(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241024BHJP
C03B 23/025 20060101ALI20241024BHJP
C03B 23/03 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C03C27/12 R
C03C27/12 C
C03B23/025
C03B23/03
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196263
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2019560495の分割
【原出願日】2018-01-25
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ペーター パウルス
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ピルツ
(72)【発明者】
【氏名】ネイル ジョン ダービン
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/107706(WO,A1)
【文献】特表2015-521575(JP,A)
【文献】特開昭61-106237(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092385(WO,A1)
【文献】特開2010-159200(JP,A)
【文献】特開平10-230568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
C03B 23/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板ガラスを調製するためのプロセスであって、
i)第1の手順によって第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシートを提供するステップと、
ii)第2の手順によって第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシートを提供するステップであって、前記第1のガラスシートの厚さが、前記第2のガラスシートの厚さと異なっている、ステップと、
iii)前記第1のガラスシートと前記第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供するステップと、
iv)前記中間
層を前記ガラスシートに接着させるのに十分な温度および圧力で、前記第1および第2のガラスシートならびに前記中間層をともに積層するステップと、を含み、
前記プロセスが、
v)積層後に、前記第2のガラスシートの形状が前記第1のガラスシートの形状と実質的に同じになるように、前記中間
層を前記2つのガラスシートに接着させるための積層中に、前記第1のガラスシートと同じ範囲内の厚さを有し、前記第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形され、前記第1のガラスシートと同じ前記第1の手順によ
り同じバッチで作製され、且つ、一体化される第3のガラスシートを、前記第2のより薄いガラスシートに対して適用するステップ
と、
vi)積層前に、前記第2のガラスシートと、前記第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された前記一体化される第3のガラスシートとの間に非粘着性フィルムを含む箔層を提供するステップと、をさらに含む、プロセス。
【請求項2】
ステップiv)において、積層が、90℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップiv)において、積層が、100℃~110℃の範囲内の温度で生じる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップiv)において、積層が、オートクレーブ内で生じる、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のガラスシートを前記所望の形状に形成するための前記第1の手順が、プレス曲げを含む、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2のガラスシートを前記所望の形状に形成するための前記第2の手順が、重力たわみ曲げを含む、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2
のガラスシートの厚さが、0.2mm~1.4mmの範囲内である、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1のガラスシートの前記厚さが、1.4mm~2.5mmの範囲内である、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記一体化される第3のガラスシートが、プレス曲げガラスシートを含む、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第3のガラスシートの厚さが、1.4mm~2.5mmの範囲内である、請求項
10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1および第3のガラスシートが、単一プレス曲げバッチプロセスで調製される、請求項1~
11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記箔層が、0.05mm~0.2mmの範囲内の厚さを含む、請求項
1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記箔層が、非粘着性ポリエステルフィルムを含む、請求項
1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
vii)前記第3のガラスシートおよび前記箔層を、前記積層された第1および第2のガラスシートから取り除くステップをさらに含む、請求項
1~14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のプロセスを経た積層板ガラスであって、積層中に前記第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型を前記第2のガラスシートに対して適用しない積層法によって調製された積層板ガラスと比較して、光学的屈折力の37%の改善を含む
、積層板ガラス。
【請求項17】
請求項1~
15のいずれかに記載のように調製された、積層板ガラスの車両における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板ガラスを調製するためのプロセス、および車両におけるその使用に関
する。より具体的には、本発明は、軽量積層板ガラスを調製するためのプロセス、および
特に車両のフロントガラスとしての車両におけるその使用に関する。
【0002】
車両のフロントガラス用の積層板ガラスは通常、ポリビニルブチラール(PVB)など
の少なくとも1つの接着性層によって接合された、2つの成形されたガラスシートを含む
ことが既知である。当該技術分野において、各ガラスシートを「プライ」と呼ぶことが慣
例的である。しばしば、接着性層自体もまた、「プライ」と呼ばれる(つまりPVBのプ
ライ)。積層板ガラスが取り付けられる車両の内側に面するように構成されたガラスシー
トはしばしば、「内プライ」と呼ばれる一方で、積層板ガラスが取り付けられる車両の外
側に面するように構成されたガラスシートはしばしば、「外プライ」と呼ばれる。2つの
ガラスシートはしばしば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスから構成される。
【0003】
車両用積層板ガラスにおいて使用されるガラスシートの各々は通常、積層板ガラスがカ
ーブするように、1つまたは2つの相互に垂直な方向に成形されるか、または曲げられる
。最初は平坦であるガラスシートを所望の曲率に曲げて、フロントガラスを形成するため
の多くの方法が既知である。
【0004】
例えば、1つの既知の方法は、一対の最初は平坦であるガラスシートを同時に曲げ、一
方のガラスシートが他方のガラスシートの上になり、かつ炭酸カルシウムなどの好適な「
離型粉末」によって分離されるようにすることである。この方法において、内プライおよ
び外ガラスプライシートを打ち延ばし可能になるまで加熱し、重力たわみ曲げプロセスに
よって同時に曲げ、故に成形する。
【0005】
フロントガラス用ガラスシートを曲げる代替的な方法は、内プライおよび外プライを異
なる時間、通常順々に加熱し、曲げ、それにより内プライおよび外プライを個々に形成す
ることである。例えば、平坦なガラスシートを個々に曲げる1つのそのような方法は、加
熱された平坦なガラスシートを一対の補完的成形部材間に運搬し、各ガラスシートを別個
にプレス曲げすることを伴う。その後、ガラスシートを冷却し、連結し、PVBなどの好
適な接着性中間層を使用して積層することができる。
【0006】
例えば、EP0398759は、単一積層ガラスシートになるようにともに合わせた第
1および第2のガラスシートを、加熱炉の出口での第1のガラスシートおよび第2のガラ
スシートの温度が実質的に等しくなるように加熱炉内で加熱する方法を記載している。
【0007】
WO2004/085324A1は、積層ガラスの生産のために意図された非対称のガ
ラスシート対のガラスシートを予熱炉内で予熱し、その後プレス曲げ工程でプレス曲げプ
ロセスを受けさせる方法を記載している。プレス曲げ工程の出口に配置された温度測定点
によって、ガラスシートが均一な曲げ挙動を呈することを確実にして、冷却中の同一の復
元力を保証する。
【0008】
US4,260,408において、まず重力たわみによって、ガラスを曲げの縦成分に
対して輪郭鋳型上に成形し、その後堅固な成形下鋳型に対してプレス曲げして、複雑な曲
げの横成分を含む曲げを完成させる曲げ方法によって、ガラスシートを成形する方法が記
載されている。成形周期の持続時間を最小化するため、かつ輪郭鋳型から成形下鋳型にガ
ラスを移動させる間およびそれを輪郭鋳型に戻す間に輪郭鋳型に対するガラスの位置がず
れる可能性を最小化するために、成形下鋳型を持ち上げたり下げたりするように、特定の
速度周期が提供される。
【0009】
板ガラス内の損傷したガラスを交換することもまた可能である。例えば、GB2221
424において、板ガラスを嵌めた開口部を通した貫通に対する抵抗力を増加させるため
の方法であって、板ガラスを嵌めた開口部からガラスを取り外し、取り外したガラス、ま
たは実質的に同一の幾何学的形状の窓ガラスからなる積層板ガラス(少なくとも1つの熱
可塑性材料の中間層を用いたセメンティングによって、元の窓ガラスの寸法と実質的に等
しい寸法を有するように切り出され、かつ化学的焼き戻し処理に供されているより薄いガ
ラスシートが、それに固定されている)によって交換することを特徴とする、方法が記載
されている。
【0010】
しかしながら、特に自動車用途における積層板ガラスの光学的品質要件はより厳しくな
っており、積層板ガラスをフロントガラスとして車両に取り付ける時に典型的な、(角度
で傾斜したガラスを通して視覚方向を見た時の)透過の光学的歪みの増加をもたらすガラ
スの表面上のわずかな変形が、ますます受け入れられなくなってきている。
【0011】
例えば、WO2015/092385において、中間層材料の少なくとも1つのプライ
によって接合された、板ガラス材料の第1のプライおよび板ガラス材料の第2のプライを
含む積層板ガラスが記載されている。板ガラス材料の第1のプライは、第1の組成を有す
るガラスシートを含み、板ガラス材料の第2のプライは、第1の組成とは異なる第2の組
成を有するガラスシートを含む。積層板ガラスは、積層板ガラスの周辺の周りに延びる周
辺領域、および周辺領域内の表面圧縮応力を有する。エッジ圧縮もまた存在し、エッジ圧
縮の大きさは、周辺領域内の表面圧縮応力の大きさよりも大きい。この文章は、軽量フロ
ントガラスを達成する方法を教示する一方で、軽量フロントガラスに必要とされる光学的
パラメータは考慮されていない。
【0012】
WO2015/031594において、第1のガラス層、第2のガラス層、および第1
のガラス層と第2のガラス層との間の少なくとも1つのポリマー中間層を有する、積層体
構造が開示されている。いくつかの実施形態において、第1のガラス層は、第1および第
2の表面を有する強化ガラスから構成されてもよく、第2の表面は、中間層に隣接し、化
学的に研磨されており、第2のガラス層は、第3および第4の表面を有する強化ガラスか
ら構成されてもよい。第4の表面は、中間層に対向し、化学的に研磨されており、第3の
表面は、中間層に隣接し、実質的に透明なコーティングがその上に形成されている。別の
実施形態において、第1のガラス層はカーブしており、第2のガラス層は実質的に平面で
あり、第1のガラス層上に冷間成形され、これにより第2のガラス層の表面上に表面圧縮
応力の差が提供される。しかしながら、この文書に記載され、かつ標準的な積層手順を使
用して調製される積層体構造の光学的特性は、軽量積層板ガラスにとって最適なものでは
ない。
【0013】
2つのガラスシートおよび中間層を含む積層フロントガラスにおいて良好な透過光学、
つまり低い光学的屈折力を達成するためには、各々が中間層に背を向ける2つのガラスシ
ートの表面(しばしば表面1および4と呼ばれる)が可能な限り近い同一の曲率を有する
べきであることが既知である。
【0014】
加えて、Glass Processing Days,2003,pages 50
2-504から、車両フロントガラスの取り付け角度が光学的特性に影響を有することが
既知である。例えば、光学的屈折力の増幅は、取り付け角度とともに変動する。したがっ
て、フロントガラスに存在するあらゆる欠陥がより高い程度まで増幅されるため、取り付
け角度が増加するにつれて、より良好な光学的品質が必要とされる。そのような問題を克
服する1つの方法は、積層フロントガラスを作製するために使用されるガラスの光学的品
質を改善することであるが、受け入れられる商業的費用および収率で改善された光学的品
質のガラスを生産することは、常に可能ではない。
【0015】
この問題、および車両に取り付けた時に低減した光学的歪みを有する積層板ガラスを作
製する問題に対処する別の方法は、WO2016/030678に記載されている。この
特許出願において、積層板ガラスは、各々が一対の成形部材間で別個に成形され、その後
ともに積層された、板ガラス材料の第1および第2のシートを有する。板ガラス材料の第
1のシートを曲げる位置は、板ガラス材料の第2のシートを曲げる位置から計画的にオフ
セットされ得る。積層ステップ中、板ガラス材料の第1のシートは、横および/または縦
方向の位置変位によって板ガラス材料の第2のシートに対して変位してもよい。板ガラス
材料の第1および/または第2のシートは、積層後にその周辺エッジの少なくとも一部分
が整合するように切断してあってもよい。
【0016】
しかしながら、WO2016/030678において、発明者らは、車両に取り付けら
れたフロントガラスの光学的歪みを改善する位置から開始しており、ここで、ガラスシー
トの各々は、同じプロセスによって生産されているため、実質的に同一の形状および曲率
のものである。
【0017】
自動車産業において、板ガラスユニットの全体的な重量の低減を有する積層板ガラスに
対する増え続ける必要性が存在する。
【0018】
そのような軽量板ガラスユニットを達成する1つの方法は、非対称のガラスシートを使
用することである。つまり、フロントガラスを構成する個々のガラスシートは、厚さ、色
、または放射率などの1つ以上の特徴において異なる。例えば、WO2012/0730
30において、機械的強度を提供するための、1.9~2.4mmの範囲内の厚さを有す
るガラスの第1のプライと、ポリマー中間層と、0.8~1.4mmの範囲内の厚さを有
するガラスの第2のよりもずっと薄いプライとを含み、それにより板ガラスの全体的な重
量を低減する、積層板ガラスが記載されている。
【0019】
例えば、重力曲げプロセスを使用して、異なる厚さの軽量板ガラスユニットにおいて同
時に使用するためのガラスシートを生産することが可能である。あるいは、異なるプロセ
スを使用し、それにより該プロセスの各々によって提供される利点を利用して、軽量板ガ
ラスユニットにおいて別個に使用するための非対称のシートの各々を生産することが可能
である。例えば、良好な形状制御および応力レベル制御を確実にするために、単一ガラス
プレス曲げ操作を使用して、軽量板ガラスユニットの外ガラスプライを調製することが有
利であることが示されている。しかしながら、現在、このプロセスによって、同じ品質レ
ベルで軽量板ガラスユニットにおいて使用するための薄いガラスプライを成形することは
不可能である。したがって、WO2015/098385に記載の内プライの重力曲げプ
ロセスおよび化学的強化プロセスによって、軽量板ガラスユニットを調製することが提案
されている。残念ながら、このアプローチはしばしば、今日の現代的な積層フロントガラ
スの板ガラスの厳格な光学的要件を必ずしも満たさない積層フロントガラスをもたらす。
【0020】
したがって、内外ガラスプライが異なる成形プロセスもしくは道具細工を使用して調製
されるか、またはガラスプライが異なる時間に生産される、フロントガラスなどの非対称
かつ軽量の積層板ガラスを生産することができるプロセスに対する必要性が存在する。
【0021】
つまり、非対称であるが、車両に取り付けた時に低減した光学的歪みを有するガラスプ
ライを使用して、車両フロントガラスなどの積層板ガラスユニットを作製するプロセスに
対する必要性が存在する。つまり、フロントガラスの内領域が、特に改善された透過光学
を示すものである。
【0022】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うと、積層板ガラスを調製するためのプロセ
スであって、
i)第1の手順によって第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシー
トを提供するステップと、
ii)第2の手順によって第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシ
ートを提供するステップと、
iii)第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供する
ステップと、
iv)中間層材料をガラスシートに接着させるのに十分な温度および圧力で、第1およ
び第2のガラスシートならびに中間層をともに積層するステップと、を含み、
該プロセスが、
v)積層後に、第2のガラスシートの形状が第1のガラスシートの形状と実質的に同じ
になるように、中間層材料を2つのガラスシートに接着させるための積層中に、第1のガ
ラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型を第2のガラスシートに対して適用する
ステップをさらに含むことを特徴とする、プロセスが提供される。
【0023】
本発明の第1の態様の代替的な実施形態において、積層板ガラスを調製するためのプロ
セスであって、
i)第1の手順によって第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシー
トを提供するステップと、
ii)第2の手順によって第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシ
ートを提供するステップと、
iii)第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供する
ステップと、を含み、
iv)第1および第2のガラスシートならびに中間層が、中間層材料を2つのガラスシ
ートに接着させるように、90℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲
内の圧力でともに積層され、積層後、第2のガラスシートの形状が、第1のガラスシート
の形状と実質的に同じであることを特徴とする、プロセスが提供される。
【0024】
本発明に従うと、第1のガラスシートの厚さは、第2のガラスシートの厚さと異なって
もよい。あるいは、第1のガラスシートの厚さは、第2のガラスシートの厚さと同じであ
ってもよい。しかしながら、本発明のプロセスは好ましくは、異なる厚さのガラスシート
を積層する時、つまり好ましくは第1のガラスシートの厚さが第2のガラスシートの厚さ
とは異なる時に適用される。
【0025】
本発明に関して、本発明者らは、第1および第2のガラスシートの積層が好ましくは9
0℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じることを見出
した。あるいは、第1および第2のガラスシートの積層は好ましくは、95℃~130℃
の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じる。より好ましくは、第1お
よび第2のガラスシートの積層は、100℃~130℃の範囲内の温度で生じる。さらに
より好ましくは、第1および第2のガラスシートの積層は、100℃~125℃または1
00℃~120℃または95℃~110℃の範囲内の温度で生じる。しかしながら、最も
好ましくは、第1および第2のガラスシートの積層は、100℃~110℃の範囲内の温
度で生じる。上記の温度範囲の全ては好ましくは、8~16バールの範囲内の圧力と組み
合わせて使用される。
【0026】
積層ステップiv)は、オートクレーブ内の真空バッグおよび/またはリングを使用し
て実行され得る。その後、このステップは、80℃の範囲内の温度で実行され得る。
【0027】
様々な好適な中間層材料が使用され得るが、好ましくは中間層はポリビニルブチラール
を含むことが理解されるだろう。
【0028】
本発明の第1の態様に関して、第1のガラスシートは好ましくは、所望の形状にプレス
曲げされる。つまり、本発明の第1の態様に従うプロセスについて、第1のガラスシート
を所望の形状に形成するために使用される第1の手順は、プレス曲げを含む。また本発明
の第1の態様に従うプロセスに関して、第2のガラスシートを所望の形状に形成するため
に使用される第2の手順は、重力たわみ曲げを含む。
【0029】
第2のガラスシートの厚さは好ましくは、0.2mm~1.4mmの範囲内である。よ
り好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.5mm~1.0mmまたは0.5~0
.95mmの範囲内である。第2のガラスシートの厚さはまた、0.5~1.2mmの範
囲内であってもよい。
【0030】
第1のガラスシートの厚さは好ましくは、1.4mm~2.5mmの範囲内である。よ
り好ましくは、第1のガラスシートの厚さは、1.6mm~2.3mmの範囲内である。
第1のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.1mmの範囲内であってもよい。
【0031】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うと、本プロセスは好ましくは、
v)積層中に第2のガラスシートに対して鋳型を適用するステップであって、鋳型が、
第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形される、ステップをさらに含む。
【0032】
鋳型は、ガラス、セラミック、または金属から構成され得る。しかしながら、最も好ま
しくは、鋳型はガラスから構成される。つまり、本発明のプロセスの好ましい一実施形態
において、鋳型は好ましくは、第1のガラスシートと実質的に同じ形状である第3のガラ
スシートを含む。
【0033】
好ましくは、第3のガラスシーは、第1および第2のガラスシートの積層における使用
前にプレス曲げによって所望の形状に形成される。
【0034】
第3のガラスシートの厚さは好ましくは、1.4mm~2.5mmの範囲内である。よ
り好ましくは、第3のガラスシートの厚さは、1.6mm~2.3mmの範囲内である。
第3のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.1mmの範囲内であってもよい。
【0035】
加えて、第1および第3のガラスシートが好ましくは単一プレス曲げバッチプロセスで
調製されることが好ましい。したがって、第1および第3のガラスシートは、実質的に同
じ厚さである。
【0036】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うプロセスは好ましくは、
vi)積層前に、第2のガラスシートと、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形
された鋳型との間に箔層を提供するステップをさらに含む。
【0037】
つまり、本発明の第1の態様の第1の実施形態は好ましくは、vi)第2のガラスシー
トと第3のガラスシートとの間に箔層を提供するステップであって、第3のガラスシート
が、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形される、ステップをさらに含む。
【0038】
箔層は好ましくは、0.05mm~0.2mmの厚さを含む。加えて、箔層は好ましく
は、非粘着性フィルムを含む。好適な非粘着性フィルムは、箔層、第2のガラスシート、
および第3のガラスシートが積層プロセス後に容易に分離することを確実にする。好まし
い非粘着性箔層フィルム材料は、ポリエステルを含む。
【0039】
したがって、また本発明の第1の態様に関して、積層の完了後、第3のガラスシートお
よび箔層は、積層された第1および第2のガラスシートから取り除かれる。さらにより好
ましくは、積層後、箔層、および(好ましくは第3のガラスシートの形態で)第1のガラ
スシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型は、単一ステップで積層された第1および
第2のガラスシートから取り外される。
【0040】
したがって、本発明の第1の態様に従うと、積層板ガラスであって、
第1のガラスシートが、第1のガラス外面および第1のガラスシート内面を含み、
第2のガラスシートが、第2のガラスシート外面および第2のガラスシート内面を含み
、
第1のガラスシート内面および第2のガラスシート内面が、中間層の最も近くに位置し
、
積層板ガラス上の所与の点について、本発明の第1の態様のプロセスによって生産され
た積層板ガラス上の所与の点の第1のガラスシートの曲率と第2のガラスシートの曲率と
の差が、有意に低い値のものであり、受け入れられるほどに低い値の透過の光学的屈折力
が提供される、積層板ガラスが提供されることが好ましい。つまり、積層板ガラスが取り
付けられる車両の運転者によって見られる歪みは、低レベルである。
【0041】
つまり、本発明の第1の態様のプロセスに従って調製された積層板ガラスは、2つの同
一のガラスシートを積層することによって調製された積層板ガラスについて記録される値
の130%以下の透過の光学的屈折力の値を実証することが好ましい。
【0042】
そのような場合、積層板ガラスの透過の光学的屈折力は、ECE R43基準の協定に
従って記載されるデバイスによって、または企業ISRA Vision AGによって
もしくは「The requirements to test facilities
for inspection of the visual distortion
at vehicle panes in transmission」に関するVD
A 312推奨事項(2015年3月)などの適切なVDA推奨事項に従って調製された
デバイスによって測定される。
【0043】
本発明の第2の態様に従うと、車両における使用に好適であり、かつ本発明の態様の第
1の実施形態または代替的な実施形態に関して上述される特徴のいずれかに従って調製さ
れる積層板ガラスが提供され、該特徴は、単独または組み合わせのいずれかで存在する。
【0044】
また、本発明の第2の態様に従うと、車両における使用に好適であり、かつ本発明の態
様の第1の実施形態に関して上述される特徴のいずれかに従って調製される積層板ガラス
が提供され、該板ガラスは、積層中に第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形され
た鋳型を第2のガラスシートに対して適用しない積層法によって調製された積層板ガラス
と比較して、光学的屈折力の37%の改善を含む。
【0045】
本発明の第3の態様に従うと、本発明の第1および第2の態様の特徴の任意の組み合わ
せに従って調製され、車両に取り付けられる、積層板ガラスの使用が提供される。
【0046】
本発明の第1、第2、または第3の態様に従うと、積層板ガラスは、車両において使用
される任意のガラス物品であり得る。しかしながら、本発明の第1、第2、または第3の
態様に従う積層板ガラスが、車両のフロントガラスまたは車両のリヤウィンドウであるこ
とが好ましい。
【0047】
これより、以下の実施例および添付の図面を参照して、本発明の実施形態をほんの一例
として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に従って調製される積層板ガラスの簡略化した断面図である。
【
図2】本発明の第1の態様に従って積層フロントガラスを調製する方法の第1の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明の第1の態様に従って積層フロントガラスを調製する方法の代替的な実施形態の概略図である。
【
図4】積層フロントガラスの板ガラスについて記録される例示的な曲率測定のグラフ表示である。
【
図5】本発明に従って調製されるフロントガラスの板ガラスの内シートおよび外シートについて記録される曲率測定の例示的な比較を図示するグラフ表示である。
【
図6】従来の方法によって調製される内外ガラスシートで調製された、典型的な先行技術の軽量積層フロントガラスの影像である。
【
図7】本発明の方法に従って調製される積層軽量フロントガラスの影像である。
【
図8】本発明に従って積層フロントガラスの板ガラスを調製する方法の第1および第2の実施形態の要約的な流れ図である。
【0049】
本発明に関して、本発明者らは、ガラスシートのうちの一方の厚さが第2のガラスシー
トの厚さと比較して低減したものであり、かつガラスシートが異なる技術を使用してカー
ブした構造に形成されている、2つのカーブしたガラスシートまたはプライを有する車両
のフロントガラスなどの積層板ガラスの調製時に、本明細書にさらに記載される改変され
たガラス加工技術を使用して、より薄いガラスシートを、より厚く、より強剛なガラスシ
ートの曲率および形状に対して鋳造することに成功し得ることを見出した。
【0050】
本発明者らはまた、本発明のプロセスに従って記載される手順を使用して、積層フロン
トガラスにおける2つのガラスシートのカーブした形状の調和が達成され得ることも見出
した。それぞれ
図2および
図3に関し、かつそれらに図示されるように、本発明に従う方
法を、例として以下にさらに記載する。
【0051】
後述の方法の各々によって調製される積層板ガラスは好ましくは、曲率の各方向が互い
に直交している2つの方向にカーブしている。一方または両方の方向の曲率半径は好まし
くは、300mm~8000mmであり得る。
【0052】
図1に図示されるように、本発明の方法に従って調製される積層板ガラス10において
、好ましくは凹面14および対向する凸面16を有する第1のプライ(またはガラスシー
ト)12が提供される。凸面24および対向する凹面22を有する第2のプライ(または
ガラスシート)20もまた提供される。第1のプライ12の凹面14は、中間層25と接
触しており、第2のプライ20の凸面24もまた、中間層25と接触している。
【0053】
従来の命名法を使用すると、第1のプライ12の凸面16は、積層板ガラス10の「表
面1」(またはS1)と呼ばれる。第1のプライ12の凸面14は、積層板ガラス10の
「表面2」(またはS2)と呼ばれる。第2のプライ20の凸面24は、積層板ガラス1
の「表面3」(またはS3)と呼ばれ、第2のプライ20の凹面22は、積層板ガラス1
0の「表面4」(またはS4)と呼ばれる。
【0054】
本発明に関して、積層板ガラス10は、車両のフロントガラス(前部もしくは後部)、
車両のサンルーフ、車両の側部窓、または車両の後部窓などの車両の板ガラスであっても
よい。積層板ガラス10はまた、建築物の板ガラスであってもよい。
【0055】
方法1。
図2において、本発明の第1の態様に従って車両のフロントガラスなどの積層板ガラス
を調製する第1の方法の一実施形態の概略
図180が図示される。
【0056】
本方法の第1のステップにおいて、第1のガラスシート120は、例えば、フロントガ
ラスの板ガラスの所望の形状に形成される。これは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなどの平
坦なガラスシートを利用し、ガラスシートを必要とされるエッジプロファイルを有する形
状に切断することによって達成することができる。その後、ガラスシートを打ち延ばし可
能な状態まで加熱し、例えば、プレス曲げによって全体的に鋳造する。
【0057】
プレス曲げにおいて、本プロセスは、一対の補完的成形鋳型、つまり上成形鋳型および
下補完的成形鋳型を使用する。プレス曲げは一般に、少なくとも1つの加熱された成形鋳
型の使用を伴う。プレス曲げプロセスを使用して、例えば、1つ以上の方向に300mm
~8000mmの曲率半径を有する、必要とされるフロントガラスの形状にガラスシート
を形成する。
【0058】
次に、本発明に従って積層板ガラスを調製する第1の方法において、例えば、ソーダ石
灰ケイ酸塩ガラスの第2のより薄い平坦なシート160を、必要とされるエッジプロファ
イルを有する形状に切り出す。この第2のガラスシートはまた、例えば、重力またはたわ
み曲げプロセスを使用して、等しくまたはより小さくカーブした形状の所望のフロントガ
ラスの板ガラスにも鋳造される。つまり、フロントガラスの板ガラスの第1のガラスシー
トを成形するのに使用されるプロセスとは異なる成形プロセスによって、必要とされる形
状の第2のガラスシートが達成される。
【0059】
重力たわみ曲げプロセスにおいて、正確にサイズ決めされた平坦なガラスシートまたは
プライを曲げリングの上に置き、ガラスが打ち延ばし可能になり、かつ重力下で自由にた
わむ温度まで加熱する。たわみは、温度を低下させることによってガラスの打ち延ばし可
能性が低減するまで続く。薄いガラスプライを曲げようと努力する本発明の方法において
、積層板ガラスに使用するために最終的に必要とされる形状の第2のガラスシートは、重
力たわみ曲げプロセスによるこの段階では完全には達成されない。
【0060】
第1のガラスシートと同様に、1つ以上の方向に300mm~8000mmの曲率半径
を有する第2のガラスシートを鋳造する。しかしながら、第2のガラスシートは、第1の
ガラスシートよりもずっと薄い。第2のガラスシートは、第1のガラスシートの厚さより
も65%ほど薄くあってもよい。例えば、第1のガラスシートの厚さは、1.4mm~2
.5mmの範囲内または1.6mm~2.3mmの範囲内であってもよい。しかしながら
、第2のガラスシートの厚さは、0.2mm~1.4mmの範囲内または0.5mm~1
.0mmの範囲内であってもよい。第1のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.
1mmの範囲であってもよい。
【0061】
その後、第1および第2の事前鋳造されたガラスシートを、接着性中間層140によっ
て組み合わせ、ともに接合する。接着性中間層は、0.3mm~1.8mmの厚さの厚さ
範囲を有してもよく、または接着性中間層は、0.5mm~1.0mmの厚さ範囲を有し
てもよい。しかしながら、典型的には、接着性中間層材料は好ましくは、0.76mmの
厚さを有する。本発明の方法において使用され得る好適な接着性中間層としては、例えば
、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ(エチレン酢酸ビ
ニル)(PEVA)としても知られるエチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル酸エチル
メチル(EMA)、およびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。しかし
ながら、本発明の方法において使用される好ましい中間層は、ポリビニルブチラール(P
VB)である。
【0062】
その後、第1および第2の事前鋳型されたガラスシート120、160を、「事前ニッ
プ」プロセスにおいて、接着性中間層140でともに接合する。「事前ニップ」プロセス
は、ガラスシート120、160と接着性中間層140との間に閉じ込められた空気を取
り除くことを伴う。ガラスシートと接着性中間層との組み合わせに真空を適用することに
よって、空気を取り除いてもよい。あるいは、圧縮によって閉じ込められた空気を取り除
いてもよく、この場合、空気は、ガラスシートと接着性中間層との間から排出される。
【0063】
本方法の最終ステップにおいて、ガラスシート120、160および接着性中間層を、
ガラスシートおよび中間層を必要とされる形状の所望の積層板ガラスへと積層するオート
クレーブプロセスで、ともに接合する。つまり、ガラスシートおよび接着性中間層の積層
は、オートクレーブを使用して完了される。オートクレーブ内で、本発明の第1の方法に
従う積層プロセスの典型的な圧力範囲は、30~120分間の時間で10バール~16バ
ールの範囲内である。
【0064】
本発明の第1の方法に従う積層プロセスの典型的な温度範囲は、30~120分間の時
間で100℃~130℃の範囲内である。つまり、積層プロセスに用いられるオートクレ
ーブ温度範囲は、板ガラスの積層に典型的に使用される温度範囲よりも低い。
【0065】
好適な温度および圧力パラメータの選択により、ポリビニルブチラール(PVB)など
の中間層がガラスシート間に好適な接着性結合を形成することが可能となる。加えて、温
度および圧力パラメータは好ましくは、積層体構造内の流動が最小となり、故により薄い
ガラスシートまたはプライをより厚いガラスシートまたはプライの形状に追従させるよう
な方法で選択される。
【0066】
本発明の方法に従って調製される積層板ガラス10は、1つ以上の方向にカーブしてい
てもよい。1つ以上の方向の各々の曲率半径は、例えば、300mm~8000mmであ
り得る。積層板ガラスが2つの方向にカーブしている場合、曲率の各方向は、互いに好適
に直交している。
【0067】
本プロセスの積層段階の完了後、車両のフロントガラスなどの積層板ガラス180をオ
ートクレーブから取り出し、洗浄し、使用準備ができた状態にパッケージングする。
【0068】
本発明者らは、上述の方法を使用することによって、より薄い第2のプライ160の外
面190(S4)(車両に配置した際の内面)の曲率、および第1のより厚いプライ12
0の外面195の曲率が異なる程度が、標準的なプロセスおよびパラメータを使用して調
製した積層板ガラスにおけるプライの同じ表面よりも少ない、積層板ガラスを達成するこ
とが可能であることを見出した。
【0069】
より薄い第2のプライ160の表面190(S4)の曲率、および第1のより厚いプラ
イ120の外面195の曲率の増加の影響は、積層フロントガラスを通して見た時に明ら
かになり、(上述のように)光学的屈折力として測定される光学的歪みが、有意に低減す
ることである。
【0070】
表1において、本発明の第1の方法に従って積層板ガラスを調製するために、例えば、
オートクレーブ内で使用されるプロセスパラメータの要約が提供される。
【表1】
【0071】
表1に明記されるパラメータにおいて上述の方法を使用することによって、本発明者ら
は、より薄い内ガラスシートがより厚い外ガラスシートよりも柔軟であるという事実を利
用することによって、優れた積層板ガラスを達成することができる。好ましいパラメータ
範囲を使用して、(好ましくはPVBの形態の)中間層をガラスシートに接着させ、PV
Bの強剛性を維持しながら良好な積層性能を提供するのを可能にする条件で、オートクレ
ーブプロセスを実行することもまた可能である。これは、積層板ガラスの重要な特徴であ
り、車両において使用される積層板ガラスにとって特に重要な特徴である。
【0072】
より具体的には、本発明の方法を使用することによって、2つのガラスシートおよび中
間層の積層が、10~13バールの典型的なオートクレーブ圧力で、オートクレーブ温度
を135℃~140℃の典型的なオートクレーブ温度未満の温度まで、90℃~132℃
またはさらには100℃~130℃まで低下させることによって達成され得ることが理解
され得る。
【0073】
しかしながら、最も好ましくは、本発明の方法におけるオートクレーブプロセスに必要
とされるパラメータの慎重な選択によって、軽量フロントガラスを形成するための2つの
ガラスシートおよび中間層の積層が、そのような積層板ガラスについて記録される透過の
光学的屈折力(または目に見える歪み)が、標準的なオートクレーブ条件を使用して調製
された積層板ガラスについて記録される同じ値と比較して、有意に低減するような方法で
達成され得ることが見出されている。
【0074】
好ましくは、本発明の方法を使用して調製される積層フロントガラスの記録される光学
的屈折力は、2.1mmの厚さのガラスプライを有する標準的なフロントガラスについて
記録される同じ値の50%を超えない。
【0075】
本発明の方法によって調製される軽量積層板ガラスについて記録される光学的屈折力の
値はまた、従来の手段によって調製された軽量積層板ガラスについて得られる光学的屈折
力の値と比較して、有意に改善され、これは典型的には、標準的なフロントガラスについ
て記録される光学的屈折力の値の80%~110%を超える。
【0076】
方法2。
図3において、本発明の第1の態様に従って車両のフロントガラスなどの積層板ガラス
を調整する第2の方法の模式
図200が図示される。
【0077】
方法2において、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなどの(平坦であり得る)第1のガラスシ
ート220を、例えば、プレス曲げによって、上記の方法1に関して記載されるようにフ
ロントガラスの所望の形状に形成する。
【0078】
次に、第2のより薄い平坦なガラスシート260(ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなど)を
、必要とされるエッジプロファイルを有する形状へと切断する。その後、第2のガラスシ
ートは、例えば、これもまた方法1に関して上述される重力またはたわみ曲げプロセスに
よって、等しくまたはより小さくカーブした形状の所望のフロントガラスの板ガラスにも
鋳造される。つまり、フロントガラスの板ガラスの第1のガラスシートを成形するのに使
用されるプロセスとは異なる成形プロセスによって、必要とされる形状の第2のガラスシ
ートが再び達成される。
【0079】
方法1と同様に、1つ以上の方向に、例えば、300mm~8000mmの曲率半径を
有するガラスシートを鋳造することができる。第2のガラスシートは、第1のガラスシー
トよりもずっと薄く、2つのガラスシートは、異なる技術を使用して形成される。例えば
、第1のガラスシートの厚さは、1.4mm~2.5mmの範囲内または1.6mm~2
.3mmの範囲内であってもよい。しかしながら、第2のガラスシートの厚さは、0.2
mm~1.4mmの範囲内または0.5mm~1.0mmの範囲内であってもよい。
【0080】
その後、第1および第2の鋳造されたガラスシートを、接着性中間層240によって組
み合わせ、ともに接合する。接着性中間層は、これもまた上記の方法1に関して記載のと
おりであってもよく、好ましくは0.76mmの厚さを有する、好ましくはポリビニルブ
チラール(PVB)である。本発明の方法において使用され得る好適な追加の接着性中間
層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(PEV
A)としても知られるエチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル酸エチルメチル(EMA
)、およびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
しかしながら、上述の方法1とは対照的に、方法2は、2つの鋳造されたガラスシート
と接着性中間層との間から空気が排除される「事前ニップ」段階の前に、接着性中間層と
接触していない第2のガラスシートの外面(S4)290と成形された鋳型285との間
に、薄い箔層280が適用されるような改変を用いる。
【0082】
薄い箔層280は好ましくは、非粘着性フィルムであり、これを第2のガラスシート2
60と鋳型285との間に置いて、傷付きを防止する。好適な薄い箔としては、例えば、
Hostophan FilmsまたはMitsubishi Polyester F
ilm GmbHからHostaphan(登録商標)およびDiafoil(登録商標
)の商品名で入手可能なポリエステルフィルムを挙げることができるが、これらに限定さ
れない。
【0083】
整形された鋳型285は好ましくは、第1のガラスプライ220のプロファイルに適合
するようにサイズ決めされ、成形される。鋳型は、例えば、プラスチック、ガラス、また
はセラミック材料などの好適な材料から構成され得る。
【0084】
しかしながら、より好ましくは、鋳型は、外ガラスシート220の調製に使用されるも
のと同じバッチプロセスによって調製され、それにより第1のガラスシートと実質的に同
じ形状になるように形成されたガラスシートである。この鋳型は、本明細書において従属
鋳型または従属ガラスと呼ばれる。
【0085】
その後、第1および第2の事前鋳造されたガラスシート220、260を、
図3に示さ
れる配置300で、薄い箔280および従属鋳型またはガラス285と組み合わせて、「
事前ニップ」プロセスで接着性中間層240とともに組み合わせる。つまり、第1のガラ
スシート220の面295および従属鋳型またはガラス285の面298が、「事前ニッ
プ」構造の2つの外面を形成し、かつ第2のより薄いガラスシート260が、第1のガラ
スシート220および外ガラスシート285から、第1のガラスシート側の中間層材料2
40によっておよび従属ガラス285側の薄い箔層280によって分離されている。
【0086】
その後、ガラスシート220、260と接着性中間層240との間に閉じ込められた空
気を、例えば、真空抽出技術またはニップローラープロセスを使用して、方法1にあるよ
うに取り除く。
【0087】
その後、ガラスシートおよび接着性中間層の積層は、オートクレーブを使用して完了さ
れる。本発明の第2の方法においてオートクレーブ積層に使用される圧力範囲は、典型的
には30~60分間の時間で10バール~13バールの範囲内である。第2の方法に従う
積層に使用される温度範囲は、典型的には30~60分間の時間で90℃~132℃また
はさらには100℃~110℃の範囲内である。本発明に従う第2の方法の好ましい一実
施形態において、およそ45分間の時間で、積層プロセスの温度は105℃辺りであって
もよく、圧力はおよそ10バールであってもよい。
【0088】
方法2における好適な温度および圧力パラメータの選択により、ポリビニルブチラール
(PVB)などの中間層がガラスシート間に好適な接着性結合を形成することが可能とな
る。つまり、温度および圧力パラメータは好ましくは、積層体構造内の流動が最小となり
、故により薄いガラスシートまたはプライを、より厚いガラスシートまたはプライの形状
およびまた従属ガラスの形状にも追従させるような方法で選択される。加えて、「事前ニ
ップ」プロセスにおいて真空リングまたは真空バッグを用いて、従属ガラスを定位置に保
持する場合、これがオートクレーブプロセス中にも使用され得ることが好ましい。
【0089】
オートクレーブは好ましくは、本発明に従う積層プロセスにおいて用いられる一方で、
当業者であれば、必要に応じて、オートクレーブプロセスについて上記に概要を述べた好
適なパラメータを使用して、真空リングまたは真空バッグから真空に引くために、オート
クレーブの代わりに真空ポートを備えた炉を利用することもまた可能であることを理解す
るだろう。
【0090】
結果として調製される積層板ガラスは、1つ以上の方向にカーブしていてもよい。1つ
以上の方向の各々の曲率半径は、300mm~8000mmであり得る。積層板ガラスが
2つの方向にカーブしている場合、曲率の各方向は、互いに好適に直交している。
【0091】
積層プロセスの完了後、フロントガラスなどの積層板ガラス構造は、オートクレーブか
ら取り出すことができる。その後、従属鋳型またはガラス285および薄いフィルム28
0を積層された第1および第2のガラスシートから取り除いて、積層板ガラス400を得
ることができ、これは、洗浄後に使用準備ができた状態となる。
【0092】
加えて、薄い箔層280の使用により、従属ガラス鋳型285から内ガラス層260を
容易に分離することが可能となり、内ガラス層の表面290および従属ガラス鋳型286
の内面284もまた、傷付きから保護される。従属ガラス鋳型を積層されたガラスプライ
から分離した後、方法2の第2の反復において従属ガラス鋳型を再使用することが可能で
ある。従属ガラス鋳型は、再び従属鋳型として使用してもよく、またはあるいは、従属ガ
ラス鋳型は、第1のガラスシート220として使用してもよい。この方法において、方法
2は、従属ガラス鋳型が再使用され得るために、それが過剰量の廃棄ガラスの生成を回避
すること、および加えて、本方法によって調製される積層板ガラスが改善された光学的特
性を有することなどの利点を提供する。
【0093】
本発明者らは、上述の方法2を使用することによって、第2のシート260の内面29
0(S4)の曲率および第1のシート220の外面295の曲率が実質的にまたはほとん
ど同一である、積層板ガラスを達成することが可能であることを見出した。
【0094】
つまり、本発明の方法を使用することによって、本発明者らは、第2のより薄いガラス
シート(または内ガラス)が第1のより厚いガラスシート(または外ガラス)の形状を取
るように適応させることが可能であることを見出した。
【0095】
本発明者らはまた、本発明の方法における使用に好ましい従属ガラスまたは鋳型285
が、第1のガラスシートと同じプロファイルに追従し、かつ例えば、第1のガラスシート
と同じプレス曲げバッチプロセスで形成され得る、別の成形された第1のガラスシートで
あることも見出した。
【0096】
上述の本発明の実施形態において調製される積層板ガラスは好ましくは、透明フロート
ガラスなどの組成物を有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスシートを含む。例えば、ガラスシ
ートはまた、積層板ガラスに日射制御の手段を提供するための染色剤としての、酸化鉄も
含み得る。
【0097】
典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、例えば、69~74重量%のSiO2、
Al2O3、10~16重量%のNa2O、0~5重量%のK2O、0~6重量%のMg
O、5~14重量%のCaO、0~2重量%のSO3、および0.005~2重量%のF
e2O3を含み得る。
【0098】
ガラスシートはまた、通常最大2%の量で存在する他の添加剤、例えば、清澄助剤も含
有し得る。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物はまた、透過光で見た時にガラス組成物に所
望の色を与えるために、CO3O4、NiO、およびSeなどの他の着色剤も含有しても
よい。
【0099】
また、本発明の方法において使用されるガラスシートの各々のソーダ石灰ケイ酸塩ガラ
ス組成物は、同じであっても異なってもよい。
【0100】
加えて、本発明の方法において使用されるガラスシートのうちの1つ以上は、化学的に
強化されていてもよい。化学的強化(toughening)または強化(streng
thening)は、例えば、カリウム塩溶液(硝酸カリウムなど)でガラスシートを処
理することを伴い、この溶液に、300℃~460℃の範囲内の温度、より好ましくは4
00℃~460℃の範囲内の温度、最も好ましくは420℃~460℃の範囲内の温度(
およそ450℃など)でガラスシートを浸す。ガラスをカリウム塩に浸すと、ガラス表面
のナトリウムイオンが溶液からのカリウムイオンによって置換され、積層時にガラスシー
トに追加の衝撃抵抗力が与えられる。
【0101】
また、本発明の方法に従うと、外面S1は好ましくは、例えば、フロントガラスの周辺
の周りに延びる300mmのバンドにおいて、10MPa~20MPaの範囲の表面残留
圧縮応力を有し得る。
【0102】
つまり、例えば、積層板ガラスの第1のガラスシート120、220の凸面S1の表面
圧縮応力は、11MPa未満の純応力および25MPa超のエッジ圧縮を有する残留エッ
ジ応力を有するエッジ領域を有し得る。
【0103】
図8において、本発明に従ってフロントガラスなどの積層板ガラスを調製する例示的な
方法の要約的な流れ図が提供される。
【0104】
最初に、ステップ321において、例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第1のシート
が提供される。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、透明であっても染色してあってもよい。透
明フロートガラスとは、参照により本明細書に組み込まれる、BS EN572-1およ
びBS EN572-2(2004)に定義される組成を有するガラスシートを意味する
。
【0105】
ステップ323で、第1のガラスシートを切断し、例えば、プレス曲げなどの従来の技
術を使用して、全体的に所望の形状に成形する。透明フロートガラスのガラスシートは、
例えば、1.4~2.5mmの範囲内の厚さを有し得る。ステップ325で、ガラスシー
トのエッジ(外ブランクとしても知られる)を平滑化または「エッジ加工」し、その後ガ
ラスシートを洗浄する。
【0106】
洗浄後、最終製品の必要に応じて、ガラスシートの一方または両方の主要表面に印刷を
施してもよい。例えば、最終製品が車両のフロントガラスである場合、ガラスシートの周
辺の周りに、光学的に不透明かつ/または導電性であり得るインクの層を印刷して、当該
技術分野において慣習的であるような遮蔽バンドを形成してもよい。
【0107】
ステップ327において、ガラスシートを、好適な炉内でガラス軟化温度まで加熱する
。その後、熱軟化したガラスを一対の補完的成形部材間でプレス曲げして、外シートに所
望の曲率を与えてもよい。プレス曲げにより、ガラスシートの形状の正確な制御が可能と
なる。プレス曲げ工程および操作の例は、WO2005/033026A1およびEP0
677486A2に記載されている。曲げられた後、例えば、透明フロートガラスの切断
されたシートは、フロントガラスなどの積層板ガラスの第1のシートとして進行する。
【0108】
第1のガラスシートの応力を制御するために、上および/または下プレス曲げ成形部材
を加熱して、外シートの残留エッジ応力および/またはエッジ圧縮を制御してもよい。上
および/または下プレス曲げ成形部材に必要とされる温度の選択によって、例えば、11
MPa未満の純応力および25MPa超のエッジ圧縮を有する残留エッジ応力を有するエ
ッジ領域を有する外シートを生産することが可能である。
【0109】
残留表面応力はまた、プレス曲げ操作の完了直後、曲がったシートを室温まで冷却する
前に、曲がったガラスシートの周辺の周りに冷気を向けることによっても制御することが
できる。
【0110】
好適な長さの時間にわたってガラスシートのエッジに冷気を向けて、冷却され、曲がっ
たガラスシートに必要とされる残留応力を生成した後、ステップ329で、曲がったガラ
スシートを、好適な焼き鈍し炉内で室温まで制御可能に冷却する。
【0111】
一連のガラスシートを曲げることは、いくつかの第1のガラスシートを次々に曲げるバ
ッチプロセスの一部を形成し得る。この方法において、あるバッチのガラスシートのうち
の1つを、積層板ガラスにおける第1のガラスシートとして使用してもよく、同じバッチ
のガラスシートの別のものを、後述のオートクレーブ手順中の従属ガラス鋳型として使用
してもよい。
【0112】
第1のガラスシートは、1つ以上の方向に曲がっていてもよい。1つ以上の方向の曲率
は、300mm~8000mmの曲率半径を有してもよい。
【0113】
積層板ガラスの第2のガラスシートは、以下のように生産される。
【0114】
ステップ331で、例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートが提供される。
ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、透明であっても染色してあってもよく、またはソーダ石灰
ケイ酸塩ガラスは、改変されていてもよい。この実施例において、ステップ331で、透
明フロートガラスシートが提供される。
【0115】
ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートは好ましくは、例えば、0.7mm以下辺り
の厚さを有してもよく、ステップ333で曲がっていない第1のガラスシート(または外
ブランク)と同じ周辺を有するように切断される。曲げられる前に、ソーダ石灰ケイ酸塩
ガラスの切断された第2のシートを、内ブランクと呼ぶこともできる。ソーダ石灰ケイ酸
塩ガラスの第2のシートは、例えば、0.2mm~1.4mmの厚さを有し得る。あるい
は、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートは、例えば、0.5mm~1mmの厚さを
有し得る。
【0116】
ステップ335で、第2のガラスシートは好ましくは、好適にエッジ加工され、曲げら
れる前に洗浄される。
【0117】
ステップ337で、第2のガラスシートを好ましくは好適なリング鋳型上に置いて、第
2のガラスシートをその周辺近くに支持する。その後、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを軟化
させ、重力の影響下でたわませるのに十分な温度まで、第2のガラスシートを加熱する。
この手順は従来、重力またはたわみ曲げと呼ばれる。ガラスは、曲がった第1のガラスシ
ートの形状に近い形状にたわむか、または曲がる。しかしながら、この時点では、第2の
ガラスシートの曲率は、第1のガラスシートと同じではない可能性がある。
【0118】
ステップ339で、温度を室温まで低減させるための制御された冷却を使用して、曲が
った第2のガラスシートを焼き鈍しする。
【0119】
ステップ340で、例えば、典型的には第2のガラスシートのナトリウムイオンがカリ
ウムイオンで化学的に交換されるイオン交換プロセスを使用して、ソーダ石灰ケイ酸塩ガ
ラスの曲がった第2のガラスシートを化学的に強化してもよい。
【0120】
1mm以下の厚さを有するガラスシートを熱強化することは困難である可能性があるが
、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの曲がった第2のガラスシートが熱強化されてもよいことも
また予想される。
【0121】
ステップ341で、(ステップ321~329後に)曲がった第1のガラスシートおよ
び(ステップ331~340後に)曲がった第2のガラスシートが提供される。
【0122】
ステップ342で、一対の曲がった第1および第2のガラスシートを洗浄し、ステップ
344で、0.3mm~1.5mmの厚さを有する、例えば、ポリビニルブチラールなど
の中間層材料のシートを、第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に配置しても
よい。
【0123】
この特定の実施例において、中間層材料は好ましくは、0.76mmの厚さのポリビニ
ルブチラール(PVB)のシートであり得るが、他の好適な接着性中間層材料が使用され
てもよい。
【0124】
あるいは、ステップ345で、曲がった第1のガラスシートと第2のガラスシートとの
間に好適な中間層を配置することに加えて、曲がった第2のガラス層の、中間層と反対側
に薄い箔層を置いてもよい。加えて、別の曲がった第1のガラスシート(または外ブラン
ク)の形態の鋳型を、薄い箔層の、曲がった第2のガラスシートと反対側に置いてもよい
。
【0125】
その後、ステップ346で、追加の箔層を有するか、または有しない、かつ従属鋳型(
追加の曲がった第1のガラスシートなど)を有する、PVBシートがそれらの間に入った
第1のガラスシートおよび第2のガラスシートの組み立て体を、方法1または方法2に関
して上記に定義される好適な条件を使用してオートクレーブして、2つのガラスシートを
ともに接着させる役割を果たすPVBを介して、第1のガラスシートを第2のガラスシー
トに接合する。
【0126】
その後、ステップ347において、箔層および従属鋳型を取り外し、ステップ349で
、従属鋳型が別の第1のガラスシートの形態である場合、これを洗浄し、ステップ341
に戻して、積層用の曲がった第1のガラスシートとして、または再び従属鋳型として再利
用してもよい。
【0127】
ステップ348で、このように生産された積層板ガラスを、顧客に配達される前に洗浄
および点検する。
【0128】
結果
本発明の第1の態様に従う方法の提案された有利な効果の証拠を提供するために、曲率
試験の偏向測定を使用して、積層板ガラスおよび個々のガラスシートを試験した。
【0129】
透明体の両表面の曲率、特に曲率の差が、透明体の光学的屈折力を提供することは、光
学の当該技術分野において一般に既知である。
【0130】
偏向測定法は、光沢のある表面の曲率の測定に使用される信頼できる手順である。積層
板ガラスにおいて、内外(または第1および第2の)ガラスシートの形状が異なる場合、
板ガラスの分析時に、「裏」表面、つまり分析が意図されない表面からのシグナルを抑制
するためのステップが採られる。これは、黒色の接着性テープを使用することによって達
成することができる。
【0131】
偏向測定試験法は、相偏向を測定する原理に基づくセンサー技術を使用する。
【0132】
偏向測定法において、表面の局所勾配を計算するために、正弦プロファイルを有するフ
リンジパターンを白色板の上に投射する。ビデオカメラが、試験中の表面を介したこのパ
ターンの反射を観察する。表面の局所勾配は、観察されたフリンジパターンの歪みから直
接計算することができる。この技術は、曲率を算出するのにデータを一度しか区別しなく
てよいため、範囲測定法と比較して利点を提供する。したがって、二度区別しなくてはな
らない範囲データの場合と比較して、高周波数ノイズの増幅が低減される。
【0133】
したがって、企業3D-Shape GmbHから入手可能な測定システムを使用して
、本発明の方法に従って調製された積層板ガラスの測定に使用される偏向測定法の計算を
実行した。そのようなシステムはまた、例えば、企業ISRA Vision AGから
も入手可能である。
【0134】
図4において、フロントガラスなどの積層板ガラスにおける単一のガラスシートまたは
プライの両方の曲率の測定を描写する、例示的なグラフ表示が図示される。
図4のグラフ
表示において、縦軸は、示される挿入写真において示されるフロントガラスの垂直線に沿
って測定される曲率値を(m
-1で)示す。縦軸は、フロントガラスのシートの上から下
までの距離をmmで測定する。グラフ(A)のより濃い線は、はっきりと異なる構造を図
示する第1のガラスまたは外ガラスの測定に関連する。グラフのより薄い線(B)は、中
央が平滑であるが、ガラスプライの上部分に明らか曲率の変化を有する、第2のガラスま
たは内ガラスの表面の測定に関連する。これらの構造の背景を考察することは、本発明の
目的ではない。本発明に関する技術の使用のためには、ガラスシートが、それらの形成に
関与する成形プロセスに応じて、異なる特徴を有することが十分である。
【0135】
本発明に従って、2つのサンプルの積層フロントガラスを、上述の方法2に従って調製
した。フロントガラスを目視によって分析し、(
図4の挿入写真に示される)各試料上の
同一の線に沿って曲率値を測定した。内面S4が抑制された状態で、積層フロントガラス
の外側(または外)面(つまり装着時に車両の外側に曝露される表面)、つまり表面S1
を測定した。外面S1が抑制された状態で、積層フロントガラスの内面、つまり表面S4
もまた測定した。
【0136】
図5は、2つのガラスプライの曲率の測定の一例を提供する。光学的方法を使用するこ
とによって、(ともに1/mで測定される)外ガラスの外面S1の曲率および内ガラスの
内面S4の曲率を、ガラス上の垂直線に沿った垂直位置の関数として図示する。
【0137】
曲率測定の結果を
図5に提供する。
図5において、より濃い色のカーブ(C)は、外(
S1)面の曲率値を描写し、より薄い色のカーブ(D)は、対応する内面S4の曲率値を
描写する。
図5から、測定の不確実性を除いて、両方の表面がともに「フィットする」こ
と、つまり各表面S1およびS4の曲率が一般的なプロファイルに追従することが明らか
である。つまり、
図5に示されるデータを分析することによって、S1およびS4の両方
の表面の曲率データが平均で0.0101m
-1だけ異なり、最大の差がわずか0.02
6m
-1であることが見出される。したがって、このデータは、両方の表面が曲率に関し
てほぼ同一であることを確認する。
【0138】
したがって、
図5から両方の表面がほぼ同一の構造を呈することが理解され得る一方で
、対照的に、
図4は単一のガラスプライの相当する測定を図示し、ここにはガラスプライ
間に曲率の明らかな差が存在する。
【0139】
フロントガラスの内S4面および外S1面の曲率の整合の結果として、本発明に従って
調製された積層フロントガラスの透過光学は、有意に改善されている。つまり、外ガラス
シートS1の曲率値は、本発明の方法を使用して生産された内シートS4について記録さ
れる曲率値に実質的に適合し、積層フロントガラス上に現れるレンズ効果、透過光学的歪
み、または曇りは、最小である。
【0140】
本発明の方法によって生産される積層フロントガラスにおける透過光学的歪みまたは曇
りの改善はまた、
図6および
図7に描写されるように、積層フロントガラスの目視による
比較からも明らかである。
【0141】
図7は、本発明に従って調製された積層軽量フロントガラスの画像であり、ここで、積
層体(220)の外ガラスシートは、プレス曲げプロセスを使用して形成される一方で、
内ガラスシート(260)は、代替的な手順、すなわち重力たわみ曲げプロセスを使用し
て形成され、2つのシートは、本発明の方法に従って積層されている。
【0142】
図6は、プレス曲げされた外ガラスシートが、鋳型との直接的で完全な表面接触によっ
て所望の形状へと完全に成形され、内ガラスシートが、重力曲げによって調製される、既
知の方法によって調製された軽量積層フロントガラスの絵画表示である。
【0143】
図6から、フロントガラスが斑状の外観を有し、フロントガラスにわたって明らかな灰
色の陰影の非均一な斑点があることが理解され得る。この灰色の陰影は、フロントガラス
の内領域で特に明らかである。フロントガラスの灰色の色彩のそのような急速な変化は、
フロントガラス内の急速に変化する光学的屈折力、ならびに故に所望されない光学的効果
の性質および数の増加を示す。
【0144】
対照的に、
図7の積層フロントガラスの目視から、積層フロントガラスがより均一な色
彩を呈し、斑状の陰影の斑点を有しないことが理解され得る。結果として、このフロント
ガラスの透過光学は、改善されている。
【0145】
本発明の方法によって生産された積層フロントガラスの歪み効果を評価するために、積
層フロントガラスを通した光の透過もまた、フロントガラス全体の光学をミリジオプトリ
(mdpt)で測定することができる機器システムによって測定した。
【0146】
使用される機器システムは、光学的屈折力を測定することができる。市場には、この機
能を実行することができるいくつかの機器が存在する。これらのシステムは、単一の光源
からの光を、フロントガラスを通して白色のスクリーン上に投射することによって機能す
る。その後、カメラが(「影絵」と呼ばれる)フロントガラスの画像を撮影し、フロント
ガラスの光学的屈折力をミリジオプトリで計算する。
【0147】
以下の評価において、垂直方向に偏向および歪みを引き起こす屈折力(つまり、垂直成
分)のみを測定した。以前に言及したとおり、機器システムは、ECE R43基準の協
定に従って、または企業ISRA Vision AGによってもしくは「The re
quirements to test facilities for inspec
tion of the visual distortion at vehicle
panes in transmission」に関するVDA 312推奨事項(2
015年3月)などの適切なVDA推奨事項に従って調製されたデバイスによって機能す
る。
【0148】
したがって、本発明に従って調製された積層フロントガラスの光学的屈折力は、垂直方
向から61°の典型的な取り付け角度を使用して測定した。(ECE R43またはVD
A312に記載される)いわゆる視覚帯域Aに従って測定される光学的屈折力の範囲値を
報告する。
【0149】
様々な積層フロントガラスの光学的屈折力を記録し、上述のように影像を撮影した。評
価の結果を表4に提供する。
【表2】
【0150】
したがって、本発明の方法に従うと、改善された視覚的外観および光学的パラメータを
有する軽量フロントガラスを生産することが可能であることが理解され得る。