(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】防音放熱カバー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/16 150
(21)【出願番号】P 2022177359
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2024-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】富山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 延欣
(72)【発明者】
【氏名】早崎 祐介
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/124113(WO,A1)
【文献】特開2017-146340(JP,A)
【文献】特開平10-039875(JP,A)
【文献】実開昭51-157742(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0169992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を被覆する防音放熱カバーであって、
第一吸音材により面状に形成されるとともに、前記対象物の表面を被覆する被覆面と、前記被覆面と反対側の放熱面と、を有する吸音放熱シートと、
前記第一吸音材よりも硬度の大きい材料により形成され、前記吸音放熱シートの前記放熱面側から前記吸音放熱シートを被覆する補強部材と、
を備え、
前記吸音放熱シートは、さらに、
前記被覆面に沿う第一方向の両端部寄りの位置に形成された一対の第一取付部と、
前記一対の第一取付部の間に形成された放熱領域と、を備え、
前記吸音放熱シートの前記放熱領域の前記放熱面には、間隔を空けて並んで配列された複数の突条が形成されており、
前記補強部材は、
前記第一方向の両端部寄りの位置に形成され、前記一対の第一取付部にそれぞれ取付けられる一対の第二取付部と、
前記一対の第二取付部同士を橋掛けするとともに複数の貫通孔を有する橋掛部と、を備え、
前記吸音放熱シートの前記一対の第一取付部に前記補強部材の前記一対の第二取付部が取付けられた状態において、前記吸音放熱シートの前記複数の突条は、前記補強部材の前記橋掛部に当接する、防音放熱カバー。
【請求項2】
前記補強部材は、吸音性能を有する第二吸音材により形成されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項3】
前記橋掛部は、前記吸音放熱シートに対向する側の面に形成され、前記吸音放熱シートから離れる方向に凹形状に形成されるとともに、前記吸音放熱シートの前記放熱領域を収容する収容凹部を備える、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項4】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態で、前記複数の突条が突出する方向について、前記複数の突条が前記補強部材の前記橋掛部によって圧縮されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項5】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態で、前記放熱領域の前記被覆面の少なくとも一部は、前記補強部材とは反対側に膨出する膨出部を備える、請求項4に記載の防音放熱カバー。
【請求項6】
前記放熱領域の前記被覆面の全体が前記膨出部である、請求項5に記載の防音放熱カバー。
【請求項7】
前記橋掛部は、前記吸音放熱シートに対向する側の面に形成され、前記吸音放熱シートから離れる方向に凹形状に形成されるとともに、前記吸音放熱シートの前記放熱領域を収容する収容凹部を備え、
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられる前の状態において、
前記複数の突条の少なくとも一部の、前記吸音放熱シートの前記放熱面からの突出高さ寸法は、前記収容凹部の、前記第二取付部から陥没する深さ寸法よりも大きく形成され、
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態において、前記複数の突条が突出する高さ方向について、前記複数の突条の少なくとも一部が前記補強部材の前記橋掛部によって圧縮されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項8】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態で、前記補強部材の前記橋掛部には、前記吸音放熱シートの前記複数の突条のうち少なくとも一部の突条の先端部が嵌入する嵌入凹部が設けられている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項9】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態で、前記補強部材の前記橋掛部の少なくとも一部には、前記吸音放熱シートに向けて突出する圧縮突部が形成されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項10】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態で、前記複数の貫通孔のうち少なくとも二つ以上の貫通孔が、前記複数の突条の延びる方向に沿って、間隔を空けて並んで形成されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項11】
前記複数の貫通孔のうち少なくとも二つ以上の貫通孔は、前記複数の突条が並ぶ方向に細長いスリット状に形成されるとともに、前記複数の突条の延びる方向に間隔を空けて並んで形成されている、請求項10に記載の防音放熱カバー。
【請求項12】
前記複数の突条は、直線状に延びるように形成され、
前記複数の貫通孔のうち少なくとも二つ以上の貫通孔は、前記複数の突条の延びる方向に直交する方向に細長いスリット状に形成される、請求項11に記載の防音放熱カバー。
【請求項13】
前記補強部材の前記橋掛部には、前記複数の貫通孔のうち少なくとも二つ以上の貫通孔が、前記複数の突条が並ぶ方向に沿って、間隔を空けて並んで形成されている、請求項10に記載の防音放熱カバー。
【請求項14】
前記複数の貫通孔は、千鳥状に配置されている、請求項10に記載の防音放熱カバー。
【請求項15】
前記複数の貫通孔は、異なる大きさの貫通孔を有する、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項16】
前記放熱領域の少なくとも一部は、熱伝導材を含んでおり、
前記熱伝導材は、前記吸音放熱シートの面法線方向に沿って延在されている、請求項1に記載の防音放熱カバー。
【請求項17】
前記熱伝導材は、前記吸音放熱シートの前記複数の突条の先端側において、前記複数の突条の延びる方向に沿って延在されている、請求項16に記載の防音放熱カバー。
【請求項18】
前記吸音放熱シートの前記第一取付部に前記補強部材の前記第二取付部が取り付けられた状態
において、前記複数の突条は、前記複数の突条の突出する方向について、前記補強部材の前記橋掛部によって圧縮された状態になっており、
前記複数の突条が前記補強部材の前記橋掛部によって圧縮されることにより、前記吸音放熱シートの前記被覆面の少なくとも一部が前記補強部材と反対側に突出する膨出部を備え、
前記熱伝導材は、前記膨出部に含まれている、請求項
17に記載の防音放熱カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音放熱カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、車両の駆動源に防音カバーを取り付けることが知られている。特許文献1には、対象物を被覆する防音カバーが記載されている。防音カバーは、吸音材により面状に形成され、対象物の表面を被覆する吸音シートと、吸音シートを対象物に対して位置決めする補強部材と、を備える。
【0003】
補強部材は、吸音シートの少なくとも一部を露出させた状態で、吸音シートを対象物に位置決めする。これにより、対象物が発熱する場合において、対象物から発生する熱が、吸音シートに伝わり、さらに吸音シートのうち外部に露出した部分から外部へと放散される。これにより、対象物の放熱性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によれば、例えば大型の対象物に防音カバーを下方から取り付ける場合等、使用条件によっては、吸音シートのうち補強部材から露出した部分が重力によって下方に垂下し、対象物と吸音シートとの間に隙間が生じるおそれがある。すると、対象物と吸音シートとの隙間に形成された空気層により熱が対象物にこもってしまい、対象物の放熱性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、放熱性が向上した防音放熱カバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
対象物を被覆する防音放熱カバーであって、
第一吸音材により面状に形成されるとともに、前記対象物の表面を被覆する被覆面と、前記被覆面と反対側の放熱面と、を有する吸音放熱シートと、
前記第一吸音材よりも硬度の大きい材料により形成され、前記吸音放熱シートの前記放熱面側から前記吸音放熱シートを被覆する補強部材と、
を備え、
前記吸音放熱シートは、さらに、
前記被覆面に沿う第一方向の両端部寄りの位置に形成された一対の第一取付部と、
前記一対の第一取付部の間に形成された放熱領域と、を備え、
前記吸音放熱シートの前記放熱領域の前記放熱面には、間隔を空けて並んで配列された複数の突条が形成されており、
前記補強部材は、
前記第一方向の両端部寄りの位置に形成され、前記一対の第一取付部にそれぞれ取付けられる一対の第二取付部と、
前記一対の第二取付部同士を橋掛けするとともに複数の貫通孔を有する橋掛部と、を備え、
前記吸音放熱シートの前記一対の第一取付部に前記補強部材の前記一対の第二取付部が取付けられた状態において、前記吸音放熱シートの前記複数の突条は、前記補強部材の前記橋掛部に当接する、防音放熱カバーにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、吸音放熱シートの複数の突条が、補強部材の橋掛部に当接することにより、吸音放熱シートの複数の突条が補強部材の橋掛部に支持される。これにより、吸音放熱シートが、被覆面から放熱面に向かう方向に凸形状に変形することが抑制される。この結果、吸音放熱シートの被覆面が対象物から離れるように撓み変形することが抑制されるので、対象物と吸音放熱シートの被覆面との間に隙間が形成されることが抑制される。これにより、対象物から発生した熱が吸音放熱シートに速やかに熱伝導するので、防音放熱カバーの放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の防音放熱カバーを対象物に取り付けた状態を示す側面図。
【
図2】実施形態1の防音放熱カバーを示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は右側面図。
【
図3】実施形態1の吸音放熱シートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図。
【
図4】実施形態1の補強部材を示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図。
【
図6】実施形態1の吸音放熱シートに補強部材を取り付ける前の状態を示す、一部拡大断面図。
【
図7】実施形態1の吸音放熱シートに補強部材を取り付けた状態を示す一部拡大断面図。
【
図8】実施形態1の防音放熱カバーを対象物に取り付けた状態を示す一部拡大断面図。
【
図9】実施形態2の吸音放熱シートに補強部材を取り付ける前の状態を示す、一部拡大断面図。
【
図10】実施形態2の吸音放熱シートに補強部材を取り付けた状態を示す一部拡大断面図。
【
図11】実施形態3の吸音放熱シートに補強部材を取り付ける前の状態を示す、一部拡大断面図。
【
図12】実施形態3の防音放熱カバーを対象物に取り付けた状態を示す一部拡大断面図。
【
図13】実施形態4の吸音放熱シートに補強部材を取り付けた状態を示す一部拡大断面図。
【
図14】実施形態5の防音放熱カバーを示す、
図2の領域Rに対応する領域を示す、一部拡大正面図。
【
図15】実施形態6の防音放熱カバーを示す、
図2の領域Rに対応する領域を示す、一部拡大正面図。
【
図16】実施形態6の変形例の防音放熱カバーを示す、
図2の領域Rに対応する領域を示す、一部拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
1.防音放熱カバー1の基本構成
防音放熱カバー1の基本構成について、
図1、
図3および
図4を参照して説明する。防音放熱カバー1は、対象物2を被覆して、対象物2にて発生する音が外部へ伝達することを抑制する機能と、対象物2の熱を外部へ放熱する機能と、を有する。対象物2は、例えば、車両の動力源とする。動力源としては、車両の駆動用モータ、車両の駆動用エンジン等である。
【0011】
ここで、
図1においては、対象物2は、車両の駆動用モータである場合を示す。また、
図1の駆動用モータは、円筒外周面を有する場合を例示している。ただし、駆動用モータの外周面は、円筒面に限られるものではなく、適宜凹凸状に形成されるようにしても良い。
【0012】
本形態では、駆動用モータの回転軸線が車両の左右方向に一致するように、駆動用モータは配置されている。
図1の左側が車両前方であり、右側が車両後方である。駆動用モータの車両前方面は、車両走行によって、空気流を直接受けることが可能な領域となる。また、駆動用モータの上下両側面も、車両走行によって、前方から後方に流れる空気流を受けることが可能である。なお、駆動用モータのうち車両後方面は、車両走行中の空気流を直接受けない領域となる。
【0013】
一方、車両が停止した状態では、自然対流により、空気は上下方向に流通する。このため、駆動用モータの下面は、自然対流による空気流を直接受けることが可能な面となる。また、駆動用モータの前後両側面も、自然対流による下方から上方へ流通する空気流を受けることが可能である。なお、駆動用モータの上面は、自然対流による空気流を直接受けない領域となる。
【0014】
上記のように、車両走行中、および車両停止中のいずれの状態でも、駆動用モータの周方向の側面の少なくとも1つは、空気流を受けることが可能な面となっている。
【0015】
ただし、駆動用モータの回転軸線が車両の前後方向に一致するように、駆動用モータが配置される構成としても良い。この場合、空気は駆動用モータの軸方向に沿って流れるので、駆動用モータの上下両側面および左右両側面が、車両走行によって、空気流を直接受けることが可能な領域となる。
【0016】
防音放熱カバー1は、対象物2の表面を被覆しており、例えば、
図1に示すように、対象物2が駆動用モータの場合には駆動用モータの外周面を被覆する。防音放熱カバー1は、対象物2の外周面を全周に亘って被覆しているが、一部に被覆しない部位を有するようにしても良い。本形態では、4つの防音放熱カバー1が対象物2の外周面を被覆している。本形態では、4つの防音放熱カバー1は、対象物2の上面、下面、前面、および後面を被覆している。ただし、防音放熱カバー1の個数は1個~3個、または5個以上でもよい。
【0017】
防音放熱カバー1は、吸音放熱シート3と、補強部材4と、を備える。吸音放熱シート3は、吸音性能を有する第一吸音材により面状に形成され、対象物2の表面を被覆する。従って、吸音放熱シート3によって、防音効果を得ることができる。吸音放熱シート3は、予め対象物2の表面形状に対応した形状に形成するようにしても良い。また、吸音放熱シート3は、変形可能な材料により平面状に形成し、変形させながら対象物2の表面に取り付けるようにしても良い。吸音放熱シート3は、吸音性能に加えて、放熱性能を有する。吸音放熱シート3は、対象物2の表面を被覆する被覆面10と、被覆面10と反対側の放熱面11と、を備える。
【0018】
吸音放熱シート3を構成する第一吸音材としては、吸音性能に優れた材料、例えば、発泡樹脂により形成するのが好適である。発泡樹脂の例として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等が適用される。そして、吸音放熱シート3の発泡樹脂のアスカーC硬度は、1~60度である。なお、吸音放熱シート3は、吸音性能を有する非発泡樹脂により形成するようにしても良いし、金属により形成するようにしても良い。非発泡樹脂の例として、ポリアミド樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、炭素繊維プラスチック(FRP、CFRP)等が適用される。また、金属の例として、鉄、アルミニウム、SUS、銅、およびその合金が適用される。ただし、吸音性能としては優れている発泡樹脂が好適である。
【0019】
さらに、吸音放熱シート3が放熱性能を有するようにするために、吸音放熱シート3は、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成されると良い。熱伝導材は、吸音放熱シート3の被覆面10から放熱面11に向かって延在されるようにすると良い。例えば、熱伝導材が熱伝導フィラーである場合には、熱伝導フィラーが、吸音放熱シート3の被覆面10から放熱面11に向かって配列される。さらには、熱伝導材の充填量が、吸音放熱シート3の位置によって異なるようにしても良い。例えば、車両前方面より車両後方面の方が冷却されにくいため、車両前方面よりも車両後方面における熱伝導材の充填量を多くすると良い。なお、ここでの充填量とは、吸音放熱シート3の面方向における単位面積当たりの充填量を意味する。また、熱伝導材が金属板である場合には、吸音放熱シート3の被覆面10から放熱面11に向かって延在するようにインサート成形されるようにすると良い。
【0020】
補強部材4は、吸音放熱シート3を放熱面11側から被覆した状態で、吸音放熱シート3を対象物2に対して位置決めする。補強部材4は、吸音放熱シート3とは別体に形成され、吸音放熱シート3の放熱面11側に配置されることにより、補強部材4と対象物2との間に吸音放熱シート3を挟んで配置される。
【0021】
また、補強部材4は、対象物2への固定方法として、例えば、
図1に示すように、ボルト5により対象物2に固定するようにしても良い。吸音放熱シート3には、ボルト5が挿通される第一挿通孔12が吸音放熱シート3を貫通して形成されており(
図3参照)、補強部材4には、ボルト5が挿通される第二挿通孔20が補強部材4を貫通して形成されている(
図4参照)。ただし、補強部材4と対象物2とを固定する方法はボルト締結に限定されず、例えば、対象物2に設けられた係止爪に補強部材4が係止される構成としても良い。補強部材4と対象物2とがボルト締結されない場合には、第一挿通孔12および第二挿通孔20は省略される。
【0022】
補強部材4は、吸音放熱シート3よりも硬度が大きい材料により形成されている。本形態においては、吸音放熱シート3は例えば発泡樹脂により面状に形成されている。補強部材4の発泡樹脂のアスカーC硬度は、60~99度である。このように、吸音放熱シート3が十分に剛性を有しない第一吸音材により形成されている場合、吸音放熱シート3のみでは対象物2への位置決め効果が低い。このような場合であっても、補強部材4によって、吸音放熱シート3を対象物2に対して確実に位置決めすることができる。
【0023】
さらに、補強部材4は、吸音放熱シート3よりも単位体積当たりの質量(以下、「単位質量」と称する)が大きな材料により形成される。上述したように、補強部材4が補強機能を発揮できるようにするために、結果として、補強部材4が、吸音放熱シート3よりも単位質量が大きな材料により形成される。
【0024】
補強部材4は、吸音性能を有する第二吸音材により形成される構成としてもよい。第二吸音材としては、吸音性能に優れた材料、例えば、発泡樹脂により形成されると良い。ただし、補強部材4に適用される発泡樹脂は、吸音放熱シート3に適用される発泡樹脂とは異なる。例えば、補強部材4に適用される発泡樹脂の例として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等が適用される。なお、吸音放熱シート3および補強部材4に、ウレタンフォームを適用したとしても、両者のウレタンフォームは異なる種類である。補強部材4が第二吸音材で形成されることにより、防音放熱カバー1の防音性を向上させることができる。
【0025】
また、補強部材4は、第二吸音材と異なる材料、例えば、発泡ゴム、非発泡樹脂、または、金属等を適用することもできる。発泡ゴムの例として、発泡EPDM、発泡CR、発泡NBR/PVC、発泡ACM等が適用される。また、非発泡樹脂の例として、ポリアミド樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、炭素繊維プラスチック(FRP、CFRP)等が適用される。また、金属の例として、鉄、アルミニウム、SUS、銅、およびその合金等が適用される。これらの場合の補強部材は、発泡樹脂よりも硬度の高いゴム、樹脂または金属により形成される。ただし、軽量化の観点から発泡樹脂が好適である。
【0026】
また、補強部材4は、吸音放熱シート3の表面を全面に亘って被覆するように配置されておらず、吸音放熱シート3の少なくとも一部を露出させた状態で配置されている。吸音放熱シート3は、上述したように、吸音性能に加えて、放熱性能を有する。従って、吸音放熱シート3が露出されることによって、吸音放熱シート3による放熱性能を効果的に発揮させることができる。
【0027】
補強部材4が、撓み変形可能な程度の柔軟性を有する場合には、対象物2の外周面の形状に適合するように補強部材4を変形させつつ、対象物2の外周面に取り付けることができる。また、補強部材4の硬度が大きいために撓み変形しにくい場合には、補強部材4を対象物2の外周面の形状に適合するように予め形成しておけばよい。これにより、補強部材4を対象物2の外周面に容易に取り付けることができる。
【0028】
2.防音放熱カバー1の詳細構成
防音放熱カバー1の詳細構成について、
図1~
図8を参照して説明する。防音放熱カバー1は、
図1に示したように、対象物2の表面形状に応じた形状に形成される。ただし、説明を容易にするために、
図2~
図8には、防音放熱カバー1を平面状に展開した状態の図を示しており、以下には、当該図を用いて説明する。
【0029】
図2(a)および
図2(c)に示すように、防音放熱カバー1は、吸音放熱シート3と、補強部材4と、を備える。以下においては、吸音放熱シート3および補強部材4について、詳細に説明する。吸音放熱シート3は、本例では、1つのシートのみにより構成される。なお、吸音放熱シート3は、別体に形成された複数の分割体により構成されるようにしても良い。防音放熱カバー1は、平面視、略長方形状に形成されている。ただし、防音放熱カバー1の形状は特に限定されず、任意の形状に形成することができる。
【0030】
図3(a)および
図3(b)に示すように、吸音放熱シート3は、特に限定されないが、本形態では、平面視、略長方形状に形成されている。吸音放熱シート3は全体として面状に形成されている。吸音放熱シート3は、対象物2に取り付けられた状態で、対象物2の軸方向(第一方向の一例)の両端部寄りの位置に形成された一対の第一取付部13と、一対の第一取付部13の間に形成された放熱領域14と、を備える。吸音放熱シート3の四隅部であって、一対の第一取付部13が形成された部分には、吸音放熱シート3を貫通する第一挿通孔12が形成されている。上記したように、第一挿通孔12内にはボルト5が挿通される構成とされる。吸音放熱シート3の被覆面10は、対象物2の表面のうちの一部を被覆して接触する。
【0031】
放熱領域14の放熱面11には、複数の突条15が外方に突出して形成されている。複数の突条15は、吸音放熱シート3の面方向に延在するように形成されている。詳細には、複数の突条15は、吸音放熱シート3が対象物2に取り付けられた状態で、対象物2の外周面の周方向に沿って直線状に延びて形成されている。複数の突条15は、放熱領域14の放熱面11において、対象物2の軸方向に間隔を空けて並んで配列されている。本形態では、複数の突条15は等間隔に並んで形成されている。ただし、複数の突条15の形状は、平面視、波状としても良い。また、複数の突条15は、対象物2の外周面の軸方向に延在するように形成しても良いし、対象物2の外周面の周方向および軸方向に対して傾斜する方向に延在する形状に形成しても良い。
【0032】
吸音放熱シート3は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材が、吸音放熱シート3の被覆面10から突条15の先端において、吸音放熱シート3の面法線方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、対象物2の表面から突条15の先端に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、導電性フィラーが好適である。
【0033】
吸音放熱シート3は、例えば、熱伝導材を含む発泡樹脂により形成される場合において、熱伝導材が、突条15の先端側において、突条15の延在方向に連続して延在されるようにすると良い。これにより、突条15の延在方向の一端側から他端側に至る範囲に、連続して熱伝導材が配置されることにより、面方向においても高い放熱性能を発揮することができる。この場合の熱伝導材には、銅、ステンレス、鋼、アルミニウム等の金属箔、アルミ蒸着フィルム等の金属フィルム、導電性フィラー、熱伝導性樹脂フィルム等を用いることができる。また、金属箔や金属フィルムと樹脂フィルムとを積層させても良い。なお、熱伝導材は、複数の突条15における特定の領域や、特定の突条15のみに設けても良く、また、突条15の先端側または側面の外表面に配置しても良い。
【0034】
また、吸音放熱シート3が発泡樹脂により形成されている場合には、以下のようにすると良い。吸音放熱シート3の放熱面11側は、発泡樹脂のセルが閉じたクローズドセル状態とされ、被覆面10側は、発泡樹脂のセルが開いたオープンセル状態とされると良い。放熱面11側をクローズドセル状態とすることで、空気等の流体が流通する際の圧損を抑制できるため、放熱性能を高くすることができる。一方、被覆面10側をオープンセル状態とすることで、吸音性能を高くすることができる。つまり、上記構成により、吸音性能および放熱性能を良好とすることができる。
【0035】
図4(a)および
図4(b)に示すように、本形態では、補強部材4は1つの部材のみにより構成される。なお、補強部材4は、複数の分割体により構成されるようにしても良い。
【0036】
補強部材4は、平面視、略長方形状に形成されている。補強部材4は、平面視、吸音放熱シート3と略同じ大きさに形成されている。補強部材4は、対象物2に取り付けられた状態で、対象物2の軸方向の両端部寄りの位置に形成される一対の第二取付部21と、一対の第二取付部21同士を橋掛けする橋掛部22と、を備える。
【0037】
一対の第二取付部21は、吸音放熱シート3の一対の第一取付部13にそれぞれ取り付けられる構成とされる。一対の第二取付部21は、一対の第一取付部13に対向するとともに、一対の第一取付部13に接着剤、両面テープ23等の公知の手段により取り付けられる取付面24を有する。本形態では、両面テープ23により第一取付部13に第二取付部21が取り付けられている。対象物2の軸方向について、一対の第二取付部21の幅寸法は、一対の第一取付部13の幅寸法よりも小さい。一対の第二取付部21には、第二取付部21を貫通する第二挿通孔20が形成されている。上記したように、第二挿通孔20内にはボルト5が挿通される構成とされる。
【0038】
橋掛部22は、吸音放熱シート3に対向する側の面に、吸音放熱シートから離れる方向に凹形状に形成される収容凹部25を備える。吸音放熱シート3の第一取付部13に、補強部材の第二取付部21が取り付けられた状態で、補強部材の収容凹部25は、吸音放熱シート3の放熱領域14を収容する構成とされる。第二取付部21と、収容凹部25の底壁26とは、第二取付部21側に拡開する傾斜壁27によって連結されている。収容凹部25の底壁26は、吸音放熱シート3に対向する内面28と、内面28と反対側の外面29と、を有する。
【0039】
図2(a)に示すように、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられた状態で、橋掛部22のうち、対象物2の周方向と交差する両側面には、吸音放熱シート3の放熱領域14との間に、空気が流通可能な通気口30が形成されている。上記したように、対象物2の周方向に沿って空気が流通可能になっているので、通気口30から空気が補強部材4の内部に流入し、また、外部に流出可能になっている。吸音放熱シート3の複数の突条15は、通気口30に露出している。これにより、通気口30から補強部材4の内部に流入し、外部へと流出する空気が、複数の突条15と接触可能になっている。この結果、防音放熱カバー1の放熱性が向上する。さらに、上記したように、複数の突条15が直線状に延びるように形成されているので、空気の流通が阻害されない。これにより、防音放熱カバー1の放熱性を向上させることができる。ただし、上記したように、空気が駆動用モータの軸方向に沿って流れる場合には、複数の突条15が軸方向に沿って延びる構成とすることにより空気の流通が阻害されることを抑制できる。
【0040】
図2(b)および
図4(b)に示すように、橋掛部22は、橋掛部22を貫通する複数の貫通孔31を備える。本形態では、複数の貫通孔31は、吸音放熱シート3の複数の突条15が並ぶ方向に細長く延びるスリット状に形成されている。複数の貫通孔31は、複数の突条15の延びる方向に間隔を空けて並んで形成されている。本形態では、複数の貫通孔31が延びる方向と、複数の突条15が延びる方向とは直交している。ただし、複数の貫通孔31が延びる方向と、複数の突条15が延びる方向とは、傾斜して交差する構成としてもよい。
【0041】
なお、対象物2との関係から複数の貫通孔31の形状を説明すると、複数の貫通孔31は、対象物2の軸方向に細長く延びるスリット状に形成されており、対象物2の外面29の周方向に沿って間隔を空けて並んで形成されている。
【0042】
本形態では、複数の貫通孔31は同形同大である。また、複数の貫通孔31は等間隔に並んで配置されている。ただし、複数の貫通孔31の形状および大きさは、互いに異なっていてもよく、また、複数の貫通孔31の間隔は互いに異なっていてもよい。
【0043】
図2(b)および
図5に示すように、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられた状態において、少なくとも一つの貫通孔31から、少なくとも一つの突条15が外部に露出している。これにより、対象物2から発生した熱が、吸音放熱シート3の突条15から、貫通孔31を通って外部に放散されるので、防音放熱カバー1の放熱性を向上させることができる。なお、
図5においては、橋掛部22の色調を変えることにより、橋掛部22と貫通孔31とを識別しやすいように記載している。
【0044】
図6に示すように、本形態では、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられる前の状態において、吸音放熱シート3の放熱面11において突出する突条15の突出高さ寸法T1は、補強部材4の第二取付部21の取付面24と橋掛部22の内面28との間の高さ寸法T2よりも、大きく設定されている。ただし、吸音放熱シート3の放熱面11において突出する突条15の突出高さ寸法T1は、補強部材4の第二取付部21の取付面24と橋掛部22の内面28との間の高さ寸法T2と同じに設定されていてもよい。
【0045】
なお、本形態では、吸音放熱シート3が補強部材4によって下方から支持される状態について説明したが、吸音放熱シート3と補強部材4の相対的な位置関係は特に限定されない。
【0046】
図7に示すように、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられた状態において、吸音放熱シート3の突条15の先端部は、補強部材4の橋掛部22の内面28に当接している。さらに、上記したように、本形態では、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられる前の状態における突条15の突出高さ寸法T1は、補強部材4の第二取付部21の取付面24と橋掛部22の内面28との間の高さ寸法T2よりも大きく設定されている。このため、吸音放熱シート3に補強部材4が取り付けられた状態において、突条15は、突条15の突出する方向について、補強部材の橋掛部22によって圧縮された状態になっている。
【0047】
吸音放熱シート3の複数の突条15が、補強部材4の橋掛部22に当接することにより、吸音放熱シート3の複数の突条15が補強部材4の橋掛部22に支持される。これにより、吸音放熱シート3が、被覆面10から放熱面11に向かう方向に凸形状に変形することが抑制される。この結果、吸音放熱シート3の被覆面10が対象物2から離れるように撓み変形することが抑制されるので、対象物2と吸音放熱シート3の被覆面10との間に隙間が形成されることが抑制される。これにより、対象物2から発生した熱が吸音放熱シート3に速やかに熱伝導するので、防音放熱カバー1の放熱性が向上する。
【0048】
また、複数の突条15が補強部材4から圧力を受けて圧縮されることにより、吸音放熱シート3が対象物2に押し付けられる。これにより、吸音放熱シート3と対象物2の密着性が向上する。この結果、防音放熱カバー1の放熱性がさらに向上する。
【0049】
図7に示すように、突条15が補強部材4の橋掛部22によって圧縮されることにより、吸音放熱シート3の被覆面10の少なくとも一部は、補強部材4と反対側に膨出する膨出部16を備える。本形態では、吸音放熱シート3の放熱領域14の被覆面10の全体が膨出部16である。本形態では、膨出部16は、上記した熱伝導材を含む。ただし、吸音放熱シート3の被覆面10の一部が膨出する構成としても良く、また、吸音放熱シート3の被覆面10が膨出部16を有しない構成としても良い。
【0050】
図8に示すように、防音放熱カバー1が対象物2に取り付けられた状態では、吸音放熱シート3の被覆面10が対象物の表面を被覆する。すると、吸音放熱シート3の被覆面10のうち膨出した膨出部16は、確実に対象物2に接触するとともに、対象物2によって圧縮される。これにより、吸音放熱シート3と対象物2との密着性が向上するので、防音放熱カバー1の放熱性が向上する。なお、本形態では、防音放熱カバー1が対象物2の下面に取り付けられた状態を例に説明したが、防音放熱カバー1が対象物2のどの部分に取り付けられるかについては限定されない。
【0051】
また、放熱領域14の被覆面10の全体に膨出部16であることにより、放熱領域14の被覆面10の全体において、吸音放熱シート3と対象物2との密着性が向上するので、防音放熱カバー1の放熱性が向上する。
【0052】
また、熱伝導材が膨出部16に含まれることにより、対象物2が発した熱を、速やかに吸音放熱シート3に伝えることが可能となるので、防音放熱カバー1の放熱性が向上する。
【0053】
(実施形態2)
次に、
図9~
図10を参照して、実施形態2の防音放熱カバー41について説明する。
図9に示すように、本形態の防音放熱カバー41の補強部材42は、橋掛部22の内面28に、嵌入凹部43を有する。嵌入凹部43は、吸音放熱シート3に補強部材42が取り付けられた状態で、吸音放熱シート3の複数の突条15の先端部に対向する位置に、陥没して形成されている。嵌入凹部43は、複数の突条15と同様に、対象物2の周方向に沿って延びて形成されている。嵌入凹部43の開口部は、突条15の先端部が嵌入可能な大きさに形成されている。
【0054】
図10に示すように、吸音放熱シート3に補強部材42が取り付けられた状態で、突条15部の先端部は、嵌入凹部43内に嵌入する構成になっている。これにより、突条15が、重力や、対象物2の熱によって撓み変形することが抑制される。この結果、吸音放熱シート3の突条15と、補強部材42の橋掛部22との間に隙間が形成されることが抑制されるので、防音放熱カバー41の放熱性を、向上させることができる。
【0055】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0056】
(実施形態3)
次に、
図11~
図12を参照して、実施形態3の防音放熱カバー51について説明する。
図11に示すように、本形態の吸音放熱シート52に設けられた第一取付部53は、突条15の突出方向に突出して形成されている。第一取付部53の突出高さ寸法T3は、突条15の突出高さ寸法T1よりも大きく設定されている。これにより、第一取付部53と、放熱領域14との間には、突条15の突出方向について段差が形成されている。
【0057】
本形態の補強部材54は、平坦な板状に形成されている。補強部材54の内面28のうち、一対の第二取付部55と、一対の第二取付部55と異なる部分との間には段差が形成されていない。
【0058】
図12に示すように、吸音放熱シート52の第一取付部53に、補強部材54の第二取付部55が取り付けられた状態で、吸音放熱シート52の放熱領域14と、補強部材54の橋掛部56との間には、第一取付部53の突出高さ寸法T3によって空間が形成されている。この空間内に、吸音放熱シート52の放熱領域14および複数の突条15が収容される構成となっている。なお、第一取付部53の突出高さ寸法T3を突条15の突出高さ寸法T1よりも小さく設定することもできる。この場合、複数の突条15が圧縮された状態で、空間内に収容される。
【0059】
(実施形態4)
次に、
図13を参照して、実施形態4の防音放熱カバー61について説明する。本形態の防音放熱カバー61の補強部材62の橋掛部22の内面28には、吸音放熱シート3の第一取付部13に補強部材62の第二取付部21が取り付けられた状態で、吸音放熱シート3に向かって突出する圧縮突部63が形成される。
【0060】
圧縮突部63は、橋掛部22の内面28の少なくとも一部に形成されていればよい。ただし、橋掛部22の内面28が全体的に吸音放熱シート3に向かって突出することにより、橋掛部22の内面28すべてが圧縮突部63とされてもよい。圧縮突部63によって、吸音放熱シート3の複数の突条15が圧縮されるので、防音放熱カバー61の放熱性がさらに向上する。
【0061】
上記したように、橋掛部22によって複数の突条15が圧縮されることにより、吸音放熱シート3の被覆面10には、膨出部16が形成されている。さらに、圧縮突部63によって突条15が圧縮されることにより、吸音放熱シート3の被覆面10には、膨出部16からさらに膨出する追加的膨出部64が形成される。追加的膨出部64は、突条15の突出方向について、橋掛部22の圧縮突部63と重なる位置に形成されている。
【0062】
防音放熱カバー61が対象物2に取り付けられた状態で、追加的膨出部64が形成された部分は、対象物2により強く圧縮される。これにより、吸音放熱シート3と対象物との間に隙間が形成されることが抑制されるので、防音放熱カバー61の放熱性がさらに向上する。特に、対象物2に局所的に高温になる部分が存在する場合には、特に有効である。
【0063】
(実施形態5)
次に、
図14を参照して実施形態5の防音放熱カバー71について説明する。
図14に示すように、本形態の橋掛部22には、内形状が円形状をなす複数の貫通孔72が、複数の突条15の延びる方向に沿って間隔を空けて並ぶとともに、複数の突条15の並ぶ方向に沿って間隔を空けて並んで形成されている。各貫通孔72からは、突条15の一部が露出している。これにより、対象物2で発生した熱は、吸音放熱シート3に伝わった後、突条15へと熱伝導し、突条15から貫通孔72を通って外部へと放散される。これにより、防音放熱カバー71の放熱性を向上させることができる。
【0064】
また、橋掛部22のうち、貫通孔72が形成されていない部分は、複数の突条15の先端と当接している。これにより、吸音放熱シート3が対象物2の表面から離れるように変形することが抑制される。この結果、吸音放熱シート3と対象物2との間に隙間が形成されることが抑制されるので、防音放熱カバー71の放熱性を向上させることができる。
【0065】
ただし、複数の貫通孔72の配置は、突条15の延びる方向および突条15の並ぶ方向の一方にのみ沿って、他方には沿っていない配置とされてもよいし、また、突条15の延びる方向および突条15の並ぶ方向の双方に沿わず、ランダムに配置される構成としてもよい。
【0066】
(実施形態6)
次に、
図15を参照して実施形態6の防音放熱カバー81について説明する。本形態の橋掛部22には、内形状が円形状をなす複数の貫通孔72が、千鳥状に配置されている。
【0067】
橋掛部22のうち、千鳥状に配置された複数の貫通孔72が形成されていない部分は、細長く延びる帯状の部分が、複数の突条15が延びる方向および複数の突条15が並ぶ方向の双方に対して斜めに交差する形状となる。これにより、複数の突条15を偏りなく平均的に保持することができるので、吸音放熱シート3が対象物2から離れる方向に変形することをさらに抑制できる。この結果、防音放熱カバー81の放熱性を向上させることができる。
【0068】
(実施形態6の変形例)
図16に、実施形態6の変形例について説明する。本形態の複数の貫通孔82aの内形状は六角形に形成されている。複数の貫通孔82aの内形状は、円形状、六角形状に限られず、三角形、四角形、五角形等の多角形状でもよいし、長円形状でもよく、任意の形状を適宜に選択できる。
【0069】
さらに、複数の貫通孔82aの大きさは、互いに異なる形状としてもよい。例えば、対象物2が局所的に高温になりやすい部分が存在する場合、高温になりやすい部分に対応する貫通孔82aの大きさを他の部分よりも大きくすることにより、防音放熱カバー81の放熱性を向上させることができる。
【0070】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,41,51,61,71,81:防音放熱カバー、2:対象物、3,52:吸音放熱シート、4,42,54,62:補強部材、5:ボルト、10:被覆面、11:放熱面、12:第一挿通孔、13,53:第一取付部、14:放熱領域、15:突条、16:膨出部、20:第二挿通孔、21,55:第二取付部、22,56:橋掛部、23:両面テープ、24:取付面、25:収容凹部、26:底壁、27:傾斜壁、28:内面、29:外面、30:通気口、31,72,82:貫通孔、43:嵌入凹部、63:圧縮突部、64:追加的膨出部