(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20241024BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241024BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241024BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241024BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241024BHJP
B01J 2/04 20060101ALI20241024BHJP
B01J 2/14 20060101ALI20241024BHJP
B01J 2/16 20060101ALI20241024BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20241024BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20241024BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20241024BHJP
B01F 23/43 20220101ALI20241024BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20241024BHJP
F26B 17/10 20060101ALI20241024BHJP
B05B 7/16 20060101ALI20241024BHJP
B01J 13/04 20060101ALI20241024BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/05
A61K9/16
A61K47/44
A61K47/36
A61K47/26
B01J2/04
B01J2/14
B01J2/16
B01J2/00 A
B01J2/20
B01F23/41
B01F23/43
B01J8/24
F26B17/10
B05B7/16
B01J13/04
B01F101:22
(21)【出願番号】P 2022500676
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2020067401
(87)【国際公開番号】W WO2021018479
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】102019211195.5
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522006465
【氏名又は名称】エイディーディー・アドヴァンスト・ドラッグ・デリヴァリー・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ノーヴァク・ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・ミヒャエル
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219349(JP,A)
【文献】特開2000-334288(JP,A)
【文献】特表2001-526221(JP,A)
【文献】特表2019-507125(JP,A)
【文献】特表2005-525093(JP,A)
【文献】特開2012-072190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための方法であって、マトリクス液体が、カンナビノイドを溶解する第1の液体と、前記第1の液体と共にエマルションを形成する第2の液体と、前記第1の液体もしくは前記エマルション中に溶解したカンナビノイドとから製造される方法において、前記マトリクス液体が、流動化装置(18)内で、噴霧造粒、噴霧凝集もしくは噴霧カプセル化により、対流しながらカンナビノイド顆粒へと乾燥されることを特徴とする方法。
【請求項2】
最初にカンナビノイドが前記第1の液体中に溶解され、その後、前記第1の液体が前記第2の液体と混合されてエマルションを形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最初に前記第1の液体と前記第2の液体が混合されてエマルションを形成し、その後、カンナビノイドが前記エマルション中に溶解されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の液体が、脂質、アルコール、油および/またはそれらの任意の混合物の群からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記第2の液体が水溶液または水であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の液体に、前記第1の液体と混合する前に乳化剤が添加されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記エマルションに、対流乾燥の前に乳化剤が添加されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記マトリクス液体に、対流乾燥の前に乳化剤が添加されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記マトリクス液体が対流乾燥の前に均質化されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記エマルションが、50bar~250barの間の圧力で高圧均質化されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリクス液体が、流動化装置(18)内での対流乾燥の前に、1種または複数の担体物質上に施与されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記マトリクス液体が、1種または複数の担体物質上に施与された後に押出成形されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリクス液体が、1種または複数の担体物質上に施与された後にペレット化されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
流動化装置(18)内に担体粒子が供されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
溶液、エマルションまたはマトリクス液体に、対流乾燥の前に添加剤(36)が添加されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記方法が回分式または連続式に実施されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一つに記載の実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための
、装置(1)
の使用であって、
装置(1)は、1つまたは複数の容器(3)を有する容器システム(2)
であって、カンナビノイド入口(5)、脂質、アルコール、油および/またはそれらの任意の混合物の群からなる第1の液体のための液体入口(6)、第2の液体のための液体入口(11)、およびマトリクス液体出口(14)を有
する、前記マトリクス液体を製造するための容器システム(2)を備え、ならびに
、前記容器システム(2)の前記マトリクス液体出口(14)と流体接続された、対流の流動化装置(18)として形成された乾燥機をさらに備えていることを特徴とする、
前記使用。
【請求項18】
流動化装置(18)が、噴流層装置(19)としてまたは流動層装置として形成されていることを特徴とする、請求項17に記載の
使用。
【請求項19】
複数の容器(3、3a、3b、3c)が相互に少なくとも部分的に流体接続していることを特徴とする、請求項17に記載の
使用。
【請求項20】
前記装置
(1)が、前記第1の液体用の第1の容器(3a)、前記第2の液体用の第2の容器(3b)および前記エマルション用の容器(3c)を有していることを特徴とする、請求項19に記載の
使用。
【請求項21】
エマルション用の前記容器(3c)が、前記第1または第2の容器(3a、3b)に相応していることを特徴とする、請求項20に記載の
使用。
【請求項22】
流動化装置(18)が、エマルションまたは溶液を噴霧化するためのノズルを備えていることを特徴とする、請求項17~21のいずれか一つに記載の
使用。
【請求項23】
前記ノズルが、1μm~200μmの液滴径の液滴を噴霧するように構成されていることを特徴とする、請求項22に記載の
使用。
【請求項24】
容器システム(2)と流動化装置(18)の間に、マトリクス液体を均質化するためのホモジナイザー(16)が配置されていることを特徴とする、請求項17~23のいずれか一つに記載の
使用。
【請求項25】
容器システム(2)と流動化装置(18)の間に、マトリクス液体を造粒するための造粒ユニットが配置されていることを特徴とする、請求項17~24のいずれか一つに記載の
使用。
【請求項26】
前記造粒ユニットが、高せん断造粒機、垂直造粒機またはロータディスク造粒機であることを特徴とする、請求項25に記載の
使用。
【請求項27】
前記造粒ユニットの後に、前記顆粒を押出成形するための押出機が配置されていることを特徴とする、請求項25または26に記載の
使用。
【請求項28】
ホモジナイザー(16)および/または造粒ユニットおよび/または押出機が、流体により相互に接続されていることを特徴とする、請求項24~27のいずれか一つに記載の
使用。
【請求項29】
前記第2の液体に、前記第1の液体と混合する前に乳化剤が添加されるか、前記第1の液体と前記第2の液体から形成されるエマルションであって、カンナビノイドが前記第1の溶液もしくは前記エマルション中に溶解された前記エマルションに、流動化装置(18)内での対流乾燥の前に乳化剤が添加されるか、または前記マトリクス液体に、流動化装置(18)内での対流乾燥の前に乳化剤が添加され、ならびに、
前記マトリクス液体が、流動化装置(18)内での対流乾燥の前に、1種または複数の担体物質上に施与されるか、または、流動化装置(18)内に担体粒子が供される
ことを特徴とする、請求項17~28のいずれか一つに記載の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための方法に関し、マトリクス液体が、カンナビノイドを溶解する第1の液体から、またはカンナビノイドを溶解する第1の液体と、第1の液体と共にエマルションを形成する第2の液体と、第1の液体もしくはエマルション中に溶解したカンナビノイドとから製造される。
【0002】
本発明はさらに、実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビノイドのとりわけ経口投与剤形を製造するための方法および装置は以前から従来技術に属している。
【0004】
WO02/064109A2(特許文献1)は、粘膜表面に脂溶性薬物を投与する際に使用するための医薬製剤を開示している。とりわけ、粘膜表面に脂溶性薬物を投与する際に使用するための医薬製剤であって、水和の際にエマルションを形成し、このエマルションが、脂溶性薬物、とりわけ作用物質として所定の比率でのカンナビノイドの特定の組み合わせを含む薬物を含有しており、この薬物が、粘膜表面に付着でき、かつその薬剤の制御放出を可能にする医薬製剤が提供される。
【0005】
US2016/0143972A1(特許文献2)では、カンナビノイドの固体投与剤形の製造方法が開示されており、このカンナビノイドの固体投与剤形は、実質的に水溶液中で可溶性である。この方法は、1種または複数の溶媒中でカンナビノイドおよび1種または複数の乳化剤を溶解して、1種または複数の組み合わせ溶液を得ること、さらに、1種または複数の溶媒を含む組み合わせ溶液から1種または複数の溶媒を乾燥して、カンナビノイドの固体投与剤形を得ることを含んでいる。
【0006】
欠点として、従来技術で挙げたカンナビノイドの固体投与剤形は、この固体投与剤形の粒径分布がさほど均質ではなく、加えて経口投与される、場合によっては固体の投与剤形の流動性が悪いことから、十分な体内吸収を示さず、それゆえカンナビノイドのバイオアベイラビリティが低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO02/064109A2
【文献】US2016/0143972A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、使用者のための適用範囲を拡張すること、およびカンナビノイドの体内吸収を高め、これによりカンナビノイドのバイオアベイラビリティを改善すること、および同時にカンナビノイドの固体投与剤形の流動性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、冒頭に挙げた種類の方法において、マトリクス液体を対流乾燥することによって解決される。好ましいのは、マトリクス液体を噴霧乾燥することであり、または流動化装置内で、噴霧造粒、噴霧凝集、もしくは噴霧カプセル化により、対流させながらカンナビノイド顆粒へと乾燥することである。意外にも、流動化装置、とりわけ噴流層装置または流動層装置内での、噴霧造粒、噴霧凝集、または噴霧カプセル化による、カンナビノイドを含有するマトリクス液体の対流乾燥の場合、カンナビノイド顆粒を水性環境中で改めて溶解することにより、第1および第2の液体からなる安定したエマルションが形成され、その際にはカンナビノイドの吸収性が明らかに改善されており、したがってより最適なバイオアベイラビリティが保証されることが発見された。カンナビノイドの改善された吸収性およびより最適なバイオアベイラビリティは、流動化装置内で対流乾燥する前のマトリクス液体中に含有されたエマルション粒子(水中油滴)に比べて、カンナビノイド顆粒を水性環境中で改めて溶解した後のより均質でより小さいエマルション粒子(水中油滴)から生じている。顆粒の水性環境中での溶解挙動も、ペレット(Pressling)のような従来の製品に比べて改善している。加えて意外にも、流動化装置内での対流乾燥の後の平均直径xおよび相当径の減少が確認された。カンナビノイド顆粒は、非常に良好にスティックパックに詰めることができ、または錠剤へと圧縮でき、またはカプセルへとさらに加工できる。
【0010】
幾つかのテルペンフェノール類の変換生成物および合成類似体をカンナビノイド(類)と言う。カンナビノイド(類)と類似の薬理学的特性を有する内因性物質、いわゆるエンドカンナビノイド(類)、および大麻植物とは違う植物の、カンナビノイドと類似のまたは同じ作用を有する物質、いわゆる植物性カンナビノイド(類)も、本件ではカンナビノイド(類)と言う。例えば、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビノール(CBN)、およびΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)などのうちの1種または複数を含み得る。
【0011】
本方法のこれに関する一発展形態に相応して、最初にカンナビノイドを第1の液体中に溶解し、その後、第1の液体を第2の液体と、エマルションを形成するために混合する。
【0012】
加えて本方法のこれに関する一形態では、最初に第1の液体と第2の液体を、エマルションを形成するために混合し、その後、カンナビノイドをエマルション中に溶解する。
【0013】
第1の液体は、脂質、アルコール、油、および/またはそれらの任意の混合物の群からなることが好ましい。第1の液体の選択は、例えばヒトの消化管内でのカンナビノイドの吸収性にとって非常に重要である。同時に第1の液体の選択は、場合によってはあり得る味マスキングの点でも重要である。ここでは、とりわけ油、例えばオレンジ油が考慮される。
【0014】
第2の液体が水溶液または水であることがさらに好ましい。
【0015】
本方法の非常に有利な一形態では、第1の液体は、1種類の油もしくは異なる油の混合物、とりわけ菜種油、オレンジ油、もしくはココヤシ油であり、および/または1種類のアルコールもしくは異なるアルコールの混合物、とりわけエタノール、好ましくは純度>80%のエタノールであり、第2の液体は水であり、したがって水中油型エマルションまたはアルコール溶液である。
【0016】
エマルションを製造および安定化するための助剤を乳化剤と呼ぶ。この乳化剤は、2種の相互に非混和性の液体、例えば油および水を、微分散化した混合物、いわゆるエマルションへと混合し、かつこのエマルションを安定化させるのに役立つ界面活性物質であることが好ましい。
【0017】
本方法の有利な一変形形態によれば、第2の液体に、第1の液体と混合する前に乳化剤を添加する。
【0018】
本方法のさらなる有利な一変形形態によれば、エマルションに、対流乾燥の前に乳化剤を添加する。
【0019】
さらに、マトリクス液体に、好ましくは対流乾燥の前に乳化剤を添加する。
【0020】
1種類の乳化剤の添加、または複数の乳化剤の添加も、第1および第2の液体がエマルション中で微分散化されるという利点を有しており、これにより、対流乾燥機、例えばドラム型乾燥機、真空乾燥機、またはとりわけ流動化装置、好ましくは噴流層装置もしくは流動層装置内での対流乾燥により良く適したマトリクス液体を製造することもできる。1種または複数の乳化剤、例えばHi-Cap 100(化工デンプン)またはその類似物の添加は、好ましくは撹拌装置もしくはその類似物を使って撹拌しながら、および/または温度作用下で、すなわち熱を供給もしくは排出しながら行うことが好ましい。
【0021】
さらに、本方法の追加的な有利な一形態によれば、マトリクス液体を対流乾燥の前に均質化する。エマルションを高圧均質化することが好ましく、特に好ましくは50bar~250barの間の圧力で、とりわけ好ましくは100bar~200barの間の圧力で、最も好ましくは125bar~175barの間の圧力で高圧均質化する。この均質化により、エマルション中に存在する第1の液体の液滴の平均直径が大きく減少し、これにより、互いの中に溶解しない第1および第2の液体からなる混合物が、より均質に、すなわちより一様になる。均質化、とりわけ高圧均質化に基づき、対流乾燥、とりわけ流動化装置内での対流乾燥に最適化されたマトリクス液体が生成される。
【0022】
マトリクス液体を、対流乾燥、とりわけ流動化装置内での対流乾燥の前に、1種または複数の担体物質上に施すことが有利である。マトリクス液体を対流乾燥前に1種または複数の担体物質上に施すことにより、カンナビノイドを含有する湿った顆粒が、担体物質の圧密化と同時に生成されることが好ましい。マトリクス液体を1種または複数の担体物質上に施した後に押出成形するか、またはマトリクス液体を1種または複数の担体物質上に施した後にペレット化することが好ましい。
【0023】
本方法の追加的な有利な一形態によれば、流動化装置内に担体粒子が用意される。担体粒子、とりわけ例えばマルトロデキストリン(Maltrodextrin)、マンニトール、セルロース、ラクトース、キシリトール、またはそれらからの混合物は、カンナビノイド顆粒を形作るための核として用いられる。部分的にマトリクス液体が蒸発し、マトリクス液体自体からなる噴霧乾燥された造粒核が生じる。
【0024】
溶液、エマルション、またはマトリクス液体に、対流乾燥の前に添加剤を添加することが有利である。添加剤、とりわけ炭水化物、例えばマルトロデキストリン、デンプン、糖、例えばフルクトースもしくはサッカロース、塩、例えばステアリン酸マグネシウム、香料、またはその類似物を添加することにより、カンナビノイド顆粒の味マスキングを達成できる。これに加え、例えば錠剤を製造する際のカンナビノイド顆粒の圧縮性を適合させなければならないか、またはカンナビノイドの放出プロファイルを適合させるべき場合に、添加剤を適用することができる。
【0025】
本方法の好ましい一変形形態に相応して、本方法は回分式または連続式に実施される。設備パラメータおよびプロセスパラメータを変化させることにより、所望の最終生成物特性、例えば粒子径分布、溶解速度、かさ密度、または残留水分を、個別におよび最適に調整することができる。
【0026】
さらに、冒頭に挙げた種類の装置において、上気課題は、この装置が、マトリクス液体を製造するための、入口およびマトリクス液体出口を有する容器システムと、当該容器システムのマトリクス液体出口と流体接続された対流乾燥機とを備えることによって解決される。対流乾燥機が、噴霧乾燥装置として、ドラム型乾燥機として、真空乾燥機として、または流動化装置として形成されることが好ましい。意外にも、流動化装置、とりわけ噴流層装置または流動層装置内での、噴霧造粒、噴霧凝集、または噴霧カプセル化による、カンナビノイドを含有するマトリクス液体の対流乾燥の場合、カンナビノイド顆粒を水性環境中で改めて溶解することにより、第1および第2の液体からなる安定したエマルションが形成され、その際にはカンナビノイドの吸収性が明らかに改善されており、したがってより最適なバイオアベイラビリティが保証されることが発見された。カンナビノイドの改善された吸収性およびより最適なバイオアベイラビリティは、対流乾燥する前の、好ましくは流動化装置内で対流乾燥する前の、マトリクス液体中に含有されたエマルション粒子(水中油滴)に比べて、例えば、マトリクス液体を担体粒子上に噴霧して乾燥、とりわけ薄膜乾燥することで得られた、カンナビノイド顆粒を水性環境中で改めて溶解した後のより均質でより小さいエマルション粒子(水中油滴)から生じている。加えて意外にも、流動化装置内での対流乾燥の後の平均直径xおよび相当径の減少が確認された。カンナビノイド顆粒は、非常に良好にスティックパックに詰めることができ、かつ直接的に口腔内に投与するかもしくはコップの中の液体に投入することができ、または錠剤へと圧縮するかもしくはカプセルへとさらに加工することができる。
【0027】
本装置の有利な一形態によれば、流動化装置が、噴流層装置としてまたは流動層装置として形成されている。流動層装置に比べて噴流層装置は、例えば非常に少ない充填量での噴霧化を可能にし、それだけでなく噴霧領域での高いせん断力が、一方では均一な液体薄膜形成を補助し、もう一方では凝集傾向を最小限に抑える。
【0028】
容器システムが1つまたは複数の容器を有していることが有利である。複数の容器が相互に少なくとも部分的に流体接続していることが好ましい。本装置が、第1の液体用の第1の容器、第2の液体用の第2の容器、およびエマルション用の容器を有していることが特に好ましい。エマルション用の容器が、第1または第2の容器に相応していることがとりわけ好ましい。これにより、マトリクス液体の簡単な製造が、出発物質を別々に加工すべき場合にも保証される。
【0029】
好ましい装置の追加的な有利な一変形形態に相応して、対流乾燥機、好ましくは流動化装置が、エマルションまたは溶液を噴霧化するためのノズルを備えている。ノズル、好ましくは二流体ノズルが、1μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、特に好ましくは20μm~60μmの間の液滴径の液滴を噴霧するように構成されていることが好ましい。噴霧される液滴は、とりわけ好ましくは25μm~40μm、最も好ましくは30μmの液滴径を有している。ノズルおよびノズルに送り込まれる圧縮空気による液滴径の調整により、噴霧の際に発生するせん断力を正確に調整でき、これにより、噴霧されるエマルションまたは溶液の、非常に均質な液滴径を獲得または達成できる。液滴は、担体粒子、例えばセルロース、ラクトース、またはキシリトールに付加され、好ましくは薄膜蒸発が生じる。この薄膜蒸発により、担体粒子上で、エマルションまたは溶液の非常に均一な蒸発が生じる。
【0030】
本装置の有利な一変形形態によれば、容器システムと、乾燥機、好ましくは流動化装置との間に、マトリクス液体を均質化するためのホモジナイザーが配置されている。この均質化により、エマルション中に存在する第1の液体の平均直径が大きく減少し、これにより、互いの中に溶解しない第1および第2の液体からなる混合物が、より均質に、すなわちより一様になる。均質化、とりわけ高圧均質化に基づき、対流乾燥、とりわけ流動化装置内での対流乾燥に最適化されたマトリクス液体が生成される。
【0031】
さらに本装置の好ましい一発展形態では、容器システムと乾燥機の間に、マトリクス液体を造粒するための造粒ユニット、好ましくはウェットミキサー(Nassmischer)、特に好ましくは高せん断造粒機(High Shear Granulator)、垂直造粒機(Vertikalgranulator)、ロータディスク造粒機(Rotorscheibengranulator)、またはその類似物が配置されている。本装置のこれに関する一発展形態によれば、造粒ユニットの後ろに、顆粒を押出成形するための押出機が配置されている。
【0032】
ホモジナイザーおよび/または造粒ユニットおよび/または押出機が、流体により相互に接続されていることが好ましい。
【0033】
本装置の追加的な有利な一形態に相応して、入口およびマトリクス液体出口が、1つの容器システム開口部として形成されている。入口およびマトリクス液体出口のこのような形態の利点は、構造的に単純な溶解および比較的簡単な密閉にある。
【0034】
以下に、本発明を添付の図面に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための好ましい装置の第1の例示的実施形態の概略図である。
【
図2】実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための好ましい装置の第2の例示的実施形態の概略図である。
【
図3】噴流層装置内で乾燥させる前の水中油型エマルションの油滴(菜種油を使用)の累積分布曲線および密度分布曲線を示す。
【
図4】噴流層装置内で乾燥させたカンナビノイド顆粒を水中で溶解した後の水中油型エマルションの油滴(菜種油を使用)の累積分布曲線および密度分布曲線を示す。
【
図5】噴流層装置内で乾燥させる前の水中油型エマルションの油滴(ココヤシ油を使用)の累積分布曲線および密度分布曲線を示す。
【
図6】噴流層装置内で乾燥させたカンナビノイド顆粒を水中で溶解した後の水中油型エマルションの油滴(ココヤシ油を使用)の累積分布曲線および密度分布曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための好ましい装置1の第1の例示的実施形態の概略図を示している。
【0037】
装置1は、マトリクス液体を製造するための容器システム2を含んでいる。
図1に基づく例示的実施形態では、容器システム2が3つの容器3を有しており、これらの容器3は相互に流体接続されている。容器3の流体接続は、ここでは配管4を使って実現されている。
【0038】
容器システム2の、加熱または冷却のために二重壁で形成された第1の容器3aは、カンナビノイド入口5と、脂質、アルコール、油、および/またはそれらの任意の混合物の群からなる、ただし特に好ましくは菜種油、オレンジ油、またはココヤシ油からなる第1の液体のための液体入口6とを備えている。
【0039】
容器内壁7と容器外壁8の間に広がっている容器ジャケット空間9により、第1の容器3aは、容器ジャケット空間9を通って流れる熱媒体を使って温度調節可能である。第1の液体中に場合によっては良好に溶解性でないカンナビノイドをより良く溶解するために容器3aを加熱することが好ましい。温度調節装置は必ずしも必要ではない。
【0040】
それだけでなく第1の容器3aは、第1の液体を撹拌するためのモータ駆動式撹拌装置10を備えている。撹拌装置は必ずしも必要ではない。
【0041】
第2の液体、とりわけ水溶液または水のために、容器システム2は、液体入口11を有する第2の容器3bを備えている。
【0042】
第1および第2の容器3a、3bはそれぞれ配管4を介して第3の容器3cの入口12と接続している。カンナビノイドを含有する第1の液体と、第2の液体とは、配管4を介して第3の容器3c内に、例えばポンプを使って運ばれる。
【0043】
第3の容器3c内では、カンナビノイドを含有する第1の液体と第2の液体を混合することにより、第1および第2の液体が共にエマルションを形成し、マトリクス液体が製造される。このマトリクス液体は、第3の容器3c内のモータ駆動式撹拌装置13を使って撹拌しながら生成されることが好ましい。製造されたマトリクス液体は、マトリクス液体を製造するための容器システム2からマトリクス液体出口14を介して出ていく。
【0044】
マトリクス液体は、別の部分ステップによっても製造可能である。例えば、1つだけの容器内ですべての成分を一度に混ぜ合わせることによっても製造可能である。
【0045】
マトリクス液体は配管15を介し、マトリクス液体を均質化するためのホモジナイザー16、好ましくは高圧ホモジナイザー内に、例えばポンプを使って運ばれる。均質化されたマトリクス液体はその後、ホモジナイザー16から配管17を介して流動化装置18内に、例えばポンプを使って運ばれる。
【0046】
図1の例示的実施形態では、乾燥機が、実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための流動化装置18として形成されており、この流動化装置18は、ここでは噴流層装置19として形成されている。噴流層装置19の構造は下から上に、拡散室20、プロセス空間21、膨張ゾーン22、および排気部23を備えている。
【0047】
製造すべきカンナビノイド顆粒の乾燥に必要なプロセスガス24が拡散室20に供給され、そこでプロセスガス24は拡散し、かつスリット開口部25およびプロセスガス偏向部26を経て、プロセス空間21内に好ましくはある種の自由噴流として入っていく。
【0048】
さらに、任意選択で膨張ゾーン22の機械断面を拡大でき、これによりプロセスガス流の速度は上に行くにつれて低下する。プロセスガス24は、塵埃除去システム27によって、とりわけフィルターカートリッジまたはテキスタイルフィルター要素によって浄化された排ガス28として噴流層装置19を出ていくことが好ましい。
【0049】
プロセス空間21内には、出発原料と称される担体粒子、例えばマンニトール、セルロース、キシリトール、またはその類似物があり、担体粒子は、プロセスガス24によって上へ、塵埃除去システム27の方向に運び去られる。プロセス空間21の上側領域およびその上にある膨張ゾーン22では、プロセスガス速度が低下していくことで、上に向かって流れている担体粒子がプロセスガス流から脇に抜け出て、プロセス空間21に再び落ちてくる。プロセス空間21の下側領域は、傾斜した側面28によって画定されている。この傾斜した側面28に基づき、担体粒子は重力の作用下で、還流ゾーン29を経てスリット開口部25の方向に運ばれ、そこで引き続きプロセスガス24によって再びプロセス空間21に運び去られる。
【0050】
このメカニズムにより、担体粒子の非常に均等な固体循環30が形成される。プロセス空間21の下側領域には、1つまたは複数の噴霧装置31、好ましくは噴霧ノズルまたはその類似物が配置されており、この噴霧装置31は、プロセスガス24と同じ方向に上に向かって噴霧し、マトリクス液体を導入するために用いられる。プロセス空間21の下側領域でのマトリクス液体のこのような導入を、ボトムスプレーと言う。
【0051】
ノズル、好ましくは二流体ノズルは、1μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、特に好ましくは20μm~60μmの間の液滴径の液滴を噴霧するように構成されている。噴霧される液滴は、とりわけ好ましくは25μm~40μm、最も好ましくは30μmの液滴径を有している。ノズルおよびノズルに送り込まれる圧縮空気による液滴径の調整により、噴霧の際に発生するせん断力を正確に調整でき、これにより、噴霧されるエマルションまたは溶液の、非常に均質な液滴径を獲得または達成できる。液滴は、担体粒子、例えばセルロース、ラクトース、またはキシリトールに付加され、好ましくは薄膜蒸発が生じる。
【0052】
噴流層装置19のプロセス空間21の噴霧領域32での非常に有利な熱伝達および物質移動ならびに高い担体粒子循環に基づき、マトリクス液体のほとんどが担体粒子に堆積し、これにより、担体粒子の粒子表面を均一に濡らすことが達成される。この均一な濡れは、同時に噴霧領域32と還流ゾーン29の間の粒子循環が高い場合、担体粒子上に非常に均一な液体薄膜を形成させる。乾燥プロセスにより、マトリクス液体は蒸発し、排ガス28と一緒に噴流層装置19を出ていく。マトリクス液体中に含有されるカンナビノイドは担体粒子の粒子表面に残り、したがって生じるカンナビノイド顆粒は非常に均等かつ均質に大きくなっていく。
【0053】
カンナビノイド顆粒の吐出33は、例えばオーバーフローによって、または定量吐出器、特にロータリバルブによって、またはさらに重力分級器(Schwerkraftsichter)、好ましくは分離ガスが送り込まれるジグザグ分級器(Zick-Zack-Sichter)もしくはライザー管分級器(Steigrohrsichter)によって実現できる。
【0054】
機械的アセンブリ34、例えば粉砕機、細断機などは、必要に応じて、顆粒形成プロセスのための造粒核として十分に細かい粒子を粉砕によって生成するために、プロセス空間21内に、好ましくは還流ゾーン29内に配置することができる。
【0055】
プロセス空間21またはその上にある機械部分、膨張ゾーン22および排気部23内に、任意選択で1つまたは複数の噴霧装置35を配置でき、この噴霧装置35は下に向かって噴霧することが好ましい。噴霧装置35を介して同様に液状のマトリクス液体を噴流層装置19のプロセス空間21に注入することができる。その代わりに、噴霧装置31、35の幾つかを介して液体の形態の添加剤36または別の成分37を噴霧し、これにより顆粒構造内に均質に埋め込むことができる。
【0056】
好ましい装置1では、容器システム2と、噴流層装置19として形成された流動化装置18との間に、マトリクス液体を造粒するための不図示の造粒ユニットを配置できる。これに加えて造粒ユニットの後ろに、顆粒を押出成形するための押出機を配置できる。ホモジナイザー16および/または造粒ユニットおよび/または押出機は、流体により相互に接続されていることが好ましい。
【0057】
図2では、実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための好ましい装置1の第2の例示的実施形態の概略図を示している。
【0058】
装置1は、マトリクス液体を製造するための容器システム2を備えている。
図2に基づく第2の例示的実施形態では、容器システム2が1つだけの容器3を有している。
【0059】
容器システム2の、加熱または冷却のために二重壁で形成された容器3は、カンナビノイド入口5と、脂質、アルコール、油、および/またはそれらの任意の混合物の群からなる、ただし特に好ましくは菜種油、オレンジ油、またはココヤシ油からなる第1の液体のための液体入口6と、第2の液体、とりわけ水溶液または水のための液体入口11とを備えている。
【0060】
容器内壁7と容器外壁8の間に広がっている容器ジャケット空間9により、第1の容器3aは、容器ジャケット空間9を通って流れる熱媒体を使って温度調節可能である。第1の液体中に場合によっては良好な溶解性でないカンナビノイドをより良く溶解するために容器3aを加熱することが好ましい。温度調節装置は必ずしも必要ではない。
【0061】
それだけでなく第1の容器3aは、第1の液体を撹拌するためのモータ駆動式撹拌装置10を備えている。撹拌装置は必ずしも必要ではない。
【0062】
容器3内では、カンナビノイドを含有する第1の液体と第2の液体を混合することにより、第1および第2の液体が共にエマルションを形成し、マトリクス液体が製造される。このマトリクス液体は、容器3内のモータ駆動式撹拌装置13を使って撹拌しながら生成されることが好ましい。製造されたマトリクス液体は、マトリクス液体を製造するための容器システム2からマトリクス液体出口14を介して出ていく。入口5、6、11およびマトリクス液体出口14は、この例示的実施形態では、1つの容器システム開口部38として形成されている。
【0063】
マトリクス液体は配管15を介し、マトリクス液体を均質化するためのホモジナイザー16、好ましくは高圧ホモジナイザー内に、例えばポンプを使って運ばれる。均質化されたマトリクス液体はその後、ホモジナイザー16から配管17を介して流動化装置18内に、例えばポンプを使って運ばれる。
【0064】
流動化装置を使ったさらなる対流乾燥プロセスは、
図1で説明した第1の例示的実施形態に相応して行われる。
【0065】
追加として、生成されたカンナビノイド顆粒を例えばドラムコータ内でコーティングすることができる。これは、カンナビノイド顆粒が、例えば胃液耐性コーティングまたは味マスキングを得られるという利点を有する。
【0066】
以下に、マトリクス液体の製造および流動化装置内でのマトリクス液体のさらなる加工に関する例を示す。
【実施例】
【0067】
例1
噴流層装置として形成された流動化装置内でのカンナビノイド顆粒の製造を、回分またはバッチ操作において、ボトムスプレー方式で行った。
【0068】
流動化装置内の出発原料として、マンニトール500gを使用した。
【0069】
マトリクス液体は、Hi-Cap 100 200g、マルトロデキストリン200g、水1365g、カンナビジオール(CBD)5g、および菜種油50gを有する。この場合、カンナビジオール(CBD)を第1の液体としての菜種油中に、ならびにマルトロデキストリンおよびHi-Cap 100を第2の液体としての水中に溶解させた。続いてCBDを含有する菜種油ならびにマルトロデキストリンおよびHi-Cap 100を含有する水が、共にエマルションを形成しながら混合され、それによりマトリクス液体が製造された。この場合、マルトロデキストリンおよびHi-Cap 100は、マトリクス液体中のマトリクス構造を形成するための添加剤として用いられている。
【0070】
噴霧速度は10~15g/minの間で選択した。製造されたカンナビノイド顆粒は、水中に良く溶解し、そこで安定した水中油型エマルションを形成した。カンナビノイド顆粒の残留水分は1.8%であった。
【0071】
マトリクス液体をその製造に続いて、レーザ回折システムCilas 1190 LD(Quantachrome)によって分析した。マトリクス液体のエマルション中に存在するCBD含有油滴の粒径を
図3に示している。累積分布曲線は、相当径x
10=1.17μm、x
50=7.97μm、およびx
90=18.37μmで、平均直径x=8.87μmを示している。加えて密度分布曲線はその2つのピークにより二峰性分布を示している。
【0072】
カンナビノイド顆粒を製造し、かつカンナビノイド顆粒を水中で改めて溶解することにより、水性環境中で安定した水中油型エマルションが形成された。
【0073】
水性環境中に溶解するカンナビノイド顆粒を水中で溶解し、レーザ回折システムCilas 1190 LD(Quantachrome)によりCBD含有油滴の粒径を改めて分析した。
図4がこの分析を示している。この場合、累積分布曲線は、相当径x
10=0.82μm、x
50=2.33μm、およびx
90=6.26μmで、平均直径x=3.01μmを示している。加えて密度分布曲線は単峰性分布を示している。油滴は、明らかにより小さな直径で、非常に均質な密度分布を示している。これは、CBDの明らかに改善された吸収性、したがってCBDのより最適なバイオアベイラビリティをもたらす。カンナビノイドのこの改善された吸収性は、より均質かつより小さいエマルション粒子から生じている。
【0074】
例2
噴流層装置として形成された流動化装置内でのカンナビノイド顆粒の製造を、回分またはバッチ操作において、ボトムスプレー方式で行った。
【0075】
流動化装置内の出発原料として、マンニトール250gおよびマルトロデキストリン250gを、すなわち1:1の割合で使用した。
【0076】
マトリクス液体は、Hi-Cap 100 200g、マルトロデキストリン200g、水1417g、カンナビジオール(CBD)5.5g、およびココヤシ油51gを有する。この場合、カンナビジオール(CBD)を第1の液体としてのココヤシ油中に、ならびにマルトロデキストリンおよびHi-Cap 100を第2の液体としての水中に溶解させた。続いてCBDを含有するココヤシ油ならびにマルトロデキストリンおよびHi-Cap 100を含有する水が、共にエマルションを形成しながら混合され、それによりマトリクス液体が製造された。この場合、マルトロデキストリンおよびHi-Cap 100は、マトリクス液体中のマトリクス構造を形成するための添加剤として用いられている。
【0077】
噴霧速度は例1に比べて上昇させた。これに加え、フィルターでの生成物損失を最小限に抑えるため、プロセス空気の体積流量を減らした。製造されたカンナビノイド顆粒は、水中に良く溶解し、そこで安定した水中油型エマルションを形成した。カンナビノイド顆粒の残留水分は3.4%であった。
【0078】
マトリクス液体をその製造に続いて、レーザ回折システムCilas 1190 LD(Quantachrome)によって分析した。マトリクス液体のエマルション中に存在するCBD含有油滴の粒径を
図5に示している。累積分布曲線は、相当径x
10=1.18μm、x
50=6.99μm、およびx
90=15.17μmで、平均直径x=7.58μmを示している。加えて密度分布曲線はその2つのピークにより二峰性分布を示している。
【0079】
カンナビノイド顆粒を製造し、かつカンナビノイド顆粒を水中で改めて溶解することにより、水性環境中で安定した水中油型エマルションが形成された。
【0080】
水性環境中に溶解するカンナビノイド顆粒を水中で溶解し、レーザ回折システムCilas 1190 LD(Quantachrome)によりCBD含有油滴の粒径を改めて分析した。
図6がこの分析を示している。この場合、累積分布曲線は、相当径x
10=0.90μm、x
50=2.48μm、およびx
90=6.24μmで、平均直径x=3.08μmを示している。加えて密度分布曲線は単峰性分布を示している。油滴は、明らかにより小さな直径で、非常に均質な密度分布を示している。これは、CBDの明らかに改善された吸収性、したがってCBDのより最適なバイオアベイラビリティをもたらす。カンナビノイドのこの改善された吸収性は、より均質かつより小さいエマルション粒子から生じている。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための方法であって、マトリクス液体が、カンナビノイドを溶解する第1の液体から製造されるか、またはカンナビノイドを溶解する第1の液体と、前記第1の液体と共にエマルションを形成する第2の液体と、前記第1の液体もしくは前記エマルション中に溶解したカンナビノイドとから製造される方法において、前記マトリクス液体が対流乾燥されることを特徴とする方法。
2.前記マトリクス液体が、噴霧乾燥されるか、または流動化装置(18)内で、噴霧造粒、噴霧凝集もしくは噴霧カプセル化により、対流しながらカンナビノイド顆粒へと乾燥されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.最初にカンナビノイドが前記第1の液体中に溶解され、その後、前記第1の液体が前記第2の液体と混合されてエマルションを形成することを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
4.最初に前記第1の液体と前記第2の液体が混合されてエマルションを形成し、その後、カンナビノイドが前記エマルション中に溶解されることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
5.前記第1の液体が、脂質、アルコール、油および/またはそれらの任意の混合物の群からなることを特徴とする、上記1~4のいずれか一つに記載の方法。
6.前記第2の液体が水溶液または水であることを特徴とする、上記1~5のいずれか一つに記載の方法。
7.前記第2の液体に、前記第1の液体と混合する前に乳化剤が添加されることを特徴とする、上記1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記エマルションに、対流乾燥の前に乳化剤が添加されることを特徴とする、上記1~7のいずれか一つに記載の方法。
9.前記マトリクス液体に、対流乾燥の前に乳化剤が添加されることを特徴とする、上記1~7のいずれか一つに記載の方法。
10.前記マトリクス液体が対流乾燥の前に均質化されることを特徴とする、上記1~9のいずれか一つに記載の方法。
11.前記エマルションが、好ましくは50bar~250barの間の圧力で、特に好ましくは100bar~200barの間の圧力で、とりわけ好ましくは125bar~175barの間の圧力で高圧均質化されることを特徴とする、上記10に記載の方法。
12.前記マトリクス液体が、流動化装置(18)内での対流乾燥の前に、1種または複数の担体物質上に施与されることを特徴とする、上記1~11のいずれか一つに記載の方法。
13.前記マトリクス液体が、1種または複数の担体物質上に施与された後に押出成形されることを特徴とする、上記12に記載の方法。
14.前記マトリクス液体が、1種または複数の担体物質上に施与された後にペレット化されることを特徴とする、上記12に記載の方法。
15.流動化装置(18)内に担体粒子が供されることを特徴とする、上記1~11のいずれか一つに記載の方法。
16.溶液、エマルションまたはマトリクス液体に、対流乾燥の前に添加剤(36)が添加されることを特徴とする、上記1~15のいずれか一つに記載の方法。
17.前記方法が回分式または連続式に実施されることを特徴とする、上記1~16のいずれか一つに記載の方法。
18.上記1~17のいずれか一つに記載の実質的に水性環境中に溶解性のカンナビノイド顆粒を製造するための装置(1)であって、前記マトリクス液体を製造するための、入口(5、6、11、12)およびマトリクス液体出口(14)を有する容器システム(2)、ならびに前記容器システム(2)の前記マトリクス液体出口(14)と流体接続された対流乾燥機を備えていることを特徴とする、装置(1)。
19.前記対流乾燥機が、噴霧乾燥装置として、ドラム型乾燥機として、真空乾燥機としてまたは流動化装置(18)として形成されていることを特徴とする、上記18に記載の装置(1)。
20.流動化装置(18)が、噴流層装置(19)としてまたは流動層装置として形成されていることを特徴とする、上記18または19に記載の装置(1)。
21.前記容器システム(2)が、1つまたは複数の容器(3、3a、3b、3c)を有していることを特徴とする、上記18~20のいずれか一つに記載の装置(1)。
22.複数の容器(3、3a、3b、3c)が相互に少なくとも部分的に流体接続していることを特徴とする、上記21に記載の装置(1)。
23.前記装置が、前記第1の液体用の第1の容器(3a)、前記第2の液体用の第2の容器(3b)および前記エマルション用の容器(3c)を有していることを特徴とする、上記21または22に記載の装置(1)。
24.エマルション用の前記容器(3c)が、前記第1または第2の容器(3a、3b)に相応していることを特徴とする、上記23に記載の装置(1)。
25.流動化装置(18)が、エマルションまたは溶液を噴霧化するためのノズルを備えていることを特徴とする、上記18~24のいずれか一つに記載の装置(1)。
26.前記ノズル、好ましくは二流体ノズルが、1μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、特に好ましくは20μm~60μmの間の液滴径の液滴を噴霧するように構成されていることを特徴とする、上記25に記載の装置(1)。
27.容器システム(2)と流動化装置(18)の間に、マトリクス液体を均質化するためのホモジナイザー(16)が配置されていることを特徴とする、上記18~26のいずれか一つに記載の装置(1)。
28.容器システム(2)と乾燥機(18)の間に、マトリクス液体を造粒するための造粒ユニット、好ましくは高せん断造粒機、垂直造粒機またはロータディスク造粒機が配置されていることを特徴とする、上記18~27のいずれか一つに記載の装置(1)。
29.前記造粒ユニットの後に、前記顆粒を押出成形するための押出機が配置されていることを特徴とする、上記28に記載の装置(1)。
30.ホモジナイザー(16)および/または造粒ユニットおよび/または押出機が、流体により相互に接続されていることを特徴とする、上記27~29のいずれか一つに記載の装置(1)。
31.前記入口(5、6、11、12)および前記マトリクス液体出口(14)が、1つの容器システム開口部(38)として形成されていることを特徴とする、上記18~30のいずれか一つに記載の装置(1)。