(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20241024BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241024BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20241024BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241024BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20241024BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L50/60
B60L58/26
B60K1/04 Z
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/633
(21)【出願番号】P 2022516300
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074741
(87)【国際公開番号】W WO2021048014
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】102019006487.9
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517449763
【氏名又は名称】エムアーエヌ トラック アンド バス エスエー
【氏名又は名称原語表記】MAN Truck & Bus SE
【住所又は居所原語表記】Dachauer Strasse 667, 80995 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【氏名又は名称】川上 光治
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ライマー
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-022845(JP,A)
【文献】特開2010-192265(JP,A)
【文献】特開平08-138762(JP,A)
【文献】特開2013-254725(JP,A)
【文献】特開2019-043178(JP,A)
【文献】特開2015-182487(JP,A)
【文献】特開2011-068348(JP,A)
【文献】特開2011-207476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0309140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H01M 8/04-8/0668
10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)の温度を制御するための装置(1)であって、
電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)
と、
前記エネルギ蓄積装置(5)の温度を制御するために前記エネルギ蓄積装置(5)に熱的に結合できおよび/または結合される流体回路(3)と、
を含み、
前記流体回路を通して温度制御流体が前記エネルギ蓄積装置(5)に供給可能であり前記エネルギ蓄積装置(5)から排出可能であり、
前記流体回路(3)は、前記流体回路(3)を通して前記温度制御流体を搬送するためのポンプ装置(10、11)と、バルブ装置(12)と、前記温度制御流体を冷却するための冷却装置(8)と、前記温度制御流体を加熱するための加熱装置(9)とを含み、
前記流体回路(3)は、前記加熱装置(9)が配置された部分回路(4)を有し、
前記装置(1)は、前記車両が駐停車しているときおよび所定の加熱条件が満たされたときに、前記加熱装置(9)の加熱動作を起動するよう
設計され、その際、前記部分回路を前記流体回路に流体的に結合することと、前記部分回路において加熱された温度制御流体を、前記電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)へと供給し前記電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)から排出することとが、前記バルブ装置(12)によって制御でき
、
前記装置(1)は、加熱動作が起動されたときに、
第1の工程(S3)において、前記加熱装置(9)を用いて前記部分回路(4)における前記温度制御流体の所定の部分量(20)を加熱するよう、その際、前記部分回路(4)が、前記バルブ装置(12)によって前記流体回路(3)の残部および/または前記エネルギ蓄積装置(5)から流体的に分離されるよう、および、第2の工程(S4)において、前記バルブ装置(12)によって前記部分回路(4)を前記エネルギ蓄積装置(5)に流体的に接続し、前記ポンプ装置(10、11)によって前記加熱された所定の部分量(20)を前記エネルギ蓄積装置に圧送するよう、設計され、さらに、
a) 前記エネルギ蓄積装置(5)は、前記エネルギ蓄積装置(5)の壁領域に形成された貫流領域(6)を通して前記流体回路(3)に熱的に結合され、前記第1の工程において加熱される前記温度制御流体の前記所定の部分量(20)は、前記エネルギ蓄積装置の前記貫流領域(6)の受入容量に対応し、または前記貫流領域(6)の受入容量の80%乃至200%の範囲にあるものであり、および/または
b) 前記装置(1)は、前記加熱された所定の部分量(20)が、前記エネルギ蓄積装置(5)の前記壁領域に形成された前記貫流領域(6)に圧送され、その流体流を止めることによって最小時間そこに留まるように、前記第2の工程(S4)において前記バルブ装置(12)および前記ポンプ装置(10、11)を駆動するよう設計されているものである、
装置。
【請求項2】
a) 前記電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)が高電圧バッテリであり、および/または
b) 前記エネルギ蓄積装置(5)の前記壁領域がベース・プレートであり、および/または
c) 前記所定の部分量(20)が、前記貫流領域(6)の受入容量の90%乃至130%の範囲にある、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記装置は、加熱動作が起動されたときに前記エネルギ蓄積装置(5)を加熱するための複数のシーケンスを実行するよう設計されており
、各シーケンスは、前記第1の工程(S3)および第2の工程(S4)を含
むものである
、請求項
1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
各シーケンスは
、連続的な温度制御流体流の代わりに、前記温度制御流体の前記加熱された
所定の部分量(20)の順次パルスが前記エネルギ蓄積装置(5)に圧送される形態で、前記第1の工程(S3)および第2の工程(S4)を含むものである
、請求項
3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記部分回路(4)は、前記流体回路(3)の受入容量の50%未満
の温度制御流体の受入容量を有するものである、請求項1乃至
4のいずれかに記載の装置
(1)。
【請求項6】
前記部分回路(4)は、前記流体回路(3)の受入容量
の30%未満または20%未満
の温度制御流体の受入容量を有するものである、請求項
5に記載の装置
(1)。
【請求項7】
前記車両の車載の部分電気システム(7)を含み、
前記車載の部分電気システムには、イグニッションがオフにされたときおよび/または前記車両のバッテリ・マスタ・スイッチがオフにされたときに
、電圧が供給されおよび/または供給することができ、
前記加熱装置(9)は、前記車載の部分電気システム(7)に配置された電気作動型の加熱装置である、
請求項1乃至
6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記車載の部分電気システムには、イグニッションがオフにされたときおよび/または前記車両のバッテリ・マスタ・スイッチがオフにされたときに
、前記エネルギ蓄積装置(5)を介して、電圧が供給されおよび/または供給することができ
る、請求項
7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記流体回路(3)は、互いに並列に接続された2つのライン(14、15)を有し、前記2つのラインにおいて前記加熱装置(9)と前記冷却装置(8)が互いに流体的に並列に配置され、
前記互いに並列に接続された2つのライン(14、15)のいずれを介して前記エネルギ蓄積装置(5)に流体流を供給できおよび/または供給されるかを、前記バルブ装置(12)によって制御することが可能である、
請求項1乃至
8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
前記装置(1)は、前記第2の工程(S4)において、前記バルブ装置(12)によって、前記エネルギ蓄積装置(5)を有するライン部分(16)から、前記冷却装置(8)を有するライン部分(14)を流体的に切り離すよう設計されているものである、請求項
9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記エネルギ蓄積装置の温度が所定の閾値を下回った場合に、前記所定の加熱条件が満たされる、請求項1乃至
10のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項12】
前記ポンプ装置(10、11)は、前記部分回路(4)内に前記温度制御流体を供給するよう前記部分回路に配置された第1のポンプ(10)、および/または、前記エネルギ蓄積装置(5)に温度制御流体を供給するよう前記部分回路外に配置された第2のポンプ(11)を含むものである、請求項1乃至
11のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項13】
キャビテーション効果を回避するために、前記加熱装置の停止後の或る
遅延時間後にのみ、前記第1のポンプ(10)を停止するよう設計されている、請求項
12に記載の装置(1)。
【請求項14】
a) 前記加熱装置上にまたは前記加熱装置に隣接して断熱材(17)が設けられ、および/または
b) 前記温度制御流体がグリコールと水の混合物であり、および/または
c) 前記エネルギ蓄積装置(5)が、リチウムイオン・アキュムレータ型のエネルギ蓄積装置および/または高電圧エネルギ蓄積装置である、
請求項1乃至
13のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項15】
請求項1乃至
14のいずれかに記載の装置(1)を含む車両
。
【請求項16】
請求項1乃至
14のいずれかに記載の装置(1)を含
むユティリティ・ビークル
。
【請求項17】
トラックまたはバスである、請求項16に記載のユティリティ・ビークル
。
【請求項18】
車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)の温度を制御する方法であって、
前記エネルギ蓄積装置(5)は、前記エネルギ蓄積装置(5)の温度を制御するための流体回路(3)に熱的に結合できおよび/または結合され、
前記流体回路を通して温度制御流体が前記エネルギ蓄積装置(5)に供給可能であり前記エネルギ蓄積装置(5)から排出可能であり、
前
記流体回路(3)は、前記流体回路(3)を通して前記温度制御流体を搬送するためのポンプ装置(10、11)と、バルブ装置(12)と、前記温度制御流体を冷却するための冷却装置(8)と、前記温度制御流体を加熱するための加熱装置(9)とを含み、
前記流体回路(3)は、前記加熱装置(9)が配置された部分回路(4)を有するものであり、
a) 前記車両が駐停車しているときに所定の加熱状態を監視すること、および
b) 所定の加熱条件が満たされたときに、前記加熱装置(9)の加熱動作を起動し、その際、前記部分回路を前記流体回路に流体的に結合することと、前記部分回路において加熱された温度制御流体を、前記電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)へ供給し前記電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(5)から排出することとが、前記バルブ装置(12)によって制御されること
を含
み、
加熱動作が起動されたときに、第1の工程(S3)において、前記加熱装置(9)を用いて前記部分回路(4)における前記温度制御流体の所定の部分量(20)が加熱され、その際、前記部分回路(4)は、前記バルブ装置(12)によって前記流体回路(3)の残部および/または前記エネルギ蓄積装置(5)から流体的に分離され、および、第2の工程(S4)において、前記バルブ装置(12)によって前記部分回路(4)が前記エネルギ蓄積装置(5)に流体的に接続され、前記ポンプ装置(10、11)によって前記加熱された所定の部分量(20)が前記エネルギ蓄積装置に圧送され、さらに、
i) 前記エネルギ蓄積装置(5)は、前記エネルギ蓄積装置(5)の壁領域に形成された貫流領域(6)を通して前記流体回路(3)に熱的に結合され、
前記第1の工程において加熱される前記温度制御流体の前記所定の部分量(20)は、前記エネルギ蓄積装置の前記貫流領域(6)の受入容量に対応し、または前記貫流領域(6)の受入容量の80%乃至200%の範囲にあるものであり、および/または
ii) 前記第2の工程(S4)において、前記バルブ装置(12)および前記ポンプ装置(10、11)は、前記加熱された所定の部分量(20)が、前記エネルギ蓄積装置(5)の前記壁領域に形成された前記貫流領域(6)に圧送され、その流体流を止めることによって最小時間そこに留まるように、駆動されるものである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置および方法に関する。本発明は、さらに、そのような装置を有する車両、好ましくはユティリティ・ビークル、に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に電気駆動可能な車両は、一般的に、電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置(以下略して、電気エネルギ蓄積装置(elektrischer Energiespeicher)とも称する)を有する。この場合、電気エネルギ蓄積装置は、高電圧(HV)の車両バッテリであってもよい。高電圧バッテリを冷却するだけでなく加熱もするための様々な方法が実用上知られている。1つの可能性は、高電圧バッテリの底部における加熱/冷却フィンによって水-グリコール(混合物)を加熱することである。他のアプローチ(手法)として、例えば、セルを加熱すること、または、例えば避雷器(Ableiter:アレスタ)を介するなどして無効電力(Blindleistung)を発生させること、が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第11 2012 001739号
【文献】特開2012-226895号公報
【文献】独国特許出願公開第10 2017 108400号
【発明の開示】
【0004】
しかし、車両は、多くの場合、一部のまたは少しの時間だけ能動的に活動状態になるに過ぎない。従って、車両が駐車しているときに、電気エネルギ蓄積装置、特に個々のバッテリ・セル、が冷える可能性がある。過度に高い温度または過度に低い温度は、そのようなバッテリの耐用年数(寿命)、性能および機能に悪影響を与えることが知られている。特に、臨界最低温度未満では、車両が再始動されたときに、エネルギ蓄積装置のバッテリが始動動作に充分な電力を供給できなくなる、という問題が生じる。例えば、高電圧バッテリが過度に冷えると、そのセルの電流制限が充電状態(Ladezustand)(英語でSoC)および温度に依存するので、特に加熱のためであっても、そのセルからは、僅かしかまたは全く電流(Strom:電力)を高電圧バッテリで(から)供給できない。高電圧バッテリを加熱するための既知のアプローチ(手法)には、さらに、このために非常に大量のエネルギを消費する、という欠点がある。
【0005】
従って、本発明の1つの目的は、通常の技術の欠点を解消(回避)することができる、電気エネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置、を実現することである。本発明の目的は、特に、エネルギ蓄積装置の温度を制御するためのアプローチ(手法)を実現することであり、それによって車両が駐車しているときでも電気エネルギ蓄積装置が冷えるのを回避することができ、またそれによって車両が駐車しているときにも電気エネルギ蓄積装置をできるだけエネルギ効率良く加熱することができるようにすることである。
【0006】
発明の概要
これらの目的は、独立請求項の特徴を有する装置および方法によって達成される。本発明の有利な実施形態および適用例は、従属請求項の構成であり、以下の説明において図を部分的に参照しつつより詳細に説明する。
【0007】
本発明の第1の一般的な態様によれば、車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置が実現される。その車両は、電気的に駆動可能なおよび/または駆動される車両であってもよい。その装置は、以下では電気エネルギ蓄積装置ともまたは略してエネルギ蓄積装置とも称される、電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置を含んでいる。
【0008】
その装置は、エネルギ蓄積装置の温度を制御するためにエネルギ蓄積装置に熱的に結合され得るおよび/または結合される流体回路をさらに含み、その流体回路を通して温度制御流体をエネルギ蓄積装置に供給可能でありエネルギ蓄積装置から排出可能である。この場合、流体回路は、流体回路を通して温度制御流体を搬送(供給)するためのポンプ装置と、バルブ(弁)装置と、温度制御流体を冷却するための冷却装置と、温度制御流体を加熱するための加熱装置とを含んでもよい。流体回路は、加熱装置が配置された部分回路をさらに含んでいる。また、この部分回路は、以下で第1の部分回路とも称される。従って、流体回路は、任意に冷却回路と加熱回路のいずれとしても使用できる。
【0009】
本発明によれば、その装置は、車両が駐停車しているとき、および所定の加熱条件が満たされたときに、加熱装置の加熱動作を起動(活動化)するよう設計されており、その際、部分回路を流体回路に流体的に結合すること(部分回路から流体回路への流体的結合)と、部分回路において加熱された温度制御流体を、電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置へ供給しそのエネルギ蓄積装置から排出することと(部分回路で加熱された温度制御流体の、電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置への供給とそのエネルギ蓄積装置からの排出)とが、バルブ(弁)装置によって制御可能である。
【0010】
その結果、車両が駐停車しているときでもエネルギ蓄積装置が冷えるのを防止することができる。さらに、部分回路に配置された加熱装置によって温度制御流体の部分量のみを加熱することができるので、温度制御流体の特にエネルギ効率の良い加熱、従ってエネルギ蓄積装置のエネルギ効率の良い加熱、が可能であり、その後、局所的な熱出力(放散)のためにバルブ装置によってこの部分量を狙い(目標)通りエネルギ蓄積装置に供給することが可能である。従って、熱損失を低減することができる。同時に、加熱回路が冷却回路と分離して(別に)設けられずに、加熱回路が冷却回路に一体化されるので、その装置の低コストでの実装が可能である。
【0011】
駐停車車両(abgestellten Fahrzeug)は、好ましくは、例えば車両の駐停車(停止)および/または駐車状態(abgestellter und/oder geparkter Zustand)を意味し、例えば車両が駐停車されたときの、特に車両の非動作(Ruhebetriebs:休止、非運転、アイドル)状態を意味する、と理解されるべきである。
【0012】
この場合、加熱動作期間中に、温度制御流体の部分量のみが加熱装置によって加熱されることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、ここでは、その装置は、第1の工程において加熱動作(モード)が起動されたときに、加熱装置を用いて部分回路における温度制御流体の部分量、好ましくは所定の部分量、を加熱するよう設計されており、その部分回路は、バルブ装置によって流体回路の残部(残り部分)および/またはエネルギ蓄積装置から流体的に分離される。この実施形態によれば、その装置は、さらに、第2の工程において、バルブ装置によって部分回路をエネルギ蓄積装置に流体的に接続するよう、および、ポンプ装置によってその加熱された所定の部分量をエネルギ蓄積装置に圧送するよう設計されている。
【0013】
ここでは、さらに、第1の工程および/または第2の工程において、冷却装置が配置された第2の部分回路は、第1の部分回路とエネルギ蓄積装置を有する部分とを含む流体回路の残部から、流体的に分離されてもよい。温度制御流体の所定の部分量は、第1の部分回路のサイズ(大きさ)および/または流体受入容量(収容能力)によって、および/または第1の部分回路を流体回路に流体的に結合するためのバルブ装置の個々のバルブ(弁)の位置によって、規定することができる。
【0014】
これによって、まず、加熱動作期間中に流体回路内の温度制御流体の全量が加熱されることおよびこのためにエネルギが消費されることを防ぐことができるので、エネルギ蓄積装置の加熱を特に効率的に行うことが可能となる。従って、流体回路の熱容量による熱損失を低減することができる。これは、駐停車中の車両が外部電源または充電ステーション(Ladestation:充電スタンド、充電所)に接続されておらず、また、エネルギ蓄積装置のエネルギが、例えばエネルギ蓄積装置自体または別の車両バッテリによって、供給されるときに、特に有利である。従って、エネルギ消費がより少ないため、加熱動作によるエネルギ蓄積装置の過度に急速な放電を回避することができる。さらに、温度制御流体の部分量を全量よりも速く加熱することができ、従って加熱処理が全体的により迅速になる。
【0015】
この実施形態の有利な一変形例において、その装置は、加熱動作(モード)が起動されたときにエネルギ蓄積装置を加熱するための幾つかのシーケンスを実行するよう設計することができ、各シーケンスは、第1の工程および第2の工程を含んでおり、その際、温度制御流体の連続流の代わりに、加熱された複数の部分量の順次的パルスがエネルギ蓄積装置に圧送(送出)されるような形態で、第1の工程および第2の工程を含むことが、好ましい。換言すれば、加熱された温度制御流体による幾つかのシーケンス(Sequenzen)が、順次(nacheinander)および/またはパルス形態で(gepulst)エネルギ蓄積装置に圧送される。その結果、加熱された温度制御流体の必要量をより正確に規定することができ、および/または、過度に冷えすぎないようにエネルギ蓄積装置を保護するのに必要な温度制御流体の必要量を減少させることができる。
【0016】
例えば、その装置は、流体流を停止させることによって、その加熱された所定の部分量がエネルギ蓄積装置の貫流領域に圧送されて或る最小時間期間(Mindestzeitdauer:最低時間期間)の間そこに留まるような形態で、第2の工程においてバルブ装置およびポンプ装置を駆動するよう、設計してもよい。その結果、加熱された温度制御流体の熱の大部分を目標通りにエネルギ蓄積装置に出力することができ、他のライン・セグメント(Leitungssegmente)には、より少ない部分量だけを供給することができるので、エネルギ蓄積装置への特に効率的な熱結合が達成される。さらに、温度制御流体を連続動作させるよりも、順次的なポンプ動作のほうが消費エネルギが少ない。
【0017】
さらに、エネルギ蓄積装置は、エネルギ蓄積装置の壁領域、好ましくはベース・プレート(Bodenplatte:底部プレート、基部プレート)、に形成された貫流領域を介して、流体回路に熱的に結合されてもよい。この場合、第1の工程において加熱される温度制御流体の所定の部分量は、任意に、さらに、エネルギ蓄積装置の貫流領域の受入容量(収容能力)に対応していてもよい。換言すれば、加熱動作(モード)期間中に、熱結合用の温度制御流体用のエネルギ蓄積装置の壁領域および/またはベース・プレートが受け入れ(収容)できる分のみの量の流体が加熱される。この変形例によれば、加熱動作に必要なエネルギを特に効率的に低減することができ、エネルギ蓄積装置の特にエネルギ効率的な加熱が可能になる。従って、流体回路は、まず、冷却回路(冷却動作期間中)および加熱回路(加熱動作期間中)として選択的に使用することができるが、部分回路の容量および/またはそこで加熱される温度制御流体の部分量のみが加熱動作において使用されるので、特に加熱動作期間中に、流体回路の熱容量による熱損失が低減される。その装置は、さらに、冷却動作(モード)期間中の流体質量流の方向が加熱動作期間中と同じであるよう設計されることが好ましい。
【0018】
代替的に、第1の工程において加熱される温度制御流体の所定の部分量は、貫流領域の受入容積(収容能力)の80%~200%、より好ましくは90%~130%、の範囲にある。実用試験では、これらの範囲でも同様に良好な結果が得られることが確認されている。従って、温度制御流体を流体回路の配管(Verrohrung)の全長にわたって加熱するのではなく、むしろその部分量だけを加熱すると有利である。
【0019】
この文脈において、“部分回路”(Teilkreislauf)という用語は、流体回路が一部分または部分セグメント(Teilmenge)を有し、その一部分または部分セグメントにおいて、その流体回路の温度制御流体の部分量のみが循環しおよび/または加熱装置によって加熱可能である、というように理解されるものとする。一実施形態によれば、部分回路は、流体回路全体の受入容量(収容能力)の50%未満、さらに好ましくは30%未満または20%未満、の温度制御流体の受入容量を有してもよい。この利点として、車両が駐停車しているときの加熱動作のために、相対的に少量の温度制御流体を加熱することができ、それによって加熱用のエネルギの消費をできるだけ低く保つまたは抑えることができ、その一方で、特に車両の動作期間中に、エネルギ蓄積装置の過熱を確実に回避できるように、冷却動作期間中に温度制御流体の全量が利用可能であることが好ましい。
【0020】
別の態様によれば、エネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置は、車両の車載(搭載)の部分電気システム(elektrisches Teilbordnetz:部分電気系統、部分電力配線)を含むことができ、その車載の部分電気システム(系統)には、イグニッション(点火)がオフ(切)にされたときおよび/または車両のバッテリ・マスタ・スイッチ(hauptschalter:主幹スイッチ、主開閉器)がオフ(切)にされたときに、電圧を供給しおよび/または供給することができる。このようにして、車両が駐停車しているとき、車載の車両電気システム全体に電力を供給する必要がなく、むしろ、加熱動作のために加熱装置に、および任意に他の構成要素(部品)に、例えば所定の加熱条件、例えばエネルギ蓄積装置温度、を監視するためのセンサ装置に、電気エネルギを供給する車載の部分電気システムのみに、電力が供給されればよい。そのような部分電気システムの動作は、トラック運転手が、夜間または週末に車両を駐車させまたは駐停車させるときに(24V始動バッテリの)バッテリ・マスタ・スイッチをオフにし、従って車載の電気システムの機能を停止させることが現在の一般的実務である、トラック(LKW:HGV(重量物運搬車))にとって、特に有利である。従って、本発明の一実施形態は、エネルギ蓄積装置用の加熱装置が配置された車載の部分電気システムが、車両が駐停車されたときおよび/またはバッテリ・マスタ・スイッチがオフにされたときでも、依然として電力を供給できることを実現する。
【0021】
この場合、電気エネルギの供給は、エネルギ蓄積装置自体によって行うことができ、加熱装置は、車載の電気部分システム(系統)に配置される電気作動型の加熱装置である。代替的にまたは追加的に、エネルギ蓄積装置には、車両における別の電池によって、および/または、例えば駐停車車両が充電ステーションに駐停車されている場合に、外部電源によって、電気エネルギを供給することもできる。
【0022】
別の態様によれば、流体回路は、互いに並列に接続された2つのライン(Leitungen:パイプ、管)であって、そこ(2つのライン)において加熱装置と冷却装置が互いに流体的に並列に配置された2つのライン、を有してもよく、その互いに並列に接続された2つのラインのいずれを介してエネルギ蓄積装置に流体流を供給できおよび/または供給されるかを、バルブ装置によって制御することが可能であってもよい。これには、その装置の加熱動作用および冷却動作用の流体流を、対応する適合化された形態で制御することができる、という利点がある。
【0023】
例えば、上述の第2の工程において、バルブ装置によって、冷却装置を有するライン部分を、エネルギ蓄積装置を有するライン部分から流体的に分離して、加熱された温度制御流体が、冷却装置にではなく、エネルギ蓄積装置に直接供給(搬送)されるよう、設計することができる。
【0024】
所定の加熱条件とは、特に車両が駐停車しているときに、エネルギ蓄積装置が過度に冷却される危険性があり、適切な機能をもはや確保することができない、および/または、エネルギ蓄積装置に過度の経年変化(エイジング)効果をもたらすであろう、という状況を示す(特定する)または導き出すことができる予め定められた条件または予め定められた基準を意味するもの、と理解される。所定の加熱条件は、例えば、エネルギ蓄積装置の温度が所定の閾値を下回った(所定の閾値未満になった)場合に、満たすことができる。それぞれのエネルギ蓄積装置に対する適切な閾値は、実験的に決定し規定することができる。この目的のために、その装置は、エネルギ蓄積装置の温度および/またはエネルギ蓄積装置の1つ以上の蓄積セルの温度を監視するセンサ装置、例えば少なくとも1つの温度センサ、を有してもよい。エネルギ蓄積装置の温度に代えて、代替的に、または追加的に、加熱状態の監視に関与する別の変数、例えば周囲温度および/または流体回路の温度制御流体の温度、を監視してもよい。エネルギ蓄積装置の温度は、例えば予め実験的に決定された特性曲線によって、これらの変数のコースまたは変化(Verlauf:経路、傾向、方向)から同様に推定することもできる。
【0025】
別の態様によれば、ポンプ装置は、部分回路内に温度制御流体を供給(搬送)するよう部分回路(内)に配置された第1のポンプを含んでいてもよい。代替的にまたは追加的に、ポンプ装置は、エネルギ蓄積装置に温度制御流体を供給(搬送)するよう部分回路の外側に配置された第2の(別の)ポンプを含んでいてもよい。
【0026】
別の態様によれば、その装置は、キャビテーション(Kavitation)効果を回避するために、加熱装置の停止(非活動化)後の或る(後続の)遅延時間(Nachlaufzeit:ラグタイム、時間差)の後にのみ、上述のように第1のポンプを停止(非活動化)するよう設計してもよい。この種の後続の(遅延)動作(Nachlaufbetrieb)のおかげで、干渉(stoerende:妨害、破壊的)キャビテーション効果が、加熱動作期間において回避されまたは少なくとも低減される。
【0027】
その装置は、さらに、流体回路の複数の構成要素(部品)、特に、加熱装置、冷却装置および/またはバルブ装置、を駆動または制御するよう設計された制御装置を有してもよい。
【0028】
その装置が加熱動作を実現(実装)するために流体回路の1つ以上の構成要素を駆動するよう設計されることを上で概説した点に関しては、これは、例えばそれに対応して制御装置を設計することによって、実現することができる。制御装置は、1つまたは複数の制御ユニットを含むことができ、またはこの種の制御ユニットの一部としてプログラムによって実装することができる。また、制御装置の機能の一部は、例えばエネルギ蓄積装置の温度を監視するように、例えばバッテリ管理システム(BMS)において、実装することができる。
【0029】
別の実施形態によれば、加熱装置上にまたは加熱装置に隣接して、断熱材を設けてもよい。その結果、熱放射損失を低減させることができ、加熱期間中のエネルギ効率を向上させることができる。
【0030】
温度制御流体は、それ自体既知の形態で、グリコールと水の混合物であってもよい。
【0031】
電気エネルギ蓄積装置は、高電圧バッテリ、電気トラクション(Traktion:牽引力)エネルギ蓄積装置、および/またはリチウムイオン・アキュムレータ(Akkumulator:蓄電池)型のエネルギ蓄積装置とすることができる。
【0032】
本発明は、さらに、本明細書に開示されたエネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置を含む車両に関するものである。車両は、電気的に駆動可能なおよび/または駆動される車両であってもよい。車両は、例えばトラックまたはバスのようなユティリティ・ビークル(Nutzfahrzeug:商用車、実用車)であってもよい。
【0033】
本発明の第2の一般的な態様によれば、車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置の温度を制御するための方法が実現され、エネルギ蓄積装置は、エネルギ蓄積装置の温度を制御するための流体回路に熱的に結合できおよび/または結合され、また、温度制御流体が流体回路を通してエネルギ蓄積装置に供給されてエネルギ蓄積装置から排出されてもよい。流体回路は、流体回路を通して温度制御流体を搬送(輸送)するためのポンプ装置と、バルブ装置と、温度制御流体を冷却するための冷却装置と、温度制御流体を加熱するための加熱装置とを含んでいる。流体回路は、加熱装置が配置された部分回路を有する。
【0034】
その方法は、車両が駐停車しているときに所定の加熱条件を監視し、所定の加熱条件が満たされたときに加熱装置の加熱動作を起動することを含み、その際、部分回路を流体回路に流体的に結合することと、部分回路で加熱された温度制御流体を、電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置へ供給しそのエネルギ蓄積装置から排出することとが、バルブ装置によって制御される。
【0035】
繰り返しを避けるため、純粋に装置に関連して開示された各特徴も、方法に関連して開示されたものとみなされ、権利保護を請求可能であることが意図されている。従って、上述の態様および本発明による特徴は、特にその装置の設計、流体回路およびその装置の機能設計(Ausfuehrung:実行)に関して、その方法にも適用される。
【0036】
本発明の上述の好ましい実施形態および特徴は、必要に応じて互いに組み合わせることができる。本発明の他の詳細および利点を、図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による加熱動作の第1の工程におけるエネルギ蓄積装置の温度を制御するための装置の非常に概略的な図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による加熱動作の第2の工程における
図1による装置を示している。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、温度制御装置の機能、およびエネルギ蓄積装置の温度を制御するための方法を示すためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
全ての図において、同じまたは同等の要素には同じ参照符号が付されており、それらの一部の要素は別に説明することはしない。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態による車両の電気エネルギ用のエネルギ蓄積装置5の温度を制御するための装置1を示している。車両は、電気駆動型の車両、例えばトラック(LKW)、であってもよい。エネルギ蓄積装置5は、高電圧エネルギ蓄積装置であり、車両の電気機械(図示せず)に電気トラクション(牽引)エネルギを供給し、回生(rekuperierte:回収、回復)エネルギを再び受け取る(nimmt:蓄積する)。
【0040】
装置1は、さらに、エネルギ蓄積装置5の温度を制御するためにエネルギ蓄積装置5に熱的に結合される流体回路3を含み、温度制御流体、例えば水-グリコール、が、その流体回路を通してエネルギ蓄積装置5に供給されエネルギ蓄積装置5から排出され得る。このために、温度制御流体が流れ得る貫流領域6が、そのエネルギ蓄積装置の底部もしくは基部(ベース)領域(Bodenbereich)に設けられる。貫流領域において、温度制御流体は、エネルギ蓄積装置5との熱的結合を達成するために、加熱フィンまたは冷却フィンとして機能するフィン(Rippen:リブ)の周りを任意に流れ得る。
【0041】
流体回路3はポンプ装置を含み、この場合、ポンプ装置は、流体回路3を通して温度制御流体を搬送するための第1のポンプ10および第2のポンプ11を含んでいる。流体回路3はさらにバルブ装置12を含み、この場合、バルブ装置12は複数の電磁弁(ソレノイドバルブ)12a~12dを含んでいる。
【0042】
ライン(パイプ、管)部分(Leitungsabschnitt)14には、温度制御流体を冷却するための冷却装置8が配置されている。冷却装置8は、それ自体既知の形態で設計することができ、従って、ここでは詳細には説明しない。冷却動作期間中、冷却装置8は、その中を通って流れる温度制御流体を冷却する。
【0043】
ここで、ライン部分14に並列なライン部分15には、温度制御流体を加熱するための加熱装置9が配置されている。加熱装置9は、第1のポンプ10もが配置されている流体部分回路4内に配置される。その加熱装置は、少なくとも部分的に断熱材(熱絶縁体)17によって覆われまたは包囲されており、これが
図1に非常に概略的にのみ示されている。
【0044】
装置1はさらに制御装置2を含んでおり、制御装置2は、破線で示された各信号線を介して流体回路3の個々の構成要素に信号伝達のために接続される。制御装置2は、流体回路3の個々の構成要素を駆動するよう設計される。制御装置2の機能の一部は、エネルギ蓄積装置のバッテリ管理システム(BMS)5aにも実装され、そのバッテリ管理システムはエネルギ蓄積装置5の温度を監視するために使用される。
【0045】
加熱装置9は、非常に概略的に破線のみで示された車載の部分電気システム(netz:系統、配線)7によって、エネルギ蓄積装置5から電気エネルギが供給される高電圧(HV)ヒータとして設計される。ここでの特別な特徴は、車両が駐停車されてイグニッション・キーが取り外されたときでも、車載の電気システムの他の部分が非作動状態に(停止)されている間にも、その車載の部分電気システム7には電力が供給されることである。制御装置2およびエネルギ蓄積装置5には、車両が駐停車しているときでも、この車載の部分電気システム7を介して電気エネルギが供給される。さらに、磁気バルブ装置12の電気的駆動が可能とされる。
【0046】
流体回路3は、冷却装置8によって(を通して)冷却された温度制御流体をエネルギ蓄積装置5に供給(搬送)するか、または加熱装置9によって(を通して)加熱された温度制御流体をエネルギ蓄積装置5に供給(搬送)するかに応じて、エネルギ蓄積装置5の冷却とエネルギ蓄積装置5の加熱の双方に選択的に使用することができる。なお、その質量流の循環方向は、加熱動作(モード)期間と冷却動作(モード)期間とで同じである。
【0047】
エネルギ蓄積装置5は、一般的に、車両の通常の運転動作期間中に冷却されなければならず、従って、部分回路4は、通常は、駆動動作期間中にバルブ装置12によって流体回路3の残部から流体的に切り離される。このために、バルブ12c、12dは、流体ライン14が流体ライン16に流体的に接続され且つ流体ライン15が流体ライン14、16に流体的に接続されないように、制御装置12によって切り替えることができる。従って、冷却装置8によって冷却された温度制御流体は、ライン14および16によって形成される流体回路を通ってエネルギ蓄積装置5の貫流領域6に流れ込み、再び冷却装置へと戻る。
【0048】
しかし、既に上述したように、車両が駐停車されて外気温が低い非動作(非走行)期間に、エネルギ蓄積装置5が冷え過ぎるという問題が生じ得る。これは、エネルギ蓄積装置の耐用年数、性能および機能性に悪影響を及ぼし、車両が再始動されたときに、エネルギ蓄積装置が始動動作に充分な電力を供給できなくなる可能性がある。
【0049】
従って、温度制御装置1は、以下で説明するように、必要に応じて、車両が駐停車しているときにエネルギ蓄積装置5を加熱するのにも使用される。
【0050】
このために、制御装置2は、車両が駐停車しているときに、所定の加熱条件が満たされているかどうかを監視するよう設計されている。この場合、例えば、エネルギ蓄積装置
5の温度が監視され、この温度監視動作は、エネルギ蓄積装置5のバッテリ管理システム(BMS)5aによって実行され、それ(システム)によっていずれの場合にもエネルギ蓄積装置5における複数の温度センサで駆動(走行)動作期間中にエネルギ蓄積装置の温度も監視される。ここで、バッテリ管理システム(BMS)は、電圧を監視するために、所謂セル・モジュール・コントローラ(CMC)にアクセス(を使用)することができ、各セル・モジュールに設置された温度センサにアクセスすることもできる。車両が駐停車している状態でのこの温度監視は、
図3のフローチャートによる工程S1に対応する。するように部分回路4および加熱装置9を制御する。これが
図3に工程S2として示されている。
【0051】
バッテリ管理システム(BMS)は、特定の時間tにおいて温度を測定する。温度が特定の限界値未満に低下した場合、加熱条件が満たされた状態とみなされて、制御装置2は、加熱動作を開始するように部分回路4および加熱装置9を制御する。これが
図3に工程S2として示されている。
【0052】
加熱動作を開始するために、制御装置2は、まず、流体が部分回路4内を循環できるがそこから出ることができないように、第1の工程S3においてバルブ12aおよび12bを制御または駆動し、部分回路4内のポンプ10および加熱装置9を作動(活動化)させる。従って、温度制御流体の少ない部分量20が部分回路4内で循環し、それによって加熱装置9によって加熱される。部分回路4は、温度制御流体の部分量20が、エネルギ蓄積装置5がそのベース・プレートにおける貫流領域で受け入れ可能な流体の量にほぼ対応するように、設計される。
【0053】
加熱装置9において、加熱される温度制御流体の温度が測定される。部分回路4内の温度制御流体が特定の温度に達した場合、制御装置は、加熱された温度制御流体20の部分量20が部分回路からエネルギ蓄積装置の貫流領域6に供給(搬送)されるように、第2の工程S4においてポンプ10および11およびバルブ12a~12dを制御または駆動する。温度制御流体の加熱された部分量20を供給(搬送)するプロセスは、
図2において、矢印および移動する(bewegenden)ボックス(箱)20によって概略的に示されている。
【0054】
この場合、流体ライン15と16が互いに流体的に接続されるように、バルブ12cおよび12dが切り換えられる。換言すれば、この場合、第2の工程S4において、エネルギ蓄積装置5に熱を出力するために、温度制御流体の加熱された部分量20が貫流領域6に圧送されて(送り込まれて)流体流の停止により或る最小時間の間そこに留まるように、バルブ装置12およびポンプ10、11が制御または駆動される。
【0055】
この場合、加熱動作が起動されると、エネルギ蓄積装置5を加熱するためにこの種の複数のシーケンスが実行され、各シーケンスは第1の工程(S3)および第2の工程(S4)を含んでいて、それによって、温度制御流体の連続流の代わりに、温度制御流体の加熱された部分量20の順次パルスがエネルギ蓄積装置5に圧送(送出)されるようになっている。
【0056】
これは、セル・モジュールの温度が特定の温度を超えるまで繰り返される。次いで、加熱動作が終了し、加熱装置9が停止(非活動化)される。キャビテーションの影響を回避するために、ポンプ10は或る遅延時間(ラグタイム)の後に停止(非活動化)される。
【0057】
本発明を特定の例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物を代替物として使用できることは、当業者にとって明らかである。言及すべきこととして、流体回路3および特にバルブ装置12の説明上の構成は単に例示的なものであり、より多くのまたはより少ないバルブ(弁)を様々な実施形態および回路において当然使用することができる。その結果、本発明は、開示された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではなく、むしろ、特許請求の範囲に包含される全ての例示的な実施形態を含むことを意図している。特に、本発明は、参照される特許請求の範囲と関係なく、従属請求項の構成および特徴の保護をも求めるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 温度制御装置
2 制御装置
3 流体回路
4 部分回路
5 電気エネルギ蓄積装置
5a バッテリ管理システム(BMS)
6 貫流領域
7 車載の部分電気システム
8 冷却装置
9 加熱装置
10 第1のポンプ
11 第2のポンプ
12 バルブ装置
12a、12b、12c、12d バルブ
14 液体ライン
15 液体ライン
16 流体ライン
17 断熱材(熱絶縁体)
20 温度制御流体の部分量