式2-3の化合物5~25モル比を含むことができる。
【0141】
前記モル比は、固形分の含量を基準とする。
【0142】
前記反応過程は、前記原料組成物を有機溶媒下で撹拌しながらイミド化反応を誘導する過程である。前記反応過程での生成物を、便宜上、反応溶液と称する。
【0143】
前記有機溶媒下で前記原料組成物の固形分の含量は10~40重量%であってもよい。前記含量は15~30重量%であってもよい。前記含量は18~25重量%であってもよい。このような固形分の含量を有する場合、作業性がさらに優れる。
【0144】
前記原料組成物の撹拌は、1次撹拌、2次撹拌及び3次撹拌に分けて行うことができる。
【0145】
前記1次撹拌は、分子中にハロゲン元素を含む芳香族ジアミン化合物(例示:化学式1の化合物)と、分子中にハロゲン元素を含む芳香族ジアンヒドリド化合物(例示:化学式2-1の化合物)とを有機溶媒中で撹拌しながら反応を誘導するステップである。
【0146】
前記芳香族ジアミン化合物は、20~45℃の非活性雰囲気で有機溶媒(例示:N-Methyl-2-Pyrrolidone、NMP)に溶解されたものが適用されてもよい。
【0147】
前記芳香族ジアミン化合物に前記芳香族ジアンヒドリド化合物が投入されて1次撹拌が行われ得、5~15℃の反応温度で1時間~7時間の反応時間の間行われ得る。
【0148】
前記2次撹拌は、前記1次撹拌の反応生成物と、分子中にハロゲン元素を有しない芳香族ジアンヒドリド化合物(例示:化学式2-3化合物)とを撹拌しながら反応を誘導するステップである。前記2次撹拌は、30~70℃の反応温度で30分~10時間の反応時間の間行われ得る。
【0149】
前記3次撹拌は、前記2次撹拌の反応生成物と、分子中にハロゲン元素を有しない芳香族ジアンヒドリド化合物(例示:化学式2-2化合物)とを撹拌しながら反応を誘導するステップである。前記2次撹拌は、30~70℃の反応温度で30分~10時間の反応時間の間行われ得る。
【0150】
このような過程を通じて反応溶液が製造され得る。
【0151】
前記反応溶液は、粘度を測定して、25℃で測定した粘度が1,000~8,000cpsである重合体溶液を製造することができる。
【0152】
前記重合体溶液は、レベリング安定剤をさらに含むことができる。
【0153】
前記レベリング安定剤の役割及び種類は、上述した通りである。
【0154】
前記レベリング安定剤は、前記重合体溶液100重量部を基準として0.01~5重量部適用されてもよい。前記レベリング安定剤は0.1~3重量部適用されてもよい。前記レベリング安定剤は0.2~2重量部適用されてもよい。
【0155】
前記熟成過程は、前記反応溶液が一定の粘度を有する重合体溶液として形成され、レベリング安定剤が十分に分散するようにする過程である。前記熟成過程は、10~35℃で2~6時間撹拌する過程であってもよい。
【0156】
重合体溶液の製造が完成したか否かは、重合体溶液の粘度を測定して確認できる。前記重合体溶液は、ポリイミド層の前駆体であって、コーティングなどが容易であり、一定の厚さの層を形成するのに適していなければならず、光学的特性も優れていなければならない。したがって、作業性と物性などを考慮して、重合体溶液は、25℃で測定した値を基準として1,000~8,000cpsの粘度を有するように反応を誘導することが良い。2,000cps以上5,000cps未満の粘度を有する重合体溶液を製造することが良い。前記粘度が3,000cps~4,500cps未満であることがさらに良い。前記粘度が1,000cps未満と過度に低い場合には、製造されるポリイミド層を一定の厚さや意図する厚さに製造することが難しくなり得、耐熱性が不十分であることがある。前記粘度が8,000cpsを超える場合には、ゲル化が起こってしまい、除膜が実質的に難しいことがある。
【0157】
前記重合体溶液には、必要に応じて、追加的な添加剤、工程安定剤などが添加されてもよい。前記添加剤、工程安定剤などは、ポリイミドの重合に適用されるものであれば、制限なしに適用可能である。
【0158】
前記シート製造ステップは、前記重合体溶液をシート状に塗布した後、乾燥して、乾燥シートを製造するステップである。
【0159】
ガラス板のような基材に前記重合体溶液を塗布し、乾燥温度及び乾燥時間を適用して乾燥を行う。前記乾燥温度は、例示的に100~180℃が適用されてもよい。前記乾燥時間は、3分~60分が適用されてもよい。前記乾燥は、ポリイミド層の光学的特性の制御のために、非活性雰囲気または真空オーブンで行われてもよい。
【0160】
フィルム製造ステップは、前記シートを熱処理してポリイミドフィルムを製造するステップである。
【0161】
前記熱処理は、熱処理温度及び熱処理昇温速度を適用して行うことができる。
【0162】
前記熱処理温度は150~450℃であってもよい。前記熱処理温度は300~430℃であってもよい。前記熱処理温度は360~400℃であってもよい。前記熱処理温度までの昇温速度は3~25℃/minであってもよい。前記昇温速度は10~20℃/minであってもよい。前記昇温速度は13~17℃/minであってもよい。このような熱処理温度及び昇温速度を適用する場合、製造されるフィルムの意図する物性を有するように重合度などを制御し、より安定した熱処理の進行が可能である。
【0163】
前記熱処理は、不活性雰囲気下だけでなく、大気雰囲気下でも行うことができるという利点がある。具現例は、大気雰囲気で熱処理を行っても光学的特性に優れるので、工程作業性がより一層向上するという特徴も有する。
【0164】
前記製造方法により製造されるフィルムは、前記ポリイミドフィルムを含む。前記ポリイミドフィルムは、上述したフィルムに含まれるポリイミド層の特徴をそのまま有する。
【0165】
以下、具体的な実施例を通じてより具体的に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0166】
実施例:ポリイミド層の製造
(実施例1)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、40℃の窒素雰囲気下で有機溶媒であるNMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)458gを加えた後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFDB)0.170mol(100モル部)を徐々に投入しながら溶解させた。次いで、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)0.051mol(30モル部)を徐々に投入しながら、10℃で3時間撹拌させた(1次撹拌)。
【0167】
前記1次撹拌溶液に3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)を0.034mol(20モル部)投入し、摂氏50度で4時間撹拌して、2次撹拌溶液を製造した。
【0168】
前記2次撹拌溶液にPMDA(Pyromellitic dianhydride)を0.085mol(50モル部)投入した後、50℃で4時間撹拌して、3次撹拌溶液を製造した。
【0169】
前記3次撹拌溶液100重量部を基準として、レベリング安定剤としてイソプロパノール2重量部を投入し、4時間さらに撹拌した。
【0170】
粘度の測定後、添加剤及び工程安定剤をさらに投入し、4時間撹拌して重合体溶液を得た。前記重合体溶液をガラス板に塗布した後、150℃の真空オーブンで10分間乾燥させた。その後、熱処理を行った。具体的には、150℃から400℃まで15℃/minの速度で昇温して硬化させ、最終的に厚さ10μmのポリイミドフィルムを得、これを実施例1のポリイミド層として適用した。
【0171】
(実施例2、3及び比較例1~4)
前記と同じ方法により、下記表1に示されたように単量体のモル比を異ならせて実施例2、3及び比較例1のポリイミド層を製造した。
【0172】
比較例2~4の場合、下記表1による単量体のモル比を適用することは同一であるが、熱処理の温度を、比較例3は350℃まで昇温及び硬化処理、比較例4は500℃まで昇温及び硬化処理を行った。
【0173】
【表1】
TFMB:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド
PMDA:ピロメリット酸ジアンヒドリド
BPDA:2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド
*小数第2位まで表示。
**除膜の評価は、全て同じ方法により重合体溶液からポリイミド層を製造する過程において、フィルム状のポリイミド層の製造が可能な場合を○と、粘度が低すぎるため、作業性が低下した場合を△と表示した。
【0174】
実施例1~実施例3、及び比較例2の場合は、常温(約25℃)で測定した粘度が、約5000CPS~約5500CPS程度と示され、作業性が良好であった。比較例1の場合、常温(約25℃)で測定した粘度#が約2000CPSと過度に低く示され、比較例3の場合も、粘度が約1500CPS程度であって、作業性が低下した。
【0175】
#粘度の測定は、重合体溶液(Varnish)の温度を25℃に維持させ、東機産業(TOKI SANGYO)社のBH-IIモデルの粘度計を用いた。RPMは4に設定し、スピンドルナンバー4を用いて目標(Target)粘度が実現されるかを確認した。
【0176】
以下では、実施例1~3、及び比較例1~3のサンプルで物性を測定した。
【0177】
実施例:ポリイミド層(ポリイミドフィルム)の物性の評価A
(1)厚さの測定は、日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547547-401を用いて、ランダムな位置の5個の地点の厚さを測定し、平均値で厚さを測定した。
【0178】
(2)透過度、ヘイズ(Haze)は、日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7105標準に従って光透過度(%)及びヘイズ(%)を測定した。
【0179】
(3)黄色度(YI)は、分光光度計(Hunter Associates Laboratory社のUltraScan PRO)のCIE表色系を用いた。ASTM E-313規格でYIを計算した。
【0180】
(4)CTE(Coefficient of Thermal Expansion)は、熱膨張係数測定機を用い、具体的には、SEICO INST.(JAPAN)社のSeiko Exstar 6000(TMA6100)モデルを用いた。測定方法は、以下の通りであり、2nd Heatを基準として、50~250の範囲内の変化量をCTE値として定義した。
-1st Heating:30℃ start→360℃ heating(10℃/min↑)→30℃
-2nd Heating:30℃→360℃ heating(5℃/min↑)
【0181】
(5)ガラス転移温度(Tg)は、テキサスインスツルメンツ社のDMA Q800モデルを用い、測定モードは、テンションモード(Tension Mode)を用いた。昇温速度は3℃/minとして25℃から450℃まで測定し、周波数は1Hz、アンプリチュード(Amplitude)は20μmとして適用して、Tangent delta時のTg値を取った。
【0182】
(6)付着力(Adhesion Force)は、無定形シリコン(Amorphous Si)ベースのガラス基板上にポリイミド層を硬化させ、LLO(laser lift off)工程を適用して、ガラス基板とポリイミドフィルムの一部を分離した後、分離されたポリイミドフィルムにテープ(
図5のT)を固定し、UTM万能試験機設備を用いてポリイミド層を脱落させて測定した。測定モードは、180°剥離試験(Peeling Test)を適用し(
図5参照)、結果単位はgf/inchで示した。具体的には、Pre-test及びTest speedは0.83mm/secを適用し、post-test speedは10mm/secを適用し、Pre-testからtarget modeまでの距離は10mmを適用し、trigger Forceは0.001Nを適用した。
【0183】
(7)残留応力は、フロンティアセミコンダクター(Frontier Semiconductor)社の500TC(FSM128)設備を用いて測定した。予め"反り量"を測定しておいた、6インチのシリコンウエハ上にPI Vanishをコーターによって塗布し、80℃で30分間プリベークした後、高温のオーブン(光洋リンドバーグ社製、モデル名VF-2000B)を用いて、庫内の酸素濃度が10質量ppmになるように調整し、350℃で60分間の加熱硬化処理を行うことによって、厚さ15μmのポリイミド樹脂膜が形成されたシリコンウエハを作製した。このとき、シリコンウエハとPIフィルムの熱膨張の差による反りの程度を比較して残留応力を測定した。
【0184】
(8)ループスティフネスの測定は、ループスティフネステスター(LOOP STIFFNESS TESTER、TOYOSEIKI社)装置を活用した。装置の固定部に幅15mm、長さ120mm、厚さ50μmのポリイミド系フィルムの両端部を固定させ、加圧部と固定部との間の最終離隔距離(
図6のL)が20mmになるまで、加圧部を用いて3.3mm/sの加圧速度でポリイミド系フィルムを加圧した後、センサによりポリイミド系フィルムのループスティフネスを測定した。常温の条件でフィルムの機械方向を長手方向として測定した。
【0185】
前記の測定結果は、下記表2に示した。
【0186】
【表2】
*耐熱安定性指数は、上述した式1によって評価された値である。
*総合指数は、上述した式2によって評価された値である。
【0187】
前記表1及び表2を参照すると、実施例1~3の場合、ループスティフネスが適切なレベルの範囲内であって、柔軟性と共に折り曲げられたときに適切な回復力を有するので、フォルダブル又はローラブルディスプレイなどの支持層として適用するのに良いという点を確認した。これと共に、相対的に低い熱膨張係数、小さい残留応力などを確認し、これを光学的特性や耐熱特性などと総合的に黄色度などの光学的特性と、付着力、残留応力のような支持体としての活用に必要な工程性、信頼性に関連する特性が全て優れることが確認できた。
【0188】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【0189】
[謝辞情報]この発明は、韓国産業技術評価管理院の素材部品技術開発事業(パッケージ型、課題番号20007228)の支援を受けて発明しました。
【符号の説明】
【0190】
100 基材層
300 発光機能層
500 カバー層
800 多層電子装備
50 ポリイミド層
60 粘着層
G 無定形Siベースのガラス板
T テープ
LS-T1 固定部
LS-T2 加圧部