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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】薬物移送装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61J1/20 314B
A61J1/20 314C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022542328
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 US2021012572
(87)【国際公開番号】W WO2021142181
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】62/958,909
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリス ハーマン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/108495(WO,A1)
【文献】特開2010-124898(JP,A)
【文献】特表2017-515545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0112501(US,A1)
【文献】国際公開第2012/002316(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/036352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物移送装置であって、
第一の端部と、前記第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有する筐体と、
前記筐体の前記第二の端部に固定され、前記薬物移送装置を薬物バイアルに固定するように構成されバイアル取り付け部と、
前記筐体における前記第二の端部に固定され、第一の通路および第二の通路を画定するバイアル移送部材であって、薬物バイアルの密封を貫通するように構成されバイアル移送部材と、
前記筐体の内部に配置されるカニューレであって、前記バイアル移送部材における前記第一の通路と流体連通しているカニューレであり、第一の端部と、前記第一の端部と反対側に位置する第二の端部とを有するカニューレと、
前記筐体の内部に配置される封止配置であって、前記カニューレが前記筐体における前記第一の端部から隔離される第一の位置と、前記カニューレが前記筐体における前記第一の端部で受け入れられた第一の嵌合コネクタと流体連通するように構成される第二の位置との間において前記筐体の内部を移動可能である封止配置と、
前記バイアル移送部材における前記第二の通路と流体連通する通路を画定する接続部材であって、第二の嵌合コネクタを受け入れるように構成された接続部材と
を備えることを特徴とする、薬物移送装置。
【請求項2】
前記カニューレにおける前記第二の端部が、前記バイアル取り付け部に固定され、前記カニューレが、前記バイアル取り付け部から前記筐体における前記第一の端部に向かって延伸し、前記カニューレにおける前記第一の端部が、前記筐体における前記第一の端部および前記第二の端部の中間位置に配置されることを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項3】
前記接続部材が、前記バイアル取り付け部から延伸することを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記バイアル移送部材における前記第一の通路および前記第二の通路が、前記バイアル移送部材の縦方向に沿って延伸し、前記第一の通路が、前記第二の通路から軸周りに離間していることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記封止配置が、第一の端部および第二の端部を有するコレットと、前記コレットで受け入れられる薄膜とを含み、前記コレットの少なくとも一部分が、前記筐体の内部に収容され、前記コレットが、本体と、前記本体に接続されたロック部材とを含み、前記コレットが、前記ロック部材が前記第一の嵌合コネクタを受け入れるために開口する第一の位置から、前記ロック部材の径方向に外向きの動きが制限される第二の位置へ移動可能であることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記接続部材が薄膜を含むことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項7】
容器間において液体薬剤を移送するためのシステムであって、
注射器バレルに固定されるように構成された第一の端部と、第二の端部とを有する注射器アダプタと、
接続部材と、輸液容器に固定されるように構成された容器アクセス部材とを有する輸液アダプタと、
薬物移送装置であって、
前記輸液アダプタの前記接続部材を受け入れるように構成された第一の端部と、前記第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有する筐体と、
前記筐体における前記第二の端部に固定され、前記薬物移送装置を薬物バイアルに固定するように構成されバイアル取り付け部と、
前記筐体における前記第二の端部に固定され、第一の通路および第二の通路を画定するバイアル移送部材であって、薬物バイアルの密封を貫通するように構成されたバイアル移送部材と、
前記筐体の内部に収容されるカニューレであって、前記バイアル移送部材における前記第一の通路と流体連通しているカニューレであり、第一の端部と、前記第一の端部と反対側に位置する第二の端部とを有するカニューレと、
前記筐体の内部に配置される封止配置であって、前記カニューレが前記筐体における前記第一の端部で受け入れられると、前記カニューレが前記筐体における前記第一の端部から隔離される第一の位置と、前記輸液アダプタと流体連通するように構成される第二の位置との間において前記筐体の内部を移動可能となる封止配置と、
前記バイアル移送部材の前記第二の通路と流体連通する通路を画定する接続部材であって、前記注射器アダプタを受け入れるように構成された接続部材と
を含む薬物移送装置と
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項8】
前記注射器アダプタにおける前記第一の端部と流体連通した送気ポンプをさらに備えることを特徴とする、請求項記載のシステム。
【請求項9】
薬物測定装置と、前記薬物測定装置および前記送気ポンプと通信する制御装置であって、前記薬物測定装置から受信された投与量情報に基づいて、前記送気ポンプを作動させるように構成され制御装置とをさらに備えることを特徴とする、請求項記載のシステム。
【請求項10】
前記送気ポンプが、配送チューブを介して前記注射器アダプタにおける前記第一の端部と流体連通していることを特徴とする、請求項記載のシステム。
【請求項11】
記カニューレにおける前記第二の端部が、前記バイアル取り付け部に固定され、前記カニューレが、前記バイアル取り付け部から前記筐体における前記第一の端部に向かって延伸し、前記カニューレにおける第一の端部が、前記筐体における前記第一の端部および前記第二の端部の中間位置に配置されることを特徴とする、請求項記載のシステム。
【請求項12】
前記接続部材が、前記バイアル取り付け部から延伸し、前記バイアル移送部材における前記第一の通路および前記第二の通路が、前記バイアル移送部材の縦方向に沿って延伸し、前記第一の通路が、前記第二の通路から軸周りに離間していることを特徴とする、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記封止配置が、第一の端部および第二の端部を有するコレットと、前記コレットで受け入れられる薄膜とを含み、前記コレットの少なくとも一部分が、前記筐体の内部に収容され、前記コレットが、本体と、前記本体に接続されたロック部材とを含み、前記コレットが、前記ロック部材が前記輸液アダプタを受け入れるために開口する第一の位置から、前記ロック部材の径方向に外向きの動きが制限される第二の位置へ移動可能であることを特徴とする、請求項記載のシステム。
【請求項14】
容器間において液体薬剤を移送するための方法であって、
液体薬剤を含む薬物容器に請求項1記載の薬物移送装置を固定するステップと、
輸液アダプタを前記薬物移送装置における前記筐体の前記第一の端部に固定するステップと、
輸液容器を前記輸液アダプタに固定するステップと、
前記薬物移送装置における前記接続部材の前記通路を介して前記薬物容器に空気を導入することにより、前記薬物容器から前記薬物移送装置および前記輸液アダプタを介して前記輸液容器に前記液体薬剤を移送するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記薬物容器に空気を導入する以前に、前記薬物容器を反転させるステップ
をさらに備えることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
注射器アダプタを前記薬物移送装置の前記接続部材に固定するステップと、
注射器バレルを前記注射器アダプタに固定するステップと、
前記注射器バレル、前記注射器アダプタ、および、前記薬物移送装置における前記接続部材の前記通路を介して前記薬物容器に空気を注入することにより、前記薬物容器に空気を導入するステップと
をさらに備えることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項17】
空気が、送気ポンプを介して前記薬物移送装置を介して前記薬物容器に導入されることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項18】
配送チューブを前記薬物移送装置に固定するステップであって、前記配送チューブが、前記薬物移送装置および前記送気ポンプの間において延伸するステッ
さらに備えることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記送気ポンプと通信して制御装置に投与量情報を送信するステップと、
前記投与量情報に基づいて前記送気ポンプを作動させるステップと
をさらに備えることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項20】
薬物測定装置を介して前記輸液容器の容量および/または重量を測定するステップであって、前記薬物測定装置が容量測定、重量測定、および、前記投与量情報の一つまたは複数を前記制御装置に送信するステップと、
前記輸液容器が前記液体薬剤の処方された投与量を受け入れるまで、前記制御装置を介して前記送気ポンプを作動させるステップと
をさらに備えることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[開示の分野]
本発明は、概して薬物移送装置に関連し、より具体的には、容器間における液体薬剤を移送するための薬物移送装置およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月9日に出願されて、「薬物移送装置」と題する米国仮特許出願第62/958,909号明細書に基づく優先権を主張し、上記特許出願における全体の開示は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0003】
[関連技術の説明]
癌治療のような有害薬物の再構成、輸送、および管理を行う医療機関は、これらの薬剤に晒されるリスクに医療従事者を遭わせて、医療環境において重大な危害をもたらす可能性がある。例えば、癌患者を治療する看護師は、化学療法薬、および、それらの毒性効果に晒される危険を冒している。意図しないで化学療法へ晒されることは、神経系に影響を与え、生殖器系を損ない、将来的に血液癌を発症するリスクを高める可能性がある。有毒性の薬物に晒される医療従事者におけるリスクを低減するため、それらの薬物に関する閉鎖的な移送が重要となる。
【0004】
幾つかの薬物は、それが投与される前に、溶解または希釈される必要があるが、このことは、針を使用して、ある容器から粉末状または液状の形態で薬物を収容する密閉されたバイアル(vial)へ溶媒を移送することを含む。薬物は、そのバイアルから針が引き抜かれる間、および、バイアルの内部と周囲の大気との間に幾分かの圧力差が存在する場合で針がバイアルの内側にある間に、気体の形態で、または、エアロゾル化によって不注意で空気中に放出されることがある。
【発明の概要】
【0005】
ある態様において、薬物移送装置は、第一の端部と第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有する筐体と、薬物移送装置を薬物バイアルに固定するように構成されたバイアル取り付け部と、通路を画定するバイアル移送部材であって、薬物バイアルの密封を貫通するように構成されたバイアル移送部材と、筐体の内部に収容されたカニューレ(cannula)であって、バイアル移送部材の通路と流体連通して、第一の端部と第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有するカニューレと、筐体の内部に配置される封止配置であって、カニューレが筐体における第一の端部から隔離される第一の位置と、カニューレが筐体における第一の端部で受け入れられた嵌合コネクタと流体連通するように構成された第二の位置との間において筐体の内部を移動可能である封止配置と、薬物移送部材の通路と流体連通した通路を画定する接続部材であって、嵌合コネクタを受け入れるように構成された接続部材とを含む。
【0006】
バイアル取り付け部は、筐体における第二の端部に固定され得る。カニューレにおける第二の端部は、バイアル取り付け部に固定され得て、カニューレがバイアル取り付け部から筐体における第一の端部に向かって延伸し、カニューレにおける第一の端部が筐体における第一の端部および第二の端部の中間位置に配置される。接続部材は、バイアル取り付け部材から延伸し得る。バイアル移送部材の通路は、バイアル移送部材の縦方向に沿って拡がる第一の通路および第二の通路を含み得て、第一の通路が第二の通路から軸周りに離間して、カニューレと流体連通し、第二の通路が接続部材の通路に流体連通する。封止配置は、第一の端部および第二の端部を有するコレット(collet)と、コレットで受け入れられた薄膜とを含み得て、コレットの少なくとも一部分が筐体の内部に収容される。コレットは、本体と、本体に接続されたロック部材とを含み、ロック部材が嵌合コネクタを受け入れるために開口する第一の位置から、ロック部材の径方向で外向きの動きが制限される第二の位置へ、コレットが移動可能である。接続部材は、薄膜を含み得る。
【0007】
さらなる態様において、容器間で液体薬剤を移送するためのシステムは、注射器バレル(syringe barrel)に固定されるように構成された第一の端部と第二の端部とを有する注射器アダプタと、接続部材と輸液容器に固定されるように構成された容器アクセス部材とを有する輸液アダプタと、薬物移送装置とを含む。薬物移送装置は、輸液アダプタの接続部材を受け入れるように構成された第一の端部と第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有する筐体と、薬物移送装置を薬物バイアルに固定するように構成されたバイアル取り付け部と、通路を画定するバイアル移送部材であって、薬物バイアルの密封を貫通するように構成されたバイアル移送部材と、筐体の内部に収容されたカニューレであって、バイアル移送部材の通路と流体連通して、第一の端部と第一の端部の反対側に位置する第二の端部とを有するカニューレと、筐体の内部に配置された封止配置であって、輸液アダプタが筐体における第一の端部で受け入れられると、カニューレが筐体の第一の端部から隔離されている第一の位置と、カニューレが輸液アダプタと流体連通するように構成された第二の位置との間において筐体の内部を移動可能となる封止配置と、薬物移送部材の通路と流体連通した通路を画定する接続部材であって、注射器アダプタを受け入れるように構成された接続部材とを含む。
【0008】
そのシステムは、注射器アダプタにおける第一の端部と流体連通した送気ポンプを含み得る。システムは、薬物測定装置と、薬物測定装置および送気ポンプと通信する制御装置であって、薬物測定装置から受信した投与量情報に基づいて送気ポンプを作動させるように構成された制御装置とを含み得る。送気ポンプは、配送チューブを介して注射器アダプタにおける第一の端部と流体連通し得る。
【0009】
さらなる態様において、容器間で液体薬剤を移送するための方法は、液体薬剤を含む薬物容器に薬物移送装置を固定するステップと、輸液容器を輸液アダプタに固定するステップと、薬物移送装置を介して薬物容器に空気を導入することにより、薬物容器から薬物移送装置および輸液アダプタを介して輸液容器に液体薬剤を移送するステップとを含む。
【0010】
その方法は、薬物容器に空気を導入する以前に、薬物容器を反転させるステップをさらに含み得る。方法は、注射器アダプタを薬物移送装置に固定するステップと、注射器バレルを注射器アダプタに固定するステップと、注射器バレル、注射器アダプタおよび薬物移送装置を介して薬物容器に空気を注入することにより、薬物容器に空気を導入するステップとをさらに含み得る。その空気は、送気ポンプを介して薬物移送装置を介して薬物容器に導入されてよい。方法は、配送チューブを薬物移送装置に固定し、配送チューブが薬物移送装置および送気ポンプの間で延伸するステップを含み得る。方法は、送気ポンプと通信して投与量情報を制御装置に送信するステップと、投与量情報に基づいて送気ポンプを作動させるステップとを含み得る。方法は、薬物測定装置を介して輸液容器に関する容量および/または重量を測定し、薬物測定装置が容量測定、重量測定および投与量情報の一つまたは複数を制御装置に送信するステップと、輸液容器が液体薬剤の処方された投与量を受け入れるまで、制御装置を介して送気ポンプを作動させるステップとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示に関する上記と他の特徴および利点、ならびに、それらを達成する方法は、より明確にされることになり、その開示自体は、添付図面と併せて解釈される本開示の態様に関する以下の説明を参照することによって、より良く理解されることになる。
【0012】
図1】本出願における一つの態様による、薬物移送装置の正面図である。
図2図1における薬物移送装置の断面図である。
図3】薬物容器に固定された薬物移送装置を示す、図1における薬物移送装置の断面図である。
図4】薬物容器および注射器アダプタに固定された薬物移送装置を示す、図1における薬物移送装置の断面図である。
図5】本出願における一つの態様による、液体薬剤を移送するためのシステムの断面図である。
図6】本出願におけるさらなる態様による、液体薬剤を移送するためのシステムの模式図である。
図7図6におけるシステムの模式図である。
【0013】
一致する参照文字は、幾つかの図面の全体において類似する部分を表す。本明細書に記載される例証は、本開示の例示的な態様を説明し、そのような例証は、如何なる方法においても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[詳細な説明]
後続する説明は、本発明を実施するために意図して記述される態様を、当業者が製造および使用することを可能とするように提供される。しかしながら、様々な変更、同等、変形および代替は、当業者には容易に明確にされることになる。そのような任意で全ての変更、同等、変形および代替は、本発明の趣旨および範囲内に入ることが意図されている。
【0015】
以下の説明の目的のために、用語「上方」、「下方」、「右方」、「左方」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横方向」、「縦方向」、および、それらから派生したものは、それが図面の図形に向けられると、発明に関連することになる。しかしながら、発明が、反対に明示的に指定された場合を除いて、種々の代替的な変形を想定し得ることは、理解されるべきである。添付図面に例証されて、下記の仕様に記載される特定のデバイスが単なる発明の例示的な態様であることも、理解されるべきである。そのため、本明細書で開示される態様に関連する、特定の寸法および他の物理的な特徴は、制限するものとして見做されない。
【0016】
図1ないし4を参照すると、本出願の一つの態様による薬物移送装置10は、筐体12、バイアル取り付け部14、バイアル移送部材16、カニューレ18、封止配置20、および接続部材22を含む。筐体12は、第一の端部24と、第一の端部24の反対側に位置する第二の端部26とを有し、中央開通部28を画定する。バイアル取り付け部14は、薬物移送装置10を薬物バイアルのような薬物容器30に固定するように構成される。バイアル取り付け部14は、薬物容器30との係合時に径方向に外向きにたわみ、突起部32が薬物容器30の閉鎖部34の下方に配置された状態で元の位置に戻る突起部32を含み、図3および4に示されるように、それによって薬物移送装置10を薬物容器30に固定する。バイアル移送部材16は、通路36を画定し、薬物容器30の閉鎖部または密封部34を貫通するように構成される。バイアル移送部材16は、筐体12からも延伸し得るが、バイアル移送部材16は、バイアル取り付け部14の一部分から延伸する。カニューレ18は、筐体12の内部に収容され、バイアル移送部材16の通路36に流体連通している。カニューレ18は、第一の端部38と、第一の端部38の反対側に位置する第二の端部40とを有する。封止配置20は、筐体12の内部に配置され、封止配置20は、カニューレ18が筐体12の第一の端部24から隔離される第一の位置と、カニューレ18が筐体12における第一の端部24で受け入れられた嵌合コネクタと流体連通するように構成される第二の位置との間において筐体12の内部を移動可能である。接続部材22は、バイアル移送部材16の通路36と流体連通した通路42を画定し、接続部材22は、嵌合コネクタを受け入れ、嵌合コネクタに固定されるように構成される。接続部材22は、嵌合コネクタの薄膜またはシールと係合するように構成された薄膜44を含む。
【0017】
図1ないし4を参照すると、バイアル取り付け部14は、筐体12における第二の端部26に固定される。バイアル取り付け部14は、筐体12と一体的に形成されてもよいし、または、筐体12から分離して形成されて、筐体12に取り付けられてもよい。カニューレ18における第二の端部40は、バイアル取り付け部14に固定され、カニューレ18は、バイアル取り付け部14から筐体12における第一の端部24に向かって延伸し、カニューレ18における第一の端部38は、筐体12における第一の端部24および第二の端部26の中間位置に配置される。接続部材22は、筐体12から延伸し得るが、接続部材22は、バイアル取り付け部材14から延伸する。接続部材22は、他の適切な角度が利用可能であるが、バイアル取り付け部材14から筐体12の縦軸に対して相対的に45度の角度で延伸する。バイアル移送部材16の通路36は、バイアル移送部材16の縦方向に沿って延伸する第一の通路46および第二の通路48を含み、第一の通路46は、第二の通路48から軸周りに離間しており、第二の通路48は、接続部材22の通路42と流体連通している。
【0018】
図2ないし4を参照すると、封止配置20は、コレット58で受け入れられた薄膜64を有し、コレット58の少なくとも一部分は、筐体12の内部に収容される。コレット58は、本体66と、本体66に接続されたロック部材68とを含み、コレット58は、ロック部材68が嵌合コネクタを受け入れるために開口する第一の位置(図2)から、ロック部材68の径方向に外向きの動きが制限される第二の位置(図5)に移動可能である。封止配置20は、筐体12における第一の端部24に向かって封止配置20を偏位させるためのスプリングも含む。
【0019】
以下により詳細に議論されるように、薬物移送装置10は、液体薬剤に関する密閉かつ閉鎖された移送を確保しつつ、薬物容器30から輸液容器70のような別の薬物容器への液体薬剤の移送を容易化するように構成される。
【0020】
図5を参照すると、本出願の一つの態様による、容器間における薬物を移送するためのシステム100は、注射器アダプタ102、輸液アダプタ104、および、図1ないし4に関連して上記で議論された薬物移送装置10を含む。注射器アダプタ102は、注射器バレル108に固定されるように構成された第一の端部106と、第一の端部106の反対側に配置された第二の端部110とを有する。注射器アダプタ102は、米国特許出願公開公報第2018/0200147号明細書に提示かつ記載された注射器アダプタの一つであってよく、上記特許出願は、参照により全体として本明細書に援用される。輸液アダプタ104は、接続部材112と、IVバッグのような輸液容器70に固定されるように構成された容器アクセス部材114とを有する。接続部材112および容器アクセス部材114は、第一の通路116を画定する。輸液アダプタ104は、容器アクセス部材114によって画定された第二の通路120に流体連通した部分118も含む。薬物移送装置10の筐体12における第一の端部24は、輸液アダプタ104の接続部材112を受け入れるように構成される。図5に示されるように、輸液アダプタ104が筐体12における第一の端部24で受け入れられると、薬物移送装置10の封止配置20は、カニューレ18が筐体12における第一の端部24から隔離される第一の位置と、カニューレ18が輸液アダプタ104と流体連通するように構成される第二の位置との間において筐体12の内部を移動可能となる。薬物移送装置10の接続部材22は、注射器アダプタ102を受け入れるように構成される。
【0021】
再度図5を参照すると、システム100は、薬物容器30を薬物移送装置10のバイアル取り付け部14に固定し、輸液アダプタ104の接続部材112を薬物移送装置10の筐体12における第一の端部24に固定し、注射器アダプタ102を薬物移送装置10の接続部材22に固定することによって利用される。注射器バレル108は、注射器アダプタ102に固定され、輸液容器70は、輸液アダプタ104に固定される。図5に示されるように、薬物容器30が反転されると、注射器バレル108のプランジャー(plunger)130は、注射器アダプタ102および薬物移送装置10を介して、薬物容器30へ空気を注入するように押し下げられ、このことは、薬物容器30からバイアル移送部材16における第一の通路46を通して、カニューレ18を通して、輸液アダプタ104の接続部材112の第一の通路116を通して、輸液容器70へ液体薬剤を動かす。
【0022】
図6および7を参照すると、本出願の一つの態様による、容器間において薬物を移送するためのシステム150が示される。図6におけるシステム150は、図5におけるシステム100に類似しているが、注射器バレル108を介して手動で空気を注入するのではなく、システム150は、送気ポンプ152、配送チューブ154、制御装置156、および、薬物測定装置158を利用する点で異なる。送気ポンプ152は、配送チューブ154を介して注射器アダプタ102における第一の端部106と流体連通しており、薬物容器30に空気を送風するように構成されることにより、上述された注射器バレル108と同様な方法で、薬物容器30から輸液容器70へ液剤を移送する。制御装置156は、薬物測定装置158および送気ポンプ152と通信している。制御装置156は、通信回線を経由して、および/または、無線接続されて、薬物測定装置158および送気ポンプ152に物理的に接続され得る。制御装置156は、薬物測定装置158から受信された投与量情報に基づいて、送気ポンプ152を作動させるように構成される。薬物測定装置158は、ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー社から入手可能である商標登録表示「BD Cato」システムの薬物測定装置であり得る。制御装置156は、システム150の一つまたは複数の態様を制御するために、少なくとも一つのプロセッサ、または、任意の他の同様な演算装置を含む。
【0023】
ある態様において、図7において示されるように、システム150は、バーコード、RFIDタグ、または、他の適切な配列の走査によるなど、薬物測定装置158を利用して、薬物容器30および輸液容器70を検査することと、処方された投与量を移送するための薬剤の量を決定することとによって利用され、この薬剤の量は、投与量情報として薬物測定装置158によって保存され得る。輸液容器70の容量および/または重量は、薬物測定装置158によって測定され、輸液容器70が処方された投与量を含むかどうかの判定が実行される。送気ポンプ152は制御装置156を介して作動され、処方された投与量が達成されるまで、薬物測定装置158が輸液容器70の容量および/または重量の測定を継続する。ある態様において、制御装置156は、薬物容器30から輸液容器70へ移送されることが必要である液体薬剤の所望容量に基づいて設定時間だけ、送気ポンプ152を作動させる。
【0024】
本出願の一つの態様によると、容器間において液体薬剤を移送するための方法は、液体薬剤を含む薬物容器30に薬物移送装置10を固定するステップと、輸液アダプタ104を薬物移送装置10に固定するステップと、輸液容器70を輸液アダプタ104に固定するステップと、薬物移送装置10を介して薬物容器30に空気を導入することにより、薬物容器30から薬物移送装置10および輸液アダプタ104を介して輸液容器70に液体薬剤を移送するステップとを含む。その方法は、薬物容器30に空気を導入する以前に、薬物容器30を反転するステップを含み得る。
【0025】
ある態様において、その方法は、注射器アダプタ102を薬物移送装置10に固定するステップと、注射器バレル108を注射器アダプタ102に固定するステップと、注射器バレル108、注射器アダプタ102、および、薬物移送装置10を介して、薬物容器30に空気を注入することにより、薬物容器30に空気を導入するステップとを含む。
【0026】
さらなる態様において、空気は、送気ポンプ152を介して薬物移送装置10を介して薬物容器30に導入される。その方法は、配送チューブ154を薬物移送装置10に固定するステップであって、配送チューブ154が薬物移送装置10および送気ポンプ152の間に延伸するステップをさらに含み得る。ある態様において、その方法は、送気ポンプ152と通信して投与量情報を制御装置156に送信するステップと、投与量情報に基づいて送気ポンプ152を作動させるステップとも含み得る。
【0027】
別の態様において、その方法は、薬物測定装置158を介して輸液容器70の容量および/または重量を測定するステップであって、薬物測定装置158が容量測定、重量測定、および投与量情報の一つまたは複数を制御装置156に送信するステップと、輸液容器70が液体薬剤の処方された投与量を受け入れるまで、制御装置156を介して送気ポンプ152を作動させるステップとを含む。
【0028】
本開示は例示的な設計を有するものとして記述されているが、本開示は、本開示の趣旨および範囲内においてさらに変更することができる。そのため、本出願は、その一般原則を使用して、本開示に関する任意の変形、使用、または、適応を対象とすることを意図している。さらに、本出願は、本開示が関連する、および、付加された請求項の制限内に入る、当技術分野における既知の、または、慣習的な実践の範囲内に入るような本開示からの逸脱を対象とすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7