(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61M25/06 550
(21)【出願番号】P 2022501936
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005952
(87)【国際公開番号】W WO2021166960
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020026882
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0133438(US,A1)
【文献】国際公開第2015/115315(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282285(US,A1)
【文献】特開2001-224693(JP,A)
【文献】国際公開第96/002294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、
前記カテーテルに固定されるカテーテルハブと、
前記カテーテルに挿通された内針と、
前記内針を固定及び保持するグリップと、
前記グリップと別部材で構成され、前記カテーテルの外側を支持可能な第1支持部と、
前記グリップと別部材で構成され、少なくとも一部が前記第1支持部の対向位置にあって前記カテーテルの外側を支持可能な第2支持部とを備え、
前記第1支持部と前記第2支持部は、互いに解除可能に直接保持して
おり、
前記第1支持部は、前記グリップに対する前記カテーテルの相対移動を操作するための操作部である
カテーテル組立体。
【請求項2】
請求項
1記載のカテーテル組立体において、
前記操作部は、前記第2支持部との保持状態で、前記カテーテルの延在方向に沿って摺動可能であり、且つ前記操作部と前記第2支持部が重なり合う方向に離間不能である
カテーテル組立体。
【請求項3】
請求項
1又は
2記載のカテーテル組立体において、
前記操作部の少なくとも一部は、前記グリップに対して、前記操作部と前記第2支持部が重なり合う方向に離脱不能に係合している
カテーテル組立体。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記操作部は、前記カテーテルから離間する方向への撓みを防止する補強部を先端側に有する
カテーテル組立体。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記第1支持部は、
前記カテーテルに沿って延在する延在部と、
前記延在部から前記カテーテルを越えて突出する突出部と、
前記突出部から前記第2支持部に向かって延在して当該第2支持部と保持する保持部とを有する
カテーテル組立体。
【請求項6】
請求項
5記載のカテーテル組立体において、
前記第2支持部は、前記保持部が摺動可能に挿入されることで当該保持部を保持する被挿入部を有する
カテーテル組立体。
【請求項7】
請求項
6記載のカテーテル組立体において、
前記保持部及び前記被挿入部は、前記カテーテルの延在方向に沿って延在している
カテーテル組立体。
【請求項8】
請求項
5又は6記載のカテーテル組立体において、
前記突出部及び前記保持部は、前記カテーテルを挟んで一対設けられている
カテーテル組立体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のカテーテル組立体において、
前記第1支持部及び前記第2支持部のうち少なくとも一方は、前記グリップの先端よりも先方側において前記カテーテルを支持可能である
カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル及び内針の穿刺時に、カテーテルの外側を支持可能な構造を有するカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液や輸血等の導入部を処置対象(患者)に構築する際には、米国特許出願公開第2016/0256667号明細書に開示されているようなカテーテル組立体が使用される。このカテーテル組立体は、カテーテル(外針)に内針を挿通した多重針を有する。このカテーテル組立体の使用において、ユーザは、多重針を患者の体内に穿刺し、その後カテーテルを血管内に進入させ、さらにカテーテルから内針を抜去してカテーテルを留置する。
【0003】
この種のカテーテル組立体は、使用において、ユーザが患者に対して多重針を斜めに穿刺するために、グリップから露出した部分の多重針が処置対象に接触した際に撓み易い。このように、多重針が撓んでしまうと、多重針を穿刺していくことが難しくなる。そのため、米国特許出願公開第2016/0256667号明細書に開示のカテーテル組立体は、内針を固定している2つの支持部をグリップの先端部のカテーテルの外周近傍位置に配置することで、カテーテルを支持する構造となっている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、米国特許出願公開第2016/0256667号明細書に開示のカテーテル組立体は、カテーテルの外側を支持している上部分と下部分同士が直接保持していないため、上部分と下部分同士が離間し易く、穿刺時における多重針の支持性能が低いという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、カテーテルを一層確実に支持してカテーテル及び内針を良好に穿刺させることができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様に係るカテーテル組立体は、カテーテルと、前記カテーテルに固定されるカテーテルハブと、前記カテーテルに挿通された内針と、前記内針を固定及び保持するグリップと、前記グリップと別部材で構成され、前記カテーテルの外側を支持可能な第1支持部と、前記グリップと別部材で構成され、少なくとも一部が前記第1支持部の対向位置にあって前記カテーテルの外側を支持可能な第2支持部とを備え、前記第1支持部と前記第2支持部は、互いに解除可能に直接保持している。
【0007】
上記のカテーテル組立体は、カテーテルを一層確実に支持してカテーテル及び内針を良好に穿刺させることができるカテーテル組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図2】
図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
【
図3】
図3Aは、カテーテル操作部材を斜め下方向から見た斜視図である。
図3Bは、カテーテル操作部材の先端部分を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは、下支え部材を示す斜視図である。
図4Bは、下支え部材を下グリップに組み込んだ状態を示す斜視図である。
【
図5】カテーテル組立体の先端部分を示す部分正面断面図である。
【
図6】カテーテル組立体の先端部分を示す側面図である。
【
図7】
図7Aは、カテーテル組立体の穿刺時の状態を示す側面図である。
図7Bは、従来のカテーテル組立体の穿刺時の状態を示す側面図である。
【
図8】穿刺後にカテーテル操作部材を進出させた状態を示す側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るカテーテル組立体10は、
図1に示すように、処置対象(患者)に輸液、輸血又は採血等を行う際に用いられる医療機器であり、処置対象の体内にカテーテル12を挿入及び留置して体内と体外を導通させる。このカテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテル12(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)を挿入可能とする。なお、カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルを挿入可能な構成でもよい。また、カテーテル組立体10は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルを挿入するものでもよい。
【0011】
図1及び
図2に示すように、カテーテル組立体10は、使用前(穿刺前)の状態で、カテーテル12、内針14、カテーテルハブ20、内針ハブ30、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60を組み付けた内外針組立体16を備える。さらに、カテーテル組立体10は、内外針組立体16を収容すると共に、ユーザが把持するためのグリップ18(ハウジング)を備える。
【0012】
穿刺前状態の内外針組立体16は、カテーテル12及びカテーテルハブ20内を内針14が貫通し、内針14の針先15がカテーテル12の先端より突出した多重針11を形成している。カテーテルハブ20よりも基端側には、内針14が挿通されたセーフティ部材40が配置され、さらにセーフティ部材40の基端側に内針14を保持した内針ハブ30が配置される。カテーテル操作部材60は、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40の上方に配置され、ユーザの操作下にこれらの部材を進退させる。グリップ18内には、多重針11の基端側部分を含む内外針組立体16が収容され、このグリップ18に対して内針ハブ30が固定されている。
【0013】
本実施形態に係るカテーテル12は、適度な可撓性を有する管体であり、内部に複数のルーメン12a、12bを有するマルチルーメンタイプに構成されている。各ルーメン12a、12bは、カテーテル12の軸方向(矢印A方向)に延在し、カテーテル12の先端において先端開口12a1、先端開口12b1にそれぞれ連通している。例えば、ルーメン12aは、内針14を収容可能な円形状に形成され、ルーメン12bは、ルーメン12aの上方で円弧状の楕円に形成される。カテーテル12の長さは、14~500mm程度に設定され、好ましくは30~400mmの範囲内に設定され、より好ましくは76~200mmの範囲内に設定される。
【0014】
カテーテル12の構成材料は、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。なお、カテーテル12は、マルチルーメンタイプに限定されず、内針14が挿通されるルーメン12aのみからなるシングルルーメンタイプでもよいことは勿論である。
【0015】
カテーテル12の基端部は、かしめ、融着、接着等の適宜の固着手段により、カテーテルハブ20内の先端部に固着される。カテーテルハブ20は、カテーテル12が処置対象の血管内に挿入された状態で処置対象の皮膚上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル12と共に留置される。
【0016】
カテーテルハブ20は、マルチルーメンタイプのカテーテル12に対応して、分離した2つのハブ(メインハブ21、サブハブ22)を有する。メインハブ21は、カテーテル12に直接連結される部材であり、サブハブ22は、チューブ23を介してメインハブ21に連結される部材である。
【0017】
カテーテルハブ20(メインハブ21、サブハブ22)の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート・ブチレン・スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
【0018】
メインハブ21は、カテーテル12の基端側の軸に対して平行に延在する筒体であり、外周面上の所定位置にチューブ23が接続されている。メインハブ21の内部には、ルーメン12aに連通する内部空間21aと、ルーメン12bに連通する内部空間21bとが設けられている。内部空間21aの基端は、メインハブ21の基端開口21a1に連通している。一方、内部空間21bは、内部空間21aから分離し、メインハブ21内に挿入及び固着されたチューブ23の内腔23aに連通している。
【0019】
穿刺前状態において、メインハブ21には、基端開口21a1から内部空間21aの奥側(矢印A1側)に向かって弁部材24が挿入されている。弁部材24の軸心には、弾力的に開閉可能な弁孔24aが設けられている。弁部材24は、穿刺前状態で、内針14及びセーフティ部材40の先端が弁孔24aに挿入されることで、弁孔24aの内面とセーフティ部材40の外面が密着する。これにより弁部材24は、カテーテルハブ20とセーフティ部材40を嵌合状態とし、また内針14の穿刺時にメインハブ21の基端開口21a1からの血液の漏れを防止する。
【0020】
また、サブハブ22は、メインハブ21と同程度の太さの筒状に形成されており、先端部からチューブ23の基端部が挿入及び固着されている。サブハブ22の内部には、チューブ23の内腔23aに連通する内部空間22aが形成されている。内部空間22aの基端は、サブハブ22の基端開口(不図示)に連通している。穿刺前状態において、サブハブ22には基端開口を閉塞する閉塞部材25が接続されている。
【0021】
チューブ23は、カテーテル12と同様に、可撓性を有するように構成されている。チューブ23の延在方向途中位置には、チューブ23の内腔23aを開閉可能なクランプ26が予め取り付けられている。
【0022】
一方、カテーテル組立体10の内針14は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空状の管体に構成される。内針14の先端には鋭利な針先15が形成されている。内針14の内部には矢印A方向に沿って中空部14aが貫通形成され、この中空部14aは、針先15に設けられた先端開口14a1に連通している。
【0023】
内針14の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、あるいは硬質樹脂、セラミックス等があげられる。内針14は、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着手段により、内針ハブ30に強固に固着される。
【0024】
内針ハブ30は、内針14を直接保持し、矢印C2側に形成されたグリップ固定部31(下壁)を介してグリップ18に固定される。グリップ固定部31の下面には、下方向に向かって短く突出し、グリップ18との間で取付機構33を構成する複数の固定用凸部34が設けられている。
【0025】
セーフティ部材40は、カテーテルハブ20のメインハブ21及び弁部材24に挿入及び嵌合されることで、移動中のカテーテルハブ20に追従するように構成される。このセーフティ部材40は、進出に伴って内針14の外側を覆うカバー体41と、穿刺後に内針14の針先15から突出する鈍針50と、鈍針50を保持する鈍針ハブ51とを備える。
【0026】
カバー体41は、穿刺後の内針14を収容して保護する円筒状の先端カバー部42と、先端カバー部42の上部から基端側(矢印A2側)に延在する基端延在部43と、基端延在部43から幅方向外側に突出する一対の突出片44とを有する。また、基端延在部43と先端カバー部42が連結する箇所には、鈍針ハブ51が係合する係合用突部45が設けられている。
【0027】
先端カバー部42は、先端側が弁部材24に挿入及び密着されることで、弁部材24を含むカテーテルハブ20に摩擦嵌合される。また穿刺前状態において、先端カバー部42の基端は、内針ハブ30の先端に対向している。先端カバー部42に連結される基端延在部43は、穿刺前状態で、内針ハブ30の上部に沿ってグリップ18内の基端まで延在している。
【0028】
一対の突出片44は、幅方向(矢印B方向)外側に向かって内針ハブ30よりも突出し、グリップ18の側壁77付近(後記のレール壁96、98上)まで延在している。各突出片44は、セーフティ部材40の移動においてグリップ18と協働して矢印A方向にガイドを行うガイド機構46を構成している。また、矢印B1側の突出片44の側辺には、被係止凸部48が設けられている。被係止凸部48は、セーフティ部材40が進出した進出位置においてグリップ18の係止部100に係止されることで、カバー体41の進出及び後退を制限するセーフティ移動制限機構部49の一方を構成する。
【0029】
セーフティ部材40の鈍針50は、カテーテル12や生体に対する内針14の誤刺を防止するための棒部材(丸棒)であり、内針14の中空部14aに移動自在に収容される。鈍針50の先端は、内針14の針先15よりも鈍らな形状(例えば、研磨した平坦面)に形成され、穿刺前状態で、内針14の中空部14aにおける先端開口14a1の基端近傍位置に配置されている。鈍針50の先端は、セーフティ部材40の進出に伴って針先15(先端開口14a1)から露出される。
【0030】
鈍針ハブ51は、鈍針50を保持し、カバー体41の係合用突部45に係合することで内針14、内針ハブ30及びグリップ18に対して相対移動可能に構成される。鈍針ハブ51は、矢印A2側で鈍針50を保持する鈍針保持部52と、鈍針保持部52から矢印A1側に延在するアーム部53とを有する。
【0031】
鈍針保持部52は、内針ハブ30において内針14を固定している箇所よりも基端側の空間に配置される。鈍針ハブ51は、進出に伴い鈍針保持部52の先端面が内針14の固定箇所に接触すると、以降の鈍針ハブ51の進出が阻止される。
【0032】
アーム部53は、延在部分全体が幅方向に弾性変形可能に構成され、その先端には、穿刺前状態で係合用突部45に係合する係合端部54が設けられている。係合端部54は、鈍針ハブ51の移動が制限された段階で、カバー体41がさらに進出すると適宜弾性変形して、係合用突部45との係合を解除する。
【0033】
なお、セーフティ部材40は、内針14の針先15の誤刺を防止できれば、上記の構成に限定されるものではない。例えば、セーフティ部材40は、鈍針50や鈍針ハブ51を備えずカバー体41のみで構成されてもよい。
【0034】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、カテーテル操作部材60は、カテーテル組立体10においてユーザが操作するための操作部61を構成している。また、本実施形態に係るカテーテル操作部材60は、多重針11の穿刺時に、カテーテル12(多重針11)の外側を支持する第1支持部62でもある。カテーテル操作部材60を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ20であげた材料を適宜選択し得る。
【0035】
具体的には、カテーテル操作部材60は、矢印A方向に延在する操作板部63(延在部)と、操作板部63の基端に連なりカテーテルハブ20に係合するハブ係合部64と、ハブ係合部64の基端に連なりセーフティ部材40を収容する操作部筒部65とを有する。またカテーテル操作部材60は、ハブ係合部64から基端方向に延在してセーフティ部材40を覆う覆い部材66を有する。
【0036】
操作板部63は、ユーザの指が当てられてカテーテル12の延在方向に進退操作がなされて摺動する部位である。操作板部63は、薄く形成されることで、多重針11から離れる方向(操作部61と後記の第2支持部121が重なり合う方向)に湾曲可能な可撓性を有する。操作板部63の幅方向両側には、矢印A方向に延在する側縁63aが形成されている。操作板部63の上面には、複数のタブ67が設けられている。複数のタブ67のうち最も先端のタブ67aは、他のタブ67よりも突出している。さらに、操作板部63の下面には、複数のリブ68が短く突出している。カテーテル12は、複数のリブ68の下に配置される。
【0037】
そして、操作板部63の先端領域には、カテーテル12を支持するための操作支持部110が設けられている。操作支持部110は、操作板部63の下面側に形成され、カテーテル12(多重針11)を幅方向内側に配置するカテーテル支持構造111を有する。
【0038】
カテーテル支持構造111は、カテーテル操作部材60の幅方向中央部に設けられ、先端から矢印A2側に向かって所定長さ延在している。カテーテル支持構造111の基端は、タブ67aよりも矢印A2側に達している。このカテーテル支持構造111は、カテーテル12の矢印C1側に接触可能な基部112と、カテーテル12の矢印B方向に接触可能な一対の突条部113とを含んで構成されている。
【0039】
基部112は、操作板部63よりも若干下側(矢印C2側)にずれて形成され、カテーテル12に対向する下面112aの上下位置は、リブ68の突出端部と略一致している。
【0040】
一対の突条部113は、上記の基部112を間に挟むように構成され、操作板部63の下面から矢印C2側に突出している。操作板部63に対する各突条部113の突出量は、操作板部63に対する基部112の突出量よりも大きい。例えば、各突条部113は、基部112から、さらにカテーテル12の外径と同程度の長さ突出している。
【0041】
一対の突条部113の基端側には、操作板部63の下面に設けられた複数のリブ68のうち先端側の幾つかのリブ68aが連設されている。これらのリブ68aは、幅方向外側において、矢印A方向に短く延在するサイドリブ114に連設されている。サイドリブ114は、リブ68aよりも矢印C2側に突出し、グリップ18に対してカテーテル操作部材60の進退をガイドする機能を有する。
【0042】
カテーテル支持構造111は、穿刺前状態で、基部112と、一対の突条部113とで囲った支持空間111a(
図5参照)にカテーテル12を配置する。カテーテル支持構造111が矢印A方向に長いことで、カテーテル12は、カテーテル操作部材60の先端領域の長い範囲において、直線状に延在した状態が良好に維持される。
【0043】
また、操作支持部110は、操作板部63の下面側且つカテーテル支持構造111の幅方向外側に、矢印C2側に突出する一対の下突出ブロック115(突出部)と、各下突出ブロック115の突出端から延出する保持部116とを有する。一対の保持部116は、穿刺前状態で、後記の下支え部材120(第2支持部121)に保持されることで、カテーテル操作部材60の先端を矢印C方向(操作部61と第2支持部121が重なり合う方向)に離間不能とする。
【0044】
すなわち、一対の下突出ブロック115及び一対の保持部116は、操作板部63の先端から折り返した形状を呈している。また、各下突出ブロック115及び各保持部116は、カテーテル支持構造111に対して所定の隙間117をあけて設けられている。
【0045】
一対の下突出ブロック115は、矢印C2側に向かってカテーテル支持構造111(一対の突条部113)よりも大きく突出している。また、各下突出ブロック115の幅(肉厚)は、突条部113の幅(肉厚)よりも充分に大きい。各下突出ブロック115の先端面115aは、矢印C2側に向かって矢印A2側に湾曲するように形成されている。
【0046】
一対の保持部116は、各下突出ブロック115の下端部(矢印C2側の突出端)に連なり、矢印A2側に向かって直線状に延出している。各保持部116の延出長さは、下支え部材120の位置に応じて適宜設計されればよく、例えば、下突出ブロック115の矢印A方向の長さよりも長く形成される。また、各保持部116は、各下突出ブロック115と同じ幅に形成されている。保持部116の上下方向の厚みは、当該保持部116の幅よりも小さくなっている。
【0047】
保持部116の下面116aは、下突出ブロック115の先端面115aに対して滑らかに連続している。これにより、先端面115a及び下面116aは、カテーテル操作部材60がグリップ18からある程度送出された段階で、処置対象の体表に接触すると、カテーテル12の挿入箇所からカテーテル操作部材60が離間するようにガイドする。
【0048】
さらに、操作支持部110は、操作板部63の上面側に、下突出ブロック115と同じ幅方向位置で矢印C1側に短く突出する一対の上突出ブロック118を有する。各上突出ブロック118の幅は、各下突出ブロック115の幅に一致している。各上突出ブロック118の先端面118aは、下突出ブロック115の先端面115aの上端と面一に連続している。
【0049】
またさらに、一対の上突出ブロック118の幅方向内側には、カテーテル12から離間する方向への撓みを防止する一対の補強片119(補強部)が設けられている。各補強片119は、各突条部113と同じ幅方向位置に設けられて、各突条部113の反対側(矢印C1側)に突出している。各補強片119は、先端において、操作板部63の上面から上突出ブロック118と同程度突出し、先端から矢印A2側に向かって湾曲しながら徐々に低くなるように形成され、タブ67aに接している。各補強片119の間は、操作板部63が存在しないことで、カテーテル支持構造111の基部112の上面が露出した溝部119aとなっている。
【0050】
一方、操作板部63の基端に連なるハブ係合部64は、メインハブ21を収容する収容室64aを有するが、矢印B1側に壁部64bを有する一方で、矢印B2側を切り欠いた形状(収容室64aを開放した形状)に構成されている。この形状は、マルチルーメンタイプに構成されるカテーテルハブ20のサブハブ22及びチューブ23を露出させるためである。ハブ係合部64の先端側は、矢印B1側の壁部64bが収容室64aを回り込むように延在している。この先端側の壁部64bには、カテーテルハブ20の直径よりも狭くカテーテル12(多重針11)のみを延出させる間隙64b1が設けられている。
【0051】
操作部筒部65は、ハブ係合部64の基端面から基端方向に向かって短く突出する円筒状に形成されている。操作部筒部65の内側には、収容室64aに連通し、セーフティ部材40(カバー体41)が配置される連通空間65aが設けられている。また、操作部筒部65の下部には、収容室64a及び連通空間65aに連通するスリット65bが形成されている。さらに、操作部筒部65の外周面には、周方向に突出形成され覆い部材66の移動を規制する円弧状リブ65cが設けられている。
【0052】
図2に戻り、覆い部材66は、カテーテル操作部材60に装着され、ユーザがセーフティ部材40に直接接触することを防止する。覆い部材66は、セーフティ部材40の上側(ユーザの把持時に手が位置する側)を覆う本体部66aと、本体部66aの先端部に設けられ操作部筒部65に取り付けられる一対の取付脚部66bとを有する。一対の取付脚部66bは、ハブ係合部64の基端面と円弧状リブ65cの間に係合する。
【0053】
また、カテーテル組立体10のグリップ18は、ユーザが持ち易い適宜の太さに形成され、矢印A方向に延在している。グリップ18内には、カテーテル12、カテーテルハブ20、セーフティ部材40及びカテーテル操作部材60が進退可能な収容空間18aが形成されている。収容空間18aは、グリップ18の先端開放部18bに連通している。このグリップ18は、矢印C方向に分割可能な上グリップ70と、下グリップ90とを相互に組み付けることで構成される。
【0054】
上グリップ70は、天井壁71、一対の上部側壁72及び上部後壁73を有し、下方向に開放した凹形状(椀状)に形成されている。一対の上部側壁72は、下グリップ90の下部側壁92と共にグリップ18の幅方向両側の側壁77を構成する。
【0055】
また天井壁71は、矢印A方向中間部よりも先端側の矢印B方向中央に操作部露出切り欠き75を有する。操作部露出切り欠き75は、先端において開放すると共に収容空間18aに連通し、カテーテルハブ20のチューブ23及びカテーテル操作部材60のタブ67を進退可能に露出させる。さらに、上グリップ70は、先端部に一対の上突片部78を有し、各上突片部78の下面及び上部後壁73には、上グリップ70と下グリップ90の固定機構79を構成する固定用フック80がそれぞれ設けられている。
【0056】
下グリップ90は、底壁91、一対の下部側壁92及び下部後壁93を有し、上方に開放した凹形状(椀状)に形成されている。底壁91の矢印A2側の所定範囲は、内針ハブ30が装着される被装着部となっており、内針ハブ30の固定用凸部34を嵌合可能な複数(本実施形態では3つ)の装着孔94(取付機構33の一部)が設けられている。
【0057】
また、一対の下部側壁92は、レール壁96、98を上部に有し、組立状態で、これらレール壁96、98の幅方向外側に上グリップ70の上部側壁72が配置される。そして組立状態で、一対のレール壁96、98上には、カテーテル操作部材60の一対の側縁63a及びセーフティ部材40の突出片44が摺動可能に配置される。また矢印B1側の上部側壁72とレール壁98との間にカバー体41の被係止凸部48が配置される。
【0058】
矢印B1側の下部側壁92には、セーフティ部材40のカバー体41が進出した際に、被係止凸部48に係合することで、カバー体41の進出限界を規定すると共に、カバー体41の後退を規制する係止部100が設けられている。すなわち、係止部100は、被係止凸部48と共にセーフティ移動制限機構部49を構成する。カテーテル組立体10は、セーフティ部材40のグリップ18からの離脱を規制することで、穿刺後の内針14をカバー体41により良好に覆う(保護する)ことができる。
【0059】
下グリップ90の先端には、一対の下部側壁92から幅方向外側に突出する一対の突体101が設けられている。矢印B1側の突体101は、固定機構79の一部である第1固定孔103aを有する。矢印B2側の突体101は、固定機構79の一部である第2固定孔105aを有する。また、矢印B2側の突体101は、下支え部材120が回転移動可能な移動用空間107を有する。
【0060】
図4A及び
図4Bに示すように、下支え部材120は、グリップ18に回転自在に取り付けられ、穿刺前状態において、カテーテル操作部材60の下側を延在するカテーテル12(多重針11)を下支えする第2支持部121を構成する。また、下支え部材120は、カテーテル操作部材60の進出においてハブ係合部64の壁部64bが接触することに伴い回転し、収容空間18aからカテーテル操作部材60(及びカテーテルハブ20、セーフティ部材40)を送出可能とする。
【0061】
この下支え部材120は、矢印C方向に延在する軸部122と、軸部122の軸心と直交する方向に突出する支持本体部124とを有する。軸部122の上部には、レール壁96の上端に連なるガイド平面122a及びこのガイド平面122aを有する一対の小突起123が設けられている。ガイド平面122aには、穿刺前状態で、カテーテル操作部材60の側縁63aが近接する。これにより下支え部材120は回転が規制される。
【0062】
支持本体部124は、矢印C方向に適宜の厚みを有し、軸部122の矢印C方向中間位置よりも下側(矢印C2側)に連結されている。支持本体部124は、例えば、下グリップ90の底壁91の厚みよりも厚く形成される。この支持本体部124は、矢印B2側から矢印B1側に向かって、軸部122に連結する連結部125、幅方向中央部に位置する中央部126、及び軸部122から最も離間した位置にある突出端部127を相互に連設して構成される。
【0063】
連結部125は、平面視で、矢印B2側が軸部122の外径と同じ幅に形成され、軸部122から離れるに従って徐々に矢印A1側に向かって傾斜した略三角形状に形成されている。
【0064】
中央部126は、連結部125及び突出端部127よりも矢印C1側に多少突出しており、基本的に、この中央部126がカテーテル12の下側を支持する構成となっている。また中央部126は、連結部125の先端よりも矢印A1側(先端側)に大きく突出した凸部126aを有する。凸部126aは、下支え部材120をグリップ18に組付けた状態で、グリップ18の先端よりも先端方向に突出する。凸部126aの突出量(矢印A方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、例えば、突出端部127の矢印A方向長さよりも長く(又は同程度に)設定されるとよい。
【0065】
突出端部127は、平面視で、方形状に形成され、グリップ18(下グリップ90)の矢印B2側の下部側壁92の近傍位置に配置される。突出端部127の矢印C方向の厚みは、連結部125の矢印C方向の厚みと略一致している。
【0066】
そして、支持本体部124は、連結部125及び突出端部127の各々に、カテーテル操作部材60の一対の保持部116が挿入される被挿入部128を有する。一対の被挿入部128は、支持本体部124の矢印A方向に沿って延在し、支持本体部124の先端面と基端面を貫通している。つまり、各保持部116及び各被挿入部128は、カテーテル12の延在方向に沿って延在している。
【0067】
各被挿入部128の矢印C方向の長さは、各保持部116の矢印C方向の長さに略一致している。各被挿入部128を構成する支持本体部124の内面は、各保持部116が挿入された状態で、各保持部116を先端方向に摺動可能とする適度な摩擦力で接触する。なお、支持本体部124は、当該支持本体部124の成形精度を高めるために、中央部126にも矢印A方向に貫通した肉抜き孔129を有している。
【0068】
以上のように構成された下支え部材120は、支持本体部124を矢印B1側に向けた姿勢で、下グリップ90の上から軸受切り欠き105bに沿って挿入される。この際、支持本体部124の連結部分近傍が軸受切り欠き105bの収容空間18a側の開放部分を通過することで、下支え部材120は、軸受切り欠き105bにスムーズに挿入される。そして、上グリップ70と下グリップ90を装着した際に、下グリップ90に支持された軸部122の上端が上グリップ70に軸支される。
【0069】
下支え部材120は、穿刺前状態において、カテーテル操作部材60の側縁63aがガイド平面122aに存在することで、支持本体部124の回転が規制されてカテーテル12を支持可能に待機する。これにより、支持本体部124は、カテーテル12を下支えして、カテーテル12の撓みを抑制する。カテーテル操作部材60がグリップ18から進出する際に、下支え部材120は、ガイド平面122aから側縁63aが抜けることで回転可能となり、カテーテルハブ20、カテーテル操作部材60及びセーフティ部材40の送出を許容する。
【0070】
以上のように構成されるカテーテル組立体10は、組立時に、内外針組立体16(カテーテル12、内針14、カテーテルハブ20、内針ハブ30、セーフティ部材40、カテーテル操作部材60)を先に組み立てる。その後は、下支え部材120を組み込んだ下グリップ90に内外針組立体16を配置し、さらに上グリップ70を内外針組立体16及び下グリップ90に装着する。
【0071】
内外針組立体16を下グリップ90に組み付ける際には、カテーテル操作部材60の一対の保持部116を、下支え部材120の一対の被挿入部128に挿入する。すなわち、下グリップ90に対して内外針組立体16を若干先端側にずらした状態で、下グリップ90の矢印C1側の開放部分に向けて内外針組立体16を下ろす。そして、カテーテル操作部材60の一対の側縁63aがレール壁96、98上に接触した状態で、内外針組立体16を矢印A2側に移動させることで、一対の被挿入部128の先端から一対の保持部116を挿入する。これにより、カテーテル操作部材60と下支え部材120を互いに簡単に保持、係合させることができる。
【0072】
図5及び
図6に示すように、カテーテル組立体10の先端部分は、カテーテル操作部材60と下支え部材120同士が係合しつつ、その間(支持空間111a)にカテーテル12を配置する。この際、カテーテル操作部材60と下支え部材120は、カテーテル12の外周面に接触してもよく、カテーテル12との間に僅かなクリアランスがあってもよい。クリアランスがあっても穿刺時には、カテーテル12が微量に動いてカテーテル操作部材60や下支え部材120に支持されるからである。
【0073】
また一対の保持部116が一対の被挿入部128に挿入された状態において、カテーテル操作部材60は、下支え部材120によって矢印C方向(上下方向)の移動が阻止される。その一方で、各保持部116は、下支え部材120に対して矢印A1側に摺動可能であることから、カテーテル操作部材60を容易に進出させることができる。
【0074】
さらに、カテーテル操作部材60は、グリップ18のガイド機構46のガイド空間99(上グリップ70の上部側壁72と下グリップ90の一対のレール壁96、98で挟まれた空間)に一対の側縁63aが配置される。このため、カテーテル操作部材60は、一対の側縁63aにおいても矢印C方向(カテーテル操作部材60と下支え部材120が重なり合う方向)に離脱不能に係合し、グリップ18内での撓みがより確実に規制される。また下支え部材120は、カテーテル操作部材60の矢印B2側の側縁63aがガイド平面122aに近接していることで回転が規制される。このため、各保持部116が各被挿入部128に対して摺動した際も、下支え部材120は穿刺前状態の位置(カテーテル12を下支えする位置)に待機し続けることができる。
【0075】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0076】
カテーテル組立体10は、上記したように、処置対象(生体)に輸液、輸血又は採血等を行う際に用いられる。
図7Aに示すように、ユーザは、カテーテル組立体10の使用時に、グリップ18を把持操作して処置対象Pに対する多重針11の穿刺を行う。
【0077】
穿刺時には、グリップ18の先端部においてカテーテル操作部材60と下支え部材120によりカテーテル12(多重針11)を挟み込んで支持している。支持状態において、カテーテル支持構造111及び下支え部材120は、カテーテル12の四方(矢印B方向及び矢印C方向)に壁を配置しており、支持箇所におけるカテーテル12の動きを規制する。また、カテーテル操作部材60は、下支え部材120の一対の被挿入部128に一対の保持部116が挿入されて、矢印C方向(上下方向)への変形が防止される。
【0078】
ここで、
図7Bに示すように、従来のカテーテル組立体150は、グリップ151の先端部において、カテーテル152及び内針153(多重針154)を支持している上グリップ155と下グリップ156が相互に容易に離間する構成となっている。このため、カテーテル組立体150は、穿刺時に、処置対象Pに接触した多重針154から上方向の力がかかると上グリップ155が下グリップ156から離間して、多重針154を撓ませていた。
【0079】
これに対し、カテーテル組立体10は、
図5及び
図6に示すように、カテーテル12の外側を直接支持しているカテーテル操作部材60と下支え部材120同士が係合している。従ってカテーテル組立体10は、穿刺時に、処置対象Pに接触した多重針11からカテーテル操作部材60に上方向の力がかかってもカテーテル操作部材60が上方向に変形せず、多重針11の撓みが抑制される。これによりユーザは、カテーテル12(多重針11)を体内に良好に刺入していくことができる。
【0080】
多重針11を処置対象Pに穿刺し針先15が血管内に到達すると、ユーザは、
図8に示すように、カテーテル操作部材60の進出操作を行い、カテーテル12を内針14よりも進出させて血管内に挿入する。カテーテル操作部材60は、ユーザの進出操作に伴い下支え部材120に対して相対的に進出する。そして、各保持部116が各被挿入部128から抜けると、カテーテル操作部材60は、グリップ18よりも先端側において上方向(カテーテル12から離れる方向)に湾曲可能となる。
【0081】
下支え部材120は、カテーテル操作部材60の側縁63aが近接していることで回転が規制されている。このため、保持部116が下支え部材120から抜け出ても回転することがなく、カテーテル12を良好に支持することができる。下支え部材120は、カテーテル操作部材60(操作板部63)の側縁63aの基端がグリップ18から抜け出ることで回転可能となる。そして、下支え部材120は、進出過程のカテーテル操作部材60のハブ係合部64(壁部64b)に接触して押し出されることで、グリップ18に対し相対回転する。これによりハブ係合部64より基端側の部材(カテーテルハブ20、セーフティ部材40)が先端開放部18bから良好に抜け出ることができる。
【0082】
ユーザの進出操作によって、カテーテル12及びカテーテルハブ20がグリップ18の先端から抜け出し、次にセーフティ部材40がグリップ18の先端から突出する。カテーテル操作部材60をさらに進出させるとセーフティ部材40の被係止凸部48がグリップ18の係止部100(進出位置)に移動する。この際、セーフティ部材40は、その先端がグリップ18から露出して内針14の先端よりも進出して内針14を覆うことで、誤刺防止機能を発動する。
【0083】
セーフティ部材40は、進出位置において、グリップ18から抜け出ずに先端方向及び基端方向への移動が停止した係止状態となる。これによりカテーテル12、カテーテルハブ20及びカテーテル操作部材60をさらに進出すると、セーフティ部材40がこれらの部材から離脱する。そして、カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材60とセーフティ部材40が分離することで、カテーテル操作部材60とカテーテルハブ20の係合が解除可能となる。このため、カテーテル12及びカテーテルハブ20は、カテーテル操作部材60の下方から離脱される。
【0084】
カテーテル12及びカテーテルハブ20は、カテーテル操作部材60から外れた形態となって、処置対象Pに留置される。留置後には、カテーテルハブ20に他の医療機器のコネクタ(不図示)が接続される。一方、内針14、内針ハブ30、セーフティ部材40及びグリップ18は一体化したままユーザにより適宜廃棄される。
【0085】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、カテーテル操作部材60と下支え部材120は、一対の保持部116と一対の被挿入部128が係合することに限定されず、1又は3以上の保持部116と被挿入部128が係合する構成でもよい。
【0086】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るカテーテル組立体10Aについて、
図9及び
図10A~
図10Cを参照して説明する。第2実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、カテーテル200及び内針202からなる多重針204を左右に挟み込んで支持する構成となっている点で、第1実施形態に係るカテーテル組立体10と異なる。
【0087】
具体的には、カテーテル200は、末梢静脈カテーテル用に構成され、基端側(矢印A2側)においてカテーテルハブ206に固定及び保持されている。カテーテルハブ206よりも矢印A2側には内針ハブ208が設けられ、この内針ハブ208の幅方向(矢印B方向)両側には、穿刺時にユーザが把持するための一対のグリップ210が連設されている。一対のグリップ210は、カテーテルハブ206の側方を矢印A方向に延在し、その先端側(矢印A1側)には、穿刺時にカテーテル200(多重針204)の外側を支持する支持構造212が設けられている。
【0088】
支持構造212は、矢印B2側のグリップ210に接続される第1支持部材214(第1支持部62)と、矢印B1側のグリップ210に接続される第2支持部材216(第2支持部121)とにより構成される。第1及び第2支持部材214、216は、平面視で、各グリップ210からさらに矢印A1側に突出すると共に、所定位置で相互に近接する方向に屈曲した略L字状に形成されている。また、第1及び第2支持部材214、216は、各グリップ210の先端に設けられた軸ピン210aによって、各グリップ210に対して回転可能に連結されている。
【0089】
第1及び第2支持部材214、216は、幅方向内側の突出端部同士によりカテーテル200を支持しつつ、この突出端部同士が相互に引っ掛かり可能な鉤機構217を構成している。詳細には、第1支持部材214は、カテーテル200よりも上側において、矢印B2側から矢印B1側に向かってカテーテル200を超えて突出する架橋部214aと、架橋部214aの矢印B1側の端部から矢印C2側に屈曲し且つ矢印B1側に突出するL字状の第1鉤部214b(保持部116)とを有する。さらに、第1支持部材214において架橋部214aよりも矢印C2側には、矢印B2側に凹む凹部214cが設けられている。一方、第2支持部材216は、カテーテル200よりも下側において、矢印B1側から矢印B2側に向かってカテーテル200を超えて突出する架橋部216aと、架橋部216aの矢印B2側の端部から矢印C1側に屈曲し且つ矢印B2側に突出する第2鉤部216bとを有する。さらに、第2支持部材216において架橋部216aよりも矢印C1側には、矢印B1側に凹部216c(被挿入部128)が設けられている。
【0090】
第1支持部材214の第1鉤部214bは、第2支持部材216の凹部216cに挿入されることで第2支持部材216に保持、嵌合される。第2支持部材216の第2鉤部216bは、第1支持部材214の凹部214cに挿入されることで、第1支持部材214に保持、嵌合される。これにより、鉤機構217は、第1支持部材214と第2支持部材216同士が矢印B方向及び矢印C方向に強固に支持し合い、第1架橋部214a、第1鉤部214b、第2架橋部216a、第2鉤部216bにより囲われた四角形状の支持孔218を形成する。支持孔218に挿入されたカテーテル200は、鉤機構217によってグリップ18よりも先端側において強固に支持される。
【0091】
また、第2支持部材216の基端部は、グリップ210に接続する接続凸部216dを有し、この接続凸部216dには、矢印C方向に貫通形成され軸ピン210aに軸支される丸孔216d1が設けられている。一方、第1支持部材214の基端部も、グリップ210に接続する接続凸部214dを有するが、この接続凸部214dは接続凸部216dよりも矢印A2側に長く突出している。そして、接続凸部214dには、矢印C方向に貫通形成され軸ピン210aに軸支される長孔214d1が設けられている。さらに、第1支持部材214は、各グリップ210に対してカテーテルハブ20が相対的に進出した際に、第2支持部材216よりも先にカテーテルハブ20の先端が当接する当接部220を備える。
【0092】
第2実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、基本的には以上のように構成され、以下その動作について説明する。カテーテル組立体10Aのユーザは、使用時に、グリップ210を把持して処置対象Pへの穿刺を行う。
【0093】
この際、第1及び第2支持部材214、216が互いに保持、係合しつつ、カテーテル200(多重針204)を支持している(
図10A参照)。このため、処置対象Pに接触した多重針204から支持構造212に上方向及び横方向の力がかかっても、支持構造212が上方向及び横方向に変形せず、多重針204の撓みを抑制することができる。これによりカテーテル組立体10Aは、カテーテル200(多重針204)を体内に良好に刺入していくことができる。
【0094】
また穿刺後に、ユーザは、カテーテルハブ206を先端方向(矢印A1側)に進出させる操作を行って、カテーテル200を血管に進入させていく。進出時に、カテーテルハブ206の先端部は、先に第1支持部材214の当接部220に当たって第1支持部材214を先端方向に押し出す(
図10B参照)。第1支持部材214は、長孔214d1が軸ピン210aに軸支されていることで、押し出しにより第2支持部材216と相対的に先端方向に移動することができる。すなわち、第1支持部材214と第2支持部材216は、鉤機構217により、矢印B方向及び矢印C方向に相互に支持し合う一方で、第1支持部材214を矢印A方向に容易に移動可能としている。
【0095】
この第1支持部材214の移動によって、カテーテル組立体10Aは、第1支持部材214と第2支持部材216の鉤機構217の係合が解除される。そして係合が解除されると、第1支持部材214と第2支持部材216は、軸ピン210aを基点に相互に離間するように回転することで、カテーテルハブ206の進出を許容する。これにより、カテーテル組立体10Aは、カテーテル200及びカテーテルハブ206を、内針202、内針ハブ208、グリップ210及び支持構造212から容易に分離させることができる。
【0096】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0097】
本発明の一態様に係るカテーテル組立体10、10Aは、カテーテル12、200と、カテーテル12、200に固定されるカテーテルハブ20、206と、カテーテル12、200に挿通された内針14、202と、内針14、202を固定及び保持するグリップ18、210と、グリップ18、210と別部材で構成され、カテーテル12、200の外側を支持可能な第1支持部62と、グリップ18、210と別部材で構成され、少なくとも一部が第1支持部62の対向位置にあってカテーテル12、200の外側を支持可能な第2支持部121とを備え、第1支持部62と第2支持部121は、互いに解除可能に直接保持している。
【0098】
上記によれば、カテーテル組立体10、10Aは、相互に直接保持する第1及び第2支持部62、121を備えることで、カテーテル12、200を一層確実に支持することが可能となる。このため、カテーテル組立体10、10Aは、処置対象Pへの穿刺時に、カテーテル12、200及び内針14、202の撓みを抑制して、ユーザによるカテーテル12、200及び内針14、202の穿刺を良好に実施させることができる。また第1及び第2支持部62、121がグリップ18、210と別部材で構成されていることで、グリップ18、210は、カテーテルハブ20、206を送出する開放部分が広くなり、カテーテルハブ20、206からカテーテル12、200を容易に送出させる。すなわち、カテーテル組立体10、10Aは、ユーザの操作性をより向上させることが可能となる。
【0099】
また、第1支持部62は、グリップ18に対するカテーテル12の相対移動を操作するための操作部61である。これにより、第2支持部121に保持された操作部61は、穿刺時に、第2支持部121から離間しなくなり、カテーテル12の支持を良好に維持することができる。
【0100】
また、操作部61は、第2支持部121との保持状態で、カテーテル12の延在方向に沿って摺動可能であり、且つ操作部61と第2支持部121が重なり合う方向に離間不能である。これにより、カテーテル組立体10は、操作部61と第2支持部121が重なり合う方向に挟んだカテーテル12をより強固に支持することができる。またユーザが操作部61をカテーテル12の延在方向に沿って操作することで、操作部61と第2支持部121の保持を容易に解除することができる。
【0101】
また、操作部61の少なくとも一部は、グリップ18に対して、操作部61と第2支持部121が重なり合う方向に離脱不能に係合している。これにより、操作部61は、グリップ18の収容位置においてグリップ18からも抜け出ないため、操作部61の変形及びこの変形に伴うカテーテル12の撓みを一層確実に防ぐことができる。
【0102】
また、操作部61は、カテーテル12から離間する方向への撓みを防止する補強部(補強片119)を先端側に有する。これにより、操作部61は、第2支持部121と係合する部分の変形をより一層確実に抑止することができる。
【0103】
また、第1支持部62は、カテーテル12に沿って延在する延在部(操作板部63、第1支持部材214)と、延在部からカテーテル12を越えて突出する突出部(下突出ブロック115、架橋部214a)と、突出部から第2支持部121に向かって延在して当該第2支持部121と保持する保持部116(第1鉤部214b)とを有する。これにより、カテーテル組立体10、10Aは、第2支持部121に対して保持部116を簡単に保持させることができる。
【0104】
また、第2支持部121は、保持部116が摺動可能に挿入されることで当該保持部116を保持する被挿入部128を有する。これにより、カテーテル組立体10は、被挿入部128に挿入した保持部116によって、第1支持部62と第2支持部121を容易に保持させることができる。
【0105】
また、保持部116及び被挿入部128は、カテーテル12の延在方向に沿って延在している。これにより、カテーテル組立体10は、カテーテル12及び内針14の穿刺後に、カテーテル12の延在方向に第1支持部62を移動させることで、保持部116を被挿入部128からスムーズに離脱させることが可能となる。
【0106】
また、突出部(下突出ブロック115)及び保持部116は、カテーテル12を挟んで一対設けられている。これにより、第1支持部62と第2支持部121は、カテーテル12の周囲において、相互の保持状態をより安定的に形成することができる。
【0107】
また、第1支持部62及び第2支持部121のうち少なくとも一方は、グリップ18、210の先端よりも先方側においてカテーテル12、200を支持可能である。これにより、カテーテル組立体10、10Aは、グリップ18よりも先方側でもカテーテル12、200及び内針14、202を確実に支持して、これらの撓みを良好に抑制することができる。